JP6458285B2 - デバイスの製造方法 - Google Patents

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本発明は、ガラス基材の表面に金属皮膜パターンが形成されたデバイスの製造方法に関する。
家電や輸送機器などの製品に用いられる回路の基材として、従来、紙フェノール基材、紙エポキシ基材、ガラスエポキシ基材、セラミック基材などが用いられている。これらの基材は、電気的特性、機械的特性、価格がそれぞれ異なるため、製品に求められる性能やコストに応じて使い分けられている。現在、回路の基板としてガラス基材が注目されていて、ガラス基板の表面に金属皮膜を形成する試みがなされている。ガラス基材は、従来用いられている基材に比べて、優れた熱安定性を有し、しかも安価であるという利点がある。
近年、基板の表面に金属皮膜を形成させる方法において、コールドスプレー法という新しい技術が用いられている(例えば特許文献1)。コールドスプレー法は、金属材料の融点以下に加熱したガスを音速付近まで加速し、そのガスにより金属材料を基材に吹き付ける成膜方法である。ガスの温度が比較的低いため、溶射方法に比べて基材に与えるダメージが少ないとされている。
特許文献2には、ガラス基板の表面にコールドスプレー法により導電性金属粒子を堆積させて金属配線を形成する方法が記載されている。特許文献2における手順の一例は以下の(a)〜(e)の通りである。
(a)ガラス基材の表面に金属配線パターンに対応したレジストマスクを形成する。(b)レジストマスクの開口部に対してブラスト加工を行ってガラス基材に凹部を形成する。(c)レジストマスクを残した状態でPVD(Physical Vapor Deposition)法により、凹部に中間膜を形成する。(d)レジストマスクを残した状態でコールドスプレー法により、上記中間膜上に導電性金属粒子を堆積させる。(e)レジストマスクを剥がす。このように、特許文献2に記載の製造方法は、極めて煩雑であるとともに、回路パターン形成のためにはレジストマスクを使用しなければならなかった。
特開2010−111905号公報 特開2010−129934号公報
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、ガラス基材の表面に金属皮膜パターンが形成されたデバイスを、簡易に製造することができる方法を提供することを目的とするものである。
上記課題は、ガラス基材の表面に金属皮膜パターンが形成されたデバイスの製造方法であって、前記ガラス基材の表面の一部の領域にパルスレーザーを照射する第1工程と、前記ガラス基材の表面にコールドスプレー法により金属粒子を衝突させ、前記パルスレーザーを照射した領域にのみ選択的に金属皮膜を形成する第2工程とを備えることを特徴とするデバイスの製造方法を提供することによって解決される。
このとき、前記パルスレーザーのパルス幅が1×10−18〜1×10−4秒であることが好ましい。また前記金属粒子が、銅、スズ、金、銀、鉄、ニッケル、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、インジウム、亜鉛、アルミニウム、タングステン、クロム、マグネシウム、チタン、シリコン又はこれらの合金からなる群から選択される少なくとも1種の粒子であることも好ましい。
前記第2工程の後に、電気めっき又は無電解めっきを行うことにより、前記金属皮膜の表面にめっき皮膜を形成する第3工程をさらに備えることも好ましい。
本発明によれば、ガラス基材の表面に金属皮膜パターンが形成されたデバイスを簡易に製造することができる方法を提供することができる。
レーザーの照射パターンの一例を示した図である。 実施例1における試料を、マイクロスコープを用いて撮影した画像である。 実施例1における試料(めっき後)を、マイクロスコープを用いて撮影した画像である。 実施例2における試料を、マイクロスコープを用いて撮影した画像である。
本発明は、ガラス基材の表面に金属皮膜パターンが形成されたデバイスの製造方法に関する。本発明の製造方法は、以下の第1工程及び第2工程を備える。
第1工程において、パルスレーザーをガラス基材の表面の一部に照射する。第1工程で用いられるガラス基材の種類は特に限定されず、ソーダライムガラス、ホウケイ酸ガラス、石英ガラスなどが挙げられる。これらのガラス基材は、得られるデバイスの用途に応じて適宜選択できる。コストを重視する場合には、ソーダライムガラスが好適である。熱安定性を重視する場合には、石英ガラスやホウケイ酸ガラスが好適であり、石英ガラスがより好適である。ガラス基材に含まれる不純物の量が少ないことを重視する場合には、石英ガラスやホウケイ酸ガラスが好適であり、石英ガラスがより好適である。ガラス基材の厚さは特に限定されないが通常0.02〜5mmである。形状も特に限定されない。また、熱処理により機械的強度を向上させたガラス基材を用いることもできる。
