JP6436834B2 - 透析用剤、透析用剤の製造方法、および透析用剤の溶解性検査方法 - Google Patents

透析用剤、透析用剤の製造方法、および透析用剤の溶解性検査方法 Download PDF

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Description

本発明は、透析用剤、透析用剤の製造方法、および透析用剤の溶解性検査方法に関する。
透析用剤は、透析液を作製するための薬剤である。透析液は、血液透析、血液濾過、腹膜透析などにより、本来腎臓が行う機能に代わって体液の老廃物を取り去り、場合によっては血液中に必要な成分を補うために用いられるもので、体液に近い電解質組成を有する水溶液である。
現在の透析用剤は、一般的には、ナトリウムイオンおよびカリウムイオン等を含む電解質成分である塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウムと、ブドウ糖と、pH調整剤(例えば、酢酸と酢酸ナトリウムまたはその混合物、もしくはクエン酸とクエン酸ナトリウム等)とを含む「透析用剤A剤」と、炭酸水素ナトリウムを含む「透析用剤B剤」との2剤構成となっている。現在使用されている電解質濃度およびブドウ糖濃度の範囲は、例えば、以下の通りである(その他にpH調整剤を含む)。
Na:79.0〜143.0mEq/L
:0.0〜4.0mEq/L
Ca++:0.00〜3.50mEq/L
Mg++:0.25〜1.50mEq/L
Cl:81.0〜115.5mEq/L
ブドウ糖:0〜250mg/dL
クエン酸イオン:2.4〜0mEq/L
または、酢酸イオン:12〜0mEq/L
HCO :25.0〜39.0mEq/L
透析用剤の剤型として、透析用剤A剤がその構成成分を水で溶解した濃厚液である液剤と、透析用剤B剤がその構成成分を水で溶解した濃厚液である液剤との組合せである「液剤+液剤型」、透析用剤A剤がその構成成分を水で溶解した濃厚液である液剤と、透析用剤B剤がその構成成分を水で用事溶解して用いる固形剤との組合せである「液剤+固形剤型」、透析用剤A剤がその構成成分を水で用事溶解して用いる固形剤と、透析用剤B剤がその構成成分を水で用事溶解して用いる固形剤との組合せである「固形剤+固形剤型」がある。
透析用剤の固形剤化の手段として、粒状に造粒する顆粒剤化があり、顆粒剤の透析用剤A剤の造粒方法として、主に乾式造粒法、押出造粒法、転動撹拌流動層造粒法、撹拌造粒法等の造粒方法が行われている。
乾式造粒法は、例えば、乾式造粒装置内で塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウムおよび酢酸ナトリウム等の有機酸塩の各電解質化合物を混合、圧縮、粉砕し造粒して透析用剤A剤を得る造粒方法である。
押出造粒法は、例えば、塩化ナトリウム粉末に塩化ナトリウム以外の各電解質水溶液を加えて練合し、得られた造粒物を押出造粒装置のスクリーン面に押しつけ、成形造粒して透析用剤A剤を得る造粒方法である。
転動撹拌流動層造粒法は、例えば、塩化ナトリウムを転動撹拌流動層造粒装置内で転動および流動させ、この転動流動中の塩化ナトリウムに塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、酢酸ナトリウム等の有機酸塩の混合物水溶液を噴霧することにより、転動撹拌流動層造粒装置内で転動流動中の塩化ナトリウム粒子の表面を塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、酢酸ナトリウム等の有機酸塩を含有する混合物の微粒子によって略均一に覆って透析用剤A剤を得る造粒方法である。
撹拌造粒法は、例えば、撹拌造粒装置中の塩化ナトリウムに塩化カリウム、塩化カルシウムおよび塩化マグネシウムの懸濁液を入れ撹拌混合し、得られた混合物に酢酸ナトリウム等の有機酸塩を混合し、乾燥して透析用剤A剤を得る造粒方法である。
