JP6449057B2 - ナノニードルアレイを用いた細胞への物質導入法 - Google Patents

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Description

本発明は、ヒト細胞、動物細胞、植物細胞などの細胞に、核酸、タンパク質などの物質を導入する方法に関する。
細胞内に核酸分子やタンパク質などの外来物質を導入する技術は、遺伝子工学をはじめとする細胞工学の基礎的な技術の一つであり、これまでに、大別して、ウイルスなどを用いる生物学的方法、リン酸カルシウム法やリポフェクション法などの化学的方法、および、エレクトロポレーション法、遺伝子銃法、超音波法や、大腸菌の形質転換におけるヒートショック法などの物理学的方法などが知られている。
これらの手法は、それぞれ一長一短を有する。例えば、ウイルスを用いる方法では、ウイルスを導入した細胞が、がん化する場合やウイルスDNAが入り込みゲノムDNAが破壊される場合がある。また、リン酸カルシウム法やリポフェクション法などの化学的方法では、化学薬品による細胞へのダメージが大きいという問題がある。また、エレクトロポレーション法や遺伝子銃法などの物理学的方法は、ダメージが大きい上に比較的多数の細胞を使用する必要があり、物質導入効率が低い場合もあるなどの問題がある。また、これらの方法は、総じて多数の細胞を対象として処理を行うものであり、特定の細胞のみに外来物質を導入することが難しい。
本発明者らは、先に、基板上に多数のナノニードルを配置したナノニードルアレイを開発し(特許文献1、2)、また、当該ナノニードルアレイを試料台上に載置した試料に適用し、ナノニードルを適宜挿入・抜去することができるナノニードル動作装置を開発した(特許文献2)。当該ナノニードルアレイ及びナノニードルアレイ動作装置を用いれば、培養シャーレ上の多数の培養細胞に対し、同時にナノニードルを挿入し、また抜去することができる。
非特許文献1には、多数のナノニードルを有する基板を用いて、細胞内にプラスミドDNAを導入したことが報告されている。この方法では、表面に多数のダイヤモンドナノニードルが形成されたダイヤモンド基板を用い、これを細胞に導入すべきプラスミドDNAを含む基礎培地中の細胞に対面させた状態で遠心力により圧接させて、細胞内にプラスミドDNAを導入させるというものであり、プラスミドDNAを予め脂質分子と複合体を形成させることで、45%の導入効率を得ているが、脂質分子で予め複合体を形成させない場合には、導入効率は僅か1〜3%程度であったとされている。
特開2013−183706公報 特開2011−182761公報
Nat. Commun. 2014, 5, 4466 Nanotechnol. 2012, 23, 415102
本発明は、ヒト細胞、動物細胞、植物細胞などの細胞に、効率よく、核酸、タンパク質などの物質を導入する方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、ナノニードルアレイのナノニードルを細胞へと挿入した後に、ナノニードルアレイを高周波振動させる加振法を開発し、当該加振法において、ナノニードル表面に核酸、タンパク質、糖類などの物質を吸着させ、あるいは、細胞の培地中にこれらの物質を混合した状態で、ナノニードルを細胞に挿入し、ナノニードルアレイを加振することにより、当該加振によって物質導入効率が飛躍的に向上することを見出し、上記課題を解決した。
核酸については、上述の非特許文献1に記載された類似するナノ材料を使用したプラスミド導入法の効率が、核酸を脂質分子と複合体化した場合45%、核酸を脂質分子と複合体化しない状態で1%程度であったものが、本法では、核酸を脂質分子で複合体化することなく、加振なしでも5%、加振ありでは35%に向上した(実施例2)。核酸分子等の目的とする物質を細胞内に導入するにあたって、脂質分子などのそれ自体の生理活性を有する他の物質の細胞への導入はできる限り避けるべきであるところ、本法において、このような他の分子なしで、核酸が高い効率で導入できたことは格別のことといえる。また、本法では、タンパク質導入についても、遺伝子組換え酵素Creの組換え効率で、加振なしで20%、加振ありで40%を達成し(実施例3)、さらに、高分子量の多糖類の導入についても、同様に高い効率を得ている(実施例4)。
