JP6435728B2 - 炭酸エステルの製造方法及び製造装置 - Google Patents
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Description
(1)CeO2及びZrO2のいずれか一方、又は、双方の固体触媒とベンゾニトリルとの存在下で、一価アルコールと二酸化炭素を反応させて炭酸エステルと水を生成すると共に、前記ベンゾニトリルと前記生成した水との水和反応によりベンズアミドを生成させる第1の反応工程と、
前記第1の反応工程から前記ベンズアミドを分離した後、当該ベンズアミドを、SiO2、TiO2、CeO2、ZrO2、Al2O3、Cのいずれか1種又は2種以上の触媒担体を水分を除去するために焼成した後の触媒担体に、モリブデン、タングステン、レニウム、バナジウム、ニオブのいずれか1種または2種以上の金属種の金属酸化物が担持された触媒の存在下、且つ、有機溶媒の存在下で、加熱して脱水反応することにより、ベンゾニトリルに再生する第2の反応工程を有し、
前記第2の反応工程で再生したベンゾニトリルを、前記第1の反応工程において使用することを特徴とする炭酸エステルの製造方法である。また、
(2)前記SiO 2 、TiO 2 、CeO 2 、ZrO 2 、Al 2 O 3 、Cのいずれか1種又は2種以上の触媒担体を、0.15mm以下に整粒した後、水分を除去するために焼成することを特徴とする(1)に記載の炭酸エステルの製造方法である。また、
前記第1の反応工程から排出される炭酸エステル、ベンズアミド、未反応のベンゾニトリル、及び前記固体触媒を、アルカンで溶媒抽出した後に固液分離し、液相の炭酸エステル、未反応のベンゾニトリル、及びアルカンと、固相の前記固体触媒及びベンズアミドとに分離する工程と、
前記固液分離後の液相の炭酸エステル、未反応のベンゾニトリル、及びアルカンをそれぞれに分離する工程と、
前記固液分離後の固体触媒及びベンズアミドを、親水性溶媒で抽出した後に固液分離し、液相のベンズアミド及び親水性溶媒と、固相の固体触媒とに分離する工程と、からなり、
更に、前記第2の反応工程の後、
当該工程から排出されるベンゾニトリル、未反応のベンズアミド、及び金属酸化物が触媒担体に担持された触媒を、濾過して、固相の金属酸化物が触媒担体に担持された触媒を分離する工程と、
当該分離後に残ったベンゾニトリル、ベンズアミド、有機溶媒、水をそれぞれに分離する工程と、を有し、
前記分離されたベンゾニトリルを、前記第1の反応工程において使用することを特徴とする(1)又は(2)に記載の炭酸エステルの製造方法である。また、
(14)CeO 2 及びZrO 2 のいずれか一方、又は、双方の固体触媒とベンゾニトリルとの存在下で、一価アルコールと二酸化炭素を反応させて炭酸エステルと水を生成すると共に、前記ベンゾニトリルと前記生成した水との水和反応によりベンズアミドを生成させる第1の反応工程と、
前記第1の反応工程から前記ベンズアミドを分離した後、当該ベンズアミドを、バナジウム、ニオブのいずれか1種または2種の金属種の金属酸化物がSiO 2 、TiO 2 、CeO 2 、ZrO 2 、Al 2 O 3 、Cのいずれか1種又は2種以上の触媒担体に担持された触媒の存在下、且つ、有機溶媒の存在下で、加熱して脱水反応することにより、ベンゾニトリルに再生する第2の反応工程を有し、
前記第2の反応工程で再生したベンゾニトリルを、前記第1の反応工程において使用することを特徴とする炭酸エステルの製造方法である。また、
二酸化炭素を加圧する手段と、
CeO2及びZrO2のいずれか一方、又は、双方の固体触媒と、ベンゾニトリルとの存在下で、一価アルコールと二酸化炭素を反応させて炭酸エステルと水を生成すると共に、前記ベンゾニトリルと前記生成した水との水和反応によりベンズアミドを生成させる第1の反応手段と、
当該手段により排出される炭酸エステル、ベンズアミド、未反応のベンゾニトリル、及び前記固体触媒を、アルカンで溶媒抽出した後に固液分離し、液相の炭酸エステル、未反応のベンゾニトリル、及びアルカンと、固相の前記固体触媒及びベンズアミドとに分離する手段と、
前記固液分離後の液相の炭酸エステル、未反応のベンゾニトリル、及びアルカンをそれぞれに分離する手段と、
前記固液分離後の固体触媒及びベンズアミドを、親水性溶媒で抽出した後に固液分離し、液相のベンズアミド及び親水性溶媒と、固相の固体触媒とに分離する手段と、