しかし、顆粒剤に成形することにより、単位操作が複雑になり生産性が低下し、単位操作が増えることにより異物の混入の可能性が増大するという問題点がある。また、顆粒剤に成形することにより、品種切換(各成分の濃度変更)による品種ごとの製造条件の確立が必要になる。さらに、品種切換(各成分の濃度変更)時に生産設備に残る原料を除去しなければならず、製品ロスおよび時間ロスが生じ、生産性が低下するという問題点がある。
一方、透析用剤の固形剤化の手段として、顆粒剤に成形しない固形剤型の透析用剤の製造方法としては、以下の方法が検討されている。
例えば、特許文献1には、ブトウ糖および炭酸水素ナトリウムを含有する粉末透析用剤において、粉末透析用剤全体、もしくはブドウ糖、塩化ナトリウムおよび炭酸水素ナトリウムの少なくとも1成分を乾燥することにより、保存時の着色を抑制し、長期にわたって安定に保存可能とすることが記載されている。
特許文献2には、電解質成分として少なくとも水分含有率が51%以下の塩化マグネシウムを含む電解質成分を含有し、各含有成分が単一の固体成分として容器に充填することにより、容器内での薬剤の固結、凝集が抑制され、また糖質成分としてブドウ糖を含む場合でもブドウ糖の分解が防止することが記載されている。
特許文献3には、電解質成分として少なくとも25℃における平衡相対湿度が2RH%以下の塩化マグネシウムを含む電解質成分を含有し、各含有成分が単一の固体成分として容器に充填することにより、容器内での薬剤の固結、凝集が抑制され、また糖質成分としてブドウ糖を含む場合でもブドウ糖の分解が防止することが記載されている。
特許文献4には、ブドウ糖と、少なくとも1つの乾燥した酸と、少なくとも1つのマグネシウム塩と、任意にカリウム塩およびカルシウム塩とを含む粉末成分からなり、前記ブドウ糖および前記少なくとも1つのマグネシウム塩は前記透析酸前駆体組成物中に無水物成分として存在し、38℃/90%RHで水蒸気透過率が0.3g/m/d未満である耐湿性容器中に密封することにより、薬剤の安定性を向上させることが記載されている。
特許文献5には、少なくとも塩化マグネシウムを含む電解質成分と、pH調整剤とを含有し、前記塩化マグネシウムの除水量と透析用剤全体の含水量との比率が、118%未満7%以上であり、前記塩化マグネシウムの水分含有率が43%〜51%の範囲であり、各含有成分が単一の固体成分として容器に充填することにより、薬剤の固結、凝集を抑制する透析用剤が低コストで得られることが記載されている。
特許文献6には、少なくとも塩化カルシウムを含む電解質成分と、酢酸ナトリウムおよび氷酢酸の混合物である酢酸混合物とを含有し、前記塩化カルシウムの除水量と透析用剤全体の含水量との比率が、163%未満2%以上であり、前記塩化カルシウムの水分含有率が1%〜22%の範囲であり、各含有成分が単一の固体成分として容器に充填することにより、薬剤の固結、凝集を抑制する透析用剤が低コストで得られることが記載されている。
特許文献7には、少なくとも塩化マグネシウムおよび塩化カルシウムを含む電解質成分と、pH調整剤とを含有し、前記塩化マグネシウムの除水量と前記塩化カルシウムの除水量の和と、透析用剤全体の含水量との比率が、210%以下2%以上であり、前記塩化マグネシウムの水分含有率が43%〜51%の範囲であり、前記塩化カルシウムの水分含有率が1%〜22%の範囲であり、各含有成分が単一の固体成分として容器に充填することにより、薬剤の固結、凝集を抑制する透析用剤が低コストで得られることが記載されている。
固形剤型の透析用剤A剤を水で用事溶解(使用するときに溶解して使用する)して用いる場合に、薬剤同士が凝集物となり規定時間内に薬剤を溶解できず、また、透析装置の配管やホースを詰まらせ、適切な透析治療が中断されることが問題となっている。この問題は顆粒剤化された透析用剤にもみられるが、顆粒剤に成形しない透析用剤の方が問題となる場合がある。また、この問題は透析用剤を容器から固体状態で出し、透析剤溶解装置内に事前に貯められた溶媒に透析用剤を投入し、用事溶解する方法で溶解される透析剤にもみられるが、透析用剤の容器内に溶媒を投入し、透析用剤の容器内で透析用剤を用事溶解する方法で溶解される透析用剤の方が問題となる場合がある。
