本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
[データ保存媒体]
図1は、本実施形態に係るデータ保存媒体の概略構成を示す平面図であり、図2は、本実施形態における単位保存領域の概略構成を示す平面図であり、図3は、本実施形態における保存領域を示す平面図であり、図4は、本実施形態に係るデータ保存媒体の部分拡大切断端面図であって、図2におけるI−I線切断端面図である。
本実施形態に係るデータ保存媒体1は、第1面21及び当該第1面21に対向する第2面22を有し、略方形状の石英ガラスからなる基材2を備え、基材2の第1面21上に定義された略方形状の保存領域SA内に、保存されているデータのデータ内容(ビット列)の各ビットに対応する物理的構造により当該データのデータ内容(ビット列)を表現するデータパターンが形成されている。
保存領域SA内には、複数の単位保存領域UAがM行×N列(M及びNは、その一方が2以上の整数であり、他方が1以上の整数である。)の行列配置で並列されている。図3に示すように、本実施形態においては、24個の単位保存領域UAが4行(M=4)×6列(N=6)の行列配置で並列されている例を挙げて説明するが、この態様に限定されるものではない。
保存領域SAは、複数の単位保存領域UAと、隣接する単位保存領域UAの間に位置する、畦道状のデータ非保存領域NAとを含む。各単位保存領域UAは、単位データパターン30が形成されている領域であり、データ非保存領域NAは、配列方向指標パターン40及び境界パターン50が形成されている領域である。
単位保存領域UAの大きさは、後述する撮像部111における撮影可能領域の大きさ(単位保存領域UAに形成されている単位データパターン30の物理的構造(凹部31及び凸部32)を認識可能な倍率で撮影可能な領域の大きさ)に応じて適宜設定され得るものである。また、データ非保存領域NAの大きさは、少なくとも配列方向指標パターン40を形成可能な大きさである限り特に制限されないが、データ非保存領域NAの大きさを可能な限り小さくすることにより、保存領域SA中における単位保存領域UAの占める割合を増大させることができ、データの記録容量を大きくすることができる。このとき、データ非保存領域NAの幅WNAを、単位保存領域UA内の単位データパターン30の物理的構造(凹部31及び凸部32)の間隔の整数倍と不一致になるように設定するのが好ましい。これにより、データ非保存領域NAを明確に把握可能となる。
各単位保存領域UAに形成されている単位データパターン30は、データ保存媒体1に記録・保存されているデータが複数に分割された単位データのデータ内容(単位ビット列)を表現する凹部(ホール)31及び凸部(ホールが形成されていない部分)32からなる。本実施形態においては、当該単位データの単位ビット列のうちのビット「1」が凹部31と定義され、ビット「0」が凸部32と定義されている。例えば、図2においては、左上から右に向かって「1010011101・・・」という単位ビット列(単位ビット行列)で表現される単位データがデータ保存媒体1の単位保存領域UAに記録・保存されている。なお、単位ビット列のうちのビット「1」が凸部32と定義され、「0」が凹部31と定義されてもよい。
単位データパターン30としての凹部31及び凸部32は、行列状に配置されるようにして単位保存領域UA内に形成されており、当該凹部31及び凸部32の行列配置は、単位データの単位ビット列を行列配置に変換した単位ビット行列に対応する配置である。
データ保存媒体1に記録・保存されているデータの種類としては、特に限定されるものではなく、例えば、テキストデータ、動画や静止画等の画像データ、音声データ等が挙げられる。
配列方向指標パターン40は、各単位保存領域UAに形成されている単位データパターン30(凹部31及び凸部32)により表現されている単位ビット列(単位ビット行列)の配列方向に関する情報を示すパターンであって、各単位保存領域UAに対応して設けられてなるものであって、物理的構造としての凹部41からなる。配列方向指標パターン40は、単位保存領域UAに形成されている単位データパターンUP(単位データの単位ビット列)の行列配置に関する情報を示すものである。図示例においては、配列方向指標パターン40は、長方形の単位保存領域UAの左上角部近傍及び左下角部近傍に形成されており、配列方向指標パターン40がこの位置に形成されている態様がデータ保存媒体1の正位置である。これを前提とすることで、単位データパターン30(凹部31及び凸部32)は、単位ビット列(単位ビット行列)に対応した行列配置(単位保存領域UAの左上から右下に向かう行列配置)で形成されている、と理解され得る。図5においては、単位データの単位ビット列の各ビットに対応する単位データパターン30(凹部31及び凸部32)が、矢印方向に配列されていることを示している。