当該分離されたベンズアミドを、SiO2、TiO2、CeO2、ZrO2、Al2O3、Cのいずれか1種又は2種以上の触媒担体を水分を除去するために焼成した後の触媒担体に、モリブデン、タングステン、レニウム、バナジウム、ニオブのいずれか1種または2種以上の金属種の金属酸化物が担持された触媒の存在下、且つ、有機溶媒の存在下で、加熱して脱水反応させ、ベンゾニトリルを生成する第2の反応手段と、
当該手段により排出されるベンゾニトリル、未反応のベンズアミド、及び金属酸化物が触媒担体に担持された触媒を、濾過して、固相の金属酸化物を担持した触媒を分離する手段と、
当該分離後に残ったベンゾニトリル、ベンズアミド、有機溶媒、水をそれぞれに分離する手段と、を有し、
前記分離されたベンゾニトリルを、前記第1の反応手段へと搬送する手段を有することを特徴とする炭酸エステルの製造装置である。また、
(16)前記(14)に記載の製造方法に用いる炭酸エステルの製造装置であって、
二酸化炭素を加圧する手段と、
CeO 2 及びZrO 2 のいずれか一方、又は、双方の固体触媒と、ベンゾニトリルとの存在下で、一価アルコールと二酸化炭素を反応させて炭酸エステルと水を生成すると共に、前記ベンゾニトリルと前記生成した水との水和反応によりベンズアミドを生成させる第1の反応手段と、
当該手段により排出される炭酸エステル、ベンズアミド、未反応のベンゾニトリル、及び前記固体触媒を、アルカンで溶媒抽出した後に固液分離し、液相の炭酸エステル、未反応のベンゾニトリル、及びアルカンと、固相の前記固体触媒及びベンズアミドとに分離する手段と、
前記固液分離後の液相の炭酸エステル、未反応のベンゾニトリル、及びアルカンをそれぞれに分離する手段と、
前記固液分離後の固体触媒及びベンズアミドを、親水性溶媒で抽出した後に固液分離し、液相のベンズアミド及び親水性溶媒と、固相の固体触媒とに分離する手段と、
当該分離されたベンズアミドを、バナジウム、ニオブのいずれか1種または2種の金属種の金属酸化物がSiO 2 、TiO 2 、CeO 2 、ZrO 2 、Al 2 O 3 、Cのいずれか1種又は2種以上の触媒担体に担持された触媒の存在下、且つ、有機溶媒の存在下で、加熱して脱水反応させ、ベンゾニトリルを生成する第2の反応手段と、
当該手段により排出されるベンゾニトリル、未反応のベンズアミド、及び金属酸化物が触媒担体に担持された触媒を、濾過して、固相の金属酸化物を担持した触媒を分離する手段と、
当該分離後に残ったベンゾニトリル、ベンズアミド、有機溶媒、水をそれぞれに分離する手段と、を有し、
前記分離されたベンゾニトリルを、前記第1の反応手段へと搬送する手段を有することを特徴とする炭酸エステルの製造装置。
以下、具体例を示して、本発明の製造方法を更に詳細に説明する。
本発明の炭酸エステルの製造方法における第1の反応工程は、CeO2及びZrO2のいずれか一方又は双方の固体触媒とベンゾニトリルとの存在下、一価アルコールと二酸化炭素を直接反応させて炭酸エステルを生成するものである。
ここで、一価アルコールとしては、第一級アルコール、第二級アルコール、第三級アルコールのうち一種又は二種以上から選ばれたいずれのアルコールも用いることができ、メタノール、エタノール、1−プロパノール、1−ブタノール、ベンジルアルコール、アリルアルコールを用いた場合が、生成物の収率が高く、反応速度も速いので好ましい。この時、生成する炭酸エステルはそれぞれ、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジプロピル、炭酸ジブチル、炭酸ジベンジル、炭酸ジアリルとなる。
また、CeO2及びZrO2のいずれか一方又は双方の固体触媒は、CeO2のみ、ZrO2のみ、CeO2とZrO2の混合物、あるいはCeO2とZrO2の固溶体や複合酸化物であり、特にCeO2のみが好ましい。また、CeO2とZrO2の固溶体や複合酸化物に関しては、CeO2とZrO2の混合比(モル比)は、特に限定されず、たとえば、1:99〜99:1であることができ、例えば、50:50のモル比であってもよい。
また、本発明で用いる二酸化炭素は、工業ガスとして調製されたものだけでなく、各製品を製造する工場や製鉄所、発電所等からの排出ガスから分離回収したものも用いることができる。
