以下、図面を参照しながら、本発明に係る実施形態を説明する。可能な場合には、同様の機能を有する部分には適宜同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
図1は、本発明の一実施形態に係る無線通信システムの全体構成を示す図である。同図に示す無線通信システム1は、LTE(Long Term Evolution)の通信規格(通信プロトコル)に準拠して、端末Tに通信サービスを提供する通信システムである。無線通信システム1は、例えばVoLTE(Voice over LTE)等の音声通信サービスや、インターネット接続サービス等のデータ通信サービスを端末Tに提供する。端末Tは、無線通信機能を有する任意の端末である。端末Tの具体例としては、スマートフォンやタブレット端末等の携帯端末(移動端末)等が挙げられる。
無線通信システム1は、端末TがLTEに準拠した無線通信により通信可能に接続されるLTEネットワーク(第1通信ネットワーク)NW1と、端末TがLTEネットワークNW1を介して通信可能に接続されるパケットデータネットワーク(PDN:Packet Data Network)であるIMS(IP Multimedia Subsystem)ネットワーク(第2通信ネットワーク)NW2と、を含む通信ネットワークを構成する。
無線通信システム1は、eNB(evolved Node B)2と、MME(Mobility Management Entity)3と、S−GW(Serving Gateway)4と、P−GW(Packet Data Network Gateway)5と、PCRF(Policy and Charging Rules Function)6と、HSS(Home Subscriber Server)7と、P−CSCF(Proxy Call Session Control Function)8と、を含んで構成されている。eNB2、MME3、S−GW4、P−GW5、及びPCRF6は、LTEネットワークNW1の構成要素である。P−CSCF8は、IMSネットワークNW2の構成要素である。
本実施形態の無線通信システム1においては、各装置は、物理的に1台の装置で構成されてもよいし、複数台の装置によって構成された処理システムであってもよい。ただし、P−GW5及びP−CSCF8は各々複数存在しており、端末Tは、複数のP−GW5から選択された一のP−GW5と、複数のP−CSCF8から選択された一のP−CSCF8と、に接続される。
eNB2は、無線アクセス制御機能を有する無線基地局である。eNB2は、無線通信によって端末Tと接続される。eNB2は、端末Tから発信があった際の受付制御機能や、他の端末から端末Tに着信があった際に端末Tを呼び出すページング機能等を基本機能として有する。端末Tは、eNB2を介してeNB2の上位装置であるMME3及びS−GW4等と通信を行う。
MME3は、eNB2を収容し、モビリティ制御やベアラ制御機能等を有する装置である。MME3は、例えば、端末Tの待受時の位置管理機能、他の端末から端末Tに着信があった際にeNB2を呼び出すページング機能、及び端末Tの認証管理機能等を有する。
S−GW4は、MME3及びeNB2と接続可能にされている。S−GW4は、MME3及びeNB2を介して端末Tに接続され、端末Tとの間で制御信号及びユーザデータを含むIP(Internet Protocol)パケットの伝送を行う中継装置である。具体的には、S−GW4は、MME3からの指示に基づいてIPパケットの中継制御を行う。また、S−GW4は、PCRF6から通知されたQoS(Quality of Service)情報に従って、IPパケットの伝達品質制御を行う。
P−GW5は、S−GW4と接続可能にされている。P−GW5は、IMSネットワークNW2と接続される接続点となる中継装置(第1中継装置)である。すなわち、P−GW5は、LTEネットワークNW1の境界に配置され、IMSネットワークNW2側の接続点となるP−CSCF8と接続される。P−GW5は、端末TとIMSネットワークNW2との間の通信経路を中継し、ユーザデータを転送する。また、P−GW5は、PCRF6から通知されたQoS情報に従って、IPパケットの伝達品質制御を行う。
PCRF6は、S−GW4、P−GW5、及びP−CSCF8と接続可能にされている。QoS情報等のポリシー制御や課金制御のための情報を保持し、それらの情報をS−GW4及びP−GW5に通知する通信制御装置である。QoS情報とは、端末Tに提供される通信サービスの通信品質に関する情報である。また、PCRF6は、IMSネットワークNW2への端末Tの接続が行われる際の各種認証機能を有する。
また、PCRF6は、使用可能なP−CSCF8を発見して端末Tに通知するP−CSCFディスカバリ(P-CSCF Discovery)を実行する機能(以下「P−CSCFディスカバリ機能」)を備える。標準仕様(3GPP TS 23.380)では、P−GW5がP−CSCFディスカバリ機能を備えるものと規定されている。しかし、無線通信システム1では、通信制御の利便性の観点から、P−CSCFディスカバリ機能は、P−GW5ではなくPCRF6に実装されている。
HSS7は、LTEユーザの契約情報及び認証情報を管理するユーザ情報データベースである。HSS7は、MME3からの位置登録要求を受け付けて、MME3にVoLTE用APN(Access Point Name)を含む加入者情報(加入者プロファイル)を受け渡す。ここで、APNは、ネットワーク接続によりデータ通信を行う際に接続先として設定されるアドレス名である。
P−CSCF8は、セッション開始プロトコル(SIP:Session Initiation Protocol)のプロキシサーバ機能等を提供する呼制御装置である。具体的には、P−CSCF8は、P−GW5及びPCRF6と接続可能にされ、IMSネットワークNW2内に存在するSIPサーバである図示しないI−CSCF(Interrogating CSCF)及びS−CSCF(Serving CSCF)等と端末Tとの間でやり取りされるSIP信号を中継する中継装置(第2中継装置)である。
