JP6453102B2 - 車両運動制御装置 - Google Patents
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Description
特許文献1に記載される運動制御装置は、横加速度や横加加速度(横加速度の微分値)に応じた前後加速度指令値によって制動力を発生して走行の安定性を向上する。
一方で、運転者が緊急避難としてステアリングを大きく操舵したときには大きな制動力が発生することが好ましい。
また、制動力目標値は、基準値が閾値より高い変化速度で変化するときには基準値に遅れて変化する。そして、ローパスフィルタは基準値が変化するときの高周波成分を除去することができるので、高い変化速度での基準値の変化を遅らせることができる。したがって、基準値が閾値より高い変化速度で変化するとき、車両に発生する制動力が緩やかに変化し、車両の走行の安定性が向上する。また、制動力が緩やかに変化するので運転者が覚える違和感が軽減される。
さらに、ステアリングホイールの操舵角速度が所定値より高いときに、ローパスフィルタはカットオフ周波数が高くなる。ローパスフィルタのカットオフ周波数が高くなると、遅れが生じる変化速度が高くなる。このため、ローパスフィルタのカットオフ周波数が高くなると、基準値の変化に対して制動力目標値の変化が緩やかになる閾値が高くなる。そして、危険回避のための緊急操舵のときはステアリングホイールの操舵角速度が高くなる。したがって、緊急操舵のときには、高い変化速度で変化する基準値に遅れることなく変化するように制動力目標値が設定される。このため、緊急操舵のときには、制動力目標値演算部が設定する通りに制動力が車両に発生し、効果的に危険が回避される。
横加加速度は、実横加速度が増大するときにプラスになる。例えば、車両が直線走行から旋回走行に変化するときには実横加速度が増大するので横加加速度はプラスになる。
よって、本発明によると、車両が直線走行から旋回走行に変化するときに制動力を発生させることができる。車両に制動力が発生すると前輪に荷重がかかるので前輪のタイヤ力を有効に利用して、車両を旋回させることができる。
本発明によると、横加速度が大きく変化する車両に大きな制動力を発生させることができ、車両の走行を安定させることができる。
図1は車両運動制御装置を備える車両を示す図である。
図1に示すように、車両運動制御装置1は車両10に備わっている。図1に示す車両10は、動力源11が出力する動力で後輪WRが駆動されて走行する後輪駆動であるが、車両10の駆動形式は限定されない。車両10は前輪WFが駆動されて走行する前輪駆動であってもよいし4輪駆動であってもよい。動力源11は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの内燃機関であってもよいし、電動機であってもよい。また、内燃機関と電動機が組み合わさったハイブリッドタイプであってもよい。
操舵装置12は、ステアリングホイール121と転舵モータ122を有する。転舵モータ122はラック軸123を変位させて前輪WFを転舵する。また、ステアリングホイール121が操舵されたときの操舵角は舵角センサ121aで検出される。舵角センサ121aの検出信号(舵角信号Sh)は、車両運動制御装置1に入力される。車両運動制御装置1は舵角信号Shにもとづいてステアリングホイール121の操舵角を算出し、算出した操舵角にもとづいて転舵モータ122を駆動する。前輪WFは転舵モータ122が駆動してステアリングホイール121の操舵角に対応した角度で転舵する。このように、操舵装置12は、ステアリングホイール121の操舵角に応じた車両運動制御装置1の制御で転舵モータ122が駆動し、前輪WFが転舵するステアバイワイヤになっている。
横加速度センサ14は車両10に発生する横加速度を検出するセンサであり、検出信号(横加速度信号Sgy)は車両運動制御装置1に入力される。車両運動制御装置1は横加速度信号Sgyにもとづいて車両10に発生している横加速度(実横加速度Gr)を算出する。
前後加速度センサ15は車両10に発生する前後加速度を検出するセンサであり、検出信号(前後加速度信号Sgx)は車両運動制御装置1に入力される。車両運動制御装置1は前後加速度信号Sgxにもとづいて車両10に発生している前後加速度を算出する。
