以下、図を参照しながら、この発明のシステム、装置、方法の一実施の形態について説明する。以下に説明する実施の形態においては、この発明を例えば会社などの構内に設けられるビジネスホンシステムと呼ばれる電話システムに適用した場合を例にして説明する。
[第1の実施の形態]
[無線通信システムの構成例;図1]
図1は、この発明による無線通信システムの第1の実施形態としての電話システム10の全体の構成例を示すブロック図である。この例の電話システム10においては、上位装置(通信制御装置)の例としての主装置1に対して、内線電話装置として、複数のコードレス電話装置21、22、・・・、2n(nは2以上の整数。以下同じ)が接続されている。コードレス電話装置21〜2nのそれぞれは、コードレス通信装置の例であり、親機としてのベースセットBS1、BS2、・・・、BSnのそれぞれと、子機としてのハンドセットHS1、HS2、・・・、HSnのそれぞれとからなり、親機BS1〜BSnのそれぞれと、子機HS1〜HSnのそれぞれとは、無線接続される。
なお、親機BS1〜BSnのそれぞれに対しては、複数の子機を無線接続することも可能であるが、この例では、1台の親機に対して、1台の子機が接続される構成とされている。また、図示は省略するが、主装置1に接続される内線電話装置としては、コードレス電話装置21、22、・・・、2nのみではなく、通常のビジネスホンと同様に、デジタルボタン電話端末も接続することも可能である。
そして、この実施形態では、コードレス電話装置21〜2nは、IP電話機であり、主装置1とはLAN回線を通じて接続されている。また、コードレス電話装置21〜2nの親機BS1〜BSnのそれぞれと、子機HS1〜HSnのそれぞれとの間の無線接続は、前述したデジタルコードレス電話のDECT規格(方式)を用いたTDMA/TDD方式により行うようにしている。
主装置1は、1又は複数の電話回線L1〜Lm(mは1以上の整数)を収容可能である。そして、コードレス電話装置21〜2nのそれぞれの親機BS1〜BSnが、この主装置1に接続されている。図1の例では、親機BS1〜BSnと主装置1とは有線のLAN回線で接続されているが、無線のLAN回線であってもよい。主装置1は、複数のコードレス電話装置21〜2nについての呼制御及び回線交換制御、その他のビジネスホンとしての制御を行う。
コードレス電話装置21〜2nの親機BS1〜BSnのそれぞれは、DECT規格のデジタルコードレス電話の単位通信期間である1フレーム(10ミリ秒(ms))の周期の同期信号としてのフレーム同期信号を生成し、その生成したフレーム同期信号に基づいて、DECT規格を用いたTDMA/TDD方式の無線通信を子機HS1〜HSnとの間で実行する。
親機BS1〜BSnのそれぞれは、フレーム同期信号を生成し、その生成したフレーム同期信号に基づいて、子機HS1〜HSnとの間で、1フレーム期間の複数のスロットの内の一つを用いて無線通信を行うように制御する。
しかし、親機BS1〜BSnのそれぞれにおいては、フレーム同期を適切に合わせるためには、精度(ジッタ)が0.5マイクロ秒の以下のパケットを主装置1から各コードレス電話装置21〜2nの親機BS1〜BSnに送信しなければならない。上述もしたように、精度(ジッタ)が0.5マイクロ秒以下のパケットを送信することは、現時点のLAN接続においては難しい。
そこで、この第1の実施の形態のビジネスホンシステムの親機BS1〜BSnは、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)411、一致検出部4422、PLL部4423を備え、これらが協働することにより、親機BS1〜BSn間において無線によりフレーム同期を合わせることができるようにしている。
具体的には、この第1の実施の形態のビジネスホンシステムでは、(1)主装置1に収容されるコードレス電話装置21〜2nの内、1つをマスターコードレス電話装置とし、残りのコードレス電話装置をスレーブコードレス電話装置とする。(2)各コードレス電話装置の親機BS1〜BSnには、少なくともマスターコードレス電話装置の親機の識別ID(無線ID)をEEPROM411に予め登録しておく。(3)主装置1からマスターコードレス電話装置の親機とスレーブコードレス電話装置の親機を活性化(パワーオン)させる。
(4)マスターコードレス電話装置の親機は、図17を用いて説明したスロットS0〜S11の範囲で電波を定期的(10ミリ秒ごと)に放射する。(5)各スレーブコードレス電話装置の親機は、この段階では子機に対して電波を放射せず、マスターコードレス電話装置の親機から放射された電波を受信し、一致検出部4422を機能させて、自機のEEPROM411に登録されているマスターコードレス電話装置の親機の識別IDと受信した当該電波から得られた識別IDとが一致するか否かを照合する。
(6)一致したら受信している電波はマスターコードレス電話装置の親機からの電波であると判断し、受信したマスターコードレス電話装置の親機からの電波と、自機から放射する電波との位相合わせを行うためにPLL(Phase Locked Loop)部4423の動作を開始させる。具体的には、後述もするが比較対象の電波の各フレーム内のスロットで送信される信号のAフィールド(A-Field)と呼ばれるフィールドの末尾の位置の差(位相カウンタ値)を検出する。
そして、(7)自機から放射する電波の位相を、マスターコードレス電話装置の親機から放射された電波の位相に合わせるように、フレーム同期信号FLの位相をずらすように制御する。この場合、100ミリ秒程度の期間において、マスターコードレス電話装置の親機からの電波をチェックし、マスターコードレス電話装置の親機からの電波であることを確実に検知してから、位相の合わせ込を行うようにすることが望ましい。この後、位相差(位相カウンタの値)が閾値以内になったら、無線フレーム間の同期が取れたと判断し、PLL部をロックし、子機に対して電波の放射を行う。
このように、この実施のコードレス電話装置の親機BS1〜BSnにおいては、マスターコードレス電話装置の親機から放射された電波を基準信号(リファレンス信号)として用いて、スレーブコードレス電話装置の親機から放射する電波の位相を合わせ込む。これにより、従来のように、主装置1と各コードレス電話装置21〜2nの親機BS1〜BSnとの間を、同期を取るために物理的な線を接続しなくても、親機BS1〜BSn間において同期を取ることを可能にしている。
[主装置1の構成例;図2]
図2は、主装置1の構成例を示すブロック図である。図2に示すように、主装置1は、電話回線L1〜Lmが接続される回線インターフェース11と、コンピュータを搭載して、主装置1の全体を制御するための制御回路12と、回線LSI(Large Scale Integrated Circuit)部13と、基準発振器14とを備えて構成されている。
回線インターフェース11は、制御回路12からの制御により、回線L1〜Lmからの音声信号(受話音声信号)は、回線LSI部13に供給し、回線からの呼制御信号などの制御信号は、制御回路12に供給する。また、回線インターフェース11は、制御回路12からの制御により、回線LSI部13からの音声信号(送話音声信号)は、回線L1〜Lmを通じて相手方に送信し、制御回路12からの呼制御信号などの制御信号も、回線L1〜Lmを通じて相手方に送信する。
回線LSI部13は、n個の内線電話装置に対応して、n個の内線処理回路131,132,・・・,13nと、タイミング信号生成部130を備える。
タイミング信号生成部130には、水晶振動子を用いた高精度の基準発振器14からの基準クロック信号から伝送用クロック信号CK及び多重化/分割化用タイミング信号TMを生成し、n個の内線処理回路131〜13nに供給する。
n個の内線処理回路131〜13nは、全く同一の構成を備えるもので、それぞれ、音声信号処理部31と、制御信号処理部32と、多重化/分割化処理部34とからなる。
音声信号処理部31は、回線インターフェース11に接続されると共に、多重化/分割化処理部34に接続されており、回線インターフェース11からの受話音声信号及び多重化/分割化処理部34からの送話音声信号の処理回路である。この音声信号処理部31には、タイミング信号生成部130からの伝送用クロック信号CKが供給されている。
