JP6435728B2 - 炭酸エステルの製造方法及び製造装置 - Google Patents

炭酸エステルの製造方法及び製造装置 Download PDF

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Description

本発明は、一価アルコールと二酸化炭素を、固体触媒と水和剤の存在下で反応させて炭酸エステルを製造し、その際に生成する水と前記水和剤との反応で副生する副生物を、元の水和剤に戻して再利用する炭酸エステルの製造方法及び製造装置に関する。特に、水和剤としてベンゾニトリルを使用し、副生物がベンズアミドである炭酸エステルの製造方法及び製造装置に関する。
炭酸エステルとは、炭酸CO(OH)2の2原子の水素のうち1原子、あるいは2原子をアルキル基またはアリール基で置換した化合物の総称であり、RO-C(=O)-OR’(R、R’は飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基や芳香族炭化水素基を表す)の構造を持つものである。
炭酸エステルは、オクタン価向上のためのガソリン添加剤、排ガス中のパーティクルを減少させるためのディーゼル燃料添加剤等の添加剤として使われるほか、ポリカーボネートやウレタン、医薬・農薬等の樹脂・有機化合物を合成する際のアルキル化剤、カルボニル化剤、溶剤等、あるいはリチウム電池の電解液、潤滑油原料、ボイラー配管の防錆用の脱酸素剤の原料として使われるなど、非常に有用な化合物である。
従来の炭酸エステルの製造方法としては、ホスゲンをカルボニルソースとしてアルコールと直接反応させる方法が主流である。この方法は、極めて有害で腐食性の高いホスゲンを用いるため、その輸送や貯蔵等の取扱に細心の注意が必要であり、製造設備の維持管理及び安全性の確保のために多大なコストがかかっていた。また、本方法で製造する場合、原料や触媒中に塩素などのハロゲンが含まれており、得られる炭酸エステル中には、簡単な精製工程では取り除くことのできない微量のハロゲンが含まれる。ガソリン添加剤、軽油添加剤、電子材料向け用途にあっては、腐食の原因となる懸念も存在するため、微量に存在するハロゲンを極微量にするための徹底的な精製工程が必須となる。さらに、最近では、人体に極めて有害なホスゲンを利用することから、本製造方法での製造設備の新設が許可されないなど行政指導が厳しくなされてきており、ホスゲンを用いない新たな製造方法が強く望まれている。
こうした中、非特許文献1に記載されているように、ホスゲンを用いない炭酸エステルの製造法として、二酸化炭素を非常に反応性の高いエチレンオキシドなどと反応させて環状炭酸エステルを合成し、更にメタノールと反応させて炭酸ジメチルを得る方法が実用化されてきている。この方法は、塩酸などの腐食性物質を使用したり、発生することがほとんど無く、地球温暖化ガスとして削減を求められている二酸化炭素を骨格に入れることにより削減効果が期待できる環境にやさしい優れた方法である。ただ、特許文献1に記載されているように、副生するエチレングリコールなどの有効利用が大きな課題であり、またエチレンオキシドの原料であるエチレンや、エチレンオキシドの安全な輸送は困難であるため、これらエチレンとエチレンオキシドの製造工程用プラントに隣接して炭酸エステル製造工程用プラントを立地しなければならないといった制約もある。
また、特許文献2に記載されているように、メタノールと一酸化炭素を塩化第一銅触媒の存在下、液相で酸素酸化することで炭酸ジメチルを製造する方法も開示されている。しかし、本方法では人体に有害な一酸化炭素を取り扱うことや、ホスゲンを用いる製造法と同様、触媒中にハロゲンを含むことにより、得られる炭酸エステルからのハロゲンの精製工程が必須であること、CO2が少なからず副生するなどの問題が指摘されている。
さらに、非特許文献2に記載されているように、メチルナイトライドと一酸化炭素からPd-Cu系触媒存在下、炭酸ジメチルを製造する方法も実用化されている。本方法では、原料となるメチルナイトライドを炭酸ジメチル製造時に副生する一酸化窒素にメタノールと酸素を反応させて生成するという方法で供給するものであり、プロセスが複雑であることや、人体に有害な一酸化炭素を取り扱うことなどの課題がある。
それに対し、メタノールと二酸化炭素を固体触媒存在下で反応させて炭酸エステルを直接合成しようとする試みがなされている(たとえば、非特許文献3など)。しかし、本反応は平衡反応であるが、平衡が原料系に大きく偏っているため、メタノール転化率が高々1%程度に留まり、反応率、生産性が低いという克服すべき大きな課題があった。
上記の課題を解決すべく、炭酸エステル(炭酸ジメチル)と共に副生する水を系外へ除いて反応制約を解除しようとする試みがなされ、例えば触媒と共に水和剤としてアセタール(非特許文献4)、2,2-ジメトキシプロパン(非特許文献5)を用いた研究が報告されているが、反応圧力が高くなるに従って反応が進行する特性を有し、低圧では反応収率が非常に低く、極めて高圧でないと高い生産性が得られない。これは、アセタール、2,2-ジメトキシプロパンの水和反応は液相で触媒作用を受けずに進行すると予想されることからCO2圧力には依存せず、炭酸ジメチル直接合成反応の反応速度が全体の反応速度を決定するためと推察されるが、反応圧力が各々300気圧(30MPa)、60気圧(6MPa)という高圧でメタノール転化率が高くなるため、昇圧に必要な動力エネルギーが非常に大きくなりエネルギー効率が悪くなるなどの問題があった。
また、モレキュラーシーブ(固体脱水剤)を用いた研究(非特許文献6)が報告されているが、反応部(高圧)と脱水部(常圧)を分離して循環させるプロセスになることからエネルギー消費が大きく、また大量の固体脱水剤を必要とする問題点があった。
尚、炭酸エステルの直接合成反応に用いられる固体触媒は、これまでにジメトキシジブチルスズ等のスズ化合物、タリウムメトキシド等のタリウム化合物、酢酸ニッケル等のニッケル化合物、五酸化バナジウム、炭酸カリウム等のアルカリ炭酸塩、及び、Cu/SiO2等種々の化合物が検討されている。
一方、水和剤としてアセトニトリルを用いた反応として、固体触媒存在下、二価アルコールであるプロピレングリコールと二酸化炭素から環状炭酸エステル(プロピレンカーボネート)を直接合成する反応系に関する研究が報告されている(非特許文献7)。しかし、本反応系でも反応圧力の影響が顕著で、反応圧力が高くなるにしたがって反応が進行する特性を有し、低圧では反応収率が極端に低いが、環状炭酸エステルの直接合成反応が平衡的に有利な高圧で収率が上昇し、反応圧力は100気圧以上が望ましいことが確認され、上記と同様エネルギー効率が悪くなるなどの問題があった。
本発明者らは、炭酸エステルの製造に際し、一価アルコールと二酸化炭素から炭酸エステルを不均一系触媒を用いて直接合成する方法に着目し、炭酸エステルと共に副生する水を系外へ除く水和剤として、アセトニトリル、ベンゾニトリルを用いることにより、30気圧や60気圧といった高圧は不要で、常圧に近い圧力下で反応が促進されるという効果を初めて見出した(特許文献4、5参照)。しかし、水和剤としてアセトニトリルを用いた場合には、アセトアミド等の副生物が生成し、それらの用途も限定されることから、水和剤としてベンゾニトリルを採用することで、アセトニトリルの場合と同様に、反応系の圧力が常圧に近い圧力下で反応がより進行する現象が見られると共に、副生物の種類も少ないことを見出した。
国際公開第2004/014840号 欧州特許出願公開第365083号明細書 特開2009−132673号公報 特開2010−77113号公報 特開2012−162523号公報 特開2009−213975号公報
化学工学, 68(1) (2004) 41 触媒, 36 (1994) 127 Catal. Lett., 58(1999) Polyhedron, 19 (2000) 573 Appl. Catal. A Gen, 237 (2002) 103 Eco Industry, 6 (2001) 11 Catal. Lett., 112, (2006) 187 M.B.Smith, J.March, Adv. Org. Chem.: Reactions, Mechanism, and Structure 5th ed., John Wiley & Sons, New York, (2001) 御園生誠、斉藤泰和、触媒化学、丸善 (1999) C.W.Kuo, et al., Chem. Commun., (2007) 301 S. Enthaler, Chem. Eur. J., 17 (2011) 9316
本発明者はさらに、炭酸エステルの更なる生成量向上のため、水和剤の種類を鋭意検討したところ、ベンゾニトリルを用いることにより、アセトニトリルの場合と比べ、炭酸エステルの生成量、生成速度を大幅に改善し、常圧に近い比較的低い圧力下で反応が進行しやすく、且つ、反応速度が非常に速いことを見出した(特許文献4参照)。しかし、副生するベンズアミドの処理方法や利用方法に関しては、検討されていなかった。
本発明で水和剤としているベンゾニトリルを始めとするニトリルは、一般的に、溶媒、合成樹脂、染料、医薬中間体等の多くの用途に利用されている。中でも、ベンゾニトリルは医薬品や農薬の原料となる物質で、各種誘導体を合成する際の出発原料として使用される物質である。
しかしながら、ベンゾニトリルと水との反応により生成するベンズアミドの用途は一部の医農薬中間体に限定される。そのため、ベンゾニトリルを水和剤として使用する炭酸エステルの製造においては、副生するベンズアミドをベンゾニトリルに再生して再利用することが有効と考えられ、この再生反応を選択率高く(副生成物が生じると水和剤として再利用が難しくなると考えられるため)、且つ収率高く(収率が低いとベンズアミドの残留量が多くなり、ベンゾニトリルとの分離処理量が多くなり負荷が高くなるため)行うことが課題となることが判明した。
一般的に、ニトリルの合成方法の一つとして、無機シアン化物による求核置換反応が利用されているが、有毒なシアン化物の使用やハロゲン塩が副生するという問題がある(非特許文献8)。
また、アンモ酸化法(SOHIO法)という方法で、Mo−Bi系やFe−Sn系の酸化物触媒を用いて、アンモニア存在下で空気を酸化剤とした気相反応が工業化されているが、400℃以上の高い反応温度が必要であり、さらに、アクリロニトリルなどに限定される(非特許文献9)。