P−CSCF8は、端末Tへの音声通信サービスの提供に先立って、P−GW5、S−GW4、及びeNB2を経由して、端末TとIMSネットワークNW2との間で制御信号を伝送するための通信経路であるIMSデフォルトベアラ(IMS default bearer)を中継接続する。さらに、IMSデフォルトベアラを経由して端末Tに対する着信或いは端末Tからの発信があった場合には、P−CSCF8は、IMSデフォルトベアラと同じ通信経路において、端末TとIMSネットワークNW2との間で追加のベアラ(dedicated bearer)を中継接続する。追加のベアラは、端末Tに音声通信サービスを提供するためのユーザデータの伝送用の通信経路である。このように、VoLTEによる音声通信サービスの提供は、端末TとP−CSCF8との間の同一通信経路上に、IMSデフォルトベアラ及び追加のベアラが接続確立されることによって実現される。
図1に示す無線通信システム1において、端末TとIMSネットワークNW2との間にIMSデフォルトベアラが接続確立された後に、当該IMSデフォルトベアラに含まれるP−GW5及びP−CSCF8の間の通信区間(SGi区間R)に通信障害が発生する場合が考えられる。例えば、SGi区間Rの通信経路を構成するネットワーク装置(例えばルータ、スイッチ等のノード装置)の故障等によって、P−GW5とP−CSCF8との間で通信できなくなる通信障害が発生する場合が考えられる。この場合、IMSデフォルトベアラと同じ通信経路上(すなわち、通信障害が発生したSGi区間Rを含む通信経路上)にユーザデータの伝送用のデディケイテッドベアラを接続確立することができないので、端末Tに対する発着信を行うことができないといった問題が生じる。
ここで、P−GWがP−CSCFディスカバリ機能を備えることを前提とした標準仕様(3GPP TS 23.380)では、以下のようにしてSGi区間の通信障害を検知する仕組みが規定されている。すなわち、標準仕様においては、P−GWが、端末(当該P−GWを経由するIMSデフォルトベアラを接続確立している端末)が使用しているP−CSCFに対する死活監視を実行する。そして、P−GWは、例えば、当該死活監視においてP−CSCFから予め設定された時間内に応答が得られない場合に、自装置と当該P−CSCFとの間のSGi区間の通信障害を検知する。その後、P−GWは、当該P−GWを経由するIMSデフォルトベアラのうち、通信障害が検知されたP−CSCFを経由するIMSデフォルトベアラが接続確立されている各端末について、P−CSCFディスカバリを実行する。P−GWは、P−CSCFディスカバリの実行により、当該P−GWと疎通可能なP−CSCFを端末の接続先候補として決定し、当該P−CSCFの接続先アドレスを端末に通知する。これにより、端末は、P−GWから通知されたP−CSCFを再選択し、通信障害のないIMSデフォルトベアラを新たに接続確立することができる。
一方、標準仕様からの設計変更によってP−GWではなくPCRFにP−CSCFディスカバリ機能が実装された無線通信システム1は、P−CSCFディスカバリ機能をPCRF6に実装しつつ、SGi区間Rの通信障害が発生した場合に端末TのIMSデフォルトベアラを自動復旧する復旧手順を実行可能なように構成されている。
以下、図2を用いて、無線通信システム1のうち、上記復旧手順の実行に主に関連するP−GW5、PCRF6、及びP−CSCF8の構成について説明する。図2は、上記復旧手順の実行に主に関連する無線通信システム1の一部(P−GW5、PCRF6、及びP−CSCF8)の機能構成を示すブロック図である。
図2に示すように、P−GW5は、P−GW通知部51を備える。PCRF6は、接続情報取得部(接続情報取得手段)61、接続情報記憶部(接続情報記憶手段)62、障害検知部(障害検知手段)63、端末抽出部(端末抽出手段)64、負荷情報取得部(負荷情報取得手段)65、負荷情報記憶部66、端末情報記憶部67、及び接続復旧部(接続復旧手段)68を備える。P−CSCF8は、P−CSCF通知部81、P−GW情報記憶部82、死活監視部(死活監視手段)83、障害通知部(障害通知手段)84、及び負荷情報通知部85を備える。
図3は、PCRF6のハードウェア構成を示すブロック図である。図3に示すように、PCRF6は、物理的には、1又は複数のCPU(Central Processing Unit)101、主記憶装置であるRAM(Random Access Memory)102及びROM(Read Only Memory)103、入力デバイスである入力装置104、ディスプレイ等の出力装置105、データ送受信デバイスである通信モジュール106、ハードディスクドライブ等の補助記憶装置107等を含むコンピュータシステムとして構成されている。図2におけるPCRF6の各機能は、図3に示されるCPU101、RAM102等のハードウェア上に1又は複数の所定のコンピュータソフトウェアを読み込ませることにより、CPU101の制御のもとで入力装置104、出力装置105、通信モジュール106を動作させるとともに、RAM102や補助記憶装置107におけるデータの読み出し及び書き込みを行うことで実現される。また、P−GW5及びP−CSCF8のハードウェア構成は、上述したPCRF6のハードウェア構成と同様である。
図2に示した各機能のうち、P−GW通知部51、P−CSCF通知部81、接続情報取得部61、及び接続情報記憶部62は、主に、端末Tの電源がONにされてから、端末TがIMSネットワークNW2との間の通信経路(IMSデフォルトベアラ)を接続確立するまでに利用される機能である。端末Tは、LTEネットワークNW1を介してIMSネットワークNW2との通信経路を接続確立することで、IMSネットワークNW2により提供されるVoLTE等のサービスを受けることができる状態になる。一方、図2に示した各機能のうち上記以外の機能は、主に、端末TとIMSネットワークNW2との間で接続確立されたIMSデフォルトベアラに含まれるSGi区間Rの通信障害発生時の復旧のために利用される機能である。
