JP6431696B2 - まがり通路と流体抵抗物が接続された構造 - Google Patents
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Description
なお、上述したコンピュータによるシミュレーション手法の具体的な内容や、上記特許文献1及び2の発明により得られる効果と本願発明による効果との比較等については、「発明の詳細な説明」の中で詳細に説明する。
請求項6に記載されたまがり通路3は、請求項1〜5のいずれか1項に記載のまがり通路3において、前記柱状リブ12の断面形状の少なくとも一部が、半円状、円弧状、湾曲状、三角形状、四角形状の形状群から選択された形状であることを特徴としている。
まがり通路3内には、流路10の方向と交差して内側に盛り上がる柱状リブ12が形成されており、一般的にはこれ自体が流体に対する抵抗物となるが、その効果として、まがり通路3から流体抵抗物4の入口に流入する流体の流速分布を均一化できるため、まがり通路3と流体抵抗物4とのトータル圧力損失を従来よりも低減することができ、結果として流体抵抗物4に期待されている機器としての性能を向上させることができ、さらには当該流体抵抗物4の下流に接続されているその他の機器等の性能も向上させることができる。
柱状リブ12が設けられたまがり通路3の構造は、それが管路である場合も、また板金製のダクト内である場合も、いずれも例えば鋳物によって部品点数を増やすことなく容易に実現できるものであるため、製造コストを抑えることができる。加えて、柱状リブ12を設けたことによる補強効果でまがり通路3全体の剛性を増すことができる。
1.対象製品の説明(図1及び図2)
本発明は、流路の方向が変化するまがり通路の下流に何らかの流体抵抗物が接続されている場合に、まがり通路において流体を整流することにより、流体抵抗物を含めた全体としての圧力損失を抑制したまがり通路の構造に関するものである。
なお、以下に説明するシミュレーションに使用する対象は、過給機1が2台設けられたディーゼルエンジン5であり、図3に示すように各過給機1の出口からそれぞれ連結された配管2(合計2本)が、それぞれダクト3に接続して高温の空気がクーラ4に到るようになっている。
実施形態及び後述する比較例の効果を計算(シミュレーション)により検証した。
(1) 使用した計算ソフト
流体計算に使用した計算ソフトは、CD-adapco 社製のSTAR-CCM+ver8.04である。このソフトは、世界で最も実績のあるCFD(Computer Fluid Dynamics、流体解析) ソルバの一つである。
実施形態と比較例において、配管2、ダクト3及びクーラ4による全圧損失を、上記計算ソフトを用いたCFDの手法によるシミュレーションで検証する。その際の計算領域及び計算条件を図3及び図4に示す。図3に示すように、計算領域は、実際のエンジンを正確に3Dモデル化し、その3Dモデル中、各過給機1出口から連結される2本の配管2からダクト3、クーラ4を経て接続ブロック8までを対象とした。図4は、計算に用いた配管2、ダクト3、クーラ4、接続ブロック8において特にダクト3の内部の流体が流れる領域を断面で示したものである。これらの図中に示すように、配管2は長さが450mm、直径が180mmであり、クーラ4の外形は縦580mm、幅1150mm、奥行540mmである。
流体の物性値は空気の値を使用する。ダクト3に入る空気の温度は圧縮機出口相当の値とし、その粘性係数は、圧縮機出口相当の圧力と温度から、日本機械学会(The Japan Society of Mechanical Engineers 、略称JSME)編集による下記文献を根拠として与えた。
記:技術資料 流体の熱物性値集 日本機械学会 初版1983/8
クーラ4の入口の空気の流速分布が均一になるほどクーラ4内の圧力損失が低減すると考え、評価項目は圧力損失とし、配管2の入口と、接続ブロック8の出口での圧力の差、すなわち配管2、ダクト3及びクーラ4のトータル圧力損失を後述する柱状リブ12の有無や形状等の差異に応じて確認し、互いに比較して評価した。なお、実施形態においては、この配管2、ダクト3及びクーラ4のトータル圧力損失を“全圧損失”と称する。