また、固形剤型の透析用剤を製造する場合、薬剤の適切な溶解性を担保するために、明確な目安を持たずに過度に混合する等の過度な製造工程を経なければならず、製造効率が悪化するという問題がある。
また、固形剤型の透析用剤の実製品を透析用剤溶解装置で溶解し、人が溶解試験結果を目視で確認しなければ溶解性検査をすることができず、溶解性検査の自動化が困難という問題がある。
特開2001−340448号公報 特開2013−048894号公報 特開2013−048895号公報 特表2013−530972号公報 特開2014−140641号公報 特開2014−141463号公報 特開2014−141464号公報
本発明の目的は、用事溶解における凝集が抑制され、溶解性が向上した透析用剤およびその透析用剤の製造方法を提供することを目的とする。
本発明の目的は、自動化が可能な透析用剤の溶解性検査方法を提供することを目的とする。
本発明は、少なくとも電解質成分とpH調整剤とブドウ糖とを含有する透析用剤であって、前記透析用剤の混合度が、0.850以上1.000以下の範囲である透析用剤である。
本発明は、少なくとも電解質成分とpH調整剤とブドウ糖とを含有する透析用剤の製造方法であって、前記透析用剤の混合度が0.850以上1.000以下の範囲となるように成分を混合処理する混合処理工程を含む透析用剤の製造方法である。
本発明は、少なくとも電解質成分とpH調整剤とブドウ糖とを含有する透析用剤の溶解性検査方法であって、前記透析用剤をサンプリングするサンプリング工程と、前記サンプリングした透析用剤の定量的な特性値を確認する確認工程と、前記確認した特性値から標準偏差を算出する標準偏差算出工程と、前記算出した標準偏差から混合度を算出する混合度算出工程と、前記算出した混合度が0.850以上1.000以下の範囲内であるかどうかを確認して合否判定を行う合否判定工程と、を含む透析用剤の溶解性検査方法である。
本発明では、少なくとも電解質成分とpH調整剤とブドウ糖とを含有する透析用剤において、透析用剤の混合度が0.850以上1.000以下の範囲であることにより、用事溶解における凝集が抑制され、溶解性が向上した透析用剤が提供される。
本発明では、少なくとも電解質成分とpH調整剤とブドウ糖とを含有する透析用剤の製造方法において、透析用剤の混合度が0.850以上1.000以下の範囲となるように成分を混合処理することにより、用事溶解における凝集が抑制され、溶解性が向上した透析用剤が得られる。
本発明では、少なくとも電解質成分とpH調整剤とブドウ糖とを含有する透析用剤の溶解性検査方法において、算出した透析用剤の混合度が0.850以上1.000以下の範囲内であるかどうかを確認して合否判定を行うことにより、透析用剤の溶解性検査方法を自動化することができる。また、非破壊での全品検査が可能となる。
実施例における混合機稼働時間(sec)とσとの関係を示す図である。 実施例における混合機稼働時間(sec)と混合度Mとの関係を示す図である。 本実施形態に係る透析用剤の溶解性検査方法を示すフローチャートである。
本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
<透析用剤>
本発明の実施形態に係る透析用剤は、少なくとも電解質成分とpH調整剤とブドウ糖とを含有する透析用剤であって、透析用剤の混合度が、0.850以上1.000以下の範囲に調整されているものである。
本発明の実施形態に係る透析用剤は、「各含有成分が単一の固体成分として容器に充填されている」形態の透析用剤でもよく、当該形態の透析用剤は、透析用剤に含まれる複数の成分が顆粒剤として成形されておらず、各含有成分が、「単一成分の結晶物」として容器に充填されている形態以外に、「単一成分の造粒物」として容器に充填されている形態、「単一成分の粉砕物」として容器に充填されている形態を含む。ここで、「単一成分」とは純度として95%以上のことをいい、5%以下程度の不純物を含む場合も「単一成分」とする。また、本明細書における「単一成分」の中には、下記に示す酢酸混合物も含まれる。さらに、「各含有成分が単一の固体成分として容器に充填されている」とは、各「単一成分」が容器に充填される前に「単一成分」同士が混合される形態、例えば、各「単一成分」を容器に受け、それらを混合した後に所定量を容器に1回で充填する製造方法等も含まれる。