以下、端末TがIMSネットワークNW2との間の通信経路を接続確立してIMSネットワークNW2により提供されるVoLTE等のサービスを受けることができる状態になるまでに必要となる処理のうち、端末Tの電源がONにされてから、端末Tに接続先候補のP−CSCF8が通知されるまでの処理を「アタッチ処理」という。また、アタッチ処理の完了後に端末Tが特定のP−CSCF8を選択及び登録するまでの処理を「登録処理」という。アタッチ処理及び登録処理が完了することにより、端末TとIMSネットワークNW2との間で、特定のSGi区間R(すなわち、特定のP−GW5及び特定のP−CSCF8)を経由するIMSデフォルトベアラが接続確立される。
P−GW通知部51は、アタッチ処理の過程で、端末T或いは端末Tのユーザを識別する情報(以下「ID」)とともに当該端末Tが自装置(P−GW5)に接続されることをPCRF6に通知する手段である。P−GW通知部51は、例えば、端末T或いは端末Tのユーザを識別するIDと、自装置(P−GW5)を識別する情報(以下「P−GW_ID」)とをPCRF6に通知することにより、当該端末Tが自装置に接続されることをPCRF6に通知する。
ここで、端末T或いは端末Tのユーザを識別するIDは、無線通信システム1を利用する複数の端末Tのうちから端末Tを一意に特定できる情報であれば何でもよい。IDの例としては、端末Tに紐付く電話番号やメールアドレス、端末Tを使用するユーザの契約情報(名前、住所、或いはそれらの組み合わせ等)等が挙げられる。また、IDは、端末Tやユーザを識別する公知のID(UDID、IMEI、IMSI等)であってもよい。また、P−GW_IDは、P−GW5を一意に特定できる情報であれば何でもよく、例えば、P−GW5の接続先アドレス(IPアドレス)や、DNS(Domain Name System)によって装置に関連付けられた名前等であってもよい。本実施形態では一例として、P−GW_IDは、P−GW5のPCRF側アドレス(詳しくは後述)である。
P−CSCF通知部81は、登録処理の過程で、端末T或いは端末Tのユーザを識別する情報とともに当該端末Tが自装置(P−CSCF8)に接続されることをPCRF6に通知する手段である。P−CSCF通知部81は、例えば、上述したIDと、自装置(P−CSCF8)を識別する情報(以下「P−CSCF_ID」)とをPCRF6に通知することにより、当該端末Tが自装置に接続されることをPCRF6に通知する。ここで、P−CSCF_IDは、P−CSCF8を一意に特定できる情報であれば何でもよく、例えば、P−CSCF8の接続先アドレス(IPアドレス)や、DNSによって装置に関連付けられる名前等であってもよい。
後述する接続情報取得部61は、P−GW通知部51から通知される情報(IDとP−GW_IDとの組)とP−CSCF通知部81から通知される情報(IDとP−CSCF_IDとの組)とを同一のIDで紐付けることにより、端末TのIMSデフォルトベアラに含まれるP−GW5及びP−CSCF8の組み合わせを示す接続情報Cを取得する。ここで、SGi区間Rは、当該区間の端部となるP−GW5及びP−CSCF8の各々を特定することにより特定されるため、接続情報Cは、端末TのIMSデフォルトベアラに含まれるSGi区間Rを特定する情報であるともいえる。
図4は、接続情報の一例を示す図である。図4の例では、接続情報C1は、ID「ID#1」により特定される端末Tが、第1のP−GW5(P−GW#1)及び第1のP−CSCF8(P−CSCF#1)に接続されていることを示す。つまり、端末TがIMSネットワークNW2との間で第1のP−GW5及び第1のP−CSCF8を経由するIMSデフォルトベアラを接続確立していることを示す。同様に、接続情報C2は、ID「ID#2」により特定される端末Tが、第1のP−GW5(P−GW#1)及び第2のP−CSCF8(P−CSCF#2)を経由するIMSデフォルトベアラを接続確立していることを示す。また、接続情報C3は、ID「ID#3」により特定される端末Tが、第2のP−GW5(P−GW#2)及び第1のP−CSCF8(P−CSCF#1)を経由するIMSデフォルトベアラを接続確立していることを示す。
P−CSCF8のP−GW情報記憶部82は、当該P−CSCF8と接続可能に構成されているP−GW5の各々について、P−CSCF側アドレス及びPCRF側アドレスを記憶する記憶手段である。P−GW情報記憶部82は、例えばLTEネットワークNW1に含まれる装置構成等に関する情報(局データ)を記憶するデータベース等である。
P−CSCF側アドレスは、P−GW5とP−CSCF8とが通信する際に利用されるP−GW5の接続インタフェースに紐付く接続先アドレス(例えばIPアドレス)である。言い換えれば、P−CSCF側アドレスは、P−GW5のSGi区間Rとのインタフェースに紐付く接続先アドレスである。P−CSCF側アドレスは、例えば、後述する死活監視部83からの死活監視用のアドレス(ICMP_ECHOの送信先アドレス)として用いられる。一方、PCRF側アドレスは、P−GW5とPCRF6とが通信する際に利用されるP−GW5の接続インタフェースに紐付く接続先アドレス(例えばIPアドレス)である。
P−CSCF8の死活監視部83は、当該P−CSCF8と通信可能に接続されたP−GW5に対する死活監視を実行する手段である。死活監視部83は、例えば以下の手順で死活監視を実行する。死活監視部83は、P−GW情報記憶部82を参照することにより、P−CSCF8と通信可能に接続されたP−GW5のP−CSCF側アドレスを取得する。死活監視部83は、取得したP−CSCF側アドレスを送信先アドレスとして、予めオペレータ等によって設定された時間間隔で特定の信号(ICMP_ECHO)を定期的に送信する。
ここで、信号送信先のP−GW5が正常に動作しており且つ信号送信元のP−CSCF8と信号送信先のP−GW5との間のSGi区間Rに通信障害が発生していなければ、死活監視部83は、信号送信先のP−GW5からICMP_ECHOに対する応答信号を受信する。一方、信号送信先のP−GW5が正常に動作していない場合或いは信号送信元のP−CSCF8と信号送信先のP−GW5との間のSGi区間に通信障害が発生している場合には、死活監視部83は、信号送信先のP−GW5からICMP_ECHOに対する応答信号を受信できない。従って、死活監視部83は、P−GW5に対してICMP_ECHOを定期的に送信し、ICMP_ECHOに対する応答が途絶えた場合に、信号送信元のP−CSCF8と信号送信先のP−GW5との間のSGi区間Rの通信障害(信号送信先のP−GW5自体の障害も含む)を検知することができる。
