JP6439513B2 - プラズマトーチの状態監視方法およびプラズマトーチの状態監視システム - Google Patents

プラズマトーチの状態監視方法およびプラズマトーチの状態監視システム Download PDF

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Description

本発明は、プラズマトーチの状態監視方法およびプラズマトーチの状態監視システムに関し、特に、切断、溶接、溶射、雰囲気制御などに使用されるプラズマトーチの状態を監視するために用いて好適なものである。
プラズマトーチは、広く、切断、溶接、溶射、雰囲気制御などに使用される。プラズマトーチには、非移行型プラズマトーチ、および、移行型プラズマトーチがある。典型的な非移行型プラズマトーチでは、水冷ノズル(アノード)と、中心部に配置されたカソードとの間で直流アークが発生する。不活性ガスは、直流アークを通過することにより15000[℃]にまで加熱され、プラズマとして水冷ノズル(アノード)から開放空間に吹出される。
プラズマトーチにおいては、カソードおよびノズル(アノード)などの電極は、徐々に浸食され損傷するため、消耗品として取り替えて使用される。このためプラズマトーチの部品の損傷状況を、プラズマトーチの動作中の運転状況から判定することが行われている。
アノード電極の方が、カソード電極に比べて損耗が早く、交換頻度も高いことからアノード電極の損耗に関して広く調査されている。カソード電極上のカソード点は固定されているのに対し、アノード電極上のアノード点は高速で移動していることが知られている。アノード点の寿命(一か所での滞留時間)は、100[μs]程度であることが報告されている。このアノード点の移動に対応して、直流アークのV−I特性が変化することが知られている。直流アークを発生・維持するための電源は、一般に電流制御型に近い垂下特性を有することから、電圧を計測することにより、直流アークの状態、更には、アノード点の状態を推定することが試みられている。
例えば、特許文献1および2には、切断機、溶接部等に適用されるプラズマトーチ用モニタ装置に関して、プラズマトーチの電極に印加される電圧をモニタ監視する旨の記載がされている。
また、特許文献3には、プラズマトーチの電極およびノズルが経時的な消耗によって破壊される以前に電極の寿命やノズルの損傷を検知するために、冷却回路を流れる熱媒体への抜熱量をモニタ監視する旨の記載がされている。
また、非特許文献1では、市販のプラズマトーチを用いた溶射を長時間行い、平均電流値、平均電圧値、平均電力、電圧の二乗平均平方根、FFT(Fast Fourier Transform)での5[kHz]近傍のピーク周波数およびスペクトル強度などの電源運転条件、飛行中の溶射粒子の平均温度や平均速度などの光学的計測結果、および、溶射皮膜の空孔率、などの長時間推移を調査し、溶射皮膜の形成状態を飛行中の溶射粒子の光学的計測にてモニタ監視する旨の記載がされている。
一方で、アーク電圧は、5[kHz]近傍で振動することが1970年代より知られており、長い間広く研究されている。近年、プラズマトーチの内部空間とガス流れの相互作用が起因するHelmholtz共鳴が、アーク電圧の振動の原因となっているとの理論的な説明がなされた (Coudert-2007)。すなわち、流体力学的な振動が、アノード点の振動現象を介し、電気的な動作電圧の振動で観察されることが発見された。
なお、プラズマトーチにおいて、カソードとアノードとの間に中間部材を配置することにより、カソードとアノードとの間隔を大きく離間させることが提案されている(特許文献4、5を参照)。カソードとアノードとの間隔を大きく離間させることで、アーク電圧を高くし、同じ出力を得る場合には、相対的にアーク電流を低くすることができ、アノードの損耗を小さくできる。更に、アノード点の移動に伴うアーク電圧の変動の大きさが、アーク電圧の値との相対では小さくなるため、出力が相対的に安定する長所がある。本発明者らは、カソードとアノードとの間に中間部材を配置したカスケードアークガンにて120[V]以上の高電圧にて擬似層流プラズマを発生させ、電縫鋼管の溶接部の雰囲気制御に用いることを提案している(特許文献6を参照)。擬似層流プラズマを用いる用途においては、従来の乱流状態でのプラズマを用いる用途に比べて、より高精度なプラズマ状態の監視手段が必要とされるようになってきた。
一方で、アーク電源の分野においては、電源からの出力である電圧や電流を計測し、計測値を用いて電源出力の電圧や電流を制御することが行われている。特許文献7には、電圧制御の直流アーク溶接電源において、フィードフォワード制御により電圧リップルを低減する旨の記載がされている。計測および制御が実施される場合、計測される電圧や電流は、アナログ機器により、電源に組み込まれてアナログ的な制御が行われていた。
特開平1−30200号公報 特開平1−241379号公報 特開平10−76369号公報 特開平05−84455号公報 特許第2550073号公報 国際公開第2008/108450号 特公平3−69624号公報
L. Leblanc and C. Moreau, Journal of Thermal Spray Technology, 11 (2002) pp.380
溶射以外の用途、例えば、プラズマトーチを用いた鋼管などの溶接作業中にも電極材質の劣化が進み、放電が不安定になったり、停止してしまったりする場合が頻繁にある。このような場合、溶接作業を中断し、電極交換などを行った後、作業を再開する。このような場合、当然ながら、溶接中断部の材質の劣化についての試験などの追加作業を行う必要がある場合もあり、生産性の大幅な低下をもたらす。したがって、プラズマトーチにおける電極の損耗状況を正確に検出することが望まれる。
しかしながら、非特許文献1に記載されている電気的パラメータ(平均電流値、平均電圧値、平均電力、電圧の二乗平均平方根、FFTでの5[kHz]近傍のピーク周波数およびスペクトル強度)は、光学的モニタの信号に比して鈍感であり、感度が低いという課題がある。
プラズマの長さは再現性が悪く、例えば、プラズマトーチの組み立て精度などによっても変わる。したがって、特許文献1、2および非特許文献1に記載されている電圧値または平均電圧値は、必ずしもプラズマの長さを監視する指標にはならない。
また、非特許文献1に記載されているFFTでの5[kHz]近傍のピーク周波数およびスペクトル強度は、ガス流量条件には敏感であるが、アノードの損耗状況には鈍感である。
また、特許文献3に記載されているプラズマトーチの冷却回路を流れる熱媒体への抜熱量は、平均電圧値よりも更に鈍感であり、検出速度が大きく劣る課題がある。
以上のように、従来技術では、プラズマトーチのアノードの損耗状況を正確に検出することができないという課題があった。
本発明は、以上の課題に鑑みてなされたものであり、プラズマトーチの電極の損耗状況を正確に検出することを目的とする。
本発明者らは、前記課題を解決するために実験計測した電圧・電流推移データを鋭意検討し、その結果、電気的な加振方法においても流体力学的な加振と同様にアノード点の振動となり動作電圧の振動として観察されることを見出した。更に、電気的な加振方法、電圧・電流推移データのサンプリング方法、および、統計処理方法など、種々検討し、プラズマトーチの状態の監視をより正確に把握できる方法を見出し、本発明を成した。即ち本発明は以下の通りである。
(1) ノズルを含むアノードと、カソードとを有し、前記アノードおよび前記カソードとの間に直流アークを発生させ、プラズマ形成ガスを前記アノードと前記カソードとの間の前記直流アークに通して加熱し、当該加熱したプラズマ形成ガスを前記ノズルから噴流として吹き出す動作をするプラズマトーチの状態を監視するためのプラズマトーチの状態監視方法であって、前記アノードと前記カソードとの間の電圧であるプラズマの動作電圧と、前記アノードと前記カソードとの間に流れる電流であるプラズマの動作電流とのうち、少なくとも前記プラズマの動作電圧を検出する検出工程と、前記直流アークを発生させるための直流電源の出力に含まれる脈流の周期に同期して、前記プラズマの動作電圧と前記プラズマの動作電流とのうち、前記検出工程で検出されたものをサンプリングし、当該サンプリングしたデータであるサンプリングデータを生成するサンプリング工程と、前記脈流の複数の周期における前記サンプリングデータに基づいて、前記サンプリングデータの統計量を導出する統計処理工程と、を有し、前記脈流は、前記直流電源の出力に重畳されているリップルであることを特徴とするプラズマトーチの状態監視方法。
) 前記統計量は、平均値、最頻値、中央値、最大値、最小値、標準偏差、および分散の少なくとも何れか1つを含むことを特徴とする(1)に記載のプラズマトーチの状態監視方法。
) 前記サンプリングの周波数は、前記直流電源の一次側に接続される電源の周波数の正の整数倍であることを特徴とする(1)または(2)に記載のプラズマトーチの状態監視方法。
) 前記位相ごとの前記サンプリングデータの統計量を繰り返し導出する頻度に対応する周波数である解析周波数は、前記サンプリングの周波数と、前記脈流の周波数との公約数であることを特徴とする(1)〜()の何れかに記載のプラズマトーチの状態監視方法。
) 前記サンプリングデータの取得時刻を、前記脈流の一周期における位相に変換する変換工程をさらに有し、前記統計処理工程は、前記脈流の複数の周期における前記サンプリングデータであって、前記変換工程により取得時刻が位相に変換された前記サンプリングデータに基づいて、前記サンプリングデータの統計量を導出することを特徴とする(1)〜()の何れかに記載のプラズマトーチの状態監視方法。
) 前記統計処理工程は、前記サンプリングデータの統計量を前記位相ごとに導出することを特徴とする()に記載のプラズマトーチの状態監視方法。
) 前記統計処理工程は、前記位相ごとの前記サンプリングデータの統計量を、異なる複数のタイミングのそれぞれで導出し、当該異なる複数のタイミングにおける前記サンプリングデータの統計量の変化量を導出することを特徴とする()に記載のプラズマトーチの状態監視方法。
) 前記異なる複数のタイミングにおける前記サンプリングデータの統計量の変化量は、前記異なる複数のタイミングのうち最も早いタイミングにおける前記サンプリングデータの統計量を基準とした場合の変化量であることを特徴とする()に記載のプラズマトーチの状態監視方法。
) プラズマトーチの状態に関する情報を出力する出力工程をさらに有し、前記統計処理工程は、前記サンプリングデータの統計量の変化量と閾値とを比較し、前記出力工程は、前記サンプリングデータの統計量の変化量と閾値との比較の結果に基づく情報を、前記プラズマトーチの状態に関する情報として出力することを特徴とする()または()に記載のプラズマトーチの状態監視方法。
(1) 前記検出工程は、前記プラズマの動作電圧と、前記プラズマの動作電流とを検出し、前記統計処理工程は、前記脈流の複数の周期における前記プラズマの動作電圧・動作電流についての前記サンプリングデータであって、前記変換工程により取得時刻が位相に変換された前記サンプリングデータである電圧データ・電流データに基づいて、前記電圧データの前記位相ごとの平均値・前記電流データの前記位相ごとの平均値を位相平均電圧・位相平均電流としてそれぞれ導出し、前記位相平均電圧および前記位相平均電圧からリサージュ図形を生成することを特徴とする()〜()の何れかに記載のプラズマトーチの状態監視方法。