一価アルコールの転化率が100%で、安息香酸メチルやカルバミン酸メチルのような副生物が生成しない条件では、反応後は主生成物である炭酸エステル、副生成物であるベンズアミド、未反応のベンゾニトリル、CeO2等の固体触媒となる。これらを分離するためには、まず、有機溶剤による抽出工程で液体成分(炭酸エステル、ベンゾニトリル)を抽出し、固体成分(ベンズアミドと固定触媒)とフィルターで分離できる。ここで使用する有機溶剤は炭酸エステルが溶解できるアルカンが好ましく、さらに、ヘキサン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカンがより好ましい。
次に、分離された液体成分には、炭酸エステル、ベンゾニトリル、有機溶剤が含まれているが、各物質の融点及び沸点が、炭酸エステルは、4℃及び90℃(炭酸ジメチル)、-43℃及び128℃(炭酸ジエチル)、-41℃及び167℃(炭酸ジプロピル)、25℃以下及び207℃(炭酸ジブチル)等があり、また、−13℃及び188℃(ベンゾニトリル)、−95℃及び69℃(例えば、ヘキサン)であることから、炭酸エステルを蒸留により分離することが可能であり、製品である炭酸エステルを高純度で回収することが可能である。また、蒸留以外にも、段階的に冷却して融点以下になり固化したものを、フィルター分離して回収することも可能である。
また、固体成分として分離されたベンズアミドと固体触媒は、親水性溶媒でベンズアミドのみを抽出し、固体触媒とフィルターで分離できる。ここで使用する親水性溶媒は、アセトン、エタノール、エーテル、水であることが、取扱い易さや後段での分離を考えると好ましい。親水性溶媒に溶けたベンズアミドは蒸留によって分離でき、副生したベンズアミドを高純度で精製することが可能である。
また、親水性溶媒に溶けたベンズアミドの分離は、蒸留以外にも、冷却して融点以下になり固化したベンズアミドを、液体の親水性溶媒と、フィルター分離して回収することも可能である。
分離された固体触媒は、触媒を再生する工程で再生処理され、第1の反応工程で再利用すること可能である。触媒再生工程は加熱して、固体触媒上の不純物等を焼き飛ばす工程であり、好ましくは400〜700℃、より好ましくは500〜600℃で3時間程度焼成する。急激な昇温により固体触媒の構造破壊を防ぐため、焼成前に乾燥工程を踏まえた方がよく、110℃で2時間程度乾燥させることが好ましい。
また、未反応の一価アルコールが残留した場合、または、反応温度が130℃以上の高温、あるいは、反応時間が24時間以上の長時間となり、安息香酸メチルやカルバミン酸メチルのような副生物が生成してしまった場合、融点及び沸点がそれぞれ、一価アルコールでは、−97℃及び65℃(メタノール)、−114℃及び78℃(エタノール)、−126℃及び97℃(1-プロパノール)、−90℃及び117℃(1−ブタノール)等があり、また、−15℃及び198℃(安息香酸メチル)、52℃及び177℃(カルバミン酸メチル)であることから、前述の蒸留で180℃程度まで段階的に上昇させることで、一価アルコール、有機溶剤、炭酸エステル、及びカルバミン酸メチルと、安息香酸メチル、及びベンゾニトリルとを分離でき、その後、冷却することで、固化した安息香酸メチルをフィルターによって、ベンゾニトリルと分離することができる。
一価アルコール及び有機溶剤は、大半が有機溶剤であるため、有機溶剤での抽出工程で再利用が可能である。しかしながら、副生物が少ない方が、系外へ分離した後の処理工程の手間が生じ難いため、好ましい。
次に、本発明における第2の反応工程においては、第1の反応工程で副生したベンズアミドを、炭酸エステル生成反応後の系から分離した後、脱水反応によって、ベンゾニトリルを製造する。
ここで本発明で用いる触媒は、金属と酸素の間が二重結合を有する金属種(モリブデン、タングステン、レニウム、バナジウム、ニオブ)の酸化物(金属酸化物)を、一般的に触媒担体となる物質に担持した触媒を用いることができるが、様々な担体を検討した結果、SiO2、TiO2、CeO2、ZrO2、Al2O3、Cのいずれか1種又は2種以上から成る触媒担体に担持した触媒を用いた場合に、高い性能を示すことが判明した。
脱水反応に用いる有機溶媒には、沸点が130℃以上の各種の物質が好ましく用いられるが、中でも、クロロベンゼン、(o−,m−,p−)キシレン、メシチレンなどがより好ましく用いられ、特にメシチレンが好ましい。
本発明の触媒を用いたベンゾニトリルの製造方法において、反応条件は脱水反応速度と溶媒の沸点、並びに、反応の際に発生するCO2排出量や経済性の観点で選択するのが望ましく、例えば、その反応温度は160〜200℃、反応圧力は常圧、反応時間は数時間〜24時間程度で行うことができるが、特にこれらに制限されるものではない。