「顆粒剤に成形し、容器に充填されている」形態の透析用剤には、単位操作が複雑になり、生産性が低下し、単位操作が増えることにより異物の混入の可能性が増大する場合がある。また、品種切換(各成分の濃度変更)ごとに製造条件の確立が必要になる場合がある。さらに、品種切換(各成分の濃度変更)のときに、生産設備に残る原料を除去しなければならず、製品ロスおよび時間ロス等が生じて、生産性が低下する場合がある。
「各含有成分が単一の固体成分として容器に充填されている」形態の透析用剤にするこことにより、単位操作が容易になり、生産性が向上し、単位操作が減ることにより異物の混入の可能性が減少するという利点がある。また、品種切換(各成分の濃度変更)ごとに製造条件の確立をしなくてもよいという利点がある。さらに、品種切換(各成分の濃度変更)のときに、生産設備に残る原料を除去しなくてもよく、製品ロスおよび時間ロス等が生じず、生産性が低下しないという利点がある。したがって、低コストかつ高品質の透析用剤が実現される。
固形剤型の透析用剤A剤の構成成分のうち、水に接触することにより凝集しやすい成分がある。例えば、塩化マグネシウム無水物、塩化カルシウム無水物、酢酸ナトリウム無水物、クエン酸無水物、クエン酸ナトリウム無水物、ブドウ糖等の無水物や、水和度合いを減らした状態の物質であるいわゆる乾燥物等である。乾燥物としては、例えば、水分含有率53.2%未満の塩化マグネシウム、水分含有率24.5%未満の塩化カルシウム等が挙げられる。
凝集しやすい成分がまとまって存在し、水分と接触することによって、凝集体を形成する現象が見られる。用事溶解において固形剤型透析用剤A剤の凝集体が形成されると、溶媒に対する表面積が小さくなり、溶解しにくくなり、薬剤の溶解不良の原因となると考えられる。
本発明者らは、例えば、各成分を混合して、凝集しやすい成分を凝集しにくい成分(例えば、塩化ナトリウム)で薄め、凝集しやすい成分がまとまって存在するのを抑制することにより、溶解しやすい透析用剤が作製できることを見出した。凝集しやすい成分に凝集しにくい成分をどの程度混合するかを表す指標として、各成分の混ざり度合いを表す混合度(M)を検討した。
混合度(M)の計算には、Laceyの式(下記式(1))を使用した。
Figure 0006436834
(1)
ここで、式(1)において、σは、透析用剤を充填した同一容器内から、偏りがないように任意に9箇所以上、透析用剤のサンプリングを行い、サンプリングした各試料について、試料の標準偏差を求められる定量的な特性値の確認を実施し、確認した特性値から各サンプルの標準偏差(σ)を求めたものである。ここで、試料の標準偏差を求められる「定量的な特性値」とは、薬剤中の各成分の混合度合いを反映する定量的な特性値であればよく、特に制限はないが、例えば、明度(L値)、反射率、pH、電導度、ナトリウムイオンやカリウムイオン等の成分の含有量等が挙げられる。
σ(未混合状態)は、同一混合機における未混合状態から内容成分が略均一に混合される(完全混合状態)までの混合時間を任意に7時点以上に分けたサンプルを作製し、当該サンプルのσを求めた場合に、最もσの大きい3点の結果から線形近似曲線の0時点におけるσ(y軸:σ,x軸:混合機稼働時間における、線形近似曲線とy軸との切片)を求めて計算したものである。
σ(完全混合状態)は、0.010と定めて計算を行う。
固形剤型の透析用剤A剤の混合度Mが「0.850以上1.000以下」であれば、用事溶解における透析用剤A剤の凝集が抑制され、溶解性が向上する。これにより、用事溶解において固形剤型の透析用剤A剤が凝集し、規定時間内に薬剤を溶解できず、また、透析装置の配管やホースを詰まらせ適切な透析治療を中断させるという問題点が解決される。混合度Mが0.850未満になると、用事溶解において固形剤型の透析用剤A剤の凝集体が形成され、規定時間内に薬剤を溶解できず、また、透析装置の配管やホースを詰まらせ適切な透析治療を中断させるという問題を発生する可能性が高くなる。
