以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る通信システムの全体構成を示す図である。本実施形態に係る通信システム1は、無線通信によるパケット交換サービスを通信端末70に提供するLTE(Long Term Evolution)ネットワークを構成する。特に、本実施形態では、通信システム1がVoLTE(Voice over LTE)に係る通信を行う場合について説明する。VoLTEとは、パケット通信により音声通信を行うサービス(機能)であり、LTE網上で音声通話を実現する機能である。また、VoLTEでは、IP(Internet Protocol)ベースのマルチメディアサービスを制御するシステムであるIMS(IP multimedia subsystem)を利用して音声通信が行われる。
通信システム1は、複数の通信端末70(UE:User Equipment)にIMS(IP Multimedia Subsystem)ネットワークN1(通信ネットワーク)への接続機能を提供する。図1に示されるように、通信システム1は、P−CSCF(Proxy-Call Session Control Function)10(10A,10B)、PCRF(Policy and Charging Rules Function)20、MME(Mobility Management Entity)30、P−GW(Packet data network-GateWay)40(40A,40B),S−GW(Serving-GateWay)50(50A,50B)、及びeNB(evolved Node B)60を含んで構成される。このうち、P−CSCF10は、通信端末70によるIMSネットワークN1の利用に係る制御を行う装置であり、その他の装置は、通信端末70がVoLTEによる通信を行うための装置である。
通信システム1による通信制御により、通信端末70は、IMSネットワークN1に接続し、無線通信によって種々のサービスの提供を受けることができる。種々のサービスとしては、LTEにおけるパケット交換サービスによる音声通信(VoLTE:Voice over LTE)サービスやデータ通信サービス(例えばSMSや電子メール等のデータ通信)等が挙げられるが、本実施形態では、VoLTEに関して説明する。通信端末70から発信されるIMSネットワークN1への接続要求(発呼)は、eNB60、S−GW50及びP−GW40を介して、P−CSCF10に送信される。
なお、図1では、通信システム1により音声通信を制御する複数の端末のうちの1つの通信端末のみを示している。実際には、通信システム1によって複数の通信端末による音声通信の制御が行われる。
P−CSCF10は、通信端末70とIMSネットワークN1との間のセッション制御を実行する装置である。P−CSCF10は、通信システム1により形成される通信網(即ち、eNB60、S−GW50及びP−GW40を介して通信端末70との無線通信が行われるアクセスネットワーク)とIMSネットワークN1との境界に設けられる。具体的には、P−CSCF10は、通信端末70とIMSネットワークとの間で送受信されるSIP(Session Initiation Protocol)信号を中継する中継装置として機能する。
PCRF20は、一以上のP−GW40及びS−GW50と接続可能にされ、QoS(Quality of Service)情報等のポリシー制御又は課金制御のための情報を保持し、それらの情報をP−GW40及びS−GW50に通知する制御装置である。このQoS情報は、通信端末70に提供される通信サービスに関する通信品質に関する情報である。また、PCRF20は、P−CSCF10と接続可能であり、通信端末70がIMSネットワークN1に接続する際の制御情報等の送受信が行われる。本実施形態において、PCRF20は、複数の通信端末70に係る通信の制御を実行する通信制御装置としての役割を担う。
MME30は、一以上のeNB60を収容し、LTEにおけるモビリティ制御及びベアラ制御等の機能を提供する交換機である。また、MME30は、一以上のS−GW50とも接続可能にされ、eNB60及びS−GW50に対してベアラ制御に係る情報の送受信も行う。本実施形態において、MME30は、複数の通信端末70に係る通信の制御を実行する通信制御装置としての役割を担う。
P−GW40は、S−GW50と接続可能にされ、VoLTE等の音声通信サービス、インターネット接続サービス等のデータ通信サービスを提供するIP(Internet Protocol)バックボーンN2との接続点であるゲートウェイ(中継装置)である。このP−GW40は、S−GW50と接続可能にされ、通信端末70に係るユーザデータを転送する。また、P−GW40(40A,40B)は、P−GW側ルータ41(41A,41B)及びP−CSCF側ルータ11(11A,11B)を介して、P−CSCF10(10A,10B)との間で通信可能とされている。このP−GW40とP−CSCF10との通信は、IPバックボーンN2を介して行われる。
S−GW50は、MME30及びeNB60と接続可能にされ、MME3及びeNB60を介して通信端末70とさらに接続されて、通信端末70との間で制御信号及びユーザデータを含むIPパケットの伝送を行うパケットゲートウェイ(中継装置)である。具体的には、S−GW50は、MME30からの指示に基づいてIPパケットの中継制御を行う。また、S−GW7は、PCRF20から通知されたQoS情報に従って、IPパケットの伝達品質制御を行う。
ここで、通信端末70がIMSネットワークN1を介して音声通信(VoLTE)を行う手順について説明する。まず、P−CSCF10は、通信端末70への音声通信サービスの提供に先立って、P−GW40A、S−GW50A、eNB60を経由して通信端末70とIMSネットワークN1との間でIMS呼処理SIP(Session Initiation Protocol)シグナリング用ベアラ(IMSベアラ)を中継接続する。このIMSベアラは、通信端末70に音声通信サービスを提供するための制御信号の伝送用の通信経路である。図1では、通信端末70とP−CSCF10Aとの間に設けられるIMSベアラB1〜B4を示す。図1に示すように、IMSベアラは、通信端末70とeNB60との間(B1)、eNB60とS−GW50Aとの間(B2)、S−GW50AとP−GW40Aとの間(B3)、及び、P−GW40AとP−CSCF10Aとの間(B4)というように、接続先の装置との間で個々に設けられる。