配列方向指標パターン40は、各単位保存領域UAに形成されている単位データパターン30により表現されている単位ビット列(単位ビット行列)の配列方向を特定可能な位置に形成されていればよく、上記態様に限定されるものではない。配列方向指標パターン40は、単位保存領域UAと配列方向指標マークDPとにより構成される全体形状が、点対称、線対称、回転対称等の対称性を有しない形状となるような位置に形成されているのが好ましい。例えば、図6に示すように、単位保存領域UAの形状が略長方形状である場合、配列方向指標パターン40は、当該単位保存領域UAの4つの角部のうち、1つの角部(図6に示す例では左上の角部)の近傍であって、1つの辺(長辺又は短辺。図6に示す例では上側に位置する長辺)に沿って形成されていてもよい。配列方向指標パターン40がこのような位置に形成されていることで、後述するように、データ保存媒体1がデータ読出装置100にセットされたときに、保存領域SA(単位保存領域UA)がデータ読出装置100の撮像部111との位置関係で正位置であるか否かを容易に認識することができる。
なお、本実施形態における配列方向指標パターン40は、図7に示すように、データ保存媒体1の想定寿命や安定性を損なわない限りにおいて、酸化クロム等からなる金属薄膜等の基材2とは異なる部材により構成されていてもよい。また、配列方向指標パターン40の形状、寸法等は、特に限定されるものではないが、単位データパターン30を構成する物理的構造(凹部31及び凸部32)の形状や寸法と異なるのが好ましい。単位データパターン30と配列方向指標パターン40とを構成する物理的構造の形状や寸法が互いに相違することで、データ読出装置100の撮像部111により取得された画像データから、配列方向指標パターン40を容易に認識することができる。
配列方向指標パターン40は、図8に示すように、単位保存領域UA内に形成されていてもよい。この場合においては、保存領域SA内にデータ非保存領域NAが存在していなくてもよい。これにより、データ保存媒体1における記録容量の増大が図れる。
本実施形態における単位データパターン30は、光学的に認識可能な物理的構造により構成されていればよく、凹部31及び凸部32に限定されるものではない。例えば、図9に示すように、単位ビット列のビット「1」に対応する貫通孔部33と、ビット「0」に対応する非孔部34とにより構成されていてもよい。この場合において、配列方向指標パターン40は、単位データパターン30と同様の物理的構造、すなわち貫通孔部により構成されているのが、データ保存媒体1の作製上の手間の観点から好ましい。一方で、単位データパターン30及び配列方向指標パターン40のいずれか一方が非貫通の凹部により構成され、他方が貫通孔部により構成されていてもよい。このような態様であれば、後述するデータ読出装置100(図18参照)の撮像部111にてデータ保存媒体1の第2面22側の画像データを取得した際、いずれか一方(単位データパターン30又は配列方向指標パターン40)の存在を確認することができないため、それによりデータ読出装置100にセットされたデータ保存媒体1の表裏が逆転していることを容易に認識することができる。
なお、配列方向指標パターン40は、各単位保存領域UAに形成されている単位データパターン30の配列方向に関する情報を示すものであるとともに、保存領域SA内における各単位保存領域UAの位置情報を示すものであってもよい。例えば、配列方向指標パターン40は、保存領域SA内に行列状に配置されている各単位保存領域UAの並列位置を表すp行目(pは1以上M以下の整数である。)及びq列目(qは1以上N以下の整数である。)という行番号及び列番号(p,q)の数字を表す点字を模したパターン(図10参照)を物理的構造(凹部41及び凸部42)により表現してなるものであってもよい。なお、図11においては、単位保存領域UAが04行02列目に位置する領域である、ということが配列方向指標パターン40により示されている。
この場合において、配列方向指標パターン40は、単位データパターン30と同様、行番号及び列番号の数字を2値化したビット列を表す物理的構造(凹部41及び凸部42)により構成されていてもよい。
境界パターン50は、一の単位保存領域UAと、行方向及び列方向においてデータ非保存領域NAを介して隣接する他の単位保存領域UAとの境界を示すパターンであって、略方形状の各単位保存領域UAの4角の外側に位置するように形成されている。かかる境界パターン50が形成されていることで、データ読出装置100の撮像部111にて各単位保存領域UAを容易に認識することが可能となり、複数の単位データパターン30として記録・保存されているデータの正確な読み出しが可能となる。