制御信号処理部32は、制御回路12の制御信号入出力端に接続されると共に、多重化/分割化処理部34に接続されており、発信時及び着信時、また、終話時などにおける呼制御信号などの制御信号(主装置1からコードレス電話装置への制御信号と、コードレス電話装置から主装置1への制御信号の両方)の処理回路である。この制御信号処理部32にも、タイミング信号生成部130からの伝送用クロック信号CKが供給されている。
多重化/分割化処理部34は、音声信号処理部31、制御信号処理部32に接続されると共に、コードレス電話装置21〜2nの親機BS1〜BSnのそれぞれに接続される。そして、多重化/分割化処理部34は、タイミング信号生成部130からのタイミング信号TMに基づいて、音声信号処理部31からの音声信号と、制御信号処理部32からの制御信号とを多重化(時分割多重)して多重化信号を生成し、その生成した多重化信号を親機BS1〜BSnのそれぞれに供給する。また、多重化/分割化処理部34は、タイミング信号生成部130からのタイミング信号TMに基づいて、親機BS1〜BSnのそれぞれからの多重化信号を音声信号と制御信号とに分割して、音声信号は音声信号処理部31に、制御信号は制御信号処理部32に、それぞれ供給する。なお。多重化/分割化処理部34は、送出する信号のパケット化処理及び受信した信号のパケット分割処理も行うことができるものである。
また、図示しないが、主装置1には、アドレス管理部も接続されている。アドレス管理部は、主装置1に接続されているコードレス電話装置21〜2nの内線番号と内線処理回路131〜13nのそれぞれとの対応を記憶管理する。この実施形態の電話システム10においては、主装置1にコードレス電話装置21〜2nのいずれかが接続された時に、そのコードレス電話装置の親機は、主装置1に対して接続要求を送る。
主装置1は、そのコードレス電話装置の親機からの接続要求を制御信号として受けた内線処理回路が内線処理回路131〜13nの内のいずれであるかを検知することにより、コードレス電話装置が接続された内線処理回路を検知する。そして、制御回路12は、設置工事者や管理者等により設定された内線番号、あるいは自動的に設定された内線番号と、コードレス電話装置が接続された内線処理回路の識別情報とを対応付けてアドレス管理部に登録する。
このアドレス管理部の情報に基づいて、主装置1に接続されたコードレス電話装置の動作状況などを適切に把握することができると共に、主装置1に接続されたコードレス電話装置のそれぞれを適切に制御できる。
そして、主装置1の制御回路12は、所定のタイミングで、活性化を実行することを指示する制御信号を、制御信号処理部32、多重化/分割化処理部34を通じて、親機BS1〜BSnに送信可能なものである。なお、所定のタイミングは、例えば、新たなコードレス電話装置が接続されたり、収容されているコードレス電話装置に電源が投入されたりしたタイミングなどである。
[コードレス電話装置21〜2nの構成例]
複数個のコードレス電話装置21〜2nの親機BS1〜BSn及び子機HS1〜HSnのそれぞれは、全て同じ構成を備える。そこで、以下の説明では、コードレス電話装置21の親機BS1及び子機HS1の場合を例にとって、親機及び子機の構成例を説明する。
<親機の構成例;図3>
図3は、親機BS1の構成例を示すブロック図である。この図3に示すように、親機BS1は、親機BS1の全体を制御するための制御回路41と、回線LSI部42と、無線通信回路44と、発振器45及び46とを備えて構成されている。
制御回路41は、コンピュータを搭載して構成されている。そして、制御回路41は、この親機BS1における呼制御などの制御を行う機能を備える。また、制御回路41は、不揮発性メモリであるEEPROM411を備える。このEEPROM411には、上述もしたように、マスターとされたコードレス電話装置の親機の識別IDが予め記録されている。そして、主装置1から活性化を指示する制御信号を受信したとする。この場合に、自機の識別IDとEEPROM411に登録されているマスターとなるコードレス電話装置の親機の識別IDとが同じであり、自機がマスターである場合には、制御回路41は自機から電波の放射を開始させるように各部を制御する。
一方、自機の識別IDとEEPROM411に登録されているマスターとなるコードレス電話装置の親機の識別IDとが異なり、自機がスレーブであったとする。この場合、制御回路41は、EEPROM411に記録されている識別IDによって特定されるマスターとされたコードレス電話装置の親機から放射された電波(送信信号)に対して、自機から放射する電波(送信信号)の位相を合わせ込むように、無線通信回路44を制御する。
回線LSI部42は、主装置1との間で音声信号及び制御信号のやり取りをするための回路であり、分割化/多重化処理部421と、制御信号処理部422と、音声信号処理部423と、PLL(Phase locked Loop)部425とからなる。
PLL部425には、発振器45からの基準周波数の発振信号が供給されると共に、主装置1からの多重化信号が供給される。この例では、発振器45の発振信号の周波数は、例えば2048MHz(0.488ナノ秒(ns))とされている。
PLL部425は、主装置1からの多重化信号から、いわゆるセルフクロッキングにより、主装置1のタイミング信号生成部からのクロック信号CKの成分を抽出し、その抽出したクロック信号CK成分と発振器45からの発振信号とを位相比較して、その比較結果に基づいて、発振器45の発振信号から、クロック信号CK成分に同期する親機BS1のシステムクロック信号SCKを生成する。
そして、PLL部425は、生成したシステムクロック信号SCKを分割化/多重化処理部421、制御信号処理部422、音声信号処理部423のそれぞれに、信号処理用クロック信号として供給する。
分割化/多重化処理部421は、主装置1に接続されると共に、制御信号処理部422、音声信号処理部423に接続される。そして、分割化/多重化処理部421は、主装置1からの多重化信号から制御信号と音声信号を分割して、制御信号は制御信号処理部422に、音声信号は音声信号処理部423に、それぞれ供給する。また、分割化/多重化処理部421は、制御信号処理部422からの制御信号と、音声信号処理部423からの音声信号とを多重化して多重化信号を生成し、その生成した多重化信号を主装置1に供給する。なお。分割化/多重化処理部421は、送出する信号のパケット化処理及び受信した信号のパケット分割処理も行うことができるものである。
制御信号処理部422は、制御回路41の制御信号入出力端に接続されると共に、分割化/多重化処理部421に接続されており、発信時及び着信時、また、終話時などにおける呼制御信号などの制御信号(主装置1からコードレス電話装置21への制御信号と、コードレス電話装置21から主装置1への制御信号の両方)の処理回路である。
音声信号処理部423は、無線通信回路44に接続されると共に、分割化/多重化処理部421に接続されており、無線通信回路44からの子機HS1から受信した受話音声信号及び分割化/多重化処理部421からの送話音声信号の処理回路である。
次に、無線通信回路44について説明する。この無線通信回路44は、制御部441と、TDMA変復調部442と、無線通信部443とを備えて構成されている。無線通信部443は、主に子機HS1との間で、無線通信を行うための回路部である。但し、後述もするが、無線通信部443は、他のコードレス電話装置の親機からの送信信号を受信して、後段の処理回路に供給することができるものである。
制御部441は、TDMA変復調部442及び無線通信部443に接続されると共に、制御回路41に接続されている。制御部441は、この無線通信回路44の全体の動作を制御すると共に、制御回路41から得た制御信号に基づく制御信号をTDMA変復調部442に供給する。
TDMA変復調部442は、制御部441及び回線LSI部42の音声信号処理部423に接続されると共に、無線通信部443に接続されており、制御部441からの制御信号と音声信号処理部423からの音声信号を子機HS1に送信するために変調を行う。このTDMA変復調部442で変調された信号は、無線通信部443を通じて子機HS1に送信される。
また、TDMA変復調部442は、無線通信部443で受信された子機HS1からの受信信号から、音声信号及び制御信号を復調し、復調した音声信号は音声信号処理部423に供給し、復調した制御信号は、制御部441に供給する。