また、IMSベアラを経由して通信端末70に対する着信、或いは通信端末70からの発信があった場合には、P−CSCF10は、IMSベアラと同じ通信経路で通信端末70とIMSネットワークN1との間で追加に設けられるユーザデータ用ベアラ(以下、「デディケイテットベアラ(Dedicated Bearer)」と言う。)を中継接続する。このデディケイテットベアラは、通信端末70に音声通信サービスを提供するためのユーザデータの伝送用の通信経路である。すなわち、VoLTEによる音声通信サービスを提供するためには、通信端末70とP−CSCF10との間の同一通信経路に、デフォルトに用いられるIMSベアラと、デディケイテットベアラと、を含む複数のベアラが確立されることが必要である。
このように、IMSベアラは通信端末70がVoLTEによる音声通信サービスの提供を受ける間は、常時設定される。また、デディケイテットベアラは、相手方の通信端末との間で音声通信を実施する際に一時的に設けられるベアラであり、通信端末70が待機状態の場合には設けられない。図1では、デディケイテットベアラに関しては、記載を省略する。
ここで、通信端末70とIMSネットワークN1とを繋ぐIMSベアラ(及びデディケイテットベアラ)を設けた装置に障害が発生した場合、IMSベアラを使用できなくなり、通信端末70がIMSネットワークN1を利用した音声通信を行うことができなくなる。図1では、一例として、S−GW50Aに障害が発生した場合を示している。この場合、S−GW50Aは、自装置に繋がるIMSベアラを用いた情報の送受信制御ができなくなる。したがって、IMSベアラB1〜B4を利用した音声通信サービスを通信端末70が行うことができなくなる。そこで、通信システム1において、S−GW50Aに障害が発生していることを他の装置(例えば、PCRF20又はMME30)が検知した場合、PCRF20及びMME30の指示によって、通信端末70とIMSネットワーク(N1)とを繋ぐIMSベアラB1〜B4を一度解放し、S−GW50Aを経由しない新たな通信経路としてのIMSベアラB1’〜B4’を再確立する必要がある。図1では、IMSベアラB1’〜B4’として、通信端末70とeNB60との間(B1’)、eNB60とS−GW50Bとの間(B2’)、S−GW50BとP−GW40Bとの間(B3’)、及び、P−GW40BとP−CSCF10Aとの間(B4’)に新たなIMSベアラを設けた構成が示されている。このように、IMSベアラを設けた装置の故障等により障害が発生した場合、通信端末70に係る通信経路を再度確立する必要がある。
図1では、1つの通信端末70に係るIMSベアラを示しているが、実際には、1台のeNB60の配下に複数の通信端末が在圏していることが通常である。同様に、1つの装置(P−CSCF10、P−GW40又はS−GW50)に対して設定されるIMSベアラは複数ある。したがって、1つの装置に障害が発生した場合、その装置を経由したIMSベアラにより通信を行っている複数の通信端末に対して、ベアラの解放及び再確立を実行する必要がある。本実施形態では、複数の通信端末に係るベアラの解放及び再確立処理を効率よく実施する方法について説明する。
通信システム1に含まれる各装置は、それぞれ、図2に示すように、CPU101、主記憶装置であるRAM(Random Access Memory)102及びROM(Read Only Memory)103、通信を行うための通信モジュール104、並びにハードディスク等の補助記憶装置105等のハードウェアを備えるコンピュータとして構成される。そして、これらの構成要素が動作することにより、各装置の機能が発揮される。
次に、図3を参照しながら、通信端末70のベアラの解放及び再確立処理を制御する通信制御装置であるPCRF20及びMME30の機能部について説明する。
PCRF20(及びMME30)は、障害検知部21(31)(障害検知手段)、ベアラ管理情報格納部22(32)(ベアラ管理情報格納手段)、優先度判定部23(33)(優先度判定手段)及びベアラ解放実施部24(34)(ベアラ制御手段)を含んで構成される。
障害検知部21は、通信端末70とIMSネットワークN1とを繋ぐIMSベアラを設けた装置に係る障害を検知する機能を有する。障害検知部21は、自装置による他装置に対するヘルスチェックの結果、又は、他装置による障害検知通知を受信することで、通信システム1に含まれ、IMSベアラを設けた装置に係る障害を検知する。障害検知部21により障害が検知されると、ベアラ管理情報格納部22に格納された情報に基づいて、当該障害が発生した装置に関連して設定されたベアラの解放に係る処理が行われる。
ベアラ管理情報格納部22(32)は、通信システム1に含まれてIMSベアラを設定可能な装置(P−CSCF10、P−GW30、S−GW50、及びeNB60)毎に、当該装置との間で確立されたIMSベアラを特定する情報としてIMSベアラを設けている通信端末70を特定する情報と、当該通信端末70が設けているベアラの解放及び再確立に係る処理の緊急度を示す情報である緊急度情報を対応付けて保持している。ベアラ管理情報格納部22(32)が格納している情報は、eNB60に接続する通信端末70がIMSベアラの確立を行った際にPCRF20及びMME30によって取得される。
図4に、ベアラ管理情報格納部22(32)が格納している情報の一例を示す。図4に示す例は、MME30におけるベアラ管理情報格納部32が保持する情報であり、1つの装置(例えば、S−GW50A)に対して確立されたIMSベアラに係る情報を示している。ベアラ管理情報格納部22(32)は、このような情報を装置毎に保持していて、特定の装置の障害が検知された場合に、当該装置に係る情報を利用してベアラの解放及び再確立を実施する。
図4に示す例では、IMSベアラを特定する情報として、ユーザを特定する情報が用いられている。ユーザを特定する情報に代えて、通信端末70毎に割り振られた固有のID等を用いてもよい。また、図4に示す例では、緊急度情報として、ARP(Allocation and Retention Priority)値及びデディケイテットベアラ(Dedicated Barer)の有無を特定する情報を用いている。そして、ARP値及びデディケイテットベアラの有無に基づいて、異なるテーブルでユーザを特定する情報を管理している。すなわち、特定のIMSベアラを示す情報がどのテーブルに割り振られているかによって、当該IMSベアラの解放及び再確立に係る処理を実施するための緊急度が分かる。