次に、本発明の触媒を用いたベンゾニトリル製造方法は、反応形式としては特に制限されず、回分式反応器、半回分式反応器、連続槽型反応器や管型反応器のような流通式反応器のいずれを用いてもよい。また、触媒は、固定床、スラリー床等のいずれも適用することができる。
本発明の製造方法における副生したベンズアミドからベンゾニトリルを生成(再生)する第2の反応工程においても、炭酸エステル製造する工程と同様に、脱水反応により生成する副生水を除去しながら行うことが望ましく、例えば、ゼオライト等の脱水剤を系内に設置して、副生水を除去しながら反応を行うことが望ましい。本発明者が鋭意検討した結果、ソックスレー抽出管及び冷却器を用いて、脱水剤としてゼオライト(モレキュラーシーブ)や水素化カルシウムを抽出管内に設置して、反応管に触媒、ベンズアミド、有機溶媒を入れて、還流させて反応することで、ベンゾニトリルの生成量を向上させることが可能である。
ベンズアミドの脱水反応では、上記のような、ベンズアミドの分解によって安息香酸が副生することが考えられるが、本発明の触媒を用いた脱水反応後は、反応物で微量残ったベンズアミド、生成物であるベンゾニトリル、副生物の水、有機溶媒だけであり、上記のような副生物はほとんど生成しない。ソックスレー抽出管及び冷却器を用いた還流の場合、反応温度は、ベンズアミドの脱水反応が液相で行われる条件であることが好ましい。反応効率を考慮すると液相条件下でより高温であることが好ましく、常圧下で反応させる場合、反応管周辺を160〜200℃に加熱することが好ましい。典型例の反応系における各物質の融点は、127℃(ベンズアミド)、−13℃(ベンゾニトリル)、−45℃(有機溶媒、例えばメシチレン)であり、また、沸点は288℃(ベンズアミド)、188℃(ベンゾニトリル)、100℃(水)、165℃(有機溶媒、例えばメシチレン)であることから、上記の温度であれば、反応相は、触媒が固体以外は殆どが液体となっており、一部気化した、ベンズアミド、副生水、有機溶媒が冷却器で冷却され、副生水が脱水剤で吸着され、ベンズアミド及び有機溶媒は反応管に戻り、再び反応に寄与する。
第2の反応工程で再生されたベンゾニトリルは、第1の反応工程に再利用することができる。
次に、以下に具体例を示して、本発明の炭酸エステルの製造方法で使用する製造装置および操業条件(反応条件)の例を更に詳細に説明する。図1は本発明の好適な設備の一例である。また、図1における本設備での各工程における各物質の状態を図2に示す。本設備は、一価アルコールの転化率が100%で、安息香酸メチルやカルバミン酸メチルの副生成物が生成しない反応条件の場合に使用できる。
第1の反応工程においては、第1反応塔1に、CeO2及びZrO2のいずれか一方又は双方の固体触媒(固相)、一価アルコール12(液相)、ベンゾニトリル13(液相)、昇圧ブロワー10を介して二酸化炭素(気相)を充填する。固体触媒は反応前に新規に充填、あるいは再生塔6で再生された固体触媒14(固相)を使用することができる。また、ベンゾニトリルは反応開始時には新品を使用するが、第1蒸留塔3で精製された未反応のベンゾニトリル20(液相)と第3蒸留塔9で精製された、ベンズアミドから再生されたベンゾニトリルを再利用できる。
第1反応塔1における反応温度としては、50〜300℃とすることが好ましい。反応温度が50℃未満の場合は、反応速度が低く、炭酸エステル合成反応、ベンゾニトリルによる水和反応共にほとんど進行せず、炭酸エステルの生産性が低い傾向がある。また反応温度が150℃を超える場合は、各反応の反応速度は高くなるが、炭酸エステルの分解や変性、ベンズアミドが一価アルコールと反応しやすくなるため、炭酸エステルの収率が低くなる傾向がある。さらに好ましくは100〜150℃である。但し、この温度は固体触媒の種類や量、原料(一価アルコール、ベンゾニトリル)の量や比により異なると考えられるため、適宜最適条件を設定することが望ましい。好ましい反応温度が100〜150℃であることから、第1反応塔の前段で、原料(一価アルコール、ベンゾニトリル)をスチーム等で予備加熱することが望ましい。
