(発明が解決しようとする課題)
上記特許文献1に記載のドアチェック装置によれば、圧電素子への通電を制御するための制御装置が必要である。よって、制御が複雑化するとともにコストアップする。そこで、本発明は、構造が簡易であり、且つ比較的安価に構成することができるとともに、任意の開度位置にて大きな保持力を発生させることができるドアチェック装置を提供することを目的とする。また、本発明は、ドアチェック装置に利用できる弁装置であって、簡易で且つ安価に構成することができる弁装置を提供することを目的とする。
(課題を解決するための手段)
本発明は、構造体(B)に形成された開口を開閉可能なドア(DR)に取付けられ、内部に流体が封入されるとともに、一方端面(2a)に貫通孔(21)が形成された筒状部材(2)と、一方端にて構造体に揺動可能に連結されるとともに、筒状部材に形成された貫通孔を経由して軸方向移動可能に筒状部材内に挿通されるロッド部材(3)と、磁性体により構成され、筒状部材内に移動可能に配設され、筒状部材内にてロッド部材に接続され、筒状部材の側周面に周方向に亘り接触することによって筒状部材の内部空間を第1空間(S1)と第2空間(S2)とに液密的に区画するとともに、第1空間と第2空間とを連通する第1連通孔(42a)及び第2連通孔(42b)が形成されたピストン部材(4(41,42、43))と、第1連通孔の第1空間への開口面を塞ぐことができるように第1空間内に配設された第1弁体(51)及び、第1弁体に一体的に移動可能に取り付けられた第1永久磁石(52)を有する第1バルブユニット(5)と、筒状部材内に配設され、第1弁体が第1連通孔から離れる方向に移動したときにおける第1バルブユニットの移動量を制限する第1ストッパ部材(7,7a,11c)と、筒状部材内に配設され、第1弁体が第1連通孔から離れているときに第1永久磁石とピストン部材との間に生じる磁力により第1弁体が第1連通孔に向かうように、第1バルブユニットの移動をガイドする第1ガイド部材(6,11a,11b)と、第2連通孔の第2空間への開口面を塞ぐことができるように第2空間内に配設された第2弁体(81)及び、第2弁体に一体的に移動可能に取り付けられた第2永久磁石(82)を有する第2バルブユニット(8)と、筒状部材内に配設され、第2弁体が第2連通孔から離れる方向に移動したときにおける第2バルブユニットの移動量を制限する第2ストッパ部材(10,10a,12c)と、筒状部材内に配設され、第2弁体が第2連通孔から離れているときに第2永久磁石とピストン部材との間に生じる磁力により第2弁体が第2連通孔に向かうように、第2バルブユニットの移動をガイドする第2ガイド部材(9,12a,12b)と、を備える、ドアチェック装置を提供する。
本発明によれば、ドアの閉動作(又は開動作)に伴いロッド部材がピストン部材に対して軸方向移動すると、第1連通孔(又は第2連通孔)の第1空間(又は第2空間)への開口を塞いでいた第1弁体(又は第2弁体)が第1連通孔(又は第2連通孔)から離れる方向に移動して第1連通孔(又は第2連通孔)が開放される。これにより筒状部材内の第1空間と第2空間が連通される。このときドアの閉動作(又は開動作)に伴って、筒状部材内部の流体が第1空間と第2空間との間を流通する。ドアの閉動作時(又は開動作時)に第1連通孔(又は第2連通孔)を通過する流体の流体抵抗がドアに作用するが、流体抵抗は小さいので、小さい力でドアを閉動作(又は開動作)させることができる。
また、ドアの閉動作(又は開動作)が任意の開度位置にて停止した場合、第1空間と第2空間との間の流体の流通が停止する。すると、第1連通孔(又は第2連通孔)から離れている第1弁体(又は第2弁体)は、第1永久磁石(又は第2永久磁石)とピストン部材との間に生じる磁力により、第1連通孔(又は第2連通孔)に向かう。このとき、第1バルブユニット(又は第2バルブユニット)が、第1ガイド部材(又は第2ガイド部材)によりガイドされながら移動する。そして、第1弁体(又は第2弁体)が第1連通孔(又は第2連通孔)の第1空間(又は第2空間)への開口を塞ぐ。このとき第1永久磁石(又は第2永久磁石)がピストン部材に最も近接する。このため第1弁体(又は第2弁体)に大きな磁力が作用する。斯かる大きな磁力がドアの開閉動作に対する大きな保持力としてドアに作用する。このようにして、任意の開度位置にて大きな保持力を発生させることができる。
このように、本発明によれば、複雑な制御を要することなく、構造が簡易であり、且つ比較的安価に構成することができるとともに、任意の開度位置にて大きな保持力を発生させることができるドアチェック装置を提供することができる。
加えて本発明によれば、ドアの閉動作(又は開動作)に伴って第1弁体(又は第2弁体)が第1連通孔(又は第2連通孔)から離れる方向に移動したときに、第1ストッパ部材(又は第2ストッパ部材)によって第1バルブユニット(又は第2バルブユニット)の移動量が制限される。このため、ドアの閉動作(又は開動作)が停止した際に第1永久磁石(又は第2永久磁石)がピストン部材から離れすぎることによる磁力の低下に起因して、第1弁体(又は第2弁体)が第1連通孔(又は第2連通孔)に近づく方向に移動することが不能になることを防止することができる。
本発明において、「構造体」とは、内部空間を有し、それに取り付けられるドアを開くことによって、人或いは物品が内部空間に出入りすることができる構造物を言う。例えば車体、或いは家屋が、本発明の「構造体」に相当する。
また、本発明において、第1ガイド部材は、第1弁体に接続されるとともに第1弁体が第1連通孔の第1空間への開口を塞いでいるときに第1連通孔を挿通するように第1弁体から延設された第1軸状部材であり、第2ガイド部材は、第2弁体に接続されるとともに第2弁体が第2連通孔の第2空間への開口を塞いでいるときに第2連通孔を挿通するように第2弁体から延設された第2軸状部材である。この場合において、第1軸状部材は、第1ストッパ部材によって第1バルブユニットの移動量が制限されているときにも第1連通孔を挿通するように構成され、第2軸状部材は、第2ストッパ部材によって第2バルブユニットの移動量が制限されているときにも第2連通孔を挿通するように構成されているとよい。
ドアの開閉動作によって第1連通孔(又は第2連通孔)から離れている第1弁体(又は第2弁体)は、ドアの開閉動作が停止した際に第1永久磁石(又は第2永久磁石材)とピストン部材との間に生じる磁力によって、第1連通孔(又は第2連通孔)に向かう方向に移動する。このとき、本発明によれば、第1弁体(又は第2弁体)が、第1連通孔(又は第2連通孔)に挿通され且つ第1弁体(又は第2弁体)に連結された第1軸状部材(又は第2軸状部材)にガイドされることにより、確実に第1連通孔(又は第2連通孔)に向かうように移動することができる。
さらに、第1ガイド部材(又は第2ガイド部材)が第1軸状部材(又は第2軸状部材)のように構成されている場合、以下の作用効果を奏する。ドアの開閉動作中に第1バルブユニット(又は第2バルブユニット)がピストン部材の近くに留まっている場合、第1永久磁石(又は第2永久磁石)とピストン部材との間に生じる磁力によって、ドアの開閉動作中であるにもかかわらず、第1弁体(又は第2弁体)が第1連通孔(又は第2連通孔)に近づき、第1連通孔(又は第2連通孔)の開口を塞ぐ虞がある。ドアの開閉動作中に第1弁体(又は第2弁体)が第1連通孔(又は第2連通孔)の開口を塞いだ場合、急に強い保持力がドアに作用するため、ドアの開閉動作に支障をきたす。
この点に関し、本発明によれば、ドアの開閉動作によって第1弁体(又は第2弁体)が第1連通孔(又は第2連通孔)から離れたときに、第1連通孔(又は第2連通孔)の開口が、第1連通孔(又は第2連通孔)に挿通されている第1軸状部材(又は第2軸状部材)によって部分的に塞がれる。すなわち、第1軸状部材(又は第2軸状部材)によって、第1連通孔(又は第2連通孔)の開口断面積が狭められる。このため、ドアの開閉動作に伴い第1連通孔(又は第2連通孔)を通過する流体の流速が速められる。第1連通孔(又は第2連通孔)を通過する流体の流速が速められた場合、第1連通孔(又は第2連通孔)を通過した流体が第1バルブユニット(又は第2バルブユニット)に勢いよく衝突することにより、第1バルブユニット(又は第2バルブユニット)がピストン部材から一気に遠ざけられる。磁力は距離の二乗に反比例するため、第1バルブユニット(又は第2バルブユニット)がピストン部材から遠ざけられた場合に第1バルブユニット(又は第2バルブユニット)とピストン部材との間に生じる磁力は弱い。このため、ドアの開閉動作中に磁力によって第1弁体(又は第2弁体)が第1連通孔(又は第2連通孔)に近づくことを防止できる。その結果、ドアの開閉動作中に第1弁体(又は第2弁体)が第1連通孔(又は第2連通孔)の開口を塞いでしまうことが防止される。