なお、死活監視部83は、P−GW5に対する死活監視として、P−CSCF8とP−GW5との間に配置されるネットワーク装置(ルータ、スイッチ等)に対する死活監視を行ってもよい。例えば、P−CSCF8と特定のP−GW5との間の通信経路が、ネットワーク装置Aを経由する通信経路Aとネットワーク装置Bを経由する通信経路Bとで二重化されている場合を考える。この場合、死活監視部83は、ネットワーク装置A及びネットワーク装置Bの各々に対して定期的にICMP_ECHOを送信し、両方からの応答が途絶えた場合に、P−CSCF8と特定のP−GW5との間の通信経路A,Bの両方の通信障害(二重障害)を検知することができる。このように、死活監視部83は、P−GW5に対して直接ICMP_ECHOを送信する代わりに、P−CSCF8とP−GW5との間の通信経路(冗長化されている場合には、冗長化された通信経路の各々)に含まれるネットワーク装置に対してICMP_ECHOを送信し、それに対する応答の有無によってSGi区間Rの通信障害の有無を検知してもよい。
死活監視部83は、上述のP−GW5に対する死活監視によってP−CSCF8との間の通信障害を検知すると、当該通信障害が検知されたP−GW5を障害通知部84に通知する。
障害通知部84は、死活監視部83による死活監視によってP−CSCF8との間の通信障害が検知されたP−GW5をPCRF6に通知する手段である。障害通知部84は、死活監視部83からの通知により、送信元のP−CSCF8との間の通信障害が検知されたP−GW5を把握する。本実施形態では一例として、障害通知部84は、P−GW情報記憶部82を参照することにより、通信障害が検知されたP−GW5のPCRF側アドレス(P−GW_IDの一例)を取得し、取得したPCRF側アドレスをPCRF6に通知する。この際、障害通知部84は、自装置(P−CSCF8)を識別する情報(P−CSCF_ID)についてもPCRF6に通知する。
P−CSCF8の負荷情報通知部85は、定期的に当該P−CSCF8の負荷に関する負荷情報を取得する手段である。負荷情報とは、例えばP−CSCF8のCPU使用率、メモリ使用率、ネットワーク使用率等を示す情報である。負荷情報通知部85は、例えば、P−CSCF8とPCRF6との間で制御信号の伝送用経路として確立されるC-Plane接続を利用して、適宜のタイミングで負荷情報をPCRF6に送信する。適宜のタイミングとは、例えばオペレータ等によって予め定めた所定周期のタイミングでもよいし、P−CSCF8からPCRF6に対して任意の制御信号が送信されるタイミングでもよい。
接続情報取得部61は、上述したP−GW通知部51からの通知を受け取ることにより、端末TのIMSデフォルトベアラに含まれるP−GW5(すなわち、通知元のP−GW)を識別する情報(P−GW_ID)を取得する手段である。また、接続情報取得部61は、上述したP−CSCF通知部81からの通知を受け取ることにより、端末TのIMSデフォルトベアラに含まれるP−CSCF8(すなわち、通知元のP−CSCF8)を識別する情報(P−CSCF_ID)を取得する手段でもある。すなわち、接続情報取得部61は、P−CSCF通知部81及びP−GW通知部51の各々からの通知を受け取ることにより、端末Tが接続されるP−CSCF8及びP−GW5の組み合わせ(すなわち、SGi区間R)を示す接続情報Cを取得する。
接続情報記憶部62は、接続情報取得部61により取得された接続情報Cを端末毎に記憶する手段である。接続情報記憶部62は、後述する端末抽出部64から参照可能に構成されている。
障害検知部63は、P−CSCF8とP−GW5との間のSGi区間Rの通信障害を検知する手段である。本実施形態では一例として、障害検知部63は、P−CSCF8の障害通知部84からの通知を受け取ることにより、通知元のP−CSCF8と通知されたP−GW5との間のSGi区間Rの通信障害を検知する。具体的には、障害検知部63は、P−GW_ID及びP−CSCF_IDの組について、障害通知部84から通知を受ける。障害検知部63は、障害通知部84から通知されたP−GW_ID及びP−CSCF_IDの組を端末抽出部64に通知する。
端末抽出部64は、接続情報記憶部62に記憶されている接続情報Cを参照することにより、障害検知部63により通信障害が検知されたSGi区間Rを含むIMSデフォルトベアラが接続確立されている端末Tを抽出する手段である。ここで、障害検知部63から通知されたP−GW_ID及びP−CSCF_IDの組が「P−GW#1」及び「P−CSCF#1」である場合について考える。この場合、図4の例において、端末抽出部64は、P−GW_ID及びP−CSCF_IDの組が「P−GW#1」及び「P−CSCF#1」である接続情報C1に紐付く端末T(IDが「ID#1」である端末T)を抽出することになる。
負荷情報取得部65は、無線通信システム1内の各P−CSCF8の負荷情報を取得する手段である。負荷情報取得部65は、各P−CSCF8の負荷情報通知部85から、各P−CSCF8の負荷情報を適宜のタイミングで取得する。負荷情報取得部65は、このようにして取得した負荷情報をP−CSCF8毎に負荷情報記憶部66に記憶(或いは更新)させる。負荷情報記憶部66は、各P−CSCF8の負荷情報を記憶する手段である。
端末情報記憶部67は、端末T毎の端末種別を示す端末種別情報を記憶する手段である。端末Tの端末種別情報は、例えば、端末Tのアタッチ処理の過程において端末情報記憶部67に記憶される。一例としては、HSS7からMME3に受け渡される加入者プロファイルに、端末Tを使用するユーザの契約情報とともに端末Tの端末種別を示す情報が含まれている。そして、当該加入者プロファイルに含まれる情報がアタッチ処理の過程でPCRF6に伝送されることで、端末情報記憶部67に端末Tの端末種別情報が記憶される。ここで、端末種別とは、例えばスマートフォン、センサ機器等の分類である。ただし、端末種別は上記分類に限られず、端末Tの製造メーカ、機種、型番等を示す情報であってもよい。本実施形態では一例として、端末種別は、スマートフォン及びセンサ機器等の分類を示すものとする。