一方、アミドの脱水反応によるニトリルの合成もあり、ベンズアミドの脱水反応では数件報告例があるが、いずれも均一系触媒を使用することから合成後の精製、触媒の分離等の後工程が煩雑になること、強力な試薬(強酸あるいは強塩基)を使用し、また多量の副生物も発生することから環境負荷が大きいことが課題となっている(非特許文献10、11)。
また、不均一系触媒を用いたアミドの脱水反応として、特許文献6には、第1級アミドの脱水反応用触媒とそれを用いたニトリルの製造方法に関する記載がある。触媒はバナジウムをハイドロタルサイトに担持した固体触媒で、第1級アミドとしてベンズアミドのような芳香族アミド、ヘテロ環を有するアミド、脂肪族アミドでも活性を有するとされているものの、反応速度が遅く十分でない。これは、一般的にニトリルよりもアミドの方が安定な物質であり、アミドの脱水反応は反応速度が遅いこと、さらに、アミド分子内でアミド基の水素原子と窒素ヘテロ原子間で分子内水素結合を起こすが、アミドは特に分子内水素結合が大きく、安定な物質となり、脱水反応が進行しにくいからだと考えられる。
以上のように、一価アルコールと二酸化炭素を、固体触媒の存在下で反応させて高収率に炭酸エステルを合成し、副生するベンズアミドからベンゾニトリルへと再生させる、炭酸エステルの製造方法及び装置に関する報告例はこれまでなかった。
したがって、上記従来技術の問題点に鑑み、本発明の目的は、アルコールと二酸化炭素を、固体触媒と水和剤のベンゾニトリルとの存在下で反応させて炭酸エステルを直接合成する際に、生成する水をベンゾニトリルと反応させて、反応系から除去することで、炭酸エステルの生成を促進する一方、副生するベンズアミドは脱水反応させて選択率高く且つ収率高くベンゾニトリルに再生し、水和剤として再利用を図ることで、上記反応系全体として高効率で、且つ系外には製品である炭酸エステルと副生水のみとなる環境負荷の小さい炭酸エステルの製造方法と製造装置を提供することにある。
本発明者らは、炭酸エステルの製造に際し、一価アルコールと二酸化炭素から炭酸エステルを直接合成する方法に着目し、炭酸エステルと共に副生する水を系外へ除く水和剤として、アセトニトリル、ベンゾニトリルを用いることにより、非特許文献4、5に記載されているような30MPa(300気圧)や6MPa(60気圧)といった高圧は不要で、常圧に近い圧力下で反応が促進されるという効果を初めて見出し、特許出願した(特許文献4、特許文献5)。いずれの水和剤を用いた場合でも、副生アミドの分離あるいは再利用等の処理方法が検討されておらず、課題であった。
上記知見を元に、本発明者らは、副生物の利用も含めた炭酸エステルの製造方法について検討を進め、常圧に近い比較的低い圧力下で反応が進行しやすく、反応速度が非常に速く、且つ副生物の種類も少ないという、水和剤として優れた特性を有するベンゾニトリルを、本製造方法に用いることを考えた。
そこで、固体触媒として触媒を構成する元素、組成に着目して鋭意検討したところ、酸性度が比較的低く塩基性度が比較的高い酸塩基複合機能を有する固体触媒が、水和剤にベンゾニトリルを用いた場合、固体触媒存在下で水和反応によりベンズアミドを生成する反応が促進されて反応系からの脱水が効率よく進み、比較的低圧の温和な条件下でも反応平衡制約を受けることなく炭酸エステルを高い収率で得られることを見出した。
さらに、このような触媒の中でも、CeO及びZrOのいずれか一方、又は、双方の酸化物が非常に有効であることを見出した(特許文献5)。
次に、それらの知見に基づき、本発明者等は、ベンゾニトリルを水和剤として用いた場合、副生するベンズアミドは、用途が限定されて有効活用が難しいという問題を解決すべく、ベンゾニトリルへの再生反応について鋭意検討した。
従来、ベンズアミドの脱水反応は均一系触媒でしか行われていなかったが、副生物を抑え、反応系において液相で存在する原料及び生成物からの分離を容易にできる不均一系触媒を検討した。
本発明者等は、ベンズアミドの脱水反応として、金属酸化物における金属と酸素の間の二重結合が脱水反応の活性として有効であると考え、二重結合を有する金属酸化物を活性種とする触媒を検討した。
その結果、触媒担体に、金属−酸素間の二重結合を有する特定の金属酸化物を担持させた触媒を用いると、比較的温和な条件下であっても高活性となることを見出し、発明を為すに至った。
本発明の要旨は、下記の通りである。
(1)CeO及びZrOのいずれか一方、又は、双方の固体触媒とベンゾニトリルとの存在下で、一価アルコールと二酸化炭素を反応させて炭酸エステルと水を生成すると共に、前記ベンゾニトリルと前記生成した水との水和反応によりベンズアミドを生成させる第1の反応工程と、
前記第1の反応工程から前記ベンズアミドを分離した後、当該ベンズアミドを、SiO、TiO、CeO、ZrO、Al、Cのいずれか1種又は2種以上の触媒担体を水分を除去するために焼成した後の触媒担体、モリブデン、タングステン、レニウム、バナジウム、ニオブのいずれか1種または2種以上の金属種の金属酸化物が担持された触媒の存在下、且つ、有機溶媒の存在下で、加熱して脱水反応することにより、ベンゾニトリルに再生する第2の反応工程を有し、
前記第2の反応工程で再生したベンゾニトリルを、前記第1の反応工程において使用することを特徴とする炭酸エステルの製造方法である。また、
(2)前記SiO 、TiO 、CeO 、ZrO 、Al 、Cのいずれか1種又は2種以上の触媒担体を、0.15mm以下に整粒した後、水分を除去するために焼成することを特徴とする(1)に記載の炭酸エステルの製造方法である。また、
)前記第1の反応工程からの前記ベンズアミドの分離は、
前記第1の反応工程から排出される炭酸エステル、ベンズアミド、未反応のベンゾニトリル、及び前記固体触媒を、アルカンで溶媒抽出した後に固液分離し、液相の炭酸エステル、未反応のベンゾニトリル、及びアルカンと、固相の前記固体触媒及びベンズアミドとに分離する工程と、
前記固液分離後の液相の炭酸エステル、未反応のベンゾニトリル、及びアルカンをそれぞれに分離する工程と、
前記固液分離後の固体触媒及びベンズアミドを、親水性溶媒で抽出した後に固液分離し、液相のベンズアミド及び親水性溶媒と、固相の固体触媒とに分離する工程と、からなり、
更に、前記第2の反応工程の後、
当該工程から排出されるベンゾニトリル、未反応のベンズアミド、及び金属酸化物が触媒担体に担持された触媒を、濾過して、固相の金属酸化物が触媒担体に担持された触媒を分離する工程と、
当該分離後に残ったベンゾニトリル、ベンズアミド、有機溶媒、水をそれぞれに分離する工程と、を有し、
前記分離されたベンゾニトリルを、前記第1の反応工程において使用することを特徴とする(1)又は(2)に記載の炭酸エステルの製造方法である。また、
)前記分離された固体触媒を再生する工程を更に有し、再生後の触媒を、前記第1の反応工程で使用することを特徴とする()に記載の炭酸エステルの製造方法である。また、
)前記溶媒抽出の際に使用するアルカンが、ヘキサンであることを特徴とする()又は()に記載の炭酸エステルの製造方法である。また、
)前記親水性溶媒が、アセトンであることを特徴とする()〜()のいずれか1項に記載の炭酸エステルの製造方法である。また、
)前記金属酸化物が担持された触媒担体は、SiO、TiO、CeO、ZrOのいずれか1種又は2種以上であることを特徴とする(1)〜()のいずれか1項に記載の炭酸エステルの製造方法である。また、
)前記触媒担体が、SiOであることを特徴とする(7)に記載の炭酸エステルの製造方法である。また、
)前記金属酸化物が、モリブデン酸化物であることを特徴とする(1)〜()のいずれか1項に記載の炭酸エステルの製造方法である。また、
10)前記一価アルコールがメタノールであり、炭酸エステルとして炭酸ジメチルを製造することを特徴とする(1)〜()のいずれか1項に記載の炭酸エステルの製造方法である。また、
11)前記一価アルコールがエタノールであり、炭酸エステルとして炭酸ジエチルを製造することを特徴とする(1)〜()のいずれか1項に記載の炭酸エステルの製造方法である。また、
12)前記有機溶媒が、メシチレンであることを特徴とする(1)〜(11)のいずれか1項に記載の炭酸エステルの製造方法である。また、
13)前記第2の反応工程において、脱水剤を使用することを特徴とする(1)〜(12)のいずれか1項に記載の炭酸エステルの製造方法である。また、
(14)CeO 及びZrO のいずれか一方、又は、双方の固体触媒とベンゾニトリルとの存在下で、一価アルコールと二酸化炭素を反応させて炭酸エステルと水を生成すると共に、前記ベンゾニトリルと前記生成した水との水和反応によりベンズアミドを生成させる第1の反応工程と、
前記第1の反応工程から前記ベンズアミドを分離した後、当該ベンズアミドを、バナジウム、ニオブのいずれか1種または2種の金属種の金属酸化物がSiO 、TiO 、CeO 、ZrO 、Al 、Cのいずれか1種又は2種以上の触媒担体に担持された触媒の存在下、且つ、有機溶媒の存在下で、加熱して脱水反応することにより、ベンゾニトリルに再生する第2の反応工程を有し、
前記第2の反応工程で再生したベンゾニトリルを、前記第1の反応工程において使用することを特徴とする炭酸エステルの製造方法である。また、
15)前記(1)〜(13)のいずれか1項に記載の製造方法に用いる炭酸エステルの製造装置であって、
二酸化炭素を加圧する手段と、
CeO及びZrOのいずれか一方、又は、双方の固体触媒と、ベンゾニトリルとの存在下で、一価アルコールと二酸化炭素を反応させて炭酸エステルと水を生成すると共に、前記ベンゾニトリルと前記生成した水との水和反応によりベンズアミドを生成させる第1の反応手段と、
当該手段により排出される炭酸エステル、ベンズアミド、未反応のベンゾニトリル、及び前記固体触媒を、アルカンで溶媒抽出した後に固液分離し、液相の炭酸エステル、未反応のベンゾニトリル、及びアルカンと、固相の前記固体触媒及びベンズアミドとに分離する手段と、
前記固液分離後の液相の炭酸エステル、未反応のベンゾニトリル、及びアルカンをそれぞれに分離する手段と、
前記固液分離後の固体触媒及びベンズアミドを、親水性溶媒で抽出した後に固液分離し、液相のベンズアミド及び親水性溶媒と、固相の固体触媒とに分離する手段と、