(1) 前記統計処理工程は、前記位相平均電圧および前記位相平均電流を、異なる複数のタイミングのそれぞれで導出し、当該異なる複数のタイミングにおける前記位相平均電圧および前記位相平均電圧から、当該異なる複数のタイミングのそれぞれにおけるリサージュ図形を生成し、生成したリサージュ図形の面積の変化量をさらに導出することを特徴とする(1)に記載のプラズマトーチの状態監視方法。
(1) 前記異なる複数のタイミングにおける前記リサージュ図形の面積の変化量は、前記異なる複数のタイミングのうち最も早いタイミングにおける前記リサージュ図形の面積を基準とした場合の変化量であることを特徴とする(1)に記載のプラズマトーチの状態監視方法。
(1) プラズマトーチの状態に関する情報を出力する出力工程をさらに有し、前記統計処理工程は、前記リサージュ図形の面積の変化量と閾値とを比較し、前記出力工程は、前記リサージュ図形の面積の変化量と閾値との比較の結果に基づく情報を、前記プラズマトーチの状態に関する情報として出力することを特徴とする(1)または(1)に記載のプラズマトーチの状態監視方法。
(1) 前記検出工程は、前記プラズマの動作電圧を検出し、前記統計処理工程は、前記脈流の複数の周期における前記プラズマの動作電圧についての前記サンプリングデータである電圧データに基づいて、前記プラズマの動作電圧の標準偏差を導出することを特徴とする(1)〜()の何れかに記載のプラズマトーチの状態監視方法。
(1) 前記統計処理工程は、前記プラズマの動作電圧の標準偏差を異なる複数のタイミングのそれぞれで導出し、当該異なる複数のタイミングにおける前記プラズマの動作電圧の標準偏差の変化量をさらに導出することを特徴とする(1)に記載のプラズマトーチの状態監視方法。
(1) 前記異なる複数のタイミングにおける前記プラズマの動作電圧の標準偏差の変化量は、前記異なる複数のタイミングのうち最も早いタイミングにおける前記プラズマの動作電圧の標準偏差を基準とした場合の変化量であることを特徴とする(1)に記載のプラズマトーチの状態監視方法。
(1) プラズマトーチの状態に関する情報を出力する出力工程をさらに有し、前記統計処理工程は、前記プラズマの動作電圧の標準偏差の変化量と閾値とを比較し、前記出力工程は、前記プラズマの動作電圧の標準偏差の変化量と閾値との比較の結果に基づく情報を、前記プラズマトーチの状態に関する情報として出力することを特徴とする(1)または(1)に記載のプラズマトーチの状態監視方法。
(1) ノズルを含むアノードと、カソードとを有し、前記アノードおよび前記カソードとの間に直流アークを発生させ、プラズマ形成ガスを前記アノードと前記カソードとの間の前記直流アークに通して加熱し、当該加熱したプラズマ形成ガスを前記ノズルから噴流として吹き出す動作をするプラズマトーチの状態を監視するためのプラズマトーチの状態監視システムであって、前記アノードと前記カソードとの間の電圧であるプラズマの動作電圧と、前記アノードと前記カソードとの間に流れる電流であるプラズマの動作電流とのうち、少なくとも前記プラズマの動作電圧を検出する検出手段と、前記直流アークを発生させるための直流電源の出力に含まれる脈流の周期に同期して、前記プラズマの動作電圧と前記プラズマの動作電流とのうち、前記検出手段で検出されたものをサンプリングし、当該サンプリングしたデータであるサンプリングデータを生成するサンプリング手段と、前記脈流の複数の周期における前記サンプリングデータに基づいて、前記サンプリングデータの統計量を導出する統計処理手段と、を有し、前記脈流は、前記直流電源の出力に重畳されているリップルであることを特徴とするプラズマトーチの状態監視システム。
本発明によれば、プラズマトーチの電極の損耗状況を正確に検出することができる。
アノード電極・カソード電極間の電位と時間との関係の一例を示す図である。 プラズマトーチの状態監視システムの構成の一例を示す図である。 プラズマトーチの状態監視システムの動作の一例を説明するフローチャートである。 位相平均電圧と時間との関係の第1の例を示す図である。 位相平均電流と時間との関係の第1の例を示す図である。 電圧データの状態の一例を概念的に示す図である。 位相平均電圧と時間との関係の第2の例を示す図である。 位相平均電流と時間との関係の第2の例を示す図である。 位相平均電圧変化と位相との関係の一例を示す図である。 位相平均電流変化と位相との関係の一例を示す図である。 位相平均電圧および位相平均電流のリサージュ図形の第1の例を示す図である。 位相平均電圧および位相平均電流のリサージュ図形の第2の例を示す図である。 位相平均電圧変化および位相平均電流変化のリサージュ図形を示す図である。 プラズマの動作電圧の標準偏差と累積運転時間との関係の一例を示す図である。 プラズマの動作電圧の標準偏差とサンプル数との関係の一例を示す図である。
本発明の実施形態を説明する前に、本発明者らが得た知見およびなどについて説明する。
[電極材料の劣化]
プラズマは、アノード電極とカソード電極との間の放電によって生じる。アノード電極上での放電位置は、電極上の任意の点で確率的に決まる。そして、放電開始後、安定的な放電が維持される。このとき、電極表面の放電位置は、ランダムに移動していると考えられる。しかしながら、放電積算時間が長くなると、電極材料の表面が粗くなり、劣化が生じる。電極表面が粗くなり、放電位置が電極表面の凹部の一か所に短時間留まり、その後突然移動する現象が生じる場合がある。それに伴い、アノード電極・カソード電極間の電圧や電流にパルス状のノイズが含まれる場合がある。以後、このような現象を必要に応じて「雑音放電」と称する。本発明者らは、このようなパルス状のノイズをモニタすることで電極材料の劣化を推定することが可能ではないかと考えた。しかしながら、雑音放電は、ほとんど時間的にランダムに生じるため、アノード電極・カソード電極間の電流波形に時間的にランダムなノイズが出るのみであり、アノード電極・カソード電極間の電流波形をモニタしても電極材質の劣化を定量的に評価することは不可能であった。図1は、アノード電極・カソード電極間の電位Vと時間との関係(の実測値)の一例を示す図である。図1に示すように、アノード電極・カソード電極間の電位Vに、パルス状のノイズが重畳されていることは分かるが、このままでは、このようなパルス状のノイズの信号の経時変化をとらえることはほぼ不可能である。
[プラズマ電圧とプラズマ電流]
アノード電極・カソード電極間に直流電圧を与えるとプラズマが発生するが、プラズマは、電極と電荷のやり取りを行う、即ち、電極との間に電流を流すことで電離状態を保つ。従って、プラズマの強さなどの状態を、アノード電極・カソード電極間に流れる電流をモニタすることで監視する場合がある。以下の説明では、アノード電極・カソード電極間に流れる電流を必要に応じて「プラズマの動作電流」と称する。
プラズマの動作電流をモニタする場合、通常、接地側の電極と接地電位との間に低抵抗値の抵抗器を入れてその抵抗器の両端の電圧を計測する場合が多い。この抵抗器をシャント抵抗などという。なお、シャント抵抗の値は、プラズマの抵抗よりも大幅に小さい必要がある。また、以下の説明において、前記抵抗器(シャント抵抗)の両端に表れる電圧波形の電圧値を前記抵抗器(シャント抵抗)の抵抗値で割った電流値の波形を必要に応じて「電流波形」と称する。ここで、電流波形を得る方法は、前記抵抗器(シャント抵抗)を用いる方法に限定されない。例えば、電磁誘導現象を利用して電流を計測してもよい。また、アノード電極・カソード電極間の電圧を計測することもできる。以下の説明では、アノード電極・カソード電極間の電圧を必要に応じて「プラズマの動作電圧」と称する。また、このようにして計測したプラズマの動作電圧の波形を必要に応じて「電圧波形」と称する。雑音放電において発生したノイズは、電流波形、電圧波形にも表れる。
[プラズマの電気的加振]
本発明者らは、当初、プラズマの動作電圧とプラズマの動作電流をモニタし、それらの信号には、数百Hzで周期的に変動する成分と、高周波のノイズ状の成分と、パルス状にランダムに発生するノイズ状の成分とがあることに着目した。また、前記数百Hzで周期的に変動する成分は、直流電源の出力に重畳されたリップルノイズであることが分かった。また、リップルノイズに同期して、プラズマの動作電圧・動作電流のうち、少なくともプラズマの動作電圧を統計的に解析することにより、ノイズ成分の経時的変化をモニタできることが分かった。
そこで、ラボレベルのプラズマにおいてリップルノイズを含まない精密直流安定化電源を用いてプラズマの動作電圧をモニタした。前記精密直流安定化電源の出力に交流変調信号を重畳してプラズマを駆動し、当該交流変調信号に同期させてプラズマの動作電圧をモニタし、統計的解析を行った。その結果、リップルノイズに同期して、プラズマの動作電圧を統計的に解析したときと同様に、ノイズ成分の経時的変化をモニタすることができた。また、前記交流変調信号を重畳しなかった場合、プラズマの動作電圧を統計的に解析しても、ノイズ状の成分の経時的変化をとらえることはかなり困難であった。
このような知見から、本発明者らは、プラズマ状態に周期的な摂動を加えることによってほぼ完全にランダムに発生する雑音放電になんらかの規則性を与えるのではないかと考えた。即ち、前記精密直流安定化電源の出力に重畳された交流変調信号によってプラズマが加振され、その応答として、雑音放電に伴い発生するパルス状ノイズにも何らかの規則性が現れることにより、経時的な変化を見ることができると考えた。また、本発明者らは、プラズマトーチなどに用いられる直流電源のリップルノイズは、そのような交流変調信号の役割を果たしているものと考えた。更に、ノイズ状の成分の経時的変化をモニタすることで電極材料の寿命を予測することができることが分かった。
[電気的変調]
以下、電圧を電流と読み替えても同じことが言える。電気的変調は、アノード電極・カソード電極間に与える直流電圧に変調電圧を重畳すればよい。この時、直流電源からの直流出力電圧に対する変調電圧の振幅の比は、0.1[%]〜10[%]程度が好ましいという知見を得た。この比が、0.5[%]よりも小さいとプラズマが充分に電気的加振されず、10[%]よりも大きいとプラズマの質が変わってしまい安定放電が維持できなくなる。重畳された変調電圧に対して、プラズマが加振され、変調電流が流れる。即ち電流と電圧の周波数は同一である。この周波数、即ち変調周波数は特に限定しないが、10[Hz]〜20[kHz]の範囲であるのが好ましい。この変調周波数が10[Hz]未満の低周波であると、電気的加振の効果が十分でなく、20[kHz]超であると、電場〈電束密度〉の時間微分に基づく変位電流の効果などの影響で、プラズマが変質する懸念がある。
[直流電源のリップルと周波数]