本発明において、「第1(第2)軸状部材」とは、一方端部(基端部)及び他方端部(先端部)を有する長尺状の部材を表す。この場合、第1軸状部材は、第1弁体に接続されている側の端部(基端部)からその反対側の先端部に向かうにつれて軸方向に垂直な断面積が減少するように形成されるとよい。また、第2軸状部材は、第2弁体に接続されている側の端部(基端部)からその反対側の先端部に向かうにつれて軸方向に垂直な断面積が減少するように形成されるとよい。
第1弁体(又は第2弁体)が第1連通孔(又は第2連通孔)から離れた直後においては、第1軸状部材(又は第2軸状部材)の基端部側の部分が第1連通孔(又は第2連通孔)を挿通している。この場合において、第1軸状部材(又は第2軸状部材)の基端部側の断面積は大きいため、第1軸状部材(又は第2軸状部材)が第1連通孔(又は第2連通孔)の第1空間(又は第2空間)への開口を塞ぐ領域が広い。つまり、第1連通孔(又は第2連通孔)の開口断面積が狭くされる。このため、第1連通孔(又は第2連通孔)を通過する流体の流速が速められる。よって、第1弁体(又は第2弁体)が第1連通孔(又は第2連通孔)から離れた直後に、第1バルブユニット(又は第2バルブユニット)が一気にピストン部材から遠ざけられる。また、所定距離だけ第1バルブユニット(又は第2バルブユニット)がピストン部材から遠ざけられたときには、第1軸状部材(又は第2軸状部材)の先端部側の部分が第1連通孔(又は第2連通孔)を挿通している。第1軸状部材(又は第2軸状部材)の先端部側の断面積は小さいため、第1連通孔(又は第2連通孔)の開口断面積が比較的広くされる。このため、ドアの開閉動作中に第1連通孔(又は第2連通孔)を通過する流体の流体抵抗力を小さくすることができる。その結果、ドアをより一層スムーズに開閉させることができる。
また、本発明において、第1ストッパ部材は、第2空間内に配設されるとともに第1軸状部材の先端部に取り付けられ、第1連通孔の径よりも大きい長さを有し、第1弁体が第1連通孔から離れる方向に移動したときに第2空間側から第1連通孔の周縁に係合することにより第1バルブユニットの移動量を制限するとともに、第1連通孔の周縁に係合しているときに第1連通孔の第2空間への開口を塞がないような形状に形成されるとよい。また、第2ストッパ部材は、第1空間内に配設されるとともに第2軸状部材の先端部に取り付けられ、第2連通孔の径よりも大きい長さを有し、第2弁体が第2連通孔から離れる方向に移動したときに第1空間側から第2連通孔の周縁に係合することにより第2バルブユニットの移動量を制限するとともに、第2連通孔の周縁に係合しているときに第2連通孔の第1空間への開口を塞がないような形状に形成されるとよい。
これによれば、第1弁体、第1軸状部材、及び第1ストッパ部材を一体的に形成することができる。また、第2弁体、第2軸状部材、及び第2ストッパ部材を一体的に形成することができる。
また、本発明は、磁性体により構成されるとともに開口(42a)が形成された弁座部材(42)と、弁座部材に当接したときに開口を塞ぐことができるように構成された弁体(51)及び、弁体に一体的に移動可能に取り付けられた永久磁石(52)を有するバルブユニット(5)と、弁体が開口から離れる方向に移動したときにおけるバルブユニットの移動量を制限するストッパ部材(7,7a,11c)と、弁体が開口から離れているときに永久磁石と弁座部材との間に生じる磁力により弁体が開口に向かうように、バルブユニットの移動をガイドするガイド部材(6)と、を備え、ガイド部材は、弁体に接続されるとともに弁体が開口を塞いでいるときに開口を挿通するように弁体から延設された軸状部材である、弁装置を提供する。これによれば、簡易で且つ安価な構成の弁装置を提供することができる。
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態においては、車両に適用されるドアチェック装置について説明する。図1は本実施形態に係るドアチェック装置100が搭載される車両の概略図である。図1に示す車両Vは車体B(構造体)および車両ドアDRを備える。車体Bの側方部に乗降用の開口OPが形成される。開口OPの周縁のうち車両前方側の縁部(前縁部)FEに、一対のドアヒンジH,Hが上下方向に沿って取り付けられる。一対のドアヒンジH,Hを介して、車両ドアDRが車体Bに揺動可能に連結される。従って、車両ドアDRは、車体Bに形成された開口OPを開閉可能に車体Bに取り付けられる。
図2は図1のA部を詳細に示す図である。図2に示すように、一対のドアヒンジH,Hは、それぞれ同軸のヒンジ軸H1、H1を備える。車両ドアDRの開閉時に、車両ドアDRはヒンジ軸H1,H1を中心として車体Bに対して揺動する。また、前縁部FEにブラケットBRがボルト等の締結手段により固定される。このブラケットBRにピンPを介して、本実施形態に係るドアチェック装置100の構成要素であるロッド部材3の一方端が連結される。一方端が車体Bに揺動可能に連結されたロッド部材3は、車両ドアDRの全閉時に車体Bの前縁部FEに対面する部分である車両ドアDRの前端部DEに形成された孔Sを経由して、車両ドアDR内に延出される。
図3は、ドアチェック装置100の概略斜視図である。このドアチェック装置100は、車体Bと車両ドアDRとの間に設けられ、車両ドアDRを開閉する際に保持力を発生する。図3に示すように、ドアチェック装置100は、筒状部材2とロッド部材3とを備える。筒状部材2は非磁性材料(例えば樹脂)により形成される。筒状部材2は、円形の第1壁部2a、第1壁部2aに対面する円形の第2壁部2b、及び、第1壁部2aの周縁と第2壁部2bの周縁をつなぐように円筒状に形成された側周壁部2cを備える。筒状部材2は、これらの壁部によって中空の円筒形状に形成される。この筒状部材2は車両ドアDRに取付けられる。具体的には、筒状部材2は、車両ドアDRを構成するドアパネルの内部空間に配設される。筒状部材2の第1壁部2aの中央部分に、円形の貫通孔21が形成される。第1壁部2aが筒状部材2の一方端面を形成し、第2壁部2bが筒状部材の他方端面を形成する。
ロッド部材3は非磁性材料(例えば樹脂)により形成されており、上記したようにその一方端が車体Bに揺動可能に連結されるとともに、貫通孔21を経由して筒状部材2内に挿入される。ロッド部材3は、車両ドアDRの開閉動作に応じて車体Bに対して揺動可能に構成されるとともに、筒状部材2に対して軸方向に相対移動可能に構成される。車両ドアDRが閉動作する場合、ロッド部材3は筒状部材2内に進入し、車両ドアDRが開動作する場合、ロッド部材3は筒状部材2から引き出される。なお、ロッド部材3の揺動中心位置と車両ドアDRの揺動中心位置は異なるので、車両ドアDRが開閉した場合にロッド部材3が車両ドアDRに対して揺動しながら軸方向移動する。このため、ロッド部材3の車両ドアDRに対する揺動に伴って筒状部材2がロッド部材3とともに揺動することができるように、筒状部材2は車両ドアDRに揺動可能に取り付けられているとよい。
図4は、車両ドアDRに取り付けられたドアチェック装置100を上下方向及びロッド部材3の軸方向に平行な平面で切断した概略断面図である。図4に示すように、筒状部材2は、その第1壁部2aが車両ドアDRの前端部DEに面するように、車両ドアDR内に配設される。
