JP6427707B1 - 鉛蓄電池 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】液口栓10は、排気孔14を有する筒体11内に防沫体13を備え、防沫体13は、隔壁21で仕切られた室SL、SRのガス上流側の開口を所定の開口部22Kに規制する第1の邪魔板22と、各室SL、SR内に設けられ、筒体11の軸線方向Zに対して斜めに傾斜すると共にその傾斜方向が同方向の第2及び第3の邪魔板23、24とを備える。第2の邪魔板23は、開口部22Kよりもガス下流側に位置し、且つ軸線方向Zで開口部22Kにオーバーラップし、第3の邪魔板24は、第2の邪魔板23の周囲に空く開口に軸線方向Zでオーバーラップする。
【選択図】図2
Description
例えば、特許文献1には、上下方向に交互に対向する位置に逆の傾斜を持たせて防沫板(12,13,14)を配する構成が開示され、特許文献2には、互いに反対方向に傾斜する複数の邪魔板(41,42,43)を配置する防沫構造が開示される。また、特許文献3には、ガス抜き及び還流用のスリット(3)を有した直径の異なる同心円の防沫筒(2,2’,2”)を設け、スリットの位置を互いに180度ずつずらして配置し円錐状の下フタ(6)と一体の構造の液口栓(10)が開示される。
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態に係る鉛蓄電池の斜視図である。
鉛蓄電池1は、直方体形状の電池本体2と、電池本体2外に突出する複数の端子3とを備え、例えば四輪車等の車両に搭載される。電池本体2は、内部が複数のセル室に区画され、各セル室に複数の極板が配置される箱形の電槽2Aと、電槽2Aの上方開口を覆う蓋2Bとを備えている。電槽2A及び蓋2Bは、ポリプロピレン(PP)等の樹脂材で形成されている。
蓋2Bには、複数の液口栓10が設けられる。これら液口栓10は、各セルに電解液を注液する注液口を塞ぐ。複数の端子3は、正極端子と負極端子とで構成される。
上記軸線CPは、筒体11及び防沫体13の中心を通る軸線でもある。
筒体11及び防沫体13はポリプロピレン(PP)等の樹脂材を用いた一体成形により形成される。筒体11の上部には、充放電で生じたガスを鉛蓄電池1外に排出し、鉛蓄電池1の内圧上昇を防ぐためのガス排気用の排気孔14が設けられる。排気孔14の下方に連なる内部空間には、防爆フィルター12とその下方に防沫体13が順に装着される。
防沫体13は、電解液の液面の上方に位置し、充放電で生じたガスの排気を許容する一方、鉛蓄電池1を搭載する車両の走行中の振動による電解液の溢液の防止を行う。
隔壁21は、筒体11の軸線CPを基準にして軸線CPに直交する方向に延在し、筒体11の円形断面を半円に等分割する壁に形成される。この隔壁21は、第1の邪魔板22から防爆フィルター12に近接する高さまで立設する。
一方の開口部22Kは、壁で仕切られた室SLに連通する小開口として機能し、他方の開口部22Kは、壁で仕切られた室SRに連通する小開口として機能する。
開口部22Kの開口面積が小さい場合は、液沫が直接上昇する量は抑えられるが、開口部22Kに液膜を形成しガス排気時に液膜がはじける液沫の上昇を起こすおそれがある。開口面積が小さくなる分、還流性が悪くなって開口部22Kに液膜をより形成しやすくなるおそれがある。開口面積がさらに小さい場合は、液沫の上昇は完全に抑えられるかもしれないが、ガスが全く排気できなくなるおそれが生じる。
即ち、開口部22Kの開口面積は、液沫の上昇を抑制し、かつ還流を妨げず、さらにガスの排気性を妨げない範囲で自由に設定してよい。
なお、開口部22Kは、液膜の形成が抑えられれば、円孔、矩形孔、スロット孔などの孔形状でも、半円状、角形状、スロット状、波形状などの切欠きでも良いが、液沫の上昇を抑制し、かつ還流を妨げず、さらにガスの排気性を妨げない開口面積が確保でき、生産性も良いV字状の切欠きが好ましい。