なお、ARPとは、IMSベアラ間の相対的な優先度を示す情報であり、IMSベアラ毎に定められる数値である。優先度を高く設定したARPのIMSベアラから優先的に処理を行う(IMSベアラが利用できない時間ができるだけ短くなるように解放及び再確立処理を実施する)ことが求められることを示している。ARPは、従来から容量等が限られている場合にIMSベアラを確立する際の優先度を示すために設定されていたものである。本実施形態では、このARPを、IMSベアラの解放及び再確立に係る緊急度情報としても活用する。
本実施形態では、例えば、非常時等の発呼により設けられた緊急呼のIMSベアラ(緊急呼ベアラ)に対しては、ARPが「X」と設定され、特定のユーザによる発呼により設けられた特別/優先呼のIMSベアラ(特別/優先呼ベアラ)に対しては、ARPが「Y」と設定されている。また、その他の一般呼に関しては、ARPが「Z」と設定されている。なお、本実施形態では、3つのARPに関して、「X」が最も優先度が高く、「Y」がその次に優先度が高く、「Z」が最も優先度が低く設定されているとする。
このように、本実施形態では、IMSベアラに対して設定されるARPは3段階とされている。また、IMSベアラの処理を優先するかどうかの判断基準として、装置障害等が発生する前に通話中だった又は通話に係る処理を行っていた(以下、これらを含めて「通話中」と言う。)か否かが挙げられる。IMSベアラは、待機状態の場合でも設定されるため、IMSベアラのARPを参照しても通話中であったか否かを判断することができない。そこで、通話中だったか否かについて、本実施形態では、発信又は着信があったときに一時的に設定されるデディケイテットベアラがIMSベアラとは別に設けられているか否かに基づいて判断する。そして、デディケイテットベアラが別途設けられているIMSベアラは、デディケイテットベアラが設けられていないIMSベアラよりも優先的に処理を行う。
なお、ベアラ管理情報格納部22(32)において、IMSベアラを特定する情報(図4ではユーザを特定する情報)に対応付けて、当該情報により特定されるIMSベアラにより接続する相手方の装置の情報等を対応付ける構成としてもよい。
図3に戻り、優先度判定部23(33)は、ベアラ管理情報格納部22(32)に格納されたIMSベアラを特定する情報のそれぞれについて、解放及び再確立の優先度を判定する機能を有する。ベアラ管理情報格納部22(32)に格納される情報が図4に示すような情報である場合には、優先度の判定は、どのテーブルにIMSベアラを特定する情報が格納されているかによって行われる。
ベアラ解放実施部24(34)は、優先度判定部23(33)によって判定された優先度に基づいて、優先度が高いIMSベアラから解放及び再確立に係る処理を行う。具体的には、例えば、MME30は、eNB60等を介して通信端末70に対して指示を行うことで、通信端末70に対してIMSベアラの解放及び再確立を実施させることができる。IMSベアラの解放自体は、IMSベアラが設けられた各装置から実行できるため、ベアラ解放に係る処理はPCRF20及びMME30から各装置に対して指示をすることによって開始される。しかしながら、ベアラの再確立自体は、通信端末70からベアラの確立を要求する信号を送信することによって処理が開始されるため、MME30から通信端末70に対してベアラの再確立を通知することが必要である。
PCRF20及びMME30が以上のような機能部を有することにより、通信制御装置として複数の通信端末に係るIMSベアラの解放及び再確立を好適に実施することができる。
次に、図5〜図7を参照しながら、S−GW50Aに障害が発生した場合のIMSベアラの解放及び再確立に係る一連の処理を説明する。図5は、通信システム1全体におけるIMSベアラの再確立における信号の送受信について説明する図である。なお、図5では、通信端末70とP−CSCF10との間に、IMSベアラ(網掛け)及びデディケイテットベアラ(白)の双方が設けられているとする。
また、図6は、通信端末(UE)70、MME30及びS−GW50A,50Bにおける処理の流れを示すシーケンス図であり、図7は、PCRF20及びMME30における優先度に基づいた処理の実施方法を示すフローチャートである。
まず、前提として、P−CSCF10と通信端末70との間は、eNB60、S−GW50A、P−GW40Aを経由したIMSベアラB11が設けられていた場合に、S−GW50Aに障害が発生して当該ベアラが使用できなくなったとする。そして、既存のIMSベアラを解放して再確立を行うことで、eNB60、S−GW50B、P−GW40Bを経由したIMSベアラB12を設ける場合について説明する。また、P−GW40とS−GW50とは縮退構成となるような組み合わせで選択された結果、P−GW40AとS−GW50Aとの組み合わせ、及び、P−GW40BとS−GW50Bとの組み合わせで動作することを前提とする。
S−GW50Aに障害が発生した場合、MME30は、従来行っているヘルスチェック(GTP ECHO Request)に対する応答がないことで、MME30の障害検知部31において障害を検知する(S01)。この場合、MME30は、ベアラ管理情報格納部32を参照して、S−GW50Aを経由するIMSベアラ及びIMSベアラと接続される通信端末70を特定し、ベアラ解放実施部34によって、eNB60に対してIMSベアラの解放を通知する(ベアラ切断またはRe-attach要求)(S02)。MME30からのIMSベアラ解放指示を受けたeNB60は配下の通信端末70との間に設けられるIMSベアラを解放する。なお、eNB60もヘルスチェックによりS−GW50Aの障害を検知するが、eNB60は、S−GW50Aとの間に設けられているIMSベアラを解放するのみであり、その他の処理はMME30又は通信端末70からの指示で行われる。
S−GW50Aに障害が発生したことについては、PCRF20及びP−GW40Aでも検知される。PCRF20では、ヘルスチェック(SCTP heartbeat)によりS−GW50Aの障害を検知することができる(S03)。この場合、PCRF20では、まず、P−GW40Aに対して、S−GW50Aに対してIMSベアラの機能を停止させる処理を開始する(PCRF initiated Bearer Deactivation Procedureの起動)(S04)。しかし、S−GW50Aが障害発生しているため、本処理は最後まで進まず、処理は失敗となる。