筒状部材2の内部空間にアキュムレータ13が配設される。アキュムレータ13は、アキュムレータピストン131、バネ132、及び第1シールリング133(Oリング)を備える。アキュムレータピストン131は円柱形状をなしており、その側周面が筒状部材2の側周壁部2cの内壁面に対面するように筒状部材2の内部に配設される。バネ132は、図4においてアキュムレータピストン131の右側の端面と、筒状部材2の第2壁部2bの内壁面との間に配設されており、アキュムレータピストン131に弾性力を付与する。アキュムレータピストン131の側周面に周方向に亘り溝が形成されており、この溝内に第1シールリング133が設けられる。アキュムレータピストン131及び第1シールリング133によって、筒状部材2の内部空間が、流体封入空間Sと体積補償空間Pとに液密的に区画される。流体封入空間Sに粘性流体が封入され、体積補償空間Pには気体が封入される。
図4からわかるように、ロッド部材3は、貫通孔21を経由して、筒状部材2内の流体封入空間S内に進入している。アキュムレータピストン131は、筒状部材2内の流体封入空間Sにロッド部材3が進退することによって生じる流体封入空間S内の空間容積の増減に応じて移動する。
また、筒状部材2内の流体封入空間S内に、ピストン部材4が移動可能に配設される。本実施形態において、ピストン部材4は、ピストンケース41、バルブプレート42、及び第2シールリング43(Oリング)を有する。ピストンケース41は非磁性材料(例えば樹脂)により中空円筒形状に形成される。ピストンケース41は、その一方端面を形成する円板状の第1壁部41aと、その他方端面を形成する円板状の第2壁部41bと、第1壁部41aの周縁と第2壁部41bの周縁をつなぐように筒状に形成された側周壁部41cとを有する。ピストンケース41は筒状部材2内の流体封入空間S内に筒状部材2と同軸的に配設される。また、ピストンケース41の側周壁部41cの外壁面が筒状部材2の側周壁部2cの内壁面に対面し、ピストンケース41の第1壁部41aが筒状部材2の第1壁部2aに対面し、ピストンケース41の第2壁部41bがアキュムレータピストン131の前面(図4において左端面)に対面する。そして、筒状部材2の第1壁部2aに形成された貫通孔21を経由して流体封入空間Sに進入したロッド部材3の先端が、筒状部材2内にてピストンケース41の第1壁部41aに接続される。
ピストンケース41の側周壁部41cの外壁面に周方向に亘り溝が形成され、この溝内に第2シールリング43が設けられる。第2シールリング43が、筒状部材2の側周壁部2cの内壁面に周方向に亘って液密的に接触することによって、筒状部材2の内部空間のうち流体封入空間Sが、第1空間S1と第2空間S2とに区画される。
ピストンケース41の第1壁部41a及び第2壁部41bに、貫通孔41d,41eが、それぞれ形成される。また、ピストンケース41の内部空間を軸方向に沿って2つの空間に液密的に分割するように、ピストンケース41内に円板状のバルブプレート42が配設される。バルブプレート42によって仕切られたピストンケース41の内部空間のうち、図4において左側の空間が、ピストンケース41の第1壁部41aに形成された貫通孔41dを経由して第1空間S1に連通する。同様に、バルブプレート42によって仕切られたピストンケース41の内部空間のうち、図4において右側の空間が、ピストンケース41の第2壁部41bに形成された貫通孔41eを経由して第2空間S2に連通する。つまり、バルブプレート42によって仕切られたピストンケース41内の空間のうち、図4において左側の空間は第1空間S1であり、右側の空間は第2空間S2である。換言すれば、バルブプレート42により第1空間S1と第2空間S2が区画される。バルブプレート42は、磁性材料(例えば鉄)により形成される。
図4に示すように、バルブプレート42には、第1連通孔42a及び第2連通孔42bが形成される。第1連通孔42a及び第2連通孔42bは、それぞれ、バルブプレート42上の異なる位置に形成される。第1連通孔42a及び第2連通孔42bは、それぞれ、バルブプレート42によって仕切られた2つの空間を連通するように、すなわち第1空間S1と第2空間S2とを連通するように、バルブプレート42に形成される。
ピストンケース41内に、第1バルブユニット5、第1ニードル部材6(第1ガイド部材、第1軸状部材)、第1ストッパ部材7、第2バルブユニット8、第2ニードル部材9(第2ガイド部材、第2軸状部材)、及び第2ストッパ部材10が、配設される。
図5は、ピストンケース41内に配設される構成を示す拡大断面図である。図5に示すように、第1バルブユニット5は、第1弁体51と、第1永久磁石52と、第1ヨーク53と、第1樹脂カバー54とを備える。第1バルブユニット5は、バルブプレート42で仕切られたピストンケース41内の空間のうち、図4において左側の空間、すなわち第1空間S1内に配設される。
第1弁体51は円柱状に形成される。第1弁体51の直径は第1連通孔42aの直径よりも大きい。そして、第1弁体51は、その一方の端面が第1連通孔42aの第1空間S1への開口面に押し付けられることにより第1連通孔42aの第1空間S1への開口を塞ぐことができるように、第1空間S1内に配設されている。
第1弁体51の他方の端面側に第1永久磁石52が取り付けられる。第1永久磁石52は本実施形態においては直方体状に形成されており、図5において上側の面がN極面であり下側の面がS極面である。また、第1ヨーク53は透磁率の高い磁性体(例えば鉄)により形成される。第1ヨーク53は、一対のアーム部材53a,53bからなり、一方のアーム部材53aが第1永久磁石52のN極面に接触し、他方のアーム部材53bが第1永久磁石52のS極面に接触するように、それぞれのアーム部材53a,53bが配設される。このため、一対のアーム部材53a,53bによって、第1永久磁石52が挟まれる。
一方のアーム部材53aは、第1永久磁石52のN極面との接触部位から図5において上方に延び、その上方端から図5の右方、すなわちバルブプレート42に近づく方向に延びるように形成される。他方のアーム部材53bは、第1永久磁石52のS極面との接触部位から図5において下方に延び、その下方端から図5の右方、すなわちバルブプレート42に近づく方向に延びるように形成される。そのため、第1永久磁石52及び第1ヨーク53によって、U字形状の磁力発生部材が構成される。一方のアーム部材53aのうち図5の右方に延びている部分と、他方のアーム部材53bのうち図5の右方に延びている部分との間に、第1弁体51が挟まれる。
図5に示す如く第1バルブユニット5が配設されている場合には、第1ヨーク53を構成する一対のアーム部材53a,53bの先端面(バルブプレート42に向かって延びている側の面)が、それぞれ、バルブプレート42に接触している。従って、第1永久磁石52から発せられる磁束が第1ヨーク53及びバルブプレート42を通るように磁路が形成される。このため、第1永久磁石52とバルブプレート42との間に生じる磁力により第1バルブユニット5がバルブプレート42に吸引される。また、磁力により第1弁体51が付勢されて第1連通孔42aの第1空間S1への開口縁に押し付けられる。このようにして、磁力によって第1弁体51が第1連通孔42aの第1空間S1への開口を塞いでいる。
第1ヨーク53を囲むように、第1樹脂カバー54が配設される。この第1樹脂カバー54によって、第1弁体51、第1永久磁石52、及び第1ヨーク53が一体的に移動可能なように保持される。
第1弁体51の一方の端面(第1連通孔42aに対面している側の端面)に、第1ニードル部材6が設けられる。第1ニードル部材6は、基端部6a及びその反対側の先端部6bを有する長尺状(軸状)に形成され、基端部6aにて第1弁体51の一方の端面に接続される。第1ニードル部材6は、第1弁体51が第1連通孔42aの第1空間S1への開口を塞いでいるときに、第1連通孔42aを挿通するとともに、その先端部6b側の部分が第1連通孔42aを突き抜けてその先の第2空間S2にまで延出するように構成される。第1ニードル部材6は、その基端部6a側から先端部6b側に向かうにつれて、軸方向に垂直な断面積が減少するように、つまり、先細りのテーパ形状に、形成される。本実施形態においては、第1ニードル部材6は、略円錐形状に形成される。また、本実施形態においては、第1ニードル部材6の基端部6aの直径は、第1連通孔42aの第1空間S1への開口面の直径にほぼ等しい。第1ニードル部材6が図5に示す位置から左方に移動した場合、すなわち、第1弁体51が図5に示す位置から第1連通孔42aを離れて左方に移動した場合、第1連通孔42aの第1空間S1への開口縁と第1ニードル部材6との間にリング状の隙間が形成される。この隙間を通じて第1空間S1と第2空間S2が連通される。