そして、TDMA変復調部442は、クロック生成用のジェネレータ4421(図3では、GENと記載。)を備える。このジェネレータ4421には、発振器46からの発振信号が供給される。ジェネレータ4421は、発振器46の発振信号から、フレーム同期信号FLに同期するタイミング信号及びクロック信号を生成する。
TDMA変復調部442は、フレーム同期信号FLに同期するタイミング信号及びクロック信号を用いて、割り当て使用可能となるダウンリンクでのスロットの1つに相当する期間で子機HS1への送信信号を生成すると共に、アップリンクでのスロットの1つを用いて、子機HS1からの受信信号の処理を行うようにする。
そして、この実施形態の電話システムにおいて、親機BS1は、主装置1からいわゆる活性化(パワーオン)が指示されたタイミングで、マスターとされた親機からの送信信号に基づいて同期合わせ処理を行う。すなわち、親機BS1の制御回路41は、主装置からの活性化が指示されたタイミングで、EEPROM411に格納されているマスターとされたコードレス電話装置の親機の識別IDを、無線通信回路44の制御部441に通知して、同期合わせを行うことを指示する。
無線通信回路44の制御部441は、当該指示に応じて、TDMA変復調部442の一致検出部4422を制御し、無線通信部443を通じて受信している信号に含まれる送信元を示す識別IDが、制御回路41から通知された識別IDと一致しているか否かを照合する。すなわち、マスターとされた親機からの送信信号を受信しているか否かを判別する。無線通信部443を通じて受信している信号の識別IDが、制御回路41から通知された識別IDと一致していると照合できた場合には、一致検出部4422は、PLL部4423を制御し、マスターとされた親機からの送信信号と、自機から送信する送信信号との同期合わせを開始させる。
図4は、PLL部4423の構成例を説明するためのブロック図である。PLL部4423は、図4に示すように、位相検出部4423Aと平均化部4423Bとフレーム同期信号出力部4423Cとからなる。位相検出部4423Aには、無線通信部443を通じて受信したマスターからの送信信号と、ジェネレータ4421のタイミング信号及びクロック信号に応じて生成された自機からの送信信号とが入力され、それらの位相差をカウント値として検出する。検出された位相差は、LPF(Low Pass Filter)の構成とされた平均化部4423Bに供給され、ここで異常値は除去されて適正な値となった位相差がフレーム同期信号出力部4423Cに供給される。
フレーム同期信号出力部4423Cは、位相差に応じてフレーム同期信号の出力タイミングを調整し、これを位相検出部4423Aに供給する。このようにして、フレーム同期信号出力部4423Cから出力されるフレーム同期信号FLを、マスターとされた親機からの送信信号に応じたタイミングに合わせ込むようにする。そして、位相検出部4423Aで検出された位相差が予め決められた閾値の範囲内あり、同期が取れたと判別可能な状態になったところで、PLL部4423をロックする。これにより、自機において用いるフレーム同期信号FLを、マスターとされた親機で用いられているフレーム同期信号に合わせ込むことができる。
このようにして、親機BS1は、マスターとされた他の親機との間で同期合わせを行った後に、子機HS1との通信のための同期処理を開始し、常に、子機HS1に対して送信信号を送る。そして、親機BS1の無線通信回路44の制御部441は、TDMA変復調部442で生成した送信信号を、自親機に設定された1つのスロットを用いて、無線通信部443を通じて子機HS1に送り、当該子機HS1から応答が返って来た時に、送信信号を送信するために用いたスロットをダウンリンク用とし、子機HS1からの応答を受信したスロットをアップリンク用として同期を確立して、送受信を行うように制御する。
<子機の構成例;図5>
図5は、子機HS1の構成例を示すブロック図である。図5に示すように、子機HS1は、無線通信回路51と、制御回路52と、コーデック回路53と、発振器54と、マイクロホン55と、スピーカ56とを備えて構成されている。マイクロホン55は送話器を構成し、スピーカ56は受話器を構成する。
無線通信回路51は、DECT規格の無線通信を行うための汎用の子機用無線通信LSIを用いている。この無線通信回路51は、制御部511と、TDMA変復調部512と、無線通信部513とを備えて構成されている。無線通信部513は、親機BS1との間で、無線通信を行うための回路部である。
制御部511は、TDMA変復調部512及び無線通信部513に接続されると共に、制御回路52に接続されている。制御部511は、この無線通信回路51の全体の動作を制御すると共に、制御回路52から得た制御信号に基づく制御信号をTDMA変復調部512に供給する。
TDMA変復調部512は、制御部511及び無線通信部513に接続されると共に、コーデック回路53と接続されており、制御部511からの制御信号とコーデック回路53からの音声信号を親機BS1に送信するために変調を行う。このTDMA変復調部512で変調された信号は、無線通信部513を通じて親機BS1に送信される。
また、TDMA変復調部512は、無線通信部513で受信された親機BS1からの受信信号から、音声信号及び制御信号を復調し、復調した音声信号はコーデック回路53に供給し、復調した制御信号は、制御部511に供給する。
そして、TDMA変復調部512は、クロック生成用のPLL部5121を備える。このPLL部5121には、発振器54からの発振信号が供給されると共に、無線通信部513からの受信信号の復調信号が供給され、このPLL部5121からは、発振器54からの発振信号から、受信信号の復調信号のクロック成分に同期したクロック信号が生成される。このPLL部5121からのクロック信号は、TDMA変復調部512における処理用クロック信号とされる。
コーデック回路53は、TDMA変復調部512で復調された音声信号を復号して、アナログ音声信号に変換し、そのアナログ音声信号をスピーカ56に供給して、受話音声として放音する。また、コーデック回路53は、マイクロホン55で収音したアナログ音声信号を符号化して、TDMA変復調部512に供給するようにする。
なお、制御回路52は、この子機HS1からの発呼時には、発呼時の呼制御信号を、無線通信回路51を通じて親機BS1に送信し、また、親機BS1からの着信時の呼制御信号を受けた時には、着信音をスピーカ56から放音するなどの処理を行う。
以上の説明は、コードレス電話装置21の親機BS1及び子機HS1についての説明であるが、前述したように、その他のコードレス電話装置22〜2nの親機BS2〜BSn及び子機HS2〜HSnについても同様の構成を有するものである。
[第1の実施の形態の電話システム10における同期合わせの詳細]
ここで、コードレス電話装置21をマスターとし、コードレス電話装置22をスレーブとした場合の電話システムの同期合わせの動作について具体的に説明する。図6は、主に図3の親機BS1について示したPLL部4423の動作を説明するための図であり、親機から送信される送信信号の構成と位相差の状態の例を示す図である。
親機BS1〜BSnからの送信信号を、図6に示すように、GS(ガードスペース)、S−field(パケット同期データ)、A−field(制御データ)、B−field(ユーザーデータ)、X−field(誤り制御)、Z−field(スライディングコリジョン検出)からなる。A−fieldのHead部にはヘッダーやスロット種類などが格納され、Tail部には親機、子機の区別、識別ID(無線ID)、スロット番号等の情報が格納される。また、R−CRC部は誤り制御のために用いられる。
そして、この実施の形態のスレーブのコードレス電話装置の親機においては、上述もしたように、受信したマスターコードレス電話装置の親機からの電波と、自機から放射する電波との位相合わせを行うためにPLL部4423の動作を開始させる。具体的には、後述もするが比較対象の電波の各フレーム内のスロットで送信される信号のAフィールド(A-Field)と呼ばれるフィールドの末尾の位置の差(位相カウンタ値)を検出する。すなわち、図6(A)が、マスターである親機BS1からの送信信号であり、図6(B)が、スレーブである親機BS2からの送信信号である。
