JP6431443B2 - 視覚検査装置 - Google Patents

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Description

本発明は、視覚検査に用いられる視覚検査装置に関する。
眼の検査の一つに、眼の視覚機能を検査する「視覚検査」がある。また、視覚検査の代表的なものに「視野検査」がある。視野検査は、たとえば緑内障や網膜剥離などが原因で起こる視野狭窄、視野欠損などの診断のために行われるもので、そのための検査装置が種々提案されている。
従来の視覚検査装置のなかには、被検者の頭部に装着して用いられるヘッドマウント型の視覚検査装置がある(たとえば、特許文献1,2を参照)。この種の視覚検査装置では、被検者の頭部に視覚検査装置の装置本体を装着し、該装置本体内に組み込まれた表示素子に検査用の画像を表示して視覚検査を行う構成になっている。
特開平7−67833号公報 特開2014−128493号公報
一般に、視覚検査装置を用いて視野検査を行う場合は、表示素子の表示面の中央部に固視標を表示し、この固視標を被検者に固視(注視)させた状態で、所定の位置に表示(呈示)した視標が被検者から見えるかどうかを検査する。その場合、表示素子の表示面には固視標と視標の光だけが表示され、それ以外の部分は非常に暗い表示状態になる。このため、視覚検査装置の装置本体を装着した被検者は、ほとんど光を感じない暗闇のなかに置かれ、その状況で視野検査を受けることになる。したがって、視野検査を受ける被検者は、周囲の状況がまったく分からず、心理的な不安感やストレスを感じるおそれがある。
本発明の主な目的は、視覚検査装置の装置本体を被検者の頭部に装着して視覚検査を行う場合に、被検者に与える心理的な不安感やストレスなどを軽減することができる視覚検査装置を提供することにある。
(第1の態様)
本発明の第1の態様は、
視覚検査を受ける被検者の頭部に装着されるとともに、前記被検者に検査画像を表示するための表示素子と、外界の画像を撮影するカメラと、を有する装置本体と、
前記表示素子に表示する表示画像を、前記視覚検査のための検査画像と、前記カメラが撮影する外界画像との間で切り替える表示制御部と、
前記表示画像の切り替えを指示する指示信号を前記表示制御部に与える切り替え指示部と、
を備えることを特徴とする視覚検査装置である。
(第2の態様)
本発明の第2の態様は、
前記切り替え指示部は、前記視覚検査に際して前記被検者が操作する第1の操作機器を用いて構成されている
ことを特徴とする上記第1の態様に記載の視覚検査装置である。
(第3の態様)
本発明の第3の態様は、
前記表示制御部は、前記表示素子に前記検査画像が表示されている状況で、前記第1の操作機器が所定の操作条件で操作された場合に、前記表示素子に表示する表示画像を前記検査画像から前記外界画像に切り替える
ことを特徴とする上記第2の態様に記載の視覚検査装置である。
(第4の態様)
本発明の第4の態様は、
前記第1の操作機器は、前記視覚検査で前記被検者が応答用に操作する操作機器と共用であり、
前記所定の操作条件は、前記応答用に設定された操作条件とは異なる
ことを特徴とする上記第3の態様に記載の視覚検査装置である。
(第5の態様)
本発明の第5の態様は、
前記表示画像の切り替え用に設定された操作条件と、前記応答用に設定された操作条件とは、前記第1の操作機器を押圧操作している時間の長さが異なる
ことを特徴とする上記第4の態様に記載の視覚検査装置である。
(第6の態様)
本発明の第6の態様は、
前記表示制御部は、前記視覚検査の途中で前記第1の操作機器が所定の操作条件で操作された場合でも、前記表示画像を前記検査画像から前記外界画像に切り替える
ことを特徴とする上記第3〜第5の態様のいずれか1つに記載の視覚検査装置である。
(第7の態様)
本発明の第7の態様は、
前記切り替え指示部は、前記視覚検査に際して検者が操作する第2の操作機器を用いて構成されている
ことを特徴とする上記第1〜第6の態様のいずれか1つに記載の視覚検査装置である。
(第8の態様)
本発明の第8の態様は、
前記表示制御部は、前記検査画像および前記外界画像のうち、どちらの画像を前記表示素子に表示しているかを検者に通知する機能を備える
ことを特徴とする上記第1〜第7の態様のいずれか1つに記載の視覚検査装置である。
本発明によれば、視覚検査装置の装置本体を被検者の頭部に装着して視覚検査を行う場合に、被検者に与える心理的な不安感やストレスなどを軽減することができる。
本発明の実施形態に係る視覚検査装置の構成例を示す概略図である。 本発明の実施形態に係る視覚検査装置の光学系の構成を含む概略図である。 本発明の実施形態に係る視覚検査装置の制御系の構成を含むブロック図である。 表示画像の切り替えに係る処理手順を示すフローチャートである。 表示光学系の他の構成例を示す概略図(その1)である。 表示光学系の他の構成例を示す概略図(その2)である。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
本発明の実施形態においては、次の順序で説明を行う。
1.視覚検査装置
2.視覚検査方法
3.表示画像の切り替え
4.実施形態の効果
5.変形例等
<1.視覚検査装置>
図1は本発明の実施形態に係る視覚検査装置の構成例を示す概略図である。
図示した視覚検査装置1は、被検者2の頭部3に装着して用いられるヘッドマウント型の視覚検査装置である。視覚検査装置1は、大きくは、装置本体5と、この装置本体5に機械的に接続された装着具6と、を備えている。
