JP6456641B2 - マルチロータクラフトの姿勢安定化制御装置 - Google Patents
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Description
ロール軸とピッチ軸に関しては、ロール軸回りの姿勢に関与するロータ(ロール軸に対し、左右対称の位置にあるロータ)の回転数と、ピッチ軸回りの姿勢に関与するロータ(ピッチ軸に対し、左右対称の位置にあるロータ)の回転数とを変化させ、ヨー軸に関しては、正回転するロータと逆回転するロータの回転数差を利用して制御している。また、機体の上昇下降は、上述のヨー軸、ピッチ軸、ロール軸の制御を行いながら、全ロータの出力を増大あるいは減少させることにより制御する。
この応答遅れを考慮した制御技術として、特許文献1、2には、2次応答遅れ系の制御を行うことが記載されている。
推力が著しく不均一であると、上述した不可避の応答遅れにより、マルチロータクラフトの姿勢を安定化させることが不可能となることから、個体差を最大限低減するため、品質管理を厳密に行わなければならず、しかも高速度の演算処理装置が必要となるため、大幅なコストアップを招いている。
しかし、エンジンは、電動モータと比較して、出力特性の個体差が大きく、出力応答性、制御の収束性にも劣るため、マルチロータの駆動源として利用することは、きわめて困難である。一方、電動モータの場合、エンジンと比較して制御特性は良好なものの、航続距離がバッテリ容量に依存することになるので、広域にわたり連続空撮ができないといった問題が生じる。
このように、従来技術においては、原動機の出力制御が介在するロータの推力制御により姿勢制御を行っている点に本質的な問題があり、高価な部品、経時的変化に伴うメンテナンス費用を含めた品質管理に伴うコストアップ、外乱等に対する応答性の限界、安全確保のための機体の全壊など、安全で簡便な利用に大きな課題を残している。
すなわち、複数のロータが周方向に配置されたマルチロータクラフトにおいて、マルチロータ部の中心部下方に、前記マルチロータクラフトのロール軸回り及びピッチ軸回りに揺動可能なロッドを介してウエイトを連結し、前記ロッドのロール軸回り及びピッチ軸回りの揺動角を制御することにより、前記ロータに対する前記ウエイトの重心を変化させることで、前記マルチロータクラフトのロール軸回り及びピッチ軸回りの姿勢を制御し、前記マルチロータクラフトのヨー軸回りの姿勢を、前記ロータの回転数、あるいは、前記ロータの下方に設けた推力方向変更装置により制御するようにした。
さらに、姿勢制御にロータの回転数変化を使用しないことから、電動モータ以外の回転数変化の応答性が低い動力、例えば、レシプロエンジンやタービンエンジンを使用することも可能となる。この結果、現在のマルチコプタの欠点である、バッテリ使用に起因する飛行時間の制限を拡大することが可能となる。
図1は、本実施例に基づくマルチロータクラフトの全体図を示しており、中心部1から90°間隔で4本のアーム部2a〜2dが水平方向に延びており、それぞれの末端に、ロータ3a〜3dと、これを駆動する原動機4a〜4d(減速機を含む場合もある)が搭載されている。各アーム部2a〜2dは長さが等しく、その先端に搭載されるロータ3a〜3dの中心点が、平面視で同一円周上に位置するよう配置されている。中心部1、アーム部2a〜2d、ロータ3a〜3d、そして、原動機4a〜4dを含む構造体がマルチロータ部を構成し、その重心が、ロータ3a〜3dの中心点に一致している。
また、ロータ3aとロータ3cを同一方向に回転させ、ロータ3bとロータ3dを、これとは逆方向に回転させることで、回転モーメントを相殺し、ヨー軸方向の偏位を抑制するようにしている。
本実施例では、アクチュエータとしてサーボを用いているが、マルチロータが大型の場合には、電動モータを使用してもよい。
マルチロータクラフトの機体5や各ロータが突風などにより、ロール軸回りに回転させる外乱を受けたとき、第1アクチュエータ8により、これを打ち消す方向に、機体5をロール軸回りに揺動させ、外乱を相殺する。また、ピッチ軸回りに回転させる外乱を受けたときも同様に、第2アクチュエータ9により、これを打ち消す方向に、機体5をピッチ軸回りに揺動させ、ロール軸回りの姿勢制御を行う。
