JP6456745B2 - 透明不燃膜、透明不燃自立膜 - Google Patents

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Description

本発明は、透明性と不燃性を有する透明不燃膜や透明不燃自立膜に関する。
近年、屋内・屋外用建材、列車・自動車などの車両用材料、内装材、照明装置用部材として、不燃性、透明性、安全性の全てを併せ持つ材料が求められてきている。特に普及が進みつつあるLED照明などの保護カバーにも同様の特性が必要であるが、透明性、不燃性、割れにくさ乃至安全性を同時に満足する材料の開発はまだ十分に進展しているとは言えない。
従来透明不燃自立膜としては、フッ素系樹脂などが知られている。フッ素樹脂は、透明性が高く、柔軟性や強度も高いとされている。
また、透明不燃自立膜を得る方法として、透明性を有するが易燃性の樹脂に層状無機化合物である層状粘土鉱物の人工合成物を含有させる方法が知られている(特許文献1参照)。層状粘土鉱物の人工合成物(以下、「層状粘土鉱物の人工合成物」を「人工粘土鉱物」と略する。)は主成分がシリカであるため透明性を有し、かつ不燃性であるため、当該化合物を樹脂に含有することにより、易燃性の樹脂を難燃化させることができる。他方、人工粘土鉱物は、有機樹脂との混和性が極めて低いため高い比率で含有させることができず、難燃性向上には限界があった。
人工粘土鉱物の特色を生かすため、人工粘土鉱物を主成分とした透明不燃自立膜を得る方法が報告されている。例えば、耐炎性と火炎遮蔽性を有する透明膜として、トリエトキシ(3-イソシアナトプロピル)シラン〔Triethoxy(3-isocyanatopropyl)silane〕とポリ(エチレングリコール)モノメチルエーテル〔Poly(ethylene glycol) monomethylether〕の反応物と57wt%の人工粘土鉱物とからなる材料が報告されている(非特許文献1、2参照)。人工粘土鉱物は、発色の原因となる不純物の含有量が微量であるため透明性があり、その自立膜も透明性を有する。
さらに、本出願人は、天然粘土鉱物もしくは人工粘土鉱物を用い、人工粘土鉱物と水溶性樹脂の総和に対して、5から20wt%程度の水溶性樹脂を添加して得られる透明不燃コーティング材もしくは自立膜を開発している(特許文献2参照)。天然粘土鉱物もしくは人工粘土鉱物を用いた本方法では、全光線透過率90%以上の不燃性自立膜が得られる。
特開2011−255667号公報 特開2012−16875号公報
K.Shikinaka, et al.,Chem.Lett.,2011,40,1389-1391 K.Shikinaka, et al.,Langmuir,2010,26(15)12493-12495 H.Kim,Journal of Sol-Gel Science and Technology,36,213-221,2005
上述のような従来技術における透明、不燃性の膜について本発明者は独自に検討したが、フッ素樹脂膜は、透明性が高く、柔軟性や強度も高く不燃性と呼ばれているが、接炎時に溶融し変形するという欠点があった(後述の比較例1参照)。
また、トリエトキシ(3-イソシアナトプロピル)シランとポリ(エチレングリコール)モノメチルエーテルの反応物と57wt%の人工粘土鉱物とからなる膜は、透明性に優れているものの、接炎時に発火するという問題があり、不燃性が十分であるとは言えないものであった(後述の比較例2参照)。
さらに、天然粘土鉱物もしくは人工粘土鉱物及び水溶性樹脂を配合した上述の透明不燃コーティング材は、不燃性と透明性に優れ、かつ自立膜を形成するものの、得られる自立膜は極めて脆い膜であった。
本発明は、上述のような従来技術を背景とするものであり、透明性(全光線透過率で60%以上)を有する不燃性膜であって、脆くない膜を提供することを課題とする。
また、本発明は、透明性、不燃性とともに自立性をも有する膜を提供することを追加的な課題とする。
さらに、本発明は、透明性、不燃性、自立性とともに、比較的高い引っ張り強度(40MPa以上)を有する膜を提供することを追加的な課題とする。