装置本体5は、内部に空間を有する筐体7を備えている。筐体7の内部空間は、左右に分かれている。その理由は、被検者2の左眼8Lと右眼8Rで別々に視覚検査を行うためである。この視覚検査において、左眼8Lを被検眼とする場合は、被検者2が左眼8Lの瞳孔9Lを通して視標を見ることになり、右眼8Rを被検眼とする場合は、被検者2が右眼8Rの瞳孔9Rを通して視標を見ることになる。
ここで記述する「視標」とは、被検者の視覚を検査するにあたって、被検者の眼球に光による刺激を与えるために表示されるものである。視標に関しては、特に大きさ、形状等の制限はない。たとえば、緑内障検査の際には、所定の大きさで光の点を視標として表示するとともに、その光の点の位置を変化させることにより、欠損した視野の有無や欠損場所を検査(特定)することができる。
筐体7の一方の空間には、表示光学系11Lと表示素子12Lが設けられている。筐体7の他方の内部空間には、表示光学系11Rと表示素子12Rが設けられている。表示光学系11Lと表示素子12Lは、被検者2の左眼8Lの視覚検査を行うために設けられたものである。表示光学系11Rと表示素子12Rは、被検者2の右眼8Rの視覚検査を行うために設けられたものである。左右の表示光学系11L,11Rの光軸間距離は、図示しない調整機構により、被検者2の瞳孔間距離に合わせて調整可能になっている。
また、装置本体5にはカメラ40が搭載されている。カメラ40は、外界の画像(映像)を撮影するものである。ここで記述する「外界」とは、後述する装着具6を用いて被検者2の頭部3に装置本体5を装着した際に、被検者2のまわりに存在する世界であって、装置本体5を装着しなければ被検者2に見えるはずの世界をいう。このため、カメラ40が撮影する画像は、外界の様子をリアルタイムにあらわす動画(可視画像)になる。カメラ40は、被検者2の視線の先に存在するはずの外界の映像を撮影すべく、装置本体5の前部に前向きに搭載されている。
装着具6は、被検者2の頭部3に装置本体5を装着するためのものである。装着具6は、被検者2の両側頭部から後頭部にかけてU字形に掛け渡されるベルト13と、被検者2の頭頂部に掛け渡されるベルト14とを備えている。そして、ベルト14の長さを適度に調整した状態で、ベルト13を後頭部側から引っ張って締め付けることにより、被検者2の頭部3に装置本体5をしっかりと固定して装着できる機構になっている。
上述した表示光学系11L,11Rの光軸間距離は、被検者2の頭部3に装着具6によって装置本体5を固定した後に、被検者2が正面を向いた状態での瞳孔間距離に合わせて調整する。
なお、以降の説明では、被検者2の左眼8Lと右眼8Rを左右の区別なく記載する場合は、符号L,Rを省略して眼球8、瞳孔9と総称する。これと同様に、上述した表示光学
系11L,11Rと表示素子12L,12Rについても左眼用と右眼用の区別なく記載する場合は、それぞれ符号L,Rを省略して表示光学系11、表示素子12と総称する。
(光学系)
図2は本発明の実施形態に係る視覚検査装置の光学系の構成を含む概略図である。
図示のように、視覚検査装置1は、上述した表示光学系11と表示素子12の他に、被検者の眼球8を観察するための観察光学系15と、この観察光学系15を通して被検者の眼球8を撮像する撮像素子16と、被検者の眼球8に赤外線を照射する赤外光源17と、視覚検査装置1全体の制御を司る制御部30と、応答用のスイッチ31と、を備えている。観察光学系15、撮像素子16および赤外光源17は、上述した表示光学系11や表示素子12と同様に、被検者の左眼用と右眼用でそれぞれ別々に設けられ、制御部30およびスイッチ31は、1つの視覚検査装置1につき一つずつ設けられている。スイッチ31は、視覚検査を受ける被検者が操作する第1の操作機器の一例として設けられたものである。表示素子12、スイッチ31、および撮像素子16は、図中符号A,B,Cで示すように、それぞれ制御部30に電気的に接続されている。
(表示光学系)
表示光学系11は、被検者の眼球8が配置される眼球位置と表示素子12の表示面12aとの間の光軸18上に設けられている。具体的には、表示光学系11は、被検者の眼球位置側から順に、第1レンズ19と、ミラー20と、第2レンズ群21とを配置した構成になっている。以下、各構成要素について説明する。なお、以降の説明では、被検者の眼球位置から表示素子12までの光軸18のうち、眼球位置からミラー20までの光軸を光軸18aとし、ミラー20から表示素子12までの光軸を光軸18bとする。
第1レンズ19は、眼球位置からミラー20までの光軸18a上に配置されている。第1レンズ19は、正のパワーを有する非球面のレンズ(凸レンズ)を用いて構成されている。第1レンズ19は、ミラー20で反射して第1レンズ19に入射した光を被検者の瞳孔9に収束させる一方、被検者が瞳孔9を通して広角に物を見るときの光の発散を抑制するものである。図2においては、表示素子12の表示面12aに視標となる光の点を表示し、この視標を被検者が眼球位置から表示光学系11を通して見るときに、被検者の瞳孔中心から第1レンズ19へと入射する主光線の入射角度を符号θで表している。この入射角度θは、光軸18aを基準とする角度(瞳孔中心を通る主光線と光軸18aとがなす角度)である。光軸18a上における第1レンズ19の外径(直径)や位置は、少なくとも視覚検査に必要な視野角を確保し得る条件で設定されている。具体的には、第1レンズ19を用いた表示光学系11の最大視野角(θの最大値)は、好ましくは、半画角で30度以上、60度以下(全画角では60度以上、120度以下)の範囲に設定するとよい。