接続復旧部68は、端末抽出部64により抽出された端末T(すなわち、通信障害が検知されたSGi区間Rを含むIMSデフォルトベアラを接続確立している端末T)の各々に対して接続復旧処理を実行する手段である。ここで、接続復旧処理とは、通信障害が検知されたSGi区間Rに含まれるP−CSCF8とは異なるP−CSCF8を端末Tの接続先候補として決定し、決定されたP−CSCF8を経由する通信経路を新たに接続確立させる処理である。
具体的には、接続復旧部68は、端末抽出部64により抽出された端末Tの各々について、P−CSCFディスカバリを実行する。ここで、接続復旧部68は、障害検知部63によって通信障害が検知されたSGi区間Rに含まれるP−CSCF8(すなわち、障害通知部84からの通知に含まれるP−CSCF_IDによって特定されるP−CSCF8)以外のP−CSCF8を端末Tの接続先候補として決定する。その後、接続復旧部68は、端末Tに、接続先候補として決定したP−CSCF8を経由するIMSデフォルトベアラを接続確立させる。
ここで、接続復旧部68による接続復旧処理の方式としては、例えば、IMSデフォルトベアラを変更する第1の方式と、IMSデフォルトベアラを解放及び再構築する第2の方式とがある。
第1の方式は、アタッチ処理によって生成されたIMSデフォルトベアラを解放することなく維持したまま、当該IMSデフォルトベアラに含まれるP−CSCF8を新たなP−CSCF8に変更する方式である。つまり、第1の方式では、IMSデフォルトベアラに含まれるP−GW5は変更されず、P−CSCF8のみが変更される。
第1の方式では、まず、接続復旧部68は、P−CSCFディスカバリを実行することにより、新たな接続先候補となるP−CSCF8のリスト(以下「P−CSCFリスト」)を生成し、P−CSCFリストを端末Tに通知する。その後、端末Tが、P−CSCFリストに含まれるP−CSCF8の中から新たな接続先となるP−CSCF8を決定し、新たな接続先として決定したP−CSCF8に対して登録要求を行う。上記手順により、端末TのIMSデフォルトベアラに含まれるP−CSCF8が、新たな接続先として決定されたP−CSCF8に切り替わる。
一方、第2の方式は、アタッチ処理によって生成されたIMSデフォルトベアラを解放(呼解放)した上で、端末TにIMSデフォルトベアラを接続確立させることにより、IMSデフォルトベアラを新たに接続確立(再構築)させる方式である。第2の方式では、IMSデフォルトベアラに含まれるP−CSCF8だけでなく、P−GW5についても変更される可能性がある。
第2の方式では、まず、接続復旧部68は、端末Tが接続確立しているIMSデフォルトベアラを解放する。その後、IMSデフォルトベアラを解放された端末Tは、IMSデフォルトベアラを新たに接続確立するために、IMSデフォルトベアラの接続要求をS−GW4等を介してPCRF6に送信する。接続復旧部68は、当該端末Tからの接続要求を受け付けると、P−CSCFディスカバリを実行する。これにより、接続復旧部68は、新たな接続先候補となるP−CSCF8を含むP−CSCFリストを生成し、端末Tに通知する。その後、端末Tが、P−CSCFリストに含まれるP−CSCF8の中から新たな接続先となるP−CSCF8を決定し、新たな接続先として決定したP−CSCF8に対して登録要求を行う。上記手順により、端末TのIMSデフォルトベアラが解放された後に、新たな接続先として決定されたP−CSCF8を経由するIMSデフォルトベアラが新たに接続確立(再構築)される。
なお、通信障害が検知されたSGi区間Rの通信障害が復旧した場合には、P−CSCF8からPCRF6に対して送信される制御信号により、当該通信障害の復旧が通知される。通信障害が復旧した場合には、もはや端末抽出部64によって抽出された各端末Tに対する接続復旧処理を行う必要はない。そこで、接続復旧部68(PCRF6)は、接続復旧処理の実行開始前或いは実行中に、接続通信障害が検知されたSGi区間Rについての通信障害の復旧の通知を更に受け取った場合、接続復旧処理を中止してもよい。具体的には、端末抽出部64により抽出された端末Tが10台存在し、端末抽出部64が3台目の端末Tに対する接続復旧処理の途中でSGi区間Rの通信障害の復旧の通知を受け取った場合、端末抽出部64は、4台目以降の端末Tに対する接続復旧処理を中止してもよい。これにより、無駄な接続復旧処理の実行を防止することができる。
また、接続復旧部68は、端末抽出部64により抽出された端末Tの各々について、当該端末Tの種別を示す端末種別情報を取得し、当該端末Tの種別に基づいて、接続復旧処理の方式を決定してもよい。具体的には、接続復旧部68は、端末情報記憶部67に記憶された端末Tの端末種別情報を参照することにより、端末Tの種別を取得(把握)する。そして、接続復旧部68は、端末Tの種別(本実施形態では一例としてスマートフォン又はセンサ機器)に応じた接続復旧処理の方式(第1の方式又は第2の方式)を、当該端末Tに対する接続復旧処理の方式として決定する。
例えば、上記第1の方式によれば、IMSデフォルトベアラの再構築が必要ないため、IMSデフォルトベアラの再構築を実行する場合と比較して、通信量及び処理手順を少なくできる可能性がある。一方、第1の方式では、P−GW5については変更しないため、P−GW5が原因でSGi区間Rの通信障害が引き起こされていた場合には、第1の方式による接続復旧処理を実行しても正常なIMSデフォルトベアラが確立されないといったことが起こり得る。このため、IMSデフォルトベアラを一から生成し直す第2の方式の方が、第1の方式よりも安全且つ確実に、正常なIMSデフォルトベアラを確立できるという利点がある。
そこで、接続復旧部68は、ユーザによって使用されるスマートフォンである端末Tについては、より安全且つ確実に接続復旧処理を行う観点から、第2の方式による接続復旧処理を実行してもよい。一方、接続復旧部68は、絶対数が多いセンサ機器等の端末Tについては、LTEネットワークNW1にかかる通信負荷及び処理負荷を抑制する観点から、第1の方式による接続復旧処理を実行してもよい。ただし、上記は一例に過ぎず、接続復旧部68は、上記とは異なる観点から端末Tの端末種別に応じた接続復旧処理の方式を決定するように構成されてもよい。