本発明においては、ナノニードルアレイを用いることにより、ナノニードルが効率よく細胞に挿入され、さらに、ナノニードルアレイを高周波振動させることで、吸着物質のナノニードルからの脱離が促進され、あるいは、細胞培地からの物質の細胞内への流入が容易化されることで、当該物質の細胞内への導入が促進されるものと考えられる。
本出願は、具体的には、以下の発明を提供する。
〈1〉ナノニードルアレイのナノニードルを細胞へと挿入した後に、ナノニードルアレイを高周波振動させることを特徴とする、細胞内への物質の導入方法。
〈2〉ナノニードル表面に細胞内に導入させるべき物質を吸着させ、ナノニードルを細胞へと挿入した後に、ナノニードルアレイを高周波振動させることを特徴とする、〈1〉に記載の方法。
〈3〉細胞培地に細胞内に導入させるべき物質を混合し、ナノニードルを当該培地中の細胞へと挿入した後に、ナノニードルアレイを高周波振動させることを特徴とする、〈1〉に記載の方法。
〈4〉細胞内に導入させるべき物質が核酸および/またはタンパク質である、〈1〉〜〈3〉に記載の方法。
本発明により、ナノニードルアレイを用いることで、ナノニードルを多数の細胞に効率よく挿入することができ、また、ナノニードルを挿入した状態でナノニードルアレイを高周波振動させることで、ナノニードルに吸着させた物質ないし細胞培地に混合した物質を細胞内へ効率的に導入することができ、これにより細胞内への物質の導入効率を飛躍的に向上させることができる。
また、本発明によれば、アレイ上の特定の箇所のナノニードルのみに物質を吸着させることにより、多数の細胞中の特定の細胞のみに当該物質を導入することも可能である。
ナノニードルアレイ上のナノニードルの配列状態(a)、(b)、ナノニードルの形状(c)、および、ナノニードルアレイをシャーレ内の細胞群に適用する際の模式図(d)。 ナノニードルアレイ動作装置の模式図。 プラスミド導入によって蛍光タンパク質Venusを発現した細胞の蛍光顕微鏡写真。枠:ナノニードルアレイが接触した領域、枠内の細胞のみが蛍光を発している。 プラスミドDNAを吸着させたナノニードルアレイを用い加振を行った場合のプラスミドDNAの細胞内への導入効率を、加振を行わなかった場合と対比した図。 Creリコンビナーゼ活性評価のためのレポーター細胞が有するレポーター遺伝子の構造を示す図。 Creリコンビナーゼ導入前後の蛍光タンパク質発現細胞の蛍光顕微鏡写真。Creタンパク質導入操作によって、導入操作前(a)のRFP発現細胞(白)の一部が、導入操作後(b)はGFP発現細胞(網掛け)に転換している。 Creリコンビナーゼを吸着させたナノニードルアレイを用い加振を行った場合のCreリコンビナーゼ導入による細胞のゲノムDNAの組換え効率を、加振を行わなかった場合、および、ナノニードルアレイを用いない場合と対比した図。 FITC-デキストランを加えた培地中の細胞にナノニードルアレイを挿入し加振処理を行う前後の細胞の顕微鏡写真。(a):処理前の明視野像、(b):処理後のFITCの蛍光像、枠:ナノニードルアレイが接触した領域、枠内の細胞のみが蛍光を発している。 FITC-デキストランを加えた培地中の細胞にナノニードルアレイを挿入し加振処理を行う際の、加振振幅を変化させた時の培地中のFITC-デキストランの導入効率の変化を示す図。FITC-デキストラン導入細胞数はDAPI染色された細胞数を含まない。 FITC-デキストランを加えた培地中の細胞にナノニードルアレイを挿入し加振処理を行う際の、加振時間を変化させた時の培地中のFITC-デキストランの導入効率の変化を示す図。FITC-デキストラン導入細胞数はDAPI染色された細胞数を含まない。
本発明において用いられるナノニードルアレイとしては、本発明者らが先に独自に発明したナノニードルアレイ(特許文献1)を用いることができるが、当該ナノニードルアレイのナノニードルを更に先端の鋭いテーパー形状のものとすることが好ましい(実施例1)。
好ましいナノニードルの形状は、円柱形のものか、テーパー形状のものであり、根本の直径は50〜1,000nm、長さは5〜100μm程度であることが好ましく、また、テーパー形状の場合、テーパー率1/10(長さ方向10μmにつき直径が1μm減少)以下のものがよい。
特許文献1に記載された方法は、シリコンなどのIV型半導体材料からなるウエハ上にドット状のレジストマスクを施したうえで、エッチングを行うことでシリコン基板上にナノニードルを形成させるものであり、この方法によれば、基板上に直径及び長さの揃った多数の整列したナノニードルを作製することができる。