反応圧力としては、0.1〜5MPa(絶対圧)とすることが好ましい。反応圧力が0.1MPa(絶対圧)未満の場合は、減圧装置が必要となり、設備が複雑且つコスト高になるだけでなく、減圧にするための動力エネルギーが必要となり、エネルギー効率が悪くなる。また反応圧力が5MPaを超える場合は、ベンゾニトリルによる水和反応が進行しにくくなって炭酸エステルの収率が悪くなるばかりでなく、昇圧に必要な動力エネルギーが必要となり、エネルギー効率が悪くなる。また、炭酸エステルの収率を高くする観点から、反応圧力は0.1〜4MPa(絶対圧)がより好ましく、0.2〜2MPa(絶対圧)がさらに好ましい。
また水和反応に用いるベンゾニトリルは、原料のアルコールの体積の0.1倍以上1倍以下で反応前に予め反応器中に導入するのが望ましい。0.1倍未満で導入した場合には、水和反応に寄与するベンゾニトリルが少ないために炭酸エステルの収率が悪くなる恐れがある。一方1倍を超えて導入した場合にも、反応終了後、生成物との分離が容易で、再利用が可能であるので、特に問題ない。さらに、固体触媒に対する一価アルコール及びベンゾニトリルの量は、固体触媒の種類や量、一価アルコールの種類やベンゾニトリルとの比により異なると考えられるため、適宜最適条件を設定することが望ましい。
第1反応塔1での反応後の反応液15は、第1抽出塔2にて液相と固相に分離する。反応液15に含まれる物質は、炭酸エステル(液相)、未反応のベンゾニトリル(液相)とベンズアミド(固相)、固体触媒(固相)であり、有機溶媒(液相)によって抽出する。ここで使用する有機溶媒はアルカンが適しており、後段での蒸留による分離のしやすさから、ヘキサン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカンが好ましい。第1抽出塔2での抽出工程は、エネルギー消費を抑えるために、抽出時の温度は常温で行うことが好ましいが、有機溶媒の沸点より低い温度(例えば、ヘキサンの場合、沸点が69℃なので、50℃程度に加熱)であれば、加熱することで抽出時間を短縮化することもできる。
第2の反応工程においては、第2反応塔7にて、ベンズアミドの脱水反応によりベンゾニトリルが生成される。本発明の製造装置は、二重結合を有する金属酸化物を担持した触媒と有機溶媒の存在下で、ベンズアミドを脱水反応させて、ベンゾニトリルを生成する装置である。反応形式としては特に制限されず、回分式反応器、半回分式反応器、連続槽型反応器や管型反応器のような流通式反応器のいずれを用いてもよい。また、触媒は、固定床、スラリー床等のいずれも適用することができる。第2反応塔の温度は、反応形式に応じて変更可能であるが、ソックスレー抽出管及び冷却器を用いた還流の場合、反応管周辺を160〜200℃に加熱することが好ましい。本発明の製造装置では、脱水反応により生成する副生水を除去しながら行うことが望ましく、例えば、還流や蒸留、ゼオライト等の脱水剤を系内に設置して、副生水を除去しながら反応を行うことが望ましい。本発明者が鋭意検討した結果、ソックスレー抽出管及び冷却器を用いて、脱水剤としてゼオライト(モレキュラーシーブ)や水素化カルシウムを抽出管内に設置して、反応管に触媒、ベンズアミド、有機溶媒を入れて、還流させて反応することで、ベンゾニトリルの生成量を向上させることが可能である。有機溶媒には沸点が130℃以上の物質が好ましく、例えば、クロロベンゼン、(o−,m−,p−)キシレン、メシチレンなどが挙げられる。
また、図3は本発明の好適な設備の他の一例であり、図4は図3の設備での各工程における各物質の状態である。本設備は、未反応の一価アルコールが残留し、安息香酸メチルやカルバミン酸メチルの副生成物が生成してしまう反応条件の場合にも使用できる。基本的な構成は前述の図1の場合と同じであるが、第1抽出塔2で抽出された抽出液17には、炭酸エステル、未反応のベンゾニトリル、アルカンの他、カルバミン酸メチルと安息香酸メチルを含んでいる。第1蒸留塔3にて各物質の沸点が、90℃(例えば炭酸ジメチルの場合)、215℃(ベンゾニトリル)、69℃(例えばヘキサンの場合)、65℃(例えばメタノールの場合)、177℃(カルバミン酸メチル)、233℃(安息香酸メチル)であることを利用して、180℃程度まで段階的に温度上昇することで蒸留され、製品である炭酸エステル19、抽出に用いられたアルカンと未反応一価アルコールの混合物33、カルバミン酸メチル32に分離される。また、蒸留後、30〜100℃程度に冷却することで、融点が103℃である安息香酸メチルが固化することから、フィルター等で固液分離することができ、未反応のベンゾニトリル20、安息香酸メチル31に分離することができる。また、アルカンと一価アルコールの混合物33は、大半がアルカンであるため、抽出用の溶媒として再利用が可能である。