直流アークを発生・維持するための直流電源には、単相あるいは三相の交流電圧を整流して直流電圧を出力する直流安定化電源が用いられる場合が多い。このような直流安定化電源においては、交流が取りきれず小さな振幅の交流電圧が直流出力に重畳されている場合が多い。このような重畳された交流出力をリップルノイズ、あるいは単にリップルと言う。その振幅は、直流電源のグレードによって異なる。また、リップルの周波数は、直流電源に対する入力となる商用交流電源の仕様によって異なる。直流電源のリップル周波数は、商用交流電源が単相交流であれば、商用交流電源の周波数の2倍の周波数となり、三相交流であれば、商用交流電源の周波数の6倍の周波数となる。直流電源の多くは、ダイオードなどの素子を基本要素とした整流素子を用いるため、商用交流電源1相当たりの周波数が2倍となるためである。即ち、交流商用電源が50[Hz]の単相交流であれば、リップル周波数は100[Hz]であり、50[Hz]の三相交流であれば、リップル周波数は300[Hz]となる場合が多い。ただし、整流方式によっては、リップル周波数が商用交流周波数と同じ周波数となる場合もあり得る。
一般的には、リップルの振幅は小さければ小さいほうが直流電源としては高い性能を持つとされる。しかしながら、リップルノイズは、プラズマに対する電気的加振という観点からすると有効なものである。このようなリップルノイズによってプラズマが加振されるためである。前述したように、本発明者らは、リップルの振幅がほぼ0(ゼロ)である直流電源の出力電圧に、当該直流電源とは異なる交流電源からの交流出力をリップルノイズと同じ振幅と周波数に調整して重畳してプラズマを発生させた場合、リップルノイズと同様の電気的加振効果が得られることを確認した。以下では、プラズマに対する電気的加振という観点から、リップルノイズは、意図的に変調した変調信号(電圧・電流)と同義であるとするものとして説明する。
[電気的加振に対する応答]
前記のように、プラズマに電気的加振を加えると、それに対するプラズマの応答として、電極材質の劣化に伴う雑音放電の振る舞いに規則性が見出されることを期待した。本発明者らは、雑音放電によるパルス状ノイズの振る舞いは、ノイズ状の成分を統計的に処理することによって初めて認識されるものであることを見出した。プラズマの応答を計測するために、例えば、以下の手順が必要であることを見出した。
(1) 脈流(変調信号またはリップルノイズ)の1周期に対応するプラズマの動作電流の波形あるいはプラズマの動作電圧の波形(以下の説明では、これらの波形を必要に応じて「プラズマ波形」と称する)を計測する。
この計測は、例えば、変調信号またはリップルノイズを、計測器における計測のトリガ信号として入力とすることによって実現することができる。トリガ信号とする変調信号またはリップルノイズは、計測するプラズマ波形の信号をフィルタに通すことにより取得してもよい。また、計測するプラズマ波形の信号そのものをトリガ信号とすることができる場合もある。
(2) 前記(1)で計測されるプラズマ波形は、変調信号の1周期分の時間における電流波形または電圧波形である。この変調信号の1周期の時間を0から2π[rad]までの位相に変換する。最初に取得したプラズマ波形のデータの位相である初期位相は、計測器のトリガレベルの調整により調整可能である。変調信号が重畳されたプラズマ波形を記録し、記録したプラズマ波形から変調信号の1周期の時間を読み取って位相に変換することも可能である。
(3) 前記(1)および(2)を変調信号の複数(多く)の周期に対して繰り返す。即ち、一つの位相値に対して複数(多く)のプラズマ波形の出力値が集められることになる。
(4) 前記(3)で集められたデータについて統計的演算を行うことにより統計量を求める。統計量は、例えば、同じ位相に属するデータごとに求めることができる。また、統計量は、例えば、平均値、最頻値、最大値、最小値、中央値、標準偏差、および分散の少なくとも何れか1つを含む。
以下に、図面を参照しながら、本発明の一実施形態を説明する。
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態を説明する。
図2は、プラズマトーチの状態監視システムの構成の一例を示す図である。図3は、プラズマトーチの状態監視システムの動作の一例を説明するフローチャートである。
図2において、プラズマトーチは、環状のアノード1および円筒形状のカソード2を有する。アノード1とカソード2の先端であるカソードチップとの間には直流アークが発生する。プラズマ形成ガスは、円筒形状のカソード2の周囲の空間に導入され、アノード1とカソード2との間の流路を通り、アノード2に設けられたノズル出口より、プラズマトーチの外部空間へ吹き出る。この間、プラズマ形成ガスは、アノード1とカノード2との間に発生している直流アークを通過するので、高温に加熱され、ノズルから吹き出る噴流となる時には、15000[℃]のプラズマ状態となっている。
プラズマトーチには、非移行型アークプラズマトーチと、移行型アークプラズマトーチがある。本実施形態では、非移行型アークプラズマトーチの状態を監視する場合を例に挙げて説明する。切断などの用途に用いられる移行型アークプラズマトーチにおいては、移行型モードとパイロットモードを動作モードとして有する。移行型モードにおいては、ワークをアノードとして動作させる。一方、パイロットモードにおいては、アノードはワークではなく、プラズマトーチのノズルとなっている。パイロットモードの場合、非移行型アークプラズマトーチと同様に、移行型アークプラズマトーチであっても、状態の監視の対象にすることができる。
なお、プラズマトーチは、公知の技術で実現することができる。したがって、ここでは、その詳細な説明を省略する。
直流アークを発生・維持するために直流電源3が、プラズマトーチに電気的に接続されている。直流電源3は、商用電源4の交流を整流して直流を発生する。このときに整流しきれない交流成分(前述したリップルノイズ)が整流後の直流に重畳する。本実施形態においては、前述したように、直流電源3に敢えて任意の特定周波数を有する変調成分を積極的に加えて利用するか、または、直流電源3に固有のリップルノイズによる変調成分を利用する。
また、直流アークを発生するために高周波スタータ8が、直流電源3とプラズマトーチとの間に挿入される。直流電源3の一次側は、商用電源4に接続され、商用電源4から交流電力の供給を受ける。多くの場合、商用電源4としては3相交流電源が用いられるが、これに限定されることが無く、単相交流電源であっても良い。
プラズマトーチの状態を監視するために、プラズマ(直流アーク)の動作電流および動作電圧の計測を行う。図2に示す例では、プラズマの動作電流を計測するためにシャント5が回路に挿入されている。電流検出器6は、シャント5の両端の電圧を計測し、計測した電圧値とシャント抵抗5の抵抗値とから、プラズマの動作電流を導出する(図3のステップS301)。なお、プラズマの動作電流の計測は、シャント5を用いる方法に限定されるものではない。例えば、クランプメータなどの電磁誘導を利用した計測器を用いてプラズマの動作電流を計測してもよい。
電圧検出器7は、プラズマの動作電圧を、カソード2とアノード1との間の電圧として計測する。図2に示す例では、アノード1は接地されている。したがって、電圧検出器7は、プラズマの動作電圧を、カソード1とグランドとの間の電圧として計測する(図3のステップS301)。
プラズマの動作電圧および動作電流は、電圧検出器7および電流検出器6により時間的に連続に計測される。
本実施形態では、電圧検出器7・電流検出器6は、プラズマの動作電圧・動作電流を、時間的に離散化し、離散化したプラズマの動作電圧・動作電流のデータを解析装置9に出力する(図3のステップS302)。以下の説明では、このようにして離散化されたプラズマの動作電圧・動作電流のデータを、必要に応じて、それぞれ、「電圧データ」、「電流データ」と称する。
このように、電圧検出器7・電流検出器6は、プラズマの動作電圧・動作電流をサンプリングする。前述したように、電圧検出器7・電流検出器6は、変調信号またはリップルノイズをトリガ信号として、プラズマの動作電圧・動作電流をサンプリングする。電圧検出器7・電流検出器6は、プラズマの動作電圧・動作電流の信号を適当なフィルタに通すことにより変調信号またはリップルノイズを取り出し、取り出した変調信号またはリップルノイズを計測器のトリガ信号として入力することもできる。前述したように、直流電源の出力に含まれるリップルノイズは、変調信号と同様に、プラズマを電気的に加振する効果を持つ。
以下では、本実施形態では、リップルノイズをトリガ信号とする場合を例に挙げて説明する。尚、変調信号をトリガ信号とする場合には、以下の説明において、リップルノイズ、リップルを変調信号に置き換えればよい。
ここで、電圧検出器7・電流検出器6で単位時間に取得するデータ数、即ち、サンプリング周波数をfsampleと表記する。サンプリング周期(サンプリングの時間間隔)τsampleは、サンプリング周波数fsampleの逆数(τsample=1/fsample)で表される。また、サンプリングの角周波数ωsampleは、2πfsampleで表される。
また、直流電源3の出力に重畳されるリップルノイズの周波数であるリップル周波数をfrippleと表記する。リップルノイズの周期であるリップル周期τrippleは、リップル周波数frippleの逆数(τripple=1/fripple)で表される。また、リップルノイズの角周波数ωrippleは、2πfrippleで表される。
サンプリング周波数fsampleは、直流電源3の一次側に接続される商用電源4の周波数f1のN(Nは正の整数)倍とする(以下の説明では、Nを必要に応じて、「周波数倍率N」と称する)。ここでは、直流電源3のリップル周波数frippleの主成分は、商用電源4が三相電源の場合には、商用電源4の周波数f1の6倍、商用電源4が単相電源の場合には、商用電源4の周波数f1の2倍となるものとする。前記周波数倍率Nは、商用電源4が三相交流電源である場合には6を上回り、商用電源4が単相交流電源である場合には2を上回る整数である必要がある。したがって、サンプリング周波数fsampleは、直流電源3のリップル周波数frippleを上回る必要がある。前記周波数倍率Nは、大きい程短周期で高速な現象を捉えられるが、逆に、データ解析に大量のリソースが必要となる。したがって、前記周波数倍率Nは、例えば、数十倍程度の倍率でよい。
ここで、電圧検出器7・電流検出器6が、リップル周期τrippleの一周期において取得(サンプリング)するデータの数をJと表記する。
電圧検出器7・電流検出器6は、このようなJ個の離散化された電圧データ・電流データ(プラズマの動作電圧・動作電流のデータ)を繰り返し解析装置9に出力する。
解析装置9は、電圧検出器7・電流検出器6から出力されたJ個の離散化された電圧データ・電流データのうち、少なくともプラズマの動作電圧を解析する。解析装置9のハードウェアは、例えば、CPU、ROM、RAM、HDD、コンピュータディスプレイ、および各種のインターフェースを備えた情報処理装置や、専用のハードウェアを用いることにより実現することができる。
解析装置9は、前述した統計量が導出される頻度に対応する周波数、即ち解析周波数fanalysisで電圧データを解析する。ここで、解析周期τanalysisは、解析周波数fanalysisの逆数(τanalysis=1/fanalysis)で表され、前述した統計量が導出される時間間隔である。また、角周波数ωanalysisは、2πfanalysisで表される。
リップル周期τrippleの一周期分のデータを高い位相分解能で得るために、サンプリング周波数fsampleは、リップル周波数frippleよりも充分に大きいことが好ましい。しかし、サンプリング周波数fsampleがあまり大きいと、データ数が増え、装置のコストがかかる。このため、サンプリング周波数fsampleは、リップル周波数frippleの10倍以上、100倍以内であることが好ましい。