また、接続復旧部68は、接続復旧処理において、負荷情報取得部65により取得されたP−CSCF8毎の負荷情報(負荷情報記憶部66に記憶されている負荷情報)に基づいて、端末Tの接続先候補となるP−CSCF8を決定してもよい。例えば、接続復旧部68は、接続復旧処理において新たな接続先候補となるP−CSCFリストを生成する際に、負荷状態(CPU使用率、メモリ使用率、ネットワーク使用率等)が他のP−CSCF8と比較して小さい(或いは予め設定された閾値以下である)P−CSCF8のみをP−CSCFリストに含めるようにしてもよい。或いは、接続復旧部68は、負荷が高いP−CSCF8(負荷状態が予め設定された閾値以上であるP−CSCF8)をP−CSCFリストから除外してもよい。
図5及び図6を用いて、無線通信システム1において実行される手順について説明する。図5は、アタッチ処理及び登録処理の手順の一例を示すシーケンス図である。図6は、SGi区間の通信障害が発生した際の復旧手順の一例を示すシーケンス図である。
まず、図5を用いて、アタッチ処理及び登録処理の手順の一例について説明する。ここでは一例として、一連のアタッチ処理及び登録処理によって、図4に示した接続情報C1が接続情報記憶部62に記憶される例について説明する。
まず、アタッチ処理の手順(ステップS1〜S7)について説明する。端末Tの電源がONにされたタイミングで、端末TからeNB2を経由してMME3に、IMSネットワークNW2に対する接続要求(Attach要求)が送信される(ステップS1)。MME3は、HSS7との間で位置登録の手順(位置登録要求/応答)を実行する(ステップS2)。具体的には、MME3は、HSS7に対して位置登録を要求し、HSS7から、VoLTE用APNを含む加入者プロファイルを取得する。
続いて、MME3は、ステップS2で取得したAPNに基づいて、S−GW4及びP−GW5を経由してPCRF6に対して、IMSデフォルトベアラの接続要求(セッション生成要求)を送信する(ステップS3)。ここでは一例として、第1のP−GW5(P−GW#1)が接続先のP−GW5として選択されるものとする。また、ステップS3において、PCRF6は、端末Tに紐付く加入者プロファイルに含まれる情報(端末種別情報)をMME3から取得する。これにより、端末情報記憶部67に端末Tの端末種別情報が記憶される。
ステップS3において、第1のP−GW5(P−GW通知部51)は、Diameterプロトコルによるメッセージ(Diameter_CCR)によって、端末TのID(ここでは一例として「ID#1」)とともに自装置が当該端末Tによって使用されることをPCRF6に通知する。具体的には、P−GW通知部51は、ID「ID#1」及びP−GW_ID「P−GW#1」の組をPCRF6に通知する。当該通知により、PCRF6(接続情報取得部61)は、接続情報C1のうち、ID及びP−GW_IDの組を示す情報を取得する。言い換えれば、PCRF6は、IDが「ID#1」である端末Tが接続されるP−GW5(P−GW#1)を把握する(ステップS4)。
続いて、PCRF6は、P−CSCFディスカバリを実行することにより、端末Tが選択可能なP−CSCF8の候補を決定する(ステップS5)。PCRF6は、例えば、P−CSCF8への死活監視により応答が得られたP−CSCF8を候補として決定する。PCRF6は、候補として決定されたP−CSCF8を含むP−CSCFリストを、セッション生成要求に対する応答(セッション生成応答)として、MME3に送信する(ステップS6)。その後、MME3は、端末TからのAttach要求に対する応答(Attach応答)により、アタッチ処理が完了したことを端末Tに通知するとともに、PCRF6から取得したP−CSCFリストを通知する(ステップS7)。
次に、登録処理の手順(ステップS8〜S13)について説明する。まず、端末Tは、アタッチ処理により取得したP−CSCFリストに含まれるP−CSCF8の中から接続先となるP−CSCF8を決定(選択)する(ステップS8)。ここでは一例として、端末Tは、第1のP−CSCF8(P−CSCF#1)を接続先のP−CSCF8として決定する。
続いて、端末Tは、接続先として決定したP−CSCF8に対してSIPプロトコルによる登録要求(SIP Register)を送信する(ステップS9)。その後、登録要求を受けた第1のP−CSCF8(P−CSCF通知部81)は、PCRF6に対して認証処理の要求(Diameter_AAR)を送信するとともに、当該P−CSCF8が端末Tから選択及び登録(SIP_Reg)されたことを通知する(ステップS10)。すなわち、P−CSCF通知部81は、ID「ID#1」及びP−CSCF_ID「P−CSCF#1」の組をPCRF6に通知する。当該通知により、PCRF6(接続情報取得部61)は、接続情報C1のうち、ID及びP−CSCF_IDの組を示す情報を取得する。言い換えれば、PCRF6は、端末Tが接続されるP−CSCF8(P−CSCF#1)を把握する(ステップS11)。
PCRF6(接続情報取得部61)は、ステップS4で取得した情報(ID「ID#1」とP−GW_ID「P−GW#1」との組)とステップS11で取得した情報(ID「ID#1」とP−CSCF_ID「P−CSCF#1」との組)とを併せることにより、接続情報C1を取得する。そして、接続情報取得部61は、当該接続情報C1を接続情報記憶部62に記憶させる(ステップS12)。また、PCRF6は、ステップS10の認証要求に対する認証処理を実行し、P−CSCF8に認証応答(Diameter_AAA)を送信する(ステップS13)。
上述した一連のアタッチ処理及び登録処理が実行されることにより、端末Tの接続処理(IMSデフォルトベアラの接続確立)が完了するとともに、当該端末Tの接続情報C1がPCRF6(接続情報記憶部62)に記憶される。
次に、図6を用いて、SGi区間Rの通信障害が発生した際の復旧手順の一例について説明する。無線通信システム1に含まれるP−CSCF8(ここでは一例として、P−CSCF#1及びP−CSCF#2)の各々は、死活監視部83により、当該P−CSCF8に接続されているP−GW5に対する死活監視を定期的に実行する(ステップS21)。