本発明者は、前記課題のもとで試験研究を重ね、次の(ア)〜(オ)のような知見を得た。
(ア)非特許文献1,2に記載されたトリエトキシ(3-イソシアナトプロピル)シランとポリ(エチレングリコール)モノメチルエーテルの反応物である分子の一端のみをシリル化したシリル化ポリ(エチレングリコール)化合物(以下、「s-PEG」ということがある。)と人工粘土鉱物とからなる材料透明自立膜について、不燃性を改善するために人工粘土鉱物の配合量を60wt%超に増加すると、強度が不足し脆くなり、また、自立性にも欠けるようになる(後述の比較例3参照)。
(イ)s-PEGに配合する粘土鉱物として人工粘土鉱物だけでなく天然粘土鉱物をも用いると、不燃性を改善するように人工と天然との粘土鉱物の合計配合量を60〜90wt%程度に増加しても脆くなくなり、さらに人工と天然の粘土鉱物の配合割合を調整することにより自立膜が形成し得るが、引っ張り強度等の強度が不足する。
(ウ)ポリ(エチレングリコール)分子の両端をシリル化した両端シリル化ポリ(エチレングリコール)化合物(以下、「D-s-PEG」ということがある。)で天然粘土鉱物と人工粘土鉱物からなる粘土鉱物を修飾することにより、粘土鉱物の配合量を65〜97wt%程度に増加しても、粘土鉱物粒子間の結合性、ひいては膜強度が増し脆くなく、加熱にも分解しない膜が形成できる。これは、両端シリル化グリコール化合物が粘土鉱物の結晶端面にシリル化反応により結合した結果、粘土鉱物結晶同士が当該化合物を介して連結することになり、膜の強度が向上するためと考えられる。また、D-s-PEGに配合する粘土鉱物として天然粘土鉱物と人工粘土鉱物を所定配合割合で用いると、膜に自立性を付与することができる。
(エ)前記(ウ)のような効果は、D-s-PEG以外にも、特定のグリコール化合物分子の両端等をシリル化した両端シリル化グリコール化合物においても化学的・材料的特性の同一性から期待できると考えられる。
(オ)前記特定のグリコール化合物としては、分子の両端等に水酸基を有するポリグリセリン、ジグリセリン、ポリ(プロピレングリコール)等が考えられる。
なお、上記非特許文献3には、両端等に水酸基を有するポリ(エチレングリコール)等の分子とトリエトキシ(3-イソシアナトプロピル)シランとを反応させ、両端にシリル基を有するシリル化ポリエーテルハイブリッド前駆体を得た旨等が記載されており、前記シリル化ポリエーテルハイブリッド前駆体は、本発明における両端シリル化グリコール化合物に相当するものである。
しかしながら、上記非特許文献3には、前記シリル化ポリエーテルハイブリッド前駆体にテトラエトキシシラン(TEOS)を加えたものと加えないものについて、酸触媒でアルコキシシランの加水分解と縮合を行い、得られたコーティング材を多孔性ポリサルフォン基材に塗布してガス選択透過膜とする旨などが記載されているものの、前記シリル化ポリエーテルハイブリッド前駆体と粘土鉱物とを混合することについて全く記載されていないし、まして、前記シリル化ポリエーテルハイブリッド前駆体で粘土鉱物の端面を修飾することにより、粘土鉱物粒子間の結合性、ひいては膜強度が増し脆くなくなり、加熱にも分解しないなどの上述の知見については全く開示されていない。
本発明は、上述のような知見に基づいて完成したものであり、この出願によれば、以下の発明が提供される。
<1>下記式(1)で表される分子両端をシリル化した両端シリル化グリコール化合物と粘土鉱物とを主要成分とする透明不燃膜であって、前記粘土鉱物が天然粘土鉱物と人工粘土鉱物からなる透明不燃膜。
Figure 0006456745
(式中、Rαは、CH(Rγ)CH2 または CH2CH(Rγ)CH2であり、Rβは、CONH(CH2)3Si(OCmH2m+1)3、Rγ は CH3、H、OHまたはORβであり、nは1から20の整数、mは1または2の整数である。)
<2>天然粘土鉱物と人工粘土鉱物の重量比率が3:7〜7:3の範囲である<1>に記載の自立性を有する透明不燃膜。
<3><1>または<2>に記載の透明不燃膜を基材の表面に有する積層体。
