以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1には、本発明の1実施形態としてのランセット10が示されている。ランセット10は、図1〜6に示すように、ランセット本体12とプロテクタ14を組み合わせて構成されている。なお、以下の説明において、特に断りのない限り、軸方向とはランセット10の中心軸方向である図2中の左右方向を言い、後述する穿刺器具72における穿刺針16の突出方向(穿刺方向)となる図2中の左方を前方、右方を後方と言う。
より詳細には、ランセット本体12は、図7〜9にも示されるように、穿刺体としての穿刺針16が、樹脂で一体形成されたハブ18およびキャップ20によって、略全体に亘って覆われた構造とされている。
ハブ18は、全体として略ロッド形状とされており、穿刺針16の基端部に固着されていると共に、穿刺針16よりも後方まで突出している。更に、ハブ18の後端部には、径方向1方向の両側(図3中の上下方向両側)に開口する一対の連結凹溝22,22が形成されている。
さらに、ハブ18には、一対の弾性係止片24,24が設けられている。弾性係止片24は、全体として長手板状であって、ハブ18の前端付近から図5中の上下方向に延び出していると共に、湾曲して後方に突出している。更に、弾性係止片24は、後方に向かって次第に上下外側に傾斜しており、本実施形態では、基端となる前端部が厚さ方向で略円弧状に湾曲していると共に、先端となる後端部分が傾斜平板状とされている。本実施形態では、一対の弾性係止片24,24がハブ18の径方向1方向の両側(図3中の上下方向両側)に設けられていることにより、弾性係止片24,24がハブ18の周上で均等に配置されている。
また、弾性係止片24,24の前端部分には、それぞれ図5中の上下方向両側に突出する突出片25,25が一体形成されている。
更にまた、弾性係止片24の後端には、上下外側に向かって突出する係合部26が一体形成されている。この係合部26は、前面が図3中の上下方向外側に向かって前方に傾斜する傾斜面とされていると共に、後面が図3中の上下方向外側に向かって後方に傾斜する傾斜面とされている。
キャップ20の基端部分はロッド状部27とされており、穿刺針16の先端部分を覆っていると共に、脆弱部28を介してハブ18の先端部分と一体形成されている。脆弱部28は、ハブ18とキャップ20の境界に設けられて、外周面に開口する環状の溝によって部分的に薄肉小径とされており、キャップ20を取り外す際に外力を加えると、応力が集中して優先的に破断するようになっている。なお、脆弱部28は、穿刺針16の先端よりも後方に位置しており、ハブ18から突出する穿刺針16が、脆弱部28を貫通してキャップ20のロッド状部27内に達している。
さらに、キャップ20の先端部に、大径の円板形状を呈する蓋部としての閉塞部30が設けられていると共に、閉塞部30の先端側には、一組の略半円板を軸方向視で十字をなすように組み合わせた形状の把持部32が一体形成されている。また、把持部32の先端側には滑止部33が設けられている。この滑止部33は、全体として略円板形状とされており、外周面に凹凸が付されることで、手指によるキャップ20の先端の把持および回転が効果的に行えるようになっている。そして、把持部32には周方向に延びる標示部としての矢印34が一体形成されている。この矢印34は、後述するキャップ20の取り外しに際して、プロテクタ14に対するキャップ20の回転方向を示すものであり、ランセット10では、プロテクタ14に対して所定の方向に回転させる必要があることから、矢印34の向きは1方向であり、把持部32の径方向両側に同じ向きの矢印34,34が設けられている。
さらに、キャップ20の閉塞部30の中央には、後方に突出する嵌合凸部36が形成されている。嵌合凸部36は略円筒形状とされており、キャップ20の基端側であるロッド状部27の先端側外周面に一体形成されて、ロッド状部27が嵌合凸部36で大径化されている。また、かかる嵌合凸部36における周上の一部(図3中の上部)からは、後方側に延び出すガイド部38が突出して形成されている。このガイド部38は、ロッド状部27の外周面に沿って周方向に湾曲しており、平面視において略長方形とされている。そして、ガイド部38の周方向一方側(図2中の下方側)には軸方向に対して傾斜する当接面としての傾斜面40が設けられていると共に、周方向他方側の端面は軸方向に広がる平坦面42とされている。かかる傾斜面40が設けられることにより、ガイド部38は、嵌合凸部36からの軸方向の突出高さが周方向他方の側に向かって次第に大きく変化するようにされている。
更にまた、キャップ20の閉塞部30には、支持片44が一体形成されている。支持片44は、閉塞部30における外周縁部の周上の一部(図3中の上部)から後方に向かって突出している。また、支持片44の突出先端部分には、軸直角方向の内方に向かって突出する係止片としての係止爪46が一体形成されている。この係止爪46は、突出先端面が前方に向かって内傾しており、前方に向かって次第に突出寸法が大きくなっていると共に、前端面が略軸直角方向に広がっている。
このような構造とされたランセット本体12には、プロテクタ14が外挿状態で取り付けられている。プロテクタ14は、全体として略円筒形状とされており、軸方向に延びる2つの切込み48,48が周上で等間隔(本実施形態では、図3中の上下方向両側)に形成されることによって、後端部分が2分割されている。また、切込み48,48と直交する方向両側(図2中の上下方向両側)では、軸方向中間部分から後端部分にかけて、プロテクタ14の横断面が全体として楕円形乃至略角丸の矩形状とされている。なお、後述する穿刺器具本体70におけるプロテクタホルダ78の内面形状をこのような形状として、プロテクタホルダ78の内面形状をプロテクタ14の外面形状に対応させた形状とすることで、プロテクタ14をプロテクタホルダ78に挿入し易く、且つ、挿入後はプロテクタ14の回転位置が自然と所定位置に案内されるようにすることができる。また、軸方向中間部分において、プロテクタ14の外周面には、ガタツキ防止用突起49が設けられており、本実施形態では周上で等間隔に4つのガタツキ防止用突起49が突設されている。