当該分離されたベンズアミドを、SiO、TiO、CeO、ZrO、Al、Cのいずれか1種又は2種以上の触媒担体を水分を除去するために焼成した後の触媒担体、モリブデン、タングステン、レニウム、バナジウム、ニオブのいずれか1種または2種以上の金属種の金属酸化物が担持された触媒の存在下、且つ、有機溶媒の存在下で、加熱して脱水反応させ、ベンゾニトリルを生成する第2の反応手段と、
当該手段により排出されるベンゾニトリル、未反応のベンズアミド、及び金属酸化物が触媒担体に担持された触媒を、濾過して、固相の金属酸化物担持た触媒を分離する手段と、
当該分離後に残ったベンゾニトリル、ベンズアミド、有機溶媒、水をそれぞれに分離する手段と、を有し、
前記分離されたベンゾニトリルを、前記第1の反応手段へと搬送する手段を有することを特徴とする炭酸エステルの製造装置である。また、
(16)前記(14)に記載の製造方法に用いる炭酸エステルの製造装置であって、
二酸化炭素を加圧する手段と、
CeO 及びZrO のいずれか一方、又は、双方の固体触媒と、ベンゾニトリルとの存在下で、一価アルコールと二酸化炭素を反応させて炭酸エステルと水を生成すると共に、前記ベンゾニトリルと前記生成した水との水和反応によりベンズアミドを生成させる第1の反応手段と、
当該手段により排出される炭酸エステル、ベンズアミド、未反応のベンゾニトリル、及び前記固体触媒を、アルカンで溶媒抽出した後に固液分離し、液相の炭酸エステル、未反応のベンゾニトリル、及びアルカンと、固相の前記固体触媒及びベンズアミドとに分離する手段と、
前記固液分離後の液相の炭酸エステル、未反応のベンゾニトリル、及びアルカンをそれぞれに分離する手段と、
前記固液分離後の固体触媒及びベンズアミドを、親水性溶媒で抽出した後に固液分離し、液相のベンズアミド及び親水性溶媒と、固相の固体触媒とに分離する手段と、
当該分離されたベンズアミドを、バナジウム、ニオブのいずれか1種または2種の金属種の金属酸化物がSiO 、TiO 、CeO 、ZrO 、Al 、Cのいずれか1種又は2種以上の触媒担体に担持された触媒の存在下、且つ、有機溶媒の存在下で、加熱して脱水反応させ、ベンゾニトリルを生成する第2の反応手段と、
当該手段により排出されるベンゾニトリル、未反応のベンズアミド、及び金属酸化物が触媒担体に担持された触媒を、濾過して、固相の金属酸化物を担持した触媒を分離する手段と、
当該分離後に残ったベンゾニトリル、ベンズアミド、有機溶媒、水をそれぞれに分離する手段と、を有し、
前記分離されたベンゾニトリルを、前記第1の反応手段へと搬送する手段を有することを特徴とする炭酸エステルの製造装置。
本発明の炭酸エステルの製造方法及び装置では、一価アルコールと二酸化炭素を、固体触媒とベンゾニトリルの存在下で反応させて高収率で炭酸エステルを製造し、副生するベンズアミドから高選択率及び高収率でベンゾニトリルへと再生して、この再生したベンゾニトリルを炭酸エステルの製造に再利用することができる。これによって、反応後の分離が容易で、副生物は水のみとなり、高効率で環境負荷の小さい炭酸エステルの製造が実現可能となる。
本発明の炭酸エステルの製造装置の例を模式的に示す図である。 図1の炭酸エステルの製造装置の各工程における各物質の状態を示す図である。 本発明の炭酸エステルの製造装置の他の例を模式的に示す図である。 図3の炭酸エステルの製造装置の各工程における各物質の状態を示す図である。
<炭酸エステルの製造方法>
以下、具体例を示して、本発明の製造方法を更に詳細に説明する。
[第1の反応工程]
本発明の炭酸エステルの製造方法における第1の反応工程は、CeO及びZrOのいずれか一方又は双方の固体触媒とベンゾニトリルとの存在下、一価アルコールと二酸化炭素を直接反応させて炭酸エステルを生成するものである。
本工程では、一価アルコールと二酸化炭素を反応させると炭酸エステルの他に水も生成するが、ベンゾニトリルが存在することで、生成した水との水和反応によりベンズアミドを生成し、生成した水を反応系から除去又は低減することで、炭酸エステルの生成を促進させることが可能となる。
Figure 0006435728
(一価アルコール)
ここで、一価アルコールとしては、第一級アルコール、第二級アルコール、第三級アルコールのうち一種又は二種以上から選ばれたいずれのアルコールも用いることができ、メタノール、エタノール、1−プロパノール、1−ブタノール、ベンジルアルコール、アリルアルコールを用いた場合が、生成物の収率が高く、反応速度も速いので好ましい。この時、生成する炭酸エステルはそれぞれ、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジプロピル、炭酸ジブチル、炭酸ジベンジル、炭酸ジアリルとなる。
(炭酸エステル製造触媒)
また、CeO及びZrOのいずれか一方又は双方の固体触媒は、CeOのみ、ZrOのみ、CeOとZrOの混合物、あるいはCeOとZrOの固溶体や複合酸化物であり、特にCeOのみが好ましい。また、CeOとZrOの固溶体や複合酸化物に関しては、CeOとZrOの混合比(モル比)は、特に限定されず、たとえば、1:99〜99:1であることができ、例えば、50:50のモル比であってもよい。
本発明者らが鋭意検討した結果、炭酸エステル直接合成に用いる触媒は、酸塩基複合機能を有することが必要であり、特に酸性度が比較的低く且つ塩基性度が比較的高い性質を有することが好ましい。酸性度が高すぎると、炭酸エステルよりもむしろエーテルを多量に合成することになり好ましくない。適度な酸塩基複合機能触媒においては、塩基点上でR−O−M(Mは触媒)の形でアルコールが解離吸着し、COとの間でRO−C(=O)−O…Mを形成し、他方、酸点上ではHO−R…Mの形でアルコールが吸着し、両吸着種の間でRO−C(=O)−ORが生成される機構が考えられる。
また、この固体触媒は、炭酸エステル合成時に副生する水とベンゾニトリルの水和反応に対しても触媒活性を示す。従って、本触媒表面上では炭酸エステル合成反応と水和反応の両者が進行する状態になるが、炭酸エステルの合成反応には平衡的に不利な低圧の条件下でも、ベンゾニトリルの水和反応は触媒作用を受けて進行し、炭酸エステルの合成反応で副生した水を触媒表面から速やかに脱離することにより炭酸エステルの合成反応の平衡が生成系にシフトして、反応圧力の低い温和な条件下でも炭酸エステル合成反応が平衡制約を受けることなく炭酸エステルの高い反応率を可能にするものと推察する。逆に高圧下では、触媒表面に多量のCO分子が吸着するために、炭酸エステル合成時に生成する水分子との接触が困難になるため、ベンゾニトリルとの水和反応が進行しにくくなり、平衡制約に近い状態でしか炭酸エステルを生産することができず、結果的に高圧下では生産性が高くならなくなるものと考えられる。
上記推察に関し、ベンゾニトリルの反応の観点から説明すれば、ベンゾニトリルは、液相で本発明における固体触媒の触媒作用を受けて、その表面で水和反応が促進される。従って、高圧になると固体触媒の表面がCOで覆われてしまい、主反応で生成した水分子との水和反応に対して触媒作用を受けにくい状態になるため、水和反応速度が低下するものと推察される。一方、非特許文献4、非特許文献5に記載されたアセタールや2,2−ジメトキシプロパンは、液相で触媒作用を何ら受けず、主反応で生成した水分子と水和反応を起こす。従って、主反応が高圧で優位に進行するため、高圧下で水和反応が起こりはじめるものと推察される。
また、本発明の触媒の製造法について、下記に例を挙げると、先ず、酸化セリウム(CeO)の場合は、セリウムアセチルアセトナート水和物や水酸化セリウム、硫酸セリウム、酢酸セリウム、硝酸セリウム、硝酸アンモニウムセリウム、炭酸セリウム、蓚酸セリウム、過塩素酸セリウム、燐酸セリウム、ステアリン酸セリウムなどの各種セリウム化合物を空気雰囲気下で焼成することにより調製できる。また試薬の酸化セリウムを用いる場合は、そのまま若しくは空気雰囲気下で乾燥または焼成することでも使用できる。さらに、セリウムを溶解させた溶液から沈殿させ、濾過、乾燥、焼成することでも使用できる。
一方、酸化ジルコニウム(ZrO)の場合は、ジルコニウムエトキシド、ジルコニウムブトキシド、炭酸ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、燐酸ジルコニウム、酢酸ジルコニウム、塩化酸化ジルコニウム、酸化二硝酸ジルコニウム、硫酸ジルコニウムなどの各種ジルコニウム化合物を空気雰囲気下で焼成することにより調製できる。また試薬の酸化ジルコニウムを用いる場合は、そのまま若しくは空気雰囲気下で乾燥または焼成することでも使用できる。さらに、ジルコニウムを溶解させた溶液から沈殿させ、濾過、乾燥、焼成することでも使用できる。
また、CeOとZrOの固溶体や複合酸化物のような化合物の場合は、セリウムとジルコニウムを含んだ溶液に塩基を添加して共沈により水酸化物を形成後、濾過、水洗したものを空気雰囲気下で乾燥、焼成することにより調製できる。また、CeOとZrOの粉末同士を物理混合して焼成することでも調製できるが、最終調製品の比表面積が高くならないため、反応がより進み易い共沈法が好ましい。
これらの方法により、具体的にはCeO−ZrOのような酸化セリウムと酸化ジルコニウムの化合物からなる固体触媒を得ることができる。尚、酸化セリウムからなる触媒や酸化ジルコニウムからなる触媒を調製する場合を含めて、これら各触媒の調製時の焼成温度は、最終調製品の比表面積が高くなる温度を選択することが好ましく、出発原料にもよるが、例えば300℃から1100℃が好ましい。また、本発明による固体触媒については、上記の元素以外に触媒製造工程等で混入する不可避的不純物を含んでも構わないが、できるだけ不純物が混入しないようにするのが望ましい。不純物は触媒に対して1質量%未満が好ましい。
ここで本発明の触媒は、粉体、または成型体のいずれの形態であってもよく、成型体の場合には球状、ペレット状、シリンダー状、リング状、ホイール状、顆粒状などいずれでもよい。
(二酸化炭素)
また、本発明で用いる二酸化炭素は、工業ガスとして調製されたものだけでなく、各製品を製造する工場や製鉄所、発電所等からの排出ガスから分離回収したものも用いることができる。
(固液分離)
一価アルコールの転化率が100%で、安息香酸メチルやカルバミン酸メチルのような副生物が生成しない条件では、反応後は主生成物である炭酸エステル、副生成物であるベンズアミド、未反応のベンゾニトリル、CeO等の固体触媒となる。これらを分離するためには、まず、有機溶剤による抽出工程で液体成分(炭酸エステル、ベンゾニトリル)を抽出し、固体成分(ベンズアミドと固定触媒)とフィルターで分離できる。ここで使用する有機溶剤は炭酸エステルが溶解できるアルカンが好ましく、さらに、ヘキサン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカンがより好ましい。