第1ニードル部材6の先端部6bに第1ストッパ部材7が取り付けられる。図6は図5のA方向矢視図であり、第1ストッパ部材7を正面から見た図である。図6に示すように、第1ストッパ部材7は、上下方向に長い直方体形状に形成される。第1ストッパ部材7の長手方向(上下方向)における長さは、第1連通孔42aの直径よりも長い。一方、第1ストッパ部材7の長手方向に垂直な方向における長さは、第1連通孔42aの直径よりも短い。
また、図5に示すように、第2バルブユニット8は、第2弁体81と、第2永久磁石82と、第2ヨーク83と、第2樹脂カバー84とを備える。第2バルブユニット8は、バルブプレート42で仕切られたピストンケース41内の空間のうち、図4において右側の空間、すなわち第2空間S2内に配設される。
第2弁体81は円柱状に形成される。第2弁体81の直径は第2連通孔42bの直径よりも大きい。そして、第2弁体81は、その一方の端面が第2連通孔42bの第2空間S2への開口面に押し付けられることにより第2連通孔42bの第2空間S2への開口を塞ぐことができるように、第2空間S2内に配設されている。
第2弁体81の他方の端面側に第2永久磁石82が取り付けられる。第2永久磁石82は本実施形態においては直方体状に形成されており、図5において上側の面がN極面であり下側の面がS極面である。また、第2ヨーク83は透磁率の高い磁性体(例えば鉄)により形成される。第2ヨーク83は、一対のアーム部材83a,83bからなり、一方のアーム部材83aが第2永久磁石82のN極面に接触し、他方のアーム部材83bが第2永久磁石82のS極面に接触するように、それぞれのアーム部材83a,83bが配設される。このため、一対のアーム部材83a,83bによって、第2永久磁石82が挟まれる。
一方のアーム部材83aは、第2永久磁石82のN極面との接触部位から図5において上方に延び、その上方端から図5の左方、すなわちバルブプレート42に近づく方向に延びるように形成される。他方のアーム部材83bは、第2永久磁石82のS極面との接触部位から図5において下方に延び、その下方端から図5の左方、すなわちバルブプレート42に近づく方向に延びるように形成される。そのため、第2永久磁石82及び第2ヨーク83によって、U字形状の磁力発生部材が構成される。一方のアーム部材83aのうち図5の左方に延びている部分と、他方のアーム部材83bのうち図5の左方に延びている部分との間に、第2弁体81が挟まれる。
図5に示す如く第2バルブユニット8が配設されている場合には、第2ヨーク83を構成する一対のアーム部材83a,83bの先端面(バルブプレート42に向かって延びている側の面)が、それぞれ、バルブプレート42に接触している。従って、第2永久磁石82から発せられる磁束が第2ヨーク83及びバルブプレート42を通るように磁路が形成される。このため、第2永久磁石82とバルブプレート42との間に生じる磁力により第2バルブユニット8がバルブプレート42に吸引される。また、磁力により第2弁体81が付勢されて第2連通孔42bの第2空間S2への開口縁に押し付けられる。このようにして、磁力によって第2弁体81が第2連通孔42bの第2空間S2への開口を塞いでいる。
第2ヨーク83を囲むように、第2樹脂カバー84が配設される。この第2樹脂カバー84によって、第2弁体81、第2永久磁石82、及び第2ヨーク83が一体的に移動可能なように保持される。
第2弁体81の一方の端面(第2連通孔42bに対面している側の端面)に、第2ニードル部材9が設けられる。第2ニードル部材9は、基端部9a及びその反対側の先端部9bを有する長尺状(軸状)に形成され、基端部9aにて第2弁体81の一方の端面に接続される。第2ニードル部材9は、第2弁体81が第2連通孔42bの第2空間S2への開口を塞いでいるときに、第2連通孔42bを挿通するとともに、その先端部9b側の部分が第2連通孔42bを突き抜けてその先の第1空間S1にまで延出するように構成される。第2ニードル部材9は、その基端部9a側から先端部9b側に向かうにつれて、軸方向に垂直な断面積が減少するように、つまり、先細りのテーパ形状に、形成される。本実施形態においては、第2ニードル部材9は、略円錐形状に形成される。また、本実施形態においては、第2ニードル部材9の基端部9aの直径は、第2連通孔42bの第2空間S2への開口面の直径にほぼ等しい。第2ニードル部材9が図5に示す位置から右方に移動した場合、すなわち、第2弁体81が図5に示す位置から第2連通孔42bを離れて右方に移動した場合、第2連通孔42bの第2空間S2への開口縁と第2ニードル部材9との間にリングの隙間が形成される。この隙間を通じて第1空間S1と第2空間S2が連通される。
第2ニードル部材9の先端部9bに第2ストッパ部材10が取り付けられる。図7は図5のB方向矢視図であり、第2ストッパ部材10を正面から見た図である。図7に示すように、第2ストッパ部材10は、上下方向に長い直方体形状に形成される。第2ストッパ部材10の長手方向(上下方向)における長さは、第2連通孔42bの直径よりも長い。一方、第2ストッパ部材10の長手方向に垂直な方向における長さは、第2連通孔42bの直径よりも短い。
第1弁体51、第1ニードル部材6及び第1ストッパ部材7は、非磁性材料により成形される。本実施形態においては、第1弁体51、第1ニードル部材6及び第1ストッパ部材7がゴム材料により一体的に成形される。また、第2弁体81、第2ニードル部材9及び第2ストッパ部材10は、非磁性材料により成形される。本実施形態においては、第2弁体81、第2ニードル部材9及び第2ストッパ部材10がゴム材料により一体的に成形される。弁体、ニードル部材、ストッパ部材は、それぞれ成形された後に組み付けられるように構成されていてもよい。
上記構成のドアチェック装置100において、以下に、その作動について説明する。車両ドアDRが所定の開度位置(全閉位置及び全開位置を含む)にて開閉動作を停止しているときには、図4及び図5に示すように、第1バルブユニット5の第1弁体51が第1連通孔42aの第1空間S1への開口を塞いでおり、第2弁体81が第2連通孔42bの第2空間S2への開口を塞いでいる。つまり、車両ドアDRが所定の開度位置にて開閉動作を停止しているときには、第1バルブユニット5及び第2バルブユニット8が閉成している。このため、第1空間S1と第2空間S2との間における粘性流体の流通が遮断される。また、第1弁体51は、第1永久磁石52とバルブプレート42との間に生じる磁力により第1連通孔42aの第1空間S1への開口に押し付けられる方向に付勢されている。また、第2弁体81は、第2永久磁石82とバルブプレート42との間に生じる磁力によって第2連通孔42bの第2空間S2への開口に押し付けられる方向に付勢されている。
[閉動作]
ドアチェック装置100が図4に示すような作動状態であるときに、ユーザが車両ドアDRを閉じるように車両ドアDRに力(操作力)を加えた場合、その操作力は、ロッド部材3が筒状部材2に対して図4の右方に軸方向移動するための駆動力として、ロッド部材3に伝達される。このような駆動力は、ロッド部材3に接続されたピストン部材4にも伝達される。ピストン部材4が図4の右方に移動するための駆動力を受けた場合、第2空間S2が圧縮されることにより第2空間S2内の圧力P2が上昇し、第1空間S1が膨張されることにより第1空間S1内の圧力P1が低下する。このため第2空間S2内の圧力P2と第1空間S1内の圧力P1との差圧ΔP21(=P2−P1>0)が大きくなる。つまり、車両ドアDRを閉じようとすると、差圧ΔP21が大きくなる。
差圧ΔP21により、第1弁体51は、第1連通孔42aから離れる方向に力(差圧力)を受ける。一方、第1弁体51は、第1永久磁石52からの磁力により第1連通孔42aに押し付けられる方向に付勢されている。従って、差圧力が、第1弁体51に作用している磁力を上回らない限り、第1弁体51が第1連通孔42aから離れない。このとき第1永久磁石52の磁力は、ロッド部材3に加えられている上記駆動力に対する抵抗力として、ロッド部材3に作用する。斯かる抵抗力が、車両ドアDRを閉動作させる際の保持力として、車両ドアDRに作用する。