<4>下記式(1)で表される分子両端をシリル化した両端シリル化グリコール化合物と粘土鉱物とを透明不燃膜の主要成分とし、前記粘土鉱物が天然粘土鉱物と人工粘土鉱物からなり、溶媒乃至分散剤を含む透明不燃膜形成用材料。
Figure 0006456745
(式中、Rαは、CH(Rγ)CH2 または CH2CH(Rγ)CH2であり、Rβは、CONH(CH2)3Si(OCmH2m+1)3、Rγ は CH3、H、OH または ORβであり、nは1から20の整数、mは1または2の整数である。)
本発明は、次のような態様を含むことができる。
<5>前記両端シリル化グリコール化合物が、ポリ(エチレングリコール)、ポリグリセリン、ジグリセリン、ポリ(プロピレングリコール)の1種または2種以上と、トリエトキシ(3-イソシアナトプロピル)シランとの反応生成物である<1>または<2>に記載の透明不燃膜。
<6>透明性が全光線透過率で60%以上である<1>、<2>、<5>のいずれか1項に記載の透明不燃膜。
<7>不燃性が接炎時において発火せず、かつ溶融しないものである<1>、<2>、<5>、<6>のいずれか1項に記載の透明不燃膜。
<8>耐屈曲性試験において亀裂が生じ始める最小直径が2〜12mmである<1>、<2>、<5>〜<7>のいずれか1項に記載の透明不燃膜。
<9> 引っ張り強度が20MPa以上70MPa以下である<1>、<2>、<5>〜<8>のいずれか1項に記載の透明不燃膜。
<10><5>〜<9>のいずれか1項に記載の透明不燃膜を基材の表面に有する積層体。
<11>基材が、木材、樹脂、織布、不織布から選択される1種又は2種以上の層を含むものである<4>または<10>に記載の積層体。
<12>コーティング材である<4>に記載の透明不燃膜形成用材料。
本発明の透明不燃膜は、全光線透過率が60%以上の透明性、および、接炎時において発火せず、かつ溶融しない不燃性を有するもので、しかも、脆くない(耐屈曲性試験において直径20mm以上のマンドレルでは亀裂が生じたり、割れたりしない。)。特に、粘土鉱物として人工粘土鉱物と天然粘土鉱物との所定配合割合の混合物を使用した場合、透明性、不燃性を損なうことなく、自立性や比較的高い引っ張り強度をも得ることができる。
本発明の透明不燃膜は、下記式(1)で表される分子両端をシリル化した両端シリル化グリコール化合物と粘土鉱物とを主要成分とするとともに、前記粘土鉱物が天然粘土鉱物と人工粘土鉱物とからなる。
Figure 0006456745
(式中、Rαは、CH(Rγ)CH2 または CH2CH(Rγ)CH2であり、Rβは、CONH(CH2)3Si(OCmH2m+1)3、Rγ は CH3、H、OH または ORβであり、nは1から20の整数、mは1または2の整数である。)
上記式(1)で表される両端シリル化グリコール化合物は、例えば、ポリ(エチレングリコール)、ポリグリセリン、ジグリセリン、ポリ(プロピレングリコール)などの分子両端に水酸基を有するグリコール化合物を、トリエトキシ(3-イソシアナトプロピル)シランと反応させて得られる反応生成物である。それらの反応については、上記非特許文献3に記載されている。
上記両端シリル化グリコール化合物と粘土鉱物との合計に対する上記両端シリル化グリコール化合物の配合割合は、通常3〜35wt%、好ましくは4〜25wt%、より好ましくは5〜15wt%である。上記両端シリル化グリコール化合物と粘土鉱物との合計に対する粘土鉱物の配合割合は、膜に不燃性を付与するため、通常65〜97wt%、好ましくは75〜96wt%、より好ましくは85〜95wt%である。
本発明の透明不燃膜に使用する粘土鉱物は、天然粘土鉱物と人工粘土鉱物の両方を使用する。天然粘土鉱物は粒子サイズが500nmから数10μmと大きいため自立性を有する膜を作成することができるが透明性に難がある一方、人工粘土鉱物は透明性が高い膜を得ることができるがその粒子サイズが天然粘土鉱物に比べて10から100分の1程度と小さく、粘土鉱物量が60wt%超の場合において強度に難があるため、不燃性と透明性を両立し、かつ脆くない膜を得るためには、それらの混合物を用いることが必要である。
さらに、自立性を有する膜(自立膜)とする場合には、天然粘土鉱物と人工粘土鉱物との配合割合(重量ベース)を、通常3:7〜7:3、好ましくは4:6〜6:4とする。