しかしながら、ナノニードルアレイの作製方法は、これに限られるものではなく、上記方法と同様に、基板上に直径及び長さの揃った多数の整列したナノニードルを作製することができる方法であれば、いずれの方法を用いてもよく、また、ナノニードルアレイの素材も、このようなナノニードルを作製できる素材であればよく、IV型半導体材料に限定されるものではない。例えば、非特許文献2には、砒化インジウム針状結晶を成長させる方法が記載されているが、このような方法で作製されたナノニードルアレイでもよい。
また、本発明において用いられる、アレイ上のナノニードルを細胞に挿入し、ナノニードルアレイを高周波振動させるための装置としては、例えば、本発明者らによる先行特許(特許文献2)に記載したナノニードルアレイ動作装置を用いることができる。装置の具体的構成は図2に示すとおりである。当該装置におけるナノニードルアレイの上下方向の位置の微調整に用いるピエゾパンタグラフに高周波電圧を印加することで、ナノニードルアレイを高周波で振動させることができる。
本発明におけるナノニードルアレイの加振の条件としては、振幅は0.01〜10μm、好ましくは0.1〜5μm、さらに好ましくは0.5〜2μmが、周波数は1〜1,000,000Hz、好ましくは100〜100,000Hz、さらに好ましくは1,000〜10,000Hzが、加振時間は0.1〜600秒、好ましくは1〜300秒、さらに好ましくは5〜120秒が、物質導入に効果的である。
本発明のナノニードルアレイの加振法による細胞への物質導入は、ナノニードルが細胞に挿入されるという物理的現象を利用するものであることから、これにより細胞内に導入し得る物質は、実施例に示した核酸分子、タンパク質、及び、多糖類のみに限定されるものではなく、各種の有機化合物、金属イオン、ペプチド、脂質などの比較的低分子量の物質から核酸やタンパク質、多糖類などの高分子量の物質にわたる広範な種類の物質を、その物質が有する表面電荷などに依存することなく、導入することが可能である。
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例によって何ら制限されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で各種の材料変更、設計変更、設定調整等が可能であることは言うまでもない。
実施例1.先鋭化ナノニードルアレイの作製
本発明において用いられるナノニードルアレイは、5mm角のシリコンチップの内側の3mm角内に、図1に示すように10μm間隔あるいは30μm間隔の格子状に、直径200nm、長さ20μmのナノニードルが配列したものである。本発明者らは、先に特許文献1において、その作製法を示したが、今回、作製条件を以下のとおり改良することにより、先端の先鋭化したナノニードルを作製し、以下の実施例において用いた。
(方法)
特許文献1の方法では、シリコンウエハ上に光リソグラフィーの工程でドット状のレジストパターンを作製した後、反応性イオンエッチングを行うことにより、シリコン基板上に長さ10〜50μm、直径(針状物の1/2長さの部分)200〜300nm、かつ針状物先端側の最大直径が針状物の1/2長さの部分の直径の10〜30%大きい、バット状のナノニードルを形成しているが、これに対し、今回の改良法では、このエッチング工程に際し、エッチング時間を2.6秒の一定時間から、200サイクルの間にエッチング時間を2.6秒から2.2秒へと徐々に減少させたことを特徴とする。その後の工程は特許文献1に記載の方法と同様の方法で行った。
(結果)
エッチング時間を段階的に減少させることにより、特許文献1の図2に示されている中程の太いバット状の形状から、本願の図1に示すように、先端が先鋭化したテーパー形状のナノニードルを作製することができた。また、このようにして形成されたナノニードルは、表1に示すように、ナノニードルを形成させたシリコン基板を5mm角に切り取ることにより作製されるそれぞれのチップにおいて、同じチップ内の長さや直径の均一性が高いことが確認された。
Figure 0006449057
上記表中、直径又は長さは無作為に選択したチップ内の12本のナノニードルの直径又は長さの平均値を示し、SDは標準偏差、CVは変動係数(=SD/直径又は長さ×100)である。