透析用剤の輸送中等における偏析等を考慮すると、混合度Mは0.900以上1.000以下の範囲であることが好ましい。さらに、過度な混合による生産性の低下を考慮すれば、混合度Mは0.900以上0.995以下の範囲であることがより好ましい。
透析用剤の混合度Mを0.850以上1.000以下の範囲にするために、全成分のうち凝集しやすい成分の含有量を25重量%以下とした上で、各成分を混合度Mが0.850以上1.000以下の範囲となるような適切な条件で混合処理を行えばよい。
電解質成分としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム等が挙げられる。
pH調整剤としては、クエン酸無水物、リンゴ酸、乳酸、フマル酸、コハク酸、マロン酸等の有機固体酸や、クエン酸ナトリウム等のクエン酸塩、酢酸ナトリウム、二酢酸ナトリウム等の酢酸塩、乳酸ナトリウム等の乳酸塩、リンゴ酸ナトリウム等のリンゴ酸塩、フマル酸ナトリウム等のフマル酸塩、コハク酸ナトリウム等のコハク酸塩、マロン酸ナトリウム等のマロン酸塩等の有機酸塩等が挙げられる。これらのうち、好ましいpH調整剤としては、クエン酸無水物の他に、クエン酸一水和物、クエン酸ナトリウム無水物、クエン酸ナトリウム二水和物、酢酸、二酢酸ナトリウム、酢酸ナトリウム無水物である。
pH調整剤としては、酢酸ナトリウムおよび氷酢酸の混合物である酢酸混合物、ならびにその酢酸混合物と酢酸ナトリウムとの組合せのうち少なくとも1つであることが好ましい。酢酸ナトリウムとしては、酢酸ナトリウム無水物、酢酸ナトリウム三水和物等が挙げられる。酢酸ナトリウムおよび氷酢酸の混合物は、酢酸ナトリウムと氷酢酸とを混合して粉末化したものである。この酢酸混合物において、酢酸ナトリウムの少なくとも一部と氷酢酸とは錯体を形成していると考えられる。この酢酸混合物において、錯体を形成してない未反応の酢酸ナトリウムを含んでいてもよい。なお、酢酸ナトリウムと氷酢酸とが錯体を形成していることは、X線回折法により確認することができる。
酢酸混合物における酢酸ナトリウムと氷酢酸とのモル比は、1:1〜5:1の範囲であることが好ましく、3:1〜4:1の範囲であることがより好ましい。酢酸ナトリウムに対する氷酢酸のモル比が1以上であると、氷酢酸が酢酸ナトリウムと結合しきれずに粉末化できず薬剤の安定性を害する場合がある。氷酢酸に対する酢酸ナトリウムのモル比が5以上の透析用剤A剤では、炭酸水素ナトリウムを含んでなる透析用剤B剤と組み合わせて調製された際の透析液のpHおよびアルカリ化剤濃度が透析治療に適さない。この酢酸混合物としては、酢酸ナトリウムと氷酢酸との1:1混合物(二酢酸ナトリウム)、酢酸ナトリウムと氷酢酸との3:1混合物、酢酸ナトリウムと氷酢酸との8:2.2混合物、酢酸ナトリウムと氷酢酸との10:2混合物等が挙げられる。これらのうち、酢酸ナトリウムと氷酢酸との1:1〜5:1混合物を用いると、透析用剤で用いられる酢酸ナトリウムおよび氷酢酸の全量を粉末化した混合物として添加することができ、必要な酢酸ナトリウムを別途添加しなくてもよく、製造工程の短縮化につながるという利点がある。また、酢酸ナトリウム無水物と氷酢酸との3:1〜4:1混合物は、酢酸ナトリウム無水物に氷酢酸を添加しても粒度の安定した酢酸混合物を製造することができる。
本実施形態に係る透析用剤には、糖質成分として、無水結晶ブドウ糖等のブドウ糖を含む。
本実施形態に係る透析用剤は、容器への充填方法として、少なくとも電解質成分、ブドウ糖およびpH調整剤を含む「透析用剤A剤」と、炭酸水素ナトリウム(重炭酸ナトリウム)等のアルカリ化成分を含む「透析用剤B剤」との2剤構成となっている薬剤の「透析用剤A剤」に相当するものである。各成分の容器への充填順序については特に制限はない。「透析用剤A剤」の成分のうちの一部の成分を別の包装にし、3剤構成とすることも可能である。