P−GW40Aでは、ヘルスチェック(PMIP heartbeat)又は一体的に動作するS−GW50Aからの通信エラー(SGW Failure)によりS−GW50Aの障害を検知することができる(S05)。この場合、P−GW40Aは、PCRF20に対して、S−GW50Aの障害を検知したことによるS−GW50Aとの間に設けられたIMSベアラの解放実施の通知(Diameter_Credit Control Request)を送信する(S06)。PCRF20では、P−GW40AからのIMSベアラ解放実施の通知に基づいて、PCRF20のベアラ管理情報格納部22において保持している情報に基づいて、P−GW40Aとの間でIMSベアラを設けているP−CSCF10に対してIMSベアラの解放を通知(Diameter_Abort Session Request)する(S07)。これにより、P−CSCF10とP−GW40Aとの間のIMSベアラも解放される。
これにより、S−GW50Aの障害を検知したことに対する処理として、通信端末70とP−CSCF10との間に設けられたIMSベアラ(B11)が全て解放される。
次に、MME30からのIMSベアラ解放指示を受けたeNB60は配下の通信端末70に対してMME30からの通知を転送する。このとき、MME30から通信端末70に対してベアラ切断またはRe-Attach要求により解放を指示することで、通信端末70側で再確立が必要なことを認識するので、通信端末70は、IMSベアラの再確立に係る信号をMME30に対して送信する(S07)。その後、MME30は、通信端末70が再確立するIMSベアラが経由するS−GW50(ここでは、S−GW50B)を選択して、S−GW50Bに対してベアラ確立要求を指示する(S08)。なお、MME30が障害の発生したS−GW50Aを選択してしまう場合もある。しかし、この場合、S−GW50Aに対してベアラ確立要求を指示したとしても、S−GW50Aは障害が発生しているためエラーを返す(又は無応答となる)ため、以降の処理が行われず、MME30によるS−GW50の再選択が行われる。
次に、MME30からの指示を受けたS−GW50Bは、S−GW50BとP−GW40Bが同一ハード構成となっている場合にはP−GW40Bを選択する。その後、P−GW40B及びS−GW50BがPCRF20と通信することで、これらのゲートウェイ装置が新たなIMSベアラの経由先となることがPCRF20に通知される(S09)。PCRF20は、P−GW40B及びS−GW50Bとの通信において、P−CSCF10のアドレスをP−GW40Bに通知することで、P−GW40BとP−CSCF10との間にIMSベアラを設けることを指示する。また、通信結果に基づいて、通信端末70とP−CSCF10との間に設けられるIMSベアラがP−GW40B及びS−GW50Bを経由することを特定し、この情報をベアラ管理情報格納部22にて格納する。以上の処理により、通信端末70とP−CSCF10との間に新たなIMSベアラB12が確立され、通信端末70は、IMSを利用した音声通信を行うことができる。なお、通話等のためにデディケイテットベアラが必要な場合には、IMSベアラを設けた後に別途設けられる。
上記は、1つの通信端末70のベアラ解放及び再確立に係る一連の処理である。しかしながら、実際には、PCRF20及びMME30では、複数の通信端末70に係る処理を行う必要がある。したがって、複数の通信端末70のIMSベアラの解放及び再確立をMME30が実行する場合の手順について説明する。
図6に示すように、複数の通信端末70とS−GW50Aとの間でIMSベアラが確立中(S11)だったとする。ここで、S−GW50Aにおいて何らかの障害が発生した場合(S12)、MME30は、S−GW50Aとの間で通信ができないか、ヘルスチェック(GTP ECHO Request)でエラー通知を取得することにより(S13)、障害検知部31において障害を検知する(S14:障害検知ステップ)。この次に、MME30は、ベアラ管理情報格納部32に格納されている情報に基づいて優先度判定部33にて優先度を判定し、優先度が高いIMSベアラから順次、ベアラ解放実施部34によってIMSベアラの解放及び再確立処理が行われる(S15:優先度判定ステップ、ベアラ制御ステップ)。このIMSベアラの解放及び再確立処理は、ベアラの切断処理(S15−1)及びS−50BとのIMSベアラ再確立処理(S15−2)が含まれる。MME30は、IMSベアラの再確立時にS−GW50の選定等の処理も行うことから、ベアラの切断処理(S15−1)及び再確立処理(S15−2)は、通信端末70毎に個別に行われる。すなわち、複数の通信端末70のIMSベアラの解放及び再確立処理が必要であるとしても、一度に実行することはできない。したがって、早い段階で解放及び再接続処理された場合に比べて、遅い段階で解放及び再接続処理された場合とでは、IMSベアラの解放及び再確立処理に要した時間(装置故障によりIMSベアラが使用できなかった時間)が長くなる。
そこで、本実施形態に係る通信システム1では、IMSベアラのそれぞれについて優先度を判断し、これに基づいて優先度の高いIMSベアラから順次解放及び再確立処理を実行する。具体的には、MME30の優先度判定部33又はPCRF20の優先度判定部23による優先度の判定及びIMSベアラの解放及び再確立処理の実施方法に関しては、図7に示す流れに沿って行われる。
まず、ARPがXである緊急呼テーブルを参照して(S21)、当該テーブルにユーザの記載が有るか否かを確認する(S22)、ユーザの記載が有る場合には、当該ユーザのIMSベアラの解放及び再確立処理を行う(S23)。これらの処理をテーブル内の全てのユーザに対して繰り返し実行する。その後、上記の処理を優先度が高いテーブルの順に実行する。すなわち、特別/優先呼テーブル(ARP Y)、一般通話中呼テーブル(ARP Z且つデディケイテットベアラ有)、一般非通話中呼テーブル(ARP Z且つデディケイテットベアラ無)の順に、当該テーブルに記載されたユーザのIMSベアラについて、順に解放及び再確立処理を行う(S24)。これにより、優先度が高い、すなわち、IMSベアラが使用できない時間を短くすることが望まれるユーザに係るIMSベアラから順に処理を行うことができる。
本実施形態に係る通信制御装置(PCRF20及びMME30)を含む通信システム1及びこの通信システム1により実施される通信制御方法による効果を図8及び図9を参照しながら説明する。図8は従来のIMSベアラ解放及び再確立処理の流れを説明したものである。従来は、IMSベアラの解放及び再確立処理を実施する順序は、その優先度に基づいて決定されていなかった。したがって、各IMSベアラがどのような種類であるか(緊急呼に対して設けられたものであるか)、又は、使用中であるか(デディケイテットベアラが有るか)等について何ら考慮されず、例えば、IMSベアラが作成された順に処理が行われていた。図8では、円柱状に示した各ベアラが左から順に処理されていることを示す図であるが、一番左の一般非通話中呼のIMSベアラの解放及び再確立処理を開始してから、一番右の一般非通話中呼のIMSベアラの解放及び再確立処理を実施するまで、相当の時間(例えば数分から十数分等)を要していた。この場合、図8の右側に示す呼接続に係るIMSベアラが数分〜十数分使用できない、すなわち、音声通信ができない状況となる。