そして、図6において、マスターである親機BS1からの送信信号(図6(A))のA−fieldの末尾から、スレーブである親機BS2からの送信信号(図6(B))のA−fieldの末尾との差分をカウント値として検出するのが、図4に示した位相検出部4423Aの機能である。図6に示した例の場合、マスターである親機BS1からの送信信号(図6(A))とスレーブである親機BS2からの送信信号との位相差はカウント値T1として検出された場合を示している。
このようにして、マスターの親機BS1からの送信信号とスレーブの親機BS2からの送信信号とについて複数スロット分について位相差を検出し、これを平均化して適切な位相差を検出するのが、平均化部4423Bの機能である。そして、平均化部4423Bからの位相差に応じて、ジェネレータ(図3ではGENと記載。)4421に供給する位相調整用の信号を形成するのが、フレーム同期信号出力部4423Cの機能である。
そして、フレーム同期信号出力部4423Cから出力された位相調整用の信号により、フレーム同期信号の位相が調整される。これにより、フレーム同期信号FLが用いられてジェネレータ4421により形成されるタイミング信号とクロック信号とに応じて形成されるスレーブの親機BS2からの送信信号の位相が、図6(C)に示すように調整される。この場合、マスターである親機BS1からの送信信号(図6(A))と、スレーブである親機BS2からの位相調整後の送信信号との位相差はカウント値T2として検出され、その位相差が小さくなっている。
このようにして、PLL部4423の機能により、マスターである親機BS1からの送信信号(図6(A))と、スレーブである親機BS2からの送信信号との位相差が徐々に小さくなるように調整することができる。そして、図6において、マスターである親機BS1からの送信信号(図6(A))と、スレーブである親機BS2からの送信信号(図6(D))との位相差が、所定範囲にまで小さくなると、同期があったと判別され、PLL部4423がロックされる。
なお、ここでは、PLL部4423の機能により、マスターである親機BS1からの送信信号と、スレーブである親機BS2からの送信信号との位相差を徐々に小さくするように制御するものとして説明した。しかし、実際には、まず、最初に検出された位相差に応じて、マスターである親機BS1からの送信信号と、スレーブである親機BS2からの送信信号との位相差が所定の閾値以下になるように、大きく位相調整を実行し、この後に位相差が所定範囲内に収まるように微調整を行うようにして、迅速に同期合わせを行うことができるようにしている。
図7は、この実施の形態の電話システム10においての同期合わせ処理の詳細を説明するためのシーケンス図である。図7に示したシーケンス図もまた、コードレス電話装置21をマスターとし、コードレス電話装置22をスレーブとした場合の電話システムの同期合わせの動作について示したものである。
まず、例えば、コードレス電話装置22の親機BS2が主装置1に新たに接続されるなどして活性化を行う事象が発生すると、主装置1は自機に収容されたコードレス電話装置21、22の親機BS1、BS2に対して活性化の実効を指示する制御信号を送信する(ステップS1、S2)。活性化の実効を指示する制御信号を受信した親機BS1、BS2の制御回路41では、まず、自機の識別IDとEEPROM411に記録されているマスターコードレス電話装置の親機の識別IDとを比較し、自機はマスターかスレーブかを判別する。そして、親機BS1の制御回路41は、自機の識別IDとEEPROM411の識別IDとが同じであるので、自機はマスターであると判別して、無線通信回路44などの各部を制御し、電波の放射を開始させる(ステップS3)。
一方、親機BS2の制御回路41は、自機の識別IDとEEPROM411の識別IDとは異なるので、自機はスレーブであると判別して、無線通信回路44などの各部を制御し、電波の受信を開始させる(ステップS4)。そして、スレーブである親機BS2においては、一致検出部4422が機能し、受信した電波(受信信号)に含まれる識別IDと自機のEEPROM411に記録されている識別IDとを照合し、一致するか否かを確認する(ステップS5)。
ステップS5の確認処理は一致が確認できるまで継続される。そして、受信した電波(受信信号)に含まれる識別IDと自機のEEPROM411に記録されている識別IDと一致が確認できると、無線通信回路44の制御部441は、PLL部4423を制御して動作を開始させる(ステップS6)。PLL部4423は、マスターの親機BS1からの送信信号をレファレンス信号として用いて、自機からの送信信号との位相差を求め、この位相差に応じて、フレーム同期信号FLの位相を制御し、スレーブの親機BS2からの送信信号の位相を一気に閾値以下に合わせ込む(ステップS7)。
この後、PLL部4423からの位相差に応じた調整用の信号に応じて、生成されるフレーム同期信号FLの位相を徐々に調整するようにし(ステップS8)、例えば制御部441が、位相差が所定範囲に収まったか否かを判別する(ステップS9)。所定範囲に収まっていないと判別したときには、PLL部4423の動作を維持し、ステップS8からの処理を繰り返すようにする。また、所定範囲に収まったと判別したときには、制御部441は、PLL部4423をロックさせ、スレーブである親機BS2から子機HS2に対する電波の放射を開始させる(ステップS10)。
このように、スレーブの親機BS2は、マスターの親機BS1との間でフレーム同期を合わせ込んだ後に、子機HS2への電波の放射を開始させることができる。また、親機BS2以外のスレーブの親機BS3〜BSnについても、スレーブの親機BS2の場合と同様にして、スターの親機BS1との間でフレーム同期を合わせ込んだ後に、子機HS3〜HSnへの電波の放射を開始させることができる。
しかも、上述もしたように、主装置1と各コードレス電話装置21〜2nの親機BS1〜BSnとを同期合わせのための専用線を用いて物理的に接続する必要もなく、無線により、各親機間において、フレーム同期を取ることが可能となる。
[第1の実施の形態の変形例]
上述した第1の実施の形態では、コードレス電話装置21をマスターとし、コードレス電話装置22〜2nをスレーブとするというように、マスターとスレーブとを固定的に設定するものとして説明したが、これに限るものではない。各コードレス電話装置の親機に、グループ内の全てのコードレス電話装置の親機の識別IDと、各コードレス電話装置のプライオリティ(優先順位)とを対応づけたテーブルを用意しておく。ここでグループとは、例えば、同じ電話回線に接続される複数のコードレス電話装置の集まりなどを意味する。たとえば、営業部に設置されたコードレス電話装置群と、総務部に設置されたコードレス電話装置群というように、グループ分けされる場合もある。
そして、プライオリティの一番高い親機をマスターとした場合に、当該マスターとなった親機が何等かの原因によって送信信号を送信できないために、スレーブの親機がマスターの親機からの信号を受信できないとする。この場合、各スレーブの親機は、主装置にマスターの親機からの送信信号を受信できない事を通知する。そして、主装置1は、マスターを変えて、活性化の処理を行うことを配下のコードレス電話装置の親機に通知する。
この場合、主装置1の配下のコードレス電話装置の親機は、次にプライオリティの高い親機をマスターの親機としてマスターの動作を実行させる。残りの親機はスレーブの親機としてスレーブの動作を実行させる。これにより、マスターのコードレス電話装置が離脱しても各コードレス電話装置間で新たなマスターのコードレス電話装置を設定し直し、無線同期を取ることが可能となる。
なお、各コードレス電話装置の親機間においてフレーム同期を合わせ込んだ後においても、各親機の各々のクロック信号の誤差があるため、マスターに対して同期合わせの動作を継続させることが望ましい。また、一度同期合わせを行った後に、例えば、所定時間経過後に再度の同期合わせを行うようにしてもよい。どの位の時間をあけて同期合わせを行うのかは、例えば事前の実験により適切な時間間隔を求めておき、その時間間隔で同期合わせを行うように、主装置1から活性化の実効を指示する制御信号を送信するようにすればよい。
