JP6439513B2 - プラズマトーチの状態監視方法およびプラズマトーチの状態監視システム - Google Patents
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Description
アノード電極の方が、カソード電極に比べて損耗が早く、交換頻度も高いことからアノード電極の損耗に関して広く調査されている。カソード電極上のカソード点は固定されているのに対し、アノード電極上のアノード点は高速で移動していることが知られている。アノード点の寿命(一か所での滞留時間)は、100[μs]程度であることが報告されている。このアノード点の移動に対応して、直流アークのV−I特性が変化することが知られている。直流アークを発生・維持するための電源は、一般に電流制御型に近い垂下特性を有することから、電圧を計測することにより、直流アークの状態、更には、アノード点の状態を推定することが試みられている。
また、特許文献3には、プラズマトーチの電極およびノズルが経時的な消耗によって破壊される以前に電極の寿命やノズルの損傷を検知するために、冷却回路を流れる熱媒体への抜熱量をモニタ監視する旨の記載がされている。
プラズマの長さは再現性が悪く、例えば、プラズマトーチの組み立て精度などによっても変わる。したがって、特許文献1、2および非特許文献1に記載されている電圧値または平均電圧値は、必ずしもプラズマの長さを監視する指標にはならない。
また、非特許文献1に記載されているFFTでの5[kHz]近傍のピーク周波数およびスペクトル強度は、ガス流量条件には敏感であるが、アノードの損耗状況には鈍感である。
また、特許文献3に記載されているプラズマトーチの冷却回路を流れる熱媒体への抜熱量は、平均電圧値よりも更に鈍感であり、検出速度が大きく劣る課題がある。
本発明は、以上の課題に鑑みてなされたものであり、プラズマトーチの電極の損耗状況を正確に検出することを目的とする。
(1) ノズルを含むアノードと、カソードとを有し、前記アノードおよび前記カソードとの間に直流アークを発生させ、プラズマ形成ガスを前記アノードと前記カソードとの間の前記直流アークに通して加熱し、当該加熱したプラズマ形成ガスを前記ノズルから噴流として吹き出す動作をするプラズマトーチの状態を監視するためのプラズマトーチの状態監視方法であって、前記アノードと前記カソードとの間の電圧であるプラズマの動作電圧と、前記アノードと前記カソードとの間に流れる電流であるプラズマの動作電流とのうち、少なくとも前記プラズマの動作電圧を検出する検出工程と、前記直流アークを発生させるための直流電源の出力に含まれる脈流の周期に同期して、前記プラズマの動作電圧と前記プラズマの動作電流とのうち、前記検出工程で検出されたものをサンプリングし、当該サンプリングしたデータであるサンプリングデータを生成するサンプリング工程と、前記脈流の複数の周期における前記サンプリングデータに基づいて、前記サンプリングデータの統計量を導出する統計処理工程と、を有し、前記脈流は、前記直流電源の出力に重畳されているリップルであることを特徴とするプラズマトーチの状態監視方法。
(2) 前記統計量は、平均値、最頻値、中央値、最大値、最小値、標準偏差、および分散の少なくとも何れか1つを含むことを特徴とする(1)に記載のプラズマトーチの状態監視方法。
(3) 前記サンプリングの周波数は、前記直流電源の一次側に接続される電源の周波数の正の整数倍であることを特徴とする(1)または(2)に記載のプラズマトーチの状態監視方法。
(4) 前記位相ごとの前記サンプリングデータの統計量を繰り返し導出する頻度に対応する周波数である解析周波数は、前記サンプリングの周波数と、前記脈流の周波数との公約数であることを特徴とする(1)〜(3)の何れかに記載のプラズマトーチの状態監視方法。
(5) 前記サンプリングデータの取得時刻を、前記脈流の一周期における位相に変換する変換工程をさらに有し、前記統計処理工程は、前記脈流の複数の周期における前記サンプリングデータであって、前記変換工程により取得時刻が位相に変換された前記サンプリングデータに基づいて、前記サンプリングデータの統計量を導出することを特徴とする(1)〜(4)の何れかに記載のプラズマトーチの状態監視方法。
(6) 前記統計処理工程は、前記サンプリングデータの統計量を前記位相ごとに導出することを特徴とする(5)に記載のプラズマトーチの状態監視方法。
(7) 前記統計処理工程は、前記位相ごとの前記サンプリングデータの統計量を、異なる複数のタイミングのそれぞれで導出し、当該異なる複数のタイミングにおける前記サンプリングデータの統計量の変化量を導出することを特徴とする(6)に記載のプラズマトーチの状態監視方法。
(8) 前記異なる複数のタイミングにおける前記サンプリングデータの統計量の変化量は、前記異なる複数のタイミングのうち最も早いタイミングにおける前記サンプリングデータの統計量を基準とした場合の変化量であることを特徴とする(7)に記載のプラズマトーチの状態監視方法。
(9) プラズマトーチの状態に関する情報を出力する出力工程をさらに有し、前記統計処理工程は、前記サンプリングデータの統計量の変化量と閾値とを比較し、前記出力工程は、前記サンプリングデータの統計量の変化量と閾値との比較の結果に基づく情報を、前記プラズマトーチの状態に関する情報として出力することを特徴とする(7)または(8)に記載のプラズマトーチの状態監視方法。