ミラー20は、眼球位置からミラー20までの光軸18a上において、第1レンズ19を間に挟んで眼球位置とは反対側に配置されている。ミラー20は、波長選択性を有するミラーを用いて構成されている。具体的には、ミラー20は、可視光を反射し、赤外線を透過するコールドミラーを用いて構成されている。光軸18aに対するミラー20の反射面の傾きは、このミラー20によって屈曲される光軸18aと光軸18bとのなす角度αが、好ましくは90度以下、より好ましくは80度以下、さらに好ましくは「40度<α<70度」の範囲となるように設定されている。
ここで、α≦40°である場合は、表示素子12や第2レンズ群21が被検者の頭部に接近しすぎて、それらが頭部と干渉してしまうおそれがある。これに対して、α>40°である場合は、表示素子12や第2レンズ群21が頭部と干渉することを回避することができる。一方、α≧90°である場合は、被検者が頭部を前方に傾けた際に、視覚検査装置1が頭部からずれ落ちやすくなる。これに対して、α<90°である場合は、被検者が
頭部を前方に傾けた際に、視覚検査装置1が頭部からずれ落ちにくくなる。
第2レンズ群21は、ミラー20から表示素子12までの光軸18b上に配置されている。第2レンズ群21は、3つのレンズ21a,21b,21cを用いて構成されている。3つのレンズ21a,21b,21cは、ミラー20側から表示素子12側に向かって順に配置されている。すなわち、レンズ21aは、光軸18b上でミラー20に最も近い位置に配置され、レンズ21cは、光軸18b上で表示素子12に最も近い位置に配置されている。そして、これら2つのレンズ21a、21cの間にレンズ21bが配置されている。レンズ21bは、レンズ21aから離間した状態で、レンズ21cの近くに配置されている。
レンズ21aは、正のパワーを有する非球面のレンズ(凸レンズ)を用いて構成されている。また、レンズ21bは、負のパワーを有する非球面のレンズ(凹レンズ)を用いて構成され、レンズ21cは、正のパワーを有する非球面のレンズ(凸メニスカスレンズ)を用いて構成されている。また、レンズ21aの外径(直径)は他のレンズ21b,21cの外径よりも大きく、レンズ21b,21cの外径は互いにほぼ等しくなっている。
ここで、上記第1レンズ19を構成する材料のアッベ数をv1とすると、第1レンズ19は、「45<v1<80」の関係式を満たす材料(ガラス、プラスチックなど)で構成されている。一方、第2レンズ群21を構成するレンズ21a〜21cのうち、正のパワーを有するレンズ21a,21cのアッベ数を共にv2とすると、各々のレンズ21a,21cは、「45<v2<80」の関係式を満たす材料で構成されている。また、負のパワーを有するレンズ21bのアッベ数をv3とすると、レンズ21bは、「15<v3<30」の関係式を満たす材料で構成されている。
また、第1レンズ19の焦点距離をf1とし、第2レンズ群21の焦点距離をf2とすると、これらは「0<f1/f2<1.0」の関係を満たしている。さらに、第1レンズ19の焦点距離f1は、第1レンズ19からミラー20までの光学距離aと、ミラー20から第2レンズ群21(レンズ21a)までの光学距離bとの和(a+b)に比べて、それよりも短くなっている。
(表示素子)
表示素子12は、ミラー20から表示素子12までの光軸18b上で、第2レンズ群21のレンズ21cと対向するように配置されている。表示素子12は、たとえば、バックライトを備える液晶表示素子等の平面型表示素子を用いて構成されている。表示素子12の表示面12aは、多数のピクセルをマトリクス状に配置した構成になっている。そして、実際に表示面12aに画像(視標を含む)を表示するときには、ピクセル単位で画像の表示(オン)と非表示(オフ)を制御できるようになっている。また、表示素子12の表示面12aは、好ましくは、対角長が1.5インチ以下の表示サイズ、より好ましくは対角長が1インチ以下の表示サイズになっており、この表示面12aの中心に光軸18bが位置合わせされている。
上記構成からなる表示光学系11および表示素子12においては、表示素子12の表示面12aに視標を表示したときに、被検者2が眼球位置から第1レンズ19、ミラー20および第2レンズ群21を介して視標を見ることになる。その場合、眼球位置に最も近い第1レンズ19の外径を大きくすれば、より広い範囲で視覚検査を行うことができる。ただし、第1レンズ19の外径を大きくすると、そのレンズ端を通る主光線が光軸18(18a)に対して大きく傾くことになる。そのため、第1レンズ19のパワーが低いと、レンズ端を通る主光線が発散してしまう。
そこで本実施形態においては、第1レンズ19に高いパワー(好ましくは、パワーが2
0D(dioptre)以上、60D以下)のレンズを用いることにより、第1レンズ19のレンズ端を通る主光線を大きく屈折させてミラー20の反射面に収めている。ただし、このように高パワーの第1レンズ19を用いると、第1レンズ19から第2レンズ群21に至る光路の途中で主光線の光束が集光し焦点を結んでしまう。このため、光路の途中で焦点を結んだ主光線の光束を、表示素子12の表示面12aで再度集光(結像)させるために、光軸18b上に第2レンズ群21を配置している。また、色収差や像倍率を補正するために、第2レンズ群21を3つのレンズ21a,21b,21cで構成している。
(観察光学系)
観察光学系15は、被検者の眼球8を観察対象として、たとえば、瞳孔9、虹彩、強膜などを含む眼前部、あるいは、網膜10を含む眼底部などを観察するためのものである。観察光学系15は、被検者の眼球位置から撮像素子16までの光軸18上に設けられている。具体的には、観察光学系15は、被検者の眼球位置側から順に、第1レンズ19と、ミラー20と、第3レンズ22とを配置した構成になっている。このうち、第1レンズ19とミラー20は、光軸18aを含めて、上述した表示光学系11と共通(共用)になっている。また、ミラー20から撮像素子16までの光軸を光軸18cとすると、この光軸18cは、上述した光軸18aと略平行になっている。
