JP6452549B2 - タイヤ及びその製造方法 - Google Patents

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本発明は、リムに装着されるタイヤ及びその製造方法にかかり、特に、外装用部材の少なくとも一部に樹脂を含むタイヤ及びその製造方法に関する。
従来、樹脂を含むタイヤ骨格体にゴムを用いたトレッド等の外装用部材を取り付けたタイヤが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2012−46030号公報
タイヤ骨格体に樹脂材料を用いる場合、樹脂として種々の材料を選択可能である一方、選択された材料がタイヤとして要求される性能を発揮することが求められる。
そして、タイヤ骨格体に外装用部材を固定するために接着剤を用いる場合、両部材に用いられている材料と接着剤との相性を考慮した上で、タイヤとして要求される性能を発揮しうる接着剤を選択することが望ましい。しかし、樹脂材料を用いたタイヤ骨格体にゴム製の外装用部材を十分に固定させるための接着剤の選択は難しく、両部材の固定については未だ改善の余地がある。
特に、接着剤を介してタイヤ骨格体に外装用部材を積層させた後に、外装用部材に含まれるゴムを加硫する場合は、加硫時の熱によって、接着剤に含まれる成分が分解して気体が発生することが考えられる。そして気体が発生しやすい接着剤を用いた場合は、気体の発生に起因して、接着層(接着層の層内、又は接着層と外装用部材との界面)に空隙が生じることが考えられる。
本発明は、前記事情を踏まえ、接着層における空隙が少ないタイヤ、及びその製造方法を提供することを目的とする。
[1]熱可塑性樹脂を含む樹脂材料で形成され且つ環状のタイヤ骨格体と、ポリチオール化合物(A)、チオール基と反応する官能基を有する化合物(B)、及び分解生成物の沸点が150℃以上である過酸化物からなる熱ラジカル発生剤(C)を含む組成物を用いて形成された組成物層を加熱して得た接着層と、少なくとも一部が前記組成物層に接した未加硫ゴムを加硫して得た加硫ゴムを含み、前記接着層を介して前記タイヤ骨格体に設けられた外装用部材と、を有するタイヤ。
[2]前記化合物(B)は、前記チオール基と反応する官能基として、イソシアネート基、アクリロイル基、メタクリロイル基、エポキシ基、アリル基、ビニル基、アリルオキシ基、ビニルオキシ基、及びノルボルネン骨格を有する基から選択される少なくとも1種を含む[1]に記載のタイヤ。
[3]前記化合物(B)がポリイソシアネート化合物であり、前記接着層に含まれる窒素原子の数(N)に対する、前記接着層に含まれる硫黄原子の数(S)の比(S/N)が3以上である[1]又は[2]に記載のタイヤ。
[4]前記ポリチオール化合物(A)に含まれるチオール基の合計モル数(SH)に対する、前記化合物(B)に含まれる前記チオール基と反応する官能基の合計モル数(FG)の比(FG/SH)が0.22以下である[1]〜[3]のいずれか一つに記載のタイヤ。
[5]前記ポリチオール化合物(A)に含まれるチオール基の合計モル数(SH)に対する、前記化合物(B)に含まれる前記チオール基と反応する官能基の合計モル数(FG)の比(FG/SH)が0.075以上である[1]〜[4]のいずれか一つに記載のタイヤ。
[6]前記化合物(B)は、芳香族環、脂肪族環、及び複素環の少なくとも1種を有する[1]〜[5]のいずれか一つに記載のタイヤ。
[7]前記接着層の厚みは、10μm以上1000μm以下である[1]〜[6]のいずれか一つに記載のタイヤ。
[8]前記組成物は、前記ポリチオール化合物(A)と前記化合物(B)との反応を促進させる触媒(D)をさらに含む[1]〜[7]のいずれか一つに記載のタイヤ。
[9][1]〜[8]のいずれか1つに記載のタイヤの製造方法であって、熱可塑性樹脂材料で形成され且つ環状のタイヤ骨格体;ポリチオール化合物(A)、チオール基と反応する官能基を有する化合物(B)、及び分解生成物の沸点が150℃以上である過酸化物からなる熱ラジカル発生剤(C)を含む組成物を用いて形成された組成物層;並びに未加硫ゴムを含み、前記未加硫ゴムの少なくとも一部が前記組成物層に接し、前記組成物層を介して前記タイヤ骨格体に設けられた未加硫の外装用部材;を含む生タイヤを形成する生タイヤ形成工程と、前記生タイヤを加熱することで、前記外装用部材に含まれる前記未加硫ゴムを加硫するとともに、前記組成物層に含まれる熱ラジカル活性剤(C)を活性化させる、加熱工程と、を有する、タイヤの製造方法。
[10]前記加熱工程において前記生タイヤを加熱する温度は、前記熱ラジカル発生剤(C)の分解生成物の沸点をB(℃)としたとき、B−10(℃)以下である、[9]に記載のタイヤの製造方法。
本発明によれば、接着層における空隙が少ないタイヤ、及びその製造方法を提供することができる。
(A)は、第1実施形態に係るタイヤの一部の断面を示す斜視図であり、(B)は、リムに装着したビード部の断面図である。 第1実施形態のタイヤのタイヤケースのクラウン部に補強コードが埋設された状態を示すタイヤ回転軸に沿った断面図である。 第2実施形態に係るタイヤの一部の断面を示す斜視図である。
[タイヤ]
本発明のタイヤは、熱可塑性樹脂を含む樹脂材料で形成され且つ環状のタイヤ骨格体と、ポリチオール化合物(A)、チオール基と反応する官能基を有する化合物(B)、及び分解生成物の沸点が150℃以上である過酸化物からなる熱ラジカル発生剤(C)を含む組成物を用いて形成された組成物層を加熱して得た接着層と、少なくとも一部が前記組成物層に接した未加硫ゴムを加硫して得た加硫ゴムを含み、前記接着層を介して前記タイヤ骨格体に設けられた外装用部材と、を有する。
なお、本明細書を通じて、ポリチオール化合物(A)、チオール基と反応する官能基を有する化合物(B)、及び熱ラジカル発生剤(C)、並びに後述する触媒(D)及び表面調整剤(E)を、それぞれ、成分(A)、成分(B)、成分(C)、成分(D)、及び成分(E)ということがある。
また、成分(B)に含まれる「チオール基と反応する官能基」を、「反応性官能基」と称する場合がある。
また、「熱ラジカル発生剤の分解生成物」は、熱ラジカル発生剤が熱によって活性化して分解し、ラジカルが発生した結果生成する化合物を意味する。
本明細書において「樹脂」とは、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂を含む概念であるが、天然ゴムや合成ゴム等の加硫ゴムは含まない。
「ゴム」とは、弾性を有する高分子化合物であるが、本明細書では、熱可塑性樹脂エラストマーとは区別される。
「熱可塑性樹脂」とは、温度上昇と共に材料が軟化、流動し、冷却すると比較的硬く強度のある状態になる高分子化合物をいい、熱可塑性エラストマーを含む概念である。また「熱可塑性樹脂エラストマー」とは、弾性を有する高分子化合物であって、結晶性で融点の高いハードセグメント若しくは高い凝集力のハードセグメントを構成するポリマーと、非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを構成するポリマーとを有する共重合体からなる熱可塑性樹脂を意味する。
なお、熱可塑性樹脂エラストマーは、ハードセグメントが擬似的な架橋点として振る舞い弾性を発現する(所謂、物理的架橋)。一方、ゴムは分子鎖中に2重結合などを有しており、硫黄等を加えて架橋(加硫)することで、3次元の網目構造を生成し、弾性を発現する(化学的架橋)。この為、熱可塑性樹脂エラストマーは、加熱することでハードセグメントが溶融し、冷却することで再び擬似的な架橋点が形成される。
本発明のタイヤは、成分(C)として分解生成物の沸点が150℃以上の熱ラジカル発生剤を用いているため、接着層における空隙が少ないタイヤが得られる。その理由は明らかではないが、次のように推測される。
過酸化物からなる熱ラジカル発生剤は、熱によってペルオキシ基が解離してラジカルが発生し、発生したラジカルが成分(A)のチオール基に作用してチイルラジカルを発生させたのち、熱ラジカル発生剤の分解生成物となって安定化する。しかしながら、例えば分解生成物の沸点が加硫温度よりも低い熱ラジカル発生剤を用いた場合、加硫時に組成物層の層内又は組成物層と外装用部材のゴムとの境界で気体が発生し、その結果、得られたタイヤの接着層(特に接着層と外装用部材との界面)に空隙が存在してしまうことが考えられる。
これに対して、本発明のタイヤは、成分(C)として分解生成物の沸点が150℃以上の熱ラジカル発生剤を用いているため、加硫時に気体が発生しにくく、接着層における空隙が少なくなると推測される。
また本発明のタイヤは、前記の通り、成分(A)、成分(B)、及び成分(C)を含む組成物を用いているため、タイヤ骨格体から外装用部材が剥離しにくい。その理由は明らかではないが、次のように推測される。
まず、組成物層が形成される過程及び組成物層から接着層が得られる過程の少なくとも一方において、組成物に含まれる成分(A)の一部のチオール基と成分(B)の反応性官能基とが反応することで、成分(A)と成分(B)との重合が起こる。この成分(A)と成分(B)との共重合により、接着層の膜強度が高くなると考えられる。
一方、組成物層を加熱することで成分(C)が活性化してラジカルが発生し、発生したラジカルが、成分(A)のチオール基のうち成分(B)の反応性官能基と反応していないチオール基に作用してチイルラジカルを生成する。そしてチイルラジカルが、組成物層に接触したゴムに含まれる炭素−炭素二重結合とチオール・エン反応(Thiol-Ene Reactions)を起こし、組成物層とゴムとの界面に化学的な結合が生じることで、組成物層が接着層となる。この界面における化学的な結合によって、接着層と外装用部材との間における界面接着力が高くなると考えられる。
以上のように、成分(A)に含まれるチオール基のうち、一部のチオール基が成分(B)と共重合し、他の一部がゴムとチオール・エン反応することで、膜強度と界面接着力との両方が得られ、タイヤ骨格体から外装用部材が剥離しにくくなると推測される。以下、膜強度と界面接着力とを含めた総合的な接着の力を「接着力」と称する場合がある。
《タイヤ骨格体》
本発明におけるタイヤ骨格体は、熱可塑性樹脂を含む樹脂材料で形成されている。
本発明において、「樹脂材料」は、熱可塑性樹脂を少なくとも含み、添加剤等の他の成分を含んでいてもよい。
また、本明細書において「樹脂」とは、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂を含む概念であるが、天然ゴムや合成ゴム等の加硫ゴムは含まない。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド系熱可塑性樹脂、ポリエステル系熱可塑性樹脂、オレフィン系熱可塑性樹脂、ポリウレタン系熱可塑性樹脂、塩化ビニル系熱可塑性樹脂、ポリスチレン系熱可塑性樹脂等を例示することができる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、ポリアミド系熱可塑性樹脂、ポリエステル系熱可塑性樹脂、及びオレフィン系熱可塑性樹脂が好ましく、ポリアミド系熱可塑性樹脂及びオレフィン系熱可塑性樹脂が更に好ましい。
熱可塑性エラストマーとしては、例えば、JIS K6418に規定されるポリアミド系熱可塑性エラストマー(TPA)、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、ポリエステル系熱可塑性エラストマー(TPEE)、熱可塑性ゴム架橋体(TPV)、若しくはその他の熱可塑性エラストマー(TPZ)等が挙げられる。なお、走行時に必要とされる弾性、製造時の成形性等を考慮すると、タイヤ骨格体を形成する樹脂材料としては、熱可塑性樹脂を用いることが好ましく、熱可塑性エラストマーを用いることが更に好ましい。さらに、補強金属コード部材を被覆する熱可塑性樹脂としてポリアミド系熱可塑性樹脂を用いる場合には、特にポリアミド系熱可塑性エラストマーを用いるのが好ましい。
<ポリアミド系熱可塑性エラストマー>
ポリアミド系熱可塑性エラストマーは、結晶性で融点の高いハードセグメントを構成するポリマーと非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを構成するポリマーとを有する共重合体からなる熱可塑性エラストマーであって、ハードセグメントを構成するポリマーの主鎖にアミド結合(−CONH−)を有するものを意味する。
−ハードセグメント−
ハードセグメントを形成するポリアミド(ハードセグメントを形成する高分子化合物)としては、例えば、下記一般式(1)又は一般式(2)で表されるモノマーを用いて合成されるポリアミドを挙げることができる。
一般式(1)中、Rは、炭素数2〜20の炭化水素の分子鎖、又は、炭素数2〜20のアルキレン基を表す。
一般式(2)中、Rは、炭素数3〜20の炭化水素の分子鎖、又は、炭素数3〜20のアルキレン基を表す。
前記一般式(1)又は一般式(2)で表されるモノマーとしては、ω−アミノカルボン酸やラクタムが挙げられる。また、前記ハードセグメントを形成するポリアミドとしては、これらω−アミノカルボン酸やラクタムの重縮合体や、ジアミンとジカルボン酸との共縮重合体等が挙げられる。
前記ハードセグメントを形成するポリアミドとしては、ε-カプロラクタムを開環重縮合したポリアミド(ポリアミド6)、ウンデカンラクタムを開環重縮合したポリアミド(ポリアミド11)、ラウリルラクタムを開環重縮合したポリアミド(ポリアミド12)、12−アミノドデカン酸を重縮合したポリアミド(ポリアミド12)、ジアミンと二塩基酸との重縮合ポリアミド(ポリアミド66)又はメタキシレンジアミンを構成単位として有するポリアミド(アミドMX)等を挙げることができる。
また、メタキシレンジアミンを構成単位として有するアミドMXは、例えば、下記構成単位(A−1)〔(A−1)中、nは任意の繰り返し単位数を表す〕で表わすことができ、例えば、nとしては2〜100が好ましく、3〜50が更に好ましい。
前記ハードセグメントを形成するポリマー(ポリアミド)の数平均分子量としては、溶融成形性、強靭性、及び低温柔軟性の観点から、300以上15000以下が好ましい。
−ソフトセグメント−
前記ソフトセグメントを形成するポリマー(ソフトセグメントを形成する高分子化合物)としては、例えば、ポリエステルや、ポリエーテルが挙げられ、更に、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)、ABA型トリブロックポリエーテル等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を用いることができる。
また、ソフトセグメントを形成するポリマーは、末端に官能基が導入されたものでもよい。前記官能基は、ソフトセグメントを形成するポリマーと反応させる化合物(ハードセグメントを形成するポリマー、鎖長延長剤等)の末端基と反応するものであればよい。例えばソフトセグメントを形成するポリマーと反応させる化合物の末端基がカルボキシ基である場合、前記官能基としてはアミノ基等が挙げられる。
ソフトセグメントを形成するポリマーのうち、アミノ基が末端に導入されたものとしては、例えばポリエーテルの末端にアンモニア等を反応させたポリエーテルジアミン等が挙げられ、具体的にはABA型トリブロックポリエーテルジアミン等が挙げられる。