(10) 前記検出工程は、前記プラズマの動作電圧と、前記プラズマの動作電流とを検出し、前記統計処理工程は、前記脈流の複数の周期における前記プラズマの動作電圧・動作電流についての前記サンプリングデータであって、前記変換工程により取得時刻が位相に変換された前記サンプリングデータである電圧データ・電流データに基づいて、前記電圧データの前記位相ごとの平均値・前記電流データの前記位相ごとの平均値を位相平均電圧・位相平均電流としてそれぞれ導出し、前記位相平均電圧および前記位相平均電圧からリサージュ図形を生成することを特徴とする(5)〜(8)の何れかに記載のプラズマトーチの状態監視方法。
(11) 前記統計処理工程は、前記位相平均電圧および前記位相平均電流を、異なる複数のタイミングのそれぞれで導出し、当該異なる複数のタイミングにおける前記位相平均電圧および前記位相平均電圧から、当該異なる複数のタイミングのそれぞれにおけるリサージュ図形を生成し、生成したリサージュ図形の面積の変化量をさらに導出することを特徴とする(10)に記載のプラズマトーチの状態監視方法。
(12) 前記異なる複数のタイミングにおける前記リサージュ図形の面積の変化量は、前記異なる複数のタイミングのうち最も早いタイミングにおける前記リサージュ図形の面積を基準とした場合の変化量であることを特徴とする(11)に記載のプラズマトーチの状態監視方法。
(13) プラズマトーチの状態に関する情報を出力する出力工程をさらに有し、前記統計処理工程は、前記リサージュ図形の面積の変化量と閾値とを比較し、前記出力工程は、前記リサージュ図形の面積の変化量と閾値との比較の結果に基づく情報を、前記プラズマトーチの状態に関する情報として出力することを特徴とする(11)または(12)に記載のプラズマトーチの状態監視方法。
(14) 前記検出工程は、前記プラズマの動作電圧を検出し、前記統計処理工程は、前記脈流の複数の周期における前記プラズマの動作電圧についての前記サンプリングデータである電圧データに基づいて、前記プラズマの動作電圧の標準偏差を導出することを特徴とする(1)〜(4)の何れかに記載のプラズマトーチの状態監視方法。
(15) 前記統計処理工程は、前記プラズマの動作電圧の標準偏差を異なる複数のタイミングのそれぞれで導出し、当該異なる複数のタイミングにおける前記プラズマの動作電圧の標準偏差の変化量をさらに導出することを特徴とする(14)に記載のプラズマトーチの状態監視方法。
(16) 前記異なる複数のタイミングにおける前記プラズマの動作電圧の標準偏差の変化量は、前記異なる複数のタイミングのうち最も早いタイミングにおける前記プラズマの動作電圧の標準偏差を基準とした場合の変化量であることを特徴とする(15)に記載のプラズマトーチの状態監視方法。
(17) プラズマトーチの状態に関する情報を出力する出力工程をさらに有し、前記統計処理工程は、前記プラズマの動作電圧の標準偏差の変化量と閾値とを比較し、前記出力工程は、前記プラズマの動作電圧の標準偏差の変化量と閾値との比較の結果に基づく情報を、前記プラズマトーチの状態に関する情報として出力することを特徴とする(15)または(16)に記載のプラズマトーチの状態監視方法。
(18) ノズルを含むアノードと、カソードとを有し、前記アノードおよび前記カソードとの間に直流アークを発生させ、プラズマ形成ガスを前記アノードと前記カソードとの間の前記直流アークに通して加熱し、当該加熱したプラズマ形成ガスを前記ノズルから噴流として吹き出す動作をするプラズマトーチの状態を監視するためのプラズマトーチの状態監視システムであって、前記アノードと前記カソードとの間の電圧であるプラズマの動作電圧と、前記アノードと前記カソードとの間に流れる電流であるプラズマの動作電流とのうち、少なくとも前記プラズマの動作電圧を検出する検出手段と、前記直流アークを発生させるための直流電源の出力に含まれる脈流の周期に同期して、前記プラズマの動作電圧と前記プラズマの動作電流とのうち、前記検出手段で検出されたものをサンプリングし、当該サンプリングしたデータであるサンプリングデータを生成するサンプリング手段と、前記脈流の複数の周期における前記サンプリングデータに基づいて、前記サンプリングデータの統計量を導出する統計処理手段と、を有し、前記脈流は、前記直流電源の出力に重畳されているリップルであることを特徴とするプラズマトーチの状態監視システム。
[電極材料の劣化]
プラズマは、アノード電極とカソード電極との間の放電によって生じる。アノード電極上での放電位置は、電極上の任意の点で確率的に決まる。そして、放電開始後、安定的な放電が維持される。このとき、電極表面の放電位置は、ランダムに移動していると考えられる。しかしながら、放電積算時間が長くなると、電極材料の表面が粗くなり、劣化が生じる。電極表面が粗くなり、放電位置が電極表面の凹部の一か所に短時間留まり、その後突然移動する現象が生じる場合がある。それに伴い、アノード電極・カソード電極間の電圧や電流にパルス状のノイズが含まれる場合がある。以後、このような現象を必要に応じて「雑音放電」と称する。本発明者らは、このようなパルス状のノイズをモニタすることで電極材料の劣化を推定することが可能ではないかと考えた。しかしながら、雑音放電は、ほとんど時間的にランダムに生じるため、アノード電極・カソード電極間の電流波形に時間的にランダムなノイズが出るのみであり、アノード電極・カソード電極間の電流波形をモニタしても電極材質の劣化を定量的に評価することは不可能であった。図1は、アノード電極・カソード電極間の電位Vと時間との関係(の実測値)の一例を示す図である。図1に示すように、アノード電極・カソード電極間の電位Vに、パルス状のノイズが重畳されていることは分かるが、このままでは、このようなパルス状のノイズの信号の経時変化をとらえることはほぼ不可能である。