また、車速センサ16は、例えば車輪(前輪WF,後輪WR)の回転速度を検出する回転速度センサである。車速センサ16は車輪の回転に応じてパルス信号(車輪速信号Sw)を出力する。車両運動制御装置1は車輪速信号Swにもとづいて車両10の車速(車体速)を算出する。
横G加速度演算部21は、横加速度センサ14から入力される横加速度信号Sgyにもとづいて、車両10(図1参照)に生じている実際の横加速度(実横加速度Gr)を算出する。さらに、横G加速度演算部21は、算出した実横加速度Grを微分して横加速度の時間的な変化率(横加加速度Gyjk)を算出する。横加加速度Gyjkは、GVC演算部22に入力される。また、実横加速度Grは補正演算部23に入力される。
旋回開始時は、車両10が直線走行から旋回走行に変化する状態である。旋回開始時にはステアリングホイール121(図1参照)が切り増しされるので操舵角θhが増大する(グラフA)。車両10は旋回し始めるので実横加速度Grが増加し(グラフB)、横加加速度Gyjkがプラスになる(グラフC)。
その後、車両10は定常円旋回状態に入る。この状態は車両10が一定の曲率で湾曲するカーブを走行するので操舵角θhが一定に維持される(グラフA)。操舵角θhが一定に維持されると実横加速度Grが一定になるので(グラフB)、横加加速度Gyjkはゼロになる(グラフC)。
旋回終了時は、車両10が旋回走行から直線走行に変化する状態である。旋回終了時にはステアリングホイール121が切り戻されるので操舵角θhが減少する(グラフA)。車両10は旋回走行から直進走行に移行するので実横加速度Grが減少し(グラフB)、横加加速度Gyjkがマイナスになる(グラフC)。
このように、カーブしている走行路を走行する車両10においては、実横加速度Grが変化し、それにともなって横加加速度Gyjkが変化する。
また、GVC演算部22は、横加加速度Gyjkがマイナスのとき旋回終了時と判定し、車両10(図1参照)を加速させるべくGVC制御量を出力する。本実施形態のGVC演算部22は、横加加速度Gyjkがマイナスのときに、駆動力の目標値(駆動力目標値)の基準となるGVC制御量(基準駆動力目標値Pts)を出力する。
本実施形態においてGVC演算部22は、制動力や駆動力の目標値を設定する制御目標値演算部となる。
また、GVC演算部22は旋回終了時と判定したとき、電動機の力行で出力する動力の目標値の基準値(基準駆動力目標値Pts)をGVC制御量として出力する。
駆動力制御信号生成部24bが設定する駆動力制御信号Cpは、車両運動制御装置1から出力されて、動力源11の制御部(図示せず)に入力される。動力源11は駆動力制御信号Cpにもとづいて駆動して駆動力を発生する。このように動力源11に発生する駆動力は、横加加速度Gyjkに対応した駆動力になる。
また、補正演算部23には、横G加速度演算部21が算出する実横加速度Gr及び横加加速度Gyjkと、舵角センサ121aが出力する舵角信号Shが入力される。
制動力制御信号生成部24aは、制動力目標値Btに相当する制動力をブレーキ動作部132(図1参照)で発生させるブレーキ液圧が液圧発生部133で発生するような制御信号(液圧制御信号Cb)を設定する。
液圧発生部133で発生したブレーキ液圧でブレーキ動作部132(図1参照)が駆動し、前輪WF(図1参照)及び後輪WR(図1参照)に制動力が発生する。前輪WF及び後輪WRに発生する制動力は、横加加速度Gyjkに対応した制動力になる。
例えば、GVC演算部22は、横加加速度Gyjkの数値(絶対値)に所定のゲイン(Gc)を乗算した値を目標とする前後加速度とし、このような前後加速度(減速度)が生じるような基準制動力目標値Btsを設定する。
つまり、GVC演算部22を有する車両運動制御装置1は、旋回開始時に制動力を発生することで、タイヤ力を有効に利用した効率のよい、且つ、安定した旋回を実現することができる。
そして、横加加速度Gyjkが大きいほど大きな基準制動力目標値Btsが設定されて、車両10に発生する制動力が大きくなる。したがって、横加加速度Gyjkが大きいほど前輪WFにかかる荷重が増大するので、旋回開始時の初期段階においてステアリングホイール121が操舵され始める時点で前輪WFにかかる荷重が増大する。これによって、特に旋回開始時の初期段階においてタイヤ力が有効に利用される。
これによって、車両10(図1参照)は、カーブでの旋回走行から直線区間での直線走行に移行する旋回終了時のときに効率よく加速する。
つまり、GVC演算部22を有する車両運動制御装置1は、旋回終了時のときに駆動力を発生することで、効率のよい加速を実現することができる。