また、解析周波数fanalysysは、サンプリング周波数fsampleとリップル周波数frippleとの公約数である必要がある。望ましくは、解析周波数fanalysysは、サンプリング周波数fsampleとリップル周波数frippleとの最大公約数とする。
例えば、直流電源3の一次側に接続される商用電源4の周波数f1が50[Hz]であり、リップル周波数frippleが300[Hz]であり、サンプリング周波数fsampleが商用電源4の周波数f1の50[Hz]の50倍である2500[Hz]である場合について説明する。
サンプリング周波数fsampleは2500[Hz]であり、リップル周波数frippleは300[Hz]であるので、これらの公約数は、2、4、5、10、20、40、50、100である。この場合、解析周波数fanalysysとして、最大公約数の100[Hz]が電圧検出器7・電流検出器6に設定される。サンプリング周波数fsampleがリップル周波数frippleの正の整数倍である場合には、リップル周波数frippleも公約数となっている。この場合には、解析周波数fanalysysとしてリップル周波数frippleを電圧検出器7・電流検出器6に設定できる。このような場合であって、商用電源4が三相交流電源である場合には、前記周波数倍率Nは、6の倍数となる。以下では、サンプリング周波数fsampleがリップル周波数frippleの正の整数倍である場合を必要に応じて「密」なケースと称し、主としてサンプリング周波数fsampleが3000[Hz]の時の例で説明する。この時、解析周波数fanalysysとして300[Hz]が電圧検出器7・電流検出器6に設定される。
解析周波数fanalysysは、サンプリング周波数fsampleと電源リップル周波数frippleの公約数から選ばれる。したがって、解析周波数fanalysysは、サンプリング周波数fsampleと整数比1:J(fanalysys:fsample=1:J)になる。解析周波数fanalysys(=300[Hz])とサンプリング周波数fripple3000[Hz]との比は、1:10であり、Jは10である。なお、前述したように、Jは、リップル周期τrippleの一周期において取得(サンプリング)するデータの数である。
以下の説明では、J個の離散化された電圧データ・電流データ(プラズマの動作電圧・動作電流のデータ)のうち、同じ位相に属するデータの平均値を必要に応じて「位相平均電圧」、「位相平均電流」と称する。図4Aは、J個の位相φrippleにおける位相平均電圧U(φripple)と時間との関係の第1の例を示す図であり、図4Bは、J個の位相φrippleにおける位相平均電流I(φripple)と時間との関係の第1の例を示す図である。両図とも横軸は、リップル周期τrippleの一周期分を2πとした場合の位相である。
本発明者らは、プラズマトーチの動作を継続すると、位相平均電圧および位相平均電流は、例えば、それぞれ図4Aおよび図4Bに示すようになるという知見を得た。即ち、位相平均電圧Uは、図4Aに示すように、位相が増えるにつれて大きくなり、ある位相で最も大きくなった後、小さくなることを繰り返し、位相平均電流Iは、図4Bに示すように、位相平均電圧Uとは逆の傾向を示すという知見を得た。なお、図4A、図4Bでは、プラズマトーチの累積動作時間が100時間である場合の結果を示す。
本実施形態では、以下の(A)〜(F)の処理が行われる。
(A) 電圧検出器7・電流検出器6は、リップル周期τripple分のJ個の電圧データ・電流データをサンプリング時間間隔τsample(=1/fripple)で取得して解析装置9に出力する(図3のステップS301、S302)。
(B) 解析装置9の解析部91は、J個の電圧データ・電流データの取得時刻を、φ0〜φ0+2πの間の、リップル周期τripple中の位相に変換する(図3のステップS303)。ここで、φ0は、初期位相である。初期位相φ0は、リップルノイズの信号をトリガレベルとして計測器(電圧検出器7・電流検出器6)でサンプルトリガがかかる時間におけるリップル周期τrippleの一周期内の位相である。例えば、トリガレベルの位相(初期位相)をφ0とすると、その次の電圧データ・電流データの位相は、φ0+2πτsample/τrippleとなる。したがって、連続する電圧データ・電流データの位相は、2πτsample/τrippleだけ増えてゆく。最後の電圧データ・電流データには、φ0+2πJτsample/τrippleの位相が付与される。
ここで、初期位相φ0は、計測器でのトリガレベルの調整などで調整できる。また、取得時間が相互に隣り合う電圧データ・電流データの位相差は、2πτsample/τrippleである。J個の電圧データ・電流データは、リップル周期τrippleの一周期以内の時間に取得される必要がある。即ち、1番目の電圧データ・電流データ(の取得時間)とJ番目の電圧データ・電流データ(の取得時間)との位相差は、2π以内であること好ましい。即ち、Jτsample/τripple≦1であることが好ましい。また、n番目(1≦n≦Jの整数)の電圧データ・電流データ(の取得時間)の位相φ0+2πnτsample/τrippleが2πを越えた場合、その位相の値から2πを減じた値を新たな位相とすれば、電圧データ・電流データの取得時間を0〜2πの何れかに対応させることができる。また、位相をφ0〜φ0+2πの間で定義してもよい。また、トリガレベルの調整によりφ0=0としてもよい。
(C) 電圧検出器7、電流検出器6、および解析部91は、前記(A)および(B)をM回繰り返す(図3のステップS304)。即ち、リップル周期τrippleのM周期分の時間、前記(A)および(B)が繰り返される。この時、J個の電圧データ・電流データからなるデータセットがM個得られる。Mは、後述する統計的演算を行うためのデータ数である。以下の説明では、Mを必要に応じて「解析周期の繰り返し回数」と称する。
各データセットにおけるn番目の電圧データ・電流データは、リップル周期τripple中の同一の位相におけるデータであることが好ましい。即ち、Jτsample/τripple=1であることが好ましい。但し、Jτsample/τripple<1であっても、各データセットのn番目の電圧データ・電流データの位相が同じであるようにすることができる。例えばトリガレベルが一定であれば、各データセットのn番目の電圧データ・電流データの位相を同じにすることが可能である。
図5は、電圧データの状態の一例を概念的に示す図である。図5において、U*(*は図5のUの傍らに付されている部分を示す)は、1つの電圧データを示す。図5の上段は、電圧検出器7で得られるものであり、図5の中段は、解析部91で得られるものであり、図5の下段は、後述する統計処理部92で得られるものである。
図5の上段は、時刻t0(プラズマトーチの動作初期時刻(累積運転時間=0(ゼロ)))にサンプリングが開始され、サンプリング周波数fsampleにてM×J個の電圧データがサンプリング・蓄積された状態を示す。ここで、Mは、前述した解析周期の繰り返し回数である。前述したように、解析周波数fanalysysを用いて、解析周期τanalysysは1/fanalysysと表される。1回の解析周期τanalysysの時間帯には、J個の電圧データがサンプリング・蓄積される。これをM回繰り返すことで、M回の解析周期τanalysysの時間帯では、M×J個の電圧データがサンプリング・蓄積されることとなる。即ち、図5の上段のM×J個の数列が、図5の中段に示すM行×J列の密な行列に書き換えられる。
解析周期τanalysysの繰り返し回数Mは、大きければ大きい程、無秩序な電圧データの揺らぎの影響を排除して、プラズマトーチの状態を的確に把握することが出来るようになる。一方、M×J個の電圧データの蓄積に必要とされる時間は、M×τanalysys、または、M×J×τsample(=1/fsample)である。このため、一回の解析ステップに実行される電圧データを得るために長時間必要とされ、監視・異常検知の即時応答性が失われる虞がある。したがって、解析周期の繰り返し回数は、例えば、100程度でよい。
前述したように、サンプリング周波数fsampleがリップル周波数frippleの正の整数倍である「密」なケースでは、リップル周波数frippleと解析周波数fanlysysを等しく設定するので、リップル周期τrippleと解析周期τanalysysは等しい。1回のリップル周期τripple内にはJ回のサンプリング機会が存在する。長周期のリップル周期τripple内のJ回のサンプリング機会は、J個の位相φrippleで整理される。すなわち、一般的にサンプリング時刻tiは、リップル周期τrippleの整数倍の時刻部分と位相φrippleの時刻部分とに分離でき、それらの和に変形することができる。φrippleは、τripple/Jのj(j=0,1,2,・・・,J−1)倍である。図1の中段のM行×J列の密な行列表示では、同一の列に属する電圧データUは、同一の位相φrippleの時刻にサンプリングされていることを示す。
以上、サンプリング周波数fsampleがリップル周波数frippleの正の整数倍で場合である「密」なケースを説明した。次に、サンプリング周波数fsampleがリップル周波数frippleの正の整数倍で場合でない「疎」なケースについて説明する。
ここでは、サンプリング周波数fsampleが2500[Hz]であり、周波数倍率Nが50倍であり、リップル周波数frippleが300[Hz]である場合を例に挙げて説明する。この場合、解析周波数fanalysysとして、サンプリング周波数fsampleとリップル周波数frippleとの最大公約数である100[Hz]を選択するものとする。
この場合、解析周波数fanalysysとサンプリング周波数fsamleとの比は1:25で、Jは25である。小数点以下4桁表示では、サンプリング周期τsampleは0.0004[s]であり、リップル周期τrippleは0.0033[s]であり、解析周期τanalysysは0.0100[s]である。解析周期τanalysysは、リップル周期τrippleの3倍となる。Jが25であるので、1回の解析周期τanalysys内で25回のサンプリングが行われるが、1回の解析周期τanalysys内には3回のリップル周期τrippleが存在する。この3回のリップル周期τripple内でのサンプリング個数は、8個が2回と9個が1回である。
この場合、図5の中段にある行列は、疎となる。まず、図5の上段の数列に対して、中段までの中間段階の数列を定義する。すなわち、電圧データUに対し、2個の空欄を各電圧データUの前に挿入した中間段階の数列を定義する。具体的には、「__U0__U1__U2・・・・・・・__UM×J-2__UM×J-1」が中間段階の数列である。ここで、「_」は空欄の意味である。図5の中段の行列を定義する時には、空欄も考慮される。例えば、1行目は、25列(J=25)あるが、空欄が17個および計測値が8個からなる行になる。2行目は、1行目と同様に、空欄が17個および計測値が8個からなる行になる。3行目は、空欄が16個および計測値が9個からなる行となる。すなわち、1行がリップル周期τrippleに対応し、3行が解析周期analysysに対応する。