図1に示す製造装置を用いて、炭酸エステルの製造を行った。CeO2(第一稀元素製:不純物濃度0.02%以下)を873Kで空気雰囲気下、3時間焼成し、粉末状の固体触媒を得た。そこで、190mlのオートクレーブ(反応器)に磁気攪拌子、上記固体触媒(1mmol)、メタノール(100mmol)及びベンゾニトリル(BN、50mmol)を導入し、約5gのCO2でオートクレーブ内の空気を3回パージした後、所定の量のCO2を導入・昇圧した。そのオートクレーブをバンドヒーター、ホットスターラーにより150℃まで攪拌しながら昇温し、目的の温度に達した時間を反応開始時間とした。150℃で12時間反応させた後、オートクレーブを水冷し、室温まで冷えたら減圧して内部標準物質の2−プロパノールを加え、生成物を採取し、GC(ガスクロマトグラフィー)で分析した。このようにして、CO2の導入量及び反応圧力を変えて表1に示す試験No.1〜2の実験を行った。
続いて、回収したBAからBNへの再生についても、実施例1と同様に行った。その結果、表2に示すように試験No.3〜4を行ったところ、BNはそれぞれ6.0mmol、3.2mmol生成した。いずれの実験でも副生物は水しかなく、収率は約90%以上、選択率はほぼ100%となった。
回収したBAからBNへの再生での触媒調製において、担体としてSiO 2 以外にもTiO 2 、CeO 2 、ZrO 2 を用い、それらに担持する金属元素を、V、Re、W、Nbとし、試薬も関東化学製の特級を用いること以外は、実施例1と同様にNO.9〜16の試験を行った。
回収したBAからBNへの再生での触媒調製において、最終的なMo担持量が表6に示すようにし、反応圧力を1MPaのみとする以外は、実施例1と同様にNO.17〜22の試験を行った。その結果、表6に示すように、Mo担持量は0.1〜-1mmolでは高い活性を示し、0.6mmol程度が好適な担持量であることがわかった。一方、担持量を多くしすぎると、活性が相対的に低下したが、これは、Mo酸化物が多量に担持されることで、SiO2担体上のMo酸化物が大きな凝集体となるためと推察される。
回収したBAからBNへの再生工程において、有機溶媒にメシチレンの代わりにo−キシレン(20ml)を用い、反応圧力を1MPaのみとすること以外は、実施例1と同様にした。その結果、表7(NO.23)に示すように、BNは3.2mmol生成した。副生物は水しかなく、収率は42.7%、選択率はほぼ100%となった。
次に、実施例1と同様に各試験後の固液共存物質にヘキサン200mlを加えて撹拌し、溶媒抽出し、フィルターでろ過して、液体と固体を分離した。液体には、DMC、未反応のAN、メタノール、ヘキサンが、固体には、AAとCeO2が含まれる。ヘキサンで溶媒抽出後の液体成分は、ANの融点と沸点がそれぞれ-45℃と82℃であることから、蒸留ではDMCとANとを分離することができないため、一旦-30〜0℃に冷却し、析出したDMCを分離することは可能である。その後、70℃程度まで温度を上昇させて蒸留した際、メタノールとヘキサンの混合物が未反応ANとを分離でき、未反応ANは、DMC生成反応へと再利用可能であるが、メタノールとヘキサンの混合物中に含まれるメタノール濃度が高いため、抽出用の溶媒として再利用が難しく、廃棄処理する必要がある。また、固定成分中のAAとCeO2はアセトン100mlに溶解後、フィルターでろ過することで、CeO2とAA及びアセトンを分離し、さらにAAとアセトンは70℃程度まで加熱した蒸留により、それぞれ分離し、純度95%以上のAAを回収できた。
BAからBNへの再生工程(及び再生工程後の分離工程)を行わないこと以外は、実施例1と同様の条件で試験NO.26〜27を行った。その結果、純度96%以上のDMCと、純度97%以上のBAを回収できたが、大量に副生したBAは利用用途がほとんどなく、産業廃棄物として処理することとなった。また、2回目のDMC生成反応には、新規に少なくとも7.7または4.3mmolのBNが必要となり、原料コストの増加にも繋がった。
Claims (16)
- CeO2及びZrO2のいずれか一方、又は、双方の固体触媒とベンゾニトリルとの存在下で、一価アルコールと二酸化炭素を反応させて炭酸エステルと水を生成すると共に、前記ベンゾニトリルと前記生成した水との水和反応によりベンズアミドを生成させる第1の反応工程と、