また、この第1に実施の形態では、主装置1に収容されるコードレス電話装置21〜2nは、DECT方式を採用したものとして説明したが、これに限るものではない。TDMA/TDD方式が採用されたコードレス電話装置を用いる場合にこの発明を適用できる。
[第2の実施の形態]
[無線通信システムの構成例;図8]
図8は、この発明による無線通信システムの第2の実施形態としての電話システム10Aの全体の構成例を示すブロック図である。この例の電話システム10Aは、図1を用いて説明した第1の実施の形態の電話システム10の場合と、基本的な構成は同じである。すなわち、この例の電話システム10Aにおいては、上位装置(通信制御装置)の例としての主装置1Aに対して、内線電話装置として、複数のコードレス電話装置21A、22A、・・・、2nA(nは2以上の整数。以下同じ)が接続されている。コードレス電話装置21A〜2nAのそれぞれは、コードレス通信装置の例であり、親機としてのベースセットBS1A、BS2A、・・・、BSnAのそれぞれと、子機としてのハンドセットHS1A、HS2A、・・・、HSnAのそれぞれとからなり、親機BS1A〜BSnAのそれぞれと、子機HS1A〜HSnAのそれぞれとは、無線接続される。
なお、親機BS1A〜BSnAのそれぞれに対しては、複数の子機を無線接続することも可能であるが、この例では、1台の親機に対して、1台の子機が接続される構成とされている。また、図示は省略するが、主装置1Aに接続される内線電話装置としては、コードレス電話装置21A、22A、・・・、2nAのみではなく、通常のビジネスホンと同様に、デジタルボタン電話端末も接続することも可能である。
そして、この実施形態では、コードレス電話装置21A〜2nAは、IP電話機であり、主装置1AとはLAN回線を通じて接続されている。また、コードレス電話装置21A〜2nAの親機BS1A〜BSnAのそれぞれと、子機HS1A〜HSnAのそれぞれとの間の無線接続は、前述したデジタルコードレス電話のDECT規格(方式)を用いたTDMA/TDD方式により行うようにしている。
主装置1Aは、1又は複数の電話回線L1〜Lm(mは1以上の整数)を収容可能である。そして、コードレス電話装置21A〜2nAのそれぞれの親機BS1A〜BSnAが、この主装置1Aに接続されている。図8の例では、親機BS1A〜BSnAと主装置1とは有線のLAN回線で接続されているが、無線のLAN回線であってもよい。
主装置1Aは、複数のコードレス電話装置21A〜2nAについての呼制御及び回線交換制御、その他のビジネスホンとしての制御を行う。コードレス電話装置21A〜2nAの親機BS1A〜BSnAのそれぞれは、DECT規格のデジタルコードレス電話の単位通信期間である1フレーム(10ミリ秒(ms))の周期の同期信号としてのフレーム同期信号を生成し、その生成したフレーム同期信号に基づいて、DECT規格を用いたTDMA/TDD方式の無線通信を子機HS1A〜HSnAとの間で実行する。
親機BS1A〜BSnAのそれぞれは、フレーム同期信号を生成し、その生成したフレーム同期信号に基づいて、子機HS1A〜HSnAとの間で、1フレーム期間の複数のスロットの内の一つを用いて無線通信を行うように制御する。
しかし、第1の実施の形態の電話システム10の場合と同様に、主装置1Aと各コードレス電話装置21A〜2nAの親機BS1A〜BSnAは、LAN接続されているために、高精度の同期信号の提供ができず、親機BS1A〜BSnA間において高精度の同期合わせができない。
また、第1の実施の形態で説明した発明の場合、マスターとされた親機からの送信信号を、スレーブとされた親機の全てが必ず受信可能な位置に配置されているとは限らない。このため、上述した第1の実施の形態の発明の場合、確実に全てのコードレス電話装置間で同期を合わせることができない場合があると考えられる。そこで、この第2の実施の形態の電話システムにおいては、マスターとなる親機を機動的に変えることにより、主装置1Aに収容されたコードレス電話装置21A〜2nAの全ての親機BS1A〜BSnA間において、フレーム同期を確実に合わせることができるようにしている。
具体的には、(1)前提条件として、各コードレス電話装置21A〜2nAの親機BS1A〜BSnAのEEPROM411Aには、同じグループを構成する他のコードレス電話装置の親機の識別ID(無線ID)登録されている。これにより、各親機BS1A〜BSnAは、同じグループを構成するコードレス電話装置の親機を判別することができるようになっている。また、各親機BS1A〜BSnAは、受信した他の親機からの送信信号から同じグループの親機の識別IDを検出したら、通知処理部414が主装置1Aに通知することができるようになっている。
(2)各コードレス電話装置21A〜2nAにおいては、電源がオンにされると、親機BS1A〜BSnAのキャリアセンス部4424が機能する。そして、自機において受信可能な1以上の親機からのそれぞれの送信信号から識別IDを抽出するとともに、電波強度(RSSI)を検出する処理であるスキャニング処理を行う。そして、同じグループに属する親機からの送信信号から抽出した識別IDと検知した電波強度とをスキャニング情報として通知処理部414が主装置1Aに通知する。
(3)主装置1Aは、管理テーブル部15において、配下のコードレス電話装置21A〜2nAの親機BS1A〜BSnAからのスキャニング処理により検出した同じグループの親機の識別IDと電波強度とからなるスキャニング情報を送信元ごとに管理する。管理テーブル部15は、例えば不揮発性メモリなどにより構成させるものである。(4)主装置1Aにおいては、後述する制御回路12Aが端末管理部として機能し、管理テーブル部15の格納情報に基づいて、マスターとなる親機を決定し、当該マスターとなる親機からの送信信号の受信が可能なスレーブとなる親機に対して、マスターとなる親機の識別IDを通知する。
(5)マスターとなる親機の識別IDが通知されたスレーブとなる親機においては、当該マスターとなる親機の識別IDが制御回路41Aの通知処理部414において把握され、これが同期制御部415に通知される。スレーブとされた親機の同期制御部415は、PLL部4423を制御するようにし、マスターとされた親機からの送信信号をリファレンス信号として用いて、自機からの送信信号の位相をマスターとされた親機からの送信信号に合わせ込むように機能する。PLL部4423の処理自体は、第1の実施の形態のPLL部4423と同じである。このようにして同期がとれたら、同期制御部415の制御の下、通知処理部414が機能して、同期が完了したことを同期情報として主装置1Aに通知する。
(6)スレーブとされた親機からの同期情報は、主装置1Aの管理テーブル部15で管理され、主装置1Aの制御回路12Aは、同期が完了している親機の識別IDを全ての親機に通知する。(7)主装置1Aが決定したマスターの親機からの送信信号が受信できなかったマスター以外の親機(スレーブとなった親機)は、通知された同期が完了しているスレーブとなった親機のうち、自機が受信可能な送信信号を送信している親機からの送信信号を用いて、同期合わせを行う。この同期合わせもまた、PLL部が機能して行われるが、その基本的な動作は、第1の実施の形態のPLL部4423の場合と同様である。
(8)同期が完了したスレーブの親機は、同期が完了したことを同期情報として主装置1Aに通知する。(9)主装置1Aは同期が未完了の親機が存在している場合には、同期が完了している親機の識別IDを全ての親機に通知する。(10)主装置1Aが決定したマスターの親機からの送信信号が受信できなかったマスター以外の親機(スレーブとなった親機)は、通知された同期が完了しているスレーブとなった親機のうち、自機が受信可能な送信信号を送信している親機からの送信信号を用いて、同期合わせを行う。(11)グループ全ての親機の同期合わせが完了したら、各親機は子機に対する電波の放射を開始する。
このように、この第2の実施の形態の電話システムの場合には、親機BS1A〜BSnAは、自機が受信可能な送信信号を送信している親機の識別IDと電波強度とを主装置1Aに通知する。主装置1Aは、各親機BS1A〜BSnAから送信されてきた電波情報に基づいて、同期の基準となるマスターとなる親機を決定し、当該マスターとなった親機からの送信信号の受信が可能な親機に対しては、当該マスターとなった親機との間で同期合わせを行うことを指示する。