補正演算部23は、制動力フィルタ23Bを有する。GVC演算部22(図2参照)が設定する基準制動力目標値Btsは制動力フィルタ23Bに入力される。
図5に示すように、制動力フィルタ23Bはローパスフィルタ(LPF)である。
そして、補正演算部23は、制動力フィルタ23B(LPF)で基準制動力目標値Btsをフィルタリングし、フィルタリングされた基準制動力目標値Btsを制動力目標値Btとして出力する。
なお、本実施形態において、入力信号(基準制動力目標値Bts)の変化速度の大きさは、入力信号が所定の単位量(1)だけ、時間(Δt1)で変化するときの速度(周波数成分)として示す。すなわち、所定の単位量だけ変化するのに要する時間が短いほど変化速度が高く、入力信号が急速に変化していることを示す。
また、制動力フィルタ23Bにおける通常カットオフ周波数の値(1/sn)は、車両10(図1参照)に要求される走行性能等に応じて適宜決定される値である。
図6に示すように、緊急操舵判定部230はマップ判定部232を有する。マップ判定部232は判定マップMP23を有する。判定マップMP23は、実横加速度Grと要求減速度Ra(GVC演算部22が要求する減速度)に対応した緊急操舵の領域を示すマップである。このような判定マップMP23は、事前の実験計測やシミュレーションによってあらかじめ設定されている。
マップ判定部232は、実横加速度Grに対する要求減速度Raが、判定マップMP23に斜線部で示される常用領域(NORM)にあるとき、通常操舵と判定する(一例をXnで示す)。また、マップ判定部232は、実横加速度Grに対する要求減速度Raが、判定マップMP23にドット部で示される緊急領域(EMG)にあるとき緊急操舵と判定する(一例をXeで示す)。
操舵角速度判定部233bは、入力された操舵角速度θvが所定値より高いとき緊急操舵と判定する。また、操舵角速度判定部233bは、操舵角速度θvが所定値以下のとき通常操舵と判定する。
操舵角速度判定部233bが緊急操舵と判定するときの操舵角速度θvの所定値は、車両10(図1参照)に要求される走行性能等に応じて適宜決定される値である。
緊急操舵判定部230は、マップ判定部232及び操舵角速度判定部233bがともに通常操舵と判定した場合、境界値変動信号SigFBをOFF信号に設定して信号発生部234から出力する。また、緊急操舵判定部230は、マップ判定部232と操舵角速度判定部233bの少なくとも一方が緊急操舵と判定した場合、境界値変動信号SigFBをON信号に設定して信号発生部234から出力する。
図7はカットオフ周波数が変更された制動力フィルタの特性を示す図である。図7に示すように、補正演算部23(図4参照)は、境界値変動信号SigFBがON信号の場合、カットオフ周波数を通常カットオフ周波数(破線)より高い緊急時カットオフ周波数(値:1/se)に変更する(実線)。
例えば、緊急時カットオフ周波数の値(1/se)は、図5の「CASE(B)」において、基準制動力目標値Btsの変化が減衰される変化速度の大きさ(1/Δt2)よりも大きく設定される。
この場合、図7に「CASE(B)」として示すように、入力信号となる基準制動力目標値Btsの変化速度の大きさ(1/Δt2)が大きくても、制動力フィルタ23Bからの出力信号(制動力目標値Bt)が入力信号(基準制動力目標値Bts)と等しくなる(Bt=Bts)。つまり、高い変化速度で変化する入力信号(基準制動力目標値Bts)が減衰されずに制動力目標値Btとして出力される。
このように、図7に示す一例では、基準制動力目標値Btsの変化速度が高い状態「CASE(B)」であっても、基準制動力目標値Btsの変化速度が低い状態「CASE(A)」と同様に、基準制動力目標値Btsの変化が減衰することなく制動力目標値Btが出力される。
図8に実線で示すように基準制動力目標値Btsが変化する場合、制動力目標値Btは破線に示すように変化する。
このとき、緊急操舵判定部230(図4参照)が通常操舵(NORM)と判定すると、補正演算部23(図4参照)は、図5に示すように、制動力フィルタ23Bにおける閾値(カットオフ周波数)を通常カットオフ周波数(値:1/sn)に設定する。
