JP6425340B2 - コロイド溶液、シリカナノシート網目構造体被覆基材、遺伝子トランスフェクション用基材及びコロイド溶液の製造方法 - Google Patents

コロイド溶液、シリカナノシート網目構造体被覆基材、遺伝子トランスフェクション用基材及びコロイド溶液の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は遺伝子を細胞に取り込む処理、すなわちトランスフェクションに使用することができるシリカナノシート網目構造体被覆基材に関し、またそのような基材を作成するために使用できるコロイド溶液及びその製造方法にも関する。
制御されまた効率的な遺伝子導入は、病気の予防や治療だけではなく、細胞の極めて重要な生物学的機能の解析に使用できる可能性のある方法として、この20年間大きな注目を浴びている。遺伝子を液相中で導入する従来のバルクトランスフェクション(bulk transfection)は、細胞外及び細胞内の障壁のために導入効率が悪いという問題を抱えている。
近年、基板仲介導入(substrate-mediated delivery)と称する新たな手法によれば、固定化前のDNAあるいはDNA複合体が基板表面で付着細胞と直接接触するために、トランスフェクション効率が高くなることが示された。
基板仲介導入トランスフェクション法で採用される基板は、主にゼラチンやコラーゲン、高分子電解質層、合成あるいは天然の高分子、天然あるいは組み換えタンパク質のような有機物をベースとするものであった。しかしながら、これらのトランスフェクションプロセスの多くは高コストであり、複雑な手順を伴う。これらの材料を使用することで、トランスフェクション効率及び遺伝子発現レベルの制御性も限定的なものとなる。従って、遺伝子を直接吸着して細胞に導入することによってトランスフェクション手順を簡単化するための単一の基板を準備することができれば好都合である。
上述した欠点を克服するために考えられた別の手法で、特殊な表面地形(surface topography)(マイクロあるいはナノ構造)を有する無機基板が多様な生体分子の導入に使用できる可能性があり、また多様なタイプの細胞への使用に適用できることが示された。これらの基板の表面モルフォロジーはDNAとの結合及び細胞へのアクセスを促進するために極めて重要である。しかしながら、所要の地形を有するナノ構造を基板上に成長させるようにしてもまだ複雑なプロセスが必要であり、またある特定の基板上でしか実現できないことがある。例えば、高密度充填され垂直に伸びたナノワイヤは実際には超撥水性をもたらすが、これによりその生体関係の用途が限定されていた。また、大きな正の帯電は導入には好ましくないので、ナノワイヤ表面は生体分子を結合させるには効率が悪い。更に、細胞との結合に当たっては、ナノワイヤは細胞に突き刺さって細胞に損傷を与える。ランダムかつ低密度に配置されて垂直方向に伸びたナノワイヤだけが生体分子と細胞の結合を良好に行うことができた。また、パターン形成された地形は手順の必要性から、他の基板へ簡単に移転させることはできない。従って、基板仲介トランスフェクションを更に進展させるためには、無機ナノ構造を作製して細胞培養用の一般的な基材上に移転させる汎用の方法が望ましい。
シリカは最も頻繁に使用される無機材料の一つである。それは、シリカはほとんどの材料との相性が良く、化学的に安定であり、また多様で充分に開発された化学的また物理的に修飾された材料があるからである。シリカはまた薬品や遺伝子の導入のために有望な構造材料である。本願発明者は以前、シリカからなる基材であってトランスフェクション用に好適な表面形状を有する構造体として、非特許文献1で説明されているところの、垂直に成長した、多孔質の網目構造をなすシリカナノシート(以下、「シリカナノシート網目構造体」と称する)を提案した。この構造自体は確かにトランスフェクションに好適なものであったが、現実のトランスフェクションの作業で使用するのは困難であった。それは、トランスフェクションに使用する基材としてはポリスチレンを原料とする細胞培養用96ウェルプレートなどの特定の形状、サイズ等を有するものを使用するのが普通であり、非特許文献1に記載されているような、シリカナノシート網目構造体が成長用のシリコンウエハー上に付着した構造では、現在トランスフェクション作業に使用されている他の基材や作業手順に適合しないからである。