すなわち、ロッド7が長いほど大きな制御力を発生させることができるので、ロッド7の長さを調整することにより、制御力の大きさを調整することが可能となる。
基本的には振子の運動方程式を適用し、振子の支点が大きな空気抵抗を持つ物体により移動することを考慮することとなる。図3ではマルチロータクラフトが、外乱Tzを受け、水平面に対し、ロール軸がθ1の角度で姿勢が傾き、その姿勢を修正するために、第1アクチュエータ8が作動しθ2の角度だけ機体5を傾けた状態を示している。
M1×l1×sin(θ1+θ2)と表すことができる。
実際の外乱Tzは、通常の安全運行の範囲となる平均風速2〜10m/s程度としているため、θ1、そして、θ2も零近傍の値しかとらないため、姿勢修正モーメントは、(θ1+θ2)で線形近似することが可能となる。
前進加速は、図4のように振子姿勢制御により前傾させることにより実施し、再度振子安定制御により水平に保つことで等速運動を行う。等速運動からの静止は、振子姿勢制御によりロータ面を後傾させることにより減速あるいは加速を行い、静止時には再度振子安定制御により水平を保ち空中静止を行う。これらの運動をすべて図4のようにピッチ方向の振子運動制御により実現する。
マルチロータを実際に運行させる際は、ある地点でロール軸あるいはピッチ軸を短時間チルトさせ、左右前後の一瞬の加速と一瞬の減速を行う。そして、次の地点に到るまで等速運動による移動を行うことを繰り返し、碁盤の目を移動するような制御により、目的の位置まで移動させる。
このような制御アルゴリズムは、図5の制御ブロック図における相関関数Gにより実行される。なお、図5は、原動機4a〜4dとして、制御特性が良好で、ロータの回転数でヨー軸回りの姿勢制御が可能な電動モータの使用を前提としている。
指令値変換経路制御アルゴリズムから、ロール軸、ピッチ軸、Z軸(高度)、ヨー軸の制御要素に分解され、それぞれの制御目標値が出力される。
ロール軸とピッチ軸については、指令値変換経路制御アルゴリズムからの制御目標値に基づいて、それぞれ、G(rpzy)相関関数であるθr(t)とθp(t)により、ロール軸レートジャイロ、ピッチ軸レートジャイロを用いたフィードバック制御を行う。
これにより、前述のように、特定の地点でロール軸、ピッチ軸の短時間チルトが行われ、左右前後の一瞬の加速と一瞬の減速、そしてその後、次の地点に到着するまでの等速運動による移動を繰り返す。
操縦者からは、GUIによる地図上の目的地の指定という形で、指令目標が与えられ、それを座標変換し、経路生成を行い、そこからロール、ピッチ、高度、ヨーの制御要素に分解された制御指令値が入力される。
従来のロータ回転数変化による推力による制御では、圧縮性を有する空気のため、応答遅れが発生する。
これに対し、本実施例による、機体5を振り子としたロール角制御によると、応答速度がきわめて高く、高い姿勢角修正の応答速度が得られることが確認できる。
このように、本実施例によれば、ロータ3a〜3dの特性や、これを駆動するモータの出力にバラつきがあっても、機体5を振子として、ロール軸、ピッチ軸回りの安定制御が維持されているため、ヨー軸回りの安定を維持する観点のみで、互いに逆回転しているロータの回転数を調整するだけで、仮にロール軸回り、ピッチ軸回りの姿勢に変動が生じても、上述のロール軸制御、ピッチ軸制御により吸収することができる。
本実施例によれば、ピッチ軸とロール軸の安定を、ロータの推力による制御ではなく、重力を用いた振子による姿勢安定制御としたことで、通常のロータの推力では不可能になる大きな傾きにおいても、安定した姿勢制御が可能となる。
なお、本実施例によると、マルチロータクラフトの規模に応じて、ウエイトとなる機体5の重量を大きくすることができ、機体5内に小型エンジン発電機を搭載して二次電池を充電し、ロータ3a〜3dを駆動するモータを駆動するようにしてもよい。
上述した本発明の利点により、大型マルチロータクラフトの場合、電動モータに代えて小型レシプロエンジンを各ロータの直下に配置し、駆動源とすることもできる。