さらに、プロテクタ14の外周面には、外周側に突出する環状突起50が設けられている。この環状突起50には、周方向の所定の長さに亘って切欠き52が設けられており、環状突起50は、プロテクタ14の外周面において、全周に亘っては設けられていない。なお、かかる環状突起50は、略矩形断面を有しており、前方側端面が前方に向かって内傾しており、後方側に向かって次第に突出寸法が大きくなっていると共に、後端面が略軸直角方向に広がっている。即ち、環状突起50の後端面とプロテクタ14の外周面とにより、係止段差が構成されており、当該係止段差が周方向で1周に満たない長さで延びている。また、この環状突起50は、プロテクタ14の先端面から所定距離後方に設けられている。
更にまた、プロテクタ14における径方向1方向両側(図3中の上下方向両側)において、切込み48,48よりも前方には、第1の係止孔54,54と第2の係止孔56,56がそれぞれ一対形成されている。第1の係止孔54と第2の係止孔56は、互いに略同一形状でプロテクタ14の周壁に開口する矩形孔であって、軸方向に所定の距離を隔てて配置されて、第2の係止孔56が第1の係止孔54よりも前方に位置している。これら一対の第1の係止孔54,54および一対の第2の係止孔56,56は、後述するランセット本体12のプロテクタ14への装着状態において、周上で弾性係止片24と対応する位置に配置されている。また、第2の係止孔56の前方内面は、内周側に向かって次第に後方に傾斜する傾斜面とされている一方、後方内面は内周側に向かって次第に前方に傾斜する傾斜面で構成されている。
さらに、第1の係止孔54と第2の係止孔56との軸方向間には、内周側に向かって突出する規制突起58が形成されている。規制突起58は、前方に向かって次第に突出高さが大きくなる突起であって、前面と内周面が、何れも前方に向かって次第に内周側へ傾斜している。また、規制突起58の前面は、第2の係止孔56の後方内面と連続しており、本実施形態ではそれらの面が単一の傾斜平面で構成されている。なお、規制突起58の突出高さは、弾性係止片24の弾性や、穿刺時のランセット本体12の移動速度、第2の係止孔56の軸方向の寸法などを考慮して設定されて、後述する穿刺器具72の穿刺作動時に、規制突起58を乗り越えた係合部26が、第2の係止孔56に入り込むことなく、前方に移動可能とされることが望ましい。
一方、プロテクタ14の先端側の内周面において、径方向1方向(図2中の上下方向)の両側には周壁を抉るようにして設けられた嵌合凹部60,60(図10,11参照)が設けられており、これにより、プロテクタ14において、嵌合凹部60,60が形成された部分の周壁が薄肉周壁部とされている。これら嵌合凹部60,60の内周面は、プロテクタ14の外周面に対応して周方向に延びる湾曲面(中心軸回りの略円筒面)とされており、嵌合凹部60,60内に嵌合凸部36およびガイド部38が入り込むようになっている。
また、一方(図2中上方)の嵌合凹部60の内周壁面には周方向の所定距離に亘って内周側へ厚肉とされた厚肉部62が形成されており、嵌合凹部60による薄肉周壁部と厚肉部62との境界部分による段差が軸方向に対して傾斜する傾斜面64(図10参照)とされている。この厚肉部62の内周面は、プロテクタ14の外周面に対応して周方向に延びる湾曲面とされていると共に、厚肉部62の先端側端面である傾斜面64は、略一定の傾斜角度で周方向に延びている。一方、他方の嵌合凹部60の内周壁面は周方向に広がる円弧状湾曲面とされている。なお、嵌合凹部60に設けられる傾斜面64は、ガイド部38に設けられる傾斜面40と略対応する傾斜角を有しており、プロテクタ14の先端面から所定距離後方に設けられている。また、本実施形態では、切欠き52が設けられている領域、即ち環状突起50が設けられていない領域に、一方の嵌合凹部60および傾斜面64が設けられている。なお、嵌合凹部60,60を含む薄肉周壁部の面積は、厚肉部62の面積よりも大きくされている。
さらに、プロテクタ14の先端側の内周面において、嵌合凹部60,60が対向する方向と直交する方向には、内周側に開口して軸方向に延びる凹溝66,66が設けられており、嵌合凹部60,60の内周面と凹溝66,66の内周面が周方向でつながって形成されている。換言すれば、プロテクタ14の先端側の周壁は、全体的に薄肉の円筒形状とされており、そこに部分的に内周面に突出する厚肉部62が設けられて傾斜面64が形成されていると共に、軸方向に延びる一対の凹溝66,66で薄肉の円筒形状の周壁が分断されることで一対の嵌合凹部60,60に分断されているのである。
かかる形状とされたプロテクタ14の先端側開口部からランセット本体12が圧入されることにより、本実施形態のランセット10が構成されている。かかる組付け状態では、嵌合凹部60,60内に、嵌合凸部36およびガイド部38が挿し入れられると共に、弾性係止片24の係合部26が第1の係止孔54に入り込んで係止されることで、ハブ18がプロテクタ14に保持されている。また、支持片44の係止爪46が環状突起50を乗り越えることにより、これら係止爪46と環状突起50とが係合するようになっている。即ち、本実施形態では、これら係止爪46と環状突起50とにより、初期位置でのキャップ20とプロテクタ14との周方向での相対回転を許容すると共に、プロテクタ14からのキャップ20の軸方向の引抜きを防止する離脱制限機構が構成されている。なお、かかる組付け時には、プロテクタ14の先端開口が、キャップ20の閉塞部30により覆蓋されている。
また、プロテクタ14の第1の係止孔54に、弾性係止片24の係合部26が入り込むことにより、係合部26が第1の係止孔54の内周面に係止されて、ハブ18がプロテクタ14に対して周方向で相対的に位置決めされており、ハブ18のプロテクタ14に対する相対回動が阻止されている。これと共に、弾性係止片24,24の前端に形成されている突出片25,25がプロテクタ14に設けられた凹溝66,66に入り込んでいることからハブ18のプロテクタ14に対する相対回動が一層効果的に阻止され得る。
なお、弾性係止片24の係合部26と第1の係止孔54との係合では、係合部26が第1の係止孔54に入り込んで、プロテクタ14に対するランセット本体12の前進移動が阻止されていればよい。それ故、係合部26の第1の係止孔54への入り込みによる係止状態では、弾性係止片24に圧縮力や嵌着力が及ぼされている必要はなく、第1の係止孔54内で係合部26に遊びが設定されて、ランセット本体12がプロテクタ14に対してがたつきをもって組み付けられていてもよい。