本発明は上述した従来技術の問題点を解消し、遺伝子トランスフェクションに好適な表面構造を、この種の生化学的な実験や製造等の作業工程に通常使用されている器具の表面に形成できるようにすることを課題とする。
本発明の一側面によれば、直立したシリカナノシートが横方向に網目構造をなして接続されたシリカナノシート網目構造体が分散したコロイド溶液が提供される。
ここで、前記シリカナノシート網目構造体の横方向のサイズは5μmから20μmの範囲であってよい。
また、前記網目構造の個々の網目のサイズは100nmから500nmの範囲であってよい。
また、前記直立したシリカナノシートの高さは30nmから200nmの範囲であってよい。
また、分散媒として水を含んでよい。
本発明の他の側面によれば、直立したシリカナノシートが横方向に網目構造をなして接続されたシリカナノシート網目構造体が複数個、基材の表面全体または表面の一部を被覆した、シリカナノシート網目構造体被覆基材が与えられる。
ここで、前記シリカナノシート網目構造体の横方向のサイズは5μmから20μmの範囲であってよい。
また、前記網目構造の個々の網目のサイズは100nmから500nmの範囲であってよい。
また、前記直立したシリカナノシートの高さは30nmから200nmの範囲であってよい。
本発明の更に他の側面によれば、上記何れかのコロイド溶液を基材上に塗布して製造されるシリカナノシート網目構造体被覆基材が与えられる。
ここで、前記塗布は複数回行なわれてよい。
また、前記基材は親水化処理されていてよい。
本発明の更に他の側面によれば、上記何れかのシリカナノシート網目構造体被覆材からなる、遺伝子トランスフェクション用基材が与えられる。
本発明の更に他の側面によれば、少なくとも表面がシリカである成長用基板をNaBH溶液に浸漬して、直立したシリカナノシートが横方向に網目構造をなして接続されたシリカナノシート網目構造体を前記表面上に成長させ、前記表面上に成長した前記シリカナノシート網目構造体を前記成長用基板から剥離し、前記剥離した前記シリカナノシート網目構造体を液体中に分散して作製したコロイド溶液の製造方法が与えられる。
ここで、前記剥離するステップは、前記シリカナノシート網目構造体の成長終了後直ちに行ってよい。
また、前記剥離するステップは液体中に浸漬した前記シリカナノシート網目構造体が成長した前記成長用基板に超音波を照射するステップを含んでよい。
また、前記分散させるステップの前に、前記剥離したシリカナノシート網目構造体を単独で取り出すステップを含み、前記分散させるステップは前記単独で取り出した前記シリカナノシート網目構造体を前記液体中に分散するステップを含んでよい。
また、前記液体は水を含んでよい。
本発明によれば、ウイルスベクターを使用しないために安全性が高く、また任意の表面形状の基板等の基材上にコロイド溶液を堆積させることで遺伝子トランスフェクションを行う表面を形成することができる。
シリカナノシート網目構造体の製造方法を説明するための概念図。 スライドガラス上に固定したシリカナノシート網目構造体のSEM像。 緑色蛍光タンパク質遺伝子GFPのHEK293XL/null細胞中での発現の状況を蛍光顕微鏡で観察した蛍光像。(a)シリカナノシート網目構造体を堆積させていないスライドガラスを使用した場合。(b)シリカナノシート網目構造体を堆積させたスライドガラスを使用した場合。 シリカナノシート網目構造体を堆積させたスライドガラス及びこれを堆積していないスライドガラス上でのルシフェラーゼのHEK293XL/null細胞中での発現の状況の結果を示す図。 シリカナノシート網目構造体を堆積させた24ウェルプレート及びこれを堆積していない24ウェルポリスチレンプレート上でのルシフェラーゼのHEK293XL/null細胞中での発現の状況の結果を示す図。
本発明の一形態では、一般の基板上で効率的な遺伝子トランスフェクションを行うための、シリカナノシート網目構造体を分散させたコロイド溶液が提供される。このシリカナノシート網目構造体は、細胞培養のための通常の基板であるシリカガラスプレートやプラスチック製の細胞培養プレートの上に移転した後でもその網目構造のモルフォロジーを維持していることが確認できた。化学的修飾後、大きな表面積を有する多孔質の基板は、DNAや細胞に対するより強固な結合支持を与えることができる。シリカナノシート網目構造体は親水性表面上でより良好な被覆率あるいは一様分布性を有することがわかったが、このことは本構造体中にシラノール基が多く存在することによるためと思われる。このシリカナノシート網目構造体を使用して、組み換えタンパク質の表面被覆なしで人間の胎児腎臓細胞への直接的な遺伝子トランスフェクションを行ったところ、シリカナノシートのない平坦な基板と比較してより高いトランスフェクション効率を示した。