第3レンズ22は、ミラー20から撮像素子16までの光軸18c上に配置されている。第3レンズ22は、正のパワーを有する非球面のレンズ(凸レンズ)を用いて構成されている。第3レンズ22は、第1レンズ19を対物レンズとして眼球8を観察する場合に、眼球8から第1レンズ19に入射し、かつミラー20を透過する光を、撮像素子16の撮像面16aに結像させるものである。
(撮像素子)
撮像素子16は、被検眼となる眼球(前眼部、眼底部など)8を撮像するものである。撮像素子16は、赤外線に対して感度を有するCCD(Charge Coupled Device)撮像素子、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)撮像素子などを用いて構成されている。撮像素子16の撮像面16aは、光軸18c上で眼球8と正対する向きに配置され、この撮像面16aの中心に光軸18cが位置合わせされている。
赤外光源17は、被検者の眼球位置に向けて赤外線を照射するものである。赤外光源17は、一対の赤外線発光ダイオード17a,17bを用いて構成されている。一対の赤外線発光ダイオード17a,17bは、被検者の視野を妨げないように、被検者の眼球位置に対して斜め上方と斜め下方に分けて配置されている。そして、一方の赤外線発光ダイオード17aは、被検者の眼球8に対して斜め上方から赤外線を照射し、他方の赤外線発光ダイオード17bは、被検者の眼球8に対して斜め下方から赤外線を照射する構成になっている。
上記構成からなる観察光学系15および撮像素子16においては、被検者の眼球8に赤外光源17から赤外線を照射しつつ、第1レンズ19、ミラー20および第3レンズ22を介して眼球8の画像を撮像素子16で撮像することになる。
(制御系)
図3は本発明の実施形態に係る視覚検査装置の制御系の構成を含むブロック図である。
制御部30は、視覚検査に際して各種の機能(手段)を実現するものである。制御部30は、たとえば、装置本体5よりも小さい筐体構造を有するもので、装着具6の後頭部側に実装される。これにより、装置本体5と制御部30との前後の重量バランスを保つことができる。
制御部30は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、各種インタフェース等の組み合わせからなるコンピュータによって構成される。そして、制御部30は、CPUがROMまたはHDDに格納された所定のプログラムを実行することにより、各種の機能を実現するように構成されている。各機能を実現するための所定のプログラムは、コンピュータにインストールして用いられるが、そのインストールに先立ち、コンピュータで読み取り可能な記憶媒体に格納して提供されるものであってもよいし、あるいはコンピュータと接続する通信回線を通じて提供されるものであってもよい。
制御部30は、上記プログラムの実行によって実現される機能(手段)の一例として、縮瞳検出部41と、感度マップ作成部42と、表示制御部43と、を備えている。また、制御部30は、情報記憶部としてのメモリ44を備えている。
縮瞳検出部41は、被検眼の縮瞳現象を検出する機能である。縮瞳現象とは、被検者の眼球の瞳孔が縮小する現象であって、装置本体5を装着した被検者の瞳孔に光が入射したときに起こる。縮瞳検出部41は、撮像素子16が取得した瞳孔9の画像に基づいて、表示素子12に表示した視標の明るさが所定の明るさ(輝度)以上となったときの瞳孔9の縮瞳を検出する。
感度マップ作成部42は、後述する自覚式視野検査や他覚式視野検査において、感度マップを作成する機能である。感度マップ作成部42は、自覚式視野検査では、被検者が視標の光に反応してスイッチ31を押圧操作したときに、表示素子12が表示していた視標の明るさ(輝度)を網膜10の感度としてマッピングする。また、感度マップ作成部42は、他覚式視野検査では、縮瞳検出部41が瞳孔9の縮瞳を検出したときに、表示素子12が表示していた視標の明るさを網膜10の感度としてマッピングする。
表示制御部43は、表示素子12に表示する画像を制御する機能である。表示素子12に表示する画像(以下、「表示画像」ともいう。)には、大きく分けて2つある。1つは、視覚検査のための検査画像であり、もう1つは、カメラ40が撮影する外界画像である。検査画像は、たとえば、端末45から与えられる指示にしたがって表示制御部43が表示素子12に表示する。検査画像のなかには、たとえば、視野検査の際に被検者に対して表示される固視標や視標を含む画像のほかに、被検者の眼を暗闇に慣らすための画像なども含まれる。表示制御部43は、表示制御の1つの形態として、表示素子12に表示する表示画像を、検査画像と外界画像との間で切り替える制御を行う。その際、表示制御部43は、表示素子12に表示する表示画像を、後述する切り替え指示部から与えられる指示信号にしたがって、検査画像から外界画像に切り替えたり、外界画像から検査画像に切り替えたりする。
メモリ44は、視覚検査に必要な情報を含めて、各種の情報を記憶するために用いられる。たとえば、感度マップ作成部42は、視覚検査を開始してから終了するまでに得られた検査結果をメモリ44に順に記憶し、視覚検査の終了後に、メモリ44に記憶してある検査結果を用いて感度マップを作成する。
制御部30には、上述したスイッチ31、撮像素子16L,16R、カメラ40、表示素子12L,12Rのほかに、端末45が有線または無線で通信可能に接続されている。端末45は、視覚検査の行う検者が操作する第2の操作機器の一例として設けられたものである。端末45は、視覚検査を行う眼科医やそれを補助する看護師、介助者などの検者が、制御部30に対して、視覚検査に必要な各種の設定、調整、指示などを行ったりするために操作するものである。端末45は、たとえば、モニタ付きのパーソナルコンピュータ等を用いて構成される。