また、ランセット本体12とプロテクタ14の組付状態では、ランセット本体12の穿刺針16およびハブ18が、何れも実質的な全長に亘ってプロテクタ14の内周側に収容されている。好適には、ランセット本体12は、少なくとも、穿刺針16の先端が、プロテクタ14の内周に常時収容状態とされると共に、ハブ18の連結凹溝22,22が、プロテクタ14の内周に常時収容状態とされており、穿刺針16およびハブ18が、常に実質的な全長に亘ってプロテクタ14に収容されている。
かかる形状とされたランセット10からのキャップ20の取外しを図10,11を示して説明する。図10(a)〜(f)、図11(a)〜(e)のそれぞれは、図10(a)および図11(a)に示された初期状態からキャップ20を90°ずつ順次回転させた状態を示している。なお、図10(d)は、図10(c)の状態を反転して示すものであり、キャップ20は回転していない。また、図11(a)〜(c)と図11(d),(e)では、キャップ20の回転を異なる方向から示している。
すなわち、図11(a)に示すように、初期状態では、ガイド部38の周方向他方の側の端面である平坦面42が嵌合凹部60に設けられた厚肉部62の周方向一方側の端面と当接しており、キャップ20の周方向他方の側への回転(図11(a)中の時計回り方向の回転)が不能とされている。そして、キャップ20を周方向一方の側(図11(a)中の反時計回り方向)へ回転させて、220°回転した時点で、ガイド部38の周方向一方の側の端面に設けられた傾斜面40と嵌合凹部60に設けられた傾斜面64が当接する。そして、図10(e),(f)および図11(d)、(e)に示されているように、ガイド部38の傾斜面40が嵌合凹部60の傾斜面64に重ね合わされて摺動することで、脆弱部28がねじ切れてキャップ20が軸方向外方に引き抜かれるようになっている。即ち、本実施形態では、ガイド部38の傾斜面40が嵌合凹部60の傾斜面64に沿って移動することにより、傾斜面40には傾斜面64の当接反力としてプロテクタ14からキャップ20を取り外す軸方向の力が発生させられる。従って、ガイド部38の傾斜面40と嵌合凹部60の傾斜面64とにより、離脱機構が構成されている。
そして、ガイド部38の傾斜面40と嵌合凹部60に設けられた傾斜面64が当接する際には、ランセット本体12の係止爪46は、環状突起50の切欠き52の部分に位置しており、キャップ20の軸方向への引抜きに際して、引っ掛かることがないようにされている。即ち、環状突起50が設けられている部分が、離脱制限機構により軸方向の取外しが不能とされる相対回転領域とされる一方、環状突起50の切欠き52の部分が、離脱制限機構による軸方向の係止が解除される相対回転領域とされる。特に、本実施形態では、環状突起50が設けられていない領域の内周側に傾斜面64が設けられており、離脱制限機構と離脱機構とが周上でずれて形成されている。
すなわち、本実施形態のランセット10では、キャップ20をプロテクタ14に対して所定の方向に相対的に回転させると、所定の角度までは軸方向で移動することなく、初期位置で回動する。そして、所定角だけ回動すると、ガイド部38の傾斜面40と嵌合凹部60の傾斜面64が当接しながら周方向に回動する。これにより、キャップ20とハブ18との間に軸方向の引張力が及ぼされる。
なお、例えば、一方の手でキャップ20の把持部32を摘むと共に、他方の手でプロテクタ14を保持する穿刺器具本体70(後述)を把持して、相互に捻ることにより、キャップ20とプロテクタ14を相対回転させることができる。ここで、キャップ20には、プロテクタ14に対する回転方向を示す矢印34が設けられていることから、キャップ20を捻る方向が容易に認識され得る。尤も、仮にキャップ20を逆方向に回転させようとしても、図11(a)に示されているように、ガイド部38の周方向他方の側の端面である平坦面42がプロテクタ14の厚肉部62の周方向一方の側の端面と当接していることから、キャップ20の逆方向への回転は不能とされている。
また、キャップ20とハブ18の境界に、局所的に小径とされた脆弱部28が設けられており、キャップ20とハブ18が相対的に捻られると、脆弱部28に応力が集中して、図10(e)に示すように、脆弱部28が優先的に破断するようになっている。そして、所定角だけ回転させた後、破断した脆弱部28よりも先端側であるキャップ20を前方に引き抜くことにより、キャップ20で覆われていた穿刺針16の先端部分が、ハブ18の前端から突出して、プロテクタ14の内周空間に露出される。即ち、本実施形態のランセット10では、キャップ20を回転させて脆弱部28が破断される前にキャップ20を軸方向に引き抜いて脆弱部28を引きちぎるといった操作が行われることが効果的に防止され得る。また、本実施形態では、キャップ20が取り外された状態において、穿刺針16はプロテクタ14の内周側に収容されており、使用者が誤って穿刺針16の先端に触れるのを回避できる。
なお、ここではランセット10の単体でキャップ20の取外しについて説明したが、実際の使用時には、後述するように、ランセット10を後述する穿刺器具本体70にセットしてから、キャップ20を取り外すことができる。
上記の如き構造とされた本実施形態のランセット10では、ランセット10の外側に離脱制限機構が構成されている一方、内側に離脱機構が構成されていることから、これらの機構を別々に設計することができて、設計自由度の向上が図られ得る。また、離脱制限機構と離脱機構を内外面に分けることで、内外面の構成がシンプルになり、プロテクタの成形を容易とすることができる。更に、ランセット本体12をプロテクタ14に圧入するに際して、離脱機構を構成するガイド部38の傾斜面40と嵌合凹部60の傾斜面64は、何等干渉することがないことから過大な負荷が及ぼされて変形してしまうといった不具合が回避され得る。即ち、例えばキャップとプロテクタとの組付けの際に両方の機構が損傷してしまうリスクが軽減されると共に、万一キャップとプロテクタとの組付時に変形等が発生した場合でも離脱機構への悪影響が回避されて良好な機能が維持され得る。それ故、離脱機構において目的とする作動が、より高い信頼性のもとで安定して発揮されて、目的とするキャップの取外し操作、ひいては穿刺操作を良好に行うことが可能となる。