本発明では、パルスレーザーを用いることが重要である。パルスレーザーを用いると、ガラスのような透明基材であっても多光子吸収を起こさせることが可能になる。多光子吸収は、レーザーのピークパワー(W)が大きいほど起こりやすくなる。同じエネルギーであればピークパワー(W)はパルス幅が短くなるほど大きくなるため、パルス幅は短い方が好ましい。かかる観点から、パルスレーザーのパルス幅(秒)は、1×10−4秒以下であることが好ましく、1×10−7秒以下であることがより好ましく、1×10−9秒以下であることがさらに好ましく、1×10−10秒以下であることが特に好ましい。このように、パルス幅を極めて短くすることでレーザーのピークパワーを非常に高くすることができ、多光子吸収を起こさせることができる。パルスレーザーのパルス幅の下限値は特に限定されないが通常1×10−18秒以上であり、好適には、1×10−15秒以上である。そして、レーザーの加工点(焦点)がガラス基材の表面になるように設定すれば、ガラス基材の表面を加工することが可能になる。
加工点での平均出力が0.01〜1000Wであることが好ましい。加工点での平均出力が0.01W未満の場合、密着性の良好なめっき皮膜を得ることができないおそれがある。一方、加工点での平均出力が1000Wを超える場合、ガラス基材へのダメージが大きくなる。パルスレーザーの繰り返し周波数は特に限定されないが通常、1kHz〜1000MHzである。
レーザーの種類も特に限定されず、YAGレーザー、ファイバーレーザー、半導体レーザーなどの固体レーザー;炭酸ガスレーザー、エキシマレーザーなどの気体レーザーを用いることができる。パルスレーザーの波長は特に限定されず、用いるガラス基材の種類などにより適宜設定することができ、通常は100〜12000nmである。パルス発振が容易である観点から、YAGレーザーが好ましく、ネオジムYAGレーザーがより好ましい。ネオジムYAGレーザーでは、基本波(第1高調波)と呼ばれる1064nmのレーザー光が発生する。波長変換装置を用いることにより、第2高調波と呼ばれる波長532nmのレーザー光、第3高調波と呼ばれる波長355nmのレーザー光、第4高調波と呼ばれる266nmのレーザー光を得ることができる。本発明の製造方法では上記第1〜4高調波を目的に応じて適宜選択できる。
そして、パルスレーザーをガラス基材の表面の一部に照射する。ガラス基材へのパルスレーザーの照射方法は特に限定されないが、例えば図1に示す方法が挙げられる。図1はパルスレーザーの照射方法の一例を示した図である。図1に示すように、ガラス基材の表面に照射エリアを設定する。後の工程において、パルスレーザーを照射した領域、すなわち、この照射エリアにのみ選択的に金属皮膜が形成されることになる。そして、Stで示されているポイントからx方向(図1において右方向)に所定の走査速度でレーザーを照射した後、y方向(図1において上方向)に所定間隔レーザーを移動させて、−x方向(図1において左方向)に所定の走査速度でレーザーを照射した後、再びy方向に所定間隔レーザーを移動させる。照射スポット径はレーザーのビーム径に対応するが、照射スポットは相互に重なる必要はなく、照射スポットの間に間隔があってもかまわない。この方法において、走査速度及び間隔(ピッチ間隔)を適宜調節することにより、単位面積当たりのレーザー照射量を調節することができる。
第2工程において、前記ガラス基材の表面にコールドスプレー法により金属粒子を衝突させ、前記パルスレーザーを照射した領域にのみ選択的に金属皮膜を形成する。このとき、金属皮膜の密着性をより向上させるための表面処理を、ガラス基材に対して予め行っていてもよい。
第2工程におけるコールドスプレー法とは、金属粒子の融点以下に加熱した作動ガスを音速まで加速させ、その作動ガスにより金属粒子をガラス基材に吹き付ける方法である。コールドスプレー装置は特に限定されず市販されている装置を用いることができる。一般的なコールドスプレー装置では、ノズル入口の温度、ノズル入口の圧力、ノズル入口の作動ガスの流量などを調節することができるようになっている。
前記金属粒子が、銅(Cu)、スズ(Sn)、金(Au)、銀(Ag)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、インジウム(In)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、クロム(Cr)、マグネシウム(Mg)、チタン(Ti)、シリコン(Si)又はこれらの合金からなる群から選択される少なくとも1種の粒子であることが好ましい。ここで、上記合金は、これらの少なくとも1種の金属元素を50質量%以上含有する合金のことをいう。金属粒子には、本発明の効果が阻害されない範囲において、金属以外のものが含まれていてもかまわない。金属粒子の平均粒径は特に限定されないが通常、1〜500μmである。平均粒径とは、重量累積粒度分布の50%径に相当する値のことをいう。