本実施形態に係る透析用剤を「透析用剤A剤」として、炭酸水素ナトリウム等のアルカリ化成分を含む「透析用剤B剤」とともに用いた場合の各成分の配合量は、適切な濃度に希釈、混合した場合に、透析液として、例えば、下記の濃度であることが好ましい。
Na 140.6〜135.2mEq/L
2.0mEq/L
Ca2+ 3.5〜2.5mEq/L
Mg2+ 1.5〜1mEq/L
Cl 113〜110.5mEq/L
HCO 35〜25mEq/L
ブドウ糖 150〜100mg/dl
クエン酸イオン 2.4〜0mEq/L
または、酢酸イオン 12〜0mEq/L
<透析用剤の製造方法>
本発明の実施形態に係る透析用剤の製造方法は、少なくとも電解質成分とpH調整剤とブドウ糖とを含有する透析用剤の製造方法であって、透析用剤の混合度Mが0.850以上1.000以下の範囲となるように成分を混合処理する混合処理工程を含む。少なくとも電解質成分とpH調整剤とブドウ糖等の各成分を計量する計量工程を含んでもよい。
本実施形態に係る透析用剤の製造方法は、混合度Mが、0.850以上1.000以下の範囲となるように成分を混合処理するので、凝集しやすい成分を凝集しにくい成分で薄め、凝集しやすい成分がまとまって存在するのを抑制することができ、凝集体がほとんど形成せず、溶解しやすい透析用剤を作製することができる。混合度Mが0.850未満になると、用事溶解において固形剤型の透析用剤A剤の凝集体が形成され、規定時間内に薬剤を溶解できず、また、透析装置の配管やホースを詰まらせ適切な透析治療を中断させるという問題を発生する可能性が高くなる。
本実施形態に係る透析用剤の製造方法によれば、固形剤型の透析用剤A剤を適切に溶解させるために内容成分の混合度合いの最適化を図ることで、過度の混合工程が不要になり、過度な混合度合いを実現しなくても安定した品質の透析用剤A剤を製造することができ、固形剤型の透析用剤A剤の製造工程の効率化を図ることができる。これらによって、低コストかつ質の高い透析用剤が実現されるという顕著な効果を有している。
透析用剤の輸送中等における偏析等を考慮すると、混合度Mを0.900以上1.000以下の範囲に調整することが好ましい。さらに、過度な混合による生産性の低下を考慮すれば、混合度Mを0.900以上0.995以下の範囲に調整することがより好ましい。
このようにして製造された本実施形態に係る透析用剤から透析液を調製するには、本実施形態に係る透析用剤を「透析用剤A剤」として、所定量の精製水に溶解してA原液を作製し、「透析用剤B剤」を所定量の精製水に溶解してB原液を作製し、これらのA原液とB原液とを所定の比率で混合希釈すればよい。
<透析用剤の溶解性検査方法>
本実施形態に係る透析用剤の溶解性検査方法は、図3に示す通り、少なくとも電解質成分とpH調整剤とブドウ糖とを含有する透析用剤の溶解性検査方法であって、透析用剤をサンプリングするサンプリング工程と、サンプリングした透析用剤の定量的な特性値を確認する確認工程と、確認した特性値から標準偏差を算出する標準偏差算出工程と、算出した標準偏差から混合度Mを算出する混合度算出工程と、算出した混合度Mが0.850以上1.000未満の範囲内かどうかを確認して合否判定を行う合否判定工程と、を含む方法である。本実施形態に係る透析用剤の溶解性検査方法では、この混合度Mの算出結果が0.850以上1.000以下の範囲内であった場合には、「合格」と判定し、0.850未満であった場合には、「不合格」と判定する。
透析用剤の輸送中等における偏析等を考慮すると、混合度Mを0.900以上1.000以下の範囲に管理することが好ましい。さらに、過度な混合による生産性の低下を考慮すれば、混合度Mを0.900以上0.995以下の範囲に管理することがより好ましい。
本実施形態に係る透析用剤の溶解性検査方法によれば、固形剤型の透析用剤A剤の溶解性を数値で管理することができ、溶解性検査方法の自動化が容易に可能となる。透析用剤の定量的な特性を確認する確認工程において非破壊的な手段を用いれば溶解性の全品検査も可能となり、透析用剤の溶解性に関する品質が格段に向上する。また、溶解性検査方法の自動化を容易にすることにより、溶解性検査の手間を減らし生産性の向上に寄与する。実機試験以外の溶解性検査手段がなく、溶解性検査方法の自動化が困難という問題点が解決される。
