JP6455416B2 - めっき装置、及び、めっき製品の製造方法 - Google Patents
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Description
また、特許文献1に開示されためっき方法では、めっき液の処理槽内にワークを特定の姿勢で保持して行うめっき処理において、めっき不可部位を液面より上の空気中に露出させた状態でワークを低速回転(例えば100rpm)させることで、めっき処理部のみを選択的に部分めっきする。
また、特許文献1のめっき方法は、めっき液の圧力が大気圧程度であり、液面が静止していることを前提とするものである。したがって、処理槽内で高圧高速のめっき液をワークに吹き付ける噴流めっき等には適用することができなかった。
処理容器は、内部の処理槽に設置されたワークがめっき液に接触することによりめっき処理される。
マスキングユニットは、ワークにおいてめっきの付着が防止されるマスキング対象部を収容可能なマスキング室を有し、マスキング対象部をマスキング室に収容するようにワークに装着された状態で、めっき液の進入を防止するマスキング流体がマスキング室に充填される。なお、めっき液がマスキング室という空間に入るという意味の「しんにゅう」に対し、本明細書では「進入」の漢字を用いることとする。
好ましくは、マスキング流体は液体(マスキング液)であり、例えば水である。
コントローラは、めっき液センサの検出信号に基づき、マスキング室へのマスキング流体の補給を制御する。
マスキング流体補給手段は、コントローラからの指令により、マスキング室にマスキング流体を補給可能である。
これにより、静的条件のめっき処理だけでなく、高圧高速の噴流を流すめっき法を採用する場合でも、めっき処理中、マスキング状態を適正に維持することができる。よって、マスキング品質を安定させることができる。
このように、めっき液を螺旋流として流す「スパイラルめっき法」を採用することで、棒状や筒状のワークに対し周方向のめっき膜厚を均一にすることができる。また、高速且つ効率的なめっき処理が可能となる。
このめっき製品の製造方法は、「マスキング室に所定量を超えるめっき液が進入したことをめっき液センサが検出するめっき液検出段階」と、「めっき液センサの検出信号に基づくコントローラからの指令により、マスキング流体補給手段がマスキング室にマスキング流体を補給するマスキング流体補給段階」と、を含む。これにより、上記めっき装置と同様の効果を奏する。
(一実施形態)
本発明の一実施形態によるめっき装置の構成について、図1〜図6を参照して説明する。まず、めっき装置の全体構成について図1を参照する。めっき装置100は、処理容器10、マスキングユニット30、めっき液センサ51、コントローラ53、微量供給ポンプ62等を備える。
図2に示すように、ワーク(点火プラグ)80は、ねじ部83及びナット部84等を有する略円筒状を呈している。ねじ部83の環状の端面82には、接地電極81が端面82から突出するように設けられている。
この例のように、ワーク80が点火プラグの場合は、接地電極81がマスキング対象部となる。ただし以下の説明では、ワーク80を点火プラグと限らず、一般化してイメージしやすいように、「接地電極81」に代えて「マスキング対象部81」と記載する。
なお、めっき液Pのタンクやポンプ、供給配管、排出配管等の構成は周知技術であるため、図示を省略する。
これに対し、本実施形態のめっき装置100が採用するスパイラルめっき法では、高速のめっき液Pが大気圧より高い圧力(例えば0.2MPa)でマスキング対象部81に接するため、特許文献1の従来技術を利用することができない。
そのための構成として、めっき装置100は、マスキングユニット30、めっき液センサ51、コントローラ53、微量供給ポンプ62等を備える。続いて、これらの特徴構成について説明する。
マスキングユニット30は、基体31、及び、基体31から垂下する筒部32を含む。基体31は、マスキング液Mの配管63が接続される供給口34が形成されている。筒部32は、先端33側でマスキング対象部81を収容可能なマスキング室36、及び、供給口34とマスキング室36とを連通する供給路35が形成されている。
さらに、「接地電極通電部」としての上電極21も同様に、ワーク80、80Sの大きさに応じて位置を調整可能なように、処理容器10に対して可動に設けられている。
筒部32の先端33とワーク80のねじ部端面82との隙間Δh(図6参照)は、ねじ部端面82のめっき処理が良好に行われ、且つ、マスキング室36へのめっき液Pの進入が最小限となるような適正値に設定されることが好ましい。
マスキング室36のマスキング液Mの落下を抑制し、且つめっき液Pの進入を防止する点から、隙間Δdは、例えば1.0mm以下に設定されることが好ましい。
さらに、マスキング液Mが供給された後、マスキング室36の入口側をシールしたり、負圧操作したりすることにより、マスキング液Mの落下を抑制するようにしてもよい。
例えば図6に示すように、めっき液Pが筒部32の先端33側からマスキング室36に進入し、マスキング液Mとめっき液P(梨地で示す)との界面がめっき液センサ51の高さに達すると、めっき液センサ51の近傍におけるめっき液濃度が上昇する。めっき液センサ51は、めっき液濃度に依存する何らかの物性値を計測し、その物性値が規定値に達したとき、所定量を超えるめっき液Pがマスキング室36に進入したことを検出する。