実施例2.ナノニードル表面へのプラスミドDNA吸着と当該ナノニードルの細胞への挿入、加振による、当該DNAの細胞内への導入
以下の実験により、核酸分子の細胞内への導入について、ナノニードルに核酸分子を吸着させたナノニードルアレイを用い加振する場合、および、同様のナノニードルアレイを用い加振しない場合の導入効率の比較を行った。
(方法)
ナノニードルアレイは、実施例1により作製したものを用いた。
ナノニードルアレイ動作装置は、図2に示す構成を有する。XYZ軸の粗動はピエゾモーターで動作するXYZステージ1を用いた。XYZステージ1にさらにZ軸を手動で動作するアリ式ステージ3を結合し、さらにL字型ステージ4が装着されている。L字型ステージ4の下部にナノニードルアレイ9を装着するアレイホルダー部が連結されている。アレイホルダー部には、水平調整のためのチルトテーブル5、微小回転角を調整するθステージ6、およびZ軸の微動と加振を行うピエゾパンタグラフ7が装備されており、ピエゾパンタグラフ7の先端にナノニードルアレイ9を装着するアルミ製アーム8が装備されている。ピエゾパンタグラフ7は、アンプとファンクションジェネレーターにより電位印加することで、任意の速度で上下動作を行うことが可能である。
まずシリコン製のナノニードルアレイの表面洗浄を行うために、300W、10分間酸素プラズマ処理を行った。次いで、1%フッ化水素溶液中に1分間浸漬させ、SiO2層を除去することによって表面の疎水化を行った。
ナノニードルアレイに吸着させるプラスミドDNAには、Amp耐性遺伝子を有し、CMVプロモーター下流にYFP派生物のVenus蛍光タンパク質がコードされているpCS2-Venusを用いた。12μlのプラスミドDNA溶液(プラスミド2μg、50mM酢酸ナトリウム、67%エタノール)をナノニードルアレイの上に滴下し、−20℃で30分間静置後、室温にて乾燥を行った。その後、アクリルフォーム両面テープを用いてアレイ動作装置のアーム部分にナノニードルアレイを取り付けた。
DMEM培地を満たしたポリスチレン製培養ディッシュに、マウス繊維芽細胞NIH3T3を播種し、3〜6時間の培養を行った後に導入操作を行った。
培養ディッシュ基板付近までナノニードル先端を降下させ、その後細胞に焦点を合わせ、2.5μm/secの速度でナノニードルを細胞へと接近させた。ナノニードルが基板に接触した後、2.5μm/secで1秒間上昇させ、振幅1.0μm、周波数5kHz、加振時間60秒間で加振した。
加振の後、2.5μm/secでナノニードルアレイを上昇させ、完全に抜去した。操作後の細胞は1mlのPBSで二回洗浄を行った後に、2mlの10%の血清入りDMEMを加え、24時間CO2インキュベーター中で培養を行った。24時間後、蛍光顕微鏡を用いてVenus発現細胞の観察を行い(図3)、Image-Pro Plus (Media Cybernetics)を利用して蛍光イメージ解析を行って、以下の式で遺伝子組換え効率を求めた。
遺伝子導入効率(%)=(Venus発現細胞の面積)/(明視野で観察される全細胞面積)
また、上述の60秒間の加振に替えて60秒間静置すること以外は同様の手順により、加振を行わない細胞試料を作製し、同様に遺伝子導入効率を求めた。
(結果)
上記二種の細胞試料の遺伝子導入効率を図4に示す。プラスミドDNA導入試験の結果、加振を行わない場合、30μmピッチのナノニードルアレイで平均3%、10μmピッチのナノニードルアレイで平均5%のプラスミドDNA導入効率が得られた。一方、加振操作を行うことによって、30μmピッチのナノニードルアレイで平均17%、10μmピッチのナノニードルアレイで平均34%のプラスミドDNA導入効率が得られた。このように、加振操作を行うことによって、導入効率は約6倍に向上した。
実施例3.ナノニードル表面へのタンパク質吸着と当該ナノニードルの細胞への挿入、加振による、当該タンパク質の細胞内への導入
以下の実験により、タンパク質の細胞内への導入について、ナノニードルにタンパク質を吸着させたナノニードルアレイを用い加振する場合、同様のナノニードルアレイを用い加振しない場合、および、ナノニードルアレイを用いない場合の導入効率の比較を行った。
(方法)
導入する糖類としてCreリコンビナーゼを用い、以下の手順で、細胞内へのCreリコンビナーゼの導入を行った。
Creリコンビナーゼによる組換えの評価を行うため、Flp-In-293細胞(Invitrogen社)を改変し、293.RxG細胞を樹立した。