「密」なケースでは、1行に密にJ個の計測値(電圧データ)があるが、「疎」なケースでは、3行に25個、すなわちJ個の計測値がある。したがって、M×J個の計測値(電圧データ)の数列は、3M行×J列の行列となる。
なお、図5では、電圧データを例に挙げて説明したが、電流データについても電圧データと同様にして処理される。
(D) 統計処理部92は、M個のデータセットにおける各データセットの同一の位相のM個の電圧データ・電流データについて、平均値、最頻値、中央値、標準偏差、分散などの統計量を導出する(図3のステップS305)。得られる電圧データ・電流データの統計量は、それぞれJ個である。ここでは、統計量が前述した「位相平均電圧」、「位相平均電流」である場合を例に挙げて説明する。
図5の下段には、位相平均電圧U(φripple)を示す。
位相平均電圧U(φripple)とは、同一の位相φrippleの時刻にサンプリングされたM個の電圧データUの平均値である。位相平均電圧U(φripple)は、図5の下段に示すように、1行×J列の行列または数列として定義される。具体的には、サンプリング周波数fsampleを3000[Hz]とし、解析周波数fanalysysを300[Hz]と設定し、Jが10の場合、10個の電圧データからなるデータセットが、解析周期τanalysysの繰り返し回数M回分得られる。したがって、M個の同一の位相の電圧データの算術平均をとることにより、10個の位相平均電圧U(φripple)が得られる。
以上の説明は、時刻t0での電圧データに対して、位相平均電圧を定義する方法を示した。位相平均電流に関しても位相平均電圧と同様にして導出される。図5中の電圧データUを電流データIに読み替えることで位相平均電流I(φripple)が定義される。以上のようにして時刻t0における初期解析ステップが実行される。時刻t0は、アノード1およびカソード2の少なくとも1つが新品であるプラズマトーチを最初に使用した時刻に対応する。
(E) 出力部93は、以上のようにして得られた各位相φrippleにおける統計量に関する情報を出力する。出力の形態は、例えば、コンピュータディスプレイへの表示、外部装置への送信、および記憶媒体への記憶の少なくとも何れか1つを採用することができる。
出力部93は、例えば、図4Aおよび図4Bに示すグラフを表示することができる。
(F) 電圧検出器7、電流検出器6、解析部91、統計処理部92、および出力部93は、前記(A)〜(E)を繰り返す(ステップS306)。
前記(A)〜(E)の繰り返し数Rは、例えば、前記統計値の経時変化の特徴が得られるように、予め設定することができる。
このようにステップS305で前記統計量が繰り返し得られる。即ち、時刻ti(i=0,1,・・・R)に対応するリップル周期τrippleにおける前記統計量を、その時刻tiにおける電圧データ・電流データの代表値とする。また、時刻iからMτrippleの時間が経過した時刻i+1に対応するリップル周期τrippleにおける前記統計量を、その時刻i+1における電圧データ・電流データの代表値とする。このようにすることで、時間間隔Mτrippleでの、前記統計値の経時変化が得られる。
このように、統計処理部92は、各時刻tiにおける前記統計量を並べることにより前記統計量の経時変化を求めることができる。出力部93は、前記統計量の経時変化を出力することができる。
<第1の判断指標>
本発明者らは、プラズマ放電の継続とともに電極材料(特にアノード1)の材質が劣化し、位相平均電圧U(φripple)は時間とともに上昇し、位相平均電流I(φripple)は時間とともに低下する場合が多いという知見を得た。したがって、例えば、ある時点での位相平均電圧U(φripple)の最大値Umaxが閾値を越えた場合に、電極材料(特にアノード1)が劣化したと判断することができる。プラズマの規模や電極材質によって、電極材料の劣化を判断するための位相平均電圧U(φripple)の最大値Umaxに対する閾値は、適宜設定することができる。例えば、位相平均電圧U(φripple)の最大値Umaxが直流電源3の出力電圧の110%以上となった時に電極材料(特にアノード1)を交換すると判断することができる。また、例えば、位相平均電圧U(φripple)の経時変化を導出する場合には、位相平均電圧U(φripple)の経時変化から、位相平均電圧U(φripple)の最大値Umaxが閾値以上になった時点で、電極材料(特にアノード1)が劣化したと判断することができる。
これらの判断は、前述した出力部93により出力された位相平均電圧U(φripple)の情報から、ユーザが行うことができる。また、統計処理部92が、前記判断を行い、その結果を出力してもよい。位相平均電圧U(φripple)の最大値Umaxに加えてまたは代えて、位相平均電流I(φripple)の最小値Iminが閾値以下であるか否かを判断してもよい。
<第2の判断指標>
図6Aは、J個の位相φrippleにおける位相平均電圧U(φripple)と時間との関係の第2の例を示す図であり、図6Bは、J個の位相φrippleにおける位相平均電流I(φripple)と時間との関係の第2の例を示す図である。尚、両図とも横軸は、リップル周期τrippleの一周期分を2πとした場合の位相である。また、図6A、図6Bでは、プラズマトーチの部品が新品であるときの結果を示す。
図4A、図4Bに示したように、ある時間において、同一の位相におけるM個の電圧データ・電流データの平均値として得られる、リップルτrippleの一周期分のJ個の、位相平均電圧U(φripple)・位相平均電流I(φripple)は、位相によって異なる値を取る場合がある。一方、本発明者らは、図6A、図6Bに示すように、電極材料が新しい場合など、位相平均電圧U(φripple)・位相平均電流I(φripple)は、位相が変わっても大きく変化しない場合があるという知見を得た。したがって、リップルτrippleの一周期分のJ個の、位相平均電圧U(φripple)・位相平均電流I(φripple)のばらつきが閾値以下であるか否かによって電極材料の劣化を予測することができる。
ここで、前記ばらつきとして、例えば、J個の位相平均電圧U(φripple)・位相平均電流I(φripple)の標準偏差σU・σIを用いることができる。閾値は、プラズマの規模や電極材質によって適宜決めることができる。
この判断は、前述したように、ユーザが行っても解析装置9で行ってもよい。
また、この判断は、前述した位相平均電圧U(φripple)の最大値Umax・位相平均電流I(φripple)の最小値Iminの判断に加えてまたは代えて行うことができる。位相平均電圧U(φripple)の最大値Umax・位相平均電流I(φripple)の最小値Iminと、位相平均電圧U(φripple)・位相平均電流I(φripple)の標準偏差σUとの双方を用いて判断する場合には、例えば、これらの判断の少なくとも何れか一方で電極材料を交換する必要があると判断された場合に電極材料を交換すると判断し、そうでない場合に電極材料を交換しないと判断することができる。また、このようにする代わりに、これらを変数とする関数を設定し、この関数の値に基づいて、電極材料を交換する必要があるか否かを判断してもよい。
以上のように本実施形態では、プラズマの動作電圧・動作電流を、リップル周期τrippleに同期させてサンプリング(時間的に離散化)した電圧データ・電流データを生成し、電圧データ・電流データの取得時刻を、リップル周期τrippleの一周期における相対的な位置である位相に変換する。このような電圧データ・電流データの取得・変換を各リップル周期τrippleで行い、同じ位相における電圧データ・電流データの統計量である位相平均電圧・位相平均電流を導出する。したがって、プラズマトーチの電極(特にアノード1)の損耗状況を正確に検出することができる。
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態を説明する。本実施形態では、第1の実施形態で説明した統計量の導出(ステップS305)を繰り返し行い、それぞれのタイミングにおける統計量を比較する場合について説明する。このように、本実施形態は、第1の実施形態に対し、統計量の導出を繰り返し行い、それらを比較するための処理が追加されたものである。したがって、本実施形態の説明において、第1の実施形態と同一の部分については、図1〜図5に付した符号と同一の符号を付す等して詳細な説明を省略する。
本実施形態では、例えば、第1の実施形態で説明した(A)〜(D)に加え、以下の(G)、(H)、(I)の処理を行う。なお、以下の(G)の処理は、第1の実施形態の(F)の処理に対応し、以下の(I)の処理は、第1の実施形態で説明した(E)の処理に対応する。
(G) 電圧検出器7、電流検出器6、解析部91、および統計処理部92は、前記(A)〜(D)を繰り返す。
前記(A)〜(D)の繰り返し数Rは、例えば、前記統計値の経時変化の特徴が得られるように、予め設定することができる。
(H) 統計処理部92は、各時刻tiにおける前記統計量を比較する。
サンプリングが連続的に行なわれ、サンプリング周期fsampleにて離散的な電圧データおよび電流データが次々と蓄積される場合には、J個の位相φrippleに対応する電圧データおよび電流データが繰り返しサンプリング・蓄積されることとなる。時刻tiの位相φrippleがきちんと他の時刻(例えば時刻t0)の位相φrippleと一致するように選ばれているならば、J組の位相平均電圧U(φripple)と位相平均電流I(φripple)の対同士の比較は、同じ並びで行われる。
しかしながら、必ずしもこのようにする必要はない。即ち、時刻tiの位相φrippleと他の時刻(例えば時刻t0)の位相φrippleとが一致するように選ばれていなくてもよい。異なる時刻tiにおいて、J個の連続した位相平均電圧U(φripple)(位相平均電流データI(φripple))の並び順が異なっていても、これらは、それぞれ同じJ個の位相φrippleをもっている。したがって、位相φrippleを基準として位相平均電圧U(φripple)(位相平均電流データI(φripple))を並べ、異なる時刻tiにおけるJ組の位相平均電圧U(φripple)の対同士の比較(位相平均電流I(φripple)の対同士比較)を実施することが可能である。このように、同じ位相φrippleの位相平均電圧同士にて、例えば、時刻t0の位相平均電圧U(φripple)と時刻ti(i≠0)の位相平均電圧U(φripple)とが比較される。
プラズマトーチ用に用いられる市販の直流電源3のV−I特性は、垂下特性を有しており、ほぼ定電流制御されているが、若干負特性側に傾いている。即ち、直流電源3のV−I特性は、相対的に小さな電流増に対し相対的に大きな電圧減、相対的に小さな電流減に対し相対的に大きな電圧増となる特性である。したがって、直流電源3の動作条件を一定としてプラズマトーチを連続的に動作させた場合に前記比較を実施すると、位相平均電流I(φripple)同士の差は小さく、特に、J個の位相平均電流I(φripple)の平均値Iave.は、ほぼ変動しない。一方、位相平均電圧U(φripple)同士の差は、観察され易い。J個の位相平均電圧U(φripple)の平均値Uave.に対し、高い位相平均電圧U(φripple)は、時間推移とともに更に高値となり、低い位相平均電圧U(φripple)は、更に低値となる。