前記第1の反応工程から前記ベンズアミドを分離した後、当該ベンズアミドを、SiO2、TiO2、CeO2、ZrO2、Al2O3、Cのいずれか1種又は2種以上の触媒担体を水分を除去するために焼成した後の触媒担体に、モリブデン、タングステン、レニウム、バナジウム、ニオブのいずれか1種または2種以上の金属種の金属酸化物が担持された触媒の存在下、且つ、有機溶媒の存在下で、加熱して脱水反応することにより、ベンゾニトリルに再生する第2の反応工程を有し、
前記第2の反応工程で再生したベンゾニトリルを、前記第1の反応工程において使用することを特徴とする炭酸エステルの製造方法。 - 前記SiO 2 、TiO 2 、CeO 2 、ZrO 2 、Al 2 O 3 、Cのいずれか1種又は2種以上の触媒担体を、0.15mm以下に整粒した後、水分を除去するために焼成することを特徴とする請求項1に記載の炭酸エステルの製造方法。
- 前記第1の反応工程からの前記ベンズアミドの分離は、
前記第1の反応工程から排出される炭酸エステル、ベンズアミド、未反応のベンゾニトリル、及び前記固体触媒を、アルカンで溶媒抽出した後に固液分離し、液相の炭酸エステル、未反応のベンゾニトリル、及びアルカンと、固相の前記固体触媒及びベンズアミドとに分離する工程と、
前記固液分離後の液相の、炭酸エステル、未反応のベンゾニトリル、及びアルカンを、それぞれに分離する工程と、
前記固液分離後の固体触媒及びベンズアミドを、親水性溶媒で抽出した後に固液分離し、液相のベンズアミド及び親水性溶媒と、固相の固体触媒とに分離する工程と、からなり、
更に、前記第2の反応工程の後、
当該工程から排出されるベンゾニトリル、未反応のベンズアミド、及び金属酸化物が触媒担体に担持された触媒を、濾過して、固相の金属酸化物が触媒担体に担持された触媒を分離する工程と、
当該分離後に残ったベンゾニトリル、ベンズアミド、有機溶媒、水をそれぞれに分離する工程と、を有し、
前記分離されたベンゾニトリルを、前記第1の反応工程において使用することを特徴とする請求項1又は2に記載の炭酸エステルの製造方法。 - 前記分離された固体触媒を再生する工程を更に有し、再生後の触媒を、前記第1の反応工程で使用することを特徴とする請求項3に記載の炭酸エステルの製造方法。
- 前記溶媒抽出の際に使用するアルカンが、ヘキサンであることを特徴とする請求項3又は4に記載の炭酸エステルの製造方法。
- 前記親水性溶媒が、アセトンであることを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載の炭酸エステルの製造方法。
- 前記金属酸化物が担持された触媒担体は、SiO2、TiO2、CeO2、ZrO2のいずれか1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の炭酸エステルの製造方法。
- 前記触媒担体が、SiO2であることを特徴とする請求項7に記載の炭酸エステルの製造方法。
- 前記金属酸化物が、モリブデン酸化物であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の炭酸エステルの製造方法。
- 前記一価アルコールがメタノールであり、炭酸エステルとして炭酸ジメチルを製造することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の炭酸エステルの製造方法。
- 前記一価アルコールがエタノールであり、炭酸エステルとして炭酸ジエチルを製造することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の炭酸エステルの製造方法。
- 前記有機溶媒が、メシチレンであることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の炭酸エステルの製造方法。
- 前記第2の反応工程において、脱水剤を使用することを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の炭酸エステルの製造方法。
- CeO 2 及びZrO 2 のいずれか一方、又は、双方の固体触媒とベンゾニトリルとの存在下で、一価アルコールと二酸化炭素を反応させて炭酸エステルと水を生成すると共に、前記ベンゾニトリルと前記生成した水との水和反応によりベンズアミドを生成させる第1の反応工程と、