スイッチ31は、主に視覚検査で被検者が応答用に操作するものである。本実施形態では、このスイッチ31を用いて切り替え指示部が構成されている。切り替え指示部は、表示制御部43に対して、表示画像の切り替えを指示する指示信号を与えるものである。スイッチ31としては、好ましくは、被検者が手で持って操作する手動式のスイッチ、より好ましくは、被検者が手の指(たとえば、親指や人差し指など)で押圧操作する押圧式のスイッチを用いるとよい。その場合、被検者がスイッチ31を押圧操作すると、スイッチ31がオフ状態からオン状態に切り替わり、スイッチ31からオン信号が出力される。このオン信号は制御部30に取り込まれる。このため、制御部30では、スイッチ31からオン信号が出力されているかどうかにより、スイッチ31がオン状態(押圧操作された状態)にあるのかオフ状態にあるのかを検知(認識)することができる。
<2.視覚検査方法>
続いて、本発明の実施形態に係る視覚検査装置1を用いて行われる視覚検査方法について説明する。
まず、視覚検査を行うためには、それに先立って、上記図1に示すように、被検者2の頭部3に装着具6を用いて装置本体5を装着する必要がある。その際、たとえば装置本体5が傾いて装着されるなどして、被検者2の眼球8の位置が予め想定されている正規の位置からずれていると、視覚検査で正しい検査結果が得られないおそれがある。このため、被検者2に装置本体5を装着した場合は、眼球8の位置が正規の位置に合うように装置本体5の位置を調整する作業が行われる。装置本体5の位置調整は、被検者2の瞳孔間距離に合わせて表示光学系11の光軸間距離を調整した後で行われる。また、装置本体5の位置調整は、撮像素子16で撮像した眼球8の画像データを用いて行われる。具体的には、たとえば、撮像素子16が撮像する眼球8の画像をアライメントマークと一緒に端末45のモニタに表示し、このモニタ上で被検者2の瞳孔9がアライメントマークに合うように、装置本体5の位置を調整する。
本発明の実施形態に係る視覚検査装置1においては、動的量的視野検査(ゴールドマン視野検査)、静的量的視野検査、眼底視野検査(マイクロペリメトリー)、網膜電図検査(ERG)その他の検査を行うことが可能である。ここでは一例として、静的量的視野検査を行う場合について説明する。
静的量的視野検査は、次のように行われる。まず、視野内の中心部に固視標を呈示し、この固視標を被検者に固視させる。次に、被検者に固視標を固視させたまま、視野内の一点に視標を呈示し、その明るさを徐々に増していく。すると、視標がある明るさになると、被検者から視標が見えるようになる。そこで、被検者が視標を見えるようになったときの明るさに対応する値を、そのときに視標を呈示している点での網膜感度とする。そして、視野内の各点について同様の測定を行うことにより、視野内の網膜感度の相違を量的に調べ、マップを作成する。このような静的量的視野検査には、自覚式視野検査と他覚式視野検査がある。本実施形態の視覚検査装置1を使用すれば、いずれの方式の検査も行うことができる。以下、説明する。
自覚式視野検査は、次のように行われる。まず、ヘッドマウント型の視覚検査装置1(装置本体5)を被検者の頭部に装着するとともに、被検者の手にスイッチ31を持たせる。次に、制御部30の指令に基づき、表示素子12の表示面12aの中央部に固視標を表示して被検者に固視させ、その状態で表示面12aの一点に視野検査用の視標を表示する。このとき、最初は視標の明るさを暗くしておき、その後、徐々に視標の明るさを増していく。そうすると、最初のうちは暗くて被検者から視標が見えなくても、視標がある明るさになると被検者の網膜が光の刺激に反応し、被検者から視標が見えるようになる。この
ため、被検者から視標が見えるようになったときに、その応答として被検者にスイッチ31を押してもらう。被検者がスイッチ31を押すと、制御部30にオン信号が送られる。このオン信号を受けて、感度マップ作成部42は、そのときの視標の点の明るさに対応する値をその点の網膜の感度とする。以降は、視野内の各点について同様の測定を行うことにより、感度マップ作成部42が視野内の網膜感度の相違を量的に調べ、網膜の感度マップを作成する。
他覚式視野検査は、次のように行われる。まず、ヘッドマウント型の視覚検査装置1を被検者の頭部に装着して、上記同様に被検者に固視標を固視させる。次に、制御部30の指令に基づき、表示素子12の表示面12aの一点に視野検査用の視標を表示する。このとき、最初は視標の明るさを暗くしておき、その後、徐々に視標の明るさを増していく。そうすると、最初のうちは暗くて被検者から視標が見えなくても、視標がある明るさになると被検者の網膜が光の刺激に反応し、被検者から視標が見えるようになる。
その際、被検者の瞳孔9の大きさ(瞳孔径)が視標の明るさに応じて変化する。具体的には、被検者の瞳孔9の径が縮小する。このときの眼球8の状態変化を撮像する。眼球8の撮像は、赤外光源17から眼球8に向けて赤外線を照射し、これによって得られる眼球8の像光を、観察光学系15(19,20,22)を介して撮像素子16の撮像面16aに結像させることにより行う。眼球8の撮像を開始するタイミングは、たとえば、表示面12aに視標を表示する前のタイミング、あるいは、視標の表示と同時に設定すればよい。ちなみに、人間の網膜は、赤外線に対して感度を持たないため、眼球8の状態変化に影響を与えることはない。