なお、前述の特許文献1に記載された従来構造のランセットでは、例えばランセット(204a)を穿刺針ホルダ(201a)へ組み付ける際やランセット(204a)に逆向きの回転力を及ぼす等してツメ(303a)が損傷すると、保護キャップ(202a)の離脱阻止機能と保護キャップ(202a)の取外し機能との何れの機能も発揮されなくなってしまうこととなり、穿刺器具が使用不可能となるリスクが大きかったが、本実施形態のランセット10ではかかるおそれが軽減され得る。
また、本実施形態では、環状突起50の切欠き52が設けられている部分、即ちプロテクタ14の外周面において環状突起50が設けられていない部分の内周側に、嵌合凹部60が設けられている。換言すれば、離脱制限機構と離脱機構とが周上でずれて形成されている。この結果、当該部分におけるプロテクタ14の肉厚を効率的に薄くすることができる。これにより、例えばプロテクタ14を透明な部材で形成する場合には、かかる部分を通じての視認性が向上され得る。この結果、穿刺後の皮膚からの出血を容易に確認することができて、穿刺が正常に実施されたかを高度な信頼性をもって判別することができる。
更にまた、プロテクタ14における嵌合凹部60や厚肉部62の内周面が、プロテクタ14の外周面形状に対応して周方向に湾曲した面形状とされていることから、外部から入射される光の散乱や屈折が抑えられて、視認性の更なる向上が図られ得る。
さらに、離脱制限機構を構成する環状突起50や係止爪46、および離脱機構を構成するガイド部38の傾斜面40や嵌合凹部60の傾斜面64がそれぞれ、プロテクタ14の先端から所定距離離れた位置に形成されている。これにより、プロテクタ14の先端部分に凹凸が形成されることが回避されて、穿刺後の出血をプロテクタ14の先端部分を通じて視認することが一層容易とされ得る。
また、本実施形態では、キャップ20とプロテクタ14との離脱制限機構において、係止爪46と環状突起50との係止の解除が、キャップ20をプロテクタ14に対して周方向で半周以上(220°)の距離に亘って相対回転させることにより実施される。これにより、キャップ20をハブ18に対して十分に捩ることができて、脆弱部28における固着力を十分に小さくすることができる。この結果、離脱機構によりキャップ20がプロテクタ14に対して軸方向に離脱する際にも、キャップ20に対して小さな回転力を及ぼすことで脆弱部28が破断され得る。
さらに、嵌合凹部60が設けられてプロテクタ14の周壁が薄肉とされた部分に厚肉部62が設けられていることから、薄肉とすることにより生じるスペースを巧く利用することができる。これにより、プロテクタの内径が小さくなったり、内径を確保するためにプロテクタ全体を大型化すること等が回避され得る。
また、ガイド部38の傾斜面40と嵌合凹部60の傾斜面64とが略対応する形状とされていることから、これらが摺動する際の接触面積を大きく確保することができて、プロテクタ14からキャップ20が離脱する軸方向力が安定して発生され得る。また、何れの傾斜面に対しても局所的に過大な負荷が及ぼされることがないことから、離脱機構を構成する部材の変形や破損が効果的に抑制され得る。
かくの如き構造とされたランセット10は、図12に示される穿刺器具本体70に対して装着されることで、図13に示される如き穿刺器具72を構成するようになっている。かかる穿刺器具72においては、穿刺器具本体70に対してランセット10が着脱可能に装着された構造とされている。
より詳細には、図12に示す穿刺器具本体70は、ハウジング74を備えており、ハウジング74が、ハウジング本体76とプロテクタホルダ78を含んで構成されている。ハウジング本体76は、硬質の樹脂成形品からなる略円筒形状の部材であって、周壁には操作窓80が開口している。なお、本実施形態のハウジング本体76は略対称形状とされた一対の半割り体を組み合わせて、それら半割り体を超音波溶着等の手段で相互に固着することで形成されている。かかるハウジング本体76の内部により、後述する出力ロッド96等が移動するための通路81が構成されている。
プロテクタホルダ78は、樹脂成形品からなる略円筒形状の部品であって、前端には外周に突出する開口係止部82が一体形成されている。
さらに、プロテクタホルダ78の周壁部には、2つの可撓片86,86が周上で等間隔(本実施形態では図12中の上下方向両側)に形成されている。可撓片86,86は、略矩形板状とされており、前方の一辺がプロテクタホルダ78の周壁に一体で接続されていると共に、他の三辺が切込みによってプロテクタホルダ78の周壁から独立している。これにより、可撓片86の後端部が、変形を伴って外周側に移動可能とされており、可撓片86が外周側への撓み変形を許容されている。
更にまた、プロテクタホルダ78の可撓片86には、それぞれ係合凸部88が形成されている。係合凸部88は、プロテクタホルダ78の内周に向かって突出する突起であって、略一定の半円形断面をもってプロテクタホルダ78の周方向に所定の幅で延びている。また、係合凸部88は、可撓片86の後端に一体形成されており、係合凸部88の突出先端が、可撓片86の撓み変形によって、プロテクタホルダ78の径方向に移動可能とされている。
そして、プロテクタホルダ78は、ハウジング本体76の前方開口部分に収容されている。即ち、プロテクタホルダ78の外周面に突設された一対の支持突部(図示せず)が、ハウジング本体76の内周面に形成された支持凹部(図示せず)に差し入れられると共に、プロテクタホルダ78の開口係止部82が、ハウジング本体76の前方の開口端面に重ね合わされることで、プロテクタホルダ78が、ハウジング本体76の開口部分に位置決め保持されている。このように、プロテクタホルダ78が、ハウジング本体76の開口部分に取り付けられることで、本実施形態のハウジング74が構成されている。
さらに、プロテクタホルダ78がハウジング本体76に取り付けられた状態では、係合凸部88を備える可撓片86の後端部が、ハウジング本体76の内周面に開口する逃がし凹所94に対して、それぞれ位置決めされており、可撓片86の外周側への変形が許容されている。