これら図に示すように、防沫体13の隔壁21には、各開口部22Kよりもガス下流側に位置する第2の邪魔板23と、第2の邪魔板23よりもガス下流側に位置する第3の邪魔板24とが一体に設けられている。
第3の邪魔板24は、隔壁21で仕切られる室SL、SRに軸線CPの周方向に間隔を空けて二枚ずつ設けられ、隔壁21を境にして、軸線CPを基準にした軸対称の位置及び形状に形成されている。
また、左側の第3の邪魔板24は、軸線方向Zで第2の邪魔板23に近接する端部24Cが室SL内の反対側の端まで延出し、軸線方向Zで第2の邪魔板23から離間する端部24Dが、軸線方向Zで別の第3の邪魔板24とオーバーラップする。
端部24B及び端部24Cについて、防沫体13の高さが低い場合、室SL内の端に隙間を生じさせると、第2の邪魔板23及び第3の邪魔板24の傾斜によって移動した液沫が、室SL内の端に形成した隙間から上方へ移動し防爆フィルター12を濡らしガス排気性を低下させるおそれがある。ただし、防沫体13の高さが十分確保できる場合はこの限りでない。
なお、第1〜第3の邪魔板24は、軸線方向Zに少なくとも2mm以上の隙間を空けて配置することが好ましい。なお、2mm未満でも、後述するような耐溢液性とガス排気性を確保できる場合は2mm未満でもよい。
即ち、上昇した液沫は重力に従って、第3の邪魔板24及び第2の邪魔板23の傾斜に沿って第1の邪魔板22へと流れ落ち、第1の邪魔板22の開口部22Kから鉛蓄電池1内へと還流する。なお、第1の邪魔板22は隔壁21によって仕切られた室SL、SR内の端から開口部22Kへ向けて傾斜を設けることが好ましい。
このようにして、第2及び第3の邪魔板24の傾斜によって液沫の進路が決定づけられ、液沫の排気孔14への移動が規制されると共に、上昇した液沫を容易に還流させることができる。
具体的には、ガスは、第2の邪魔板23と開口部22Kとの間に空いた隙間を通って、液沫と同様に第2の邪魔板23及び第3の邪魔板24に沿って右上方へと流れるだけでなく、液沫の進路と反対側である左側へも流れ、その上方に位置する第3の邪魔板24と、第2の邪魔板23との間を通って排気孔14へ流入させることができる。
このように、液沫の進路とは別にガスが流入可能な進路を確保できるので、ガスを排気孔14にスムーズに移動させることができる。
このようにして、液沫が様々な方向へ移動しても、第2及び第3の邪魔板23、24によって、液沫が排気孔14へ移動する事態を抑制できる。
なお、隔壁21で仕切られた室SLと室SRとは、第1〜第3の邪魔板22〜24の傾斜方向が逆方向であるので、水平方向の振動によって生じた液沫や電解液の波打ちに対する耐溢液性を確保し易くなる。
また、隔壁21を挟んで、第2及び第3の邪魔板23、24の傾斜方向は逆方向であるので、水平方向の振動によって生じた液沫や電解液の波打ちに対し、耐溢液性を確保し易くなる。
また、第3の邪魔板24における第2の邪魔板23から離間する端部24B(図5の符号B参照)は、隔壁21によって仕切られた室SL内の端まで延出するので、第3の邪魔板24に案内された液沫を室SL内で堰き止め易くなる。
なお、開口部22Kは、液膜の形成が抑えられれば、円孔、矩形孔、スロット孔などの孔形状でも、半円状、角形状、スロット状、波形状などの切欠きでも良いが、液沫の上昇を抑制し、かつ還流を妨げず、さらにガスの排気性を妨げない開口面積が確保でき、生産性も良いV字状の切欠きが好ましい。
また、排気孔14と防沫体13との間に防爆フィルター12を有しているので、外部の静電気や火花が鉛蓄電池1内に侵入することを防止できる。
図8は第2実施形態に係る鉛蓄電池1の液口栓10内の防沫体13の斜視図である。また、図9はこの液口栓10の室SL内の液沫の流れW及びガスの流れGを示す図である。