天然粘土鉱物としては、限定するものではないが、例えば、スメクタイト系粘土、すなわち、モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ノントロナイト、ヘクトライト、スティーブンサイトなどが挙げられる。モンモリロナイトの市販品としては、クニピアF(クニミネ工業株式会社)などが挙げられる。スメクタイト系粘土分の多い天然鉱物としては、ベントナイトなどが挙げられる。
また天然粘土鉱物は、粒子サイズが500nmから数10μmのもの程度のものが膜の自立性を発現させるために好ましい。
人工粘土鉱物としては、限定するものではないが、例えば、ヘクトライト(ラポナイトRockwood additive社製;ルーセンタイト、コープケミカル社製)、スティーブンサイト(スメクトンST、クニミネ工業株式会社製)、サポナイト(スメクトンSA、クニミネ工業株式会社製)などが挙げられる。
これらの粘土鉱物は親水性であるが、耐水性を向上させるためその層間イオンをナトリウムイオンから他の金属イオンに交換する処理を行うことも可能である。例えば、クニピアFやスメクトンSTなどの層間イオンをリチウムイオンに交換すれば、その後乾燥条件下の加熱処理により耐水性が発現する(以下、クニピアFをリチウムイオン交換処理したものをクニピアM、スティーブンサイトをリチウム交換処理したものをLiSTという)。
なお、本発明において自立膜とは、基材等に支持されることなく膜そのもの自体で取り扱いが可能な強度を有する膜を意味する。ただし、その用途や使用態様において接着等の適宜の接合手段により各種基材や基材に接合、積層されていても良いし、各種支持体に支持されていても良い。
本発明の透明不燃膜は、好ましくは両端シリル化グリコール化合物と粘土鉱物からなるが、透明性や不燃性、自立性を大きく損なわない範囲(例えば、20wt%程度以下、好ましくは10wt%以下、より好ましくは5wt%以下)で他の成分を含むことができる。
他の成分としては、水溶性樹脂、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の無機難燃剤などを挙げることができる。
本発明の透明不燃膜を鋳型により成形する際やコーティング材として塗布により形成する際には、溶媒乃至分散媒を用いる。両端シリル化グリコール化合物と粘土鉱物との合計量に対する溶媒乃至分散媒の配合量は、限定するものではないが、1〜200倍、好ましくは5〜100倍、より好ましくは10〜60倍とすることができる。そのような溶媒乃至分散媒としては、イオン交換水等の水を使用するのが好適であるが、両端シリル化グリコール化合物をイオン交換水中に良好に分散させるため極性有機溶媒(例えば、N-メチル-2-ピロリドン、アセトン、メタノール、エタノール等)を溶媒乃至分散媒全体の20wt%以下程度(好ましくは10wt%以下程度)含んでいても良い。
本発明の透明不燃膜は、コーティング材として各種基材の表面層とすることができる。そのような基材としては、限定するものではないが、木材、樹脂、織布、不織布から選択される1種又は2種以上の層を含むものが挙げられる。
そのような表面層としての透明不燃膜の厚さは、限定するものではないが、1〜1000μm、好ましくは10〜200μmとすることができる。そのような膜厚は、複数回繰り返されるコーティング工程に基づくものであっても良い。
本発明の透明不燃自立膜の厚さは、限定するものではないが、10μm〜1mm、好ましくは30μm〜100μmである。透明不燃自立膜は、単独で用いることもできるが、上述のような基材の表面に積層することもできる。
以下、実施例および比較例に基づいてより詳細に説明するが、本発明は、これら実施例等に限定されない。
なお、実施例、比較例で得られた膜については、次に記載された手法により評価した。
(全光線透過率測定)
得られた膜の全光線透過率とヘーズ(曇り度)は、日本電色工業株式会社製のへーズメーターNDH7000により測定した。
(耐屈曲性試験)
膜や膜が形成された積層物の耐屈曲性試験(JIS K5600-5-1)は、円筒形マンドレル屈曲試験器を用いて行った。