ここで、SGi区間R(ここでは一例として第1のP−GW5(P−GW#1)と第1のP−CSCF8(P−CSCF#1)との間の通信区間)の通信障害が発生すると、第1のP−CSCF8の死活監視部83が、当該通信障害を検知する(ステップS22)。続いて、死活監視部83により検知された通信障害(通信障害が検知された第1のP−GW5)が障害通知部84に通知され、障害通知部84からPCRF6に対して当該通信障害が通知される(ステップS23)。具体的には、障害通知部84は、通信障害が検知されたP−GW5のPCRF側アドレス(P−GW_IDの一例)と、自装置(P−CSCF8)を識別するP−CSCF_ID)とをPCRF6に通知する。これにより、PCRF6の障害検知部63は、通信障害が発生したSGi区間Rの端部となるP−GW5及びP−CSCF8のそれぞれを識別するP−GW_ID(P−GW#1)及びP−CSCF_ID(P−CSCF#1)の組を把握する。障害検知部63は、上記組の情報を端末抽出部64に通知する。
続いて、障害検知部63からの通知を受けた端末抽出部64は、接続情報記憶部62に記憶されている接続情報Cを参照することにより、通知されたP−GW_ID及びP−CSCF_IDの組により特定されるSGi区間Rを含むIMSデフォルトベアラが接続確立されている端末Tを抽出する(ステップS24)。上記例では、端末抽出部64は、少なくとも接続情報C1に基づき、第1のP−GW5(P−GW#1)と第1のP−CSCF8(P−CSCF#1)とに接続されている端末T(IDが「ID#1」の端末T)を抽出することになる。
続いて、接続復旧部68が、端末抽出部64により抽出された各端末TのIMSデフォルトベアラを正常な状態に復旧する接続復旧処理を実行する。接続復旧部68は、端末Tに対する接続復旧処理として第1の方式による接続復旧処理を実行する場合にはステップS25aの手順を実行する。一方、接続復旧部68は、端末Tに対する接続復旧処理として第2の方式による接続復旧処理を実行する場合にはステップS25bの手順を実行する。上述の通り、接続復旧部68は、端末情報記憶部67を参照することにより、処理対象の端末Tの端末種別を把握し、当該端末種別に応じて第1の方式及び第2の方式のいずれの方式による接続復旧処理を実行するかを決定することができる。なお、ステップS26は、第1の方式及び第2の方式で共通に実行される手順である。
まず、第1の方式による接続復旧処理を実行する場合(ステップS25a、S26)の手順について説明する。第1の方式による接続復旧処理では、まず、接続復旧部68は、P−CSCFディスカバリを実行することにより、新たな接続先候補となるP−CSCF8を含むP−CSCFリストを生成する(ステップS25a1)。具体的には、接続復旧部68は、通信障害が検知されたSGi区間Rに含まれるP−CSCF8(すなわち、障害通知部84からの通知に含まれるP−CSCF_IDによって特定されるP−CSCF8)以外のP−CSCF8の中から端末Tの接続先候補となるP−CSCF8を決定する。上述の通り、接続復旧部68は、負荷情報記憶部66に記憶されている各P−CSCF8の負荷状態(CPU使用率、メモリ使用率、ネットワーク使用率等)に基づいて、接続先候補となるP−CSCF8を決定してもよい。ここでは一例として、ステップS25a1において、接続復旧部68は、第2のP−CSCF8(P−CSCF#2)を含むP−CSCFリストを生成するものとする。
続いて、接続復旧部68は、端末TのIMSデフォルトベアラに含まれるP−CSCF8を変更するために、P−CSCFリストを含む制御信号(IP-CAN Session Modification)をP−GW5に送信する(ステップS25a2)。その後、P−GW5から端末Tに対してP−CSCFリストを含むIMSデフォルトベアラ変更要求信号が送信される(ステップS25a3)。これに対して、端末Tから、IMSデフォルトベアラの変更要求に対する応答が、P−GW5を介してPCRF6に返される(ステップS25a4,S25a5)。その後、端末Tは、ステップS25a3において取得したP−CSCFリストを参照し、新たな接続先となるP−CSCF8(ここでは一例としてP−CSCF#2)を決定し、図5のステップS9と同様の登録処理をP−CSCF#2に対して行う(ステップS26)。これにより、端末TとIMSネットワークNW2との間に接続確立されるIMSデフォルトベアラに含まれるP−CSCF8は、新たな接続先として選択された第2のP−CSCF8(P−CSCF#2)に切り替えられる。
次に、第2の方式による接続復旧処理を実行する場合(ステップS25b)の手順について説明する。第2の方式による接続復旧処理では、まず、接続復旧部68は、端末Tに対して制御信号(PCRF initiated Bearer Deactivation)を送信することにより、端末Tが接続確立しているIMSデフォルトベアラを解放する(ステップS25b1)。IMSデフォルトベアラを解放された端末Tは、IMSデフォルトベアラを新たに接続確立するために、IMSデフォルトベアラの接続要求をS−GW4を介してPCRF6に送信する(ステップS25b2,S25b3)。接続復旧部68は、当該端末Tからの接続要求を受けて、P−CSCFディスカバリを実行することにより、新たな接続先候補となるP−CSCF8を含むP−CSCFリストを生成する(ステップS25b4)。ここでは一例として、ステップS25a1では、接続復旧部68は、第2のP−CSCF8(P−CSCF#2)を含むP−CSCFリストを生成するものとする。
続いて、IMSデフォルトベアラ接続のための残りの手順が実行される。具体的には、PCRF6からS−GW4に対してDiameterプロトコルによる通知(Dia_CCA)がされ(ステップS25b5)、S−GW4とPCRF6との間で残りの手順が実行される(ステップS25b6)。最終的に、接続復旧部68は、S−GW4等を介して、端末Tからの接続要求に対する応答として、P−CSCFリストを含む制御信号を端末Tに送信する(ステップS25b7)。その後、端末Tは、ステップS25b7において取得したP−CSCFリストを参照し、新たな接続先となるP−CSCF8(ここでは一例としてP−CSCF#2)を決定し、図5のステップS9と同様の登録処理をP−CSCF#2に対して行う(ステップS26)。これにより、端末TとIMSネットワークNW2との間に、新たな接続先として選択されたP−CSCF8(P−CSCF#2)を経由するIMSデフォルトベアラが接続確立(再構築)される。