アノード電極・カソード電極間に直流電圧を与えるとプラズマが発生するが、プラズマは、電極と電荷のやり取りを行う、即ち、電極との間に電流を流すことで電離状態を保つ。従って、プラズマの強さなどの状態を、アノード電極・カソード電極間に流れる電流をモニタすることで監視する場合がある。以下の説明では、アノード電極・カソード電極間に流れる電流を必要に応じて「プラズマの動作電流」と称する。
本発明者らは、当初、プラズマの動作電圧とプラズマの動作電流をモニタし、それらの信号には、数百Hzで周期的に変動する成分と、高周波のノイズ状の成分と、パルス状にランダムに発生するノイズ状の成分とがあることに着目した。また、前記数百Hzで周期的に変動する成分は、直流電源の出力に重畳されたリップルノイズであることが分かった。また、リップルノイズに同期して、プラズマの動作電圧・動作電流のうち、少なくともプラズマの動作電圧を統計的に解析することにより、ノイズ成分の経時的変化をモニタできることが分かった。
以下、電圧を電流と読み替えても同じことが言える。電気的変調は、アノード電極・カソード電極間に与える直流電圧に変調電圧を重畳すればよい。この時、直流電源からの直流出力電圧に対する変調電圧の振幅の比は、0.1[%]〜10[%]程度が好ましいという知見を得た。この比が、0.5[%]よりも小さいとプラズマが充分に電気的加振されず、10[%]よりも大きいとプラズマの質が変わってしまい安定放電が維持できなくなる。重畳された変調電圧に対して、プラズマが加振され、変調電流が流れる。即ち電流と電圧の周波数は同一である。この周波数、即ち変調周波数は特に限定しないが、10[Hz]〜20[kHz]の範囲であるのが好ましい。この変調周波数が10[Hz]未満の低周波であると、電気的加振の効果が十分でなく、20[kHz]超であると、電場〈電束密度〉の時間微分に基づく変位電流の効果などの影響で、プラズマが変質する懸念がある。
直流アークを発生・維持するための直流電源には、単相あるいは三相の交流電圧を整流して直流電圧を出力する直流安定化電源が用いられる場合が多い。このような直流安定化電源においては、交流が取りきれず小さな振幅の交流電圧が直流出力に重畳されている場合が多い。このような重畳された交流出力をリップルノイズ、あるいは単にリップルと言う。その振幅は、直流電源のグレードによって異なる。また、リップルの周波数は、直流電源に対する入力となる商用交流電源の仕様によって異なる。直流電源のリップル周波数は、商用交流電源が単相交流であれば、商用交流電源の周波数の2倍の周波数となり、三相交流であれば、商用交流電源の周波数の6倍の周波数となる。直流電源の多くは、ダイオードなどの素子を基本要素とした整流素子を用いるため、商用交流電源1相当たりの周波数が2倍となるためである。即ち、交流商用電源が50[Hz]の単相交流であれば、リップル周波数は100[Hz]であり、50[Hz]の三相交流であれば、リップル周波数は300[Hz]となる場合が多い。ただし、整流方式によっては、リップル周波数が商用交流周波数と同じ周波数となる場合もあり得る。
前記のように、プラズマに電気的加振を加えると、それに対するプラズマの応答として、電極材質の劣化に伴う雑音放電の振る舞いに規則性が見出されることを期待した。本発明者らは、雑音放電によるパルス状ノイズの振る舞いは、ノイズ状の成分を統計的に処理することによって初めて認識されるものであることを見出した。プラズマの応答を計測するために、例えば、以下の手順が必要であることを見出した。
この計測は、例えば、変調信号またはリップルノイズを、計測器における計測のトリガ信号として入力とすることによって実現することができる。トリガ信号とする変調信号またはリップルノイズは、計測するプラズマ波形の信号をフィルタに通すことにより取得してもよい。また、計測するプラズマ波形の信号そのものをトリガ信号とすることができる場合もある。
(4) 前記(3)で集められたデータについて統計的演算を行うことにより統計量を求める。統計量は、例えば、同じ位相に属するデータごとに求めることができる。また、統計量は、例えば、平均値、最頻値、最大値、最小値、中央値、標準偏差、および分散の少なくとも何れか1つを含む。
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態を説明する。
図2は、プラズマトーチの状態監視システムの構成の一例を示す図である。図3は、プラズマトーチの状態監視システムの動作の一例を説明するフローチャートである。
なお、プラズマトーチは、公知の技術で実現することができる。したがって、ここでは、その詳細な説明を省略する。
プラズマの動作電圧および動作電流は、電圧検出器7および電流検出器6により時間的に連続に計測される。
本実施形態では、電圧検出器7・電流検出器6は、プラズマの動作電圧・動作電流を、時間的に離散化し、離散化したプラズマの動作電圧・動作電流のデータを解析装置9に出力する(図3のステップS302)。以下の説明では、このようにして離散化されたプラズマの動作電圧・動作電流のデータを、必要に応じて、それぞれ、「電圧データ」、「電流データ」と称する。