また、ハウジング74には、出力部材としての出力ロッド96が収容されている。この出力ロッド96は、全体として略円筒形状を呈していると共に、前部がスリット98によって上下(図12中の上下)に分割された二股形状となっている。更に、二股形状とされた出力ロッド96の前部には、第1のロック突起100が外周側に突出して形成されている。この第1のロック突起100は略直角三角形断面を有しており、前面が略軸直角方向に広がっていると共に、後面が後方に向かって内側に傾斜して広がっている。なお、本実施形態では、出力ロッド96の第1のロック突起100が、図12中の上下方向両側に突出して一対形成されており、出力ロッド96をハウジング74に収容する際に、出力ロッド96の上下の向きを特定する必要がなくなって、組立て作業の容易化が図られるが、例えば下側の第1のロック突起100を省略することもできる。
かかるランセット10が装着されていない初期状態では、ランセット10の先端の位置は初期位置P1(図12参照)とされている。
さらに、出力ロッド96の前端には、一対の連結凸部104,104が設けられている。連結凸部104,104は、二股形状とされた出力ロッド96の前端において上下内方に対向して突出しており、前端部が前方に向かって上下外側に傾斜する湾曲形状とされている。
更にまた、出力ロッド96における連結凸部104よりも後方には、ロッド当接部106が設けられている。ロッド当接部106は、二股形状とされた出力ロッド96の前端部分において、上下に対向する一対が突出形成されており、後面が突出先端に向かって次第に前方に傾斜する凸形の湾曲面とされている。
かかる出力ロッド96には、穿刺止めシリンダ108と、穿刺止めシリンダ108を出力ロッド96に対して位置調整可能に接続する深さ調節ねじ110が取り付けられている。
この穿刺止めシリンダ108は、全体として内径が出力ロッド96の外径よりも大きい略円筒形状とされている。穿刺止めシリンダ108は、先端部112と後端部114との間にこれらの部分よりも径が小さい中間部116を備えている。また、後端部114の内表面には、雌ねじ118が設けられている。なお、穿刺止めシリンダ108の先端部112は、幅方向両側(図12中紙面奥手前方向両側)から前方に向かって突出する形状を有している。かかる穿刺止めシリンダ108の外面にはハウジング74内面に形成されたリブと係合する溝が形成されており、穿刺止めシリンダ108はハウジング74に対して回転しないようになっている。
ここにおいて、ハウジング74における通路81の先端部には、出力ロッド96等の先端方向への移動を阻止する阻止部120が設けられている。阻止部120は、出力ロッド96の先端部よりも広く且つ穿刺止めシリンダ108の先端部112よりも狭くなった狭窄部である。即ち、穿刺止めシリンダ108の先端部112が阻止部120に当接することで、出力ロッド96等の先端方向への移動が停止するようになっている。特に、本実施形態においては、プロテクタホルダ78の後端面が阻止部120として機能するようになっている。
一方、深さ調節ねじ110は、全体として出力ロッド96の外径よりも内径が大きい略円筒形状とされている。なお、図示は省略するが、本実施形態では、出力ロッド96の基端側に、軸方向に離間して、外周側に突出する2つの突条が設けられており、かかる2つの突条間に深さ調節ねじ110が挟まれて配置されることで、深さ調節ねじ110が出力ロッド96に対して回転可能に、且つ軸方向には移動不能とされるように取り付けられている。また、深さ調節ねじ110の外表面には、穿刺止めシリンダ108の雌ねじ118に対応する雄ねじ122が設けられている。そして、これら雌ねじ118と雄ねじ122が螺合することにより、穿刺止めシリンダ108の後端部114には深さ調節ねじ110が接続されている。なお、雌ねじ118と雄ねじ122の当接面は滑らかな傾斜面により構成されている。
また、出力ロッド96には、プッシュロッド124が挿通されている。このプッシュロッド124は、小径中実の略円柱形状とされている。
さらに、プッシュロッド124の後端には、排出スイッチ126が取り付けられている。排出スイッチ126は略有底円筒形状を有しており、プッシュロッド124の後端が排出スイッチ126に挿入されて固着されている。
また、排出スイッチ126は、設定ダイヤル128に挿通されている。設定ダイヤル128は、全体として略筒状とされており、後端開口に排出スイッチ126が挿通されていると共に、前部がハウジング本体76に差し入れられている。更に、設定ダイヤル128のハウジング本体76への差入れ部分には、外周に突出する大径係合部130が全周に亘って設けられている。この大径係合部130が、ハウジング本体76の内周面に開口する係合溝132に差し入れられて、軸方向に係止されることで、設定ダイヤル128がハウジング本体76に対して軸方向で位置決めされ、且つ相対回動を許容された状態に支持されている。なお、排出スイッチ126は、設定ダイヤル128に対して前後に移動可能とされていると共に、軸方向後方への抜けが防止されている。
なお、深さ調節ねじ110の後端部には突起が設けられており、設定ダイヤル128に設けられたスリットと係合している。これにより、設定ダイヤル128を回転させることにより、深さ調節ねじ110を回転させることができる。なお、深さ調節ねじ110は設定ダイヤル128に固定されておらず、出力ロッド96ならびに出力ロッド96に取り付けられている穿刺止めシリンダ108および深さ調節ねじ110は設定ダイヤル128と独立して軸方向に自由に動くことが可能とされている。
これにより、ハウジング74の後端部に設けられた設定ダイヤル128を回転させることにより、深さ調節ねじ110が連動して回転する。更に、深さ調節ねじ110は、穿刺止めシリンダ108に対して、雌ねじ118と雄ねじ122を介して取り付けられていることから、深さ調節ねじ110を回転させることにより、穿刺止めシリンダ108が軸方向に相対移動させられる。この結果、出力ロッド96の先端と穿刺止めシリンダ108の先端との軸方向距離を変化させることができる。
また、プッシュロッド124の後端部分には、第1のばね134が外挿されている。第1のばね134は、圧縮コイルスプリングであって、出力ロッド96を後端部側に移動させた場合に付勢されるように配置されている。具体的には、第1のばね134はプッシュロッド124を案内棒として、出力ロッド96の後端に設けられた保護ワッシャー136を先端側のばね座とする一方、排出スイッチ126を後端側のばね座として取り付けられている。即ち、第1のばね134が出力ロッド96と排出スイッチ126の軸方向間に挟み込まれて設けられている。