(液体成分の分離)
次に、分離された液体成分には、炭酸エステル、ベンゾニトリル、有機溶剤が含まれているが、各物質の融点及び沸点が、炭酸エステルは、4℃及び90℃(炭酸ジメチル)、-43℃及び128℃(炭酸ジエチル)、-41℃及び167℃(炭酸ジプロピル)、25℃以下及び207℃(炭酸ジブチル)等があり、また、−13℃及び188℃(ベンゾニトリル)、−95℃及び69℃(例えば、ヘキサン)であることから、炭酸エステルを蒸留により分離することが可能であり、製品である炭酸エステルを高純度で回収することが可能である。また、蒸留以外にも、段階的に冷却して融点以下になり固化したものを、フィルター分離して回収することも可能である。
(固体成分の分離)
また、固体成分として分離されたベンズアミドと固体触媒は、親水性溶媒でベンズアミドのみを抽出し、固体触媒とフィルターで分離できる。ここで使用する親水性溶媒は、アセトン、エタノール、エーテル、水であることが、取扱い易さや後段での分離を考えると好ましい。親水性溶媒に溶けたベンズアミドは蒸留によって分離でき、副生したベンズアミドを高純度で精製することが可能である。
また、親水性溶媒に溶けたベンズアミドの分離は、蒸留以外にも、冷却して融点以下になり固化したベンズアミドを、液体の親水性溶媒と、フィルター分離して回収することも可能である。
(分離された固体触媒の再生処理)
分離された固体触媒は、触媒を再生する工程で再生処理され、第1の反応工程で再利用すること可能である。触媒再生工程は加熱して、固体触媒上の不純物等を焼き飛ばす工程であり、好ましくは400〜700℃、より好ましくは500〜600℃で3時間程度焼成する。急激な昇温により固体触媒の構造破壊を防ぐため、焼成前に乾燥工程を踏まえた方がよく、110℃で2時間程度乾燥させることが好ましい。
(残留成分)
また、未反応の一価アルコールが残留した場合、または、反応温度が130℃以上の高温、あるいは、反応時間が24時間以上の長時間となり、安息香酸メチルやカルバミン酸メチルのような副生物が生成してしまった場合、融点及び沸点がそれぞれ、一価アルコールでは、−97℃及び65℃(メタノール)、−114℃及び78℃(エタノール)、−126℃及び97℃(1-プロパノール)、−90℃及び117℃(1−ブタノール)等があり、また、−15℃及び198℃(安息香酸メチル)、52℃及び177℃(カルバミン酸メチル)であることから、前述の蒸留で180℃程度まで段階的に上昇させることで、一価アルコール、有機溶剤、炭酸エステル、及びカルバミン酸メチルと、安息香酸メチル、及びベンゾニトリルとを分離でき、その後、冷却することで、固化した安息香酸メチルをフィルターによって、ベンゾニトリルと分離することができる。
一価アルコール及び有機溶剤は、大半が有機溶剤であるため、有機溶剤での抽出工程で再利用が可能である。しかしながら、副生物が少ない方が、系外へ分離した後の処理工程の手間が生じ難いため、好ましい。
[第2の反応工程]
次に、本発明における第2の反応工程においては、第1の反応工程で副生したベンズアミドを、炭酸エステル生成反応後の系から分離した後、脱水反応によって、ベンゾニトリルを製造する。
このベンゾニトリルの製造においては、塩基性金属酸化物を担持した触媒と有機溶媒の存在下で、ベンズアミドを脱水反応させて、ベンゾニトリルを生成する。
Figure 0006435728
(ベンゾニトリル製造触媒)
ここで本発明で用いる触媒は、金属と酸素の間が二重結合を有する金属種(モリブデン、タングステン、レニウム、バナジウム、ニオブ)の酸化物(金属酸化物)を、一般的に触媒担体となる物質に担持した触媒を用いることができるが、様々な担体を検討した結果、SiO、TiO、CeO、ZrO、Al、Cのいずれか1種又は2種以上から成る触媒担体に担持した触媒を用いた場合に、高い性能を示すことが判明した。
特に、SiO、TiO、CeO、ZrOのいずれか1種又は2種以上の触媒担体を用いると、より高い性能を示すため好ましい。
これは、ベンズアミドとの反応において、金属と酸素の間の二重結合部分が活性を示す可能性があると考えられるため、金属酸化物の中で二重結合を有する金属元素が好ましい。
また、本発明者が鋭意検討した結果、SiOにモリブデンを高分散に担持させた触媒を用いることが、特に好ましい。高分散しているかどうかは、透過型電子顕微鏡(TEM等)の画像等で確認することができる。
ここで使用する担体の製造方法に関して下記に例を挙げると、SiOの場合の一般的な製造方法として、乾式法と湿式法に大別される。乾式法としては燃焼法、アーク法等、湿式法としては沈降法、ゲル法等があり、いずれの製造方法でも触媒担体を製造することは可能であるが、ゲル法を除く上記方法では球状に成形することが技術的、経済的に困難である為、シリカゾルを気体媒体中又は液体媒体中で噴霧させて容易に球状に成形することが可能であるゲル法が好ましい。
また、CeOの場合は、セリウムアセチルアセトナート水和物や水酸化セリウム、硫酸セリウム、酢酸セリウム、硝酸セリウム、硝酸アンモニウムセリウム、炭酸セリウム、蓚酸セリウム、過塩素酸セリウム、燐酸セリウム、ステアリン酸セリウムなどの各種セリウム化合物を空気雰囲気下で焼成することにより調製できる。また試薬の酸化セリウムを用いる場合は、そのまま若しくは空気雰囲気下で乾燥または焼成することでも使用できる。さらに、セリウムを溶解させた溶液から沈殿させ、濾過、乾燥、焼成することでも使用できる。
ZrOの場合は、ジルコニウムエトキシド、ジルコニウムブトキシド、炭酸ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、燐酸ジルコニウム、酢酸ジルコニウム、塩化酸化ジルコニウム、酸化二硝酸ジルコニウム、硫酸ジルコニウムなどの各種ジルコニウム化合物を空気雰囲気下で焼成することにより調製できる。また試薬の酸化ジルコニウムを用いる場合は、そのまま若しくは空気雰囲気下で乾燥または焼成することでも使用できる。さらに、ジルコニウムを溶解させた溶液から沈殿させ、濾過、乾燥、焼成することでも使用できる。
TiOやAlの場合も、一般的な方法で製造することができる。Cは炭素を主体とするものであって、本反応期間中変質しないものであればどんな形態でもよく、例えば活性炭などが望ましいが、これに限定するものではない。
また、2種類以上の金属種を含む化合物の場合は、2種以上の金属塩を含んだ溶液に塩基を添加して共沈により水酸化物を形成後、濾過、水洗したものを空気雰囲気下で乾燥、焼成することにより調製できる。また、2種以上の酸化物の粉末同士を物理混合して焼成することでも調製できるが、最終調製品の成分の均質性が高くならないため、反応がより進み易い共沈法が好ましい。
例えば、CeOとZrOの化合物の場合は、セリウムとジルコニウムを含んだ溶液に塩基を添加して共沈により水酸化物を形成後、濾過、水洗したものを空気雰囲気下で乾燥、焼成することにより調製できる。
このような方法により、CeO−ZrOのような酸化セリウムと酸化ジルコニウムの化合物からなる固体触媒担体を得ることができる。尚、酸化セリウムからなる触媒担体や酸化ジルコニウムからなる触媒担体を調製する場合を含めて、これら各触媒担体の調製時の焼成温度は、最終調製品の比表面積が高くなる温度を選択することが好ましく、出発原料にもよるが、例えば300℃から1100℃が好ましい。また、本発明による固体触媒担体については、上記の元素以外に触媒製造工程等で混入する不可避的不純物を含んでも構わないが、できるだけ不純物が混入しないようにするのが望ましい。
本発明の触媒の製造法は公知の方法で担体に活性種となる金属酸化物を担持すればよい。一般的な溶液を用いた沈殿担持法のほか、たとえば、インシピエントウェットネス(Incipient wetness)法や蒸発乾固法等の含浸法によって、担持することができる。
下記に好ましい例を挙げる。担体がSiOの場合、市販の粉末または球状のSiOを使用でき、活性金属を均一に担持できるよう、100mesh(0.15mm)以下に整粒し、水分を除去するために、予備焼成を空気中700℃で1時間行うことが好ましい。また、SiOにも様々な性状のものがあるが、表面積が大きいものほど、活性金属を高分散にでき、ベンゾニトリルの生成量が向上することから好ましい。具体的には、300m/g以上の表面積がより好ましい。ただし、調製後の触媒の表面積は、SiOと活性金属との相互作用等により、SiOのみの表面積よりも低下することがある。その場合、製造後の触媒の表面積が、150m/g以上となることがより好ましい。
活性種となる金属酸化物の前駆体となる金属塩は、各種溶媒への溶解度が高ければよく、例えば、炭酸塩、炭酸水素塩、塩化物塩、硝酸塩、硫酸塩、ケイ酸塩、酢酸塩などの各種化合物を用いることができる。金属化合物の前駆体溶液を担体に含浸した後、乾燥、焼成することで触媒として用いることができ、焼成温度は、使用する前駆体にもよるが、400〜600℃が好ましい。
また、金属酸化物の担持量は適宜設定すれば良いが、例えば全触媒重量を基準に金属酸化物の金属換算担持量を、0.1〜1.5mmol/g程度、特に0.1〜1mmol/g程度、さらには0.2〜0.8mmol/g程度で設定することが好ましい。担持量がより多くなると金属酸化物の粗大化により活性が低下するおそれがある。また、反応時の触媒使用量についても、適宜設定すればよい。
また、本発明による触媒については、上記の元素以外に触媒製造工程等で混入する不可避的不純物を含んでも構わないが、できるだけ不純物が混入しないようにするのが望ましい。
ここで本発明の担体上に担持した触媒は、粉体、または成型体のいずれの形態であってもよく、成型体の場合には球状、ペレット状、シリンダー状、リング状、ホイール状、顆粒状などいずれでもよい。
(有機溶媒)
脱水反応に用いる有機溶媒には、沸点が130℃以上の各種の物質が好ましく用いられるが、中でも、クロロベンゼン、(o−,m−,p−)キシレン、メシチレンなどがより好ましく用いられ、特にメシチレンが好ましい。
(反応の条件)
本発明の触媒を用いたベンゾニトリルの製造方法において、反応条件は脱水反応速度と溶媒の沸点、並びに、反応の際に発生するCO排出量や経済性の観点で選択するのが望ましく、例えば、その反応温度は160〜200℃、反応圧力は常圧、反応時間は数時間〜24時間程度で行うことができるが、特にこれらに制限されるものではない。