以下では、本実施形態では、リップルノイズをトリガ信号とする場合を例に挙げて説明する。尚、変調信号をトリガ信号とする場合には、以下の説明において、リップルノイズ、リップルを変調信号に置き換えればよい。
また、直流電源3の出力に重畳されるリップルノイズの周波数であるリップル周波数をfrippleと表記する。リップルノイズの周期であるリップル周期τrippleは、リップル周波数frippleの逆数(τripple=1/fripple)で表される。また、リップルノイズの角周波数ωrippleは、2πfrippleで表される。
電圧検出器7・電流検出器6は、このようなJ個の離散化された電圧データ・電流データ(プラズマの動作電圧・動作電流のデータ)を繰り返し解析装置9に出力する。
また、解析周波数fanalysysは、サンプリング周波数fsampleとリップル周波数frippleとの公約数である必要がある。望ましくは、解析周波数fanalysysは、サンプリング周波数fsampleとリップル周波数frippleとの最大公約数とする。
(A) 電圧検出器7・電流検出器6は、リップル周期τripple分のJ個の電圧データ・電流データをサンプリング時間間隔τsample(=1/fripple)で取得して解析装置9に出力する(図3のステップS301、S302)。
(B) 解析装置9の解析部91は、J個の電圧データ・電流データの取得時刻を、φ0〜φ0+2πの間の、リップル周期τripple中の位相に変換する(図3のステップS303)。ここで、φ0は、初期位相である。初期位相φ0は、リップルノイズの信号をトリガレベルとして計測器(電圧検出器7・電流検出器6)でサンプルトリガがかかる時間におけるリップル周期τrippleの一周期内の位相である。例えば、トリガレベルの位相(初期位相)をφ0とすると、その次の電圧データ・電流データの位相は、φ0+2πτsample/τrippleとなる。したがって、連続する電圧データ・電流データの位相は、2πτsample/τrippleだけ増えてゆく。最後の電圧データ・電流データには、φ0+2πJτsample/τrippleの位相が付与される。
各データセットにおけるn番目の電圧データ・電流データは、リップル周期τripple中の同一の位相におけるデータであることが好ましい。即ち、Jτsample/τripple=1であることが好ましい。但し、Jτsample/τripple<1であっても、各データセットのn番目の電圧データ・電流データの位相が同じであるようにすることができる。例えばトリガレベルが一定であれば、各データセットのn番目の電圧データ・電流データの位相を同じにすることが可能である。
図5の上段は、時刻t0(プラズマトーチの動作初期時刻(累積運転時間=0(ゼロ)))にサンプリングが開始され、サンプリング周波数fsampleにてM×J個の電圧データがサンプリング・蓄積された状態を示す。ここで、Mは、前述した解析周期の繰り返し回数である。前述したように、解析周波数fanalysysを用いて、解析周期τanalysysは1/fanalysysと表される。1回の解析周期τanalysysの時間帯には、J個の電圧データがサンプリング・蓄積される。これをM回繰り返すことで、M回の解析周期τanalysysの時間帯では、M×J個の電圧データがサンプリング・蓄積されることとなる。即ち、図5の上段のM×J個の数列が、図5の中段に示すM行×J列の密な行列に書き換えられる。
ここでは、サンプリング周波数fsampleが2500[Hz]であり、周波数倍率Nが50倍であり、リップル周波数frippleが300[Hz]である場合を例に挙げて説明する。この場合、解析周波数fanalysysとして、サンプリング周波数fsampleとリップル周波数frippleとの最大公約数である100[Hz]を選択するものとする。
なお、図5では、電圧データを例に挙げて説明したが、電流データについても電圧データと同様にして処理される。
位相平均電圧U(φripple)とは、同一の位相φrippleの時刻にサンプリングされたM個の電圧データUの平均値である。位相平均電圧U(φripple)は、図5の下段に示すように、1行×J列の行列または数列として定義される。具体的には、サンプリング周波数fsampleを3000[Hz]とし、解析周波数fanalysysを300[Hz]と設定し、Jが10の場合、10個の電圧データからなるデータセットが、解析周期τanalysysの繰り返し回数M回分得られる。したがって、M個の同一の位相の電圧データの算術平均をとることにより、10個の位相平均電圧U(φripple)が得られる。
以上の説明は、時刻t0での電圧データに対して、位相平均電圧を定義する方法を示した。位相平均電流に関しても位相平均電圧と同様にして導出される。図5中の電圧データUを電流データIに読み替えることで位相平均電流I(φripple)が定義される。以上のようにして時刻t0における初期解析ステップが実行される。時刻t0は、アノード1およびカソード2の少なくとも1つが新品であるプラズマトーチを最初に使用した時刻に対応する。
出力部93は、例えば、図4Aおよび図4Bに示すグラフを表示することができる。
前記(A)〜(E)の繰り返し数Rは、例えば、前記統計値の経時変化の特徴が得られるように、予め設定することができる。