コントローラ53は、めっき液センサ51からの検出信号が信号線52を経由して入力され、その検出信号に基づき、マスキング室36へのマスキング液Mの補給を制御する。
なお、本明細書では特に言及しないが、めっき装置100は、めっき液Pの圧力、流速や電極への印加電圧等のめっき条件を制御する周知の制御部を備えている。コントローラ53は、その一部として機能してもよいし、補給制御専用コントローラとして独立に設けられてもよい。
微量供給ポンプ62は、マスキング液タンク61からマスキング液Mを吸入し、吐出側の配管63を経由してマスキングユニット30の供給口34に供給する。特に、めっき処理中にめっき液センサ51によってマスキング室36へのめっき液Pの進入が検出されたとき、微量供給ポンプ62は、コントローラ53の指令により、マスキング室36にマスキング液Mを補給可能である。
図7に示すように、マスキング液Mの導電率σmは比較的小さく、めっき液Pの導電率σpは比較的大きい。時刻t0にめっき処理を開始後、所定量を超えるめっき液Pがマスキング室36に進入すると、導電率が増加し規定値σxに達するため、めっき液センサ51は、めっき液Pの進入を検出することができる。
図8に示すように、酸性のめっき液PのPH値は約4であり、中性のマスキング液MのPH値は7である。所定量を超えるめっき液Pがマスキング室36に進入すると、PH値が減少し規定値PHxに達するため、めっき液センサ51は、めっき液Pの進入を検出することができる。
図9(a)に示すように、マスキング液Mの漏れ電流値(コンダクタンス)Gmは非常に小さく、純水の場合、10μS(ジーメンス)以下である。所定量を超えるめっき液Pがマスキング室36に進入すると、漏れ電流値が増加し規定値Gxに達するため、めっき液センサ51は、めっき液Pの進入を検出することができる。
補給制御については上記と同様であるため省略する。
例えばマスキング液Mを常温とし、めっき液Pを40〜60℃に加温して処理槽16に流入させる場合を想定する。図9(b)、(c)に示すように、マスキング液Mの温度Tm及び熱貫流量Hmはいずれも低い。所定量を超えるめっき液Pがマスキング室36に進入すると、温度及び熱貫流量が増加し規定値Tx及びHxに達するため、めっき液センサ51は、めっき液Pの進入を検出することができる。
補給制御については上記と同様であるため省略する。
以下のステップにおけるめっき液検出濃度の判定、及び、微量供給ポンプ62へのマスキング液Mの補給の指令は、コントローラ53によって行われる。
S3にて、めっき液センサ51によりマスキング液Mを検出し且つめっき液Pを検出しないことを確認したら、S4に移行し、めっき処理を開始する。
このときの補給制御方法として、S6にて一定時間又は一定量の補給を実行した後、S7の「めっき液非検出ステップ」に移行する方法を取り得る。「めっき液非検出」とは、例えば「めっき液検出濃度が実質的に0に近い規定値β(<<α)より小さい」状態であることをいう。
或いは、別の補給制御方法として、S6のマスキング液補給とS7のめっき液濃度検出とを同時に進行し、いわば、めっき液濃度をモニタしながら、めっき液が非検出(S7:YES)となるまで、必要量のマスキング液Mを一度に補給するようにしてもよい。
本実施形態によるめっき装置100、及び、めっき製品の製造方法の効果について説明する。
(1)本実施形態のめっき装置100は、マスキング室36に収容されたマスキング対象部81の周囲にマスキング液Mを充填させることで、めっき液Pがマスキング対象部81に接触することを防止する。また、所定量を超えるめっき液Pがマスキング室36に進入した場合、めっき液センサ51が検知し、その検出信号に基づくコントローラ53からの指令により、微量供給ポンプ62がマスキング液Mを補給する。
(3)本実施形態では、マスキング流体としてマスキング液M(液体)を用いるため、気体よりも扱いやすい。特に水を用いることで、めっきに対する影響を無害なものとし、残液の排出等の管理も容易となる。
また、点火プラグのように、マスキング対象部である接地電極81が端面82から突出したワークに対し、「接地電極通電部」としての上電極21は、ワーク80、80Sの大きさに応じて位置を調整可能なように、処理容器10に対して可動に設けられている。
これにより、一台のめっき装置100に対し多品種製品の混合流動が可能となり、生産性が向上する。
この構成により「スパイラルめっき法」を採用することで、棒状や筒状のワークに対し周方向のめっき膜厚を均一にすることができる。また、高速の螺旋流を用いることで、高速且つ効率的なめっき処理が可能となる。
これにより、上記めっき装置100の効果(1)と同様の効果を奏する。
(ア)上記実施形態では、適用されるワーク80として点火プラグの例を示している。ここで、マスキング対象部81である接地電極は、一箇所であり、筒端部82から上方に真っ直ぐ延びる四角柱状を呈している。マスキングユニット30には、接地電極の形状に対応した断面四角形のマスキング室36が形成されており、マスキングユニット30は、接地電極の真上から覆い被さるように装着される。この例は、形状的に最も単純であり、マスキングユニット30の製作の簡便さや、生産時の段取りのし易さの点から最適な形態であると言える。
例えば、接地電極等のマスキング対象部の数は複数でもよい。マスキング対象部の姿勢は、上向きに限らず、横向きや下向きでもよい。マスキング室に充填されたマスキング液Mは、隙間Δdの寸法(図6参照)、すなわち液膜の厚さを適正に設定すれば、重力で流れ落ちることなく、マスキング対象部の周囲に保持されるからである。