(反応形式)
次に、本発明の触媒を用いたベンゾニトリル製造方法は、反応形式としては特に制限されず、回分式反応器、半回分式反応器、連続槽型反応器や管型反応器のような流通式反応器のいずれを用いてもよい。また、触媒は、固定床、スラリー床等のいずれも適用することができる。
(脱水)
本発明の製造方法における副生したベンズアミドからベンゾニトリルを生成(再生)する第2の反応工程においても、炭酸エステル製造する工程と同様に、脱水反応により生成する副生水を除去しながら行うことが望ましく、例えば、ゼオライト等の脱水剤を系内に設置して、副生水を除去しながら反応を行うことが望ましい。本発明者が鋭意検討した結果、ソックスレー抽出管及び冷却器を用いて、脱水剤としてゼオライト(モレキュラーシーブ)や水素化カルシウムを抽出管内に設置して、反応管に触媒、ベンズアミド、有機溶媒を入れて、還流させて反応することで、ベンゾニトリルの生成量を向上させることが可能である。
また、脱水剤として使用するモレキュラーシーブの種類・形状には特に制限されるものはないが、例えば、3A、4A、5A等一般的に吸水性の高いもので、球状やペレット状のものを使用できる。また、事前に乾燥させておくことが好ましく、300〜500℃で1時間程乾燥することが好ましい。
Figure 0006435728
(反応生成物)
ベンズアミドの脱水反応では、上記のような、ベンズアミドの分解によって安息香酸が副生することが考えられるが、本発明の触媒を用いた脱水反応後は、反応物で微量残ったベンズアミド、生成物であるベンゾニトリル、副生物の水、有機溶媒だけであり、上記のような副生物はほとんど生成しない。ソックスレー抽出管及び冷却器を用いた還流の場合、反応温度は、ベンズアミドの脱水反応が液相で行われる条件であることが好ましい。反応効率を考慮すると液相条件下でより高温であることが好ましく、常圧下で反応させる場合、反応管周辺を160〜200℃に加熱することが好ましい。典型例の反応系における各物質の融点は、127℃(ベンズアミド)、−13℃(ベンゾニトリル)、−45℃(有機溶媒、例えばメシチレン)であり、また、沸点は288℃(ベンズアミド)、188℃(ベンゾニトリル)、100℃(水)、165℃(有機溶媒、例えばメシチレン)であることから、上記の温度であれば、反応相は、触媒が固体以外は殆どが液体となっており、一部気化した、ベンズアミド、副生水、有機溶媒が冷却器で冷却され、副生水が脱水剤で吸着され、ベンズアミド及び有機溶媒は反応管に戻り、再び反応に寄与する。
[ベンゾニトリルの再利用]
第2の反応工程で再生されたベンゾニトリルは、第1の反応工程に再利用することができる。
<炭酸エステルの製造装置>
次に、以下に具体例を示して、本発明の炭酸エステルの製造方法で使用する製造装置および操業条件(反応条件)の例を更に詳細に説明する。図1は本発明の好適な設備の一例である。また、図1における本設備での各工程における各物質の状態を図2に示す。本設備は、一価アルコールの転化率が100%で、安息香酸メチルやカルバミン酸メチルの副生成物が生成しない反応条件の場合に使用できる。
[第1の反応工程]
第1の反応工程においては、第1反応塔1に、CeO及びZrOのいずれか一方又は双方の固体触媒(固相)、一価アルコール12(液相)、ベンゾニトリル13(液相)、昇圧ブロワー10を介して二酸化炭素(気相)を充填する。固体触媒は反応前に新規に充填、あるいは再生塔6で再生された固体触媒14(固相)を使用することができる。また、ベンゾニトリルは反応開始時には新品を使用するが、第1蒸留塔3で精製された未反応のベンゾニトリル20(液相)と第3蒸留塔9で精製された、ベンズアミドから再生されたベンゾニトリルを再利用できる。
次に、本発明のCeO及びZrOのいずれか一方又は双方の固体触媒を用いた炭酸エステルの直接合成装置は、回分式反応器、半回分式反応器や連続槽型反応器、管型反応器のような流通反応器のいずれを用いてもよい。
(反応温度)
第1反応塔1における反応温度としては、50〜300℃とすることが好ましい。反応温度が50℃未満の場合は、反応速度が低く、炭酸エステル合成反応、ベンゾニトリルによる水和反応共にほとんど進行せず、炭酸エステルの生産性が低い傾向がある。また反応温度が150℃を超える場合は、各反応の反応速度は高くなるが、炭酸エステルの分解や変性、ベンズアミドが一価アルコールと反応しやすくなるため、炭酸エステルの収率が低くなる傾向がある。さらに好ましくは100〜150℃である。但し、この温度は固体触媒の種類や量、原料(一価アルコール、ベンゾニトリル)の量や比により異なると考えられるため、適宜最適条件を設定することが望ましい。好ましい反応温度が100〜150℃であることから、第1反応塔の前段で、原料(一価アルコール、ベンゾニトリル)をスチーム等で予備加熱することが望ましい。
(反応圧力)
反応圧力としては、0.1〜5MPa(絶対圧)とすることが好ましい。反応圧力が0.1MPa(絶対圧)未満の場合は、減圧装置が必要となり、設備が複雑且つコスト高になるだけでなく、減圧にするための動力エネルギーが必要となり、エネルギー効率が悪くなる。また反応圧力が5MPaを超える場合は、ベンゾニトリルによる水和反応が進行しにくくなって炭酸エステルの収率が悪くなるばかりでなく、昇圧に必要な動力エネルギーが必要となり、エネルギー効率が悪くなる。また、炭酸エステルの収率を高くする観点から、反応圧力は0.1〜4MPa(絶対圧)がより好ましく、0.2〜2MPa(絶対圧)がさらに好ましい。
(ベンゾニトリルの用量)
また水和反応に用いるベンゾニトリルは、原料のアルコールの体積の0.1倍以上1倍以下で反応前に予め反応器中に導入するのが望ましい。0.1倍未満で導入した場合には、水和反応に寄与するベンゾニトリルが少ないために炭酸エステルの収率が悪くなる恐れがある。一方1倍を超えて導入した場合にも、反応終了後、生成物との分離が容易で、再利用が可能であるので、特に問題ない。さらに、固体触媒に対する一価アルコール及びベンゾニトリルの量は、固体触媒の種類や量、一価アルコールの種類やベンゾニトリルとの比により異なると考えられるため、適宜最適条件を設定することが望ましい。
(反応生成物の分離)
第1反応塔1での反応後の反応液15は、第1抽出塔2にて液相と固相に分離する。反応液15に含まれる物質は、炭酸エステル(液相)、未反応のベンゾニトリル(液相)とベンズアミド(固相)、固体触媒(固相)であり、有機溶媒(液相)によって抽出する。ここで使用する有機溶媒はアルカンが適しており、後段での蒸留による分離のしやすさから、ヘキサン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカンが好ましい。第1抽出塔2での抽出工程は、エネルギー消費を抑えるために、抽出時の温度は常温で行うことが好ましいが、有機溶媒の沸点より低い温度(例えば、ヘキサンの場合、沸点が69℃なので、50℃程度に加熱)であれば、加熱することで抽出時間を短縮化することもできる。
第1抽出塔2で抽出された抽出液17は、炭酸エステル、未反応のベンゾニトリル、アルカンを含んでいる。第1蒸留塔3にて各物質の沸点が、90℃(例えば炭酸ジメチルの場合)、188℃(ベンゾニトリル)、69℃(例えばヘキサンの場合)であることを利用して蒸留され、製品である炭酸エステル19、未反応のベンゾニトリル20、抽出に用いられたアルカン16に分離される。
一方、第1抽出塔2で分離された固相18には、ベンズアミドと固体触媒が含まれており、第2抽出塔4にて分離される。ここで使用する溶媒は、ベンズアミドを溶解できる親水性溶媒(液相)が適しており、後段での蒸留による分離のしやすさから、アセトン、エタノール、エーテル、水が望ましい。第2抽出塔4での抽出工程も、エネルギー消費を抑えるために、抽出時の温度は常温で行うことが好ましいが、親水性溶媒の沸点より低い温度(例えば、アセトンの場合、沸点が56.5℃なので、40℃程度に加熱)であれば、加熱することで抽出時間を短縮化することもできる。
ベンズアミドと親水性溶媒を含んだ抽出液21は、第2蒸留塔5にて蒸留され、各物質の沸点が127℃(ベンズアミド)と57℃(例えばアセトンの場合)とに分離される。
また、第2抽出塔4で分離された固体触媒22(固相)は、触媒再生塔6で再生処理され、第1反応塔1に戻すことが可能である。触媒再生は加熱して、固体触媒上の不純物等を焼き飛ばす工程であり、400〜700℃、好ましくは500〜600℃で3時間程度焼成する。急激な昇温により固体触媒の構造破壊を防ぐため、焼成前に乾燥工程を踏まえた方がよく、110℃で2時間程度乾燥させることが好ましい。
第2蒸留塔5で精製されたベンズアミド23(固相)は、ベンゾニトリルへの再生のため、第2反応塔7へ移送するが、配管内での閉塞をさけるため、配管は低圧スチーム等で融点である127℃以上に加熱することが望ましい。
反応後の溶液は、触媒分離装置8においてフィルターでろ過することで固体である触媒のみ分離して、使用済み触媒26として回収できる。この際、通常のろ過などの固液分離方法により容易に回収することができる。触媒分離後は、系内に存在する各物質の沸点が、上述のようにそれぞれ異なることから、蒸留することで、ベンゾニトリル、有機溶媒、ベンズアミド、水に容易に分離することが可能であり、有機溶媒27、ベンズアミド28は、ベンズアミドの脱水反応にリサイクル利用することができる。また、精製したベンゾニトリル13は、炭酸エステルの製造を行う反応で再利用することができる。
[第2の反応工程]
第2の反応工程においては、第2反応塔7にて、ベンズアミドの脱水反応によりベンゾニトリルが生成される。本発明の製造装置は、二重結合を有する金属酸化物を担持した触媒と有機溶媒の存在下で、ベンズアミドを脱水反応させて、ベンゾニトリルを生成する装置である。反応形式としては特に制限されず、回分式反応器、半回分式反応器、連続槽型反応器や管型反応器のような流通式反応器のいずれを用いてもよい。また、触媒は、固定床、スラリー床等のいずれも適用することができる。第2反応塔の温度は、反応形式に応じて変更可能であるが、ソックスレー抽出管及び冷却器を用いた還流の場合、反応管周辺を160〜200℃に加熱することが好ましい。本発明の製造装置では、脱水反応により生成する副生水を除去しながら行うことが望ましく、例えば、還流や蒸留、ゼオライト等の脱水剤を系内に設置して、副生水を除去しながら反応を行うことが望ましい。本発明者が鋭意検討した結果、ソックスレー抽出管及び冷却器を用いて、脱水剤としてゼオライト(モレキュラーシーブ)や水素化カルシウムを抽出管内に設置して、反応管に触媒、ベンズアミド、有機溶媒を入れて、還流させて反応することで、ベンゾニトリルの生成量を向上させることが可能である。有機溶媒には沸点が130℃以上の物質が好ましく、例えば、クロロベンゼン、(o−,m−,p−)キシレン、メシチレンなどが挙げられる。