(引っ張り試験)
引っ張り試験は以下のように行った。試験装置は、JTトーシ株式会社製小型卓上試験機リトルセンスターを用いた。得られた膜から縦70mm×幅10mmの試験片を切り出し作製した。得られた試験片を50Nのロードセルに標線間距離30mmで固定し、引っ張り速度10mm/minで最大測定荷重(N)を計測した。引っ張り強度は、得られた最大荷重と試験片の初期断面積から求めた。試験は3回以上行い、その平均値から引っ張り強度を決定した。
(接炎試験)
接炎試験は、以下のように行った。得られた膜から縦80mm×幅15mmの試験片を作製した。試験片の一端をクランプにより水平に固定し、固定しない側の先端に着火用ライターにより生成した炎を接触させ、その状態で10秒間保持した。燃焼炎の発生(発火)の有無および溶融変形や溶融滴下物の有無により不燃性を判定した。
<比較例1>
市販のエチレン−テトラフルオロエチレン共重合体膜(旭硝子株式会社製、Fluon(登録商標)ETFE、厚さ250μm、以下、「ETFE膜」という。)について上記試験により評価した。該ETFE膜の評価結果を表1に示す。
表1から明らかなように、ETFE膜は、透明性と強度に優れているものの、接炎試験では発火し、その際に炎接触部が溶融変形して液ダレ状の変形物が発生した。
<比較例2>
トリエトキシ(3−イソシアナトプロピル)シラン〔Triethoxy(3-isocyanatopropyl) silane〕(SIGMA-ALDRICH社製)5.45gと1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン(1,4-diazabicyclo[2,2,2]octane)(SIGMA-ALDRICH社製)0.45gを100mLの1,4-ジオキサン(1,4-dioxane)(和光純薬工業株式会社製)に溶解した。その溶液をポリ(エチレングリコール)モノメチルエーテル〔Poly(ethylene glycol) monomethyl ether〕(SIGMA-ALDRICH社製、平均分子量750)15gに対して加え、50℃で24時間還流した。還流後、1,4-ジオキサンを減圧加熱して除去した。さらに、トルエン/ヘキサン溶液(体積比で、トルエン:ヘキサン=1:4)を加えて化合物を洗浄し、上澄み液を除去して、上記非特許文献1、2に記載されたと同様の、次の式(2)で表される分子の一端のみをシリル化したシリル化ポリエチレングリコール化合物(s-PEG)を得た。
(H5C2O)3Si(CH2)3-NH-CO-(OCH2CH2)-OCH3 (2)
〔式中、nは、ポリ(エチレングリコール)モノメチルエーテルの平均分子量750からみて、その平均値が16程度と考えられる。〕
ラポナイト(Rockwood additive社製)2.4 gを蒸留水80 gに縣濁し、50℃で1日撹拌した。その後、s-PEG 4gを蒸留水(酢酸でpH=5付近に調整)40gに混合した。混合後、すぐにラポナイト縣濁液に加え、50℃で1日間撹拌した。撹拌後、1000mlビーカーに移し変え、デシケーター内で減圧し脱泡した。脱泡後、テフロン(登録商標)製鋳型(縦 145mm×横 200mm×深さ 2mm)に流し込み、3日間乾燥した。
得られた比較例2の膜(厚さ約90μm)の評価結果を表1に示す。表1から明らかなように、比較例2の膜は、人工粘土鉱物の含有量が37wt%と少ないため、自立性を有し、透明性にも優れているが、比較例1の膜と同様に、接炎試験では炎を上げて燃えるし、燃焼後は溶融変形した。なお、表中の長横棒「−」は、該当試験を行わなかったことを意味する。
Figure 0006456745
<比較例3>
上記比較例2と同様にして、上記式(2)で表されるs-PEGを得た。
ラポナイト 2.4gを蒸留水80gに縣濁し、50℃で1日撹拌した。その後、s-PEG 1gを蒸留水(酢酸でpH=5付近に調整)40gに混合した。混合後、すぐにラポナイト縣濁液に加え、50℃で1日間撹拌した。撹拌後、1000mlビーカーに移し変え、デシケーター内で減圧し脱泡した。脱泡後、テフロン(登録商標)製鋳型(縦 145mm×横 200mm×深さ 2mm)に流し込み、3日間乾燥した。