ここで、「ABA型トリブロックポリエーテル」とは、下記一般式(3)に示されるポリエーテルを挙げることができる。
一般式(3)中、x及びzは、それぞれ独立に1〜20の整数を表す。yは、4〜50の整数を表す。
また、「ABA型トリブロックポリエーテルジアミン」とは、下記一般式(N)に示されるポリエーテルジアミンを挙げることができる。
一般式(N)中、X及びZは、それぞれ独立に1〜20の整数を表す。Yは、4〜50の整数を表す。
ソフトセグメントを形成するポリマーの数平均分子量としては、強靱性及び低温柔軟性の観点から、200以上6000以下が好ましく、400以上4000以下がより好ましく、600以上2000以下が特に好ましい。
−結合部−
上述の通り、ポリアミド系熱可塑性エラストマーの結合部としては、例えば、鎖長延長剤により結合された部分が挙げられる。
前記鎖長延長剤としては、例えば、ジカルボン酸、ジオール、及びジイソシアネート等が挙げられる。前記ジカルボン酸としては、例えば、脂肪族、脂環式及び芳香族ジカルボン酸から選ばれる少なくとも一種又はこれらの誘導体を用いることができる。前記ジオールとしては、例えば、脂肪族ジオール、脂環式ジオール、芳香族ジオールが挙げられる。前記ジイソシアネートとしては、例えば、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネートやこれらの混合物を用いることができる。
−分子量−
ポリアミド系熱可塑性エラストマーの数平均分子量は、例えば15,700〜200,000が挙げられる。前記ポリアミド系熱可塑性エラストマーの数平均分子量が15,700未満であると、リム組み性が低下してしまう場合がある。また、前記ポリアミド系熱可塑性エラストマーの数平均分子量が200,000を超えると、溶融粘度が高くなり、タイヤ骨格体を形成する際の充填不足を防ぐために成形温度、金型温度を高くする必要がある場合がある。その場合、サイクルタイムが長くなる為、生産性が劣る。
前記ポリアミド系熱可塑性エラストマーの数平均分子量としては、20,000〜160,000が好ましい。前記ポリアミド系熱可塑性エラストマーの数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することができ、例えば、東ソー株式会社製の「HLC−8320GPC EcoSEC」等のGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)を用いることができる。後述する他の熱可塑性エラストマーの数平均分子量の測定についても同様である。
前記ポリアミド系熱可塑性エラストマーにおいて、前記ハードセグメントの質量(x)とソフトセグメントの質量(y)との比(x/y)は、タイヤとしての剛性を担保する観点及びリム組みを可能にする観点から、30/70〜80/20が好ましく、50/50〜75/25が更に好ましい。
前記鎖長延長剤を用いる場合、その含有量は前記ソフトセグメントを形成するポリマーの末端の官能基(例えば水酸基又はアミノ基)と、鎖長延長剤のカルボキシル基とが、ほぼ等モルになるように設定されることが好ましい。
−製造方法−
前記ポリアミド系熱可塑性エラストマーは、前記ハードセグメントを形成するポリマー及びソフトセグメントを形成するポリマーを公知の方法によって共重合することで合成することができる。
例えば、前記ポリアミド系熱可塑性エラストマーは、ハードセグメントを構成するモノマー(例えば、12−アミノドデカン酸などのω−アミノカルボン酸や、ラウリルラクタムなどのラクタム)と鎖長延長剤(例えば、アジピン酸又はドデカンジカルボン酸)とを容器内で重合させた後、ソフトセグメントを構成するポリマー(例えば、ポリプロピレングリコール、ABA型トリブロックポリエーテル、これらの末端がアミノ基に変性されたジアミン等)を添加し、さらに重合させることで得ることができる。
特に、ハードセグメントを構成するモノマーとしてω−アミノカルボン酸を使用する場合、常圧溶融重合又は常圧溶融重合に、更に減圧溶融重合を行って合成することができる。ハードセグメントを構成するモノマーとしてラクタムを用いる場合には、適量の水を共存させることができ、0.1〜5MPaの加圧下での溶融重合とそれに続く常圧溶融重合及び/又は減圧溶融重合からなる方法で製造することができる。また、これら合成反応は、回分式及び連続式のいずれでも実施することができる。また、上述の合成反応には、バッチ式反応釜、一槽式若しくは多槽式の連続反応装置、管状連続反応装置などを単独であるいは適宜組み合わせて用いてもよい。
<ポリオレフィン系熱可塑性樹脂エラストマー>
ポリオレフィン系熱可塑性樹脂エラストマーは、少なくともポリオレフィンが結晶性で融点の高いハードセグメントを構成し、他のポリマー(例えば、他のポリオレフィン、ポリビニル化合物等)が非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを構成している材料を意味し、例えば、JIS K6418:2007に規定されるポリオレフィン系熱可塑性樹脂エラストマー(TPO)が挙げられる。
−ハードセグメント、ソフトセグメント−
ハードセグメントを形成するポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、アイソタクチックポリプロピレン、ポリブテン等が挙げられる。
ソフトセグメントを形成するポリマーとしては、ポリオレフィンやポリビニル化合物が挙げられるが、例えば、EPMやEPDM等のエチレンプロピレンゴムをソフトセグメントとして用いてもよい。
ポリオレフィン系熱可塑性樹脂エラストマーとしては、オレフィン−α−オレフィンランダム共重合体、オレフィンブロック共重合体等が挙げられ、例えば、プロピレンブロック共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−1−ヘキセン共重合体、プロピレン−4−メチル−1ペンテン共重合体、プロピレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−4−メチル−ペンテン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、1−ブテン−1−ヘキセン共重合体、1−ブテン−4−メチル−ペンテン、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、エチレン−メチルアクリレート共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−ブチルアクリレート共重合体、プロピレン−メタクリル酸共重合体、プロピレン−メタクリル酸メチル共重合体、プロピレン−メタクリル酸エチル共重合体、プロピレン−メタクリル酸ブチル共重合体、プロピレン−メチルアクリレート共重合体、プロピレン−エチルアクリレート共重合体、プロピレン−ブチルアクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、プロピレン−酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。
前記ポリオレフィン系熱可塑性樹脂エラストマー中のポリオレフィン含率は、50質量%以上100質量%以下が好ましい。
ポリオレフィン系熱可塑性樹脂エラストマーとしては、例えば、酸性基を有するポリオレフィン系熱可塑性樹脂エラストマー(酸変性ポリオレフィン系熱可塑性樹脂エラストマー)を用いることもできる。
ここで「酸変性」とはカルボン酸基、硫酸基、燐酸基等の酸性基を有する不飽和化合物をオレフィン系熱可塑性樹脂エラストマーに結合させることをいう。例えば、酸性基を有する不飽和化合物として、不飽和カルボン酸(一般的には、無水マレイン酸)を用いるとき、オレフィン系熱可塑性樹脂エラストマーに、不飽和カルボン酸の不飽和結合部位を結合(例えば、グラフト重合)させることが挙げられる。
−分子量−
ポリオレフィン系熱可塑性樹脂エラストマーの数平均分子量としては、5,000〜10,000,000であることが好ましい。ポリオレフィン系熱可塑性樹脂エラストマーの数平均分子量が5,000〜10,000,000にあると、熱可塑性樹脂材料の機械的物性が十分であり、加工性にも優れる。同様の観点から、前記ポリオレフィン系熱可塑性樹脂エラストマーの数平均分子量は、7,000〜1,000,000であることが更に好ましく、10,000〜1,000,000が特に好ましい。
前記ポリオレフィン系熱可塑性樹脂エラストマーにおける、ハードセグメント(x)とソフトセグメント(y)との質量比(x:y)は、成形性の観点から、50:50〜95:5が好ましく、50:50〜90:10が更に好ましい。
−製造方法−
ポリオレフィン系熱可塑性樹脂エラストマーは、公知の方法によって共重合することで合成することができる。
ポリオレフィン系熱可塑性樹脂エラストマーの酸変性は、例えば、2軸押出機等を用い、オレフィン系熱可塑性樹脂エラストマーと、酸性基を有する不飽和化合物(例えば、不飽和カルボン酸)と有機過酸化物とを混練してグラフト共重合させることで行うことができる。前記酸性基を有する不飽和化合物の添加量は、前記オレフィン系熱可塑性樹脂エラストマー100質量部に対し、0.1質量部〜20質量部が好ましく、更に0.5質量部〜10質量部が好ましい。
<その他添加剤>
タイヤ骨格体には、使用する材料に応じて、各種充填剤(例えば、シリカ、炭酸カルシウム、クレイ)、老化防止剤、加硫剤、加硫促進剤、金属酸化物、プロセスオイル、可塑剤、着色剤、耐候剤、補強材等の各種添加剤を含有させてもよい。前記添加剤の樹脂材料(タイヤ骨格体)中の含有量は特に限定はなく、本発明の効果を損なわない範囲で適宜用いることができる。
老化防止剤としては、例えば、国際公開WO2005/063482号公報に記載の老化防止剤が挙げられる。具体的には、例えばフェニル−2−ナフチルアミン、フェニル−1−ナフチルアミン等のナフチルアミン系、4,4’−α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、p−(P−トルエン・スルフォニルアミド)−ジフェニルアミン等のジフェニルアミン系、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン等のp−フェニレンジアミン系などのアミン系老化防止剤や、これらの誘導体もしくは混合物などが挙げられる。
加硫剤としては、公知の加硫剤、例えば硫黄、有機過酸化物、樹脂加硫剤などを用いることができる。前記加硫促進剤としては、公知の加硫促進剤、例えばアルデヒド類、アンモニア類、アミン類、グアニジン類、チオウレア類、チアゾール類、スルフェンアミド類、チウラム類、ジチオカーバメイト類、キサンテート類などを用いることができる。前記脂肪酸としては、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸などが挙げられ、また、これらはステアリン酸亜鉛のように塩の状態で配合されてもよい。これらの中でも、ステアリン酸が好ましい。また、金属酸化物としては、亜鉛華(ZnO)、酸化鉄、酸化マグネシウムなどが挙げられ、中でも亜鉛華が好ましい。前記プロセスオイルは、アロマティック系、ナフテン系、パラフィン系のいずれを用いてもよい。
<タイヤ骨格体に含まれる樹脂材料の物性>
樹脂材料の融点(又は軟化点)としては、通常100℃〜350℃、好ましくは100℃〜250℃程度であるが、タイヤの生産性の観点から120℃〜250℃程度が好ましく、120℃〜200℃が更に好ましい。
このように、融点が120℃〜250℃の樹脂材料を用いることで、例えばタイヤの骨格体を、その分割体(骨格片)を融着して形成する場合に、120℃〜250℃の周辺温度範囲で融着された骨格体であってもタイヤ骨格片同士の接着強度が十分である。このため、本発明のタイヤは耐パンク性や耐摩耗性など走行時における耐久性に優れる。尚、前記加熱温度は、タイヤ骨格片を形成する樹脂材料の融点(又は軟化点)よりも10℃〜150℃高い温度が好ましく、10℃〜100℃高い温度が更に好ましい。
樹脂材料のJIS K7113:1995に規定される引張降伏強さは、5MPa以上が好ましく、5MPa〜20MPaが好ましく、5MPa〜17MPaがさらに好ましい。樹脂材料の引張降伏強さが、5MPa以上であると、走行時などにタイヤにかかる荷重に対する変形に耐えることができる。
樹脂材料のJIS K7113:1995に規定される引張降伏伸びは、10%以上が好ましく、10%〜70%が好ましく、15%〜60%がさらに好ましい。樹脂材料の引張降伏伸びが、10%以上であると、弾性領域が大きく、リム組み性をよくすることができる。
樹脂材料のJIS K7113:1995に規定される引張破断伸びとしては、50%以上が好ましく、100%以上が好ましく、150%以上がさらに好ましく、200%以上が特に好ましい。樹脂材料の引張破断伸びが、50%以上であると、リム組み性がよく、衝突に対して破壊しにくくすることができる。
樹脂材料のISO75−2又はASTM D648に規定される荷重たわみ温度(0.45MPa荷重時)としては、50℃以上が好ましく、50℃〜150℃が好ましく、50℃〜130℃がさらに好ましい。樹脂材料の荷重たわみ温度が、50℃以上であると、タイヤの製造において加硫を行う場合であってもタイヤ骨格体の変形を抑制することができる。
樹脂材料の引張弾性率としては、リム組み性および内圧保持性の観点から100MPa〜500MPaが好ましく、200MPa〜400MPaが更に好ましく、200MPa〜350MPaが特に好ましい。
《接着層》
接着層は、前記の通り、成分(A)、成分(B)、及び成分(C)を含む組成物を用いて形成された組成物層を加熱することで得られる。具体的には、組成物層と外装用部材に含まれる未加硫ゴムとを接触させた状態で加熱し、成分(C)を活性化させることで、接着層が得られる。このようにして形成された接着層では、前述のように、接着層と外装用部材とが化学的に結合し、これによって接着層と外装用部材との界面における接着力が得られると考えられる。
また組成物層としては、例えば、組成物を塗布して得られる塗膜の層のほか、前記塗膜を形成する組成物中の成分(A)と成分(B)とが重合して組成物がフィルム化した接着組成物膜の層が含まれる。
ここで「フィルム化する」とは、組成物が膜状に成形され、組成物中の成分(A)と成分(B)とが重合して硬化することで、形状保持性が付与されることをいう。前記「塗膜の層」は、組成物がフィルム化される前の状態であり、未重合の成分(A)及び成分(B)が存在する。
すなわち組成物層が塗膜の層である場合、塗膜と外装用部材に含まれる未加硫ゴムとを接触させた状態で加熱することで、未加硫ゴムが加硫され、界面におけるチオール・エン反応が起こるとともに、成分(A)と成分(B)とが重合して前記塗膜が接着層となる。
また、組成物層が接着組成物膜の層である場合、接着組成物膜が形成される過程で成分(A)と成分(B)とが重合する。そして、接着組成物膜と外装用部材に含まれる未加硫ゴムとを接触させた状態で加熱することで、未加硫ゴムが加硫されるとともに、界面におけるチオール・エン反応が起こることで前記接着組成物膜が接着層となる。