図11(a)に示すワーク901は、リング状端部の外面911及び内面912、又は内面912のみがマスキング対象部である。
外面911及び内面912の両方をマスキングする場合、図11(b)に示すように、マスキングユニット401のマスキング室461は、ワーク901の端部を内側及び外側から挟み込むように環溝状に形成される。供給路451は、例えば溝の底からマスキング室461に連通する。
図13(a)に示すワーク907は、球面状の凹面がマスキング対象部917である。これに対応し、図13(b)に示すマスキングユニット407は、先端437が凸球面状であり、マスキング対象部917との間隔がほぼ一定となるようにマスキング室467が形成される。供給路457は、中心軸に沿ってマスキング室467に連通する。
しかし、本発明のめっき装置及びめっき製品の製造方法において採用されるめっき法はこれに限らず、例えば螺旋流以外の噴流めっき法等を採用してもよい。また、めっき液Pの圧力や流速の程度は問わない。
以上、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実施することができる。
30・・・マスキングユニット、
36・・・マスキング室、
51・・・めっき液センサ、
62・・・微量供給ポンプ、(マスキング液補給手段、マスキング流体補給手段)、
80、80S・・・点火プラグ、(ワーク)、
81・・・接地電極、マスキング対象部、
100・・・めっき装置、
M ・・・マスキング液(マスキング流体)、
P ・・・めっき液。
Claims (8)
- 内部の処理槽(16)に設置されたワーク(80、80S)がめっき液に接触することによりめっき処理される処理容器(10)と、
前記ワークにおいてめっきの付着が防止されるマスキング対象部(81)を収容可能なマスキング室(36)を有し、前記マスキング対象部を前記マスキング室に収容するように前記ワークに装着された状態で、めっき液の進入を防止するマスキング流体が前記マスキング室に充填されるマスキングユニット(30)と、
所定量を超えるめっき液が前記マスキング室に進入したことを検出するめっき液センサ(51)と、
前記めっき液センサの検出信号に基づき、前記マスキング室への前記マスキング流体の補給を制御するコントローラ(53)と、
前記コントローラからの指令により、前記マスキング室に前記マスキング流体を補給可能なマスキング流体補給手段(62)と、
を備えることを特徴とするめっき装置(100)。 - 前記めっき液センサは、
前記マスキング室における導電率、PH値、漏れ電流値、温度、又は熱貫流量のうち、いずれか一つ以上の物性値に基づき前記めっき液の進入を検出することを特徴とする請求項1に記載のめっき装置。 - 前記マスキング流体は液体であることを特徴とする請求項1または2に記載のめっき装置。
- 前記マスキング流体は水であることを特徴とする請求項3に記載のめっき装置。
- 前記マスキングユニットは、前記ワークの大きさに応じて位置を調整可能なように、前記処理容器に対して可動に設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のめっき装置。
- 前記ワークとして、前記マスキング対象部である接地電極が端面から突出したワークが用いられるめっき装置であって、
前記処理容器内に前記ワークが設置された状態で前記接地電極の端面に当接する接地電極通電部(21)は、前記ワークの大きさに応じて位置を調整可能なように、前記処理容器に対して可動に設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のめっき装置。 - 前記処理容器は、前記処理槽に流入した前記めっき液が前記ワークの軸に対して螺旋状に周回するように、前記ワークの軸と直交する仮想平面において、前記めっき液の流入方向が前記ワークの軸に向かう方向とはずれていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のめっき装置。
- 内部の処理槽(16)に設置されたワーク(80、80S)がめっき液に接触することによりめっき処理される処理容器(10)と、
前記ワークにおいてめっきの付着が防止されるマスキング対象部(81)を収容可能なマスキング室(36)を有し、前記マスキング対象部を前記マスキング室に収容するように前記ワークに装着された状態で、めっき液の進入を防止するマスキング流体が前記マスキング室に充填されるマスキングユニット(30)と、
所定量を超えるめっき液が前記マスキング室に進入したことを検出するめっき液センサ(51)と、
前記めっき液センサの検出信号に基づき、前記マスキング室への前記マスキング流体の補給を制御するコントローラ(53)と、
前記コントローラからの指令により、前記マスキング室に前記マスキング流体を補給可能なマスキング流体補給手段(62)と、
を備えるめっき装置を用いためっき製品の製造方法であって、
前記マスキング室に所定量を超えるめっき液が進入したことを前記めっき液センサが検出するめっき液検出段階と、
前記めっき液センサの検出信号に基づく前記コントローラからの指令により、前記マスキング流体補給手段が前記マスキング室に前記マスキング流体を補給するマスキング流体補給段階と、
を含むことを特徴とするめっき製品の製造方法。
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