第2実施形態は、液口栓10内の液沫又はガスの進路を制御する他の邪魔板として機能する第1及び第2補助邪魔板25、26を有する点を除いて第1実施形態と同様である。第1実施形態と同様の構成は同一の符号を付して示し、重複説明は省略する。
また、第2補助邪魔板26は、第2の邪魔板23の傾斜下端側、且つ左側の第3の邪魔板24よりも上流側に配置され、これら邪魔板23、24と傾斜方向が同方向である。仮に、液沫が、流れGと同様の進路を通って第2の邪魔板23と第1の邪魔板22との間を左に移動しても、第2補助邪魔板26によって、液沫の上昇を妨げることができる。また、ガスは、図9の流れGに示すように、第2補助邪魔板26の下方、または、上方のいずれかの進路を通って排気孔14に流入することができるので、ガスの流れは妨げられない。
図10は第3実施形態に係る鉛蓄電池1の液口栓10内の防沫体13の斜視図である。また、図11はこの液口栓10の室SL内の液沫の流れW及びガスの流れGを示す図である。
第3実施形態は、第3の邪魔板24が三枚である点が第1実施形態と異なる。
図10及び図11に示すように、第3の邪魔板24は、第1実施形態の第3の邪魔板24に比して小型に形成され、防沫体13の周方向(軸線CPの周方向と一致)に等角度間隔で配置される。
図12は第4実施形態に係る鉛蓄電池1の液口栓10内の防沫体13の斜視図である。また、図13はこの液口栓10の室SL内の液沫の流れW及びガスの流れGを示す図である。
第4実施形態は、第2の邪魔板23が二枚である点が第1実施形態と異なる。
図12及び図13に示すように、右側に位置する一方の第2の邪魔板23の上流側端部23A(図13)が軸線方向Zで開口部22Kの一部にオーバーラップし、左側に位置する他方の第2の邪魔板23の下流側端部23Bが、開口部22Kの残りの部分に軸線方向Zでオーバーラップする。このため、図13に符号Wで示すように、これら第2の邪魔板23の間にも液沫が流入する隙間を確保できる。これによって、液沫が通過する箇所を拡げ、かつ、各複数の第2の邪魔板23によって液沫を第3の邪魔板24に案内できる。従って、液沫が相対的に大量に流入しても液沫の上昇を抑え、還流し易くなる。
図14は第5実施形態に係る鉛蓄電池1の液口栓10内の防沫体13を示す図であり、符号Aは防沫体13を斜め下方から見た斜視図、符号Bは液口栓10を下方から見た図を示している。また、図15はこの液口栓10の室SL内の液沫の流れW及びガスの流れGを示す図である。
第5実施形態は、第1の邪魔板22の開口部22Kに比して周方向に長い開口部22Kを有する点を除いて、第4実施形態と同じである。図14に示すように、第1の邪魔板22は、開口部22Kとして、外周縁から軸線CPに向かって凹む一対の凹み部を有し、これら一対の凹み部のトータル開口面積が、第1〜第4実施形態の開口部22Kのトータル開口面積と同等の値に形成されている。
第1の邪魔板22は、周方向に相対的に長い開口部22Kを有しているので、図15に示すように、左右の第2の邪魔板23の周方向に長い領域を有効利用して、液沫の勢いを抑えると共に第3の邪魔板24に向けて案内できる。また、同図15に示すように、開口部22Kが、液沫の流れWから離れた位置まで拡がるので、ガスを液沫の流れWから離れた箇所から流入させ、図15に示す進路に沿って流し易くなる。このようにして、ガスを液沫の進路とは別にガスが流入可能な進路へと誘導でき、耐溢液性とガス排気性とをより両立し易くなる。
従来例1の防沫体31は、互いに反対方向に傾斜する複数の邪魔板32,33,34を配置した防末構造である。従来例2の液口栓41は、ガス抜き及び還流用のスリット41Sを有した直径の異なる同心円の防沫筒42,43,44を設け、スリット41Sの位置を互いに180度ずつずらして配置し、円錐状の下フタ45と一体にした防末構造である。