成分(B)として後述するポリイソシアネート化合物を用いる場合、接着層に含まれる窒素原子の数(N)に対する接着層に含まれる硫黄原子の数(S)の比(S/N)が3以上であることが望ましい。すなわち、成分(A)と成分(B)との重合及び界面におけるチオール・エン反応の結果得られた接着層における比(S/N)が3以上となるように配合された組成物を用いることが望ましい。例えば、組成物層が接着層となる過程で比(S/N)が変化しない場合、用いる組成物の比(S/N)(組成物に含まれる窒素原子の数(N)に対する組成物に含まれる硫黄原子の数(S)の比)を3以上とすることで、接着層における比(S/N)が3以上となる。
接着層における比(S/N)が3以上であると、比(S/N)が3未満である場合に比べて、外装用部材がタイヤ骨格体から剥離しにくくなる。その理由は定かではないが、成分(A)と成分(B)との共重合反応と、組成物層とゴムとのチオール・エン反応と、がバランスよく起こることで、高い膜強度と高い界面接着力との両方が得られるためと推測される。
ここで、接着層における比(S/N)は、接着層に含まれる窒素原子の数を「N」、接着層に含まれる硫黄原子の数を「S」としたとき、「比(S/N)=S÷N」で表される値である。
接着層における比(S/N)を測定する方法としては、例えば、元素分析等が挙げられる。具体的には、例えば、タイヤから外装用部材を取り除き、接着層を削り取って元素分析を行うことで、上記比(S/N)の値を確認することができる。
なお、接着層における比(S/N)は、接着力を得る観点から、4.44以上が好ましい。
接着層の厚みは、特に限定されないが、10μm以上1000μm以下が好ましく、30μm以上300μm以下がより好ましい。接着層の厚みが上記範囲であると、上記範囲よりも薄い場合に比べて外装用部材が剥離しにくくなり、上記範囲よりも厚い場合に比べて接着層への応力の集中が避けられるという利点がある。
以下、組成物について詳細に説明する。
<組成物>
組成物は、少なくとも成分(A)、成分(B)、及び成分(C)を含み、必要に応じてその他の成分を含んでもよい。
−ポリチオール化合物(A)−
本発明において、ポリチオール化合物(A)とは、1分子中にチオール基を2つ以上有する化合物のことをいう。成分(A)は、1種又は2種以上のポリチオール化合物を含んでいてもよい。
ポリチオール化合物(A)について、1分子中のチオール基の数は特に制限はないが、接着力を向上させる観点から、1分子中にチオール基を3つ以上有するものが好ましい。前記ポリチオール化合物(A)の1分子中のチオール基の数の上限については特に限定はなく、本発明の効果を阻害しない限り適宜選定することができる。前記ポリチオール化合物(A)について、1分子中のチオール基の数は、例えば、低分子化合物の場合と高分子化合物との場合で異なることがあるが、通常2〜7、好ましくは3〜6、更に好ましくは3〜4の範囲で適宜決定することができる。但し、当該範囲は本発明の範囲を制限するものではない。
また、ポリチオール化合物(A)には、1級、2級及び3級のチオールが含まれるが、接着力を向上させる観点から、1級チオールが好ましい。
ポリチオール化合物(A)の分子量は、接着力を向上させる観点から、好ましくは3000以下であり、より好ましくは2000以下であり、更に好ましくは1000以下であり、より更に好ましくは900以下であり、特に好ましくは800以下である。また、ポリチオール化合物(A)の分子量の下限は特に限定はないが、例えば、200以上が好ましく、300以上が更に好ましい。なお、ポリチオール化合物(A)がポリマーの場合、分子量とは、スチレン換算の数平均分子量のことをいう。
ポリチオール化合物(A)としては、例えば、ヘテロ原子を含んでいてもよい脂肪族ポリチオール及びヘテロ原子を含んでいてもよい芳香族ポリチオールが挙げられ、接着力を向上させる観点から、ヘテロ原子を含んでいてもよい脂肪族ポリチオールが好ましい。
ここで、「ヘテロ原子を含んでいてもよい脂肪族ポリチオール」とは、1分子中にチオール基を2つ以上有する、ヘテロ原子を含んでもよい脂肪族化合物のことをいう。また、「ヘテロ原子を含んでいてもよい芳香族ポリチオール」とは、1分子中にチオール基を2つ以上有する、ヘテロ原子を含んでもよい芳香族化合物のことをいう。
前記ヘテロ原子は、接着力の向上の観点から、好ましくは酸素、窒素、硫黄、リン、ハロゲン原子、及びケイ素から選択される少なくとも1種が挙げられ、更に好ましくは酸素、窒素、硫黄、リン、及びハロゲン原子から選択される少なくとも1種であり、特に好ましくは酸素、窒素、及び硫黄から選択される少なくとも1種である。
(ヘテロ原子を含んでいてもよい脂肪族ポリチオール)
前記ヘテロ原子を含んでいてもよい脂肪族ポリチオールとしては、例えば、炭素数2〜20のアルカンジチオール等のようにチオール基以外の部分が脂肪族炭化水素であるポリチオール、アルコールのハロヒドリン付加物のハロゲン原子をチオール基で置換してなるポリチオール、ポリエポキシド化合物の硫化水素反応生成物からなるポリチオール、分子内に水酸基2〜6個を有する多価アルコールとチオグリコール酸とのエステル化により得られるチオグリコール酸エステル化物、分子内に水酸基2〜6個を有する多価アルコールとメルカプト脂肪酸とのエステル化により得られるメルカプト脂肪酸エステル化物、イソシアヌレート化合物とチオールとを反応させてなるチオールイソシアヌレート化合物、ポリスルフィド基を含有するチオール、チオール基で変性されたシリコーン、チオール基で変性されたシルセスキオキサン等が挙げられる。
なお、前記分子内に水酸基2〜6個を有する多価アルコールとしては、例えば、炭素数2〜20のアルカンジオール、ポリ(オキシアルキレン)グリコール、グリセロール、ジグリセロール、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。
上述のヘテロ原子を含んでいてもよい脂肪族ポリチオールの例示中、接着力の向上の観点から、チオール基以外の部分が脂肪族炭化水素であるポリチオール、アルコールのハロヒドリン付加物のハロゲン原子をチオール基で置換してなるポリチオール、ポリエポキシド化合物の硫化水素反応生成物からなるポリチオール、チオグリコール酸エステル化物、メルカプト脂肪酸エステル化物、及びチオールイソシアヌレート化合物が好ましく、メルカプト脂肪酸エステル化物及びチオールイソシアヌレート化合物が更に好ましく、メルカプト脂肪酸エステル化物が特に好ましい。同様の観点から、ポリスルフィド基やシロキサン結合を含有しないチオールも好ましい。
(チオール基以外の部分が脂肪族炭化水素であるポリチオール)
チオール基以外の部分が脂肪族炭化水素であるポリチオールの例としては炭素数2〜20のアルカンジチオールがある。
前記炭素数2〜20のアルカンジチオールとしては、1,2−エタンジチオール、1,1−プロパンジチオール、1,2−プロパンジチオール、1,3−プロパンジチオール、2,2−プロパンジチオール、1,4−ブタンジチオール、2,3−ブタンジチオール、1,5−ペンタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1,8−オクタンジチオール、1,10−デカンジチオール、1,1−シクロヘキサンジチオール、1,2−シクロヘキサンジチオール等が挙げられる。
(チオグリコール酸エステル化物)
チオグリコール酸エステル化物としては、1,4−ブタンジオールビスチオグリコレート、1,6−ヘキサンジオールビスチオグリコレート、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート等が挙げられる。
(メルカプト脂肪酸エステル化物)
メルカプト脂肪酸エステル化物としては、接着力の向上の観点から、1級チオール基を有するβ−メルカプト脂肪酸エステル化物が好ましく、分子内に水酸基2〜6個を有する多価アルコールの、β−メルカプトプロピオン酸エステル化物が更に好ましい。また、1級チオール基を有するメルカプト脂肪酸エステル化物は、接着力の向上の観点から、1分子中におけるチオール基の数が4〜6個であることが好ましく、4個又は5個であることが好ましく、4個であることが更に好ましい。
前記1級チオール基を有するβ−メルカプトプロピオン酸エステル化物としては、好ましくはテトラエチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)[EGMP−4]、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)[TMMP]、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)[PEMP]、及びジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)[DPMP]が挙げられる。これらの中で、PEMP及びDPMPが好ましく、PEMPが更に好ましい。
なお、2級チオール基を有するβ−メルカプトプロピオン酸エステル化物としては、分子内に水酸基2〜6個を有する多価アルコール類と、β−メルカプトブタン酸とのエステル化物が挙げられ、具体的には、1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)等が挙げられる。
(チオールイソシアヌレート化合物)
イソシアヌレート化合物とチオールとを反応させてなるチオールイソシアヌレート化合物としては、接着力の向上の観点から、1級チオール基を有するチオールイソシアヌレート化合物が好ましい。また、1級チオール基を有するチオールイソシアヌレート化合物としては、接着力の向上の観点から、1分子中におけるチオール基の数が2〜4個であることが好ましく、3個であることが更に好ましい。
前記1級チオール基を有するチオールイソシアヌレート化合物としては、トリス−[(3−メルカプトプロピオニルオキシ)−エチル]−イソシアヌレート(TEMPIC)が好ましい。
(チオール基で変性されたシリコーン)
チオール基で変性されたシリコーンとしては、商品名KF−2001、KF−2004、X−22−167B(信越化学工業)、SMS042、SMS022(Gelest社)、PS849、PS850(UCT社)等が挙げられる。
(ヘテロ原子を含んでいてもよい芳香族ポリチオール)
ポリチオール化合物(A)として用いることのできる芳香族ポリチオールとしては、以下で例示する芳香族ポリチオールが挙げられる。上述のように、これら芳香族ポリチオールはヘテロ原子を含ませたものであってもよい。芳香族ポリチオールとしては、1,2−ジメルカプトベンゼン、1,3−ジメルカプトベンゼン、1,4−ジメルカプトベンゼン、1,2−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,4−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2−ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,3−ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,4−ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,2,3−トリメルカプトベンゼン、1,2,4−トリメルカプトベンゼン、1,3,5−トリメルカプトベンゼン、1,2,3−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,4−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,3−トリス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,2,4−トリス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトエチル)ベンゼン、2,5−トルエンジチオール、3,4−トルエンジチオール、1,3−ジ(p−メトキシフェニル)プロパン−2,2−ジチオール、1,3−ジフェニルプロパン−2,2−ジチオール、フェニルメタン−1,1−ジチオール、2,4−ジ(p−メルカプトフェニル)ペンタン等が挙げられる。
−チオール基と反応する官能基を有する化合物(B)−
本発明において、チオール基と反応する官能基を有する化合物(B)とは、チオール基と反応する官能基(反応性官能基)を、分子中に少なくとも1以上有している化合物をいう。
反応性官能基としては、例えば、イソシアネート基、アクリロイル基、メタクリロイル基、エポキシ基、アリル基、ビニル基、アリルオキシ基、ビニルオキシ基、ノルボルネン骨格を有する基等が挙げられる。
また、ノルボルネン骨格を有する基としては、例えば、無置換のノルボルネニル基が挙げられる。
成分(B)は、1分子中に、反応性官能基を1種のみ含む化合物でもよく、2種以上含む化合物でもよい。
成分(B)について1分子中における反応性官能基の数は特に制限はない。
例えば成分(B)が反応性官能基としてアクリロイル基を含む場合、1分子中の反応性官能基の数は、低分子化合物の場合と高分子化合物(例えばオリゴマー、ポリマー等)の場合とで異なることがあるが、接着力を高める観点から、1以上70以下が挙げられ、1以上20以下が好ましく、2以上10以下がより好ましく、3以上7以下がさらに好ましい。
一方、成分(B)に含まれる反応性官能基がいずれもアクリロイル基以外の官能基である(すなわちアクリロイル基を含まない)場合、1分子中の末端二重結合の数は、例えば、低分子化合物の場合と高分子化合物(例えばオリゴマー、ポリマー等)の場合とで異なることがあるが、接着力を高める観点から、2以上70以下が挙げられ、2以上10以下が好ましく、3以上7以下がより好ましい。
すなわち、アクリロイル基を含む化合物は反応性が高く、エネルギーの付与によって重合しやすいため、1分子中にアクリロイル基を1つのみ有する化合物も成分(B)として好適に用いられる。一方、アクリロイル基を含まない化合物は、アクリロイル基を含む化合物に比べて上記反応性が低いため、1分子中の反応性官能基の数が2以上である化合物が成分(B)として好適に用いられる。
なお、成分(B)が高分子化合物である場合、成分(B)の数平均分子量としては、接着力を向上させる観点から、例えば50000以下が挙げられ、好ましくは40000以下であり、より好ましくは35000以下である。成分(B)の数平均分子量の下限は特に限定されないが、例えば2000以上が挙げられる。
成分(B)としては、例えば、イソシアネート基を2つ以上有するポリイソシアネート、アクリロイル基を1つ有するモノアクリレート、アクリロイル基を2つ以上有するポリアクリレート、メタクリロイル基を2つ以上有するポリメタクリレート、エポキシ基を2つ以上有するエポキシ化合物、アリル基を2つ以上有するアリル化合物、ビニル基を2つ以上有するビニル化合物、アリルオキシ基を2つ以上有するアリルエーテル化合物又はアリルエステル化合物、ビニルオキシ基を2つ以上有するビニルエーテル化合物又はビニルエステル化合物、ノルボルネニル基を2つ以上有するノルボルネン化合物等が挙げられる。