作動ガスの種類としては、窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスや空気が挙げられる。このとき、作動ガスに還元性の高いガス(水素ガスなど)を微量含ませることもできる。
上記作動ガスは加圧される。このときの圧力は、ノズル入口の圧力で通常0.12〜5MPa(1.2〜50bar)である。作動ガスの流量は、ノズル入口のガス流量で通常10〜5000L/minである。作動ガスの温度は、用いる金属粒子の融点以下の温度であれば特に限定されず、用いる金属粒子によって適宜調整できるが、ノズル入口の温度で通常25〜1000℃である。これらの値は、ノズル出口のガスの流速が、処理を行う環境下(ガラス基材が設置される環境下)で音速以上の速度になるように適宜設定する。またコールドスプレー処理される際、ガラス基材が設置される環境は常圧下でもよいし、減圧下でもよい。
本発明の製造方法においては、前記第2工程の後に、電気めっき又は無電解めっきを行うことにより、前記金属皮膜の表面にめっき皮膜を形成する第3工程をさらに備えることできる。このとき、めっき皮膜としては、ニッケル、銅、銀、金、パラジウム、白金、ロジウム、ルテニウム、スズ、鉄、コバルト又はこれらの合金からなるめっき皮膜が挙げられる。ここで、上記合金は、これらの少なくとも1種の金属元素を50質量%以上含有する合金のことをいう。めっきの種類を変えてこの工程を複数回行ってもよい。
第3工程の後に、さらに金属ペーストを塗布してもかまわない。
本発明の製造方法によれば、ガラス基材の表面に金属皮膜パターンが形成されたデバイスを簡易に製造することができる。本発明の製造方法によって得られたデバイスの用途は様々である。本発明の製造方法によって得られたデバイスをそのまま電子回路として用いることができる。
以下、実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[レーザー照射]
(ガラス基材)
ガラス基材として76mm×横26mm×厚さ1.1mmのソーダライムガラス(「松波スライドグラス S7213」)を用意した。
(加工方法)
コヒレント・ジャパン株式会社製のパルス発振全固体レーザー「Talisker HE」を用いた。
波長:355nm
平均出力:2W
加工点での平均出力:0.8W
パルス幅:20ピコ秒
周波数:50kHz
図1に示す方法により、ガラス基材にパルスレーザーを照射した。具体的には、ガラス基材の表面に10mm×0.2mmの照射エリアを設定した。この照射エリアにおいて、Stで示されているポイントからx方向に走査速度100mm/秒で照射エリアの右端までパルスレーザーを照射した。そして、パルスレーザーをy方向に15μm移動させて、−x方向に走査速度100mm/秒で照射エリアの左端までパルスレーザーを照射した。これを繰り返すことにより、上記照射エリア全体にパルスレーザーを照射した。
パルスレーザー照射後、ガラス基材の表面を顕微鏡で観察したところ、図1に示されるように、スポット(凹部)が連なったように加工されていることがわかった。1つのスポット径を測定したところ、スポット径は約15μmであった。
[コールドスプレー]
レーザー照射されたガラス基材の表面全体にCu粒子を吹き付けて試料を得た。具体的には、レーザー照射されたガラス基材を垂直に立てて固定して、一定の距離を保ってスプレーガンでCu粒子を吹き付けた。そして、スプレーガンを50mm/sの速度で垂直方向に移動させた後、水平方向に3mm移動させる操作を繰り返しながらガラス基材の表面全体にCu粒子を吹き付けた。装置及び吹きつけ条件で以下の通りである。
(吹きつけ条件)
装置:Medicoat社製のコールドスプレー装置「ACGS(Advanced Cold Gas System)」
粒子材料:Cu粒子
平均粒子径:45μm
粒子搬送速度:100出力%
キャリアガス:窒素
ノズル入口の圧力:8.5bar
ノズル入口のガス流量:290L/min
噴射ノズル−基材管距離:10mm
噴射ノズル角度:90°
噴射ノズル径:5mm
ノズル入口の温度:500℃
得られた試料の表面をマイクロスコープで観察した。表面の写真を図2に示す。図2の1はガラス基材であり、2はCu皮膜である。図2に示されるように、パルスレーザーを照射した領域にCu皮膜が形成された。このCu皮膜はセロハンテープで剥がすことができなかった。パルスレーザーを照射していない領域にもわずかにCu粒子が付着していたが、このCu粒子は刷毛で簡単に取り除くことができた。