差圧力が第1永久磁石52の磁力(保持力)よりも大きくなるように車両ドアDRに閉動作方向への大きな操作力を加えることにより、第1弁体51が磁力に抗して第1連通孔42aから離れ、第1弁体51が図4の左方(第1連通孔42aから離れる方向)に移動する。これにより、第1連通孔42aの第1空間S1への開口縁と第1連通孔42a内を挿通している第1ニードル部材6との間にリング状の隙間が形成される。つまり、第1連通孔42aが開放される。すると、第2空間S2内の粘性流体は、差圧ΔP21を小さくするように第1連通孔42aを通って第1空間S1内に流れ込む。
第1連通孔42aが開放された直後の時点においては、第1連通孔42aの第1空間S1への開口面内に第1ニードル部材6の基端部6a側が位置している。第1ニードル部材6は先細りのテーパ状に形成されており、その基端部6aの直径は先端部6bの直径よりも大きい。よって、第1連通孔42aが開放された直後の時点においては、第1連通孔42aの第1空間S1への開口が第1ニードル部材6により塞がれている面積が大きい。すなわち第1連通孔42aの第1空間S1への開口断面積は小さい。小さい開口断面積を通過する粘性流体の流速は高い。よって、第2空間S2内の粘性流体は、第1連通孔42aを速い速度で通過する。こうして速い速度で第1連通孔42aを通過した粘性流体は、第1連通孔42aを離れたばかりの第1バルブユニット5に勢いよく衝突する。その結果、第1バルブユニット5が勢い良く図4の左方に移動し、第1バルブユニット5がバルブプレート42から一気に遠ざけられる。
第1バルブユニット5がバルブプレート42から遠ざけられた場合、第1ニードル部材6が第1連通孔42aから第1空間S1側に引き抜かれように、図4の左方に移動する。第1ニードル部材6の先端部6bには第1ストッパ部材7が取り付けられており、第1ストッパ部材7の長手方向における長さは第1連通孔42aの直径よりも大きい。従って、第1ニードル部材6が図4の左方に所定量だけ移動したときに、第1ストッパ部材7が第1連通孔42aの第2空間S2への開口面の周縁部分を形成するバルブプレート42の壁面に係合する。これにより、第1弁体51が第1連通孔42aから離れる方向に移動するときにおける第1バルブユニット5の移動量が制限される。図8は、第1ストッパ部材7により第1バルブユニット5の移動量が制限されている状態が示された、ドアチェック装置100の概略断面図である。
図8に示す状態では、第1ニードル部材6の先端部6b側の部分が第1連通孔42a内に位置する。上記したように第1ニードル部材6は先細りのテーパ状に形成されており、その先端部6b側の径は第1連通孔42aの直径よりもかなり小さい。すなわち、図8に示す状態であるときにおける、第1連通孔42aの開口断面積は比較的大きい。このため第2空間S2内の粘性流体は、第1連通孔42aを構成する壁面と第1ニードル部材6との間に形成される比較的大きな隙間を通って第1空間S1に流れ込むことができる。
ドアチェック装置100が図8に示す状態であるとき、すなわち第1連通孔42aが開放されているときに、車両ドアDRを閉動作させると、その閉動作に伴ってロッド部材3及びピストン部材4が右方に移動する。図9は、ロッド部材3及びピストン部材4が右方に移動した状態が示された、ドアチェック装置100の概略断面図である。ピストン部材4の右方への移動により、第1空間S1の容積が増加するとともに第2空間S2の容積が減少する。両空間S1,S2の容積変動に応じて、第2空間S2内の粘性流体が図9の矢印で示すように第1連通孔42aを通って第1空間S1内に流れ込む。このとき第1連通孔42aを通る粘性流体の流体抵抗力が車両ドアDRの閉動作に対する抵抗力として車両ドアDRに作用する。しかしながら、図9に示す状態であるときにおける第1連通孔42aの開口断面積は上述したように比較的大きいため、第1連通孔42aを通過する粘性流体の流体抵抗力は比較的小さい。従って、小さな力で車両ドアDRを閉動作させることができる。このように、一旦、第1連通孔42aが開放された後は、車両ドアDRを小さな力で閉じることができる。
ここで、第1ニードル部材6の作用効果について説明する。第1ニードル部材6が設けられていない場合、第1連通孔42aが開放された場合における第1連通孔42aの開口断面積は、第1ニードル部材6が設けられている場合と比べてかなり大きい。そのため第1連通孔42aを通過する粘性流体の流速は遅い。よって、第1連通孔42aを通過した粘性流体が第1バルブユニット5に衝突する力が弱い。つまり、第1バルブユニット5を押し退ける力が弱い。また、第1連通孔42aの開口断面積が大きい場合、差圧ΔP21が急速に低下する。そのため、差圧ΔP21を小さくするように粘性流体が第1連通孔42aから第1空間S1に流れる時間が短い。つまり、第1連通孔42aが開放されたときに第1連通孔42aを通過する粘性流体が第1バルブユニット5を押し退ける時間が短い。以上のことから、第1ニードル部材6が設けられていない場合、第1バルブユニット5は、第1連通孔42aを通過する粘性流体により、弱い力で僅かな時間だけ押し退けられることになる。このため、第1バルブユニット5をさほど遠くまで押し退けることができず、差圧ΔP21がほぼ0になった時点で第1バルブユニット5がバルブプレート42の近くに位置する虞がある。
第1弁体51が第1連通孔42aから離れた場合であっても、第1永久磁石52とバルブプレート42との間に磁力が生じている。この磁力は第1バルブユニット5をバルブプレート42に近づける方向に作用する。磁力は距離の二乗に反比例するため、第1バルブユニット5がバルブプレート42の近くに位置している場合には、第1バルブユニット5に作用する磁力は比較的強い。このため、比較的強い磁力によって第1バルブユニット5がバルブプレート42に引き寄せられて、車両ドアDRが閉動作しているにも関わらず第1弁体51が第1連通孔42aの第1空間S1への開口を塞いでしまう虞がある。つまり、第1ニードル部材6が設けられていない場合、車両ドアDRの閉動作中に、第1弁体51が第1連通孔42aの第1空間S1への開口を塞ぐ虞がある。特に、第1連通孔42aが開放された後に車両ドアDRをゆっくりと閉じる場合には、第1連通孔42aを通過する粘性流体の流体圧が小さいために、磁力が流体圧に勝り、車両ドアDRの閉動作中に第1弁体51が第1連通孔42aの第1空間S1への開口を塞ぐ可能性が高い。このような事態が生じた場合、車両ドアDRの閉動作中に突然大きな保持力が車両ドアDRに作用する結果、車両ドアDRの閉動作に支障をきたす。
この点に関し、本実施形態においては、第1連通孔42aが開放された場合に第1ニードル部材6によって第1連通孔42aが部分的に塞がれる。このため第1連通孔42aの開口断面積が狭められる。開口断面積が狭められた第1連通孔42aを通過する粘性流体の流速は速いため、第1連通孔42aを通過した粘性流体は第1バルブユニット5に勢いよく衝突する。つまり、第1バルブユニット5を押し退ける力が強い。また、第1連通孔42aの開口断面積が狭められることにより、差圧ΔP21が小さくなるまでの時間が長くされる。以上のことから、第1ニードル部材6が設けられている場合、第1バルブユニット5は、第1連通孔42aを通過する粘性流体により強い力で長時間押し退けられることになる。
こうして第1連通孔42aの開放の初期時に粘性流体が第1バルブユニット5に強い力で長い時間衝突することにより、第1バルブユニット5はバルブプレート42から一気に遠ざけられる。第1バルブユニット5がバルブプレート42から一気に遠ざけられた場合、第1永久磁石52とバルブプレート42との間の距離が長くされるため、第1バルブユニット5に作用する磁力は弱い。このような弱い磁力よりも、車両ドアDRが閉動作する際に第1連通孔42aを通って第1空間S1に流れる粘性流体の流体圧の方が大きい。このため、車両ドアDRの閉動作中に、磁力によって第1バルブユニット5がバルブプレート42に引き寄せられて第1弁体51が第1連通孔42aを塞ぐことが防止される。