本実施形態において、境界パターン50は、略十字状であって、その交点Lから外側に向かって延伸する4つのパターン51〜54のうちの1つのパターン51の長さ(交点から当該パターンの延伸方向における長さ)が、他の3つのパターン52〜54の長さよりも短い(図12(a)参照)。このような形状を有する境界パターン50は、保存領域SA内の複数の単位保存領域UAの並列順(図3における左上から横方向に向かう順)に、90°ずつ回転させるようにして形成されている(図13参照)。後述するように、本実施形態に係るデータ保存媒体1に記録・保存されているデータを読み出す際に、各単位保存領域UAの画像データを、撮像部111をデータ保存媒体1に対して相対的に移動させながら取得する。そのため、撮像部111の移動のたびに撮像部111の位置合わせを行い、画像データを取得することになるが、単位保存領域UAの並列順に境界パターン50が90°ずつ回転していることで、撮像部111を走査させながら、単位保存領域UAの並列順に画像データを取得することができる。
なお、境界パターン50は、その他の態様(平面視形状)として、略L字状(基準点Cpから2方向に延伸する、互いに直交する2つのパターンを有するもの)であってもよいし(図12(b)参照)、略十字状であって、基準点Cpから外側に延伸する4つのパターンの長さ(交点から当該パターンの延伸方向における長さ)が実質的に同一のものであってもよい(図12(c)参照)。
本実施形態において、単位データパターン30を構成する凹部31は、平面視略方形状のホール形状である。この凹部31の寸法は、一般的な撮像素子により凹部31を光学的に認識可能な寸法であればよいが、データ保存媒体1における記録・保存可能なデータ容量を増大させるために、単位データパターン30の凹部31の寸法は、例えば、400nm以下、好ましくは100〜250nm程度に設定され得る。
図14に示すように、単位データパターン30、配列方向指標パターン40及び境界パターン50は、いずれも、保存領域SA内に設定された仮想グリッドGrの交点PIに重なるようにして形成されている。より具体的には、単位データパターン30(凹部31)、配列方向指標パターン40及び境界パターン50のそれぞれの基準点Cpが仮想グリッドGrの交点PIに重なるように、単位データパターン30、配列方向指標パターン40及び境界パターン50が形成されている。ここで、単位データパターン30及び配列方向指標パターン40の基準点Cpは、単位データパターン30及び配列方向指標パターン40を構成する物理的構造の平面視における中心点であり、境界パターン50の基準点Cpは、略十字状の交点Lである。なお、少なくとも単位データパターン30の基準点Cpが仮想グリッドGrの交点PIに重なるようにして形成されていればよく、配列方向指標パターン40及び境界パターン50の基準点Cpは、仮想グリッドGrの交点PIに重なっていてもよいし、仮想グリッドGrのグリッド線に重なるが交点PIには重なっていなくてもよいし、仮想グリッドGrの交点PI及びグリッド線のいずれにも重なっていなくてもよい。
上述した構成を有する本実施形態に係るデータ保存媒体1においては、記録・保存されているデータのデータ内容(ビット列)が、保存領域SAの各単位保存領域UAに形成されている単位データパターン30(行列状に配置された、物理的構造としての凹部31及び凸部32)により表現されている。そして、単位データパターン30における物理的構造(凹部31及び凸部32)の配置順の指標となる配列方向指標パターン40が、各単位保存領域UAに対応して形成されている。したがって、当該配列方向指標パターン40を認識することにより、データを読み出す順序を正確に認識することができ、当該データを正確に復元することができる。
また、本実施形態に係るデータ保存媒体1は、石英からなる基材を加工することにより作製され得るものであって、極めて優れた耐熱性及び耐水性を有する。したがって、保存環境が変化したとしても記録・保存されているデータ(単位データパターン30)及び配列方向指標パターン40が滅失することがなく、当該データを超長期的に(数百年以上の単位で)保存することができるとともに、超長期的なスパンを経ても配列方向指標パターン40を認識することで、データ保存媒体1に保存されているデータを読み出す順序を正確認識し、当該データを正確に復元することができる。
さらに、本実施形態に係るデータ保存媒体1は、基材2の第1面21に形成されたデータパターン(物理的構造としての凹部31及び凸部32)によりデータを記録・保存することができるため、後述するように、当該データ保存媒体1を用いてインプリントリソグラフィ処理を行うことで、データが記録・保存されたデータ保存媒体1の複製物(バックアップ)を、当該データ(デジタルデータ)が存在していなくても容易に作製することができる。