撮像素子16を用いて撮像された眼球8の画像データは、制御部30に取り込まれる。その際、縮瞳検出部41では、視標の明るさを徐々に増やす過程で、被検者の瞳孔径が視標の明るさに反応して変化(縮小)したかどうかを、撮像素子16から送り込まれる画像データに基づいて判断する。そして、被検者の瞳孔径が変化したと縮瞳検出部41が判断すると、感度マップ作成部42は、そのときの視標の点の明るさに対応する値をその点の網膜上の感度とする。以降は、視野内の各点について同様の測定を自動的に次々と行うことにより、感度マップ作成部42が視野内の網膜上の感度の相違を量的に調べ、網膜上の感度マップを自動的に作成する。
なお、他覚式視野検査では、表示素子12の表示面12aの一点に明るい視標を表示し、瞳孔径の縮小の度合いを観察することにより感度マップを作成する単一閾上刺激法を用いても良い。
<3.表示画像の切り替え>
次に、表示制御部43が行う表示画像の切り替えについて説明する。
まず、表示素子12に検査画像を表示しているときに、スイッチ31が所定の操作条件で操作されると、表示制御部43は、表示素子12に表示する表示画像を、検査画像から外界画像に切り替える。ここで記述する「所定の操作条件」とは、表示画像の切り替え用に設定された操作条件であって、視覚検査で被検者2が視標の光を感知したときの応答用に設定された操作条件とは異なる。実際にスイッチ31が押圧操作されると、表示制御部43は、被検者がスイッチ31を押圧操作している時間の長さの違いにより、そのときの操作が、表示画像の切り替え用の操作条件に適合するか、応答用の操作条件に適合するかを判断する。
スイッチ31は、被検者によって押圧操作されているときだけオン信号を出力し、押圧操作されていないときはオフ状態になる。そこで、スイッチ31がオン信号を出力し続けている時間を、ここでは「オン継続時間」と定義する。そうした場合、表示制御部43は
、図4に示す処理手順にしたがって表示画像の切り替えを制御する。図中の各ステップの処理を実行する主体は、いずれも表示制御部43である。
まず、ステップS1では、スイッチ31がオン信号を出力したかどうかを判断する。そして、スイッチ31がオン信号を出力したと判断すると、次のステップS2に進む。
ステップS2では、スイッチ31がオフ状態になったかどうかを判断する。そして、スイッチ31がオフ状態になったと判断すると、そのまま一連の処理を終える。これに対して、スイッチ31がオフ状態になっていない場合、つまりスイッチ31から継続してオン信号が出力されている場合は、ステップS3に進む。
ステップS3では、上述したオン継続時間が所定時間(たとえば、3秒)に達したかどうかを判断する。そして、オン継続時間が所定時間に達していない場合は、上記ステップS2に戻る。
これに対して、オン継続時間が所定時間に達した場合はステップS4に進み、そこで表示画像の切り替えを行った後、一連の処理を終える。
このように本実施形態では、スイッチ31が所定の操作条件で操作されたかどうかを、オン継続時間に基づいて判断する。そして、表示制御部43は、スイッチ31が押圧操作されるたびに、上記の処理手順にしたがって表示画像の切り替えを制御する。
すなわち、表示制御部43は、オン継続時間が所定時間に達する前にスイッチ31の押圧操作が解除された場合は、スイッチ31が所定の操作条件で操作されなかったと判断し、表示画像の切り替えを行わない。この場合、スイッチ31が出力したオン信号は、応答用の操作条件(オン継続時間<所定時間)に適合するものとなる。
このため、視野検査中にこのような操作条件に適合するオン信号が制御部30に送られると、感度マップ作成部42は、そのオン信号を被検者2が視標の光を感知したことを示す応答用の信号と認識し、そのときの視標の点の明るさに対応する値をその点の網膜の感度として処理する。
また、表示制御部43は、オン継続時間が所定時間に達するまでスイッチ31が押圧操作された場合は、スイッチ31が所定の操作条件で操作されたと判断し、表示画像の切り替えを行う。この場合、スイッチ31が出力したオン信号は、表示画像の切り替え用の操作条件(オン継続時間≧所定時間)に適合するもの、つまり表示画像の切り替えを指示する指示信号となり、この指示信号が表示制御部43に与えられる。
このため、このような操作条件に適合するオン信号が制御部30に送られると、表示制御部43は、視野検査中であってもそのオン信号を表示画像の切り替え指示信号と認識し、直ちに表示画像を検査画像から外界画像に切り替える。
なお、表示制御部43が表示画像を切り替えた場合、被検者は、表示画像の切り替えを視覚によって認識できるが、検者は、その事実を知らないまま検査を進めようとする可能性がある。そうした場合への対応として、表示制御部43には、現在の表示状況を検者に通知する機能を持たせるとよい。現在の表示状況とは、検査画像および前記外界画像のうち、どちらの画像を表示素子12に表示しているかという状況をいう。検者に対する具体的な通知の方式は、表示による通知、音による通知、光による通知、振動による通知、あるいはそれらを適宜組み合わせた通知など、種々の方式が考えられる。
具体例を挙げると、表示による通知の方式としては、検者が操作する端末45のモニタ上に現在の表示状況を画像やメッセージなどで表示することが考えられる。音による通知の方式としては、端末45が備えるスピーカーから音声で出力したり警告音で出力したりすることが考えられる。光に通知の方式としては、装置本体5または端末45、あるいはその両方にランプを設け、検査画像と外界映像のどちらを表示素子12に表示しているかによってランプの点灯状態(オン/オフ状態)や、点灯するランプの色を変えることが考えられる。振動による通知の方式としては、表示素子12に表示する表示画像を検査画像から外界画像に切り替えたときに、検者が操作する端末45を振動させることが考えられる。