また、第1ニードル部材6は、その基端部6a側の径が先端部6b側の径よりも大きくなるように、先細りのテーパ形状に形成されている。このため、第1バルブユニット5が一気にバルブプレート42から遠ざけられたときに、第1ニードル部材6のうち径の小さい先端部6b側の部分が第1連通孔42a内に配置することになる。このような配置状態であれば、第1ニードル部材6により第1連通孔42aの開口が塞がれる領域が小さくなり、第1連通孔42aの開口断面積を比較的大きくすることができる。よって、その後に車両ドアDRが閉動作する場合に第1連通孔42aを通過する粘性流体の流体抵抗(流体圧)を小さくすることができる。その結果、一旦、第1連通孔42aが開放された後において、車両ドアDRを小さい力でスムーズに閉じることができるのである。
また、第1バルブユニット5がバルブプレート42から一気に遠ざけられることによって、第1弁体51が第1連通孔42aから離れる方向に移動するが、このときにおける第1バルブユニット5の移動量は、第1ストッパ部材7がバルブプレート42に係合することにより制限される。したがって、第1バルブユニット5(第1永久磁石52)がバルブプレート42から遠ざかり過ぎることによって、磁力が極めて小さくなって第1弁体51が再び第1連通孔42aを塞ぐことができなくなってしまうといった事態の発生が防止される。
また、第1ストッパ部材7がバルブプレート42に係合している場合に、第1ストッパ部材7は、第1連通孔42aの第2空間S2への開口面を部分的に覆うことになる。しかし、第1ストッパ部材7の長手方向に直交する方向における長さが第1連通孔42aの直径よりも小さくされているため、第1ストッパ部材7が第1連通孔42aの第2空間S2への開口を完全に塞ぐことはなく、第1ストッパ部材7と第1連通孔42aの第2空間S2への開口縁との間に隙間が形成される。この隙間を通って粘性流体が第1連通孔42aを流通することができる。
なお、車両ドアDRが閉じられていくにつれて、筒状部材2の流体封入空間S内(具体的には第1空間S1内)へのロッド部材3の進入量が増加する。このため流体封入空間Sの空間容積がロッド部材3の進入容積分だけ減少する。このとき図9に示すようにアキュムレータピストン131が右方に移動することにより流体封入空間Sの空間容積が増加される。このようにアキュムレータピストン131が動作することにより、ロッド部材3が流体封入空間Sに進入することより減少した分の空間容積が補填される。
車両ドアDRの閉動作が任意の開度位置にて停止した場合、筒状部材2の第2空間S2から第1連通孔42aを経由した第1空間S1への粘性流体の流れが停止する。このため、第1バルブユニット5に作用する粘性流体の流体圧が消失し、第1バルブユニット5は第1永久磁石52の磁力によって徐々にバルブプレート42に引き寄せられる。ここで、上述したように、第1連通孔42aが開放された場合における第1バルブユニット5の移動量は、第1ストッパ部材7がバルブプレート42に係合することにより所定の長さに制限されている。従って、第1永久磁石52の磁力がバルブプレート42に及ばない位置にまで第1バルブユニット5が移動することはない。
第1バルブユニット5が磁力によりバルブプレート42に引き寄せられることにより、第1弁体51が第1連通孔42aに近づく。このとき、第1ニードル部材6が第1連通孔42aを挿通していることにより、第1ニードル部材6が第1弁体51を第1連通孔42aに誘導する。つまり、第1ニードル部材6は、第1弁体51が第1連通孔42aに向かう方向に移動するように、第1バルブユニット5の移動をガイドする。こうして移動がガイドされた第1バルブユニット5の第1弁体51が、やがて第1連通孔42aを塞ぐ。第1弁体51が第1連通孔42aを塞いだ場合、第1ヨーク53(第1永久磁石52)がバルブプレート42に最も近接する。このため大きな磁力が第1弁体51に作用する。よって、再び大きな保持力(磁力)が車両ドアDRに作用する。このようにして、車両ドアDRの閉動作が停止した任意の開度位置にて大きな保持力を発生させることができる。
[開動作]
ドアチェック装置100が図4に示すような作動状態であるときに、ユーザが車両ドアDRを開くように車両ドアDRに力(操作力)を加えた場合、その操作力は、ロッド部材3が筒状部材2に対して図4の左方に軸方向移動するための駆動力として、ロッド部材3に伝達される。このような駆動力がロッド部材3を介してピストン部材4に伝達された場合、第1空間S1が圧縮されることにより第1空間S1内の圧力P1が上昇し、第2空間S2が膨張されることにより第2空間S2内の圧力P2が低下する。このため第1空間S1内の圧力P1と第2空間S2内の圧力P2との差圧ΔP12(=P1−P2>0)が大きくなる。つまり、車両ドアDRを開こうとすると、差圧ΔP12が大きくなる。
差圧ΔP12により、第2弁体81は、第2連通孔42bから離れる方向に力(差圧力)を受ける。一方、第2弁体81は、第2永久磁石82からの磁力により第2連通孔42bに押し付けられる方向に付勢されている。従って、差圧力が、第2弁体81に作用している磁力を上回らない限り、第2弁体81が第2連通孔42bから離れない。このとき第2永久磁石82の磁力は、ロッド部材3に加えられている上記駆動力に対する抵抗力として、ロッド部材3に作用する。斯かる抵抗力が、車両ドアDRを開動作させる際の保持力として、車両ドアDRに作用する。
差圧力が第2永久磁石82の磁力(保持力)よりも大きくなるように車両ドアDRに開動作方向への大きな操作力を加えることにより、第2弁体81が磁力に抗して第2連通孔42bから離れ、第2弁体81が図4の右方(第2連通孔42bから離れる方向)に移動する。これにより、第2連通孔42bの第2空間S2への開口縁と第2連通孔42b内を挿通している第2ニードル部材9との間にリング状の隙間が形成される。つまり、第2連通孔42bが開放される。すると、第1空間S1内の粘性流体は、差圧ΔP12を小さくするように第2連通孔42bを通って第2空間S2内に流れ込む。
第2連通孔42bが開放された直後の時点においては、第2連通孔42bの第2空間S2への開口面内に第2ニードル部材9の基端部9a側が位置している。第2ニードル部材9は先細りのテーパ状に形成されており、その基端部9aの直径は先端部9bの直径よりも大きい。よって、第2連通孔42bが開放された直後の時点においては、第2連通孔42bの第2空間S2への開口が第2ニードル部材9により塞がれている面積が大きい。すなわち第2連通孔42bの第2空間S2への開口断面積は小さい。よって、第1空間S1内の粘性流体は、第2連通孔42bを速い速度で通過する。こうして速い速度で第2連通孔42bを通過した粘性流体は、第2連通孔42bを離れたばかりの第2バルブユニット8に勢いよく衝突する。その結果、第2バルブユニット8が勢い良く図4の右方に移動し、第2バルブユニット8がバルブプレート42から一気に遠ざけられる。
第2バルブユニット8がバルブプレート42から遠ざけられた場合、第2ニードル部材9が第2連通孔42bから第2空間S2側に引き抜かれように、図4の右方に移動する。第2ニードル部材9の先端部9bには第2ストッパ部材10が取り付けられており、第2ストッパ部材10の長手方向における長さは第2連通孔42bの直径よりも大きい。従って、第2ニードル部材9が図4の右方に所定量だけ移動したときに、第2ストッパ部材10が第2連通孔42bの第1空間S1への開口面の周縁部分を形成するバルブプレート42の壁面に係合する。これにより、第2弁体81が第2連通孔42bから離れる方向に移動するときにおける第2バルブユニット8の移動量が制限される。図10は、第2ストッパ部材10により第2バルブユニット8の移動量が制限されている状態が示された、ドアチェック装置100の概略断面図である。
図10に示す状態では、第2ニードル部材9の先端部9b側の部分が第2連通孔42b内に位置する。上記したように第2ニードル部材9は先細りのテーパ状に形成されており、その先端部9b側の径は第2連通孔42bの直径よりもかなり小さい。すなわち、図10に示す状態であるときにおける、第2連通孔42bの開口断面積は比較的大きい。このため第1空間S1内の粘性流体は、第2連通孔42bを構成する壁面と第2ニードル部材9との間に形成される比較的大きな隙間を通って第2空間S2に流れ込むことができる。