さらに、プッシュロッド124の軸方向中間部分には第2のばね138が外挿されている。具体的には、第2のばね138は、プッシュロッド124の外側に位置する穿刺止めシリンダ108の中間部116に外挿されており、当該中間部116を案内棒として、穿刺止めシリンダ108の後端部114を後端側のばね座とする一方、ハウジング74に設けられた中間壁140を先端側のばね座として取り付けられている。この第2のばね138は、出力ロッド96を先端側に移動させた場合に付勢されるように配置されている。
一方、ハウジング本体76に形成された操作窓80には、操作部材142が取り付けられている。操作部材142は、操作窓80から外部に露出する操作ボタン144と、操作ボタン144と一体形成されて前後に延び出す位置決め片146とを備えている。また、操作部材142は、板状のロック片148を備えている。このロック片148は、操作ボタン144の前部から下方に延び出しており、中間部分が後方に向かって次第に下傾する傾斜部150とされていると共に、前後両端部が略軸方向に広がっている。更に、傾斜部150の後端部分には、幅方向の中央部分で下面に開口する当接凹所152が形成されている。当接凹所152は、上底面の前部が略軸方向に広がっていると共に、上底面の後部が後方に向かって次第に下傾する案内面とされており、第1のロック突起100を差入れ可能とされている。
この操作部材142は、位置決め片146が、操作窓80から差し入れられて、ハウジング本体76の内周面に重ね合わされていると共に、ハウジング本体76に取り付けられる支軸154によって、ロック片148の前部が下方から支持されている。支軸154は、小径の円柱形状であって、軸方向両端部がハウジング本体76に支持されて、幅方向に延びている。そして、支軸154には、操作部材142のロック片148が上方から重ね合わされており、傾斜部150の前端が支軸154で支持されている。これにより、操作ボタン144を押圧することで、ロック片148が支軸154を中心として傾動して、ロック片148の後端が、出力ロッド96に対して、上方に離隔変位するようになっている。また、図12に示されるように、ランセット10が装着されていない穿刺器具本体70の単体では、第1のロック突起100が当接凹所152に差し入れられている。
かくの如き構造とされた穿刺器具本体70には、穿刺器具72の使用前に、本発明に係るランセット10が取り付けられる。即ち、図13に示すように、穿刺器具本体70に対してランセット10を前方から接近させて、穿刺器具本体70の前端開口にランセット10を挿入することで、ランセット10がハウジング74に収容される。なお、この際、プロテクタ14の外周面に設けられたガタツキ防止用突起49がプロテクタホルダ78の内周面に当接することで、安定してランセット10がプロテクタホルダ78内に保持される。穿刺器具本体70の先端開口にランセット10が挿入されることで、出力ロッド96の二股状の前端部がハブ18の後端部によって押し開かれて、出力ロッド96の前端に設けられた連結凸部104が、ハブ18の連結凹溝22に差し入れられて、軸方向に係合される。これにより、ランセット本体12と出力ロッド96が、軸方向で一体的に移動するように連結される。
また、ランセット10を後方に向かって更に押し込むことで、出力ロッド96が後方に移動して、第1のばね134が軸方向に圧縮される。また、第1のロック突起100が、ロック片148を押し上げながら移動して、ロック片148よりも後方に位置することで、第1のロック突起100の前端が、ロック片148の後端に対して軸方向で係止される。これにより、出力ロッド96の前方への移動が、ロック片148によって制限されて、第1のばね134が圧縮された状態に保持される。その結果、図13に示すランセット10の装着状態において、出力ロッド96およびそれに連結されるランセット本体12が、第1のばね134の弾性による前方への付勢力を及ぼされた穿刺準備位置に保持される。
なお、穿刺器具本体70の先端開口部からランセット10を挿入して出力ロッド96が後方に押圧されることにより、出力ロッド96の先端は、初期位置P1よりも後端側の穿刺準備位置P2に移動する。
さらに、ランセット10のプロテクタ14は、後端部がハウジング74のプロテクタホルダ78に設けられた係合凸部88に当接することで、可撓片86を外周側に押し広げながらプロテクタホルダ78に挿入される。そして、ランセット10を更に押し込んで、係合凸部88を第1の係止孔54の開口部分にまで移動させると、図13に示すように、可撓片86の弾性によって、係合凸部88が第1の係止孔54に入り込んで軸方向に係止される。これらによって、プロテクタ14が、プロテクタホルダ78に対して軸方向で位置決めされて、ハウジング74に取り付けられる。
更にまた、係合凸部88が第1の係止孔54に差し入れられることにより、弾性係止片24の係合部26が、係合凸部88によって内周側に押し込まれて、係合部26と第1の係止孔54との係止が解除される。これにより、ランセット本体12とプロテクタ14の位置決めが解除されて、ランセット本体12がプロテクタ14に対する軸方向の相対変位を許容される。このことからも明らかなように、第1の係止孔54,54に差し入れられる2つの係合凸部88,88によって、本実施形態の解除突起が構成されている。
このようにしてランセット10が穿刺器具本体70に装着された状態で、ランセット10の穿刺針16による穿刺が行われる。以下、図14,15を参照しながら、穿刺器具70の穿刺作動について説明する。
先ず、ランセット10を穿刺器具本体72に装着された穿刺器具70において、ランセット本体12のキャップ20をハブ18から取り外して、穿刺針16の先端を露出させる。