上記実施形態のコロイド溶液は、シリコンウエハー上に自律的に成長するシリカナノシート網目構造体をシリコンウエハから引き剥がして水中に分散させることで作成することができる。後述するように、このシリカナノシート網目構造体はシリコン基板上に堆積されたシリカ層から成長させることができるが、このシリカ層は基板に強固に結合していて、本構造体を引き剥がす際にはシリカ層はシリコン基板側に残る。このように剥離されたシリカナノシート網目構造体片をガラスあるいはプラスチック基板の上面に固定することができる。アミノ基で表面を修飾すれば、その正電荷及び網目状モルフォロジーによりタンパク質、DNA、細胞等の吸着が促進され、その結果、細胞へのDNAのトランスフェクションが増大する。
上記成長過程においてナノシートが直立して成長するため、シリコンウエハなどのナノシート成長が起きる成長面に垂直な方向から見たとき、成長面から立ち上がったシリカナノシートの壁で周囲を囲まれた個々の網目つまり空所が多数隣接して形成された多孔質状、言い換えれば網目構造のナノシート、つまりシリカナノシート網目構造体が形成される。当該構造体は大きな表面積を有するとともに、上記多数の空所はその内部に各種の物質、物体を収容可能な収容部となりえる。この網目構造は生体分子を担持または付着させるのに好ましいものでありえる。シリカナノシート網目構造体の壁を形成するところの、直立したナノシート(つまり個々の網目を取り囲む直立した壁)のナノメートルサイズの縁は細胞の直接接触のために有益であり得るので、細胞への遺伝子のトランスフェクションを促進する。
基板上へのシリカナノシート網目構造体の移転及び展開は、上記コロイド溶液を基板表面に、必要に応じて繰り返して付与することで達成される。これにより、シリカナノシート網目構造体による完全なあるいは部分的な被覆を得ることができる。シリカナノシート網目構造体を基板上に固定するに当たって、シリカナノシート網目構造体上のシラノール基とガラスあるいはプラスチック基板の親水性表面との水素結合による相互作用が大きな役割を果たす。以下で説明するアミノ−プロピルトリエトキシシランによる表面修飾がこの構造の正電荷を増加させて負に帯電したDNAや細胞とのより強い結合をもたらす。
本発明の実施態様はまた人間の胎児腎臓細胞株であるHEK293XL/null細胞へのDNAトランスフェクション手順に関する。試料表面をエタノール溶液及び紫外光への露出で清浄にした後、プラスミドDNA/ポリカチオン性脂質(pDNA/LvoVec)複合体を表面に固定し、吸着されていない複合体を超純水によって除去する。シリカナノシートに吸着されたDNAだけがHEK293XL/null細胞へトランスフェクトされる。
直立して成長したシリカナノシートを有するシリカナノシート網目構造体は、図1に概略を図示したようにして作成される。ここでは先ず、シリコンウエハー上にシリカ層を形成する(a)。ここで、シリカ層の厚さは500nm以上とするのが好ましい。これからシリカナノシートをシリコンウエハーから直立して成長させる(b)。このようにしてシリコンウエハー上に成長したシリカナノシート全体を上(ウエハー表面から垂直な方向)から見ると、シリカナノシートは連結されてシリコンウエハー表面を小区画に区分し、これらナノシートが小区画間の壁となっている、一種の多孔質形状を有している。シリコンウエハー上にシリカナノシートを成長させることでこのような多孔質形状を有するシリカナノシート網目構造体を作成する段階までは、上述の非特許文献1で具体的に説明されている。
垂直に成長したシリカナノシート網目構造体は、最初に形成されたシリカ層をシリコンウエハー上に残留させた状態で、成長用の基板(シリコンウエハー)から容易に剥離して水中に分散したコロイド溶液とすることができ、このコロイド溶液は各種の基板上への堆積によりシリカナノシート網目構造体の上述の構造を移転させるのに好適である。それは、剥離された数10〜数100μm幅のシリカナノシート網目構造体の小片は直立したシリカナノシートの網目構造を有する多孔質のモルフォロジーを維持していているからである。