これにより同期合わせを完了した親機は、同期合わせを完了したことを主装置1Aに通知し、主装置1Aは、同期を完了した親機の識別IDを同じグループの全ての親機に送信する。そして、同期合わせが完了していない親機は、自機が受信可能な送信信号を送信している同期合わせ完了済みの親機との間で同期合わせを行うことができる。このようにすることによって、マスターとされた親機からの送信信号を受信できない親機が存在していても、同じグループ内すべての親機間において、フレーム同期を合わせることができる。
[主装置1Aの構成例;図9]
図9は、第2の実施の形態の主装置1Aの構成例を示すブロック図である。第2の実施の形態の主装置1Aは、電話システム上においては第1の実施の形態の主装置1と同等の機能を実現するものである。このため図9に示した第2の実施の形態の主装置1Aの基本的な構成は、図2に示した第1の実施の形態の主装置1とほぼ同様のものである。このため、図9に示した第2の実施の形態の主装置1Aにおいて、図2に示した第1の実施の形態の主装置1と同様に構成される部分には同じ参照符号を付し、その部分の詳細な説明は重複するので省略する。
そして、図9に示した第2の実施の形態の主装置1Aと図2に示した第1の実施の形態の主装置1とを比較すると分かるように、図9に示した第2の実施の形態の主装置1Aの場合には、制御回路12Aに対して管理テーブル部15が設けられている点で異なっている。管理テーブル部15は、配下の親機BS1A〜BSnAからのスキャニング情報を管理する。また、管理テーブル部15は、配下の親機BS1A〜BSnAからの同期合わせが完了したか否かを示す同期情報を管理する。
図11は、管理テーブル部15の格納データの例を説明するための図である。図11に示すように、管理テーブル部15では、通知元となる親機BS1A〜BSnAごとに、受信信号から検知した同じグループの他の親機の識別IDと電波強度(RSSI)とからなるスキャニング情報が管理される。また、管理テーブル部15では、通知元となる親機BS1A〜BSnAごとに、同期合わせ処理が完了したか否かを示す同期情報が管理される。この例において、同期情報が「1」の場合には同期合わせ完了(同期あわせ済み)、「0」の場合には同期合わせ未完了を示している。
そして、制御回路12Aは、配下の親機BS1A〜BSnAからのスキャニング情報や同期情報を管理テーブル部15に記録する処理を行う。また、制御回路12Aは、管理テーブルの情報に基づいて、マスターとなる親機の選定を行って、マスターとして選定した親機の識別IDをスレーブとなる親機に通知する処理を行う。また、制御回路12Aは、同期情報に基づき、同期合わせが未完了の親機が存在している場合には、同期合わせが未完了である親機を含むグループを構成する全ての親機に対して、同期合わせが完了した親機の識別IDを通知する処理を行う。
なお、マスターとなる親機の選定にあたっては、管理テーブル部15で管理されている電波強度も考慮する。簡単には、電波強度(RSSI)が高い送信信号の送信先の親機をマスターとして選定する。同期合わせを適切に行えるためである。このように、第2の実施の形態の主装置1Aは、制御回路12Aの機能と、管理テーブル部15を備えている点において、第1の実施の形態の主装置1とは異なっている。
[コードレス電話装置21A〜2nAの構成例]
複数個のコードレス電話装置21A〜2nAの親機BS1A〜BSnA及び子機HS1A〜HSnAのそれぞれは、全て同じ構成を備える。そこで、以下の説明では、コードレス電話装置21Aの親機BS1Aの場合を例にとって、親機構成例を説明する。なお、この第2の実施の形態において、子機HS1A〜HSnAの構成は、第1の実施の形態の子機HS1〜HSnと同じであるため、その詳細な説明については重複するので省略する。
<親機の構成例;図10>
図10は、第2の実施の形態の親機BS1Aの構成例を示すブロック図である。第2の実施の形態の親機BS1Aは、電話システム上においては第1の実施の形態の親機BS1と同等の機能を実現するものである。このため図10に示した第2の実施の形態の親機BS1Aの基本的な構成は、図3に示した第1の実施の形態の親機BS1とほぼ同様のものである。このため、図10に示した第2の実施の形態の親機BS1Aにおいて、図3に示した第1の実施の形態の親機BS1と同様に構成される部分には同じ参照符号を付し、その部分の詳細な説明は重複するので省略する。
そして、図10に示した第2の実施の形態の親機BS1Aと図3に示した第1の実施の形態の親機BS1とを比較すると分かるように、図10に示した第2の実施の形態の親機BS1Aの場合には、制御回路41Aと無線通信回路44AのTDMA変復調部442Aの構成が異なっている。
すなわち、第2の実施の形態の親機BS1Aの制御回路41Aは、EEPROM411Aと、通知処理部414と、同期制御部415とを備えた構成になっている。また、無線通信回路44AのTDMA変復調部442Aは、ジェネレータ4421とPLL部4423に加えて、キャリアセンス部4424を備えた構成になっている。
制御回路41AのEEPROM411Aは、グループ内親機テーブルとスキャニング情報テーブルとが格納される。図12は、グループ内親機テーブルの格納データの例とスキャニング情報テーブルの格納データの例を説明するための図である。図12(A)に示すように、EEPROM411Aのグループ内親機テーブルには、自機と同じグループに属する他の親機の識別ID(無線ID)が予め格納されている。これにより、親機BS1Aは、自機が属するグループの他の親機からの送信信号を判別できるようになる。また、図12(B)に示すように、スキャニング情報テーブルには、TDMA変復調部442Aのキャリアセンス部4424からのスキャニング情報が一時記憶される。スキャニング情報は、自機が受信した同じグループに属する他の親機からの送信信号から抽出した親機の識別情報と、その送信信号の自機における検出した電波強度とからなるものである。
この第2の実施の形態の親機BS1Aの電源がオンにされると制御回路41の同期制御部415が機能し、無線通信回路44Aの制御部441を通じてキャリアセンス部4424を機能させる。キャリアセンス部4424は、無線通信部443を通じて受信した信号から識別IDを抽出するとともに、電波強度(RSSI)を検出し、これらをスキャニング情報として制御部441を通じて制御回路41Aに通知する。すなわち、キャリアセンス部4424は、自機が受信可能な1以上の親機からのそれぞれの送信信号から識別IDを抽出するとともに、その送信信号の電波強度(RSSI)を検出する処理であるスキャニング処理を行う。
そして、制御回路41Aにおいては、キャリアセンス部4424からのスキャニング情報を、図12(B)に示した態様で、EEPROM411Aのスキャニング情報テーブルに一時記憶する。このスキャニング情報は、電源が投入されるごとにクリア(初期化)される。
通知処理部414は、無線通信回路44Aの制御部441を通じて通知されたスキャニング情報の内、自機が属するグループの他の親機についてのスキャニング情報を、主装置1Aに通知する処理を行う。このスキャニング情報は、EEPROM411Aに一時記憶された情報である。すなわち、通知処理部414が主装置1Aに通知するスキャニング情報は、親機BS1Aが受信した同じグループに属する他の親機からの送信信号に含まれる当該他の親機の識別IDと、当該送信信号の自機における電波強度(RSSI)からなる情報である。このスキャニング情報が、上述した主装置1Aの管理テーブル部15において、図11に示した態様で管理される。
この後、主装置1Aにおいては、上述したように、図11を用いて説明した管理テーブル部15で管理されている情報に基づいて、マスターとなる親機を決定し、当該マスターとなる親機からの送信信号の受信が可能なスレーブとなる親機に対して、マスターとなる親機の識別IDが通知される。また、図11を用いて説明した管理テーブル部15で管理されている情報に基づいて、同期合わせ未完了の親機がある場合には、同期合わせが完了した同じグループに属する親機の識別IDが、同じグループに属する全ての親機に通知される。これらの通知は、親機BS1Aの通知処理部414により抽出され、同期制御部415に通知される。