従来は、IMSベアラの解放及び再確立処理に関して優先順位を検討せずに行っていたため、図8に示すように本来緊急に音声通信を行うために設けられたIMSベアラを利用した音声通信がIMSの再確立が完了するまで使用できない、というような不都合が生じる可能性があった。VoLTEよりも以前の回線交換方式による音声通信では、IMSベアラの解放及び再確立処理が必要になることもなかったため、このような問題が生じてはいなかったものの、VoLTEによる音声通信を行うことにより、上記のような構成が問題となる可能性が出てきた。
これに対して、本実施形態に係る通信システム1による通信制御方法では、自システムにおいて管理しているIMSベアラについて、その解放及び再確立に係る緊急度情報を準備し、これに基づいて優先度を判定して処理を実施する構成を備えているので、図9に示すように、例えば緊急呼ベアラのように、IMSベアラをできるだけ早急に再確立したい(IMSベアラが利用できない状態をできるだけ早急に終えたい)呼接続から、順次IMSベアラの解放及び再確立を実施することができる。したがって、通信システム1において複数の通信端末に係る複数のベアラを管理している場合に、複数のベアラの解放及び再確立処理をその優先度に基づいて好適に行うことが可能となる。
また、優先度を示す指標となる緊急度情報として、従来から用いられているARPを利用することを特徴とする。ARPは、IMSベアラの確保に係る優先度として従来知られているが、これを複数のベアラの解放及び再確立処理をその優先度の判定にも適用することにより、複数のベアラの解放及び再確立処理の順序を好適に変更することができる。
そして、優先度を示す指標となる緊急度情報として、デディケイテットベアラ(ユーザデータ用ベアラ)の有無を用いる構成とした場合、デディケイテットベアラの有無に基づいて通話中か否かの判断を行うことができるため、通話中にIMSベアラが使用できなくなったユーザ(通信端末)について、ベアラの解放及び再確立処理を優先して行うことも可能となるため、複数のベアラの解放及び再確立処理をその優先度に基づいてより好適に行うことが可能となる。
ここで、ベアラ管理情報格納部22(32)が格納している情報が図4に示す構成ではなかった場合の変形例を説明すると共に、変形例に示す情報をベアラ管理情報格納部22(32)が保持している場合に優先度に基づいた処理をどのように行うかについて説明する。
まず、ベアラ管理情報格納部22(32)が格納している情報の変形例を図10に示す。図4では、ARP毎又はデディケイテットベアラの有無毎に、互いに異なるテーブルにIMSベアラを特定する情報が記載されていた。これに対して、図10に示す変形例では、ユーザを特定する情報(IMSベアラを特定する情報)に対して、ARP値及びデディケイテットベアラの有無が対応付けられた一覧表としてのテーブルが設けられている。このように、ベアラ管理情報格納部22(32)では、1つの装置(例えば、S−GW50A)に対して確立されたIMSベアラに係る情報を1つのテーブルとしてまとめる構成も考えられる。
上記の変形例として示したテーブルの形式で情報を保持している場合、図7に示すフローチャートに沿って、どのIMSベアラから順に処理を行うかを判断することはできない。すなわち、図4に示す形式で情報を保持している場合、IMSベアラを特定する情報がどのテーブルに割り振られているかによって、優先度が判断されていた。そのため、処理を実施するテーブルの順序を決めることによって、優先度に基づいた処理を実施することができていた。これに対して、図10に示す形式で情報を保持している場合には、各データについて判断を行っていく必要がある。この場合、図11に示すフローチャートに沿って、どのIMSベアラから順に処理を行うかが判断される。
具体的には、まずテーブルの第1列から順に次列のユーザに移行し(S31)、当該ユーザのARPがXであるか否かを判断する。ARPが6である場合には、優先度が高いため、IMSベアラの解放及び再確立処理を実施する(S33)。ARPがXでない場合には、最後のユーザになるまで(S34)次のユーザへ移行して(S31)、同様の判断(S32〜S34)を繰り返す。これにより、ARPがXと設定がされたIMSベアラに係る処理が実施される。
次に、テーブルの第1列に戻りARPがYであるIMSベアラを特定して、同様の処理を実施する(S35)ことにより、ARPがYと設定されたIMSベアラに係る処理が実施される。
その後、テーブルの第1列に戻りARPがZと設定されたIMSベアラに関して同様の判断を行う(S36、S37)が、この場合には、デディケイテットベアラの有無についても判断が行われ(S38)、デディケイテットベアラを有するIMSベアラについて先にIMSベアラの解放及び再確立処理を実施する(S39)。これを最後のユーザまで繰り返し実施した(S36〜S40)後、テーブルに残っているユーザ、すなわち、ARPがZであり、且つデディケイテットベアラが無いIMSベアラの解放及び再確立処理が実施される。なお、本実施形態では、ARPはX、Y及びZのいずれかであって、且つ、ARPがZである場合のみデディケイテットベアラの有無に基づいて優先度を判断する構成について説明をしているが、IMSベアラに対して設定されるARP値の種類に応じて、優先度の判断を行う方法は適宜変更することができる。また、デディケイテットベアラを用いた優先度の判断をARPがZの一般通話呼ベアラのみに適用するのではなく、他の種類の(より緊急性の高い)呼接続に係るIMSベアラの優先度の判断に適用する構成としてもよい。このように、どのIMSベアラから解放及び再確立処理を行うかについての優先度の判断基準は適宜変更することができる。
なお、上記の第1実施形態では、通信システム1に含まれてIMSベアラが設けられる装置のうちS−GW50に障害が発生した場合について説明した。しかしながら、S−GW50とは異なる装置に障害が発生した場合にもIMSベアラの解放及び再確立は必要となる。そこで、他の装置に障害が発生した場合に、通信端末70及び関連装置に対してIMSベアラの解放及び再確立の処理を実施する手順について、第2実施形態〜第4実施形態として説明する。
(第2実施形態)