さらにまた、本実施形態に係るデータ保存媒体1に記録・保存されているデータは、一般的な撮像素子を用いて光学的に認識可能な物理的構造により表現されているため、超長期的な将来においても、そのときに存在する撮像素子を用いて当該物理的構造(凹部31及び凸部32)を撮像してビット列に変換するだけで、容易にデータを復元することができる。
なお、本実施形態に係るデータ保存媒体1において、データが記録・保存される各単位保存領域UAの保存領域SA内における位置情報を示すものとしての配列方向指標パターン40が形成されている場合、データ保存媒体1に記録・保存されているデータの一部(複数の単位保存領域UAのうちの一部の単位保存領域UAに形成されている単位データパターン30)を読み出す場合であっても、当該配列方向指標パターン40に基づいて、目的とするデータ(データの一部)を容易に読み出すことができる。また、単位保存領域UAに形成されている物理的構造(凹部31)の一部が破損してしまった場合であっても、物理的構造の一部が破損してしまった単位保存領域UAを配列方向指標パターン40によって特定することができるため、データ保存媒体1の複製物(バックアップ)が予め作製されていれば、当該複製物から当該単位保存領域UAに記録・保存されているデータを容易に読み出すことができ、データ保存媒体1の他の単位保存領域UAから読み出されたデータと結合することで、データ保存媒体1に記録・保存されているデータの復元が可能となる。
〔データ保存媒体の製造方法〕
上述した構成を有するデータ保存媒体1は、以下のようにして作製することができる。図15は、本実施形態に係るデータ保存媒体1を作製する前段階として描画データを設計する工程を概略的に示すフロー図であり、図16は、本実施形態に係るデータ保存媒体1を作製する工程を示す部分拡大斜視図である。
[描画データ設計工程]
まずは、データ保存媒体1に記録・保存されるデータDに基づき、データ保存媒体1の保存領域SA(各単位保存領域UA)に単位データパターン30及び配列方向指標パターン40を形成するための描画データを設計する。
具体的には、まず、データDの全ビット列を、その先頭から所定のビット長単位でX個(Xは2以上の整数である。)の単位ビット列に分割し、当該単位ビット列を含む単位データUD1〜UDXを生成する。各単位データUDの単位ビット列のビット長は、単位保存領域UAに記録・保存可能なビット長と同一に設定され得る。本実施形態における各単位保存領域UAに8行×16列のビット行列でデータが保存され得る場合、記録・保存されるデータDの全ビット列を、その先頭から128ビット長の単位ビット列の単位データUDに分割する。なお、保存されるデータDの全ビット列を分割することなく一の単位保存領域UAに記録・保存可能であるならば、データDの全ビット列を分割しなくてもよい。
次に、各単位データUDの単位ビット列を、8行×16列の単位ビット行列UMに変換し、当該単位ビット行列UMに基づいて、単位パターンデータD30を生成する。本実施形態においては、このとき、単位保存領域UAに相当する領域内に仮想グリッドGrを定義し、当該仮想グリッドGrの交点PIに重なるように、単位ビット行列UMのうちのビット「1」に対応する位置にのみ、凹部31に対応するビット図形(正方形の図形)を配置し、ビット「0」に対応する位置にはビット図形を配置しない(図15参照)。この単位パターンデータD30は、8行×16列の行列を構成する各位置におけるビット図形の有無によって、単位ビット行列UMを構成する128ビットの情報を表現している。この単位パターンデータD30が、単位保存領域UAに単位データパターン30(凹部31)を形成する際の描画データとして用いられる。
続いて、各単位パターンデータD30の外側(データ非保存領域NAであって、単位保存領域UAの左上角近傍及び左下角近傍)に配列方向指標パターンデータD40を付加する。この配列方向指標パターンデータD40が、データ非保存領域NAに配列方向指標パターン40を形成する際の描画データとして用いられる。
このようにして各単位保存領域UAに形成される単位データパターン30の描画データである単位パターンデータD30、及びデータ非保存領域NAに形成される配列方向指標パターン40の描画データである配列方向指標パターンデータD40を生成した後、これらを行列状に配置するとともに、境界パターン50の描画データである境界パターンデータD50をデータ非保存領域NAに付加することで、描画データを生成することができる。
なお、配列方向指標パターン40は、上記の順序で付加されなくてもよいし、上記以外の順序で付加された方がよい場合もある。例えば、図8に示すように、単位保存領域UA内に配列方向指標パターン40が設けられる場合には、単位保存領域UA内における配列方向指標パターン40の占める領域(配列方向指標パターン40を設けるために必要な仮想グリッドGrの交点PIの数)によって、単位保存領域UA内に配列可能な単位データUDのビット長に制約が生じる。このような場合には、配列方向指標パターンデータD40を生成した後、単位パターンデータD30を設計し、単位保存領域UAから配列方向指標パターン40が配置される領域を除いた個所(仮想グリッドGrの交点PI)に配列可能なビット長単位で、保存されるデータDの全データ列を分割するのが好ましい。