なお、シリカ層上でシリカナノシート網目構造体が成長する際には、この構造体はシリカ層から直接成長するのではなく、それらの間には溶液が介在している。これにより、シリカナノシート網目構造体の成長直後はこの構造体をシリカ層から容易に剥離させることができる。しかし、一旦乾燥させた後では、この介在している層が消失しているため、剥離させることは極めて困難となることがわかった。
ガラス表面及びプラスチック表面の両方がシリカナノシート網目構造体を堆積させるために使用できる。表面に上記コロイド溶液を均一に付着させるためには、親水化のための前処理を行うのが好ましい。スライドガラスの場合には、これをピラニア溶液で処理して、表面上の有機不純物を除去する。ピラニア処理後のスライドガラスの接触角は30°であった。細胞培養プレート(24ウェル)ではその表面の接触角は約43〜58°であった。基板表面が親水性であることにより、水分子がそこに結合された環境ができ、これがシリカナノシート中のシラノール基と基板表面との相互作用を大幅に増大させるのであろう。
基板表面へのシリカナノシート網目構造体の被覆は、上記コロイド溶液を基板表面に繰返し堆積させることによって形成することができる。表面基板上への堆積量及び被覆率は簡単に制御できる。これは、各種のサイズの基板及び生体分子の吸着からの要求への対応に便利である。堆積及び乾燥後、シリカナノシート網目構造体が基板表面上に充分に固定されていることがわかった。更に、水またはエタノールで洗浄して上表面にガスを流しても、基板表面からのシリカナノシート網目構造体の明らかな剥離は起こらなかった。
他のシリカ多孔質構造とは異なり、本願のシリカナノシート網目構造体は直立したシリカナノシートの網目構造で構成される。77Kでの窒素吸着脱等温線から487m−1の大きな表面積及び0.86cm−1の巨大な細孔容積が本願のシリカナノシート網目構造体の測定から得られた。サイズが数100nmのマイクロポアを有する解放網目構造は、比較的大きな分子サイズの生体分子が非常に入り込みやすい収容スペースを提供する。薄いナノシート(10nm厚程度)で構成されるというモルフォロジーにより、付着した分子のための「柔らかな」支持体を与えることができ、従ってタンパク質、DNA及び細胞の固定化に好ましい。また、シリカナノシート網目構造体をSEMで観察した結果、その各種のサイズの範囲は以下の通りであった:
・横方向のサイズ(つまり、個々の構造体薄片の長辺の長さ)は5〜20μm。
・個々の網目のサイズ(孔径)は100〜500nm。
・直立したナノシートの高さ(直立した状態で網目構造体を形成しているナノシートの直立方向の高さ)は、シリカナノシート網目構造体の縁の部分で30〜200nm。
本願におけるシリカナノシートの製造方法は、シリカの他の製造プロセスのような高音での熱処理あるいは溶媒による抽出を伴わない。従って本願のシリカナノシートは他よりも多くの表面に露出したシラノール基を有している。負に帯電したシラノール基は、静電的相互作用によって性に帯電したカチオン種に他の場合よりも多く結合することができる。表面修飾を行うと、より高い正電荷密度により負に帯電したDNA分子や細胞表面により良好に結合する。
シリカナノシート網目構造体中の直立したナノシートは厚さが10nmであることで、ナノサイズの接触位置上での付着が起こるが、これにより細胞膜を超えた挿入及び吸着されたDNAの細胞中トランスフェクションを促進する。
シリカナノシート網目構造をスライドガラスや細胞培養用ポリスチレンプレート上に堆積したものは、遺伝子トランスフェクションプロセスの手順と両立する。DNA吸着、細胞培養及びトランスフェクション発現を特別な注意なしに行うことができる。
以下で実施例により本発明を更に具体的に説明する。ここで以下の実施例は発明の理解を助けるために提示するものであり、本願発明の技術的範囲は特許請求の範囲のみによって定められることに注意されたい。
[シリカナノシート網目構造体の基板上での作成]