以上述べた無線通信システム1によれば、LTEネットワーク(第1通信ネットワーク)NW1に含まれるPCRF(通信制御装置)6が、LTEネットワークNW1に含まれるP−GW(第1中継装置)5とIMSネットワーク(第2通信ネットワーク)NW2に含まれるP−CSCF(第2中継装置)8との間のSGi区間(通信区間)Rの通信障害を検知するとともに、接続情報Cに基づいて当該通信障害により影響を受ける端末Tを抽出し、抽出された端末TのIMSデフォルトベアラ(通信経路)を自動復旧させることができる。具体的には、障害検知部63が、SGi区間Rの通信障害を検知し、端末抽出部64が、接続情報記憶部62に記憶されている接続情報Cを参照することにより当該通信障害により影響を受ける端末Tを抽出し、接続復旧部68が、抽出された各端末TのIMSデフォルトベアラを自動復旧させることができる。
また、無線通信システム1によれば、P−CSCFディスカバリ機能をPCRF6が備える構成において、SGi区間Rの通信障害発生時に、端末TのIMSデフォルトベアラの自動復旧を実現できる。すなわち、無線通信システム1によれば、設計の柔軟性を確保しつつ、SGi区間Rにおける通信障害発生時に端末TのIMSデフォルトベアラの自動復旧を行うことができる。
また、P−CSCF8は、死活監視部83によって当該P−CSCF8と通信可能に接続されたP−GW5に対する死活監視を行い、当該死活監視により当該P−CSCF8との間の通信障害が検知されたP−GW5を障害通知部84によってPCRF6に通知する。そして、障害検知部63は、上記通知を受け付けることにより、通知元のP−CSCF8と当該P−CSCF8により通知されたP−GW5との間のSGi区間Rの通信障害を検知する。このような仕組みにより、P−CSCF8からP−GW5に対する死活監視に基づく通知に基づいて、通信障害が発生したSGi区間R(すなわち、当該SGi区間Rの端部となるP−CSCF8及びP−GW5の組み合わせ)を適切に検出することができる。
また、端末TがIMSネットワークNW2との間のIMSデフォルトベアラを接続確立する処理(アタッチ処理及び登録処理)を実行する際に、接続情報取得部61が、当該IMSデフォルトベアラに含まれるP−GW5及びP−CSCF8の各々からの通知を受け取ることにより、当該端末Tが接続されるP−GW5及びP−CSCF8の組み合わせを示す接続情報Cを取得する。そして、接続情報取得部61により取得された接続情報Cは、接続情報記憶部62に記憶される。このような仕組みにより、端末TがIMSネットワークNW2との間のIMSデフォルトベアラを接続確立する処理を実行する際に、端末Tが接続される各装置(P−CSCF8及びP−GW5)からの通知に基づいて、端末の接続情報を確実且つ適宜のタイミングで取得及び記憶することができる。
また、接続復旧部68は、端末抽出部64により抽出された端末Tの各々について、当該端末Tの種別を示す端末種別情報を端末情報記憶部67から取得し、当該端末Tの種別に基づいて、接続復旧処理の方式(本実施形態では一例として第1の方式及び第2の方式のいずれか)を決定する。このような仕組みにより、復旧対象の端末Tの種別に応じた適切な接続復旧方式を選択することが可能となる。
また、PCRF6は、P−CSCF8の処理負荷に関する負荷情報を取得する負荷情報取得部65を備え、接続復旧部68は、接続復旧処理において、負荷情報取得部65により取得されたP−CSCF8毎の負荷情報に基づいて、端末Tの接続先候補となるP−CSCF8を決定する。このような仕組みにより、端末TのIMSデフォルトベアラを復旧させる際に、各P−CSCF8の処理負荷に基づき、端末Tの接続先候補となるP−CSCF8を適切に決定することができる。例えば、処理負荷が予め定めた閾値以下であるP−CSCF8や処理負荷が最も小さいP−CSCF8等を端末Tの新たな接続先候補として決定することが可能となる。
補足すると、標準仕様(3GPP TS 23.380)では、P−GWからP−CSCFの死活監視はユーザデータの伝送用経路として確立されるU-Plane接続を利用するため、P−GWがP−CSCFディスカバリの実行により新たな接続先候補となるP−CSCFを決定する際に、P−CSCFの負荷状態を加味することはできない。一方、本実施形態では、PCRF6とP−CSCF8との間が制御信号の伝送用経路として確立されるC-Plane接続となるため、Diameterプロトコルに基づく制御信号により、負荷情報通知部85から負荷情報取得部65へとP−CSCF8の負荷状態を通知することができる。これにより、本実施形態では、C-Plane接続によってP−CSCF8からPCRF6に対して受け渡される信頼性の高い情報(P−CSCF8の負荷状態)に基づいて、端末Tの新たな接続先候補となるP−CSCF8を適切に選別することができる。
以上、本発明をその実施形態に基づいて詳細に説明した。しかし、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲において様々な変形が可能である。
例えば、PCRF6の障害検知部63及び端末抽出部64は、P−CSCF8自体の障害が発生した際にも上記実施形態と同様の枠組みで端末TのIMSデフォルトベアラの復旧を行えるように構成されてもよい。この場合、障害検知部63は、例えば、無線通信システム1内のP−CSCF8に対する死活監視を更に実行する。具体的には、障害検知部63は、無線通信システム1内のP−CSCF8のPCRF6側の接続先アドレスを予め保持し、各P−CSCF8に対して特定の信号(ICMP_ECHO)を定期的に送信する。そして、障害検知部63は、あるP−CSCF8からの応答が途絶えた場合に、当該P−CSCF8を識別する情報(例えばP−CSCF8のPCRF6側の接続先アドレス等のP−CSCF_ID)を端末抽出部64に通知する。当該通知を受けた端末抽出部64は、接続情報記憶部62を参照し、障害検知部63から通知されたP−CSCF_IDを含む接続情報Cに紐付く端末Tを復旧対象の端末Tとして抽出する。これにより、障害検知部63からの死活監視に対する応答が途絶えたP−CSCF8に接続されている端末Tについて、接続先のP−CSCF8を変更することができる。