[無電解めっき]
(脱脂処理)
Cu皮膜が形成されたガラス基材を、ユケン工業株式会社製の脱脂剤「パクナTHE−210」を50g/Lの濃度で溶解した50℃の水溶液に浸漬して脱脂処理を行った。脱脂処理されたガラス基材をイオン交換水で3回水洗した後、硫酸水溶液(濃度:100mL/L)に60秒間浸漬し酸洗浄した。引き続き、再度、3回水洗した。
(触媒付与)
脱脂処理されたガラス基材を、下記の組成の液に10秒間浸漬させた後、3回水洗した。
・上村工業社株式会社製「KAT−450」:100mL/L
・98%硫酸:10mL/L
(無電解Niめっき処理)
ガラス基材を、75℃に保温したpH4.4の無電解Niめっき液に7分間浸漬させて、無電解Niめっき処理をして、ガラス基材の表面に膜厚1μmの無電解Niめっき層を形成した。その後、ガラス基材をイオン交換水で3回洗浄した。無電解Niめっき液の組成は下記の通りである。
・日本エレクトロプレイティング・エンジニヤース株式会社(EEJA)製「ELN240 M2」:150mL/L
・日本エレクトロプレイティング・エンジニヤース株式会社(EEJA)製「ELN240 M1」:50mL/L
・日本エレクトロプレイティング・エンジニヤース株式会社(EEJA)製「ELN240 R3」:6mL/L
(置換Auめっき処理)
Niめっき層が形成されたガラス基材を、55℃に保温した金めっき液(EEJA製「PRECIOUSFAB IGS8000SPF」)に6分間浸漬して、Niめっき層の上に、厚さ0.03μmの置換Auめっき層を形成して試料を得た。
得られた試料の表面をマイクロスコープで観察した。表面の写真を図3に示す。図3の1はガラス基材であり、3は置換Auめっき皮膜である。図3に示されるように、パルスレーザーを照射した領域に置換Auめっき皮膜を形成させることができた。
実施例2
レーザー照射エリアを10mm×10mmに変更し、吹き付け条件を下記のように変更し、無電解めっきを行わなかった以外は実施例1と同様にして試料を得て、表面観察を行った。
(吹き付け条件)
装置:Medicoat社製のコールドスプレー装置「ACGS(Advanced Cold Gas System)」
粒子材料:Sn粒子
平均粒子径:10μm
粒子搬送速度:100出力%
キャリアガス:空気
ノズル入口の圧力:7.4bar
ノズル入口のガス流量:320L/min
噴射ノズル−基材管距離mm:10mm
噴射ノズル角度:90°
噴射ノズル径:5mm
ノズル入口の温度:200℃
[評価]
(表面観察)
得られた試料の表面をマイクロスコープ観察した。表面の写真を図4に示す。図4の1はガラス基材であり、4はSn皮膜である。図4に示されるように、パルスレーザーを照射した領域にSn皮膜が形成された。このSn皮膜はセロハンテープで剥がすことができなかった。パルスレーザーを照射していない領域にもわずかにSn粒子が付着していたが、このSn粒子は刷毛で簡単に取り除くことができた。
1 ガラス基材
2 Cu皮膜
3 置換Auめっき皮膜
4 Sn皮膜

Claims (4)

  1. ガラス基材の表面に金属皮膜パターンが形成されたデバイスの製造方法であって;
    前記ガラス基材の表面の一部の領域にパルスレーザーを照射して多光子吸収を起こさせ、該ガラス基材の表面にスポット(凹部)が形成されるように加工する第1工程と、
    前記ガラス基材の表面にコールドスプレー法により金属粒子を衝突させ、前記パルスレーザーを照射した領域にのみ選択的に金属皮膜を形成する第2工程とを備えることを特徴とするデバイスの製造方法。
  2. 前記パルスレーザーのパルス幅が1×10−18〜1×10−4秒である請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記金属粒子が、銅、スズ、金、銀、ニッケル、鉄、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、インジウム、亜鉛、アルミニウム、タングステン、クロム、マグネシウム、チタン、シリコン又はこれらの合金からなる群から選択される少なくとも1種の粒子である請求項1又は2に記載の製造方法。
  4. 前記第2工程の後に、電気めっき又は無電解めっきを行うことにより、前記金属皮膜の表面にめっき皮膜を形成する第3工程をさらに備える請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
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