第2実施形態として、図12を参照しながら、通信システム1のP−CSCF10Aに障害が発生した場合のIMSベアラの解放及び再確立に係る一連の処理を説明する。なお、図12では、通信端末70とP−CSCF10との間に、IMSベアラのみが設けられている場合とする。
P−CSCF10Aに障害が発生した場合には、P−CSCF10AとP−GW40との間に設けられるIMSベアラをP−CSCF10BとP−GW40との間に設ける構成に変更することが必要である。しかし、一部のIMSベアラのみを変更するのではなく、全体としてIMSベアラを解放して再確立する必要がある。
P−CSCF10Aに障害が発生した場合、PCRF20は、P−CSCF10Aとの間の接続のヘルスチェック(SCTP heartbeat)により、PCRF20の障害検知部21において障害を検知する(S51)。この場合、PCRF20は、ベアラ管理情報格納部22を参照して、P−CSCF10Aに対して接続するIMSベアラを特定し、ベアラ解放実施部24によって、P−CSCF10AとP−GW40の間に設けられていたIMSベアラの解放をP−GW40に指示する。具体的には、PCRF(P-GW) initiated Bearer Deactivation Procedureを起動し、IMSベアラを特定した上で、P−GW40へ解放信号(Diameter_Re Attach Request)を送信する(S52)。このとき、P−GW40への解放信号の送信順序は、第1実施形態で説明した場合と同様に、優先度に基づいて決められる。P−GW40は、PCRF20から解放信号を受信すると、これをS−GW50を介してMME30に対して通知する(S53)。この際に、P−GW40とS−GW50との間のIMSベアラも削除される。
MME30では、IMSベアラの解放信号を受信すると、eNB60を介して通信端末70に対してIMSベアラの解放及び再確立が指示される(S54)。eNB60では、MME30からの指示の受信に基づいて、eNB60とS−GW50との間のIMSベアラを解放する。また、MME30からの指示に基づいて、eNB60においてeNB60と通信端末70との間に設けられたIMSベアラの解放が行われる。
これにより、P−CSCF10Aの障害を検知したことに対する処理として、通信端末70とP−CSCF10Aとの間に設けられたIMSベアラ(B21)が全て解放される。
次に、MME30からのIMSベアラ解放指示を受けたeNB60は配下の通信端末70に対してMME30からの通知を転送する。このとき、MME30から通信端末70に対してベアラ切断またはRe-attach要求により解放を指示することで、通信端末70側で再確立が必要なことを認識するので、通信端末70は、P−CSCF10との間のIMSベアラの再確立に係る信号をMME30に対して送信する(S55)。その後、第1実施形態と同様に、MME30において、通信端末70が再確立するIMSベアラが経由するS−GW50が選択され、S−GW50に対してベアラ確立要求が指示される。そして、S−GW50は、S−GW50とP−GW40が同一ハード構成となっている場合にはP−GW40を選択した後、P−GW40及びS−GW50がPCRF20と通信する。ここで、PCRF20は、障害が発生したP−CSCF10Aとは異なるP−CSCF10(ここでは、P−CSCF10B)のアドレスを払い出して、P−GW40に対して当該P−CSCF10Bとの間でIMSベアラを設けるように指示される(S56)。P−GW40では、これに基づき、P−CSCF10Bとの間でIMSベアラ確立処理が行われる。以上の処理により、通信端末70とP−CSCF10Bとの間に新たなIMSベアラB22が確立され、通信端末70は、IMSを利用した音声通信を行うことができる。
このように、P−CSCF10Aに障害が発生した場合には、PCRF20による複数の通信端末70に係るIMSベアラの解放及び再確立処理が行われる。この際に、IMSベアラの解放及び再確立処理を実施する順序を、優先度に基づいて決定して実施することで、通信システム1において複数の通信端末に係る複数のベアラを管理している場合に、複数のベアラの解放及び再確立処理をその優先度に応じて好適に行うことが可能となる。
(第3実施形態)
第3実施形態として、図13を参照しながら、通信システム1のP−GW40Aに障害が発生した場合のIMSベアラの解放及び再確立に係る一連の処理を説明する。なお、図13では、通信端末70とP−CSCF10との間に、IMSベアラのみが設けられている場合とし、P−CSCFとP−GWとの間に設けられるIMSベアラについては記載を省略する。
また、本実施形態では、中継装置が通信制御装置としての機能も兼ね備えている場合について説明する。具体的には、本実施形態においては、P−GW40Aに障害が発生した場合に、S−GW50がベアラ解放に係る処理を実行する場合について説明する。S−GW50のような中継装置が通信制御装置としての機能を兼ね備えている場合、PCRF20及びMME30と同様に自装置において、障害検知部(障害検知手段)、ベアラ管理情報格納部(ベアラ管理情報格納手段)、優先度判定部(優先度判定手段)及びベアラ解放実施部(ベアラ解放実施手段)に係る機能を備える。本実施形態では、S−GW50が上記機能を有していて、ベアラ解放に係る処理を実行する場合について説明する。
P−GW40Aに障害が発生した場合には、P−CSCF10とP−GW40Aとの間に設けられるIMSベアラをP−CSCF10とP−GW40Bとの間に設ける構成に変更することが必要である。しかし、一部のIMSベアラのみを変更するのではなく、全体としてIMSベアラを解放して再確立する必要がある。
P−GW40Aに障害が発生した場合、S−GW50は、P−GW40Aとの間の接続のヘルスチェック(PMIP heartbeat)に対して応答がないことで、障害を検知する(S61)。この障害を検知した場合、S−GW50では、他実施形態のPCRF20又はMME30と同様に、IMSベアラの解放に係る処理を実行する。S−GW50では、ベアラ管理情報格納部を参照して、P−GW40Aに対して接続するIMSベアラを特定し、ベアラ解放実施部によってベアラの解放を指示する。なお、S−GW50においても、IMSベアラの解放に係る指示を出す順序は、他の実施形態で説明した場合と同様に、優先度に基づいて決められる。また、PCRFに20に対して障害発生信号(Diameter_Credit Control Request)を送信することで、PCRF20に対して障害発生によるベアラ解放の実施を通知する(S62)。この場合、PCRF20は、ベアラ管理情報格納部22を参照して、P−GW40Aに対して接続するIMSベアラを特定し、ベアラ解放実施部24によって、P−CSCF10AとP−GW40の間に設けられていたIMSベアラの解放をP−CSCF10に通知(Diameter_Abort Session Request)する(S63)。このときのIMSベアラの解放に係る指示は、第1実施形態で説明した場合と同様に、優先度に基づいて決められる。