図7Aは、位相平均電圧変化ΔUと位相との関係の一例を示す図であり、図7Bは、位相平均電流変化ΔIと位相との関係の一例を示す図である。
図7Aに示す位相平均電圧変化ΔUは、同じ位相のものについて、累積運転時間が100[時間]であるときの位相平均電圧U(φripple)から、累積運転時間が0[時間]であるときの位相平均電圧U(φripple)を減算した値である。図7Bに示す位相平均電流変化ΔIは、同じ位相のものについて、累積運転時間が100[時間]であるときの位相平均電流I(φripple)から、累積運転時間が0[時間]であるときの位相平均電流I(φripple)を減算した値である。
これらを求めるにあたり、リップル周波数frippleに対する位相φrippleは、それぞれ、位相平均電圧U(φripple)が最大値となる位相φrippleを0(ゼロ)と補正する前処理を実施している。前記前処理は、データのサンプリングが連続的でなく、断続的に行われた場合に、商用電源4の位相とサンプリングの位相とがずれるために必要とされる。なお、サンプリング開始のトリガが商用電源4の位相に合わせる様に設計されていれば、断続的なサンプリングを行っても、前記前処理は必要でなくなる。また、トリガレベルが調整できる計測器を用いた場合にも、前記前処理は必要でなくなる。
統計処理部92は、例えば、以上のようにして各時刻tiにおける前記統計量を比較することができる。
(I) 出力部93は、以上のようにして得られた各時刻tiにおける前記統計量の比較の結果を出力する。出力の形態は、例えば、コンピュータディスプレイへの表示、外部装置への送信、および記憶媒体への記憶の少なくとも何れか1つを採用することができる。
例えば、位相平均電圧変化ΔUが閾値以上になった場合に、電極材料(特にアノード1)を交換すると判断することができる。また、位相平均電流変化ΔIが閾値以下になった場合に、電極材料(特にアノード1)を交換すると判断することができる。
これらの判断は、第1の実施形態で説明したように、ユーザが行っても解析装置9で行ってもよい。これらの判断を解析装置9で行う場合には、例えば、出力部93は、位相平均電圧変化ΔUが閾値以上であることや、位相平均電流変化ΔIが閾値以下であることを、プラズマトーチの状態に関する情報として出力することができる。
なお、本実施形態の前記判断を第1の実施形態で説明した判断と組み合わせて電極材料を交換する必要があるか否かを判断してもよい。このようにする場合、第1の実施形態で説明したように、複数の判断を行って電極材料を交換する必要があるか否かを判断する場合には、これらの判断の全てにおいて電極材料を交換する必要がないとされた場合に限り電極材料を交換しないと判断することとしたり、判断指標を変数とする関数を設定し、この関数の値に基づいて、電極材料を交換する必要があるか否かを判断したりすることができる。
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態を説明する。本実施形態では、位相平均電圧U(φripple)および位相平均電流I(φripple)のリサージュ図形や、位相平均電圧変化ΔUおよび位相平均電流変化ΔIのリサージュ図形を導出し、このリサージュ図形に基づいて、電極材料の劣化(電極材料の交換の必要性)を判断する。このように本実施形態は、第1の実施形態、第2の実施形態に対し、リサージュ図形を導出することによる処理が追加されたものである。したがって、本実施形態の説明において、第1、第2の実施形態と同一の部分については、図1〜図7に付した符号と同一の符号を付す等して詳細な説明を省略する。
図8A、図8Bは、位相平均電圧U(φripple)および位相平均電流I(φripple)のリサージュ図形の第1、第2の例を示す図であり、図8Cは、位相平均電圧変化ΔUおよび位相平均電流変化ΔIのリサージュ図形を示す図である。図8Aは、図4Aおよび図4Bから得られるもの(継続運転時間が100[時間]のときのもの)であり、図8Bは、図6Aおよび図6Bから得られるもの(継続運転時間が0[時間]のときのもの)であり、図8Cは、図7Aおよび図7Bから得られるものである。なお、図8A、図8B、図8Cでは、見易さのため横軸の位相平均電流I(φripple)、位相平均電流変化ΔIのレンジを拡大して示す。
第1の実施形態で説明したように、1回の平均計算によって、J個の位相平均電圧U(φripple)およびJ個の位相平均電流I(φripple)が求められる。同一の位相における位相平均電圧U(φripple)および位相平均電流I(φripple)の組み(I,U)を、I−U空間でプロットし、隣り合う位相に対応する点を結ぶことにより、図8Aや図8Bのような閉じた図形が得られる。図8Cについても、同一の位相における位相平均電圧変化ΔUおよび位相平均電流変化ΔIの組み(ΔI,ΔU)を、I−U空間でプロットし、隣り合う位相に対応する点を結ぶことにより得られる。このような図形を一般的にリサージュ図形と呼ぶ。位相平均電圧U(φripple)および位相平均電流I(φripple)の時間的変化によって、リサージュ図形も変化する。位相平均電圧変化ΔUおよび位相平均電流I(φripple)についても同じである。
任意の時刻tiにおいて、i番目の処理(統計量を導出する処理)が実行されると、J個の位相平均電圧U(φripple)およびJ個の位相平均電流I(φripple)の対の定義がされる。
図4Bに示した位相平均電流I(φripple)の波形は、大凡半波整流された形状となっている。一方、図4Aに示した位相平均電圧U(φripple)の波形は、位相平均電流I(φripple)の波形を上下反転した半波整流形状の影響もあるが、鋸刃形状にも観察され、半波整流形状と鋸刃形状の混合となっている。
これらから得られる図8Aのリサージュ図形のプロットでは、位相情報が消えてしまうが、図8A中に矢印線で示す通り、左回り(反時計)に回っている。図形の形状は、電流波形の半波整流形状と、電圧波形の半波形状と鋸刃形状との混合とが、組み合わさることによりヒステリシスを示す。ヒステリシスの代表指標としてリサージュ図形の面積Sを監視することによりプラズマトーチの状態を監視できる。したがって、本実施形態では、統計処理部92は、リサージュ図形を導出し、導出したリサージュ図形の面積Sを導出する。
リサージュ図形の面積Sの具体的な導出方法として、例えば、リサージュ図形の下方を直線で近似した近似式と、リサージュ図形の上方を弦(楕円の一部)で近似した近似式とを作り、近似式の交点を積分区間として、積分を行う方法がある。ただし、リサージュ図形の面積Sの導出方法これに限定されるものではない。離散的なプロットの位置から算術的にリサージュ図形の面積Sを導出してもよい。なお、リサージュ図形の面積Sの単位は、電力の単位(=[W])である。
また、統計処理部92は、各時刻tiと、基準となる時刻ti'でリサージュ図形の面積Sti'、Stiの導出を行い、各時刻tiのリサージュ図形の面積Sti'から、基準となる時刻ti'のリサージュ図形の面積Sti'を減算した値(Sti−Stii')をリサージュ図形の面積変化量ΔSとして導出することができる。
プラズマトーチの動作初期時刻t0におけるリサージュ図形の面積St0を基準として、リサージュ図形の面積変化量ΔSを定義するならば、任意の時刻tiと時刻t0とのリサージュ図形の面積変化量ΔSは、Sti−St0と定義される。本発明者らは、リサージュ図形の面積変化量ΔSは、アノード1の損耗状況に大きく影響し、アノード1が損耗するに従い、リサージュ図形の面積変化量ΔSは増加するという知見を得た。リサージュ図形の面積変化量ΔSが増加すると、位相平均電圧V(φripple)の波形は、鋸刃形状により近づく。
例えば、電極材料が比較的健全な場合には、図8Bに示すように、リサージュ図形の面積Sは小さい。電極材料の劣化が進むことによって、図8Aに示すように、リサージュ図形の面積Sは大きくなる。従って、リサージュ図形の面積変化量ΔSに閾値ΔScriticalを設けることにより、電極材料の劣化を予測することができる。リサージュ図形の面積変化量ΔSが、閾値ΔScritical以上であるか否かを監視し、リサージュ図形の面積変化量ΔSが、閾値ΔScritical以上である場合に、電極材料を交換する必要があると判断することができる。閾値ΔScriticalは、適宜設定することができる。例えば、例えば、ΔS/S≧0.1の場合に、電極材料を交換する必要があると判断することができる。
これらの判断は、第1の実施形態で説明したように、ユーザが行っても解析装置9で行ってもよい。これらの判断を解析装置9で行う場合、例えば、出力部93は、リサージュ図形の面積変化量ΔSが、閾値ΔScritical以上であることを、プラズマトーチの状態に関する情報として出力することができる。
以上のことは、位相平均電圧変化ΔUおよび位相平均電流変化ΔIのリサージュ図形についても同じである。したがって、位相平均電圧変化ΔUおよび位相平均電流変化ΔIのリサージュ図形から、電極材料を交換する必要があるか否かを判断する手法の詳細な説明を省略する。
なお、本実施形態の前記判断を第1、第2の実施形態で説明した判断と組み合わせて電極材料を交換する必要があるか否かを判断してもよい。このようにする場合、第1の実施形態で説明したように、複数の判断を行って電極材料を交換する必要があるか否かを判断する場合には、これらの判断の全てにおいて電極材料を交換する必要がないとされた場合に限り電極材料を交換しないと判断することとしたり、判断指標を変数とする関数を設定し、この関数の値に基づいて、電極材料を交換する必要があるか否かを判断したりすることができる。
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態を説明する。本実施形態では、プラズマの動作電流Iについての計測を必要とせず、専らプラズマの動作電圧Uの計測値を用いて解析を実行することで、プラズマトーチの動作状況の監視・異常検知を行う。このように、本実施形態と第1〜第3の実施形態とは、プラズマの動作電流Iについての計測をしないことと、それに基づく処理が主として異なる。したがって、本実施形態の説明において、第1〜第3の実施形態と同一の部分については、図1〜図8に付した符号と同一の符号を付す等して詳細な説明を省略する。
本実施形態では、プラズマトーチの動作初期時刻t0でのプラズマの動作電圧の値の変動の指標を定義しておき、任意の時刻tiでのプラズマの動作電圧の値の変動の指標を同様に定義し、これらの差を解析することによりプラズマトーチの動作状況の監視・異常検知を実施する。
前述した直流電源3の垂下特性を検討して、リサージュ図形を経時変化させることにより、直流電源3の動作条件を一定としてプラズマトーチを連続的に動作させた場合には、プラズマの動作電流の値の変動の経時変化は、プラズマの動作電圧の値の変動の経時変化に対し相対的に小さく、プラズマの動作電圧の値の変動の経時変化のみに注目することでもプラズマトーチの動作状況の監視・異常検知ができる。