なお、成分(B)は、1種のみを用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
成分(B)としては、反応性官能基のほかに、さらに環状構造を分子中に有する化合物が好ましい。成分(B)として環状構造を有する化合物を用いることで、耐熱性の高い接着層を得ることができる。
環状構造は、環を構成していれば特に限定されず、例えば、脂肪族環構造、芳香族環構造、複素環構造等が挙げられる。
脂肪族環構造としては、炭素で構成された環構造のうち芳香族環構造以外のものが挙げられ、飽和脂肪族環構造であっても不飽和脂肪族環構造であってもよい。
脂肪族環構造の具体例としては、例えば単環式の脂肪族環構造が挙げられ、さらに具体的には、例えば、シクロヘキサン等のシクロアルカンの構造、又はシクロヘキセン等のシクロアルケンの構造が挙げられる。単環式の脂肪族環構造を構成する炭素数は、例えば3以上20以下の範囲が挙げられ、4以上12以下の範囲が好ましく、5以上8以下の範囲がより好ましく、6が最も好ましい。
脂肪族環構造は、単環式に限られず、多環式の脂肪族環構造であってもよい。多環式の脂肪族環構造としては、例えば、デカリン等の多環式シクロアルカンの構造、又はノルボルネン等の多環式シクロアルケンの構造等が挙げられる。多環式の脂肪族環構造において、それぞれの環を構成する炭素数としては、例えば3以上20以下の範囲が挙げられ、4以上12以下の範囲が好ましく、5以上8以下の範囲がより好ましく、多環式の脂肪族環構造として6員環を有するものがさらに好ましい。
芳香族環構造としては、π電子を持つ炭素が環状に並んだ不飽和の環状構造が挙げられる。芳香族環構造の具体例としては、例えば、ベンゼン、[4n+2]アヌレン(ただしnは、1以上4以下)等の単環式の芳香族環構造のほか、ナフタレン、アズレン、インデン、フルオレン、アントラセン等の多環式の芳香族環構造が挙げられる。芳香族環構造としては、上記の中でも、ベンゼン環(炭素数6の芳香族環)を有する単環式又は多環式の芳香族環構造が好ましく、単環式のベンゼン環構造が最も好ましい。
複素環構造は、1つ以上のヘテロ原子を含んで構成されたヘテロ環構造であり、単環式であっても多環式であってもよく、脂肪族であっても芳香族であってもよい。ヘテロ原子は、環構造を形成する炭素以外の原子であり、具体的には、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等が挙げられる。
複素環構造の具体例としては、前記脂肪族環構造又は前記芳香族環構造の1つ以上(具体的には、例えば、1つ以上3つ以下)の炭素原子がヘテロ原子に置き換えられた構造が挙げられる。単環式の複素環構造を構成する原子数としては、例えば3以上10以下が挙げられ、5以上8以下の範囲が好ましく、6が最も好ましい。また多環式の複素環構造において、それぞれの環を構成する原子数としては、例えば3以上10以下が挙げられ、5以上8以下の範囲が好ましく、多環式の複素環構造として6員環を有するものがさらに好ましい。
なお、上記脂肪族環構造、芳香族環構造、及び複素環構造は、さらに置換基を有していてもよい。上記置換基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基のほか、酸素原子(=O)、水酸基、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基等が挙げられる。
また、上記置換基は、環状構造を構成する原子に直接導入されていてもよく、連結基を介して導入されていてもよい。さらに、成分(B)の1分子中に2以上の環状構造を有する場合は、一方の環状構造を構成する原子と他方の環状構造を構成する原子とが単結合で結合してもよく、連結基を介して結合してもよい。上記連結基としては、例えば、アルキレン基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、スルフィド結合、アミド結合、ウレタン結合、ウレア結合等が挙げられる。
成分(B)は、1分子中に上記環状構造を1種のみ含んでもよく、2種以上含んでもよい。また成分(B)は、1分子中に単環式の環状構造のみ含んでもよく、多環式の環状構造のみ含んでもよく、単環式の環状構造と多環式の環状構造との両方を含んでもよい。
成分(B)の1分子中に含まれる環の数としては、低分子化合物の場合と高分子化合物の場合とで異なることがあるが、例えば1以上100以下が挙げられ、1以上50以下が挙げられ、その中でも1以上20以下が好ましく、2以上10以下がより好ましい。
なお、多環式の環状構造を含む場合、それぞれの環の数を数えて上記「環の数」とする。具体的には、例えば1分子中に環状構造としてアントラセン構造を1つのみ有する場合は、上記「環の数」が3となる。
また成分(B)としては、膜強度の高い接着層を得る観点から、窒素原子を有する化合物が好ましい。
窒素原子を有する化合物としては、例えば、環状構造として窒素原子をヘテロ原子として含む複素環構造を有する化合物、環状構造を構成する原子に窒素原子を含む置換基又は連結基が結合した化合物等が挙げられる。なお、前記置換基又は連結基に含まれる窒素原子は、前記環状構造を構成する原子に直接結合していてもよい。
窒素原子を有する化合物として具体的には、例えば、ウレタン骨格及びイソシアヌレート環の少なくとも一方を有する化合物が挙げられ、接着力及び接着層の耐熱性を両立させる観点から、イソシアヌレート環及びウレタン結合の両方を有する化合物が好ましい。
ウレタン骨格を有する化合物としては、例えば、有機イソシアネート化合物に、分子中に1個以上の反応性官能基と1個のヒドロキシ基とを有するヒドロキシ基含有化合物を反応させたウレタン化合物が挙げられる。また、ウレタン骨格を有する化合物は、有機イソシアネート化合物に、ヒドロキシ基含有化合物並びに必要に応じてアルカンジオール、ポリエーテルジオール、ポリブタジエンジオール、ポリエステルジオール、ポリカーボネートジオール及びアミドジオールから選ばれる少なくとも1種のジオールを反応させた化合物であってもよい。
有機イソシアネート化合物にヒドロキシ含有化合物を反応させてウレタン化合物を得る方法としては、公知の方法を用いることができる。
有機イソシアネート化合物としては、例えば、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、ジベンジルジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート、3−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、水添トリメチルキシリレンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネートがある。さらに、これらのアダクト変性体、カルボジイミド変性体、アロファネート変性体、ビウレット変性体、ウレトジオン変性体、ウレトイミン変性体、イソシアヌレート変性体等の変性体も挙げられる。
ヒドロキシ基含有化合物としては、例えばウレタン化合物がメタクリレートである場合、例えば、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、グリセリンジメタクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート等のヒドロキシ基含有メタクリレートが挙げられる。
ウレタン化合物がメタクリレート以外の化合物である場合も、ヒドロキシ基含有化合物として、上記ヒドロキシ基含有メタクリレートに対応する化合物(すなわち、ヒドロキシ基含有メタクリレートのメタクリロイル基を、対応する各反応性官能基に代えた化合物)を用いることができる。
イソシアヌレート環を有する化合物としては、例えば、イソシアヌレート環及びヒドロキシ基を有する化合物に、反応性官能基を有しヒドロキシ基と反応する化合物(例えばメタクリル酸等)を反応させて得られたものが挙げられる。
イソシアヌレート環及びヒドロキシ基を有する化合物としては、例えば、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(ヒドロキシメチル)イソシアヌレート等が挙げられる。
ウレタン骨格及びイソシアヌレート環の少なくとも一方を有する化合物の具体例としては、例えば、下記構造式(B−1)〜(B−3)で示される化合物及び下記一般式(B−4)〜(B−6)で示される化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
上記一般式(B−4)〜(B−6)中、R〜Rは、各々独立に、アクリロイル基、メタクリロイル基、エポキシ基、ビニル基、又はノルボルネニル基を示し、L〜Lは、各々独立に、炭素数1以上4以下のアルキレン基を示す。
上記一般式(B−4)〜(B−6)で示される化合物は、接着層の膜強度の観点から、それぞれR〜R、R〜R、及びR〜Rが同じ基である(すなわち、1分子中に存在する反応性官能基が1種類のみである)ことが好ましい。
また上記一般式(B−4)〜(B−6)中のL〜Lは、積層体の耐熱性の観点から、炭素数が少ないほうが好ましく、炭素数1以上2以下のアルキレン基であることがより好ましい。
なお、成分(B)は、上記化合物に限定されるものではなく、反応性官能基を有する化合物であればその他の化合物でもよい。
以下、反応性官能基を有するその他の化合物を例示するが、これらに限定されるものでもない。
(イソシアネート基を有する化合物)
2以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネートとしては、例えば、前述の有機イソシアネート化合物が挙げられる。
(メタクリロイル基を有する化合物)
2以上のメタクリロイル基を有するポリメタクリレートのうち、ジメタクリレートの具体例としては、例えば、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート等の直鎖アルカンジオールのジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート等の分岐構造を有するアルカンジオールのジメタクリレート、ジシクロペンタンジオールジメタクリレート等の環構造を有するアルカンジオールのジメタクリレート、及びポリエチレングリコールジメタクリレート等のポリエーテルのジオールジメタクリレート、並びにそれらのアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。
なお、前記直鎖アルカンジオールのジメタクリレート、前記分岐構造を有するアルカンジオールのジメタクリレート、及び環構造を有するアルカンジオールのジメタクリレートにおけるアルカンジオールの炭素数としては、例えば2以上50以下が挙げられる。
また、前記ポリエーテルのジオールジメタクリレートにおけるポリエーテルの繰り返し単位数としては、例えば2以上15以下が挙げられる。
3官能以上の多官能メタクリレートの具体例としては、例えば、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセリン等の多価アルコールのメタクリル酸変性物又はそのアルキレンオキサイド変性物等が挙げられる。なお、多価アルコールの炭素数としては、例えば6以上100以下が挙げられる。
3官能以上の多官能メタクリレートとして、さらに具体的には、例えば、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート等が挙げられる。
また、メタクリロイル基を有する化合物として、エポキシポリメタクリレートやポリエステルポリメタクリレート、メタクリロイル基含有メタクリル酸エステル共重合体等も用いることができる。
エポキシポリメタクリレートの具体例としては、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンの縮合反応で得られるビスフェノール型エポキシ樹脂とメタクリル酸とを反応させたビスフェノール型エポキシジメタクリレートが挙げられる。
ポリエステルポリメタクリレートの具体例としては、フタル酸等の多塩基酸とエチレングリコール等の多価アルコールとメタクリル酸との反応で得られる化合物が挙げられる。
(アクリロイル基を有する化合物)
モノアクリレートの具体例としては、例えば、ヘキシルアクリレートやステアリルアクリレート等の直鎖アルカノールのアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等の分岐構造を有するアルカノールのアクリレート、シクロヘキシルアクリレートやイソボルニルアクリレート等の環構造を有する脂肪族アルカノールのアクリレート、ベンジルアクリレート等の芳香族アルコールのアクリレート等が挙げられ、その他にも、2−クロロエチルアクリレート等のハロゲン化アルコールのアクリレートや、3−メトキシブチルアクリレート等のアルコキシアルコールのアクリレート等も挙げられる。
また、2以上のアクリロイル基を有するポリアクリレートの具体例としては、上記ジメタクリレート及び多官能メタクリレートのメタクリロイル基をアクリロイル基に代えた化合物が挙げられる。
(エポキシ基を有する化合物)
2以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物としては、芳香族エポキシド、脂肪族エポキシド、脂環族エポキシド、これらの変性体等が挙げられる。
芳香族エポキシドとしては、例えば、下記構造式(B−7)又は構造式(B−8)で示される化合物等のビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールS型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、下記構造式(B−9)で示される化合物等のクレゾールノボラック型エポキシ化合物、ポリフェノール型エポキシ化合物、ビフェニル型エポキシ化合物、ナフタレン環含有エポキシ化合物、フルオレン型エポキシ化合物等が挙げられる。
脂肪族エポキシドとしては、例えば、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル等のポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
脂環式エポキシドとしては、例えば、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル等が挙げられる。
芳香族エポキシド、脂肪族エポキシド、脂環式エポキシドの変性体としては、例えば、下記構造式(B−10)で示される化合物等の水素添加ビスフェノールA型エポキシ化合物、水素添加ビスフェノールF型エポキシ化合物、水素添加ビフェニル型エポキシ化合物、臭素化ビスフェノール型エポキシ化合物等が挙げられる。
(アリルオキシ基を有する化合物)