このようにステップS305で前記統計量が繰り返し得られる。即ち、時刻ti(i=0,1,・・・R)に対応するリップル周期τrippleにおける前記統計量を、その時刻tiにおける電圧データ・電流データの代表値とする。また、時刻iからMτrippleの時間が経過した時刻i+1に対応するリップル周期τrippleにおける前記統計量を、その時刻i+1における電圧データ・電流データの代表値とする。このようにすることで、時間間隔Mτrippleでの、前記統計値の経時変化が得られる。
このように、統計処理部92は、各時刻tiにおける前記統計量を並べることにより前記統計量の経時変化を求めることができる。出力部93は、前記統計量の経時変化を出力することができる。
本発明者らは、プラズマ放電の継続とともに電極材料(特にアノード1)の材質が劣化し、位相平均電圧U(φripple)は時間とともに上昇し、位相平均電流I(φripple)は時間とともに低下する場合が多いという知見を得た。したがって、例えば、ある時点での位相平均電圧U(φripple)の最大値Umaxが閾値を越えた場合に、電極材料(特にアノード1)が劣化したと判断することができる。プラズマの規模や電極材質によって、電極材料の劣化を判断するための位相平均電圧U(φripple)の最大値Umaxに対する閾値は、適宜設定することができる。例えば、位相平均電圧U(φripple)の最大値Umaxが直流電源3の出力電圧の110%以上となった時に電極材料(特にアノード1)を交換すると判断することができる。また、例えば、位相平均電圧U(φripple)の経時変化を導出する場合には、位相平均電圧U(φripple)の経時変化から、位相平均電圧U(φripple)の最大値Umaxが閾値以上になった時点で、電極材料(特にアノード1)が劣化したと判断することができる。
図6Aは、J個の位相φrippleにおける位相平均電圧U(φripple)と時間との関係の第2の例を示す図であり、図6Bは、J個の位相φrippleにおける位相平均電流I(φripple)と時間との関係の第2の例を示す図である。尚、両図とも横軸は、リップル周期τrippleの一周期分を2πとした場合の位相である。また、図6A、図6Bでは、プラズマトーチの部品が新品であるときの結果を示す。
この判断は、前述したように、ユーザが行っても解析装置9で行ってもよい。
次に、第2の実施形態を説明する。本実施形態では、第1の実施形態で説明した統計量の導出(ステップS305)を繰り返し行い、それぞれのタイミングにおける統計量を比較する場合について説明する。このように、本実施形態は、第1の実施形態に対し、統計量の導出を繰り返し行い、それらを比較するための処理が追加されたものである。したがって、本実施形態の説明において、第1の実施形態と同一の部分については、図1〜図5に付した符号と同一の符号を付す等して詳細な説明を省略する。
前記(A)〜(D)の繰り返し数Rは、例えば、前記統計値の経時変化の特徴が得られるように、予め設定することができる。
サンプリングが連続的に行なわれ、サンプリング周期fsampleにて離散的な電圧データおよび電流データが次々と蓄積される場合には、J個の位相φrippleに対応する電圧データおよび電流データが繰り返しサンプリング・蓄積されることとなる。時刻tiの位相φrippleがきちんと他の時刻(例えば時刻t0)の位相φrippleと一致するように選ばれているならば、J組の位相平均電圧U(φripple)と位相平均電流I(φripple)の対同士の比較は、同じ並びで行われる。
図7Aに示す位相平均電圧変化ΔUは、同じ位相のものについて、累積運転時間が100[時間]であるときの位相平均電圧U(φripple)から、累積運転時間が0[時間]であるときの位相平均電圧U(φripple)を減算した値である。図7Bに示す位相平均電流変化ΔIは、同じ位相のものについて、累積運転時間が100[時間]であるときの位相平均電流I(φripple)から、累積運転時間が0[時間]であるときの位相平均電流I(φripple)を減算した値である。
統計処理部92は、例えば、以上のようにして各時刻tiにおける前記統計量を比較することができる。
これらの判断は、第1の実施形態で説明したように、ユーザが行っても解析装置9で行ってもよい。これらの判断を解析装置9で行う場合には、例えば、出力部93は、位相平均電圧変化ΔUが閾値以上であることや、位相平均電流変化ΔIが閾値以下であることを、プラズマトーチの状態に関する情報として出力することができる。
次に、本発明の第3の実施形態を説明する。本実施形態では、位相平均電圧U(φripple)および位相平均電流I(φripple)のリサージュ図形や、位相平均電圧変化ΔUおよび位相平均電流変化ΔIのリサージュ図形を導出し、このリサージュ図形に基づいて、電極材料の劣化(電極材料の交換の必要性)を判断する。このように本実施形態は、第1の実施形態、第2の実施形態に対し、リサージュ図形を導出することによる処理が追加されたものである。したがって、本実施形態の説明において、第1、第2の実施形態と同一の部分については、図1〜図7に付した符号と同一の符号を付す等して詳細な説明を省略する。
図4Bに示した位相平均電流I(φripple)の波形は、大凡半波整流された形状となっている。一方、図4Aに示した位相平均電圧U(φripple)の波形は、位相平均電流I(φripple)の波形を上下反転した半波整流形状の影響もあるが、鋸刃形状にも観察され、半波整流形状と鋸刃形状の混合となっている。