この細胞は、上流にRFP発現遺伝子およびポリA配列を有し、かつ下流にGFP質発現遺伝子およびポリA配列を有するDNA構築物がゲノム中に組み込まれている(図5の293.RxG)。当該構築物において、CMVプロモーターから転写されたmRNAは、上流のポリA配列によって転写が終結するため、RFP遺伝子は転写されるが、GFP遺伝子は転写されない。従って、293.RxG細胞はGFPタンパク質を発現せず、RFPタンパク質のみ発現し、赤色の蛍光を発する(図6(a)の白い部分)。
このDNA構築物において、RFP発現遺伝子およびポリA配列の両側には、同じ向きの2つのloxP配列が配置されている。この構築物にCreリコンビナーゼを作用させると、loxP配列に挟まれたRFP発現遺伝子およびポリA配列のDNA断片が取り除かれ、CMVプロモーターの直下にGFP発現遺伝子およびポリA配列が配置される(図5の293.G)。その結果、RFPタンパク質は発現されず、GFPタンパク質を発現するようになる。
したがって、この構築物を有する293.RxG細胞に何らかの手段でCreリコンビナーゼを作用させた際に生じる細胞内におけるGFPタンパク質の発現、および、それによる緑色の蛍光(図6(b)の網掛け部分)は、当該手段によるCreリコンビナーゼの細胞内への導入を示す指標とすることができる。
ナノニードルが10μm間隔で配列したナノニードルアレイを用い、シリコン製のナノニードルアレイの表面洗浄を行うために、300W、10分間酸素プラズマ処理を行った。次いで、1%フッ化水素溶液中に1分間浸漬させ、SiO2層を除去することによって表面の疎水化を行った。
20μlの100μM Creリコンビナーゼ溶液をナノニードルアレイの上に滴下し、室温で60分間静置した。Creリコンビナーゼを溶解する緩衝液(20mM HEPES,150mM NaCl, 10% glycerol, pH7.4)を用いて洗浄を行った後、アクリルフォームテープを用いてアレイ動作装置のアーム部分にナノニードルアレイを取り付けた。
DMEM培地を満たしたポリスチレン製培養ディッシュに、293.RxG細胞を播種し、3〜6時間の培養を行った後に導入操作を行った。
培養ディッシュ基板付近までナノニードル先端を降下させ、その後細胞に焦点を合わせ、2.5μm/secの速度でナノニードルを細胞へと接近させた。ナノニードルが基板に接触した後、2.5μm/secで1秒間上昇させ、振幅1.0μm、周波数5kHz、加振時間60秒間で加振した。
加振の後、2.5μm/secでナノニードルアレイを上昇させ、完全に抜去した。操作後の細胞は1mlのPBSで二回洗浄を行った後に、2mlの10%の血清入りDMEMを加え、24時間CO2インキュベーター中で培養を行った。48時間後、蛍光顕微鏡を用いてRFPおよびGFP発現細胞の観察を行い、Image-Pro Plus (Media Cybernetics)を利用して蛍光イメージの解析を行い、以下の式で細胞ゲノムに組込まれたDNA構築物の組換え効率を求めた。
ゲノムDNA組換え効率(%)=(GFP発現細胞の面積)/(GFP発現細胞の面積+RFP発現細胞の面積)
また、上述のナノニードルアレイを用い、60秒間の加振に替えて60秒間静置すること以外は同様の手順により、加振を行わない細胞試料を作製し、さらに、ナノニードルを有さない平らなシリコンウエハを用い、60秒間の加振に替えて60秒間静置すること以外は同様の手順により細胞試料を作製して、これらについても同様に遺伝子組換え効率を求めた。
(結果)
上記三種の細胞試料のCreリコンビナーゼ導入による細胞ゲノムDNAの組換え効率を図7に示す。Creリコンビナーゼを吸着させたナノニードルアレイのナノニードルを細胞へと挿入し、加振操作を行わずに60秒間挿入状態を維持することによって、平均18%のCreリコンビナーゼ導入効率が得られた。これは、ナノニードルを有さない平らなシリコンウエハにCreリコンビナーゼを吸着させ、細胞へと押しつけた場合の約3倍の効率にあたる。また、ナノニードルの挿入後に加振操作を行うことによって平均42%のCreリコンビナーゼ導入効率が得られた。このことから、加振操作を行うことによって、単にナノニードルの挿入を行う場合よりも更に約2倍もの導入効率の向上が得られたことになる。
実施例4.ナノニードルの細胞への挿入およびナノニードルアレイの加振による、培地混合物質の細胞内への導入