ソックスレー抽出管及び冷却器を用いた還流の場合、反応管周辺を160〜200℃に加熱する。各物質の融点は、127℃(ベンズアミド)、−13℃(ベンゾニトリル)、−45℃(有機溶媒、例えばメシチレン)であり、また、沸点は288℃(ベンズアミド)、188℃(ベンゾニトリル)、100℃(水)、165℃(有機溶媒、例えばメシチレン)であることから、反応相は、触媒が固体以外はすべて液体となっており、一部気化した、ベンズアミド、副生水、有機溶媒が冷却器で冷却され、副生水が脱水剤で吸着され、ベンズアミド及び有機溶媒は反応管に戻り、再び反応に寄与する。
反応後の溶液は、低圧スチーム等でベンズアミドの融点である288℃以上に加熱したまま、触媒分離塔8で触媒のみ分離して、使用済み触媒26として回収する。この際、通常のろ過などの固液分離方法により容易に回収することができる。触媒分離後は、系内に存在する各物質の沸点が、上述のようにそれぞれ異なることから、第3蒸留塔9にて蒸留することで、ベンゾニトリル13、有機溶媒27、ベンズアミド28、水29に容易に分離することが可能であり、有機溶媒27、ベンズアミド28は、第反応塔7の前段に戻し、リサイクル利用することができる。また、精製したベンゾニトリル13は、炭酸エステルの製造を行う第1反応塔1で再利用することができる。
[炭酸エステルの製造方法および装置の他の例]
また、図3は本発明の好適な設備の他の一例であり、図4は図3の設備での各工程における各物質の状態である。本設備は、未反応の一価アルコールが残留し、安息香酸メチルやカルバミン酸メチルの副生成物が生成してしまう反応条件の場合にも使用できる。基本的な構成は前述の図1の場合と同じであるが、第1抽出塔2で抽出された抽出液17には、炭酸エステル、未反応のベンゾニトリル、アルカンの他、カルバミン酸メチルと安息香酸メチルを含んでいる。第1蒸留塔3にて各物質の沸点が、90℃(例えば炭酸ジメチルの場合)、215℃(ベンゾニトリル)、69℃(例えばヘキサンの場合)、65℃(例えばメタノールの場合)、177℃(カルバミン酸メチル)、233℃(安息香酸メチル)であることを利用して、180℃程度まで段階的に温度上昇することで蒸留され、製品である炭酸エステル19、抽出に用いられたアルカンと未反応一価アルコールの混合物33、カルバミン酸メチル32に分離される。また、蒸留後、30〜100℃程度に冷却することで、融点が103℃である安息香酸メチルが固化することから、フィルター等で固液分離することができ、未反応のベンゾニトリル20、安息香酸メチル31に分離することができる。また、アルカンと一価アルコールの混合物33は、大半がアルカンであるため、抽出用の溶媒として再利用が可能である。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
(実施例1)
図1に示す製造装置を用いて、炭酸エステルの製造を行った。CeO(第一稀元素製:不純物濃度0.02%以下)を873Kで空気雰囲気下、3時間焼成し、粉末状の固体触媒を得た。そこで、190mlのオートクレーブ(反応器)に磁気攪拌子、上記固体触媒(1mmol)、メタノール(100mmol)及びベンゾニトリル(BN、50mmol)を導入し、約5gのCOでオートクレーブ内の空気を3回パージした後、所定の量のCOを導入・昇圧した。そのオートクレーブをバンドヒーター、ホットスターラーにより150℃まで攪拌しながら昇温し、目的の温度に達した時間を反応開始時間とした。150℃で12時間反応させた後、オートクレーブを水冷し、室温まで冷えたら減圧して内部標準物質の2−プロパノールを加え、生成物を採取し、GC(ガスクロマトグラフィー)で分析した。このようにして、COの導入量及び反応圧力を変えて表1に示す試験No.1〜2の実験を行った。
Figure 0006435728
その結果、比較的低い圧力下の1MPaでも炭酸ジメチル(DMC)生成量が多く、メタノールベースでのDMC収率は、1MPa時に15%、5MPa時に8%で得られることが確認された。また副生物のベンズアミド(BA)の生成量はDMCとほぼ同量であり、それ以外の副生物は全く検出されなかった。
ここで、メタノール(アルコール)ベースの収率は、化学両論比でアルコール:炭酸エステル=2:1であることから、以下の式により算出した。
Figure 0006435728
次に、各試験後の固液共存物質にヘキサン200mlを加えて撹拌し、溶媒抽出し、フィルターでろ過して、液体と固体を分離した。液体には、DMC、BN、メタノール、ヘキサンが、固体には、BAとCeOが含まれる。ヘキサンで溶媒抽出後の液体成分は、120℃程度まで段階的に温度を上昇させる蒸留により、DMC、BN、ヘキサン及びメタノールへと分離し、純度96%以上のDMCを回収することができた。また、固定成分中のBAとCeOはアセトン200mlに溶解後、フィルターでろ過することで、CeOとBA及びアセトンを分離し、さらにBAとアセトンは蒸留により、それぞれ分離し、純度97%以上のBAを回収できた。
続いて、回収したBAからBNへの再生について以下に記す。担体となるSiO(富士シリシア製、CARiACT、G−6、表面積:535m/g)を100mesh以下に整粒し、700℃で約1時間、予備焼成した。その後、金属としてMoを担持するために、最終的にMo金属担持量が0.5mmol/gとなるように(NHMo24(関東化学製、特級)を用いて水溶液を調製し、SiOに含浸した。その後、110℃で約6時間乾燥、500℃で約3時間焼成して、MoO/SiO触媒を得た。そこで、試験管に磁気撹拌子、上記触媒(0.1g)、DMC生成で副生したBA、メシチレン(20ml)を導入し、モレキュラーシーブ4A(300℃で1時間事前乾燥)を充填したソックスレー抽出器、リービッヒ冷却器を接続し、冷却器の温度は10℃に、磁気撹拌装置は約200℃、600rpmに設定した。Arガスで冷却器、ソックスレー抽出管、試験管内をパージした後、溶液が蒸発し始めた時間を反応開始時間とし、500時間反応させた。反応後、試験管(溶液)を室温まで冷却し、反応溶液にエタノール20ml、内部標準物質としてアントラセン(0.1g)を加えて、サンプルを採取し、GC−MS(ガスクロマトグラフ−質量分析計)で定性分析、FID−GCで定量分析した。このようにして、表1に示すように試験No.1〜2を行ったところ、BNはそれぞれ6.3mmol、3.5mmol生成した。いずれの実験でも副生物は水しかなく、収率は約90%、選択率はほぼ100%となった。
上記試験後の固液共存物質を120℃の加熱下、フィルターでろ過して、液体と固体(触媒)を分離した。液体には、BN、水、未反応のBA、メシチレンが含まれる。この液体成分を、180℃程度まで段階的に温度を上昇させる蒸留により、BN、水、未反応のBA、メシチレンへと分離し、純度98%以上のBNを回収することができた。また、分離した未反応のBAとメシチレンは、再びBAの脱水反応にリサイクル利用が可能である。
このようにして再生したBNを用いて、2回目のDMC生成反応を行った。反応条件は同じで、BNの量が50mmolとなるよう、1回目の反応で未反応だったBNと再生して得られたBNに、少量の新品のBNを追加した。その結果、1回目と同様に、DMCが高収率で得られることが確認され、また副生物のBAの生成量もDMCとほぼ同量であり、それ以外の副生物は全く検出されなかった。
上記の結果から、反応開始時には、新品のBNが50mmol必要であるが、分離した未反応のBNと副生したBAからBNへと再生して再利用することにより、従来、DMCの生成に必要なBNのほとんどを削減することが可能となる。また、BAは医農薬の中間体としての利用方法もあり得るが、それ程使用量も多くなく、処分費用が大きくかかっていたところを9割以上削減可能となった。さらに、BAからBNへと再生、蒸留した際、180℃程度まで温度を上昇させていることから、DMC製造への再利用の際に、保温した配管を通じて供給することで、この熱を利用することができる。
(実施例2)
一価アルコールでエタノール(100mmol)を用いること以外は、実施例1と同様にした。
Figure 0006435728
表2の結果より、炭酸ジエチル(DEC)の場合もDMCほどではないが、エタノールベースでのDEC収率は、1MPa時に13%、5MPa時に7%で得られることが確認された。また副生物のBAの生成量はDECとほぼ同量であり、それ以外の副生物は全く検出されなかった。
次に、実施例1と同様に各試験後の固液共存物質にヘキサン200mlを加えて撹拌し、溶媒抽出し、フィルターでろ過して、液体と固体を分離した。液体には、DEC、BN、エタノール、ヘキサンが、固体には、BAとCeOが含まれる。ヘキサンで溶媒抽出後の液体成分は、130℃程度まで段階的に温度を上昇させる蒸留により、DEC、BN、ヘキサン及びエタノールへと分離し、純度96%以上のDECを回収することができた。また、固定成分中のBAとCeOはアセトン200mlに溶解後、フィルターでろ過することで、CeOと2−PA及びアセトンを分離し、さらにBAとアセトンは蒸留により、それぞれ分離し、純度97%以上のBAを回収できた。
続いて、回収したBAからBNへの再生についても、実施例1と同様に行った。その結果、表2に示すように試験No.3〜4を行ったところ、BNはそれぞれ6.0mmol、3.2mmol生成した。いずれの実験でも副生物は水しかなく、収率は約90%以上、選択率はほぼ100%となった。
上記試験後の固液共存物質についても実施例1と同様に各液体及び固体を分離し、純度98%以上のBNを回収することができた。
このようにして再生したBNを用いて、2回目のDEC生成反応を行った。実施例1と同様に反応条件は同じで、BNの量が50mmolとなるよう、未反応のBNと再生して得られたBNに、少量の新品のBNを追加した。その結果、1回目と同様に、DECが高収率で得られることが確認され、また副生物のBAの生成量もDECとほぼ同量であり、それ以外の副生物は全く検出されなかった。