したがって、図8に示すように、基準制動力目標値Btsの変化速度が高い場合(特に基準制動力目標値Btsの発生時や解消時)、通常操舵のときには、制動力目標値Btが基準制動力目標値Btsの変化に対して緩やかに変化する。これによって、車両10(図1参照)に発生する制動力の目標値が緩やかに変化するので、車両10に発生する制動力が緩やかに変化する。このように、通常操舵の場合、車両10に発生する制動力が緩やかに変化するので運転者の覚える違和感が軽減される。
したがって、図8に示すように、基準制動力目標値Btsの変化速度が高くても緊急操舵のときには制動力目標値Btが基準制動力目標値Btsの変化に追従して速やかに変化する。これによって、車両10(図1参照)に発生する制動力の目標値が基準制動力目標値Btsの変化に速やかに追従して変化するので、車両10に発生する制動力は基準制動力目標値Btsの変化に速やかに追従する。このように、緊急操舵の場合、車両10に発生する制動力が基準制動力目標値Btsに追従して速やかに変化するので、車両10には、GVC演算部22(図2参照)が設定する通りに制動力が発生する。
例えば、図9に示すように、緊急領域(EMG)において、緊急度が複数のレベル(例えば4つのレベルLV1〜LV4)で重み付けされている判定マップMP23aを有するマップ判定部232aであってもよい。また、緊急度に対応した複数(例えば4つ)のカットオフ周波数(値:FB1〜FB4)を選択する信号発生部234aであってもよい。そして、マップ判定部232aが、実横加速度Grと要求減速度Raにもとづいて判定マップMP23aから緊急度を設定し、その緊急度に応じたカットオフ周波数の値が信号発生部234aで選択される構成であってもよい。この場合、緊急操舵判定部230(図2参照)は信号発生部234aで選択したカットオフ周波数の値を境界値変動信号SigFBとして出力する。
そして、補正演算部23(図4参照)は、境界値変動信号SigFBにもとづいて制動力フィルタ23B(図7参照)のカットオフ周波数の値を変更する構成であってもよい。
補正演算部23(図4参照)は、境界値変動信号SigFBにもとづいて制動力フィルタ23B(図7参照)のカットオフ周波数の値を「FB2」に設定する。
このような構成であれば、緊急操舵の緊急度に応じて、車両10(図1参照)に好適に制動力を発生させることができ、より効果的に走行の安定性を向上できる。
この構成に限定されず、動力源11のスロットル弁(図示せず)がスロットルペダル111と機械的に接続された構成であってもよい。この場合、スロットル弁は、スロットルペダル111の操作と独立して車両運動制御装置1で制御される構成とすればよい。
同様に、ステアリングホイール121とラック軸123が機械的に接続された構成であってもよい。この場合、ラック軸123が転舵モータ122で変位可能に構成されていればよい。
同様に、ブレーキペダル131と液圧発生部133が機械的に接続された構成であってもよい。この場合、アクチュエータ133aの駆動で液圧発生部133にブレーキ液圧が発生可能に構成されていればよい。
10 車両
14 横加速度センサ(横加速度検出手段)
21 横G加速度演算部(横加加速度演算部)
22 GVC演算部(制動力目標値演算部)
23 補正演算部
132 ブレーキ動作部(制動力発生部)
Bts 基準制動力目標値(制動力目標値)
Gr 実横加速度
Gyjk 横加加速度
Claims (3)
- 横加速度検出手段が検出する車両の実横加速度を微分して横加加速度を算出する横加加速度演算部と、
前記横加加速度にもとづいて制動力目標値の基準値を設定する制動力目標値演算部と、
前記基準値をローパスフィルタでフィルタリングして前記制動力目標値を設定する補正演算部と、を有し、
前記制動力目標値に応じた制動力を制動力発生部で発生させて、前記車両の前後加速度を調節する車両運動制御装置において、
前記補正演算部は、
前記フィルタリングによって、閾値より高い変化速度で変化する前記基準値に対する前記制動力目標値の変化に遅れを生じさせ、
ステアリングホイールの操舵角速度が所定値より高いとき、前記操舵角速度が前記所定値より低いときよりも前記ローパスフィルタのカットオフ周波数を高くすることを特徴とする車両運動制御装置。 - 前記制動力目標値演算部は、前記横加加速度がプラスのときに前記基準値を設定することを特徴とする請求項1に記載の車両運動制御装置。
- 前記制動力目標値演算部は、前記横加加速度が大きいほど大きな前記基準値を設定することを特徴とする請求項2に記載の車両運動制御装置。
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