2以上のアリルオキシ基を有するアリルエーテル化合物としては、例えば、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、トリメチロールプロパントリアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、グリセリン1,3−ジアリルエーテル、ビスフェノールAジアリルエーテル、ウレタンアリルエーテルオリゴマー等のように、ジアルコール又は多価アルコールにおける2以上のアルコール性水酸基がアリルオキシ基に置換された化合物が挙げられる。
また、2以上のアリルオキシ基を有するアリルエステル化合物としてはフタル酸ジアリルなどが挙げられる。
(アリル基を有する化合物、ビニルオキシ基を有する化合物、及びビニル基を有する化合物)
2以上のアリル基を有するアリル化合物、2以上のビニルオキシ基を有するビニルエーテル化合物、及び2以上のビニル基を有するビニル化合物の具体例としては、上記アリルエーテル化合物のアリルオキシ基を、それぞれ、アリル基、ビニルオキシ基、及びビニル基に代えた化合物が挙げられる。
また、2以上のビニルオキシ基を有するビニルエステル化合物としては、上記アリルエステル化合物のアリルオキシ基を、ビニルオキシ基に代えた化合物が挙げられる。
(ノルボルネニル基を有するノルボルネン化合物)
2以上のノルボルネニル基を有するノルボルネン化合物の具体例としては、例えば、下記構造式(B−11)で示される化合物(PEG-tetranorbornene)、下記構造式(B−12)で示される化合物(tri-(norborn-2-ene-5-carboxylate)、TMPTN)、下記構造式(B−13)で示される化合物(pentaerythritol tetra-(norborn-2-ene-5-carboxylate)、PTN4)、下記構造式(B−14)で示される化合物(pentaerythritol tri-(norborn-2-ene-5-carboxylate)、PTN3)、及び下記構造式(B−15)で示される化合物(di(trimethylolpropane) tetra-(norborn-2-ene-5-carboxylate)、DTTN)等が挙げられる。
−熱ラジカル発生剤(C)−
本発明では、成分(C)として、分解生成物の沸点が150℃以上である過酸化物からなる熱ラジカル発生剤(C)を用いる。
ここで「ラジカル発生剤」とは、熱や光等のエネルギーが付与されることでラジカルを発生させる化合物であり、その中でも「熱ラジカル発生剤」は、加熱によって活性化してラジカルを発生させる化合物である。本発明では、前記の通り熱ラジカル発生剤を用いるため、加熱によって熱ラジカル発生剤(C)が活性化してラジカルを発生し、発生したラジカルがポリチオール化合物(A)のチオール基に作用してチイルラジカルを発生する。すなわち成分(C)は、外装用部材のゴムとの界面における化学的な結合の形成に寄与する成分である。
また、「沸点が150℃以上である」とは、1気圧において150℃未満の温度では沸騰しないことを意味する。
熱ラジカル発生剤の分解生成物の沸点は、150℃以上であり、160℃以上が好ましく、180℃以上がより好ましい。
熱ラジカル発生剤の分解生成物は、前記の通り、熱ラジカル発生剤である過酸化物が熱によって分解した結果生成する化合物であり、生成する化合物の種類は過酸化物の化学構造等によって決まる。
熱ラジカル発生剤が下記一般式(C−1)で表される化合物である場合、熱ラジカル発生剤の分解生成物としては、例えば、下記一般式(C−1A)で表される化合物及び下記一般式(C−1B)で表される化合物が挙げられる。
一般式(C−1):R1A−O−O−R1B
一般式(C−1A):R1A−OH
一般式(C−1B):R1B−OH
ただし一般式(C−1)、一般式(C−1A)、及び一般式(C−1B)中、R1A及びR1Bは、各々独立に、1価の有機基を示す。
一方、熱ラジカル発生剤が下記一般式(C−2)で表される化合物である場合、熱によって脱炭酸が起こる場合がある。下記一般式(C−2)で表され脱炭酸が起こる化合物の分解生成物としては、例えば、下記一般式(C−2A)で表される化合物、二酸化炭素、及び下記一般式(C−2B)で表される化合物が挙げられる。
一般式(C−2):R2A−O−O−C(=O)−R2B
一般式(C−2A):R2A−OH
一般式(C−2B):R2B−H
ただし一般式(C−2)、一般式(C−2A)、及び一般式(C−2B)中、R2A及びR2Bは、各々独立に、1価の有機基を示す。
すなわち、熱ラジカル発生剤(C)としては、前記一般式(C−1)で表される化合物であり、かつ、前記一般式(C−1A)で表される化合物の沸点及び前記一般式(C−1B)で表される化合物の沸点がいずれも150℃以上であるものが挙げられる。
一方、一般式(C−2)で表され脱炭酸が起こる化合物は、分解によって二酸化炭素が生成するため、「分解生成物の沸点が150℃未満である熱ラジカル発生剤」である。そのため、熱ラジカル発生剤(C)は、カルボニルペルオキシ基を有さない(すなわち、一般式(C−2B)で表される化合物ではない)ことが望ましい。
ここで、分解生成物の沸点が150℃以上である一般式(C−1)で表される化合物におけるR1A及びR1Bとしては、各々独立に、例えば、炭素数6以上の直鎖状のアルキル基、炭素数7以上の分岐状のアルキル基、脂肪族環を有する炭素数6以上のアルキル基、炭素数6以上のアラルキル基等が挙げられ、その中でも炭素数9以上12以下のアラルキル基が好ましく挙げられる。
また、前記一般式(C−1)で表される化合物のうち、熱ラジカル発生剤(C)として好ましい化合物としては、例えば下記一般式(C−3)で表される化合物が挙げられる。なお、下記一般式(C−3)中、p及びqは、各々独立に0以上3以下の整数を示す。
分解生成物の沸点が150℃以上である熱ラジカル発生剤(C)の具体例としては、例えば、上記一般式(C−3)中のp及びqが0の化合物であるジクミルパーオキサイドのほか、ジ−t−ヘキシルパーオキサイド、ジ−t−オクチルパーオキサイド、クミル−t−ヘキシルパーオキサイド、クミル−t−オクチルパーオキサイド、1,3−ビス(クミルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,3−ビス(t−ヘキシルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,3−ビス(t−オクチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン等の有機過酸化物からなる熱ラジカル発生剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらの有機過酸化物からなる熱ラジカル発生剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
熱ラジカル発生剤(C)の1分間半減期温度は、140℃以上が好ましく、150℃以上200℃以下がより好ましく、160℃以上190℃以下がさらに好ましい。
なお、本発明で用いる組成物は、成分(C)のほかに、本発明の効果を損ねない範囲で、その他のラジカル発生剤(例えば、分解生成物の沸点が150℃未満である熱ラジカル発生剤、光ラジカル発生剤等)を含んでいてもよい。
その他のラジカル発生剤を含む組成物としては、例えば、成分(B)の反応性官能基が炭素−炭素二重結合を有する基であり、組成物のフィルム化を促進させるためのラジカル発生剤として光ラジカル発生剤を用いた形態が挙げられる。ここで、炭素−炭素二重結合を有する反応性官能基としては、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基、ビニル基、アリルオキシ基、ビニルオキシ基、ノルボルネニル基等が挙げられる。
組成物がその他のラジカル発生剤を含む場合、組成物の固形分(溶剤以外の成分)全体に対するその他のラジカル発生剤の含有量は、5質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましい。
−任意成分−
本発明で用いる組成物は、更に任意成分が配合されてもよい。任意成分としては、触媒、表面調整剤、溶剤、バインダー、フィラー、顔料分散剤、導電性付与剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、乾燥防止剤、浸透剤、pH調整剤、金属封鎖剤、防菌防かび剤、界面活性剤、可塑剤、ワックス、レベリング剤等が挙げられる。
(触媒(D))
本発明で用いる組成物は、成分(A)と成分(B)との反応を促進させる触媒(D)を用いてもよい。
例えば成分(B)が反応性官能基としてイソシアネート基を含む場合、触媒(D)としては、任意のチオウレタン化触媒を用いることができる。
該チオウレタン化触媒としては、例えば、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズチオカルボキシレート、ジブチルスズジマレエート、ジオクチルスズチオカルボキシレート、オクテン酸スズ、モノブチルスズオキシド等の有機スズ化合物;塩化第一スズ等の無機スズ化合物;オクテン酸鉛等の有機鉛化合物;ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン、トリエチレンジアミン(TEDA)、ベンジルジメチルアミン、2,2’-ジモルホリノエチルエーテル、N−メチルモルフォリン等のアミン類;p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、フルオロ硫酸等の有機スルホン酸;硫酸、リン酸、過塩素酸等の無機酸;ナトリウムアルコラート、水酸化リチウム、アルミニウムアルコラート、水酸化ナトリウム等の塩基類;テトラブチルチタネート、テトラエチルチタネート、テトライソプロピルチタネート等のチタン化合物;ビスマス化合物;四級アンモニウム塩等が挙げられる。
これらの中でも、好ましくは上記アミン類であり、より好ましくはトリエチレンジアミン(TEDA)である。これら触媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
また、成分(B)が反応性官能基としてアクリロイル基及びメタクリロイル基の少なくとも1種を含む場合、触媒(D)としては、任意のマイケル付加触媒を用いることができる。
該マイケル付加触媒としては、例えば、アミン系触媒、塩基触媒、有機金属触媒等が挙げられる。
アミン系触媒としては、例えば、プロリン、トリアザビシクロデセン(TBD)、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、ヘキサヒドロメチルピリミドピリジン(MTBD)、ジアザビシクロノナン(DBN)、テトラメチルグアニジン(TMG)、トリエチレンジアミン(TEDA)等が挙げられる。
塩基触媒としては、例えば、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムターシャリーブトキシド、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、ナトリウム金属、リチウムジイソプロピルアミド(LDA)、ブチルリチウム等が挙げられる。
有機金属触媒としては、例えば、ルテニウムシクロオクタジエンシクロオクタトリエン、ヒドリドルテニウムなどのルテニウム系触媒、三塩化鉄や鉄アセチルアセトナートなどの鉄系触媒、ニッケルアセチルアセトナート、酢酸ニッケル、ニッケルサリチルアルデヒドなどのニッケル触媒、銅系触媒、パラジウム系触媒、スカンジウム系触媒、ランタン系触媒、イッテルビウム系触媒、スズ系触媒等が挙げられる。
これら触媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
マイケル付加触媒としては、これらの中でもアミン系触媒が好ましく、1分子内に2つ以上のアミノ基を有するアミン系触媒がさらに好ましく、環構造を有するアミン系触媒が特に好ましく、その中でもトリエチレンジアミンが最も好ましい。
また、成分(B)が反応性官能基としてエポキシ基を含む場合、触媒(D)としては、任意のアニオン重合触媒を用いることができる。
該アニオン重合触媒としては、例えばアミン系触媒が挙げられる。
アミン系触媒としては、例えば、ジアミン等が挙げられ、具体的には、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン、トリエチレンジアミン(TEDA)、ベンジルジメチルアミン、2,2’−ジモルホリノエチルエーテル、N−メチルモルフォリン等が挙げられる。これらの中でも、好ましくはトリエチレンジアミン(TEDA)である。これら触媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
(表面調整剤(E))
本発明で用いる組成物には、必要に応じて表面調整剤(E)を含めることができる。表面調整剤(E)としては、任意の表面調整剤を使用することができる。該表面調整剤としては、アクリル系、ビニル系、シリコーン系、フッ素系、シリコーンアクリレート系などが挙げられる。これらの中でも、相溶性と表面張力低下能の観点からシリコーンアクリレート系が好ましい。
(溶剤)
本発明で用いる組成物には、必要に応じて溶剤を含めることができる。溶剤としては、他の配合成分と反応しないものであれば特に制限はなく、芳香族溶媒や脂肪族溶媒が挙げられる。
芳香族溶媒の具体例としては、トルエン、キシレン等が挙げられる。脂肪族溶媒としては、ヘキサン、酢酸ブチル、MEK(メチルエチルケトン)等が挙げられる。
−各成分の配合量−
各成分は、本発明の効果を損ねない範囲で適宜配合量を設定することができる。
ポリチオール化合物(A)に含まれるチオール基の合計モル数(SH)に対する、前記化合物(B)に含まれる反応性官能基の合計モル数(FG)の比(FG/SH)は、0.22以下であることが好ましい。
なお、本明細書を通じて、「SH」は、ポリチオール化合物(A)に含まれるチオール基の合計モル数を示し、「FG」は、化合物(B)に含まれる反応性官能基の合計モル数を示す。また、「比(FG/SH)」は、ポリチオール化合物(A)に含まれるチオール基の合計モル数(SH)に対する、化合物(B)に含まれる反応性官能基の合計モル数(FG)の割合を示す(すなわち「比(FG/SH)=FG÷SH」である)。
比(FG/SH)が0.22以下であることにより、0.22より大きい場合に比べて、成分(B)中の反応性官能基に対する成分(A)中のチオール基の割合が多く、反応性官能基と反応せずに残存するチオール基の量が多くなる。そのため、チオール基とゴム中の炭素−炭素二重結合との間でチオール・エン反応が十分に行われ、接着層と外装用部材のゴムとの界面における高い界面接着力が得られやすい。
また、ポリチオール化合物(A)に含まれるチオール基の合計モル数(SH)に対する、化合物(B)に含まれる反応性官能基の合計モル数(FG)の比(FG/SH)は、0.075以上であることが好ましい。
比(FG/SH)が0.075以上であることにより、0.075より小さい場合に比べて、接着層の膜強度が高くなる。
なお、比(FG/SH)は、接着力を得る観点から、0.075以上0.22以下が好ましく、0.1以上0.2以下がより好ましい。
ここで、「ポリチオール化合物(A)に含まれるチオール基の合計モル数(SH)」は、ポリチオール化合物(A)のモル数に、ポリチオール化合物(A)の1分子が有するチオール基数を乗じることにより算出することができる。