一価アルコールがエタノールで、生成物がDECの場合も、従来、DECの生成に必要なBNのほとんどを削減することが可能となり、廃棄処分となっていたBAを9割以上削減可能となった。さらに、BAからBNへと再生、蒸留した際、180℃程度まで温度を上昇させていることから、DEC製造への再利用の際に、保温した配管を通じて供給することで、この熱を利用することができる。
(実施例3)
一価アルコールで1-プロパノール(100mmol)を用いて、24時間反応すること以外は、実施例1と同様にした。
Figure 0006435728
表3の結果より、炭酸ジプロピル(DPC)の場合もDMCほどではないが、1-プロパノールベースでのDPC収率は、1MPa時に12.4%、5MPa時に6.4%で得られることが確認された。また副生物のBAの生成量はDPCとほぼ同量であり、それ以外の副生物は全く検出されなかった。
次に、実施例1と同様に各試験後の固液共存物質にヘキサン200mlを加えて撹拌し、溶媒抽出し、フィルターでろ過して、液体と固体を分離した。液体には、DPC、BN、1-プロパノール、ヘキサンが、固体には、BAとCeOが含まれる。ヘキサンで溶媒抽出後の液体成分は、170℃程度まで段階的に温度を上昇させる蒸留により、DPC、BN、ヘキサン、1-プロパノールへと分離し、純度96%以上のDPCを回収することができた。また、固定成分中のBAとCeOはアセトン200mlに溶解後、フィルターでろ過することで、CeOとBA及びアセトンを分離し、さらにBAとアセトンは蒸留により、それぞれ分離し、純度97%以上のBAを回収できた。
続いて、回収したBAからBNへの再生についても、実施例1と同様に行った。その結果、表3に示すように試験No.5〜6を行ったところ、BNはそれぞれ5.9mmol、2.8mmol生成した。いずれの実験でも副生物は水しかなく、収率は約90%以上、選択率はほぼ100%となった。
上記試験後の固液共存物質についても実施例1と同様に各液体及び固体を分離し、純度98%以上のBNを回収することができた。
このようにして再生したBNを用いて、2回目のDPC生成反応を行った。実施例1と同様に反応条件は同じで、BNの量が50mmolとなるよう、未反応のBNと再生して得られたBNに、少量の新品のBNを追加した。その結果、1回目と同様に、DPCが高収率で得られることが確認され、また副生物のBAの生成量もDPCとほぼ同量であり、それ以外の副生物は全く検出されなかった。
一価アルコールが1-プロパノールで、生成物がDPCの場合も、従来、DPCの生成に必要なBNのほとんどを削減することが可能となり、廃棄処分となっていたBAを9割以上削減可能となった。さらに、BAからBNへと再生、蒸留した際、180℃程度まで温度を上昇させていることから、DPC製造への再利用の際に、保温した配管を通じて供給することで、この熱を利用することができる。
(実施例4)
一価アルコールで1-ブタノール(100mmol)を用いて、24時間反応すること以外は、実施例1と同様にした。
Figure 0006435728
表3の結果より、炭酸ジブチル(DBC)の場合もDMCほどではないが、1-ブタノールベースでのDBC収率は、1MPa時に11.4%、5MPa時に5.8%で得られることが確認された。また副生物のBAの生成量はDBCとほぼ同量であり、それ以外の副生物は全く検出されなかった。
次に、実施例1と同様に各試験後の固液共存物質にヘキサン200mlを加えて撹拌し、溶媒抽出し、フィルターでろ過して、液体と固体を分離した。液体には、DBC、BN、1-ブタノール、ヘキサンが、固体には、BAとCeOが含まれる。ヘキサンで溶媒抽出後の液体成分は、まず、120℃程度まで段階的に温度を上昇させる蒸留により、ヘキサン、1-ブタノールを分離し、その後、約0℃まで冷却することで、BNを析出させ、純度96%以上のDBCを回収することができた。また、固定成分中のBAとCeOはアセトン200mlに溶解後、フィルターでろ過することで、CeOとBA及びアセトンを分離し、さらにBAとアセトンは蒸留により、それぞれ分離し、純度97%以上のBAを回収できた。
続いて、回収したBAからBNへの再生についても、実施例1と同様に行った。その結果、表3に示すように試験No.7〜8を行ったところ、BNはそれぞれ5.5mmol、2.6mmol生成した。いずれの実験でも副生物は水しかなく、収率は約90%以上、選択率はほぼ100%となった。
上記試験後の固液共存物質についても実施例1と同様に各液体及び固体を分離し、純度98%以上のBNを回収することができた。
このようにして再生したBNを用いて、2回目のDBC生成反応を行った。実施例1と同様に反応条件は同じで、BNの量が50mmolとなるよう、未反応のBNと再生して得られたBNに、少量の新品のBNを追加した。その結果、1回目と同様に、DBCが高収率で得られることが確認され、また副生物のBAの生成量もDBCとほぼ同量であり、それ以外の副生物は全く検出されなかった。
一価アルコールが1-ブタノールで、生成物がDBCの場合も、従来、DBCの生成に必要なBNのほとんどを削減することが可能となり、廃棄処分となっていたBAを9割以上削減可能となった。さらに、BAからBNへと再生、蒸留した際、180℃程度まで温度を上昇させていることから、DBC製造への再利用の際に、保温した配管を通じて供給することで、この熱を利用することができる。
(実施例5)
回収したBAからBNへの再生での触媒調製において、担体としてSiO 以外にもTiO 、CeO 、ZrO を用い、それらに担持する金属元素を、V、Re、W、Nbとし、試薬も関東化学製の特級を用いること以外は、実施例1と同様にNO.9〜16の試験を行った。
Figure 0006435728
表5の結果より、金属元素をV、Re、W、Nbとした場合も、収率は90%前後で選択率はほぼ100%となることがわかった。
(実施例6)
回収したBAからBNへの再生での触媒調製において、最終的なMo担持量が表6に示すようにし、反応圧力を1MPaのみとする以外は、実施例1と同様にNO.17〜22の試験を行った。その結果、表6に示すように、Mo担持量は0.1〜-1mmolでは高い活性を示し、0.6mmol程度が好適な担持量であることがわかった。一方、担持量を多くしすぎると、活性が相対的に低下したが、これは、Mo酸化物が多量に担持されることで、SiO担体上のMo酸化物が大きな凝集体となるためと推察される。
Figure 0006435728
なお、上記実施例1〜3では、BAからBNへの再生反応において、MoO/SiO触媒を用いたが、金属元素として、W、Re、V、Nbのいずれか1種類または2種類を、最終的に0.5mmol/gとなるように水溶液を調整後、SiOに含浸し、110℃で約6時間乾燥、500℃で約3時間焼成して得られる触媒を用いても、同様の効果が得られた。また、担体にはSiO以外にも、CeO、ZrO、CeO−ZrOを用いても、同様の効果が得られた。
(実施例7)
回収したBAからBNへの再生工程において、有機溶媒にメシチレンの代わりにo−キシレン(20ml)を用い、反応圧力を1MPaのみとすること以外は、実施例1と同様にした。その結果、表7(NO.23)に示すように、BNは3.2mmol生成した。副生物は水しかなく、収率は42.7%、選択率はほぼ100%となった。
Figure 0006435728
以上の結果から、有機溶媒にo−キシレンを用いても、高い収率で反応することがわかった。なお、m−キシレン、p−キシレンでも同様の効果が得られた。
(比較例1)
DMC製造反応において、水和剤としてアセトニトリル(AN、300mmol)を導入し、150℃で24時間反応させること以外は、実施例1と同様にした。
Figure 0006435728
表8の結果より、ANの用いるとBNの場合と比較して、DMC生成量が約1/10と低くなり、メタノールベースでのDMC収率は、0.5MPa時に8.2%が最高であることから、本発明の方が高効率であることがわかった。また副生物のアセトアミド(AA)の生成量はDMCとほぼ同量であり、それ以外の副生物は全く検出されなかった。
次に、実施例1と同様に各試験後の固液共存物質にヘキサン200mlを加えて撹拌し、溶媒抽出し、フィルターでろ過して、液体と固体を分離した。液体には、DMC、未反応のAN、メタノール、ヘキサンが、固体には、AAとCeOが含まれる。ヘキサンで溶媒抽出後の液体成分は、ANの融点と沸点がそれぞれ-45℃と82℃であることから、蒸留ではDMCとANとを分離することができないため、一旦-30〜0℃に冷却し、析出したDMCを分離することは可能である。その後、70℃程度まで温度を上昇させて蒸留した際、メタノールとヘキサンの混合物が未反応ANとを分離でき、未反応ANは、DMC生成反応へと再利用可能であるが、メタノールとヘキサンの混合物中に含まれるメタノール濃度が高いため、抽出用の溶媒として再利用が難しく、廃棄処理する必要がある。また、固定成分中のAAとCeOはアセトン100mlに溶解後、フィルターでろ過することで、CeOとAA及びアセトンを分離し、さらにAAとアセトンは70℃程度まで加熱した蒸留により、それぞれ分離し、純度95%以上のAAを回収できた。
続いて、回収したAAからANへの再生についても、実施例1と同様に行った。その結果、表8に示すように試験No.24〜25を行ったところ、ほとんど反応しなかった。これは、固体触媒が塩基性であるのに対し、AAが酸性であることから、固体触媒上の活性点をAAが被毒することになり、反応が進行しないと考えられる。
したがって、副生したAAを脱水して、ANを再生することはできなかったため、2回目のDMC生成反応は、未反応のANに新品のANを追加し、ANの量が300mmolとなるようにして、150℃で24時間反応させること以外は、実施例1と同様に反応させた。その結果、1回目と同様に、BNの場合と比較して、DMC生成量が約1/10と低くなり、メタノールベースでのDMC収率は、0.5MPa時に1.7%が最高となった。
(比較例2)
BAからBNへの再生工程(及び再生工程後の分離工程)を行わないこと以外は、実施例1と同様の条件で試験NO.26〜27を行った。その結果、純度96%以上のDMCと、純度97%以上のBAを回収できたが、大量に副生したBAは利用用途がほとんどなく、産業廃棄物として処理することとなった。また、2回目のDMC生成反応には、新規に少なくとも7.7または4.3mmolのBNが必要となり、原料コストの増加にも繋がった。