例えば、位相平均電圧U(φripple)の波形は、プラズマトーチの連続動作の初期段階では、半波整流形状の影響が強く、プラズマトーチを連続動作するに従い鋸刃形状の影響が強まる。本発明者らは、この位相平均電圧U(φripple)の波形の形状の差異を的確に表す指標を検討した。位相平均電圧U(φripple)の、位相φrippleに対しての変動、例えば、J個の位相φrippleに対応する位相平均電圧U(φripple)の中で、最大値と最小値の差は、前記位相平均電圧U(φripple)の波形の形状の差異を表現し得る。
しかし、本発明者らは、前記位相平均電圧U(φripple)の波形の形状の差異をより顕著に捉えるためには、位相平均電圧U(φripple)の定義を遡り、図5の上段の数列に示す電圧データUiの標準偏差σUを用いることが的確であることを見出した。また、サンプリング周波数fsampleについて検討すると、商用電源4の周波数f1のN倍としたなかでも、前記「密」なケースの方が前記「疎」なケースより好ましいことが分かった。
したがって、サンプリング周波数fsampleを、直流電源3のリップルノイズの主成分のリップル周波数frippleの整数倍(J倍)とし、図5の上段に示すように、離散的に計測されたプラズマの動作電圧の数列(電圧データ)の中から任意の時刻tiで始まる連続したM×J個の電圧データの数列を作成し、前記数列から求めたプラズマの動作電圧の標準偏差σU(ti)が、最も的確な指標である。
即ち、統計処理部92は、プラズマトーチの動作初期時刻t0で、プラズマの動作電圧の標準偏差σU(t0)を導出する。その後、統計処理部92は、任意の時刻tiで、プラズマの動作電圧の標準偏差σU(ti)を定義する。各時刻tiにおけるプラズマの動作電圧の標準偏差σU(ti)から、プラズマトーチの動作初期時刻t0におけるプラズマの動作電圧の標準偏差σU(ti)を減算した値をこれらの変化量ΔσUとして解析することによりプラズマトーチの動作状況の監視・異常検知を実施できる。
図9は、プラズマの動作電圧の標準偏差σU(ti)と累積運転時間との関係の一例を示す図である。図9に示す結果より、プラズマの動作電圧の標準偏差の変化量(の絶対値)ΔσUが大きくなるほど、電極材料の劣化することが分かる。
従って、リサージュ図形の面積変化量ΔSと同様に、プラズマの動作電圧の標準偏差の変化量ΔσUの監視を実行する際に、予め、プラズマの動作電圧の標準偏差の変化量ΔσUに対する閾値ΔσUcriticalを決めておき、プラズマの動作電圧の標準偏差の変化量ΔσUが、閾値ΔσUcritical以上である場合に、電極材料を交換する必要があると判断することができる。例えば、プラズマの動作電圧の標準偏差の変化量ΔσUが、直流電源3の出力電圧の5[%]以上である場合に電極材料を交換すると判断することができる。
この判断は、第1の実施形態で説明したように、ユーザが行っても解析装置9で行ってもよい。この判断を解析装置9で行う場合には、例えば、出力部93は、プラズマの動作電圧の標準偏差の変化量ΔσUが、閾値ΔσUcritical以上であることを、プラズマトーチの状態に関する情報として出力することができる。
なお、本実施形態の前記判断を第1〜第3の実施形態で説明した判断と組み合わせて電極材料を交換する必要があるか否かを判断してもよい。このようにする場合、第1の実施形態で説明したように、複数の判断を行って電極材料を交換する必要があるか否かを判断する場合には、これらの判断の全てにおいて電極材料を交換する必要がないとされた場合に限り電極材料を交換しないと判断することとしたり、判断指標を変数とする関数を設定し、この関数の値に基づいて、電極材料を交換する必要があるか否かを判断したりすることができる。
また、第1〜第4の実施形態で説明した電極材料の劣化を判断するための指標としてどの指標を用いるのかは、例えば、用いるプラズマの規模や電極材質によって適宜設定することが設定することができる。
(第5の実施形態)
次に、本発明の第5の実施形態を説明する。第1〜第4の実施形態では、プラズマの動作電圧U・動作電流Iの計測値を用いて解析を実行する際に、時刻tiをJ個に限定された離散的な位相φrippleに変換するようにした。これに対し、本実施形態では、位相φrippleをJ個に限定せずにランダムとする場合を例に挙げて説明する。このように、本実施形態と第1〜第4の実施形態とは、位相φrippleをランダムにすることによる処理が主として異なる。したがって、本実施形態の説明において、第1〜第4の実施形態と同一の部分については、図1〜図9に付した符号と同一の符号を付す等して詳細な説明を省略する。
任意の時刻tiにおけるプラズマの動作電圧の値の変動の特徴を捉えるために、第1〜第4の実施形態では、サンプリング周波数fsampleがリップル周波数frippleとの公約数であるという厳しい制約がある。この制約のために、図4Aの横軸である位相φrippleの値は、J個の離散的な値に限定されていた。
そこで、本発明者らは、図4Aの横軸である位相φrippleの値をランダムに取りながら、プラズマの動作電圧の変動の特徴を捉える方法を検討した。
前記サンプリング周波数fsampleとして、敢えて、商用電源4の周波数f1とは1以上の公約数を持たない様に選択することにより、位相φrippleの値はランダムとなる。一方で、電圧データの数が少なすぎると、プラズマの動作電圧の変動の特徴が捉えられない。そこで、この課題を検討したところ、第1〜第4の実施形態では、図5の上段に示す数列の電圧データの個数はM×J個であるのに対し、本実施形態では、これには限定されない任意の整数(Nsample個)となるが、サンプル数Nsampleとしては十分に大きい必要がある。本発明者らは、例えば、プラズマの動作電圧の標準偏差σU(ti)によりプラズマの動作電圧の値の変動の特徴を捉えるためには、Nsampleは256以上であることが好ましく、1024以上であることがより好ましいという知見を得た。
(実施例)
次に、実施例を説明する。
<実施例1>
図2に示した非移行型アークプラズマトーチにおいてプラズマを発生させ、プラズマの動作電圧・動作電流をそれぞれ電圧検出器7・電流検出器6を用いて計測し、得られた電圧データ・電流データを解析した。
プラズマトーチとしては、特許文献6にあるカスケード型プラズマトーチを用いた。このプラズマトーチは、市販の溶射用のプラズマトーチに比して、高電圧かつ低電流にて動作する。プラズマ形成ガスとしては、カソードガスとしてN2とAr、アノードガスとしてArを用いた。プラズマトーチの動作時のガスの流量は、次のとおりである。即ち、カソードガスであるN2の流量を0.29[g/s]、カソードガスであるArの流量を0.27[g/s]、アノードガスであるArの流量を0.07[g/s]とし、一定とした。
商用電源4の周波数f1は50[Hz]であり、三相交流電源である直流電源3に供給される。直流電源3ではアーク電流Iを200Aと設定した。プラズマの動作電流の推移をFFTによりパワースペクトルに変換した結果から、直流電源3のリップル周波数frippleの主成分を300[Hz]に決定した。ただし、50[Hz]の成分もパワースペクトルから有意に観察される。解析周期τanalysysの繰り返し回数Mは、819とした。
プラズマの動作電流と動作電圧のサンプリング周波数fsampleは2500[Hz]とした。周波数倍率Nは50である。解析周波数fanalysysは100[Hz]とした。解析周波数fanalysysとサンプリング周波数fsampleとの比は、1:25であり、Jは25である。
プラズマトーチのカソード2およびアノード1に新品の部品を用いて動作を開始した。プラズマトーチの動作では、着火の回数、および、各着火時の連続運転時間、の両方について記録される。簡単のため、両者から求められる累計運転時間にて整理した。
累計運転時間が0時間の時の解析結果は、図6A、図6Bの通りである。また、累計運転時間が100時間の時の解析結果は、図4A、図4Bの通りである。図6A、図6Bと図4A、図4Bでは比較のため、軸のレンジが等しくなっている。
累計運転時間が0時間の時の解析結果である図6A、図6Bに示すように、位相平均電圧U(φripple)および位相平均電流I(φripple)は、位相φrippleに対してほとんど変動していない。一方、累計運転時間が100時間の時の結果である図4A、図4Bに示すように、位相平均電圧U(φripple)の最大値と最小値の差は7[V]となり、位相平均電流I(φripple)の最大値と最小値の差は5[A]となった。
累計運転時間が100時間の時と0時間の時との差の解析結果は、図7A、図7Bの通りである。差を求めるにあたり、第2の実施形態で説明した前処理を実施している。
図7A、図7Bに示す波形は、それぞれ、図4A、図4Bに示す波形とほぼ類似の形状となっているが、変動量の中心は、原点近傍となり、前記前処理のため、位相φrippleの軸方向にシフトしている。
次に、リサージュ図形の面積変化量ΔSについて説明する。
累計運転時間が0時間の時のリサージュ図形は、図8Bの通りである。累計運転時間が100時間の時のリサージュ図形は、図8Aの通りである。リサージュ図形の面積は、近似線2本を作成して求めた。まず、リサージュ図形の下辺を直線と近似し、一方、リサージュ図形の上辺を楕円の一部と近似し、近似式を作成した。次に、近似式の交点の座標を求めた。最後に、交点間で積分を実施して、それぞれのリサージュ図形の面積を求めた。累計運転時間が0時間の時のリサージュ図形の面積Sは0.0[W]であり、100時間の時のリサージュ図形の面積Sは3.4[W]であった。したがって、リサージュ図形の面積変化量ΔSは、3.4[W](=3.4−0.0)と求められた。
次に、リサージュ図形の面積変化量ΔSに対する閾値ΔScriticalの設定例を示す。閾値ΔScriticalは、プラズマトーチの応用先に強く依存する。特許文献6で開示される電縫鋼管の製造方法において溶接部の雰囲気制御にプラズマが適用される場合では、製造対象となる電縫鋼管の鋼種や仕様によっても閾値ΔScriticalは、種々設定される。例えば、CrおよびSi等の酸化物を生成しやすい元素を多く含有する鋼種にプラズマトーチを適用する場合には、ΔScriticalを5.0[W]に設定した。一方、普通鋼にプラズマトーチを適用する場合には、ΔScriticalを15.0[W]に設定した。
(実施例2)
本実施例でも、実施例1と同様に、図2に示した非移行型アークプラズマトーチにおいてプラズマを発生させ、プラズマの動作電圧・動作電流をそれぞれ電圧検出器7・電流検出器6を用いて計測し、得られた電圧データ・電流データを解析した。
プラズマトーチと、プラズマトーチの動作条件と、直流電源3の動作条件は、実施例1と同じである。サンプリング周波数fsampleは、3000[Hz]とした。Jは10である。解析周期τanalysysの繰り返し回数Mは512とした。したがって、用いる数列のデータ数M×Jは、5120個である。
本実施例でも、実施例1と同様に累計運転時間にて整理した。
プラズマの動作電圧の標準偏差σUに対する累計運転時間の影響を調査した。その調査の結果(プラズマの動作電圧の標準偏差σUと累計運転時間との関係)は、図9の通りである。図9に示すように、累積運転時間が大きくなると、プラズマの動作電圧の標準偏差σUは大きくなる。例えば、累積運転時間が0時間の時には、プラズマの動作電圧の標準偏差σUは2.1[V]であり、100時間の時には、プラズマの動作電圧の標準偏差σUは3.0[V]であった。この時のプラズマの動作電圧の標準偏差の変化量ΔσUは、0.9[V](=3.0[V]−2.1[V])である。