また、S−GW50からMME30に対しても、IMSベアラの解放要求信号が送られる(S64)。MME30では、IMSベアラの解放信号を受信すると、ベアラの解放に係る処理を開始する(ESM_Deactivate PDN Context Request)。また、S−GW50からの指示に基づいて、eNB60を介して通信端末70に対してIMSベアラの解放及び再確立が指示される(ベアラ切断またはRe-Attach要求)(S65)。eNB60では、MME30を介したS−GW50からの指示の受信に基づいて、eNB60とS−GW50との間のIMSベアラを解放する。また、MME30を介したS−GW50からの指示に基づいて、eNB60においてeNB60と通信端末70との間に設けられたIMSベアラの解放が行われる。
これにより、P−GW40Aの障害を検知したことに対する処理として、通信端末70とP−CSCF10との間に設けられたIMSベアラ(B31)が全て解放される。
次に、MME30を介したS−GW50からのIMSベアラ解放指示を受けたeNB60は配下の通信端末70に対してMME30からの通知を転送する。このとき、MME30から通信端末70に対してベアラ切断またはRe-Attach要求により解放を指示することで、通信端末70側で再確立が必要なことを認識するので、通信端末70は、P−CSCF10との間のIMSベアラの再確立に係る信号をMME30に対して送信する(S66)。その後、第1実施形態と同様に、MME30において、通信端末70が再確立するIMSベアラが経由するS−GW50が選択され、S−GW50に対してベアラ確立要求が指示される。そして、S−GW50は、S−GW50とP−GW40Bが同一ハード構成となっている場合にはP−GWとして、P−GW40AではなくP−GW40Bを選択した後、P−GW40B及びS−GW50がPCRF20と通信する。ここで、PCRF20は、P−CSCF10のアドレスを払い出して、P−GW40Bに対して当該P−CSCF10との間でIMSベアラを設けるように指示される(S67)。P−GW40Bでは、これに基づき、P−CSCF10との間でIMSベアラ確立処理が行われる。以上の処理により、通信端末70とP−CSCF10Bとの間に新たなIMSベアラB32が確立され、通信端末70は、IMSを利用した音声通信を行うことができる。
このように、P−GW40Aに障害が発生した場合には、S−GW50によって複数の通信端末70に係るIMSベアラの解放及び再確立処理が行われる。この際に、IMSベアラの解放及び再確立処理を実施する順序を、優先度に基づいて決定して実施することで、通信システム1において複数の通信端末に係る複数のベアラを管理している場合に、複数のベアラの解放及び再確立処理をその優先度に応じて好適に行うことが可能となる。また、本実施形態で示したように、中継装置が通信制御装置としての機能を兼ね備えている構成としてもよい。その場合、中継装置が他の中継装置とのヘルスチェックの結果、装置の故障等による障害発生を検知したことを契機として、通信制御装置としての処理、すなわち、IMSベアラの解放及び再確立を実施することができる。
(第4実施形態)
第4実施形態として、図14を参照しながら、通信システム1のP−GW40A及びS−GW50Aに障害が発生した場合のIMSベアラの解放及び再確立に係る一連の処理を説明する。本実施形態では、P−GW40A及びS−GW50Aが同一ハードウェアにより構成されている場合について説明する。なお、図14では、通信端末70とP−CSCF10との間に、IMSベアラのみが設けられている場合とし、P−CSCFとP−GWとの間に設けられるIMSベアラについては記載を省略する。
同一ハードウェアにより構成されたP−GW40A及びS−GW50Aに障害が発生した場合には、eNB60との間に設けられるIMSベアラをP−GW40A及びS−GW50Aとは異なる装置(ここでは、P−GW40B及びS−GW50B)との間に設ける構成に変更することが必要である。
P−GW40A及びS−GW50Aに障害が発生した場合、PCRF20は、P−GW40Aとの間の接続のヘルスチェック(SCTP heartbeat)に対して応答がないことで、PCRF20の障害検知部21において障害を検知する(S71)。PCRF20は、ベアラ管理情報格納部22を参照して、P−GW40Aに対して接続するIMSベアラを特定し、ベアラ解放実施部24によって、P−CSCF10とP−GW40の間に設けられていたIMSベアラの解放をP−CSCF10に指示(Diameter_Abort Session Request)すると共に、P−GW40A及びS−GW50Aとの間で設けられたベアラのローカル解放を実施する(S72)。このときのIMSベアラの解放に係る指示は、第1実施形態で説明した場合と同様に、優先度に基づいて決められる。
一方、MME30は、ヘルスチェック(GTP ECHO Request)に対してS−GW50Aからの応答がないことで、障害検知部31において障害を検知する(S73)。このとき、MME30では、ベアラ解放実施部によりeNB60を介して通信端末70に対してIMSベアラの解放及び再確立が指示される(ベアラ切断またはRe-attach要求)(S74)。eNB60では、MME30からの指示の受信に基づいて、eNB60とS−GW50Aとの間のIMSベアラを解放する。また、MME30からの指示に基づいて、通信端末70においてeNB60との間に設けられたIMSベアラの解放が行われる。
これにより、P−GW40A及びS−GW50Aの障害を検知したことに対する処理として、通信端末70とP−CSCF10との間に設けられたIMSベアラ(B41)が全て解放される。