ドアチェック装置100が図10に示す状態であるとき、すなわち第2連通孔42bが開放されているときに、車両ドアDRを開動作させると、その開動作に伴ってロッド部材3及びピストン部材4が左方に移動する。図11は、ロッド部材3及びピストン部材4が左方に移動した状態が示された、ドアチェック装置100の概略断面図である。ピストン部材4の左方への移動により、第1空間S1の容積が減少するとともに第2空間S2の容積が増加する。両空間S1,S2の容積変動に応じて、第1空間S1内の粘性流体が図11の矢印で示すように第2連通孔42bを通って第2空間S2内に流れ込む。このとき第2連通孔42bを通る粘性流体の流体抵抗力が車両ドアDRの開動作に対する抵抗力として車両ドアDRに作用する。しかしながら、図11に示す状態であるときにおける第2連通孔42bの開口断面積は上述したように比較的大きいため、第2連通孔42bを通過する粘性流体の流体抵抗力は比較的小さい。従って、小さな力で車両ドアDRを開動作させることができる。このように、一旦、第2連通孔42bが開放された後は、車両ドアDRを小さな力で開くことができる。
第2ニードル部材9の作用効果は第1ニードル部材6の作用効果と同一であるので、その説明は省略する。同様に、第2ニードル部材9の先端部9bに取り付けられた第2ストッパ部材10の作用効果も、第1ストッパ部材7の作用効果と同一であるので、その説明は省略する。
なお、車両ドアDRが開かれていくにつれて、筒状部材2の流体封入空間S内(具体的には第1空間S1内)からロッド部材3が引き抜かれていく。このため流体封入空間Sの空間容積がロッド部材3の退避容積分だけ増加する。このとき図11に示すようにアキュムレータピストン131が左方に移動することにより流体封入空間Sの空間容積が減少される。このようにアキュムレータピストン131が動作することにより、ロッド部材3が流体封入空間Sから退避することより増加した分の空間容積が減少される。
車両ドアDRの開動作が任意の開度位置にて停止した場合、筒状部材2の第1空間S1から第2連通孔42bを経由した第2空間S2への粘性流体の流れが停止する。このため、第2バルブユニット8に作用する粘性流体の流体圧が消失し、第2バルブユニット8は第2永久磁石82の磁力によって徐々にバルブプレート42に引き寄せられる。
第2バルブユニット8が磁力によりバルブプレート42に引き寄せられることにより、第2弁体81が第2連通孔42bに近づく。このとき、第2ニードル部材9が第2連通孔42bを挿通していることにより、第2ニードル部材9が第2弁体81を第2連通孔42bに誘導する。つまり、第2ニードル部材9は、第2弁体81が第2連通孔42bに向かう方向に移動するように、第2バルブユニット8の移動をガイドする。こうして移動がガイドされた第2バルブユニット8の第2弁体81は、やがて第2連通孔42bを塞ぐ。これにより再び大きな保持力(磁力)が車両ドアDRに作用する。このようにして、車両ドアDRの開動作が停止した任意の開度位置にて大きな保持力を発生させることができる。
以上のように、本実施形態に係るドアチェック装置100は、磁力を用いて車両ドアDRの任意の開度位置にて大きな保持力を発生させることができるように構成される。また、図4に示すように、ドアチェック装置100を構成する部品点数もさほど多くなく、且つ、電気的な制御を要しない。よって、簡単な構成であって且つ任意の開度位置にて大きな保持力を発生させることができるドアチェック装置を、比較的安価に構成することができる。
また、本実施形態に係るドアチェック装置100によれば、同一の部材(バルブプレート42)に、車両ドアDRの閉動作時に開放される第1連通孔42a及び開動作時に開放される第2連通孔42bが形成されている。そして、これらの連通孔の開口を反対側からそれぞれ塞ぐように第1バルブユニット5及び第2バルブユニット6が設けられている。このため、図4に示すように、車両ドアDRを閉動作させる際に作動する第1バルブユニット5と開動作させる際に作動する第2バルブユニット6を、横並びに配設することができる。従って、第1バルブユニット5と第2バルブユニット6とを直列的に配設した場合と比較して、ドアチェック装置をコンパクトに構成することができる。
また、第1空間S1(第2空間S2内)内に配設された第1弁体51(第2弁体82)が第1連通孔42a(第2連通孔42b)を挿通する第1ニードル部材6(第2ニードル部材9)を介して第2空間S2(第1空間S1)内に配設された第1ストッパ部材7(第2ストッパ部材10)に接続されている。このため第1弁体51(第2弁体81)が第1連通孔42a(第2連通孔42b)から離脱することが防止される。
(変形例1)
図12は、本実施形態の変形例1に係るドアチェック装置200の概略断面図である。このドアチェック装置200は、ロッド部材3が筒状部材2を貫通していること、及び、アキュムレータを備えていないこと、を除き、実施形態に係るドアチェック装置100の構造と同一である。従って、図4に示すドアチェック装置100に示された構成要素と同一の構成要素に同一符号を付すとともに、それらの説明は省略する。また、ドアチェック装置200の作動についても、上記実施形態で説明したドアチェック装置100の作動と基本的には同一であるので、その説明も省略する。
変形例1に係るドアチェック装置200によれば、ロッド部材3が筒状部材2を貫通しているので、筒状部材2内の空間容積を補償するためのアキュムレータを必要としない。なお、実施形態に係る図4のドアチェック装置100はアキュムレータを必要とするが、その代わり、ロッド部材3が筒状部材2を貫通しないように構成することができるため、ドアチェック装置をより一層コンパクトに構成することができるといった利点を有する。
(変形例2)
図13は、本実施形態の変形例2に係るドアチェック装置300の概略断面図である。このドアチェック装置300は、ピストン部材4からピストンケースが省かれている点を除き、基本的には実施形態に係るドアチェック装置100の構造と同一である。従って、図4に示すドアチェック装置100に示された構成要素と同一の構成要素に同一の符号を付すとともに、それらの説明は省略する。
このドアチェック装置300に備えられるピストン部材4は、バルブプレート42と第2シールリング43とを備える。バルブプレート42は筒状部材2内の流体封入空間S内に筒状部材2と同軸的に配設される。バルブプレート42は円板状に構成されており、その側周面が筒状部材2の側周壁部2cの内壁面に対面している。バルブプレート42の側周面には周方向に亘り溝が形成されており、この溝内に第2シールリング43が配設される。第2シールリング43が筒状部材2の側周壁部2cの内壁面に周方向に亘り接触することにより、筒状部材2内の流体封入空間Sが第1空間S1と第2空間S2とに液密的に区画される。また、バルブプレート42の一方の端面に、ロッド部材3の先端が接続される。このように、本例におけるバルブプレート42は、上記実施形態におけるバルブプレート42とピストンケース41との役割を兼ねている。このような構成のドアチェック装置300の作動は、基本的には上記実施形態にて説明したドアチェック装置100の作動と同一であるので、その説明は省略する。
変形例2に係るドアチェック装置300によれば、ピストン部材4からピストンケースを省略することにより、より簡素にドアチェック装置を構成することができる。
(変形例3)
図14は、変形例3に係るドアチェック装置400の概略断面図である。本例に係るドアチェック装置400は、第1ストッパ部材7及び第2ストッパ部材10の配置及び構造を除き、基本的には実施形態に係るドアチェック装置100の構造と同一である。従って、図4に示すドアチェック装置100に示された構成要素と同一の構成要素に同一の符号を付すとともに、それらの説明は省略する。