(1)初期検討形状(図5)
先に説明したように、本願発明者等は、図3及び図4に示すような構成を備えたディーゼルエンジン5を対象とした研究において、まがり通路出口の出口であるクーラ4の入口では、圧縮空気の流速分布が、慣性の影響により、流路の内側コーナ部側(図1の上方の矢印の側)に比べて流路の外側コーナ部側で極端に高速となる現象を発見した。
そして、この現象のため、クーラ4の冷却性能が低下するとともに、クーラ4の流体抵抗物としての特性により、クーラ4内の圧力損失が悪化すると考えるに至った。そこで、本願発明者等は、このような課題を解決してダクト3及びクーラ4の圧力損失を全体として低減する手法として、ダクト3の内部、特に流体の流速が相対的に速い流路10の外側コーナ部側、すなわち曲がった流路10における外側の内面に流体の抵抗となる突起物を設け、クーラ4の入口の流路10の外側コーナ部側おける流速を減じることを検討した。
このように、圧力損失が問題となっている状況下で流路10中に流体と交差するような形で障害物を突出して配置するという手段は、従来の技術常識に反しており、通常であればさらなる圧力損失を招き、ダクト3及びクーラ4の圧力損失が全体としてさらに増大すると考えるのが普通である。曲がった流路10の外側の内面に突起物を設ける構成が従来採用されていなかったのは、このような理由によるものと考えられる。
図6に、図5に示した比較例(リブなし)及び実施形態のバリエーションTest(1)〜(6)の各シミュレーション計算結果として配管2、ダクト3及びクーラ4を含めた全体圧損を棒グラフで示す。
1.配管2、ダクト3及びクーラ4の全圧損失はどの形状の柱状リブ12であっても、リブのない比較例よりも低減できる。
2.バリエーションTest(1)の円柱状の柱状リブ12が最も全圧損失が低減する。 次に、この結果に基づいて、形状のより詳細な検討を行った。
まず円柱状の柱状リブ12の最適な大きさを調べるため、円柱の半径を変えて計算を行った。図7は、リブなしの前記比較例のダクト3に半径が20mm、40mm、60mmである柱状リブ12をそれぞれ設けた検討モデルを便宜上一図に重ねて示した断面図である。柱状リブ12は整流板14の円筒形に対して鉛直線又は水平線の位置から角度で45°の位置に配置した。
なお、ダクト3自体の構造、寸法等は図5に示した例と同一である。
横軸の0は、比較例(リブなし)に相当する。横軸の0と、リブ半径の20mm(2/15)、40mm(4/15)、60mm(6/15)に対応する全圧損失の各点を滑らかに結ぶ曲線を設定し、評価基準となる比較例(リブなし)での全圧損失の値(約6170Pa程度)よりも低い全圧損失が得られる範囲を示すと、図示の一点鎖線で示す比較例(リブなし)の全圧損失よりも下の範囲に入る半円柱状のリブ12の半径は、0を越え、30mm未満となる。これを整流板14の半径との比(半径比)又は、柱状リブ12の高さHと外側コーナ部11の曲率半径Rの比H/Rで示すと、0を越え0.2(3/15)未満となる。この範囲であれば、実施形態の柱状リブ12を有するダクト3は従来のダクトよりも全圧損失を小さくする効果を得ることができる。
整流板14の外側コーナ部11上にある円柱状の柱状リブ12の最適な配置角度を検討した。整流板14の外側コーナ部11上にある柱状リブ12の位置を、断面が円形の一部である整流板14の曲面の中心から水平な位置を0度とし、下流に向けて測った中心角度によって示す。この中心角度を柱状リブ12の配置角度と称する。この配置角度を変えて計算を行った。図9は、リブなしの前記比較例のダクト3に、その配置角度が5度、45度、70度である3つの柱状リブ12をそれぞれ設けた検討モデルを便宜上一図に重ねて示した断面図である。円柱状の柱状リブ12の半径は、図7に示した検討例で最適とされた20mmに固定した。
なお、ダクト3自体の構造、寸法等は図5に示した例と同一である。
次に、柱状リブ12の形状が円柱状以外の形状である場合の効果を計算で確認した。
図11に検討モデルのダクト3の断面図を示す。これは、リブなしの前記比較例の整流板14の外側コーナ部11上の配置角度45度の位置に、半円柱状と、三角形状と、四角形状の各柱状リブ12をそれぞれ設けた状態の検討モデルを便宜上一図に重ねて示したものである。図11では、円柱状の柱状リブ12の半径は、図7に示した検討例で最適とされた20mmとしており、三角形状と四角形状の各柱状リブ12の高さもそれに合わせて20mmとした。