[データ保存媒体作製工程]
続いて、第1面11及び第1面11に対向する第2面12を有する、石英からなるデータ保存媒体用基材10を準備し、当該基材10の第1面11上に、単位データパターン30、配列方向指標パターン40及び境界パターン50に対応するレジストパターンR30,R40,R50を形成する(図16(a)参照)。
かかるレジストパターンR30,R40,R50は、半導体の製造プロセス等で利用されている従来公知の露光装置(電子線描画装置、レーザ描画装置等)を用いて形成され得る。この露光装置を用いて、上記のようにして生成された描画データに基づいて、データ保存媒体用基材10の第1面11側に形成されているレジスト層にパターン潜像を形成し、現像処理を施すことにより、レジストパターンR30,R40,R50を形成することができる。
上記レジスト層を構成する材料としては、特に限定されるものではなく、従来公知のエネルギー線感応型レジスト材料(例えば、電子線感応型レジスト材料等)等を用いることができる。なお、図16(a)に示す例においては、ポジ型のエネルギー線感応型レジスト材料を用いた例が示されているため、パターン潜像が形成されたレジスト層に現像処理を施すことで、凹状のレジストパターンR30,R40,R50が形成される。
このようにしてレジストパターンR30,R40,R50を形成した後、当該レジストパターンR30,R40,R50をマスクとして用い、ウェットエッチング法又はドライエッチング法によりデータ保存媒体用基材10の第1面11をエッチングし(図16(b)参照)、残存するレジストパターンR30,R40,R50を除去する。これにより、基材2の第1面21に、単位データパターン30、配列方向指標パターン40及び境界パターン50が形成されてなる、本実施形態に係るデータ保存媒体1を作製することができる。なお、必要に応じて、データ保存媒体用基材10の第1面11側表面に酸化クロム等のハードマスク層が形成されているものを用い、レジストパターンR30,R40,R50をマスクとしたハードマスク層のエッチングによりハードマスクパターンを形成し、当該ハードマスクパターンをマスクとしてデータ保存媒体用基材10の第1面11をエッチングしてハードマスクパターンを除去することによりデータ保存媒体1を作製してもよい。
このようにして作製されたデータ保存媒体1を用い、その複製物を作製する方法について説明する。図17は、本実施形態に係るデータ保存媒体1の複製物を作製する工程を切断端面にて示す工程フロー図である。
まず、基材2の第1面21に単位データパターン30、配列方向指標パターン40及び境界パターン50が形成されてなるデータ保存媒体1と、第1面61及びそれに対向する第2面62を有し、第1面61上に樹脂層7が設けられてなる基板6とを準備する(図17(a)参照)。
基板6を構成する材料としては、特に限定されるものではなく、例えば、石英ガラス基板、ソーダガラス基板、蛍石基板、フッ化カルシウム基板、フッ化マグネシウム基板、アクリルガラス基板、ホウケイ酸ガラス基板等のガラス基板;ポリカーボネート基板、ポリプロピレン基板、ポリエチレン基板、その他ポリオレフィン基板等の樹脂基板等からなる単層基板や、上記基板のうちから任意に選択された2以上を積層してなる積層基板等が挙げられる。
樹脂層7は、後述の工程(図17(b)参照)にて、データ保存媒体1の単位データパターン30、配列方向指標パターン40及び境界パターン50の反転パターンが形成される層である。樹脂層7を構成する樹脂材料としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂等の樹脂材料を用いることができ、より具体的には、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂等を用いることができる。
次に、基板6上の樹脂層7に、データ保存媒体1の第1面21を押し当てて、当該樹脂層7にデータ保存媒体1の単位データパターン30、配列方向指標パターン40及び境界パターン50を転写し、それらの反転パターンを形成する(図17(b)参照)。樹脂層7が硬化した後、当該樹脂層7からデータ保存媒体1及び基板6を剥離することで、樹脂製モールド8が作製される(図17(c)参照)。なお、後工程(図17(d)〜17(f))において支障がないのであれば、又は基板6と樹脂層7との密着性が高くそれらの剥離が困難であるならば、図17(c)に示す工程を省略し、基板6と樹脂層7とを剥離しなくてもよい。