そして、親機BS1Aが、マスターとなる親機の識別情報が通知され、自機がスレーブとなる親機であるものとする。この場合、親機BS1Aの同期制御部415は、無線通信回路44の制御部441を通じてPLL部4423を制御し、PLL動作を開始させ、マスターとされた親機との間で同期合わせを行うようにする。すなわち、PLL部4423は、自機において受信しているマスターとされた親機からの送信信号をリファレンス信号として用い、自機からの送信信号の位相をマスターとされた親機からの送信信号に合わせ込むようにするPLL処理を開始させる。
第2の実施の形態の親機BS1Aにおいても、PLL部4423の動作は、第1の実施の形態のPLL部4423と同じである。このようにしてマスターとされた親機との間でフレーム同期が取れると、PLL部4423は、同期合わせが完了したことを、制御部441を通じて、制御回路41Aの同期制御部415に通知してくる。このため、同期制御部415の制御の下、通知処理部414が機能して、自機において同期合わせが完了したことを同期情報として主装置1Aに通知する。
また、親機BS1Aが、同期合わせが完了した親機の識別IDの通知を受けた場合であって、自機において同期合わせが未完了であるとする。この場合、親機BS1Aの同期制御部415は、無線通信回路44の制御部441を通じてPLL部4423を制御し、PLL動作を開始させ、同期合わせが完了した親機との間で同期合わせを行うようにする。具体的には、同期合わせが完了したとして通知された識別IDを有する親機からの送信信号を受信してこれをリファレンス信号として用い、自機からの送信信号の位相を同期合わせが完了している当該親機からの送信信号に合わせ込むようにするPLL処理を開始させる。
このようにしてマスターとされた親機との間でフレーム同期が取れると、PLL部4423は、同期合わせが完了したことを、制御部441を通じて、制御回路41Aの同期制御部415に通知してくる。このため、同期制御部415の制御の下、通知処理部414が機能して、自機において同期合わせが完了したことを同期情報として主装置1Aに通知する。
そして、他の親機BS2A〜BSnAも同様に機能する。そして、同期合わせが未完了の親機が存在しなくなるまで、同期合わせが完了した親機の識別IDの通知と、同期合わせが未完了の親機における同期合わせが完了した親機からの送信信号を用いた同期合わせ処理が繰り返される。これにより、同じグループに属する全ての親機の同期合わせを行うことができるようにされる。
[第2の実施の形態の電話システム10Aにおける同期合わせの詳細]
次に、この第2の実施の形態の電話システム10Aにおいて行われる同期合わせ処理の詳細について具体的に説明する。ここでは、主装置1Aに対して、6台のコードレス電話装置21A〜26Aが接続されて電話システム10Aを構成しているものとして説明する。そして、上述もしたように、コードレス電話装置21Aは親機BS1A及び子機HS1Aからなり、コードレス電話装置22Aは親機BS2A及び子機HS2Aからなる。また、コードレス電話装置23Aは親機BS3A及び子機HS3Aからなり、コードレス電話装置24Aは親機BS4A及び子機HS4Aからなる。また、コードレス電話装置25Aは親機BS5A及び子機HS5Aからなり、コードレス電話装置26Aは親機BS6A及び子機HS6Aからなる。
図13は、この第2の実施の形態の電話システム10Aを構成するコードレス電話装置21A〜26Aの配置関係を示す図である。図13に示すように、親機BS1A〜BS6Aのそれぞれが離れて配置された状態にある。そして、点線の円で示したように、親機BS1Aからの送信信号を受信できるのは、親機BS2Aと親機BS6Aであるとする。すなわち、親機BS1Aは、親機BS6Aと親機BS2Aからの送信信号を受信可能な位置関係になっている。
同様にして、各親機について各親機からの送信信号の受信状態を確認したところ、親機BS2Aは、親機BS1Aと親機BS3Aからの送信信号を受信可能な位置関係になっている。また、親機BS3Aは、親機BS2Aと親機BS4Aからの送信信号を受信可能な位置関係になっており、親機BS4Aは、親機BS3Aと親機BS5Aからの送信信号を受信可能な位置関係になっている。また、親機BS5Aは、親機BS4Aと親機BS6Aからの送信信号を受信可能な位置関係になっており、親機BS6Aは、親機BS5Aと親機BS1Aからの送信信号を受信可能な位置関係になっている。したがって、各親機BS1A〜BS6Aのそれぞれは、上述したように、図13においた両隣に位置する親機からの送信信号しか受信できない位置関係にあるとする。
この場合に、この第2の実施の形態の電話システム10Aにおいて、無線による同期合わせを行うようにすると、図14、図15のシーケンス図に示すように動作することになる。すなわち、図14、図15は、この第2の実施の形態の電話システム10Aにおいて、同期合わせを行う場合の処理を説明するためのシーケンス図である。
コードレス電話装置21A〜26Aの親機BS1A〜BS6Aのそれぞれにおいて電源が投入されると、親機BS1A〜BS6Aのそれぞれは主に子機への電波の放射を開始する(ステップS20)。親機BS1A〜BS6Aのそれぞれでは、上述もしたように、同期制御部415の制御の下、キャリアセンス部4424が機能し、スキャニング処理を実行してスキャニング情報を検出し、そのスキャニング情報を通知処理部414が主装置1Aに通知する(ステップS21〜S26)。
これにより、主装置1Aの端末管理部としての制御回路12Aが、管理テーブル部15に、親機ごとにスキャニング情報を格納して、図11に示した管理テーブルを作成する。図11に示した管理テーブル部の格納データの例は、図13に示した位置関係にある場合の各親機からのスキャニング情報に合致したものである。そして、制御回路12は、図11に示した態様の管理テーブル部15の格納データを参照し、マスターとなる親機を選択する。
図11に示した管理テーブル部15の格納データを見ると分かるように、各親機BS1A〜BS6Aのそれぞれからの送信信号は、隣り合う2つの親機において受信可能になっている。そして、親機BS1Aからの送信信号の電波強度が、親機BS2AとBS6Aで高かったとする。この場合、主装置1の制御回路12は、親機BS1Aをマスターとして選択し、親機BS1Aからの送信信号の受信が可能な親機BS2A、BS6Aをスレーブとして選択する(ステップS27)。
この後、主装置1Aの制御回路12は、マスターとして選択した親機BS1Aと、スレーブとして選択した親機BS2A、BS6Aに対して、親機BS1Aをマスターに選択したこと、すなわち、親機BS1Aの識別IDを通知する(ステップS28)。マスターとして選択された親機BS1Aの識別IDの提供を受けた親機BS2Aでは、同期制御部415の制御の下、PLL部4423が機能し、マスターとして選択された親機BS1Aからの送信信号に対して、自機からの送信信号の同期を合わせる処理を行う(ステップS29)。
そして、親機BS2Aにおいて、フレーム同期がマスターとして選択された親機BS1Aのフレーム同期に合うと、PLL部4423から制御部441を経由して、同期が合ったことが制御回路41Aに通知される。このため、制御回路41Aの同期制御部415は、通知処理部414を通じて、親機BS2Aにおいて同期合わせが完了したことを示す同期情報を主装置1Aに通知する(ステップS30)。これにより、主装置1Aの制御回路12は、管理テーブル部15の親機BS2Aの同期情報の欄に値「1」を更新し、親機BS2Aにおいて同期合わせが完了したことが示される。
同様に、マスターとして選択された親機BS1Aの識別IDの提供を受けた親機BS6Aでは、同期制御部415の制御の下、PLL部4423が機能し、マスターとして選択された親機BS1Aからの送信信号に対して、自機からの送信信号の同期を合わせる処理を行う(ステップS31)。
そして、親機BS6Aにおいて、フレーム同期がマスターとして選択された親機BS1Aのフレーム同期に合うと、PLL部4423から制御部441を経由して、同期が合ったことが制御回路41Aに通知される。このため、制御回路41Aの同期制御部415は、通知処理部414を通じて、親機BS6Aにおいて同期合わせが完了したことを示す同期情報を主装置1Aに通知する(ステップS32)。これにより、主装置1Aの制御回路12Aは、管理テーブル部15の親機BS6Aの同期情報の欄に値「1」を更新し、親機2Aにおいて同期合わせが完了したことが示される。