なお、ダクト3自体の構造、寸法等は図5に示した例と同一である。
(1)ダクト3の後方にクーラ4(流体抵抗物)が存在しない場合(図13及び図14)
図13は、以上説明した構成において、ダクト3の後方にクーラ4(流体抵抗物)が存在せず、単なる空洞の配管15が設けられている場合の計算領域を示している。また、図14は、ダクト3の後方にクーラ4(流体抵抗物)が存在しない図13のような条件下において、柱状リブ12の半径と整流板14の半径の比(横軸)と、全圧損失(縦軸)との関係を示すグラフである。この図から分かるように、後方に流体抵抗物が無い場合には、実施形態のように流路10中の外側コーナ部11に柱状リブ12を設けると、接続ブロック8等による損失も含めた全圧損失は却って増大する結果となる。
つまり、後方に流体抵抗物が無い場合には、流路10中の外側コーナ部11に柱状リブ12を設ける利点は認められず、逆に有害な結果を導く。このような事実は、本願発明者等の実験(シミュレーション)によって明らかになったものである。本願発明は、係る事実を前提としたさらなる研究に基づいたものであり、ダクト3の出口側に流体抵抗物があるという条件下で、前述したような種々の形状、大きさ、配置等の条件を満たす柱状リブ12を特定個所(流路10の外側コーナ部11)に設けた場合に、初めて流体の流通する全構成系における全圧損失の低減効果が得られるものである。
実施形態のダクト3において得られる全圧損失と、前述した特許文献1の発明において、前方に配管2と後方にクーラ4(流体抵抗物)を介在させた場合の全圧損失との比較を行った。図15は、特許文献1の発明を具体化したダクト3の検討モデルを示す断面図である。ダクト3の流路10の外側コーナ部11に流路10の方向と交差する柱状リブ12が形成された実施形態と異なり、図15の特許文献1の発明によれば、ダクト3の流路10の内側コーナ部、すなわち実施形態の柱状リブ12の配置位置と対向する反対側の位置に、流路10の内方に突出する先端が尖った突起20が形成されている。突起20の突出する長さは20mmとした。
実施形態のダクト3において得られる全圧損失と、前述した特許文献2の発明において、前方に配管2と後方にクーラ4(流体抵抗物)を介在させた場合の全圧損失との比較を行った。図17は、特許文献2の発明を具体化したダクト3の検討モデルを示す断面図である。ダクト3の流路10の外側コーナ部11に流路10の方向と交差する柱状リブ12が形成された実施形態と異なり、図17の特許文献2の発明によれば、ダクト3の流路10の内側コーナ部、すなわち実施形態の柱状リブ12の配置位置と対向する反対側の位置に、流路10の内方に突出する半球状の回旋部30が形成されている。図示はしないが、回旋部30は、2本の配管2に対応して間隔360mmを隔てて二つ設けられて、流路10の方向に直交する方向に並んだ隆起部と谷部から構成されており、隆起部の突出する長さは20mmとした。
高さ20mmの隆起部を有する回旋部30が流路10の内側に突出した特許文献2の発明では、リブなしの場合(グラフの横軸0の位置での値)よりも全圧損失はやや低くなっているが、実施形態の半円柱状の柱状リブ12で半径20mmの実施形態の方が全圧損失の低減に効果があることが確認できた。
以上説明した実施形態によれば、次のような効果が得られる。
1)流体抵抗物であるクーラ4の入口における流体の流速分布を均一化できるため、ダクト3及びクーラ4を含むトータル圧力損失(全圧損失)を低減することができ、クーラ4の冷却性能を向上させ、エンジン5の燃費を改善することができる。
2)柱状リブ12は鋳物で容易に製造できる。
3)ダクト3が板金製であっても、管材等を材料として容易にリブを作成し、コストを抑えられる。
4)整流のために所定位置に所定寸法の柱状リブ12を作り付けるだけでよく、特に部品点数を増やす必要がない。
5)柱状リブ12の補強効果でダクト3全体の剛性を増すことができる。
(1)応用例