また、表示画像を外界画像から検査画像に切り替える(戻す)場合に、どのようなタイミングで表示画像を切り替えるかについては、たとえば、次のような種々の方式が考えられる。1つは、スイッチ31の押下状態が解除されたタイミングで切り替える方式である。もう1つは、スイッチ31の押下状態が解除された後、再びスイッチ31が所定の操作条件で操作されたタイミングで切り替える方式である。この場合は、スイッチ31が所定の操作条件で操作されるたびに、表示制御部43は、表示画像を検査画像と外界画像に交互に切り替えることになる。
<4.実施形態の効果>
以下に、本発明の実施形態の効果について、具体的な状況を挙げて説明する。
まず、被検者2に装置本体5を装着した状態では、仮に、表示素子12に固視標を表示していたとしても、被検者2にとっては外界から閉ざされた暗闇のなかに置かれることになる。このため、装置本体5を装着した被検者2は、これから視覚検査を受けるという心理的な不安に加えて、周囲の状況がまったく分からないという不安感やストレスを感じやすくなる。特に、被検者2の周囲に検者以外の人がいる場合や、被検者2が貴重品などを入れた手荷物を近くに置いている場合などは、そうした不安感が強くなる。
そうした場合、被検者2が自分の意思で外界の様子を目視で確認することができれば、被検者2が感じる不安感やストレスは大幅に緩和される。ただし、被検者2に外界の様子を確認させるために、視覚検査の途中で装置本体5を取り外した場合は、これを再度装着するときに、装置本体5の位置調整をやり直す必要がある。また、再装着の後で装置本体5の位置調整を行っても、取り外し前の装着状態を正確に再現することは難しい。このため、視覚検査の途中で装置本体5を取り外した場合は、取り外しの前の後で眼球位置などの検査条件が変わる可能性がある。
そこで、検者は、視覚検査の開始に先立って、被検者2の頭部3に装置本体5を装着した際に、被検者2にスイッチ31の操作方法を伝える。具体的には、たとえば視野検査で視標が見えたと感じたら、その瞬間にスイッチ31を短く押すように伝える。また、外界の様子を確認したい場合は、スイッチ31を長く押し続ける(長押し操作する)ことよって、表示素子12に外界画像が表示されることを伝える。また、検者は、実際に被検者2にスイッチ31を長押し操作してもらって、表示素子12に表示された外界画像を被検者2に確認してもらう。これにより、被検者2は、心理的な不安感やストレスを軽減した状態で、視覚検査に臨むことができる。
また、被検者が覗き込む形式の視覚検査装置では、被検者が近見視をしたまま内部を覗くことで、器械近視という問題が起こる。これに対して、表示素子12に表示される固視標や視標は、近見視で見る距離(30cm前後)よりも長い呈示距離のところに表示される。このため、器械近視が起こった場合は、正常な視力を有する被検者であっても、表示素子12に表示した固視標などがボケて見えることがある。このボケをたとえば表示光学
系11のレンズ移動による視度調整によって解消すると、器械近視の影響を残したまま視覚検査を行うことになる。このため、正確な検査結果が得られないおそれがある。
その点、視覚検査の開始に先立って、被検者2に所定の操作条件でスイッチ31を操作させ、これによって表示素子12に外界画像を表示すれば、被検者に周囲の様子を把握させて安心感を与えると同時に、器械近視による水晶体の緊張を解いてその影響を軽減することができる。したがって、被検者の心理的な不安感やストレスを軽減することと、器械近視の影響を軽減することを、同時に実現することが可能となる。
また、本実施形態においては、視覚検査の途中で被検者がスイッチ31を所定の操作条件で操作した場合でも、表示制御部43が直ちに表示画像を検査画像から外界画像に切り替える。このため、被検者は、視覚検査を開始する前だけでなく、視覚検査の途中でも、外界の様子を自分の意思でいつでも確認することができる。したがって、その事実を検者が事前に被検者に伝えておくことで、視覚検査に臨む被検者の精神的な負担を減らすことができる。また、視覚検査の途中で被検者が疲れを感じた場合にも、装置本体5を取り外すことなく、表示画像を外界画像に切り替えることで適度な休息をとることができる。さらに、視覚検査を受けている被検者の耳に消防車のサイレンなどが聞こえてきて、その音が次第に大きくなってきた場合なども、被検者は、スイッチ31の操作だけで周囲の状況(特に安全性など)を素早く確認することができる。
また、スイッチ31は、表示画像の切り替え用と応答用で共用になっているため、被検者は、視覚検査中でもスイッチ31を持ち替えずに表示画像を切り替えることができる。したがって、たとえば地震発生時などの緊急時でも、被検者は、瞬時にスイッチ31を操作して、表示画像を外界画像に切り替えることができる。
また、被検者がスイッチ31の操作によって表示画面を切り替えても、装置本体5の装着状態には何ら変化が生じないため、表示画像を検査画像から外界画像に切り替える前と、表示画像を外界画像から検査画像に戻した後で、眼球位置などの検査条件を揃えることができる。したがって、装置本体5の位置調整をやり直さなくても、視覚検査を再開することができる。また、表示画像を検査画像から外界画像に切り替える前に得られた検査結果と、表示画像を外界画像から検査画像に戻した後に得られた検査結果を、ひとつの検査結果にまとめて網膜の感度マップなどを作成することもできる。よって、視覚検査の途中までに得られた検査結果を無駄にすることなく有効に活用することが可能となる。
<5.変形例等>
本発明の技術的範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の構成要件やその組み合わせによって得られる特定の効果を導き出せる範囲において、種々の変更や改良を加えた形態も含む。