次に、MME30からのIMSベアラ解放指示を受けたeNB60は配下の通信端末70に対してMME30からの通知を転送する。このとき、MME30から通信端末70に対してベアラ切断またはRe-attach要求により解放を指示することで、通信端末70側で再確立が必要なことを認識するので、通信端末70は、P−CSCF10との間のIMSベアラの再確立に係る信号をMME30に対して送信する(S75)。その後、第1実施形態と同様に、MME30において、通信端末70が再確立するIMSベアラが経由するS−GWとしてS−GW50Bが選択され、S−GW50に対してベアラ確立要求が指示される。そして、S−GW50は、同一ハードウェア構成となるように、P−GW40Bを選択した後、P−GW40B及びS−GW50BがPCRF20と通信する(S76)。ここで、PCRF20は、P−CSCF10のアドレスを払い出して、P−GW40Bに対して当該P−CSCF10との間でIMSベアラを設けるように指示される。P−GW40Bでは、これに基づき、P−CSCF10との間でIMSベアラ確立処理が行われる。以上の処理により、通信端末70とP−CSCF10との間に新たなIMSベアラB42が確立され、通信端末70は、IMSを利用した音声通信を行うことができる。
このように、同一ハードウェアにより構成されたP−GW40A及びS−GW50Aに障害が発生した場合には、PCRF20及びMME30によって複数の通信端末70に係るIMSベアラの解放及び再確立処理が行われる。この際に、IMSベアラの解放及び再確立処理を実施する順序を、優先度に基づいて決定して実施することで、通信システム1において複数の通信端末に係る複数のベアラを管理している場合に、複数のベアラの解放及び再確立処理をその優先度に応じて好適に行うことが可能となる。
(第5実施形態)
第5実施形態として、図15を参照しながら、通信システム1のP−GW40Aに接続するルータ41Aに障害が発生した場合のIMSベアラの解放及び再確立に係る一連の処理を説明する。なお、図15では、通信端末70とP−CSCF10との間に、IMSベアラのみが設けられている場合とする。
P−GW40Aのルータ41Aに障害が発生した場合には、実質的にP−GW40Aが使用できなくなるため、P−CSCF10とP−GW40Aとの間に設けられるIMSベアラをP−CSCF10とP−GW40Bとの間に設ける構成に変更することが必要である。しかし、一部のIMSベアラのみを変更するのではなく、全体としてIMSベアラを解放して再確立する必要がある。
P−GW40Aのルータ41Aに障害が発生した場合、ルータ41Aに接続するP−GW40A障害を検知する(S81)。この障害を検知した場合、P−GW40Aは、P-GW initiated Bearer Deactivation Procedureを起動し、PCRF20、MME30、S−GW50及びeNB60に対して解放信号を送信する。これにより、PCRF20の障害検知部21において障害を検知する(S82)と共に、MME30の障害検知部31において障害を検知する(S83)。PCRF20は、ベアラ管理情報格納部22を参照して、P−GW40Aに対して接続するIMSベアラを特定し、ベアラ解放実施部24によって、P−CSCF10とP−GW40Aの間に設けられていたIMSベアラの解放をP−CSCF10に指示(Diameter_Abort Session Request)する(S83)。このときのIMSベアラの解放に係る指示は、第1実施形態で説明した場合と同様に、優先度に基づいて決められる。
また、MME30では、P−GW40Aから送信されS−GW50を経由して送信された解放信号に基づいて、ベアラの解放に係る処理を開始する。このとき、eNB60を介して通信端末70に対してIMSベアラの解放及び再確立が指示される(ベアラ切断またはRe-attach要求)(S84)。eNB60では、P−GW40Aからの解放信号及びMME30からの指示の受信に基づいて、eNB60とS−GW50との間のIMSベアラを解放する。また、MME30からの指示に基づいて、通信端末70においてeNB60との間に設けられたIMSベアラの解放が行われる。
これにより、P−GW40Aのルータ41Aの障害を検知したことに対する処理として、通信端末70とP−CSCF10との間に設けられたIMSベアラ(B51)が全て解放される。
次に、通信端末70は、P−CSCF10との間のIMSベアラの再確立に係る信号をMME30に対して送信する(S85)。その後、第1実施形態と同様に、MME30において、通信端末70が再確立するIMSベアラが経由するS−GW50が選択され、S−GW50に対してベアラ確立要求が指示される。そして、S−GW50は、S−GW50とP−GW40が同一ハード構成となっている場合には、P−GW40AではなくP−GW40Bを選択した後、P−GW40B及びS−GW50がPCRF20と通信する。ここで、PCRF20は、P−CSCF10のアドレスを払い出して、P−GW40Bに対して当該P−CSCF10との間でIMSベアラを設けるように指示される(S86)。P−GW40Bでは、これに基づき、P−CSCF10との間でIMSベアラ確立処理が行われる。以上の処理により、通信端末70とP−CSCF10Bとの間に新たなIMSベアラB52が確立され、通信端末70は、IMSを利用した音声通信を行うことができる。
このように、P−GW40Aのルータ41Aに障害が発生した場合についても、PCRF20及びMME30によって複数の通信端末70に係るIMSベアラの解放及び再確立処理が行われる(ベアラ切断またはRe-attach要求)。この際に、IMSベアラの解放及び再確立処理を実施する順序を、優先度に基づいて決定して実施することで、通信システム1において複数の通信端末に係る複数のベアラを管理している場合に、複数のベアラの解放及び再確立処理をその優先度に応じて好適に行うことが可能となる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態においては、PCRF20及びMME30においてIMSベアラの解放及び再確立処理を制御する構成について説明したが、他の装置によって実行されてもよい。また、これらの処理が3以上の装置で分散して実行されてもよいし、1つの装置によって実行されてもよい。
また、上記実施形態では、通信制御装置と中継装置とは別の装置から構成されていたが、一部の中継装置と通信制御装置とが同一ハードウェアによって構成されていてもよい。すなわち、第3実施形態で説明したように、中継装置が通信制御装置としての機能を兼ね備えていてもよい。
また、上記実施形態では、VoLTEにおけるIMSベアラの解除及び再確立を行う場合について説明したが、上記実施形態に係る通信制御方法は、他のネットワークへの接続に係るベアラにも適用可能である。
また、上記実施形態では、緊急度情報として、ARP値及びデディケイテットベアラの有無を利用する構成について説明したが、緊急度情報として他の情報を用いる構成としてもよい。また、優先度の判定を行う際の判定基準は、判定に用いられる緊急度情報に応じて適宜設定することができる。