なお、ランセット10のキャップ20をハブ18から取り外す方法は、前述の通りであるが、ランセット10のハブ18が、穿刺器具本体72の出力ロッド96に連結されて、回転不能に支持されることから、穿刺器具本体72を把持しながら、把持部32を摘んでキャップ20を周方向に回転させることで、キャップ20をプロテクタ14およびハブ18に対して相対回転させることができる。そして、ガイド部38の傾斜面40と嵌合凹部60の傾斜面64の案内作用による軸方向の分力を発生させて、かかる分力を脆弱部28に軸方向の引張力として及ぼすことで、脆弱部28が破断されてキャップ20が取り外される。また、係合凸部88が第1の係止孔54に差し入れられることにより、ランセット本体12のハブ18とプロテクタ14との軸方向での位置決めが解除された状態においても、弾性係止片24,24の前端部分に設けられた突出片25,25がプロテクタ14に設けられた凹溝66,66に入り込んでいることから、キャップ20を取り外す際に、ハブ18がキャップ20と共に回転するのを、より効果的に防ぐことができる。
次に、ランセット10(プロテクタ14)の先端を患者の穿刺部分の皮膚に当てながら、操作部材142の操作ボタン144を押下することで、ロック片148の後端を出力ロッド96から離れるように変位させて、ロック片148の後端と第1のロック突起100との係止を解除する。これにより、図14に示すように、出力ロッド96が第1のばね134の付勢力に基づいて前方に変位して、穿刺針16がプロテクタ14の先端開口から前方に突出し、患者の皮膚に瞬間的に穿刺される。
かかる穿刺状態においては、出力ロッド96、穿刺止めシリンダ108、深さ調節ねじ110が一体的に先端方向へ移動して、出力ロッド96の先端位置が穿刺準備位置P2から穿刺位置P3に移動する。
さらに、出力ロッド96と共に穿刺止めシリンダ108が前進することで、穿刺止めシリンダ108の中間部116に外挿された第2のばね138が、穿刺止めシリンダ108の後端部114とハウジング本体76の中間壁140との軸方向間で圧縮される。これにより、穿刺時の出力ロッド96、穿刺止めシリンダ108および深さ調節ねじ110には、第2のばね138の弾性に基づく後方への付勢力が及ぼされている。
ここにおいて、穿刺動作の際における穿刺針16の移動量は、穿刺準備状態における出力ロッド96の先端位置P2と穿刺状態における出力ロッド96の先端位置P3との離隔距離に等しい。そして、穿刺準備状態における出力ロッド96の先端位置P2は、出力ロッド96の第1のロック突起100が操作部材142のロック片148に係止されることで規定される位置である。このため、穿刺準備位置P2は、穿刺止めシリンダ108の位置に拘らず、一定の位置とされる。
一方、穿刺状態における出力ロッド96の先端位置P3は、穿刺止めシリンダ108の先端部112が阻止部120に当接して、穿刺止めシリンダ108の移動が阻止されることで規定される位置である。このため、設定ダイヤル128を回転させて、穿刺止めシリンダ108を先端側に移動させると、先端部112から阻止部120までの距離が短くなることから穿刺動作の際における出力ロッド96の移動量が小さくなり、穿刺位置P3は後方に移動する。それに対して、穿刺止めシリンダ108を後端側に移動させると、先端部112から阻止部120までの距離が長くなることから、穿刺動作の際における出力ロッド96の移動量が大きくなり、穿刺位置P3は先端側に移動する。このように、本実施形態の穿刺器具72では、穿刺止めシリンダ108の位置を軸方向で移動させることにより、穿刺状態における出力ロッド108の先端位置P3、ひいては穿刺深さを制御することができる。
そして、穿刺が完了すると、図15に示すように、出力ロッド96が第2のばね138の付勢力によって後方に変位して、穿刺針16がプロテクタ14の内周に速やかに収容される。
ここにおいて、ランセット本体12は、穿刺前の初期位置まで戻ることなく、初期位置よりも前方の再使用防止位置で保持されるようになっている。この際、出力ロッド96の先端は、図15に示すように、終了位置P4に位置している。即ち、第2のばね138の弾性による後方への付勢力によって、出力ロッド96およびランセット本体12が穿刺位置から後方に移動すると、図15に示すように、ランセット本体12の弾性係止片24の係合部26が、第1の係止孔54まで戻ることなく、第2の係止孔56に入り込んで係止される。これにより、ランセット本体12は、穿刺作動前に比して前方に位置せしめられた状態で、プロテクタ14に対して軸方向で位置決め保持される。換言すれば、出力ロッド96の先端位置は、穿刺準備位置P2まで後退せず、穿刺準備位置P2よりも先端側の終了位置P4で停止する。本実施形態では、第1の係止孔54と第2の係止孔56との間に規制突起58が形成されており、係合部26が、規制突起58の前面に当接することで、第1の係止孔54まで戻ることなく、第2の係止孔56に入り込むようになっている。
なお、穿刺完了後における弾性係止片24の係合部26と第2の係止孔56との係合時には、弾性係止片24の係合部26が第2の係止孔56に入り込んで、プロテクタ14に対するランセット本体12の後退移動が阻止されていればよい。それ故、係合部26の第2の係止孔56への入り込みによる係止状態では、弾性係止片24に圧縮力や嵌着力が及ぼされている必要はなく、第2の係止孔56内で係合部26に遊びが設定されて、ランセット本体12がプロテクタ14に対してがたつきをもって組み付けられていてもよい。
かかる再使用防止位置では、ランセット本体12とそれに連結された出力ロッド96が、穿刺前よりも前方に位置していることで、第1のロック突起100がロック片148の後端よりも前方に位置している。要するに、出力ロッド96が、ランセット10を装着する前の穿刺器具本体70の単体状態と略同じ位置にあって、出力ロッド96に対して第1のばね134による付勢力が作用していない。それ故、穿刺後に操作ボタン144を再度押下しても、穿刺作動は生じない。
次に、排出スイッチ126を前方へ押し込んで、プッシュロッド124を出力ロッド96に対して相対的に前進させる。これにより、プッシュロッド124の前端を出力ロッド96のロッド当接部106,106の間に差し入れて、出力ロッド96の前端部分を上下に離隔するように変形させることで、連結凸部104,104とハブ18の連結凹溝22,22との嵌合を解除する。