これらから得られる図8Aのリサージュ図形のプロットでは、位相情報が消えてしまうが、図8A中に矢印線で示す通り、左回り(反時計)に回っている。図形の形状は、電流波形の半波整流形状と、電圧波形の半波形状と鋸刃形状との混合とが、組み合わさることによりヒステリシスを示す。ヒステリシスの代表指標としてリサージュ図形の面積Sを監視することによりプラズマトーチの状態を監視できる。したがって、本実施形態では、統計処理部92は、リサージュ図形を導出し、導出したリサージュ図形の面積Sを導出する。
プラズマトーチの動作初期時刻t0におけるリサージュ図形の面積St0を基準として、リサージュ図形の面積変化量ΔSを定義するならば、任意の時刻tiと時刻t0とのリサージュ図形の面積変化量ΔSは、Sti−St0と定義される。本発明者らは、リサージュ図形の面積変化量ΔSは、アノード1の損耗状況に大きく影響し、アノード1が損耗するに従い、リサージュ図形の面積変化量ΔSは増加するという知見を得た。リサージュ図形の面積変化量ΔSが増加すると、位相平均電圧V(φripple)の波形は、鋸刃形状により近づく。
これらの判断は、第1の実施形態で説明したように、ユーザが行っても解析装置9で行ってもよい。これらの判断を解析装置9で行う場合、例えば、出力部93は、リサージュ図形の面積変化量ΔSが、閾値ΔScritical以上であることを、プラズマトーチの状態に関する情報として出力することができる。
なお、本実施形態の前記判断を第1、第2の実施形態で説明した判断と組み合わせて電極材料を交換する必要があるか否かを判断してもよい。このようにする場合、第1の実施形態で説明したように、複数の判断を行って電極材料を交換する必要があるか否かを判断する場合には、これらの判断の全てにおいて電極材料を交換する必要がないとされた場合に限り電極材料を交換しないと判断することとしたり、判断指標を変数とする関数を設定し、この関数の値に基づいて、電極材料を交換する必要があるか否かを判断したりすることができる。
次に、本発明の第4の実施形態を説明する。本実施形態では、プラズマの動作電流Iについての計測を必要とせず、専らプラズマの動作電圧Uの計測値を用いて解析を実行することで、プラズマトーチの動作状況の監視・異常検知を行う。このように、本実施形態と第1〜第3の実施形態とは、プラズマの動作電流Iについての計測をしないことと、それに基づく処理が主として異なる。したがって、本実施形態の説明において、第1〜第3の実施形態と同一の部分については、図1〜図8に付した符号と同一の符号を付す等して詳細な説明を省略する。
従って、リサージュ図形の面積変化量ΔSと同様に、プラズマの動作電圧の標準偏差の変化量ΔσUの監視を実行する際に、予め、プラズマの動作電圧の標準偏差の変化量ΔσUに対する閾値ΔσUcriticalを決めておき、プラズマの動作電圧の標準偏差の変化量ΔσUが、閾値ΔσUcritical以上である場合に、電極材料を交換する必要があると判断することができる。例えば、プラズマの動作電圧の標準偏差の変化量ΔσUが、直流電源3の出力電圧の5[%]以上である場合に電極材料を交換すると判断することができる。
次に、本発明の第5の実施形態を説明する。第1〜第4の実施形態では、プラズマの動作電圧U・動作電流Iの計測値を用いて解析を実行する際に、時刻tiをJ個に限定された離散的な位相φrippleに変換するようにした。これに対し、本実施形態では、位相φrippleをJ個に限定せずにランダムとする場合を例に挙げて説明する。このように、本実施形態と第1〜第4の実施形態とは、位相φrippleをランダムにすることによる処理が主として異なる。したがって、本実施形態の説明において、第1〜第4の実施形態と同一の部分については、図1〜図9に付した符号と同一の符号を付す等して詳細な説明を省略する。
前記サンプリング周波数fsampleとして、敢えて、商用電源4の周波数f1とは1以上の公約数を持たない様に選択することにより、位相φrippleの値はランダムとなる。一方で、電圧データの数が少なすぎると、プラズマの動作電圧の変動の特徴が捉えられない。そこで、この課題を検討したところ、第1〜第4の実施形態では、図5の上段に示す数列の電圧データの個数はM×J個であるのに対し、本実施形態では、これには限定されない任意の整数(Nsample個)となるが、サンプル数Nsampleとしては十分に大きい必要がある。本発明者らは、例えば、プラズマの動作電圧の標準偏差σU(ti)によりプラズマの動作電圧の値の変動の特徴を捉えるためには、Nsampleは256以上であることが好ましく、1024以上であることがより好ましいという知見を得た。
次に、実施例を説明する。
<実施例1>
図2に示した非移行型アークプラズマトーチにおいてプラズマを発生させ、プラズマの動作電圧・動作電流をそれぞれ電圧検出器7・電流検出器6を用いて計測し、得られた電圧データ・電流データを解析した。
プラズマトーチとしては、特許文献6にあるカスケード型プラズマトーチを用いた。このプラズマトーチは、市販の溶射用のプラズマトーチに比して、高電圧かつ低電流にて動作する。プラズマ形成ガスとしては、カソードガスとしてN2とAr、アノードガスとしてArを用いた。プラズマトーチの動作時のガスの流量は、次のとおりである。即ち、カソードガスであるN2の流量を0.29[g/s]、カソードガスであるArの流量を0.27[g/s]、アノードガスであるArの流量を0.07[g/s]とし、一定とした。