また、s-PEGを配合せず、ラポナイト 2.4gを蒸留水80gに縣濁し、50℃で1日撹拌し、その縣濁液を脱泡後、上記と同様の鋳型に流し込み、3日間乾燥した。
乾燥後、いずれの試料についても透明な膜状乾燥物(厚さ約60μm)を形成したが、一部に亀裂が観察された。また、前記鋳型から分離する際膜は割れ、鋳型のサイズを維持したまま分離することはできなかった。このように比較例3の人工粘土鉱物だけを約71wt%含み天然粘土鉱物を含まない膜や人工粘土鉱物だけでs-PEGを含まない膜については、得られた小片を持ったところ非常に脆かった。小片について耐屈曲性試験を行ったところ、直径24mmのマンドレルで亀裂が生じた。
<比較例4>
合成スメクタイト(スメクトンSA)2.8gをイオン交換水100cm3に加え縣濁液を作成した。また、ポリアクリル酸ナトリウム0.7gを、イオン交換水225cm3に溶解し、合成スメクタイト縣濁液に混合し、室温で2時間、振とう機で激しく振とうした。その後、真空脱泡装置により脱気を行う。脱気後の粘土ペーストを5500rpm、20分間、遠心分離を行った。上澄みの粘土ペーストをテフロン(登録商標)製鋳型(縦 145mm×横 200mm×深さ 2mm)に流しいれ、60℃の温度条件下で24時間乾燥した。得られた膜を前記鋳型から分離する際膜は割れ、鋳型のサイズを維持したまま分離することが出来なかった。
得られた膜の全光線透過率は90%、へーズは48%であり透明性は高いが、膜は脆く引っ張り試験に供することは困難であった。
<実施例1>
トリエトキシ(3−イソシアナトプロピル)シラン(SIGMA-ALDRICH社製)と1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン(SIGMA-ALDRICH社製)を100mLの1,4-ジオキサン(和光純薬工業株式会社製)に溶解した。その溶液をポリ(エチレングリコール)〔Poly(ethylene glycol)〕(SIGMA-ALDRICH社製、平均分子量400)に加え、50℃で24時間還流した。還流後、1,4-ジオキサンを減圧加熱して除去し、上記非特許文献3に記載されたと同様の、次の式(3)で表される両端シリル化ポリ(エチレングリコール)化合物(以下、「D-s-PEG」と略する。)を得た。
(H5C2O)3Si(CH2)3-NH-CO-(OCH2CH2)-O-CO-NH-(CH2)3Si(OC2H5)3 (3)
〔式中、nは、ポリ(エチレングリコール)の平均分子量400からみて、その平均値が約9程度と考えられる。〕
次にD-s-PEG 0.52gを40mlのイオン交換水に溶解し、その溶液のpHを酢酸によりpH5に調製した。さらに、ラポナイト(もしくはLiST)1.08gとクニピアM 1.32gを80mlのイオン交換水に加えて50℃で4時間撹拌した。得られたラポナイト(もしくはLiST)とクニピアMの懸濁液にD-s-PEG水溶液を加え、50℃で24時間撹拌した。得られた縣濁液を減圧脱泡した後、テフロン(登録商標)製鋳型(縦145mm×横200mm×深さ2mm)に流し込み、3日間室温乾燥した。乾燥後、前記鋳型から分離することにより脆くない自立膜を得た。膜厚は、約50μmであった。
D-s-PEG 0.78gを40mlのイオン交換水に溶解し、その溶液のpHを酢酸によりpH5に調製した。さらに、ラポナイト(もしくはLiST)1.08gとクニピアM 1.32gを80mlのイオン交換水に加えて50℃で4時間撹拌した。得られたラポナイト(もしくはLiST)とクニピアMの懸濁液にD-sPEG水溶液を加え、50℃で24時間撹拌した。得られた縣濁液を減圧脱泡した後、テフロン(登録商標)製鋳型(縦145mm×横200mm×深さ2mm)に流し込み、3日間室温乾燥した。乾燥後、前記鋳型から分離することにより脆くない自立膜を得た。膜厚は、約50μmであった。