さらに、プッシュロッド124を前方に押し込むことで、プッシュロッド124の先端側に形成された幅広矩形状部156(図16参照)がプロテクタ14の後端に当接する。これにより、プロテクタ14に前向きの力が及ぼされて、係合凸部88と第1の係止孔54との係止が解除されると共に、プロテクタ14がプロテクタホルダ78に対して相対的に前方に押し出される。これにより、使用済みランセットが穿刺器具本体70から排出されて、廃棄処分される。なお、プロテクタ14とプロテクタホルダ78の係止が解除された状態で、使用済みランセットが穿刺器具本体70から排出されずに引っ掛かる場合には、手指などでプロテクタ14を摘んで抜き取ることも可能であり、その場合にも、穿刺針16の先端がプロテクタ14に収容されていることから、穿刺針16で手指などを傷付けるおそれがない。
また、本実施形態の穿刺器具72では、使用済みランセットの再使用が防止されている。即ち、使用済みランセットでは、弾性係止片24の係合部26が、第2の係止孔56に差し入れられており、ランセット本体12が、使用前に比して、プロテクタ14に対して前方に位置している。これにより、使用済みランセットを穿刺器具本体70の先端開口から挿入して後方に押し込んでも、出力ロッド96を後進させて第1のロック突起100の前面とロック片148の後面とを係止させることができず、第1のばね134を圧縮状態に保持することができなくなっている。それ故、第1のばね134の弾性復元力によって出力ロッド96を前向きに変位させることはできず、上記の如き穿刺作動が成立し得ないようになっているのである。なお、使用済みランセットを誤って穿刺器具本体70に装着した場合には、排出スイッチ126を押し込むことで、使用済みランセットを穿刺器具本体70から取り外すことができる。
このように、本実施形態の穿刺器具72によれば、穿刺前と穿刺後では、ランセット本体12とプロテクタ14との相対位置が変化するようになっており、使用済みのランセットを穿刺器具本体70にセットして再穿刺することは不可能とされている。それ故、再穿刺を防止することで、感染症などの問題を回避して、衛生的な利用を実現することができる。
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、本発明に係るランセット10が装着される穿刺器具本体は、何等限定されるものではなく、例えば前記実施形態における穿刺器具本体72において、穿刺深さ調節機構は備えていなくてもよい。
また、前記実施形態では、係止爪46と環状突起50とから構成される離脱制限機構がプロテクタ14の外周側に設けられる一方、ガイド部38の傾斜面40と嵌合凹部60の傾斜面64とから構成される離脱機構がプロテクタ14の内周側に設けられていたが、これらはプロテクタ14の外周側と内周側で互いに逆の側に設けられてもよい。また、傾斜面40は、プロテクタ14の薄肉周壁部(嵌合凹部)60の内周面に肉盛状に厚肉部62を形成することによって設けられていたが、プロテクタ14の周壁部を部分的に抉るようにして薄肉として境界部分の段差で傾斜面を構成することも可能である。
更にまた、周方向に延びる環状突起50の代わりに、プロテクタ14の外周面を周方向に一周以下の長さで延びる周方向溝を形成し、該周方向溝の側壁面の段差に対して係止爪46を係止させることで離脱制限機構を構成することも可能である。なお、その際には、周方向溝の一方の周方向端部において軸方向の先端側に延びて係止爪46の軸方向離脱を許容する軸方向溝も併せて設けるようにすれば良い。
さらに、前記実施形態では、キャップ20から支持片44がプロテクタ14側に延び出して、支持片44の先端に設けられた係止爪46と環状突起50が係合していたが、支持片44は、プロテクタ14からキャップ20側に延び出していてもよい。
また、図16には、本発明のランセット10が装着され得る穿刺器具本体の別の態様が示されており、図16のように第1のばね134を廃棄用ばね158と穿刺用ばね160とに分けてもよい。即ち、ランセット10の穿刺器具本体への装着時には、出力ロッド96が基端側へ押し込まれることにより穿刺用ばね160が軸方向で圧縮されて出力ロッド96およびランセット10に対して前方への付勢力が及ぼされる。一方、ランセット10の廃棄時には、排出スイッチ126を廃棄用ばね158の付勢力に抗して押し込むことでプッシュロッド124が前方に押し出されて、使用済みランセットが廃棄され得る。このように、第1のばね134を廃棄用ばね158と穿刺用ばね160とに分割することで、各ばねの力の調整をより容易にすることができる。また、廃棄用ばね158と穿刺用ばね160の間にばね仕切板162を設けて、一方のばねが圧縮された場合に他方のばねに圧縮等の影響が及ばないようにすることで、全体としてのばねの力をより容易に設定することができる。なお、図16に示される態様において、前記実施形態と同一の部材および部位については、図中に、前記実施形態と同一の符号を付すことにより詳細な説明を省略する。
さらに、前記実施形態では、キャップ20をプロテクタ14に対して220°回転させた時点で軸方向に離脱するようにされていたが、この角度は限定されるものではなく、各部材の材質や形状等によって適宜変更され得る。また、キャップ20とプロテクタ14との係止解除に必要なキャップ20の回転角度が周方向で半周以下とされる場合には、周上に複数の離脱制限機構や離脱機構を設けることも可能である。
更にまた、前記実施形態では、ガイド部38の傾斜面40と嵌合凹部60の傾斜面64とにより、キャップ20を取り外す離脱機構が構成されていたが、それぞれが傾斜面である必要はなく、一方が突起等で形成されて他方の傾斜面に点当りで当接するようにしてもよい。
また、例えば穿刺器具のハウジング側面に貫通孔を設けると共に、出力ロッドや穿刺止めシリンダ、深さ調節ねじの何れかの外周面にマークを設けて、初期状態では貫通孔からマークが視認不能とされると共に、穿刺器具本体にランセットを装着して出力ロッド等が後退移動した際に、貫通孔からマークが視認可能とされるようにしてもよい。これにより、例えば穿刺器具本体にランセットが装着されているか否かを穿刺器具の側面から容易に確認することができる。尤も、初期状態でマークが視認可能とされる一方、ランセット装着状態においてマークが視認不能となるようにしてもよいし、初期状態とランセット装着状態において視認可能なマークが切り換わるようにしてもよい。
なお、穿刺器具におけるハウジングの材質は何等限定されるものではないが、アルコールによる消毒を可能とするために、耐アルコール性を有する合成樹脂で形成されることが好ましい。