Figure 0006435728
(比較例3)
回収したBAからBNへの再生反応において、触媒として表10に示すような触媒を調製して用い、反応圧力を1MPaのみとすること以外は、実施例1と同様にした。その結果、表10(NO.28〜29)に示すように、BNの生成量が少なく、活性が低かった。
Figure 0006435728
1 第1反応塔、2 第1抽出塔、3 第1蒸留塔、4 第2抽出塔、5 第2蒸留塔、6 触媒再生塔、7 第2反応塔、8 触媒分離塔、9 第3蒸留塔、10 CO昇圧ブロワー、11 CO、12 一価アルコール、13 ベンゾニトリル、14 固体触媒、15 反応液、16 アルカン、17、21 抽出液、18 固相物質、19 炭酸エステル、20 未反応ベンゾニトリル、22 使用済固体触媒、23 ベンズアミド、24 親水性溶媒、25 固体触媒、26 使用済固体触媒、27 有機溶媒、28 ベンズアミド、29 水、30 ろ過塔、31 安息香酸メチル、32 カルバミン酸メチル、33 アルカン及び未反応一価アルコール

Claims (16)

  1. CeO及びZrOのいずれか一方、又は、双方の固体触媒とベンゾニトリルとの存在下で、一価アルコールと二酸化炭素を反応させて炭酸エステルと水を生成すると共に、前記ベンゾニトリルと前記生成した水との水和反応によりベンズアミドを生成させる第1の反応工程と、
    前記第1の反応工程から前記ベンズアミドを分離した後、当該ベンズアミドを、SiO、TiO、CeO、ZrO、Al、Cのいずれか1種又は2種以上の触媒担体を水分を除去するために焼成した後の触媒担体、モリブデン、タングステン、レニウム、バナジウム、ニオブのいずれか1種または2種以上の金属種の金属酸化物が担持された触媒の存在下、且つ、有機溶媒の存在下で、加熱して脱水反応することにより、ベンゾニトリルに再生する第2の反応工程を有し、
    前記第2の反応工程で再生したベンゾニトリルを、前記第1の反応工程において使用することを特徴とする炭酸エステルの製造方法。
  2. 前記SiO 、TiO 、CeO 、ZrO 、Al 、Cのいずれか1種又は2種以上の触媒担体を、0.15mm以下に整粒した後、水分を除去するために焼成することを特徴とする請求項1に記載の炭酸エステルの製造方法。
  3. 前記第1の反応工程からの前記ベンズアミドの分離は、
    前記第1の反応工程から排出される炭酸エステル、ベンズアミド、未反応のベンゾニトリル、及び前記固体触媒を、アルカンで溶媒抽出した後に固液分離し、液相の炭酸エステル、未反応のベンゾニトリル、及びアルカンと、固相の前記固体触媒及びベンズアミドとに分離する工程と、
    前記固液分離後の液相の、炭酸エステル、未反応のベンゾニトリル、及びアルカンを、それぞれに分離する工程と、
    前記固液分離後の固体触媒及びベンズアミドを、親水性溶媒で抽出した後に固液分離し、液相のベンズアミド及び親水性溶媒と、固相の固体触媒とに分離する工程と、からなり、
    更に、前記第2の反応工程の後、
    当該工程から排出されるベンゾニトリル、未反応のベンズアミド、及び金属酸化物が触媒担体に担持された触媒を、濾過して、固相の金属酸化物が触媒担体に担持された触媒を分離する工程と、
    当該分離後に残ったベンゾニトリル、ベンズアミド、有機溶媒、水をそれぞれに分離する工程と、を有し、
    前記分離されたベンゾニトリルを、前記第1の反応工程において使用することを特徴とする請求項1又は2に記載の炭酸エステルの製造方法。
  4. 前記分離された固体触媒を再生する工程を更に有し、再生後の触媒を、前記第1の反応工程で使用することを特徴とする請求項に記載の炭酸エステルの製造方法。
  5. 前記溶媒抽出の際に使用するアルカンが、ヘキサンであることを特徴とする請求項又はに記載の炭酸エステルの製造方法。
  6. 前記親水性溶媒が、アセトンであることを特徴とする請求項のいずれか1項に記載の炭酸エステルの製造方法。
  7. 前記金属酸化物が担持された触媒担体は、SiO、TiO、CeO、ZrOのいずれか1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の炭酸エステルの製造方法。
  8. 前記触媒担体が、SiOであることを特徴とする請求項に記載の炭酸エステルの製造方法。
  9. 前記金属酸化物が、モリブデン酸化物であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の炭酸エステルの製造方法。
  10. 前記一価アルコールがメタノールであり、炭酸エステルとして炭酸ジメチルを製造することを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の炭酸エステルの製造方法。
  11. 前記一価アルコールがエタノールであり、炭酸エステルとして炭酸ジエチルを製造することを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の炭酸エステルの製造方法。
  12. 前記有機溶媒が、メシチレンであることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の炭酸エステルの製造方法。
  13. 前記第2の反応工程において、脱水剤を使用することを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の炭酸エステルの製造方法。
  14. CeO 及びZrO のいずれか一方、又は、双方の固体触媒とベンゾニトリルとの存在下で、一価アルコールと二酸化炭素を反応させて炭酸エステルと水を生成すると共に、前記ベンゾニトリルと前記生成した水との水和反応によりベンズアミドを生成させる第1の反応工程と、
    前記第1の反応工程から前記ベンズアミドを分離した後、当該ベンズアミドを、バナジウム、ニオブのいずれか1種または2種の金属種の金属酸化物がSiO 、TiO 、CeO 、ZrO 、Al 、Cのいずれか1種又は2種以上の触媒担体に担持された触媒の存在下、且つ、有機溶媒の存在下で、加熱して脱水反応することにより、ベンゾニトリルに再生する第2の反応工程を有し、
    前記第2の反応工程で再生したベンゾニトリルを、前記第1の反応工程において使用することを特徴とする炭酸エステルの製造方法。
  15. 請求項1〜13のいずれか1項に記載の製造方法に用いる炭酸エステルの製造装置であって、
    二酸化炭素を加圧する手段と、
    CeO及びZrOのいずれか一方、又は、双方の固体触媒と、ベンゾニトリルとの存在下で、一価アルコールと二酸化炭素を反応させて炭酸エステルと水を生成すると共に、前記ベンゾニトリルと前記生成した水との水和反応によりベンズアミドを生成させる第1の反応手段と、
    当該手段により排出される炭酸エステル、ベンズアミド、未反応のベンゾニトリル、及び前記固体触媒を、アルカンで溶媒抽出した後に固液分離し、液相の炭酸エステル、未反応のベンゾニトリル、及びアルカンと、固相の前記固体触媒及びベンズアミドとに分離する手段と、
    前記固液分離後の液相の炭酸エステル、未反応のベンゾニトリル、及びアルカンをそれぞれに分離する手段と、
    前記固液分離後の固体触媒及びベンズアミドを、親水性溶媒で抽出した後に固液分離し、液相のベンズアミド及び親水性溶媒と、固相の固体触媒とに分離する手段と、
    当該分離されたベンズアミドを、SiO、TiO、CeO、ZrO、Al、Cのいずれか1種又は2種以上の触媒担体を水分を除去するために焼成した後の触媒担体、モリブデン、タングステン、レニウム、バナジウム、ニオブのいずれか1種または2種以上の金属種の金属酸化物が担持された触媒の存在下、且つ、有機溶媒の存在下で、加熱して脱水反応させ、ベンゾニトリルを生成する第2の反応手段と、
    当該手段により排出されるベンゾニトリル、未反応のベンズアミド、及び金属酸化物が触媒担体に担持された触媒を、濾過して、固相の金属酸化物を担持した触媒を分離する手段と、
    当該分離後に残ったベンゾニトリル、ベンズアミド、有機溶媒、水をそれぞれに分離する手段と、を有し、
    前記分離されたベンゾニトリルを、前記第1の反応手段へと搬送する手段を有することを特徴とする炭酸エステルの製造装置。
  16. 請求項14に記載の製造方法に用いる炭酸エステルの製造装置であって、
    二酸化炭素を加圧する手段と、
    CeO 及びZrO のいずれか一方、又は、双方の固体触媒と、ベンゾニトリルとの存在下で、一価アルコールと二酸化炭素を反応させて炭酸エステルと水を生成すると共に、前記ベンゾニトリルと前記生成した水との水和反応によりベンズアミドを生成させる第1の反応手段と、
    当該手段により排出される炭酸エステル、ベンズアミド、未反応のベンゾニトリル、及び前記固体触媒を、アルカンで溶媒抽出した後に固液分離し、液相の炭酸エステル、未反応のベンゾニトリル、及びアルカンと、固相の前記固体触媒及びベンズアミドとに分離する手段と、
    前記固液分離後の液相の炭酸エステル、未反応のベンゾニトリル、及びアルカンをそれぞれに分離する手段と、
    前記固液分離後の固体触媒及びベンズアミドを、親水性溶媒で抽出した後に固液分離し、液相のベンズアミド及び親水性溶媒と、固相の固体触媒とに分離する手段と、
    当該分離されたベンズアミドを、バナジウム、ニオブのいずれか1種または2種の金属種の金属酸化物がSiO 、TiO 、CeO 、ZrO 、Al 、Cのいずれか1種又は2種以上の触媒担体に担持された触媒の存在下、且つ、有機溶媒の存在下で、加熱して脱水反応させ、ベンゾニトリルを生成する第2の反応手段と、
    当該手段により排出されるベンゾニトリル、未反応のベンズアミド、及び金属酸化物が触媒担体に担持された触媒を、濾過して、固相の金属酸化物を担持した触媒を分離する手段と、
    当該分離後に残ったベンゾニトリル、ベンズアミド、有機溶媒、水をそれぞれに分離する手段と、を有し、
    前記分離されたベンゾニトリルを、前記第1の反応手段へと搬送する手段を有することを特徴とする炭酸エステルの製造装置。
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