得られた実施例1の膜の評価結果を表2に示す。表2から明らかなように、実施例1の2種類の膜は、粘土鉱物の含有量がそれぞれ82wt%、75wt%と多いが、人工粘土鉱物(ラポナイト)と天然粘土鉱物(クニピアM)を45:55の重量割合で含むため、鋳型からの離型が可能でありかつ自立性を有するものであった。また、粘土鉱物の含有量が多いため、接炎試験において発火せず溶融滴下物のない優れた不燃性を示した。さらに、全光線透過率は、比較例2の膜よりもやや劣るものの、80%と優れた透明性を有し、耐屈曲性、引っ張り強度にも優れていた。
<実施例2>
ポリグリセリン(ポリグリセリン#310、阪本薬品工業社製、平均分子量310)5.5gを減圧下100℃で1時間乾燥した。トリエトキシ(3-イソシアナトプロピル)シラン(SIGMA-ALDRICH社製)20gと1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン(SIGMA-ALDRICH社製)2gを100mLの1,4-ジオキサン(和光純薬工業株式会社製)に溶解した。その溶液をポリグリセリン液に加え、80℃で24時間還流した。還流後、1,4-ジオキサンを減圧加熱して除去した。得られた化合物は、透明な液体で、上述の式(1)において、RαがCH2CH(Rγ)CH2、RγがOHまたはORβ、mが2であり、nが、ポリグリセリンの平均分子量310からみて、その平均値が約4程度と考えられるものである。以下、得られた化合物をS-P310と略する。
膜の調製は以下の手順で行った。まず、S-P310 0.2gを5mlのN-メチル-2-ピロリドンに溶解した。さらに、ラポナイト1.08gとクニピアM 1.32gを80mlのイオン交換水に加えて50℃で6時間撹拌した。得られたラポナイトとクニピアMの懸濁液にS-P310液を加え、室温で24時間撹拌した。得られた縣濁液を減圧脱泡した後、テフロン(登録商標)製鋳型(縦145mm×横200mm×深さ2mm)に流し込み、3日間室温乾燥し、さらに60℃で24時間乾燥した。乾燥後、前記鋳型から分離することにより脆くない自立膜を得た。膜厚は、約80μmであった。
実施例2の膜の評価結果を表2に示す。実施例2の膜は、用いた両端シリル化グリコール化合物の種類が実施例1とは異なっており、また、粘土鉱物の含有量も92wt%と多いが、実施例1の膜と同様に、本発明の課題を達成する透明性、不燃性とともに自立性を有するものであった。すなわち、全光線透過率が60%以上の透明性、および、接炎時において発火せず、かつ溶融しない不燃性を有し、しかも、高い引張強度を示した。
Figure 0006456745
本発明の透明不燃膜は、脆くなく透明でかつ不燃性に優れているので、自立性を有するものについては、膜単体で、LED照明を含めた各種照明の保護カバー、光拡散性カバー、太陽電池カバーなどに応用できるし、また、木材、FRP等の各種樹脂、テント材などの様々な基材の不燃化透明表面層としても利用することができる。また、自立性に欠けるものについては、その組成物をコーティング材料として前記基材の表面塗布膜とすることにより、それら基材を不燃化するのに使用することができる。したがって、本発明の透明不燃膜は、建築、車両、航空・宇宙、エネルギーなど広範な分野での利用が期待できる。

Claims (4)

  1. 下記式(1)で表される分子両端をシリル化した両端シリル化グリコール化合物と粘土鉱物とを主要成分とし、前記粘土鉱物が天然粘土鉱物と人工粘土鉱物からなり、溶媒乃至分散を含む透明不燃膜形成用材料。
    Figure 0006456745
    (式中、Rαは、CH(Rγ)CH2 または CH2CH(Rγ)CH2であり、Rβは、CONH(CH2)3Si(OCmH2m+1)3、Rγ は CH3、H、OH または ORβであり、nは1から20の整数、mは1または2の整数である。)
  2. 天然粘土鉱物と人工粘土鉱物の重量比率が3:7〜7:3の範囲である請求項1に記載透明不燃膜形成用材料
  3. 請求項1又は2に記載された透明不燃膜形成用材料を用いる透明不燃膜の製造方法。
  4. 請求項3に記載された透明不燃膜の製造方法を含み、透明不燃膜と基材とを有する積層体を製造する積層体の製造方法。
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