前述のようにレシプロエンジン等の内燃機関は、電動モータと比較して、出力特性のばらつきや制御応答性の面で劣るが、機体5をウエイトとした振り子制御により、大型マルチロータクラフトの駆動源として利用することが可能となる。
ただし、ヨー軸回りの姿勢については振り子制御の対象外であるため、図8に示すように、各ロータ2a〜2dの直下方に位置するよう、アーム2a〜2dに装着したヨー制御フィン9a〜9dの傾きを制御することにより行う。ヨー制御フィン9a〜9dは、各ロータ2a〜2dの推力方向変更装置として機能する。
すなわち、ヨー軸回りの外乱が作用したときは、ヨー軸レートジャイロによりこれを検知し、ヨー制御フィン9a〜9dのうち、少なくともひとつの傾きを変更し、その上方に位置するロータの重力方向に対する推力方向を変更調整することで、ヨー軸回りの外乱を相殺することができる。なお、この場合、図6におけるヨー軸制御のための制御対象は、ヨー制御フィン9a〜9dとなる。
このように、機体や各機器の劣化にかかわらず常に姿勢の安全性が確保されるので、今後、マルチロータクラフト用姿勢制御装置として広く採用されることが期待できる。さらに、姿勢制御にロータの回転数変化を使用しないことから、電動モータ以外の回転数変化の応答性の低い動力、例えば、レシプロエンジンやタービンエンジンを使用し、マルチロータクラフトの航続時間を飛躍的に高めるとともに、大型化にも寄与することができる。
2a〜2d アーム部
3a〜3d ロータ
4a〜4d 原動機
5 機体
6 脚部
7 ロッド
8 第1アクチュエータ
9 第2アクチュエータ
Claims (6)
- 複数のロータが周方向に配置されたマルチロータクラフトにおいて、
マルチロータ部の中心部下方に、前記マルチロータクラフトのロール軸回り及びピッチ軸回りに揺動可能なロッドを介してウエイトを連結し、
前記ロッドのロール軸回り及びピッチ軸回りの揺動角を制御することにより、前記ロータに対する前記ウエイトの重心を変化させることで、前記マルチロータクラフトのロール軸回り及びピッチ軸回りの姿勢を制御し、前記マルチロータクラフトのヨー軸回りの姿勢を、前記ロータの回転数、あるいは、前記ロータの下方に設けた推力方向変更装置により制御するようにしたことを特徴とするマルチロータクラフトの姿勢安定化制御装置。 - 前記ロータのそれぞれを個別の電動モータで駆動し、前記マルチロータクラフトのヨー軸回りの姿勢を、前記ロータの回転数により制御するようにしたことを特徴とする請求項1に記載されたマルチロータクラフトの姿勢安定化制御装置。
- 前記ロータを内燃機関で駆動し、前記マルチロータクラフトのヨー軸回りの姿勢を、前記推力方向変更装置により制御するようにしたことを特徴とする請求項1に記載されたマルチロータクラフトの姿勢安定化制御装置。
- 前記マルチロータクラフトのロール軸回りの角度・角速度・角加速度検出器及びピッチ軸回りの角度・角速度・角加速度検出器の検出値に基づいて、前記ロッドのロール軸回り及びピッチ軸回りの揺動角を制御する第1アクチュエータ及び第2アクチュエータを制御するとともに、ヨー軸回りの角度検出器の検出値に基づいて、前記ロータの回転数、あるいは前記ロータからの推力の方向を変更するヨー制御フィンを制御するコントローラを備えたことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載されたマルチロータクラフトの姿勢安定化制御装置。
- 前記マルチロータクラフトの機体を前記ウエイトとしたことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載されたマルチロータクラフトの姿勢安定化制御装置。
- 前記マルチロータクラフトの機体をマルチロータ部の中心部に装着し、前記ロッドを前記機体の中心部に前記ロッドを前記マルチロータクラフトのロール軸回り及びピッチ軸回りに揺動可能に連結したことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載されたマルチロータクラフトの姿勢安定化制御装置。
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