次に、プラズマの動作電圧の標準偏差の変化量ΔσUの閾値ΔσUcriticalの設定例を示す。電縫鋼管の製造方法において溶接部の雰囲気制御にプラズマが適用される場合では、製造対象となる電縫鋼管の鋼種や仕様によっても閾値ΔσUcriticalは、種々設定される。例えば、CrおよびSi等の酸化物を生成しやすい元素を多く含有する鋼種にプラズマトーチを適用する場合には、閾値ΔσUcriticalを1.5[V]に設定し、普通鋼にプラズマトーチを適用する場合には、閾値ΔσUcriticalを2.5[V]に設定した。
(実施例3)
本実施例でも、実施例1および2と同様に、図2に示した非移行型アークプラズマトーチにおいてプラズマを発生させ、プラズマの動作電圧・動作電流をそれぞれ電圧検出器7・電流検出器6を用いて計測し、得られた電圧データ・電流データを解析した。
プラズマトーチと、プラズマトーチの動作条件と、直流電源3の動作条件は、実施例1と同じである。サンプリング周波数fsampleは、2666[Hz]とした。サンプリング周波数fsampleは、商用電源4の周波数f1やリップル周波数frippleとは1以外の公約数を持たない。
累積運転時間が100時間の時の電圧データを用いて、プラズマの動作電圧の標準偏差σUに対する、サンプル数Nsampleの影響を調査した。図10は、プラズマの動作電圧の標準偏差σUとサンプル数Nsampleとの関係の一例を示す図である。サンプル数Nsampleが大きい時には、プラズマの動作電圧の標準偏差σUは3.0[V]に近づいている。一方、サンプル数Nsampleが小さい時には動作電圧の標準偏差σUは3.0[V]からは離れており、ばらついている。サンプル数Nsampleが1024以上のときの、プラズマの動作電圧の標準偏差σUは3.0[V]±0.2[V]である。従って、本実施例の結果では、サンプル数Nsampleは、1024個以上であるのが好ましい。
尚、以上説明した本発明の実施形態・実施例は、コンピュータがプログラムを実行することによって実現することができる。また、前記プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体及び前記プログラム等のコンピュータプログラムプロダクトも本発明の実施形態として適用することができる。記録媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM等を用いることができる。
また、以上説明した本発明の実施形態・実施例は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
本発明は、例えば、プラズマトーチを使用する切断、溶接、溶射、雰囲気制御等の分野でプラズマトーチの状態の監視・異常検知を行うために利用される。
1:アノード、2:カノード、3:直流アーク電源、4:商用電源、5:シャント抵抗、6:電流検出器、7:電圧検出器、8:高周波スタータ、9:解析装置

Claims (18)

  1. ノズルを含むアノードと、カソードとを有し、前記アノードおよび前記カソードとの間に直流アークを発生させ、プラズマ形成ガスを前記アノードと前記カソードとの間の前記直流アークに通して加熱し、当該加熱したプラズマ形成ガスを前記ノズルから噴流として吹き出す動作をするプラズマトーチの状態を監視するためのプラズマトーチの状態監視方法であって、
    前記アノードと前記カソードとの間の電圧であるプラズマの動作電圧と、前記アノードと前記カソードとの間に流れる電流であるプラズマの動作電流とのうち、少なくとも前記プラズマの動作電圧を検出する検出工程と、
    前記直流アークを発生させるための直流電源の出力に含まれる脈流の周期に同期して、前記プラズマの動作電圧と前記プラズマの動作電流とのうち、前記検出工程で検出されたものをサンプリングし、当該サンプリングしたデータであるサンプリングデータを生成するサンプリング工程と、
    前記脈流の複数の周期における前記サンプリングデータに基づいて、前記サンプリングデータの統計量を導出する統計処理工程と、
    を有し、
    前記脈流は、前記直流電源の出力に重畳されているリップルであることを特徴とするプラズマトーチの状態監視方法。
  2. 前記統計量は、平均値、最頻値、中央値、最大値、最小値、標準偏差、および分散の少なくとも何れか1つを含むことを特徴とする請求項1に記載のプラズマトーチの状態監視方法。
  3. 前記サンプリングの周波数は、前記直流電源の一次側に接続される電源の周波数の正の整数倍であることを特徴とする請求項1または2に記載のプラズマトーチの状態監視方法。
  4. 前記サンプリングデータの統計量を繰り返し導出する頻度に対応する周波数である解析周波数は、前記サンプリングの周波数と、前記脈流の周波数との公約数であることを特徴とする請求項1〜の何れか1項に記載のプラズマトーチの状態監視方法。
  5. 前記サンプリングデータの取得時刻を、前記脈流の一周期における位相に変換する変換工程をさらに有し、
    前記統計処理工程は、前記脈流の複数の周期における前記サンプリングデータであって、前記変換工程により取得時刻が位相に変換された前記サンプリングデータに基づいて、前記サンプリングデータの統計量を導出することを特徴とする請求項1〜の何れか1項に記載のプラズマトーチの状態監視方法。
  6. 前記統計処理工程は、前記サンプリングデータの統計量を前記位相ごとに導出することを特徴とする請求項に記載のプラズマトーチの状態監視方法。
  7. 前記統計処理工程は、前記位相ごとの前記サンプリングデータの統計量を、異なる複数のタイミングのそれぞれで導出し、当該異なる複数のタイミングにおける前記サンプリングデータの統計量の変化量を導出することを特徴とする請求項に記載のプラズマトーチの状態監視方法。
  8. 前記異なる複数のタイミングにおける前記サンプリングデータの統計量の変化量は、前記異なる複数のタイミングのうち最も早いタイミングにおける前記サンプリングデータの統計量を基準とした場合の変化量であることを特徴とする請求項に記載のプラズマトーチの状態監視方法。
  9. プラズマトーチの状態に関する情報を出力する出力工程をさらに有し、
    前記統計処理工程は、前記サンプリングデータの統計量の変化量と閾値とを比較し、
    前記出力工程は、前記サンプリングデータの統計量の変化量と閾値との比較の結果に基づく情報を、前記プラズマトーチの状態に関する情報として出力することを特徴とする請求項またはに記載のプラズマトーチの状態監視方法。
  10. 前記検出工程は、前記プラズマの動作電圧と、前記プラズマの動作電流とを検出し、
    前記統計処理工程は、前記脈流の複数の周期における前記プラズマの動作電圧・動作電流についての前記サンプリングデータであって、前記変換工程により取得時刻が位相に変換された前記サンプリングデータである電圧データ・電流データに基づいて、前記電圧データの前記位相ごとの平均値・前記電流データの前記位相ごとの平均値を位相平均電圧・位相平均電流としてそれぞれ導出し、前記位相平均電圧および前記位相平均電圧からリサージュ図形を生成することを特徴とする請求項の何れか1項に記載のプラズマトーチの状態監視方法。
  11. 前記統計処理工程は、前記位相平均電圧および前記位相平均電流を、異なる複数のタイミングのそれぞれで導出し、当該異なる複数のタイミングにおける前記位相平均電圧および前記位相平均電圧から、当該異なる複数のタイミングのそれぞれにおけるリサージュ図形を生成し、生成したリサージュ図形の面積の変化量をさらに導出することを特徴とする請求項1に記載のプラズマトーチの状態監視方法。
  12. 前記異なる複数のタイミングにおける前記リサージュ図形の面積の変化量は、前記異なる複数のタイミングのうち最も早いタイミングにおける前記リサージュ図形の面積を基準とした場合の変化量であることを特徴とする請求項1に記載のプラズマトーチの状態監視方法。
  13. プラズマトーチの状態に関する情報を出力する出力工程をさらに有し、
    前記統計処理工程は、前記リサージュ図形の面積の変化量と閾値とを比較し、
    前記出力工程は、前記リサージュ図形の面積の変化量と閾値との比較の結果に基づく情報を、前記プラズマトーチの状態に関する情報として出力することを特徴とする請求項1または1に記載のプラズマトーチの状態監視方法。
  14. 前記検出工程は、前記プラズマの動作電圧を検出し、
    前記統計処理工程は、前記脈流の複数の周期における前記プラズマの動作電圧についての前記サンプリングデータである電圧データに基づいて、前記プラズマの動作電圧の標準偏差を導出することを特徴とする請求項1〜の何れか1項に記載のプラズマトーチの状態監視方法。
  15. 前記統計処理工程は、前記プラズマの動作電圧の標準偏差を異なる複数のタイミングのそれぞれで導出し、当該異なる複数のタイミングにおける前記プラズマの動作電圧の標準偏差の変化量をさらに導出することを特徴とする請求項1に記載のプラズマトーチの状態監視方法。
  16. 前記異なる複数のタイミングにおける前記プラズマの動作電圧の標準偏差の変化量は、前記異なる複数のタイミングのうち最も早いタイミングにおける前記プラズマの動作電圧の標準偏差を基準とした場合の変化量であることを特徴とする請求項1に記載のプラズマトーチの状態監視方法。
  17. プラズマトーチの状態に関する情報を出力する出力工程をさらに有し、
    前記統計処理工程は、前記プラズマの動作電圧の標準偏差の変化量と閾値とを比較し、
    前記出力工程は、前記プラズマの動作電圧の標準偏差の変化量と閾値との比較の結果に基づく情報を、前記プラズマトーチの状態に関する情報として出力することを特徴とする請求項1または1に記載のプラズマトーチの状態監視方法。
  18. ノズルを含むアノードと、カソードとを有し、前記アノードおよび前記カソードとの間に直流アークを発生させ、プラズマ形成ガスを前記アノードと前記カソードとの間の前記直流アークに通して加熱し、当該加熱したプラズマ形成ガスを前記ノズルから噴流として吹き出す動作をするプラズマトーチの状態を監視するためのプラズマトーチの状態監視システムであって、
    前記アノードと前記カソードとの間の電圧であるプラズマの動作電圧と、前記アノードと前記カソードとの間に流れる電流であるプラズマの動作電流とのうち、少なくとも前記プラズマの動作電圧を検出する検出手段と、
    前記直流アークを発生させるための直流電源の出力に含まれる脈流の周期に同期して、前記プラズマの動作電圧と前記プラズマの動作電流とのうち、前記検出手段で検出されたものをサンプリングし、当該サンプリングしたデータであるサンプリングデータを生成するサンプリング手段と、
    前記脈流の複数の周期における前記サンプリングデータに基づいて、前記サンプリングデータの統計量を導出する統計処理手段と、
    を有し、
    前記脈流は、前記直流電源の出力に重畳されているリップルであることを特徴とするプラズマトーチの状態監視システム。
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