従来例1の防沫体31は、各邪魔板32,33,34により形成された空間が、液沫の進路とガスの進路とで同一に作用し、従来例2の液口栓41は、各防沫筒42,43,44により形成された空間が、液沫の進路とガスの進路とで同一に作用するため、上昇した液沫がガスによりさらに押し上げられガス下流側へと到達して、ガス排気とともに溢液することがわかった。
一方、第1〜第5実施形態の防沫体13は、液沫の進路とは別にガスが流入可能な経路を有するため、ガスが液沫を押し上げる作用を抑えることができ、耐溢液性とガス排気性を両立している。
2 電池本体
2A 電槽
2B 蓋
3 端子
10 液口栓
11 筒体
12 防爆フィルター
13 防沫体
14 排気孔
21 隔壁
22 第1の邪魔板
22K 開口部
23 第2の邪魔板
24 第3の邪魔板
24A,24B 第3の邪魔板の端部
25 第1補助邪魔板
26 第2補助邪魔板
31 従来例1の防沫体
32,33,34 防沫体31の邪魔板
41 従来例2の液口栓
42,43,44 液口栓41の防沫筒
45 液口栓41の下フタ
CP 軸線
K1、K2 開口
SL、SR 室
Z 軸線方向
G ガスの流れ
W 液沫の流れ
Claims (8)
- 液口栓を備える鉛蓄電池において、
前記液口栓は、ガス排気用の排気孔を有する筒体と、前記筒体内に設けられる防沫体とを備え、
前記防沫体は、
前記筒体内を前記排気孔に連通する複数の室に仕切る隔壁と、
各室のガス上流側の開口を所定の小開口に規制する第1の邪魔板と、
各室内に設けられ、前記筒体の軸線方向に対して斜めに傾斜すると共にその傾斜方向が同方向の複数の邪魔板とを備え、
各室において、室内に設けられた全ての邪魔板の傾斜方向が同方向であり、
前記複数の邪魔板は、前記小開口よりもガス下流側に位置し、且つ前記軸線方向で前記小開口にオーバーラップする第2の邪魔板と、前記第2の邪魔板よりもガス下流側に位置し、且つ前記第2の邪魔板の周囲に空く開口に前記軸線方向でオーバーラップする第3の邪魔板とを備えることを特徴とする鉛蓄電池。 - 前記第3の邪魔板は、前記第2の邪魔板に近接する端部が前記軸線方向で前記第2の邪魔板にオーバーラップすることを特徴とする請求項1に記載の鉛蓄電池。
- 前記隔壁を挟んで、前記複数の邪魔板の傾斜方向は逆方向であることを特徴とする請求項1又は2に記載の鉛蓄電池。
- 前記小開口と、前記第2及び第3の邪魔板とは、前記隔壁を境界として、前記筒体の中心を通る軸線に対して軸対称であることを特徴とする請求項3に記載の鉛蓄電池。
- 前記第3の邪魔板における前記第2の邪魔板から離間する端部は、前記隔壁によって仕切られた室内の端まで延出することを特徴とすることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の鉛蓄電池。
- 前記複数の邪魔板は、前記筒体内の液沫又はガスの進路を制御する他の邪魔板をさらに有し、
前記他の邪魔板は、前記第2又は第3の邪魔板の少なくともいずれかに前記軸線方向でオーバーラップすることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の鉛蓄電池。 - 前記第1の邪魔板は、前記小開口として、前記筒体の径方向外側に向かうほど開口幅が拡がるV字状の切り欠きを有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の鉛蓄電池。
- 前記排気孔と前記防沫体との間に防爆フィルターを有していることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の鉛蓄電池。
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