ドアチェック装置400に備えられる第1ストッパ部材7aは、ピストンケース41内の空間のうち、バルブプレート42よりも図14において左側の空間、すなわち第1空間S1内に配設される。つまり、第1ストッパ部材7aは、第1バルブユニット5とともに第1空間S1内に配設される。第1ストッパ部材7aは平板状に形成されており、その一方の面が、第1バルブユニット5の第1樹脂カバー54に対面している。第1ストッパ部材7aは、ピストンケース41に固定される。また、バルブプレート42と第1ストッパ部材7aとの間に第1バルブユニット5が配設される。
また、ドアチェック装置400に備えられる第2ストッパ部材10aは、ピストンケース41内の空間のうち、バルブプレート42よりも図14において右側の空間、すなわち第2空間S2内に配設される。つまり、第2ストッパ部材10aは、第2バルブユニット8とともに第2空間S2内に配設される。第2ストッパ部材10aも平板状に形成されており、その一方の面が、第2バルブユニット8の第2樹脂カバー84に対面している。第2ストッパ部材10aは、ピストンケース41に固定される。バルブプレート42と第2ストッパ部材10aとの間に第2バルブユニット8が配設される。
このように構成されたドアチェック装置400において、例えば車両ドアDRの閉動作によって第1バルブユニット5が開いた場合、図14に示すように第1バルブユニット5の第1樹脂カバー54が第1ストッパ部材7aに当接することによって、第1弁体51が第1連通孔42aから離れる方向への第1バルブユニット5の移動量が規制される。なお、第1バルブユニット5の移動が第1ストッパ部材7aに規制されているときに、第1ニードル部材6の先端部6bが第1連通孔42a内に位置するように、第1ストッパ部材10aの配設位置が調整されるとよい。
同様に、例えば車両ドアの開動作によって第2バルブユニット8が開いた場合、第2バルブユニット8の第2樹脂カバー84が第2ストッパ部材10aに当接することによって、第2弁体81が第2連通孔42bから離れる方向への第2バルブユニット8の移動量が制限される。なお、第2バルブユニット8の移動が第2ストッパ部材10aに規制されているときに、第2ニードル部材9の先端部9bが第2連通孔42b内に位置するように、第2ストッパ部材10aの配設位置が調整されるとよい。
(変形例4)
図15は、変形例4に係るドアチェック装置500の概略断面図である。このドアチェック装置500は、上記実施形態にて示したドアチェック装置100に備えられているような、第1ニードル部材6、第2ニードル部材9、第1ストッパ部材7、第2ストッパ部材10を備えていない。その代わり、ドアチェック装置500は、第1ガイドレール部11及び第2ガイドレール部12を備える。それ以外の構造については、基本的には実施形態に係るドアチェック装置100の構造と同一である。従って、図4に示すドアチェック装置100に示された構成要素と同一の構成要素に同一の符号を付すとともに、それらの説明は省略する。
第1ガイドレール部11は、一対のレール板11a,11b及び、底板11cを備えており、ピストンケース41に固定される。一対のレール板11a,11bは、ピストンケース41内の空間のうち、バルブプレート42よりも図15において左側の空間、すなわち第1空間S1内に配設される。一対のレール板11a,11bは、それぞれ平板状に形成され、且つ、第1連通孔42aの中心軸線を挟んで上下方向に向かって対面するように、図15において上下方向に離間して配設される。底板11cは、一対のレール板11a,11bの図15において左側の端部をつなぐように設けられている。そして、一対のレール板11a,11b間に、第1バルブユニット5が位置する。従って、第1バルブユニット5は、一対のレール板11a,11bによってその移動方向がガイドされる。具体的にいうと、第1バルブユニット5は、図15において水平方向に移動するように、一対のレール板11a,11bによりその移動がガイドされる。
また、第2ガイドレール部12は、一対のレール板12a,12b及び、底板12cを備えており、ピストンケース41に固定される。一対のレール板12a,12bは、ピストンケース41内の空間のうち、バルブプレート42よりも図15において右側の空間、すなわち第2空間S2内に配設される。一対のレール板12a,12bは、それぞれ平板状に形成され、且つ、第2連通孔42bの中心軸線を挟んで上下方向に向かって対面するように、図15において上下方向に離間して配設される。底板12cは、一対のレール板12a,12bの図15において右側の端部をつなぐように設けられている。そして、一対のレール板12a,12b間に、第2バルブユニット8が位置する。従って、第2バルブユニット8は、一対のレール板12a,12bによってその移動方向がガイドされる。具体的にいうと、第2バルブユニット8は、図15において水平方向に移動するように、一対のレール板12a,12bによりその移動がガイドされる。
このような構成のドアチェック装置500において、例えば車両ドアDRの閉動作によって第1バルブユニット5が開いた場合、図15に示すように第1バルブユニット5が一対のレール板11a,11bにガイドされるように、第1空間S1内を水平に移動する。また、第1バルブユニット5が底板11cに当接することにより、第1弁体51が第1連通孔42aを離れる方向への第1バルブユニット5の移動量が制限される。つまり、底板11cが第1ストッパ部材に相当する。
車両ドアDRの閉動作が停止した場合、第1バルブユニット5は、第1永久磁石52の磁力によって、バルブプレート42に引き寄せられる。この場合において、第1弁体51が第1連通孔42aに向かうように、一対のレール板11a,11bによって第1バルブユニット5の移動がガイドされる。
また、例えば車両ドアの開動作によって第2バルブユニット8が開いた場合、第2バルブユニット8が一対のレール板12a,12bにガイドされるように、第1空間S1内を水平に移動する。また、第2バルブユニット8が底板12cに当接することにより、第2弁体81が第2連通孔42bを離れる方向への第2バルブユニット8の移動量が制限される。つまり、底板12cが第2ストッパ部材に相当する。
車両ドアDRの開動作が停止した場合、第2バルブユニット8は、第2永久磁石82の磁力によって、バルブプレート42に引き寄せられる。この場合において、第2弁体81が第2連通孔42bに向かうように、一対のレール板12a,12bによって第2バルブユニット8の移動がガイドされる。
以上、本発明の実施形態及び様々な変形例について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるべきものではない。例えば、上記実施形態及び各変形例においては、車両ドアに適用されるドアチェック装置について説明したが、それ以外の構造体、例えば家屋に取り付けられるドアに本発明のドアチェック装置を適用してもよい。また、上記実施形態及び各変形例において、第1永久磁石52(第2永久磁石82)が第1ヨーク53(第2ヨーク83)に挟まれているように構成された例を示したが、第1永久磁石52(第2永久磁石82)をU字磁石により構成することによって、第1ヨーク53(第2ヨーク83)を省略してもよい。また、上記実施形態及び各変形例では、第1ニードル部材6及び第2ニードル部材9が円錐状に形成されている例について説明したが、第1ニードル部材6及び第2ニードル部材9は段付円錐状に形成されていてもよいし、また、その断面形状が円形状でなくてもよい。さらに、第1ニードル部材6及び第2ニードル部材9は、その一部分の領域において、基端部側の径が先端部側の径よりも小さくなるように構成されていればよく、軸方向に沿って一定の径である部分を有していてもよい。また、本実施形態及び各変形例にて説明した第1連通孔42a及び第2連通孔42bの開閉をするための構成は、任意の位置にて大きな保持力を発生し、且つ、その保持力よりも大きな操作力を入力した時にはスムーズに作動するような作動部材を有する装置に備えられる弁装置に適用することができる。また、本発明に係る弁装置は、スイングドアに限られず、バックドア、スライドドアに適用されるものであってもよい。このように、本発明は、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、変形可能である。