前記第1の反応工程から前記ベンズアミドを分離した後、当該ベンズアミドを、バナジウム、ニオブのいずれか1種または2種の金属種の金属酸化物がSiO 2 、TiO 2 、CeO 2 、ZrO 2 、Al 2 O 3 、Cのいずれか1種又は2種以上の触媒担体に担持された触媒の存在下、且つ、有機溶媒の存在下で、加熱して脱水反応することにより、ベンゾニトリルに再生する第2の反応工程を有し、
前記第2の反応工程で再生したベンゾニトリルを、前記第1の反応工程において使用することを特徴とする炭酸エステルの製造方法。 - 請求項1〜13のいずれか1項に記載の製造方法に用いる炭酸エステルの製造装置であって、
二酸化炭素を加圧する手段と、
CeO2及びZrO2のいずれか一方、又は、双方の固体触媒と、ベンゾニトリルとの存在下で、一価アルコールと二酸化炭素を反応させて炭酸エステルと水を生成すると共に、前記ベンゾニトリルと前記生成した水との水和反応によりベンズアミドを生成させる第1の反応手段と、
当該手段により排出される炭酸エステル、ベンズアミド、未反応のベンゾニトリル、及び前記固体触媒を、アルカンで溶媒抽出した後に固液分離し、液相の炭酸エステル、未反応のベンゾニトリル、及びアルカンと、固相の前記固体触媒及びベンズアミドとに分離する手段と、
前記固液分離後の液相の炭酸エステル、未反応のベンゾニトリル、及びアルカンをそれぞれに分離する手段と、
前記固液分離後の固体触媒及びベンズアミドを、親水性溶媒で抽出した後に固液分離し、液相のベンズアミド及び親水性溶媒と、固相の固体触媒とに分離する手段と、
当該分離されたベンズアミドを、SiO2、TiO2、CeO2、ZrO2、Al2O3、Cのいずれか1種又は2種以上の触媒担体を水分を除去するために焼成した後の触媒担体に、モリブデン、タングステン、レニウム、バナジウム、ニオブのいずれか1種または2種以上の金属種の金属酸化物が担持された触媒の存在下、且つ、有機溶媒の存在下で、加熱して脱水反応させ、ベンゾニトリルを生成する第2の反応手段と、
当該手段により排出されるベンゾニトリル、未反応のベンズアミド、及び金属酸化物が触媒担体に担持された触媒を、濾過して、固相の金属酸化物を担持した触媒を分離する手段と、
当該分離後に残ったベンゾニトリル、ベンズアミド、有機溶媒、水をそれぞれに分離する手段と、を有し、
前記分離されたベンゾニトリルを、前記第1の反応手段へと搬送する手段を有することを特徴とする炭酸エステルの製造装置。 - 請求項14に記載の製造方法に用いる炭酸エステルの製造装置であって、
二酸化炭素を加圧する手段と、
CeO 2 及びZrO 2 のいずれか一方、又は、双方の固体触媒と、ベンゾニトリルとの存在下で、一価アルコールと二酸化炭素を反応させて炭酸エステルと水を生成すると共に、前記ベンゾニトリルと前記生成した水との水和反応によりベンズアミドを生成させる第1の反応手段と、
当該手段により排出される炭酸エステル、ベンズアミド、未反応のベンゾニトリル、及び前記固体触媒を、アルカンで溶媒抽出した後に固液分離し、液相の炭酸エステル、未反応のベンゾニトリル、及びアルカンと、固相の前記固体触媒及びベンズアミドとに分離する手段と、
前記固液分離後の液相の炭酸エステル、未反応のベンゾニトリル、及びアルカンをそれぞれに分離する手段と、
前記固液分離後の固体触媒及びベンズアミドを、親水性溶媒で抽出した後に固液分離し、液相のベンズアミド及び親水性溶媒と、固相の固体触媒とに分離する手段と、
当該分離されたベンズアミドを、バナジウム、ニオブのいずれか1種または2種の金属種の金属酸化物がSiO 2 、TiO 2 、CeO 2 、ZrO 2 、Al 2 O 3 、Cのいずれか1種又は2種以上の触媒担体に担持された触媒の存在下、且つ、有機溶媒の存在下で、加熱して脱水反応させ、ベンゾニトリルを生成する第2の反応手段と、
当該手段により排出されるベンゾニトリル、未反応のベンズアミド、及び金属酸化物が触媒担体に担持された触媒を、濾過して、固相の金属酸化物を担持した触媒を分離する手段と、
当該分離後に残ったベンゾニトリル、ベンズアミド、有機溶媒、水をそれぞれに分離する手段と、を有し、
前記分離されたベンゾニトリルを、前記第1の反応手段へと搬送する手段を有することを特徴とする炭酸エステルの製造装置。
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