たとえば、上記実施形態においては、表示画像の切り替え用のスイッチと、視覚検査の応答用のスイッチとを共用としたが、これに限らず、それらを別々のスイッチで構成してもよい。
また、上記実施形態においては、被検者が操作するスイッチ31のオン信号が所定時間以上継続した場合に、当該オン信号を表示画像の切り替え指示信号と認識して表示制御部43が表示画像を切り替える構成としたが、本発明はこれに限らず、たとえば、検者が操作する端末45を用いて切り替え指示部を構成してもよい。また、スイッチ31と端末45の両方を用いて切り替え指示部を構成してもよい。
端末45を用いて切り替え指示部を構成する場合は、検者が予め決められた操作をした
ときに端末45から制御部30に表示画像の切り替え指示信号を送り、この切り替え指示信号を受けて表示制御部43が表示画像を切り替えるようにすればよい。これにより、被検者が高齢でスイッチ31の操作方法を覚えるのが難しい場合や所定の操作条件にあわせてスイッチ31をうまく操作できない場合などでも、検者が被検者の様子や希望を聞きながら表示画像の切り替えを行うことができる。このため、スイッチ31の操作に不慣れな被検者でも安心して視覚検査を受けることができる。
また、上記実施形態においては、液晶表示素子を用いて表示素子12を構成するとしたが、本発明はこれに限らず、有機EL(Electro Luminescence)表示素子を用いてもよい。
また、上記実施形態においては、表示光学系11を合計4つのレンズで構成するとともに、観察光学系15を合計2つのレンズ(そのうちの一つは表示光学系11と共用)で構成したが、各々の光学系を構成するレンズの個数や形状、光軸方向のレンズ間隔などは、必要に応じて変更可能である。ただし、第2レンズ群21については、正のパワーを有するレンズと負のパワーを有するレンズを組み合わせて色収差や像倍率を補正するため、複数個のレンズで構成することが好ましい。また、ミラー20をダイクロイックミラーで構成してもよい。
一例として、表示光学系の他の構成例を図5および図6に示す。
図5においては、表示光学系11の第2レンズ群21に属するレンズ21cを、図示しないレンズ移動機構により光軸方向に移動可能とした点が、上記実施形態と異なっている。この構成を採用した場合は、被検者の視力に合わせて視度を調整することが可能となる。
一方、図6においては、表示光学系11の第2レンズ群21をレンズ(凸レンズ)21dの追加により計4つのレンズ21a〜21dを用いて構成した点と、平面型表示素子12の表示面12aの大きさを小さくした点が、上記実施形態と異なっている。この構成を採用した場合は、被検者に対して、より鮮明に視標を表示することが可能となる。また、この構成においても、レンズ21cを光軸方向に移動可能な構成とすることにより、被検者の視力に合わせて視度を調整することが可能となる。
1…視覚検査装置
2…被検者
3…頭部
5…装置本体
6…装着具
8…眼球
9…瞳孔
11…表示光学系
12…表示素子
12a…表示面
15…観察光学系
16…撮像素子
30…制御部
31…スイッチ
40…カメラ
43…表示制御部

Claims (8)

  1. 視覚検査を受ける被検者の頭部に装着されるとともに、前記被検者に検査画像を表示するための表示素子と、外界の画像を撮影するカメラと、を有する装置本体と、
    前記表示素子に表示する表示画像を、前記視覚検査のための検査画像と、前記カメラが撮影する外界画像との間で切り替える表示制御部と、
    前記表示画像の切り替えを指示する指示信号を前記表示制御部に与える切り替え指示部と、
    を備えることを特徴とする視覚検査装置。
  2. 前記切り替え指示部は、前記視覚検査に際して前記被検者が操作する第1の操作機器を用いて構成されている
    ことを特徴とする請求項1に記載の視覚検査装置。
  3. 前記表示制御部は、前記表示素子に前記検査画像が表示されている状況で、前記第1の操作機器が所定の操作条件で操作された場合に、前記表示素子に表示する表示画像を前記検査画像から前記外界画像に切り替える
    ことを特徴とする請求項2に記載の視覚検査装置。
  4. 前記第1の操作機器は、前記視覚検査で前記被検者が応答用に操作する操作機器と共用であり、
    前記所定の操作条件は、前記応答用に設定された操作条件とは異なる
    ことを特徴とする請求項3に記載の視覚検査装置。
  5. 前記表示画像の切り替え用に設定された操作条件と、前記応答用に設定された操作条件とは、前記第1の操作機器を押圧操作している時間の長さが異なる
    ことを特徴とする請求項4に記載の視覚検査装置。
  6. 前記表示制御部は、前記視覚検査の途中で前記第1の操作機器が所定の操作条件で操作された場合でも、前記表示画像を前記検査画像から前記外界画像に切り替える
    ことを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載の視覚検査装置。
  7. 前記切り替え指示部は、前記視覚検査に際して検者が操作する第2の操作機器を用いて構成されている
    ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の視覚検査装置。
  8. 前記表示制御部は、前記検査画像および前記外界画像のうち、どちらの画像を前記表示素子に表示しているかを検者に通知する機能を備える
    ことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の視覚検査装置。
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