また、「化合物(B)に含まれる反応性官能基の合計モル数(FG)」は、配合量を理論分子量で除し、化合物(B)の1分子が有する反応性官能基の数を乗じることにより求めることができる。
なお、成分(B)の反応性官能基がいずれもイソシアネート基である場合は、JIS K1603−1 B法により測定し、化合物(B)に含まれるイソシアネート基の合計モル数を求めてもよい。
また、化合物(B)がエポキシ樹脂である場合は、JIS K7236:2001に準拠した方法により、エポキシ樹脂のエポキシ当量(1当量のエポキシ基を含む樹脂の質量)を測定し、エポキシ樹脂の数平均分子量を得られたエポキシ当量で除して、化合物(B)に含まれるエポキシ基の合計モル数を算出してもよい。
接着層が形成された後に前記チオール基の合計モル数(SH)や前記反応性官能基の合計モル数(FG)を求める場合は、例えば、接着層に対してNMR測定やIR測定等の公知の測定手法を用いて測定を行い、接着層となる前の組成物中に含まれる成分(A)及び成分(B)の分子構造及び含有量を確認した上で、前記方法により(SH)値及び(FG)値を求めてもよい。
ポリチオール化合物(A)に含まれるチオール基の合計モル数に対する、配合される熱ラジカル発生剤(C)の合計モル数の比(熱ラジカル発生剤(C)/チオール基)は、0.025以上であることが好ましい。これにより、十分な接着力(特に界面接着力)を発揮することができる。同様の観点から、当該比(熱ラジカル発生剤(C)/チオール基)は、好ましくは0.03以上であり、更に好ましくは0.035以上であり、特に好ましくは0.04以上である。また、接着力の向上の観点から、当該比(熱ラジカル発生剤(C)/チオール基)は、好ましくは0.80以下であり、更に好ましくは0.70以下であり、特に好ましくは0.60以下である。
組成物の固形分(溶剤以外の成分)全体に対する成分(C)の含有量は、接着力の観点から、20質量%以上60質量%以上が好ましく、30質量%以上55質量%以下がより好ましい。本発明では、成分(C)として分解生成物の沸点が150℃以上の熱ラジカル発生剤を用いているため、成分(C)の含有量が多くても接着層に空隙が発生しにくい。
また、組成物をフィルム化させるその他のラジカル発生剤として光ラジカル発生剤を用いる場合、ポリチオール化合物(A)に含まれるチオール基の合計モル数に対する、配合される光ラジカル発生剤の合計モル数の比(光ラジカル発生剤/チオール基)は、接着層の高い膜強度を得る観点から0.0001以上であることが好ましく、更に好ましくは0.0005以上であり、特に好ましくは0.001以上である。また、接着層強度向上の観点から、当該比(光ラジカル発生剤/チオール基)は、好ましくは0.05以下であり、更に好ましくは0.02以下であり、特に好ましくは0.01以下である。
成分(B)が反応性官能基としてイソシアネート基を含む場合、前記の通り、成分(D)としてチオウレタン化触媒を組成物中に含んでもよい。組成物中におけるチオウレタン化触媒の含有量は、成分(A)と成分(B)とのチオウレタン化反応を十分に促進して接着層の膜強度を高める観点から、イソシアネート基を含む成分(B)100質量部に対して、0.00001質量部〜5質量部であることが好ましく、0.0001質量部〜0.5質量部が更に好ましく、0.001質量部〜0.1質量部が特に好ましい。
成分(B)が反応性官能基としてアクリロイル基及びメタクリロイル基の少なくとも1種を含む場合、前記の通り、成分(D)としてマイケル付加触媒を組成物中に含んでもよい。組成物中におけるマイケル付加触媒の含有量は、成分(A)と成分(B)とのマイケル付加反応を促進して接着層の膜強度を高める観点から、アクリロイル基及びメタクリロイル基の少なくとも1種を含む成分(B)100質量部に対して、0.00001質量部〜5質量部であることが好ましく、0.0001質量部〜0.5質量部が更に好ましく、0.001質量部〜0.1質量部が特に好ましい。
成分(B)が反応性官能基としてエポキシ基を含む場合、前記の通り、成分(D)としてアニオン重合触媒を含んでもよい。組成物中におけるアニオン重合触媒の含有量は、成分(A)と成分(B)とのアニオン重合を促進して接着層の膜強度を高める観点から、エポキシ基を含む成分(B)100質量部に対して、0.00001質量部〜5質量部であることが好ましく、0.0001質量部〜0.5質量部が更に好ましく、0.001質量部〜0.1質量部が特に好ましい。
上述のとおり、組成物は、必須成分である成分(A)〜(C)及び任意成分である(D)の他に、その他の任意成分(例えば、表面調整剤(E)、溶剤など)を含有してもよい。しかし、ゴム(特に加硫ゴム)を強力に接着するという観点から、組成物から溶剤を除いた成分(すなわち固形分)全体に対する成分(A)〜(D)の合計含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、特に好ましくは98質量%以上である。
同様の観点から、組成物から溶剤を除いた成分全体に対する成分(A)〜(E)の合計含有量は、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、更に好ましくは99質量%以上、特に好ましくは100質量%である。
また、組成物中に含まれる溶剤の量は、特に限定されないが、タイヤの製造工程における乾燥工程等の作業負荷を低減させる観点で、組成分全体に対して50質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。
《外装用部材》
本発明のタイヤは、外装用部材を有する。本発明において「外装用部材」とは、タイヤ骨格体の外側に設置され、少なくともタイヤ骨格体の外表面の一部を覆う部材を意味する。本発明では、外装用部材は、上述の接着層を介してタイヤ骨格体表面に設置されている。
外装用部材としては、例えば、タイヤ骨格体のクラウン部に設置されるトレッド部材やタイヤ骨格体のサイド部に設置されるサイド部材等が挙げられる。尚、本発明における外装用部材は、必ずしも本発明のタイヤの最外層である必要はなく、例えば、外装用部材の外表面に更に装飾層や保護層が設けられていてもよい。
外装用部材は、ゴムを含み、前記ゴムの少なくとも一部が接着層に接する。
外装用部材に含まれるゴムは、特に限定されず、例えば、天然ゴム(NR);ポリイソプレン合成ゴム(IR)、ポリブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)等の共役ジエン系合成ゴム;エチレン−プロピレン共重合体ゴム(EPM);エチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴム(EPDM);ポリシロキサンゴムなどが挙げられ、これらを単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中では、接着層との接着力の観点から、天然ゴム(NR)、並びに、天然ゴム及びスチレン−ブタジエン共重合体ゴムの混合物(SBR/NR)が好ましい。
外装用部材は、少なくともゴムを含んでいればよく、目的に応じてゴムに添加物等の他の成分を加えたゴム組成物で形成されたものであってもよい。
添加物としては、例えば、カーボンブラック等の補強材、充填剤、加硫剤、加硫促進剤、脂肪酸又はその塩、金属酸化物、プロセスオイル、老化防止剤等が挙げられ、これらを適宜配合することができる。
外装用部材は、外装用部材に含まれるゴムが未加硫の状態である未加硫の外装用部材を、組成物層を介してタイヤ骨格体上に設け、加熱によってゴムを加硫することで得られる。すなわち、未加硫の外装用部材に含まれる未加硫ゴムの少なくとも一部が組成物層に接触した状態で加熱され、未加硫ゴムが加硫されることで、タイヤ骨格体に接着層を介して設けられた外装用部材が得られる。
ここで、「未加硫の外装用部材」は、上記のように外装用部材に含まれるゴム成分が未加硫の状態であるものであり、ゴム以外の成分(例えば樹脂等)を含むものであってもよい。
外装用部材がトレッド部材である場合、トレッドとしての性能を十分発揮する観点から柔らかすぎず、且つ、硬すぎないことが好ましい。具体的にトレッド部材の引張弾性率としては、0.1〜100MPaが好ましく、0.1〜50MPaが更に好ましく、0.1〜5.0MPaが特に好ましい。
《その他の層》
本発明のタイヤは、前記の通り、タイヤ骨格体、接着層、及び外装用部材に加えて、下引層等のその他の層を有していてもよい。
下引層としては、例えば、タイヤ骨格体に含まれる樹脂材料に対して接着力を有する接着剤を用いて形成され、タイヤ骨格体と接着層との間に、タイヤ骨格体の表面の少なくとも一部と接着層の表面との両方に接触するように設けられた層が挙げられる。
すなわち、本発明のタイヤは、熱可塑性樹脂を含む樹脂材料で形成され且つ環状のタイヤ骨格体と、前記樹脂材料に対して接着力を有する接着剤で形成され前記タイヤ骨格体の表面の少なくとも一部に接触して設けられた下引層と、ポリチオール化合物(A)、ポリイソシアネート化合物(B)、及び熱ラジカル発生剤(C)を含む組成物を用いて形成され前記下引層に接触して設けられた接着層であり、前記接着層に含まれる窒素原子の数(N)に対する、前記接着層に含まれる硫黄原子の数(S)の比(S/N)が3以上である接着層と、ゴムを含み、前記ゴムの少なくとも一部が前記接着層に接するように、前記下引層及び前記接着層を介して前記タイヤ骨格体に設けられた外装用部材と、を有するタイヤであってもよい。
このように、タイヤが下引層を有することで、さらに、外装用部材がタイヤ骨格体から剥離しにくくなる。
ここで、接着剤が、「タイヤ骨格体に含まれる樹脂材料に対して接着力を有する」かどうかは、以下のようにして確認することができる。
具体的には、まず、タイヤ骨格体に含まれる樹脂材料同士を、接着剤を介して接着させた積層体を作製し、前記積層体の末端を引張速度50mm/分の条件で180°の方向に引っ張って25℃における剥離強度(N/25mm)を測定する。そして、測定で得られた剥離強度が100(N/25mm)以上となる場合は、接着剤が「タイヤ骨格体に含まれる樹脂材料に対して接着力を有する」と判断することができる。
タイヤ骨格体に含まれる樹脂材料に対して接着力を有する接着剤は、上記条件を満たすものであれば特に限定されないが、接着力の観点から、例えば溶剤希釈型ハロゲン化ゴム系接着剤が好ましく挙げられる。また、溶剤希釈型ハロゲン化ゴム系接着剤としては、接着力の観点から、例えばケムロック2000、メタロックPH56等が好適に用いられる。
下引層の厚みは、用いる接着剤の種類等に応じて適宜選択することができ、特に限定されないが、外装用部材の剥離抑制の観点から、10μm以上1000μm以下が好ましく、20μm以上200μm以下がより好ましい。
[第1の実施形態]
以下に、図面に従って本発明のタイヤの第1の実施形態に係るタイヤを説明する。
本実施形態のタイヤ10について説明する。図1(A)は、第1実施形態に係るタイヤの一部の断面を示す斜視図である。図1(B)は、リムに装着したビード部の断面図である。図1に示すように、本実施形態のタイヤ10は、従来一般のゴム製の空気入りタイヤと略同様の断面形状を呈している。
図1(A)に示すように、タイヤ10は、図1(B)に示すリム20のビードシート21及びリムフランジ22に接触する1対のビード部12と、ビード部12からタイヤ径方向外側に延びるサイド部14と、一方のサイド部14のタイヤ径方向外側端と他方のサイド部14のタイヤ径方向外側端とを連結するクラウン部16(外周部)と、からなるタイヤケース17を備えている。
ここで、本実施形態のタイヤケース17は、樹脂材料として、例えば、熱可塑性樹脂を含有した樹脂組成物に各添加剤を含めたものを用いることができる。
本実施形態においてタイヤケース17は、単一の樹脂材料で形成されているが、本発明はこの構成に限定されず、従来一般のゴム製の空気入りタイヤと同様に、タイヤケース17の各部位毎(サイド部14、クラウン部16、ビード部12など)に異なる特徴を有する熱可塑性樹脂材料を用いてもよい。また、タイヤケース17(例えば、ビード部12、サイド部14、クラウン部16等)に、補強材(高分子材料や金属製の繊維、コード、不織布、織布等)を埋設配置し、補強材でタイヤケース17を補強してもよい。
本発明においては、本発明におけるタイヤ骨格体が単一の樹脂材料で形成されているが、本発明におけるタイヤ骨格体のクラウン部、サイド部などについて複数の素材を組み合わせてタイヤ骨格体を構成することもできる。
この際、タイヤ骨格体の前記クラウン部の厚みは、前記曲げ弾性率を調整するために適宜選択できるものであるが、タイヤ重量等を考慮すると、0.5mm〜10mmが好ましく、1mm〜5mmが更に好ましく、1mm〜4mmが特に好ましい。同様にタイヤ骨格体の前記サイド部の厚みは、0.5mm〜10mmが更に好ましく、1mm〜5mmが特に好ましい。これらタイヤ骨格体のクラウン部及びサイド部の厚みについては、前記曲げ弾性率を測定する際の試験片の平均厚さを基準とすることができる。尚、タイヤ骨格体の厚みは公知の方法及び装置を用いて適宜測定してもよい。
本実施形態のタイヤケース17は、樹脂材料で形成された一対のタイヤケース半体(タイヤ骨格片)17A同士を接合させたものである。タイヤケース半体17Aは、一つのビード部12と一つのサイド部14と半幅のクラウン部16とを一体として射出成形等で成形された同一形状の円環状のタイヤケース半体17Aを互いに向かい合わせてタイヤ赤道面部分で接合することで形成されている。なお、タイヤケース17は、2つの部材を接合して形成するものに限らず、3以上の部材を接合して形成してもよい。
前記樹脂材料で形成されるタイヤケース半体17Aは、例えば、真空成形、圧空成形、インジェクション成形、メルトキャスティング等で成形することができる。このため、従来のようにゴムでタイヤケースを成形する場合に比較して、加硫を行う必要がなく、製造工程を大幅に簡略化でき、成形時間を省略することができる。
また、本実施形態では、タイヤケース半体17Aは左右対称形状、即ち、一方のタイヤケース半体17Aと他方のタイヤケース半体17Aとが同一形状とされているので、タイヤケース半体17Aを成形する金型が1種類で済むメリットもある。
本実施形態において、図1(B)に示すようにビード部12には、従来一般の空気入りタイヤと同様の、スチールコードからなる円環状のビードコア18が埋設されている。しかし、本発明はこの構成に限定されず、ビード部12の剛性が確保され、リム20との嵌合に問題なければ、ビードコア18を省略することもできる。なお、スチールコード以外に、有機繊維コード、樹脂被覆した有機繊維コード、又は硬質樹脂などで形成されていてもよい。