この後、図15に示す処理に進み、主装置1Aの制御回路12Aは、親機BS2A、BS6Aにおいて同期が完了したことを示す同期通知(親機BS2A、BS6Aの識別ID)を、同じグループに属する全ての親機BS1A〜BS6Aに通知する(ステップS33)。そして、同期合わせが完了していない親機BS3Aにおいては、親機BS2Aと親機BS6Aが同期合わせを完了させたことを示す通知を受けることにより、同期制御部415の制御の下、PLL部4423が機能し、同期合わせが完了した親機であって、自機において送信信号の受信が可能な親機BS2Aからの送信信号に対して、自機からの送信信号の同期を合わせる処理を行う(ステップS34)。
そして、親機BS3Aにおいて、同期合わせが完了すると、PLL部4423から制御部441を経由して、同期が合ったことが制御回路41Aに通知される。このため、制御回路41Aの同期制御部415は、通知処理部414を通じて、親機BS3Aにおいて同期合わせが完了したことを示す同期情報を主装置1Aに通知する(ステップS35)。これにより、主装置1Aの制御回路12は、管理テーブル部15の親機BS3Aの同期情報の欄に値「1」を更新し、親機BS3Aにおいて同期合わせが完了したことが管理される。
この後、主装置1Aの制御回路12Aは、親機BS3Aにおいて、同期が完了したことを示す同期通知(親機BS3Aの識別ID)を、同じグループに属する全ての親機BS1A〜BS6Aに通知する(ステップS33)。同様に、同期合わせが完了していない親機BS4Aにおいては、親機BS2A、BS6Aに加えて、親機BS3Aが同期合わせを完了させたことを示す通知を受けることにより、同期制御部415の制御の下、PLL部4423が機能し、同期合わせが完了した親機であって、自機において送信信号の受信が可能な親機BS3Aからの送信信号に対して、自機からの送信信号の同期を合わせる処理を行う(ステップS36)。
そして、親機BS4Aにおいて、同期合わせが完了すると、PLL部4423から制御部441を経由して、同期が合ったことが制御回路41Aに通知する。このため、制御回路41Aの同期制御部415は、通知処理部414を通じて、親機BS4Aにおいて同期合わせが完了したことを示す同期情報を主装置1Aに通知する(ステップS37)。これにより、主装置1Aの制御回路12は、管理テーブル部15の親機BS4Aの同期情報の欄に値「1」を更新し、親機BS4Aにおいて同期合わせが完了したことが管理される。
この後、主装置1Aの制御回路12Aは、親機BS4Aにおいて、同期が完了したことを示す同期通知(親機BS4Aの識別ID)を、同じグループに属する全ての親機BS1A〜BS6Aに通知する(ステップS33)。同様に、同期合わせが完了していない親機BS5Aにおいては、親機BS2A、BS6A、BS3Aに加えて、親機BS4Aが同期合わせを完了させたことを示す通知を受ける。親機BS5Aは、送信信号の受信が可能な親機BS6Aにおいて同期合わせが完了したことが通知されている。このため、親機BS5Aは、同期制御部415の制御の下、PLL部4423が機能し、同期合わせが完了した親機であって、自機において送信信号の受信が可能な親機BS6Aからの送信信号に対して、自機からの送信信号の同期を合わせる処理を行う(ステップS38)。
そして、親機BS5Aにおいて、同期合わせが完了すると、PLL部4423から制御部441を経由して、同期が合ったことが制御回路41Aに通知する。このため、制御回路41Aの同期制御部415は、通知処理部414を通じて、親機BS5Aにおいて同期合わせが完了したことを示す同期情報を主装置1Aに通知する(ステップS39)。これにより、主装置1Aの制御回路12は、管理テーブル部15の親機BS5Aの同期情報の欄に値「1」を更新し、親機BS5Aにおいて同期合わせが完了したことが管理される。
これにより、主装置1Aにおいては、親機BS1A〜BS6Aの全ておいて同期合わせが完了できたことが、管理テーブル部15の管理情報により把握できるので、主装置1Aに収容された全ての親機BS1A〜BS6Aにおいて、同期合わせが完了し、(ステップS40)、自機に対応する子機HS1A〜HS6Aとの間で適切に無線通信を行うことができるようになる。
したがって、主装置1Aの配下の全てのコードレス電話装置21A〜2nAの親機BS1A〜BSnAにおいて、マスターとして選択された親機からの送信信号を受信でき親機が存在したとする。この場合でも、この第2の実施の形態の電話システム10Aにおいては、近隣の同期合わせが完了した親機からの送信信号をリファレンス信号として用いて、確実かつ迅速に同期合わせを行うことができる。
[第2の実施の形態の変形例]
この第2の実施の形態の電話システムの主装置1Aにおいては、管理テーブル部15の格納情報に基づいて、各親機から送信されてきたスキャニング情報に基づいて、より多くの親機において受信された送信信号を送信している親機をマスターとして選択する。また、この場合に、電波強度を考慮し、より多くの親機において受信された所定の閾値以上の電波強度の送信信号を送信している親機をマスターとして選択することも可能である。
また、予め各親機について、マスターとして選択される場合のプライオリティ(優先順位)を設定したテーブルを用意しておき、このテーブルのプライオリティにしたがって、マスターとなる親機を選択する構成としてもよい。
また、第2の実施の形態の電話システム10Aの場合、同期合わせが完了した親機からの送信信号を用いて、同期合わせを行う場合、図11に示した管理テーブル部15の格納データに基づいて、主装置1Aが同期合わせ未完了の親機に対して、どの親機との間で同期合わせを行うようにすればよいかを指示することもできる。また、図12(B)に示したスキャニング情報テーブルの情報に基づいて、同期合わせ未完了の親機が、どの親機との間で同期合わせを行うようにすればよいかを特定することもできる。
なお、この第2に実施の形態では、主装置1Aに収容されるコードレス電話装置21A〜2nAは、DECT方式を採用したものとして説明したが、これに限るものではない。TDMA/TDD方式が採用されたコードレス電話装置を用いる場合にこの発明を適用できる。
また、上述した第1、第2の実施の形態では、親機の主要部分TDMA変復調部442、442Aや制御回路41、41Aに設けるようにしたが、別途、同期合わせ処理を行う回路部を親機内に独立して設けるようにする等、種々の変更が可能である。
[その他]
上述した実施の形態の説明からも分かるように、上位装置の機能は、主装置1、1Aが実現し、コードレス電話装置の機能は、コードレス電話装置21〜2n、21A〜2nAが実現している。
そして、親機の受信手段、送信手段は、親機BS1〜BSn、BS1A〜BSnAの無線通信部443が実現し、親機の同期取得手段の機能は、親機BS1〜BSn、BS1A〜BSnAのPLL部4423が実現している。また、親機の制御手段の機能は、親機BS1〜BSnの制御回路41や制御部441が協働して、また、親機BS1A〜BSnAの同期制御部415や制御部441が協働して実現している。
また、親機の記憶手段の機能は、親機BS1〜BSnのEEPROM411や親機BS1A〜BSnAのEEPROM411Aが実現している。親機の抽出手段の機能は、親機BS1〜BSnの一致検出部4422や親機BS1A〜BSnAのキャリアセンス部4424などが実現している。また、親機の通知手段、取得手段、同期情報通知手段、同期取得済み識別情報取得手段の機能は、親機BS1A〜BSnAの主に通知処理部414が実現している。
また、上位装置の受付手段、提供手段、同期情報受付手段、同期情報提供手段の各機能は、主装置1Aの制御回路12及び回線LSI部13が協働して実現している。また、上位装置の対応付け情報管理手段の機能は、管理テーブル部15が実現し、選択手段の機能は、主に制御回路12が実現している。
また、図7のシーケンス図や図14、図15のシーケンス図を用いて説明した方法が、この発明の無線同期方法の一実施の形態に対応している。また、図7のシーケンス図や図14、図15のシーケンス図を用いて説明した主装置1、1A、親機BS1〜BSn、BS1A〜BSnAで行われる処理を実行するプログラムを形成し、主装置1、1A、親機BS1〜BSn、BS1A〜BSnAで実行可能にすることによって、この発明の親機や上位装置を構成することもできる。