続いて、第1面11’及びそれに対向する第2面12’を有する、石英からなる複製物用基材10’を準備し、当該複製物用基材10’の第1面11’上にレジスト層9を形成し、当該レジスト層9に樹脂製モールド8における反転パターンが形成されている面を押し当て、その状態でレジスト層9を硬化させる(図17(d)参照)。
レジスト層9が硬化した後、樹脂製モールド8をレジスト層9から剥離することで、樹脂製モールド8の反転パターンが転写されたレジストパターン91が形成される(図17(e)参照)。そのレジストパターン91をマスクとして用いて、複製物用基材10の第1面11’をエッチングする。これにより、データ保存媒体1の複製物1’を作製することができる(図17(f)参照)。なお、レジスト層9の硬化に影響がない限りにおいて、必要に応じて、複製物用基材10’の第1面11’側表面に酸化クロム等のハードマスク層が形成されているものを用い、レジストパターン91をマスクとしたハードマスク層のエッチングによりハードマスクパターンを形成し、当該ハードマスクパターンをマスクとして複製物用基材10’の第1面11’をエッチングしてハードマスクパターンを除去することによりデータ保存媒体1の複製物1’を作製してもよい。
上述したように、本実施形態によれば、半導体製造プロセス等で利用されている従来公知のリソグラフィ技術を利用することで、データ保存媒体1を容易に作製することができる。また、当該データ保存媒体1が破損した場合等に備え、それに記録・保存されているデータのバックアップとしての複製物は、従来公知のインプリント技術を利用して容易に作製され得る。
〔データ読出装置・データ読出方法〕
上述した構成を有するデータ保存媒体1に記録・保存されたデータを読み出すためのデータ読出装置及び当該データ読出装置を用いたデータ読出方法について説明する。図18は、本実施形態におけるデータ読出装置の概略構成を示すブロック図である。
本実施形態におけるデータ読出装置100は、データ保存媒体1を載置(セット)するステージと、データ保存媒体1の保存領域SAの画像データを取得する画像データ取得部110と、当該画像データに基づいたデータ処理等を行う制御部121及び画像データ取得部110により取得された画像データや制御部121により生成された各種データ、各種プログラム等を記憶する記憶部122を有する制御装置120とを備える。なお、ステージには、画像データ取得部110に対する正位置でデータ保存媒体1をセットすることができるものの、画像データ取得部110に対して左に90°回転させた状態、右に90°回転させた状態、180°回転させた状態にてデータ保存媒体1をセットすることもできる。
画像データ取得部110は、CCDカメラのような所定の撮影対象領域内の画像を画像データとして取り込む撮像部111と、撮影対象領域がデータ保存媒体1の保存領域SAの各単位保存領域UAを撮影部111に対して順次相対的に移動させるように走査処理を行う走査部112とを含む。かかる画像データ取得部110としては、汎用の光学顕微鏡等を用いることができる。
制御部121は、各種プログラムの指示に従って演算処理を行う。具体的には、制御部121は、各単位保存領域UAに形成されている単位データパターン30に基づいて画像データから単位データ(単位ビット列)を読み出す処理、当該単位データ(単位ビット列)の結合順序に関するデータ(結合順序データ)を生成する処理、配列方向指標パターン40に基づいて単位データパターン30に対応する単位データ(単位ビット列)の抽出方向を決定する処理、画像データ取得部110により取得された画像データや、種々の生成されたデータ等を記憶部122に記憶させる処理、読み出された単位データ(単位ビット列)を結合して、データ保存媒体1に記録・保存されているデータを復元する処理等を行う。
記憶部122は、画像データ取得部110により取得された保存領域SA(単位保存領域UA)の画像データ、単位保存領域UAに形成されている単位データパターン30に基づいて画像データから読み出された単位データ(単位ビット列)の結合順序データ等を記憶する。かかる制御部121及び記憶部122を有する制御装置120としては、汎用のコンピュータ等を用いることができる。
このような構成を有するデータ読出装置100を用いて、データ保存媒体1に記録・保存されているデータを読み出す方法について説明する。図19は、本実施形態におけるデータ読出方法の各工程を示すフローチャートである。