本実施形態では、ビード部12のリム20と接触する部分や、少なくともリム20のリムフランジ22と接触する部分に、タイヤケース17を構成する樹脂材料よりもシール性に優れた材料、例えば、ゴムからなる円環状のシール層24が形成されている。このシール層24はタイヤケース17(ビード部12)とビードシート21とが接触する部分にも形成されていてもよい。タイヤケース17を構成する樹脂材料よりもシール性に優れた材料としては、タイヤケース17を構成する樹脂材料に比して軟質な材料を用いることができる。シール層24に用いることのできるゴムとしては、従来一般のゴム製の空気入りタイヤのビード部外面に用いられているゴムと同種のゴムを用いることが好ましい。また、タイヤケース17を形成する樹脂材料のみでリム20との間のシール性が確保できれば、ゴムのシール層24は省略してもよく、前記樹脂材料よりもシール性に優れる他の熱可塑性樹脂(熱可塑性樹脂エラストマー)を用いてもよい。このような他の熱可塑性樹脂としては、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系熱可塑性樹脂、ポリエステル樹脂等の樹脂やこれら樹脂とゴム若しくはエラストマーとのブレンド物等が挙げられる。また、熱可塑性樹脂エラストマーを用いることもでき、例えば、ポリエステル系熱可塑性樹脂エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性樹脂エラストマー、ポリスチレン系熱可塑性樹脂エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性樹脂エラストマー、或いは、これらエラストマー同士の組み合わせや、ゴムとのブレンド物等が挙げられる。
図1に示すように、クラウン部16には、タイヤケース17を構成する樹脂材料よりも剛性が高い補強コード26がタイヤケース17の周方向に巻回されている。補強コード26は、タイヤケース17の軸方向に沿った断面視で、少なくとも一部がクラウン部16に埋設された状態で螺旋状に巻回されている。そして、補強コード26のタイヤ径方向外周側には、例えば、タイヤケース17の樹脂材料に対して接着力を有する接着剤を用いて形成された下引層23(図2参照)と、上述の組成物を用いて形成された接着層19と、を介して、ゴムからなるトレッド30が配置されている。
図2を用いて、補強コード26の少なくとも一部がタイヤケース17のクラウン部16に埋没されることによって形成される補強コード層28について説明する。
図2は、第1実施形態のタイヤのタイヤケースのクラウン部に補強コードが埋設された状態を示すタイヤ回転軸に沿った断面図である。図2に示されるように、補強コード26は、タイヤケース17の軸方向に沿った断面視で、少なくとも一部がクラウン部16に埋設された状態で螺旋状に巻回されており、タイヤケース17の外周部の一部と共に図2において破線部で示される補強コード層28を形成している。補強コード26のクラウン部16に埋設された部分は、クラウン部16(タイヤケース17)を構成する樹脂材料と密着した状態となっている。補強コード26としては、金属繊維や有機繊維等のモノフィラメント(単線)、又は、スチール繊維を撚ったスチールコードなどこれら繊維を撚ったマルチフィラメント(撚り線)などを用いることができる。なお、本実施形態において補強コード26としては、スチールコードが用いられている。
また、図2において埋設量Lは、タイヤケース17(クラウン部16)に対する補強コード26のタイヤ回転軸方向への埋設量を示す。補強コード26のクラウン部16に対する埋設量Lは、補強コード26の直径Dの1/5以上であれば好ましく、1/2を超えることがさらに好ましい。そして、補強コード26全体がクラウン部16に埋設されることが最も好ましい。補強コード26の埋設量Lが、補強コード26の直径Dの1/2を超えると、補強コード26の寸法上、埋設部から飛び出し難くなる。また、補強コード26全体がクラウン部16に埋設されると、表面(外周面)がフラットになり、補強コード26が埋設されたクラウン部16上に部材が載置されても補強コード周辺部に空気が入るのを抑制することができる。なお、補強コード層28は、従来のゴム製の空気入りタイヤのカーカスの外周面に配置されるベルトに相当するものである。
また、補強コード層28のタイヤ径方向外周側には、下引層23及び接着層19を介してトレッド30が配置されている。具体的には、例えば、クラウン部16に設けられた補強コード26の表面と、補強コード26が設けられていない領域におけるクラウン部16の表面と、の全体にわたって、下引層23、接着層19、及びトレッド30がこの順に設けられている。すなわち、補強コード26が設けられていない領域においては、下引層23がクラウン部16の表面に直接接している。そして、接着層19は下引層23に直接接し、トレッド30のゴムが接着層19に直接接触している。
トレッド30にはゴムが用いられている。トレッド30は、タイヤケース17を構成する樹脂材料よりも耐摩耗性に優れることが好ましい。また、トレッド30には、従来のゴム製の空気入りタイヤと同様に、路面との接地面に複数の溝からなるトレッドパターンが形成されている。
以下、本実施形態のタイヤの製造方法について説明する。
本実施形態のタイヤの製造方法は、タイヤ骨格体、組成物を用いて形成された組成物層、及び未加硫の外装用部材を含む生タイヤを形成する生タイヤ形成工程と、生タイヤを加熱する加熱工程と、を有する。なお、前記未加硫の外装用部材は、未加硫ゴムを含み、前記未加硫ゴムの少なくとも一部が前記組成物層に接し、前記組成物層を介して前記タイヤ骨格体に設けられている。
ここで、本実施形態における生タイヤは、外装用部材に未加硫ゴムが含まれるものである。すなわち、生タイヤを加熱することよって、外装用部材の未加硫ゴムが加硫されるとともに、組成物層が接着層となって、本発明のタイヤが得られる。
−生タイヤ形成工程−
(タイヤケース成形工程)
まず、上述のように熱可塑性樹脂を含む樹脂材料を用いて、タイヤケース半体を形成する。これらタイヤケースの形成は、射出成形で行うことが好ましい。次に、薄い金属の支持リングに支持されたタイヤケース半体同士を互いに向かい合わせる。次いで、タイヤケース半体の突き当て部分の外周面と接するように図を省略する接合金型を設置する。ここで、前記接合金型はタイヤケース半体17Aの接合部(突き当て部分)周辺を所定の圧力で押圧するように構成されている。次いで、タイヤケース半体の接合部周辺を、タイヤケースを構成する樹脂材料の融点(又は軟化点)以上で押圧する。タイヤケース半体の接合部が接合金型によって加熱や加圧されると、前記接合部が溶融しタイヤケース半体同士が融着しこれら部材が一体となってタイヤケース17が形成される。尚、本実施形態においては接合金型を用いてタイヤケース半体の接合部を加熱したが、本発明はこれに限定されず、例えば、別に設けた高周波加熱機等によって前記接合部を加熱してもよく、予め熱風、赤外線の照射等によって軟化又は溶融させ、接合金型によって加圧して、タイヤケース半体を接合させてもよい。
(補強コード部材巻回工程)
次に、図を省略するが、補強コード26を巻き付けたリール、コード加熱装置、各種ローラ等を備えたコード供給装置を用い、加熱した補強コード26をクラウン部16の外周面に埋設しながら巻き付けることで、タイヤケース17のクラウン部16の外周側に補強コード層28を形成することができる。
(組成物層形成工程)
次に、補強コード26が巻きつけられたタイヤケース17のクラウン部16に組成物層を形成する。なお、本実施形態では、樹脂材料に対して接着力を有する接着剤で形成された下引層23を有する。そのため、樹脂材料に対して接着力を有する接着剤の層を介して、補強コード26が巻きつけられたタイヤケース17のクラウン部16に組成物層を形成する。以下、加熱によって下引層23となる前の状態である「樹脂材料に対して接着力を有する接着剤の層」を「下塗り層」と称する場合がある。
組成物層が塗膜の層である場合、補強コード26が巻きつけられたタイヤケース17のクラウン部16に形成された下塗り層上に、組成物を塗布することで、組成物層が得られる。
組成物を塗布する塗布法としては、例えば、スプレー塗布法、浸漬塗布法、スピンコート法等が挙げられるが、特に限定されるものではない。
また、塗膜の厚み、形状、大きさ等は、目的とする接着層の厚み等に応じて適宜設定すればよい。
組成物層が接着組成物膜の層である場合、例えば、下塗り層上に組成物を塗布して塗膜を形成した後に、塗膜をフィルム化して接着組成物膜を形成することで、組成物層が得られる。
また、組成物層が接着組成物膜の層である場合は、例えば、剥離シート等の支持体を用いて組成物層を形成してもよい。具体的には、例えば、支持体上に接着組成物膜を形成し、補強コード26が巻きつけられたタイヤケース17のクラウン部16に形成された下塗り層に接着組成物膜を接触させた後に、支持体を剥離してもよい。
また、例えば、支持体上に組成物の塗膜及び下塗り層を順に形成し、塗膜をフィルム化して接着組成物膜とした後に、補強コード26が巻きつけられたタイヤケース17のクラウン部16に下塗り層が接触するように貼り合わせ、支持体を剥離してもよい。また、例えば、支持体上に組成物の塗膜を形成してフィルム化し、得られた接着組成物膜に下塗り層を形成した後に、補強コード26が巻きつけられたタイヤケース17のクラウン部16に下塗り層が接触するように貼り合わせて支持体を剥離してもよい。
支持体は特に限定されないが、例えば、剥離シート等のシート状の支持体、台座等が挙げられる。支持体の厚みや形状は、形成する接着組成物膜の形状等に応じて適宜設定することができる。
シート状の支持体に用いることのできる材料としては、例えば紙、樹脂、樹脂でコーティングされた紙、金属等が挙げられる。
例えば、樹脂製の剥離シートの材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ナイロン46、変性ナイロン6T、ナイロンMXD6、ポリフタルアミド等のポリアミド系樹脂、ポリフェニレンスルフィド、ポリチオエーテルスルフォン等のケトン系樹脂、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン等のスルフォン系樹脂等が挙げられる。その他、剥離シートとしては、ポリエーテルニトリル、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、トリアセチルセルロース、ポリスチレン、ポリビニルクロライド等の有機樹脂を主成分とする透明樹脂基板を好適に用いることができる。
なお、支持体として、後述する加熱によってトレッド30となるトレッド用ゴム部材を用いてもよい。その場合は、支持体を剥離する必要はなく、各層が接触するように貼り合わせた段階で生タイヤが形成される。
組成物の塗膜をフィルム化する方法は、組成物の組成及び特性に応じて適宜選択される。例えば、組成物としてチオウレタン化触媒(D)を含む組成物を用いた場合、塗膜を室温で所定時間放置することで、塗膜がフィルム化し、接着組成物膜が得られる。なお、組成物中の成分(C)が活性化しない程度であれば加熱してもよい。その観点から、放置時における塗膜の温度は、0℃以上60℃以下が好ましく、より好ましくは15℃以上40℃以下である。また放置時間としては、接着組成物膜の形状を維持し得る程度に保形させる観点から、好ましくは1分間以上であり、より好ましくは3分間以上である。
(外装用部材設置工程)
次に、組成物層が形成されたタイヤケース17に、トレッド用ゴム部材(不図示)が設置される。トレッド用ゴム部材は、少なくとも未加硫ゴムを含むものであり、加熱して未加硫ゴムを加硫させることで、加硫ゴムを含むトレッド30が得られる未加硫の外装用部材である。トレッド用ゴム部材の形成方法や装着方法については特に限定はないが、例えば、予め射出成形によって路面との接地面に複数の溝からなるトレッドパターンを有する帯状のトレッド用ゴム部材を形成する。そして、トレッド用ゴム部材のゴムが、タイヤケース17に形成された組成物層に直接接触するように、トレッド用ゴム部材をタイヤケース17に巻きつける。
以上のようにして、タイヤケース17、組成物層、及びトレッド用ゴム部材を含む生タイヤが得られる。
−加熱工程−
次に、得られた生タイヤを加熱する。
加熱温度としては、例えば、150℃〜220℃が好ましく、160℃〜200℃がさらに好ましい。前記トレッド用ゴム部材は加硫の際に加圧されていることが好ましく、当該圧力としては、0.1MPa〜20MPaが特に好ましい。加熱時間としては、1分間〜60分間が好ましく、5分間〜30分間がさらに好ましい。
なお、組成物に含まれる成分(C)の分解生成物が150℃以上である場合、加熱工程において生タイヤを加熱する加熱温度は、接着層と外装用部材との界面における空隙を少なくする観点から、成分(C)の分解生成物の沸点よりも10℃以上低いことが好ましい。すなわち、成分(C)の分解生成物の沸点をB(℃)としたとき、B−10(℃)以下であることが好ましい。
なお、成分(C)の分解生成物として複数種の化合物が生成する場合は、最も沸点の低い分解生成物の沸点を「B(℃)」とする。
上記加熱は、トレッド用ゴム部材に含まれる未加硫ゴムの少なくとも一部が、組成物層に直接接触した状態で行う。そして上記加熱によって、組成物層が接着層19となり、かつ、トレッド用ゴム部材の未加硫ゴムが加硫されてトレッド30となる。
そして、タイヤケース17のビード部12に、加硫済みのゴムからなるシール層24を、接着剤等を用いて接着すれば、タイヤ10の完成となる。
(作用)
本実施形態のタイヤ10では、トレッド30が接着層19を介してタイヤケース17に設けられているため、タイヤケース17からトレッド30(外装用部材)が剥離しにくい。また、タイヤ10では、接着層19が成分(C)として分解生成物の沸点が150℃以上である過酸化物からなる熱ラジカル活性剤を含む組成物を用いて形成されているため、接着層19における空隙が少ない。
また、タイヤ10では、タイヤケース17が熱可塑性樹脂を含む樹脂材料で形成され、従来のゴム製のタイヤに比して構造が簡易であるため重量が軽い。このため、本実施形態のタイヤ10は、耐摩擦性及び耐久性が高い。更に、タイヤケース17及びトレッド30を射出成形でき、生産性にも非常に優れる。
また、本実施形態のタイヤ10では、樹脂材料で形成されたタイヤケース17のクラウン部16の外周面に前記樹脂材料よりも剛性が高い補強コード26が周方向へ螺旋状に巻回されていることから耐パンク性、耐カット性、及びタイヤ10の周方向剛性が向上する。なお、タイヤ10の周方向剛性が向上することで、樹脂材料で形成されたタイヤケース17のクリープが防止される。
また、タイヤケース17の軸方向に沿った断面視(図1に示される断面)で、樹脂材料で形成されたタイヤケース17のクラウン部16の外周面に補強コード26の少なくとも一部が埋設され且つ樹脂材料に密着していることから、製造時のエア入りが抑制されており、走行時の入力などによって補強コード26が動くのが抑制される。これにより、補強コード26、タイヤケース17、及びトレッド30に剥離などが生じるのが抑制され、タイヤ10の耐久性が向上する。
そして、図2に示すように、補強コード26の埋設量Lが直径Dの1/5以上となっていることから、製造時のエア入りが効果的に抑制されており、走行時の入力などによって補強コード26が動くのがさらに抑制される。
さらに、ビード部12には、金属材料からなる環状のビードコア18が埋設されていることから、従来のゴム製の空気入りタイヤと同様に、リム20に対してタイヤケース17、すなわちタイヤ10が強固に保持される。