以下の実験により、培地混合物質として培地中に存在する糖類の細胞内への導入について、糖類を溶解した細胞培地中の細胞にナノニードルを挿入し、ナノニードルアレイを加振する場合、および、ナノニードルアレイを用い加振しない場合の導入効率の比較を行った。
(方法)
導入する糖類としてFITCデキストランを用い、以下の手順で、マウス線維芽細胞NIH3T3に対してFITCデキストラン導入を行った。
分子量70,000のFITCデキストランを終濃度0.5mg/mlになるようにDMEM培地に溶解した。当該培地を満たした培養ディッシュにNIH3T3を播種し、24時間培養した後に導入操作を行った。ナノニードルアレイを動作装置に装着し、水平調整後、細胞に挿入した。ナノニードルを細胞に挿入した後、ファンクションジェネレーターによって高周波電圧を印加し、ピエゾパンタグラフを上下振動させることによりナノニードルアレイの加振操作を行った。
培地交換に続く30分間インキュベーションの後、FITCデキストランの蛍光観察と死細胞染色色素DAPIによる染色を行い、画像解析によりFITCデキストラン導入効率とDAPI染色率を算出した。図8に、ナノニードルを挿入し、振幅0.25μmで60秒の加振処理を行う前後の培養細胞の顕微鏡写真を示す。処理前の細胞(左図:明視野像)のうち、当該処理により、ナノニードルが接触した領域の細胞(右図:FITCの蛍光像)のみにFITCデキストランが導入されたことが確認される。
(結果)
加振時間30秒の加振において振幅の検討を行った結果、加振を行わなかった場合(振幅0μm)と比較し、振幅0.25μmで加振を行った場合ではFITCデキストランの導入効率が向上し、加振により細胞膜の穿孔を促進することが明らかになった。また、振幅の増加に伴いDAPI染色率も上昇し、細胞へのダメージが増大することが明らかとなった(図9)。
DAPI染色率が低く、かつFITCデキストランが効率的に導入された振幅0.25μmの加振において、加振時間の検討を行った結果、加振時間60秒ではDAPI染色率を低くおさえ、FITCデキストランの導入効率をさらに上昇することができた。一方、120秒の加振ではDAPI染色率が大幅に増加し、加振時間の最適化も必要であることが示された(図10)。
このように、最も導入効率が高く、細胞死滅率を抑えた加振条件は、振幅0.25μm、加振時間60秒であり、FITCデキストラン導入効率45±9%(DAPI染色細胞は含まない)、DAPI染色率7±5%であった。
細胞内に核酸分子やタンパク質などの外来物質を導入する技術は、遺伝子工学をはじめとする細胞工学の基礎的な技術の一つであり、本発明は、遺伝子工学、細胞工学を利用する様々な産業分野において利用可能である。例えば、医療、創薬、細胞を利用した有用物質生産、種子産業等における細胞改変技術として、本発明を利用することができる。
1:XYZステージ
2:ピエゾモーター
3:アリ式ステージ
4:L字型ステージ
5:チルトテーブル
6:θステージ
7:ピエゾパンタグラフ
8:アルミ製アーム
9:ナノニードルアレイ
10:細胞培養シャーレ

Claims (4)

  1. ナノニードルアレイのナノニードルを細胞へと挿入した状態で、ナノニードルアレイをナノニードルの長軸方向に高周波振動させることにより、細胞内へ物質を導入することを特徴とし、ただし、ヒトの体内(in vivo)においてこれを行う場合を除く、細胞内への物質の導入方法。
  2. ナノニードル表面に細胞内に導入させるべき物質を吸着させ、ナノニードルを細胞へと挿入した状態で、ナノニードルアレイをナノニードルの長軸方向に高周波振動させることにより、細胞内へ物質を導入することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  3. 細胞培地に細胞内に導入させるべき物質を混合し、ナノニードルを当該培地中の細胞へと挿入した状態で、ナノニードルアレイをナノニードルの長軸方向に高周波振動させることにより、細胞内へ物質を導入することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  4. 細胞内に導入させるべき物質が核酸および/またはタンパク質である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
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