まず、画像データ取得部110にデータ保存媒体1がセットされると、画像データ取得部110は、走査部112により、データ保存媒体1を撮像部111に対して相対的に移動させ、撮像部111により、データ保存媒体1の保存領域SAの各単位保存領域UAを所定の順で撮像させ、少なくとも単位保存領域UA及び配列方向指標パターン40の画像を含む画像データを取得する(S1)。単位保存領域UAの全体形状が長方形状であって、保存領域SA内にM行×N列(M≠N)の行列配置で単位保存領域UAが配列されている場合(図3参照)、画像データの取得前に、単位保存領域UAの全体形状を認識し、当該全体形状が横長の長方形状であれば、データ保存媒体1が正位置でセットされているか、正位置から180°回転した状態でセットされていると判断される。したがって、この場合には、M行×N列に対応して撮像部111を行方向に走査させてM×N個の画像データを取得すればよい。一方、単位保存領域UAの全体形状が縦長の長方形状であれば、データ保存媒体1が正位置から右又は左に90°回転した状態でセットされていると判断される。したがって、この場合には、N行×M列に対応して撮像部111を行方向に走査させてM×N個の画像データを取得すればよい。なお、単位保存領域UAの全体形状が正方形であって、保存領域SA内にM行×N列(M=N)の行列配置で単位保存領域UAが配列されている場合には、データ保存媒体1が正位置又はそれから180°回転した状態でセットされているか、正位置から右又は左に90°回転した状態でセットされているかを判断する必要はない。
次に、制御部121は、記憶部122に記憶された各画像データの中から任意に選択された一の画像データの正位置に対する単位保存領域UAの位置関係を判断し、当該位置関係に基づいて単位保存領域UAに形成されている単位データパターン30の物理的構造(凹部31及び凸部32)を抽出する方向(抽出方向)を決定するとともに、各画像データから読み出され得る単位データ(単位ビット列)の結合順序を示す結合順序データを生成する(S2)。
具体的には、図20に示すように、制御部121は、単位保存領域UA及びそれに対応する配列方向指標パターン40を物理的に包含する方形状の枠Frを定義し、当該枠Frを回転させながら、当該枠Fr内における配列方向指標パターン40の納まるべき位置Pと、画像データIMにおける配列方向指標パターン40とを一致させる。図20に示す例においては、上記のように一致させた枠Frが単位保存領域UAの正位置に対して左に90°回転していると判断することができる。したがって、制御部121は、画像データIMにおける単位保存領域UAに形成されている単位データパターン30が左下から右上に向かう行列状に配置されていると判断し、その行列配置に従って物理的構造(凹部31及び凸部32)の抽出方向を決定する。また、制御部121は、画像データを撮像順に行列状に配置したときに、左下に位置する画像データから列方向に沿って上方に向かう順で単位データを結合することを内容とする結合順序データが生成される。
続いて、制御部121は、上記のようにして決定された抽出方向に従い、記憶部122に記憶されている各画像データから、単位データパターン30の物理的構造(凹部31及び凸部32)を抽出し、当該物理的構造に基づいて単位データ(単位ビット列)を読み出し、当該単位データ(単位ビット列)を記憶部122に記憶させる(S3)。
単位データパターン30の物理的構造(凹部31及び凸部32)を抽出し、当該物理的構造に基づいて単位データ(単位ビット列)を読み出す際、制御部121は、単位保存領域UA、配列方向指標パターン40及び境界パターン50を含む画像データ上に仮想グリッドGrを定義する。この仮想グリッドGrは、4角に位置する境界パターン50の基準点Cpを通るように定義される。そして、制御部121は、単位保存領域UA内における仮想グリッドGrの各交点PI上に凹部31が存在するか否かを判定する。凹部31が存在するか否かの判定は、例えば、画像データにおける明暗分布に基づいて行われ得る。
制御部121は、凹部31が存在すると判定した交点PIにはビット「1」を、凹部31が存在しないと判定した交点PIにはビット「0」を対応付け、これにより単位データ(単位ビット列)が読み出される。
制御部121は、すべての画像データについて単位データ(単位ビット列)を記憶部122に記憶させた後(S3)、結合順序データに従って単位データ(単位ビット列)を結合し、データ(ビット列)を生成する(S4)。このようにして、データ保存媒体1に保存されているデータを復元することができる。
上述したように、本実施形態におけるデータ読出装置及びそれを用いたデータ読出方法によれば、データ保存媒体1に配列方向指標パターン40が設けられていることで、データ保存媒体1がデータ読出装置にセットされる方向にかかわらず、データ保存媒体1に保存されているデータを正確に復元することができる。
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
上記実施形態において、データ保存媒体1は、基材2の第1面21に定義された一の保存領域SA内に複数の単位保存領域UAが行列状に配置されてなるものであるが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、例えば、一の保存領域SA内に、データのビット列を表現するデータパターンが形成されてなるものであってもよい。