図19は、一般的に使用されるまがり通路としてのエルボ配管(以下エルボと称する)16に実施形態を応用した例を示す図である。このエルボ16は、JIS−B2311−90ESに規定する150Aの90°ショートエルボである。まがり通路である当該エルボ16の流路10内の外側コーナ部11に、流路10の方向と交差して内側に盛り上がる半円柱状の柱状リブ12が設けられている。半円柱状の柱状リブ12の半径は、20mmである。
図20は、ディーゼルエンジン5の過給機1の出口とクーラ4を配管2及びダクト3で接続した構造において、前述した実施形態における半円筒状の柱状リブ12をダクト3の壁体13の外側コーナ部11と、流路10の内部に設けられた整流板14の外側コーナ部11の両方に設けた応用例を実際の形状・構造例としてさらに具体的に示す図である。分図(a)はダクト3を断面とした全体構成図、分図(b)はダクト3の拡大断面図である。このように、整流板14で区画されたダクト3内の2つの流路10,10の各外側コーナ部11,11にそれぞれ柱状リブ12,12を設けた構造は、図5のバリエーションにおけるTest(5)の構造に相当する。
以上説明した実施形態では、ディーゼルエンジン5の過給機1の出口側とクーラ4を接続するまがり通路としてのダクト3において、壁体13及び/又は整流板14の外側コーナ部11に、流れ方向に交差するように柱状リブ12を設けたが、柱状リブ12を設ける対象であるまがり通路はこれに限定されない。すなわち、本発明の整流用の柱状リブ12は、下流にクーラ4が接続されたまがり通路に限らず、他の種類の流体抵抗物に接続されるまがり通路に設けることができる。例えば、流体抵抗物としては、クーラ4の他、熱交換器、過給機1、ファン、エアフィルタ、脱硝装置(触媒)、ミストセパレータ等が例示できる。
4…流体抵抗物としてのエアクーラ(クーラ)
10…流路
11…外側コーナ部
12…柱状リブ
13…壁体
14…整流板
16…まがり通路としてのエルボ管路(エルボ)
Claims (7)
- 流体が通過する流路の外側コーナ部に、流路の方向と交差して内側に盛り上がる柱状リブが形成されたまがり通路と、前記まがり通路の出口にその入口が接続され、前記柱状リブによって前記入口における流体の速度分布が均一化される流体抵抗物とを備えたまがり通路と流体抵抗物が接続された構造。
- 前記柱状リブの断面形状の少なくとも一部が、半円状、円弧状、湾曲状、三角形状、四角形状の形状群から選択された形状であることを特徴とする請求項1記載のまがり通路と流体抵抗物が接続された構造。
- 前記柱状リブの高さHと外側コーナ部の曲率半径Rの比H/Rが、0を越え0.2未満であることを特徴とする請求項1又は2に記載のまがり通路と流体抵抗物が接続された構造。
- 前記外側コーナ部の曲率半径の中心とコーナ部開始位置を結んだコーナ部開始仮想線と、前記曲率半径の中心と前記柱状リブの中央位置を結んだリブ位置仮想線との交差角度が30度から60度の範囲となるように、前記外側コーナ部における前記柱状リブの位置を設定したことを特徴する請求項1〜3のいずれか1項に記載のまがり通路と流体抵抗物が接続された構造。
- 前記外側コーナ部の曲率半径の中心からコーナ部開始位置を結んだコーナ部開始仮想線と、前記曲率半径の中心とコーナ部終端位置を結んだコーナ部終端仮想線との交差角度が90度である場合において、
前記コーナ部開始仮想線と、前記曲率半径の中心と前記柱状リブの中央位置を結んだリブ位置仮想線との交差角度が30度から60度の範囲となるように、前記外側コーナ部における前記柱状リブの位置を設定したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のまがり通路と流体抵抗物が接続された構造。 - 前記外側コーナ部が、前記流路を区画する壁体の内面であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のまがり通路と流体抵抗物が接続された構造。
- 前記外側コーナ部が、前記流路の内部に設けられた整流板の内面であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のまがり通路と流体抵抗物が接続された構造。
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