またさらに、ビード部12のリム20と接触する部分に、タイヤケース17を構成する樹脂材料よりもシール性のあるゴム材からなるシール層24が設けられていることから、タイヤ10とリム20との間のシール性が向上する。このため、リム20とタイヤケース17を構成する樹脂材料のみとでシールする場合と比較して、タイヤ内の空気漏れがより一層抑制される。また、シール層24を設けることでリムフィット性も向上する。
また、第1実施形態では、補強コード26を加熱する構成としたが、例えば、補強コード26の外周をタイヤケース17と同じ樹脂材料で被覆する構成としてもよい。この場合には、被覆補強コードをタイヤケース17のクラウン部16に巻き付ける際に、補強コード26と共に被覆した樹脂材料も加熱することで、クラウン部16への埋設時におけるエア入りを効果的に抑制することができる。そして、補強コード26の外周を被覆する樹脂材料の層の外周面に、下引層23及び接着層19を介してトレッド30を設けることで、トレッド30がタイヤケース17から剥離しにくいタイヤ10が得られる。
また、補強コード26は螺旋巻きするのが製造上は容易だが、幅方向で補強コード26を不連続とする方法等も考えられる。
さらに、本実施形態ではクラウン部16に補強コード26が巻回されているが、補強コードを用いない形態でもよい。すなわち、タイヤケース17のクラウン部16に直接下引層23が設けられ、下引層23及び接着層19を介してトレッド30が設けられた形態であってもよい。
第1実施形態のタイヤ10は、ビード部12をリム20に装着することで、タイヤ10とリム20との間で空気室を形成する、所謂チューブレスタイヤであるが、本発明はこの構成に限定されず、完全なチューブ形状であってもよい。
[第2の実施形態]
次に、図面に従って本発明のタイヤの第2の実施形態に係るタイヤを説明する。
本実施形態のタイヤ200について説明する。図3は、第2実施形態に係るタイヤの一部の断面を示す斜視図である。図3に示すように、本実施形態のタイヤ200は、第1実施形態のタイヤ10に対して、両サイド部14の幅方向外側に外装用部材としてサイド部材15が設けられている。なお、サイド部材15は、下引層23(図3においては不図示)及び接着層19を介してタイヤケース17のサイド部14に設けられている。図3において図1と共通する部材については同一の符号を付しその説明を省略する。
本実施形態のタイヤ200は、トレッド30に加えて、外装用部材としてサイド部14の表面にサイド部材15が装着されている。サイド部材15は、トレッド30と同一の材料、即ちゴムを用いて形成されている。サイド部材15はトレッド30と同様にタイヤケース17を構成する樹脂材料よりも耐摩耗性に優れることが好ましい。サイド部材15は、サイド部14の表面に下引層23及び接着層19を介して設けられている
サイド部材15は、トレッド30と同様に射出成形等によって形成することができる。具体的には、例えば、予め射出成形等によって目的の形状としたサイド部材用ゴム部材を、タイヤケース17のサイド部14の表面に下塗り層及び組成物層を介して装着する。そして、これらを加熱することで、サイド部材用ゴム部材に含まれる未加硫ゴムを加硫し、サイド部材15を形成する。
図3に示すように、本実施形態において、サイド部材15のクラウン部16側の端部は、トレッド30の端部と重なるように接着されている。この際、サイド部材15のクラウン部16側の端部は、トレッド30の端部よりもタイヤ径方向内側に位置するように設置されていることが好ましい。
また、トレッド30とサイド部材15とは、重なり合う端部の界面において溶着するように構成することができる。すなわち、まず、タイヤケース17のクラウン部16に下塗り層及び組成物層を介してトレッド用ゴム部材を設け、サイド部14に下塗り層及び組成物層を介してサイド部材用ゴム部材を設けることで、生タイヤを形成する。なお、トレッド用ゴム部材の端部とサイド部材用ゴム部材の端部とが接触する界面に、組成物層を設けてもよい。そして、得られた生タイヤを加熱することで、各ゴム部材に含まれる未加硫ゴムが加硫されると共に、組成物層が接着層となって、トレッド30及びサイド部材15がタイヤケース17から剥離しにくいタイヤ200が得られる。
尚、本実施形態においてはタイヤケース17のサイド部14両面にサイド部材15が設置された態様を示したが、本発明のタイヤは本実施形態に限定されるものではなく、タイヤ200のタイヤ幅方向片面のみにサイド部材15を設ける態様であってよい。
以上、実施形態を挙げて本発明の実施の形態を説明したが、これらの実施形態は一例であり、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲がこれらの実施形態に限定されないことは言うまでもない。
以下、本発明について実施例を用いてより具体的に説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。
[樹脂材料]
タイヤ骨格体を形成する樹脂材料として、熱可塑性エラストマーは以下の通り、作製したものを使用した。攪拌機、窒素ガス導入口、及び縮合水排出口を備えた容積2リットルの反応容器に、1,2−アミノドデカン酸(アルドリッチ製)43.7g、アミノドデカノラクタム(アルドリッチ製)601g、アジピン酸(アルドリッチ製)15.5gを入れ、容器内を十分窒素置換した後、280℃まで昇温し、0.6MPaの加圧下で4時間反応させた。圧力を解放したあと、窒素気流下でさらに1時間反応させ、重量平均分子量6000のナイロン12重合物(鎖長延長剤が末端に結合したハードセグメント「PA12」)である白色固体を得た(重合反応A)。
得られたナイロン12重合物250gに、ソフトセグメントとしてポリオキシプロピレン−ポリテトラメチレングリコール−ポリオキシプロピレンジアミン(PPG−PTMG−PPG、HUNTSMAN社製 品名:ジェファーミン 型番:XTJ−548、重量平均分子量1700)70.9g、テトラ−tert−ブトキシジルコニウム71mgを加え、230℃で6時間撹拌を行った(重合反応B)。さらにIrganox1010を1g加え、白色のポリアミド系熱可塑性エラストマー(重量平均分子量:75,000)を得た。得られたポリアミド系熱可塑性エラストマーをペレット化し、220℃で射出成形し、サンプル片(縦150mm×横270mm×厚み2.5mm)を得た。
[未加硫ゴム]
外装用部材を形成する未加硫ゴムとして、下記表1の配合で混合し、未加硫ゴムのサンプル片(縦150mm×横270mm×厚み2.5mm)を得た。
なお、表1中の各成分の詳細は、次のとおりである。
天然ゴム(NR):RSS#3
スチレン・ブタジエン共重合体ゴム(SBR):JSR社製、商品名「JSR 1500」
老化防止剤:N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン、大内新興化学工業株式会社製、商品名「ノクラック6C」
加硫促進剤1:1,3−ジフェニルグアニジン、大内新興化学工業株式会社製、商品名「ノクセラーD(D−P)」
加硫促進剤2:ジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド、大内新興化学工業株式会社製、商品名「ノクセラーDM−P(DM)」
[組成物]
接着層を形成する組成物として、下記表2の配合で混合し、各配合例の組成物を得た。各配合例における比(FG/SH)、組成物の比(S/N)、及び熱ラジカル発生剤(C)/チオール基の値も合わせて表2に示す。
表2中、「PEMP」はペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)(SC有機化学株式会社製、1級チオール)を表し、「PETG」はペンタエリスリトールテトラキス(チオグリコレート)(淀化学株式会社製、1級チオール)を表し、「Z−Iso」は前記構造式(B−1)で示される化合物を表し、「パーブチルO」はt−ブチルペルオキシ‐2‐エチルヘキサノエート(日油株式会社製、商品名「パーブチルO」、分解生成物の沸点:82℃、1分間半減期温度:134℃)を表し、「パーオクタO」は1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシ‐2‐エチルヘキサノエート(日油株式会社製、商品名「パーオクタO」、分解生成物:複数種発生し、沸点150℃未満の化合物を含む、1分間半減期温度:124℃)を表し、「パークミルD」はジクミルパーオキサイド(日油株式会社製、商品名「パークミルD」、分解生成物の沸点:202℃、1分間半減期温度:175℃)を表し、「TEDA」はトリエチレンジアミン33質量%ジプロピレングリコール溶液(Air Products社製、商品名「DABCO 33LY catalyst」)の0.1質量%メチルエチルケトン溶液を表し、「MEK」はメチルエチルケトンを表す。
[実施例1〜5、比較例1〜2]
剥離シートに、溶剤希釈型ハロゲン化ゴム系接着剤(Lord社製、商品名:ケムロック2000)を塗布して塗膜を形成した後、25℃で180分間放置することで厚み100μmの下塗り層を形成した。この後、表2に示す各配合例の組成物を下塗り層上に塗布して塗膜を形成した後、25℃で12時間放置することで、厚み200μmの接着組成物膜である組成物層を得た。
その後、接着組成物膜である組成物層の表面と、未加硫ゴムのサンプル片と、が直接接触するように貼り合わせた後、剥離シートのみを剥離した。
その後、剥離シートの剥離によって露出した下塗り剤層の表面と、樹脂材料のサンプル片の表面と、が直接接触するように貼り合わせることで、樹脂材料、下塗り層、組成物層、及び未加硫ゴムがこの順に積層した未加硫の積層体(生タイヤのサンプル片)を得た。
得られた未加硫の積層体を、温度150℃にて2MPaのプレス圧を加えながら30分保持した。それにより、未加硫ゴムのサンプル片が加硫され、組成物層が接着層となり、下塗り層が下引層となり、樹脂材料、下引層、接着層、及び加硫ゴムがこの順に積層した加硫後の積層体(タイヤのサンプル片)を得た。
[剥離強度の評価]
加硫後の積層体の末端における樹脂材料のサンプル片と加硫ゴムのサンプル片とを、引張速度50mm/分の条件で、180°の方向に引っ張ることで180度ピール試験を行い、剥離強度(N/25mm)を測定した。結果を表3に示す。
また、剥離強度の測定における破壊形態についても併せて表3に示す。なお、表3において「ゴム凝集破壊」とは、界面では接着が破壊されずゴムのサンプル片が破壊したことを意味し、「ゴム/接着層界面破壊」とは、ゴムのサンプル片と接着層との界面が破壊したことを意味する。
[空隙有無の評価]
加硫後の積層体を各サンプル片に垂直に切断して断面を目視で観察することで、接着層における空隙の有無を確認した。結果を表3に示す。
10,200 タイヤ、12 ビード部、14 サイド部、15 サイド部材、16 クラウン部(外周部)、17 タイヤケース(タイヤ骨格体)、18 ビードコア、19 接着層、20 リム、21 ビードシート、22 リムフランジ、23 下引層、24 シール層(シール部)、26 補強コード(補強コード部材)、28 補強コード層、30 トレッド、D 補強コードの直径(補強コード部材の直径)、L 補強コードの埋設量(補強コード部材の埋設量)

Claims (9)

  1. 熱可塑性樹脂を含む樹脂材料で形成され且つ環状のタイヤ骨格体と、
    ポリチオール化合物(A)、チオール基と反応する官能基を有する化合物(B)、及び分解生成物の沸点が150℃以上である過酸化物からなる熱ラジカル発生剤(C)を含む組成物を用いて形成された組成物層を加熱して得た接着層と、
    少なくとも一部が前記組成物層に接した未加硫ゴムを加硫して得た加硫ゴムを含み、前記接着層を介して前記タイヤ骨格体に設けられた外装用部材と、
    を有し、
    前記化合物(B)がポリイソシアネート化合物であり、前記接着層に含まれる窒素原子の数(N)に対する、前記接着層に含まれる硫黄原子の数(S)の比(S/N)が3以上であるタイヤ。
  2. 熱可塑性樹脂を含む樹脂材料で形成され且つ環状のタイヤ骨格体と、
    ポリチオール化合物(A)、チオール基と反応する官能基を有する化合物(B)、及び分解生成物の沸点が150℃以上である過酸化物からなる熱ラジカル発生剤(C)を含む組成物を用いて形成された組成物層を加熱して得た接着層と、
    少なくとも一部が前記組成物層に接した未加硫ゴムを加硫して得た加硫ゴムを含み、前記接着層を介して前記タイヤ骨格体に設けられた外装用部材と、
    を有し、
    前記ポリチオール化合物(A)に含まれるチオール基の合計モル数(SH)に対する、前記化合物(B)に含まれる前記チオール基と反応する官能基の合計モル数(FG)の比(FG/SH)が0.22以下であるタイヤ。
  3. 前記化合物(B)は、前記チオール基と反応する官能基として、イソシアネート基、アクリロイル基、メタクリロイル基、エポキシ基、アリル基、ビニル基、アリルオキシ基、ビニルオキシ基、及びノルボルネン骨格を有する基から選択される少なくとも1種を含む請求項1又は請求項2に記載のタイヤ。
  4. 前記ポリチオール化合物(A)に含まれるチオール基の合計モル数(SH)に対する、前記化合物(B)に含まれる前記チオール基と反応する官能基の合計モル数(FG)の比(FG/SH)が0.075以上である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のタイヤ。
  5. 前記化合物(B)は、芳香族環、脂肪族環、及び複素環の少なくとも1種を有する請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のタイヤ。
  6. 前記接着層の厚みは、10μm以上1000μm以下である請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のタイヤ。
  7. 前記組成物は、前記ポリチオール化合物(A)と前記化合物(B)との反応を促進させる触媒(D)をさらに含む請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載のタイヤ。
  8. 請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載のタイヤの製造方法であって、
    熱可塑性樹脂を含む樹脂材料で形成され且つ環状のタイヤ骨格体;ポリチオール化合物(A)、チオール基と反応する官能基を有する化合物(B)、及び分解生成物の沸点が150℃以上である過酸化物からなる熱ラジカル発生剤(C)を含む組成物を用いて形成された組成物層;並びに未加硫ゴムを含み、前記未加硫ゴムの少なくとも一部が前記組成物層に接し、前記組成物層を介して前記タイヤ骨格体に設けられた未加硫の外装用部材;を含む生タイヤを形成する生タイヤ形成工程と、
    前記生タイヤを加熱することで、前記外装用部材に含まれる前記未加硫ゴムを加硫するとともに、前記組成物層に含まれる熱ラジカル活性剤(C)を活性化させる、加熱工程と、
    を有する、タイヤの製造方法。
  9. 前記加熱工程において前記生タイヤを加熱する温度は、前記熱ラジカル発生剤(C)の分解生成物の沸点をB(℃)としたとき、B−10(℃)以下である、請求項8に記載のタイヤの製造方法。
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