上記実施形態において、データ保存媒体1は、第1面11及びそれに対向する第2面12を有する、石英からなるデータ保存媒体用基材10の第1面11に、単位データパターン30、配列方向指標パターン40及び境界パターン50を同時に形成することで作製されるが(図16参照)、本発明はこのような態様に限定されるものではない。例えば、図21に示すように、第1面11’及びそれに対向する第2面12’を有する、石英からなる基材10’の第1面11’上に、複数の単位保存領域UA及びデータ非保存領域NAを含む保存領域SAが設定され、当該保存領域SAのデータ非保存領域NAに、各単位保存領域UAに対応する配列方向指標パターン40及び境界パターン50が形成されてなるデータ保存用媒体を準備し、当該データ保存用媒体の各単位保存領域UAに、単位データパターン30を形成することで、データ保存媒体1を作製してもよい。この場合において、当該データ保存用媒体の各単位保存領域UAに単位データパターン30を形成する際には、事前に配列方向指標パターン40を認識し、当該配列方向指標パターン40に基づいて、単位データパターン30を形成するために用いられる描画データである単位パターンデータD30を配置する。
上記実施形態に係るデータ保存媒体1において、単位データパターン30、配列方向指標パターン40及び境界パターン50を構成する物理的構造がドット状の凸部であってもよい。この場合において、当該データ保存媒体1を作製する際に、エネルギー線感応型レジスト材料としてネガ型の材料を用いればよい。
上記実施形態において、データ読出装置100の画像データ取得部110により取得された画像データから単位データパターン30の物理的構造の抽出方向を決定し、当該抽出方向に従って物理的構造を抽出して単位データ(単位ビット列)を読み出しているが、本発明はこのような態様に限定されるものではない。例えば、画像データ取得部110により取得された画像データから、画像データの正位置に対する単位保存領域UAの位置関係を判断し、単位保存領域UAが画像データの正位置に一致していない場合には、画像データを回転させて正位置に戻し、左上から右下に向かう行列配置で物理的構造を抽出して単位データ(単位ビット列)を読み出してもよい。
上記実施形態におけるデータ読出装置100及びデータ読出方法において、画像データ取得部110により、配列方向指標パターン40を認識可能であるが、単位データパターン30を認識不可能又は認識困難な第1画像データを取得し、当該第1画像データに基づいて、データ保存媒体1がセットされた方向(正位置であるか、正位置に対して左に90°、右に90°又は180°回転した状態であるか)を判断した後、単位データパターン30を認識可能な第2画像データを取得するようにしてもよい。この場合において、第1画像データとしては、複数の単位保存領域UAの中から任意に選択した一の単位保存領域UAを含む、1つの画像データを用いればよく、第2画像データを取得した後、データ保存媒体1がセットされた方向に従って、当該第2画像データを回転させて正位置に戻した画像データを記憶部122に記憶すればよい。これにより、制御部121においては、記憶部122に記憶されている画像データから、正位置であることを前提として単位データパターン30の物理的構造(凹部31及び凸部32)を抽出し、単位データ(単位ビット列)を読み出せばよい。
上記実施形態におけるデータ読出装置100において、撮像部111にて撮像するにあたり、一の単位保存領域UAを含む、1つの画像データを取得し、当該画像データから配列方向指標パターン40に基づいて、データ保存媒体1が正しい方向でセットされているか否かを判断し、誤った方向でセットされていると判断される場合には、正しい方向でセットさせることを作業者に知らせるアラート機能を有していてもよい。
上記実施形態においてデータを読み出すにあたり、データ保存媒体1が撮像部111に第1面21を対向させてセットされているか、第2面22を対向させてセットされているかを確認してもよい。撮像部111の焦点が、撮像部111に対向する第1面21に合わせられている場合、撮像部111に第2面22を対向させると、データ保存媒体1の基材2の厚さや撮像部111の焦点距離によっては、第1面21に形成されている単位データパターン30、配列方向指標パターン40を認識可能な画像データを取得することができなくなってしまう。そのため、データ保存媒体1が撮像部111に第1面21を対向させてセットされているか、第2面22を対向させてセットされているかを確認することで、第1面21に形成されている単位データパターン30、配列方向指標パターン40を認識可能な画像データを確実に取得することができる。