累計運転時間が0時間の時の解析結果は、図6A、図6Bの通りである。また、累計運転時間が100時間の時の解析結果は、図4A、図4Bの通りである。図6A、図6Bと図4A、図4Bでは比較のため、軸のレンジが等しくなっている。
図7A、図7Bに示す波形は、それぞれ、図4A、図4Bに示す波形とほぼ類似の形状となっているが、変動量の中心は、原点近傍となり、前記前処理のため、位相φrippleの軸方向にシフトしている。
累計運転時間が0時間の時のリサージュ図形は、図8Bの通りである。累計運転時間が100時間の時のリサージュ図形は、図8Aの通りである。リサージュ図形の面積は、近似線2本を作成して求めた。まず、リサージュ図形の下辺を直線と近似し、一方、リサージュ図形の上辺を楕円の一部と近似し、近似式を作成した。次に、近似式の交点の座標を求めた。最後に、交点間で積分を実施して、それぞれのリサージュ図形の面積を求めた。累計運転時間が0時間の時のリサージュ図形の面積Sは0.0[W]であり、100時間の時のリサージュ図形の面積Sは3.4[W]であった。したがって、リサージュ図形の面積変化量ΔSは、3.4[W](=3.4−0.0)と求められた。
本実施例でも、実施例1と同様に、図2に示した非移行型アークプラズマトーチにおいてプラズマを発生させ、プラズマの動作電圧・動作電流をそれぞれ電圧検出器7・電流検出器6を用いて計測し、得られた電圧データ・電流データを解析した。
プラズマトーチと、プラズマトーチの動作条件と、直流電源3の動作条件は、実施例1と同じである。サンプリング周波数fsampleは、3000[Hz]とした。Jは10である。解析周期τanalysysの繰り返し回数Mは512とした。したがって、用いる数列のデータ数M×Jは、5120個である。
本実施例でも、実施例1と同様に累計運転時間にて整理した。
本実施例でも、実施例1および2と同様に、図2に示した非移行型アークプラズマトーチにおいてプラズマを発生させ、プラズマの動作電圧・動作電流をそれぞれ電圧検出器7・電流検出器6を用いて計測し、得られた電圧データ・電流データを解析した。
プラズマトーチと、プラズマトーチの動作条件と、直流電源3の動作条件は、実施例1と同じである。サンプリング周波数fsampleは、2666[Hz]とした。サンプリング周波数fsampleは、商用電源4の周波数f1やリップル周波数frippleとは1以外の公約数を持たない。
また、以上説明した本発明の実施形態・実施例は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
Claims (18)
- ノズルを含むアノードと、カソードとを有し、前記アノードおよび前記カソードとの間に直流アークを発生させ、プラズマ形成ガスを前記アノードと前記カソードとの間の前記直流アークに通して加熱し、当該加熱したプラズマ形成ガスを前記ノズルから噴流として吹き出す動作をするプラズマトーチの状態を監視するためのプラズマトーチの状態監視方法であって、
前記アノードと前記カソードとの間の電圧であるプラズマの動作電圧と、前記アノードと前記カソードとの間に流れる電流であるプラズマの動作電流とのうち、少なくとも前記プラズマの動作電圧を検出する検出工程と、
前記直流アークを発生させるための直流電源の出力に含まれる脈流の周期に同期して、前記プラズマの動作電圧と前記プラズマの動作電流とのうち、前記検出工程で検出されたものをサンプリングし、当該サンプリングしたデータであるサンプリングデータを生成するサンプリング工程と、
前記脈流の複数の周期における前記サンプリングデータに基づいて、前記サンプリングデータの統計量を導出する統計処理工程と、
を有し、
前記脈流は、前記直流電源の出力に重畳されているリップルであることを特徴とするプラズマトーチの状態監視方法。 - 前記統計量は、平均値、最頻値、中央値、最大値、最小値、標準偏差、および分散の少なくとも何れか1つを含むことを特徴とする請求項1に記載のプラズマトーチの状態監視方法。
- 前記サンプリングの周波数は、前記直流電源の一次側に接続される電源の周波数の正の整数倍であることを特徴とする請求項1または2に記載のプラズマトーチの状態監視方法。
- 前記サンプリングデータの統計量を繰り返し導出する頻度に対応する周波数である解析周波数は、前記サンプリングの周波数と、前記脈流の周波数との公約数であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のプラズマトーチの状態監視方法。
- 前記サンプリングデータの取得時刻を、前記脈流の一周期における位相に変換する変換工程をさらに有し、
前記統計処理工程は、前記脈流の複数の周期における前記サンプリングデータであって、前記変換工程により取得時刻が位相に変換された前記サンプリングデータに基づいて、前記サンプリングデータの統計量を導出することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のプラズマトーチの状態監視方法。 - 前記統計処理工程は、前記サンプリングデータの統計量を前記位相ごとに導出することを特徴とする請求項5に記載のプラズマトーチの状態監視方法。