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
<実施例および比較例>
表1に示すサンプル配合量で塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム二水和物、塩化マグネシウム(水分含有率45%)、酢酸ナトリウム無水物と氷酢酸の混合物(モル比 酢酸ナトリウム無水物:氷酢酸=8:2.2、以下「酢酸混合物」という。)、無水結晶ブドウ糖を容器に充填した後、容器を密閉し、表2に示す混合機稼働時間で撹拌機(京町産業製:DSK−30)に容器を固定し、容器内の内容物を撹拌して透析用剤を作製した(サンプル1〜7)。
Figure 0006436834
Figure 0006436834
上記透析用剤の容器を開封し、できるだけ均等間隔になるように容器内の上部4箇所、中部1箇所、下部1箇所から9箇所サンプリングを行い、分光測定計(コニカミノルタ(株)社製、型式CM−5)を用いて下記測定条件で明度「L値」を測定し、各サンプルの「L値」の標準偏差(σ)を求めた。表3に各サンプルの「L値」とそのσを示す。
(分光測定計の測定条件)
反射光;de:8°,SCE
測定モード:シャーレ
測定径:φ30mm
測定波長間隔:10nm
Figure 0006436834
表3の結果から、混合度Mを求めた。混合度Mの計算には、Laceyの式(上記式(1))を使用した。σは、表3の測定結果を使用した。σ(未混合状態)は、表3の「L値」の標準偏差(σ)のうち最も大きいもの3点の結果から、線形近似曲線の0sec時点における標準偏差(y軸:標準偏差、x軸:混合機稼働時間における、線形近似曲線とy軸との切片)を求めた。上記計算結果から、σは、「0.664(小数点第4位四捨五入)」を使用した(図1参照)。σ(完全混合状態)は、0.010と定めて計算を行った。混合度Mの計算結果を図2に示す。
上記透析用剤について、透析用剤溶解装置(日機装(株)社製、型式DAD−50)を用いて溶解試験を実施し、凝集発生の有無を目視により調べ、下記基準で評価した。混合度Mと溶解試験結果を表4に示す。
(評価基準)
〇:凝集物発生が確認されなかった
×:凝集物発生が確認された
Figure 0006436834
このように、透析用剤の混合度Mが「0.850以上1.000以下の範囲」であれば、用事溶解における凝集が抑制され、溶解性が向上した。また、透析用剤の混合度Mが「0.850以上1.000以下の範囲内」であるかどうかを確認して合否判定を行うことにより、透析用剤の溶解性検査方法の自動化が可能である。

Claims (3)

  1. 少なくとも電解質成分とpH調整剤とブドウ糖とを含有する透析用剤であって、
    前記透析用剤の混合度が、0.850以上1.000以下の範囲であることを特徴とする透析用剤。
  2. 少なくとも電解質成分とpH調整剤とブドウ糖とを含有する透析用剤の製造方法であって、
    前記透析用剤の混合度が0.850以上1.000以下の範囲となるように成分を混合処理する混合処理工程を含むことを特徴とする透析用剤の製造方法。
  3. 少なくとも電解質成分とpH調整剤とブドウ糖とを含有する透析用剤の溶解性検査方法であって、
    前記透析用剤をサンプリングするサンプリング工程と、
    前記サンプリングした透析用剤の定量的な特性値を確認する確認工程と、
    前記確認した特性値から標準偏差を算出する標準偏差算出工程と、
    前記算出した標準偏差から混合度を算出する混合度算出工程と、
    前記算出した混合度が0.850以上1.000以下の範囲内であるかどうかを確認して合否判定を行う合否判定工程と、
    を含むことを特徴とする透析用剤の溶解性検査方法。
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