- 前記統計処理工程は、前記位相ごとの前記サンプリングデータの統計量を、異なる複数のタイミングのそれぞれで導出し、当該異なる複数のタイミングにおける前記サンプリングデータの統計量の変化量を導出することを特徴とする請求項6に記載のプラズマトーチの状態監視方法。
- 前記異なる複数のタイミングにおける前記サンプリングデータの統計量の変化量は、前記異なる複数のタイミングのうち最も早いタイミングにおける前記サンプリングデータの統計量を基準とした場合の変化量であることを特徴とする請求項7に記載のプラズマトーチの状態監視方法。
- プラズマトーチの状態に関する情報を出力する出力工程をさらに有し、
前記統計処理工程は、前記サンプリングデータの統計量の変化量と閾値とを比較し、
前記出力工程は、前記サンプリングデータの統計量の変化量と閾値との比較の結果に基づく情報を、前記プラズマトーチの状態に関する情報として出力することを特徴とする請求項7または8に記載のプラズマトーチの状態監視方法。 - 前記検出工程は、前記プラズマの動作電圧と、前記プラズマの動作電流とを検出し、
前記統計処理工程は、前記脈流の複数の周期における前記プラズマの動作電圧・動作電流についての前記サンプリングデータであって、前記変換工程により取得時刻が位相に変換された前記サンプリングデータである電圧データ・電流データに基づいて、前記電圧データの前記位相ごとの平均値・前記電流データの前記位相ごとの平均値を位相平均電圧・位相平均電流としてそれぞれ導出し、前記位相平均電圧および前記位相平均電圧からリサージュ図形を生成することを特徴とする請求項5〜8の何れか1項に記載のプラズマトーチの状態監視方法。 - 前記統計処理工程は、前記位相平均電圧および前記位相平均電流を、異なる複数のタイミングのそれぞれで導出し、当該異なる複数のタイミングにおける前記位相平均電圧および前記位相平均電圧から、当該異なる複数のタイミングのそれぞれにおけるリサージュ図形を生成し、生成したリサージュ図形の面積の変化量をさらに導出することを特徴とする請求項10に記載のプラズマトーチの状態監視方法。
- 前記異なる複数のタイミングにおける前記リサージュ図形の面積の変化量は、前記異なる複数のタイミングのうち最も早いタイミングにおける前記リサージュ図形の面積を基準とした場合の変化量であることを特徴とする請求項11に記載のプラズマトーチの状態監視方法。
- プラズマトーチの状態に関する情報を出力する出力工程をさらに有し、
前記統計処理工程は、前記リサージュ図形の面積の変化量と閾値とを比較し、
前記出力工程は、前記リサージュ図形の面積の変化量と閾値との比較の結果に基づく情報を、前記プラズマトーチの状態に関する情報として出力することを特徴とする請求項11または12に記載のプラズマトーチの状態監視方法。 - 前記検出工程は、前記プラズマの動作電圧を検出し、
前記統計処理工程は、前記脈流の複数の周期における前記プラズマの動作電圧についての前記サンプリングデータである電圧データに基づいて、前記プラズマの動作電圧の標準偏差を導出することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のプラズマトーチの状態監視方法。 - 前記統計処理工程は、前記プラズマの動作電圧の標準偏差を異なる複数のタイミングのそれぞれで導出し、当該異なる複数のタイミングにおける前記プラズマの動作電圧の標準偏差の変化量をさらに導出することを特徴とする請求項14に記載のプラズマトーチの状態監視方法。
- 前記異なる複数のタイミングにおける前記プラズマの動作電圧の標準偏差の変化量は、前記異なる複数のタイミングのうち最も早いタイミングにおける前記プラズマの動作電圧の標準偏差を基準とした場合の変化量であることを特徴とする請求項15に記載のプラズマトーチの状態監視方法。
- プラズマトーチの状態に関する情報を出力する出力工程をさらに有し、
前記統計処理工程は、前記プラズマの動作電圧の標準偏差の変化量と閾値とを比較し、
前記出力工程は、前記プラズマの動作電圧の標準偏差の変化量と閾値との比較の結果に基づく情報を、前記プラズマトーチの状態に関する情報として出力することを特徴とする請求項15または16に記載のプラズマトーチの状態監視方法。 - ノズルを含むアノードと、カソードとを有し、前記アノードおよび前記カソードとの間に直流アークを発生させ、プラズマ形成ガスを前記アノードと前記カソードとの間の前記直流アークに通して加熱し、当該加熱したプラズマ形成ガスを前記ノズルから噴流として吹き出す動作をするプラズマトーチの状態を監視するためのプラズマトーチの状態監視システムであって、
前記アノードと前記カソードとの間の電圧であるプラズマの動作電圧と、前記アノードと前記カソードとの間に流れる電流であるプラズマの動作電流とのうち、少なくとも前記プラズマの動作電圧を検出する検出手段と、
前記直流アークを発生させるための直流電源の出力に含まれる脈流の周期に同期して、前記プラズマの動作電圧と前記プラズマの動作電流とのうち、前記検出手段で検出されたものをサンプリングし、当該サンプリングしたデータであるサンプリングデータを生成するサンプリング手段と、
前記脈流の複数の周期における前記サンプリングデータに基づいて、前記サンプリングデータの統計量を導出する統計処理手段と、
を有し、
前記脈流は、前記直流電源の出力に重畳されているリップルであることを特徴とするプラズマトーチの状態監視システム。
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