1μm厚のシリカ層をスパッタにより研磨したSi(001)ウエハー(直径6インチ=152.4mm)上に形成した。シリカ層を有するシリコンウエハーを便宜上2cm×1cmの断片に切断した。次に3、4個の当該断片を20mLの容量を有していてテフロン(登録商標)ライニング付の鋼鉄製オートクレーブ中でのNaBH溶液(0.1g/ml、3mL)中に浸漬し、これを75℃で7時間保持した。反応後ただちに、シリコンウエハーが入った溶液を1分間超音波処理した。この処理結果の溶液を遠心分離器にかけることにより、前記ウエハーから剥離されたシリカナノシート網目構造体を収集し、純水で洗浄した。なお、反応後にそのままの状態で保持しておいてから超音波処理を行うと、シリカ層からのシリカナノシート網目構造体の剥離が不完全になった。フリーズドライによって乾燥されたシリカナノシート網目構造体を水に再度分散させることにより、濃度が0.5mg/mLのコロイド溶液を得た。
[シリカナノシート網目構造体の基板上への堆積]
このようにして調整したシリカナノシート網目構造体のコロイド溶液20μLを、ピラニア溶液(H:HSO=1:3)で丸一日前処理したスライドガラス(直径12mm)及び親水化処理した24ウェルポリスチレンプレートに滴下した。表面上の過剰な水をピペットを使用して除去し、表面上のシリカナノシート網目構造体の薄いコロイド溶液層を室温で乾燥させた。ここで完全に乾燥させることにより、ガラスやプラスチック表面上へのシリカナノシート網目構造体の固定を強固なものとすることができる。この堆積プロセスを2〜4回繰り返した。その後、アミノプロピルトリエチルシラン(APTES)の2%エタノール溶液で6時間処理してシラン化する表面修飾処理を行った。この基板を最後に70%(v/v)のエタノール水溶液に2時間浸漬し、更に10分間紫外線照射することによって、清浄化した。このようにして以下で説明する遺伝子トランスフェクションに使用する試料基板を作製した。
図2はシリカナノシート網目構造体のコロイド溶液(0.5mg/mL)を20mLだけ堆積させて純水及びエタノールで洗浄した後のスライドガラス試料の二通りの倍率のSEM像である。この図からわかるように、黒く見える背景(ここではスライドガラス)上に直立壁で細かく仕切られた網目構造を有する小片が並べられている様子がわかる。このように、成長用基板上に当初形成されたシリカナノシート網目構造体が、小片に分断されているものの、網目構造を維持したままで別の基板上に移転されていることがわかる。
[試料基板上での遺伝子トランスフェクション1]
4μLのポリカチオン性脂質であるLipofectamine2000と46μLのOpti-MEM Mediumを混合した溶液に1μgの緑色蛍光タンパク質GFPを発現するプラスミドDNAであるphMGFPを混合した50μLのOpti-MEM Mediumを混合した溶液を混合することで、プラスミドDNA/ポリカチオン性脂質複合体を作成した。この100μLのphMGFP/Lipofectamine2000複合体を上述のようにして作製した試料基板上に滴下し、24ウェル細胞培養プレート中で、室温で30分間保持した。次に試料基板を1mLの滅菌超純水で3回洗浄することで、付着しなかったphMGFP/Lipofectamine2000複合体を除去した。1mLのHEK293LX/null細胞懸濁液(2.0×10細胞/mL)を生体培養プレートの各ウェルに添加し、5%CO中において37℃で48時間培養した。
トランスフェクションが行なわれたHEK293XL/null細胞の緑色蛍光タンパク質遺伝子GFPの発現を蛍光顕微鏡(Leica社のDM2500 Fluo/DIC)で観察した。
図3はシリカナノシート網目構造体を堆積させていないスライドガラス(a)及びこれを堆積させたスライドガラス(b)上での緑色蛍光タンパク質遺伝子GFPのHEK293XL/null細胞中での発現の状況を上記蛍光顕微鏡で観察した蛍光像である。(b)中で白色に見える部分は実際には緑色の蛍光を発していた。これに対して、(a)では緑色の蛍光は全く観察されなかった。これからわかるように、シリカナノシート網目構造体に付着した細胞ではGFPの発現が起こったが、シリカナノシート網目構造体を持たない基板ではHEK293XL/null細胞への遺伝子発現は起こらないことがわかった。すなわち、成長用基板上に成長させたシリカナノシート網目構造体を一旦剥離してコロイド溶液を形成し、これを別の基板上に塗布、堆積させることで移転させたシリカナノシート網目構造体は、その外見上の構造が維持されるだけではなく、遺伝子トランスフェクションを発現させるという性質も維持していることが確認された。
[試料基板上での遺伝子トランスフェクション2]
4μLのポリカチオン性脂質であるLipofectamine2000と46μLのOpti-MEM Mediumを混合した溶液に1μgのルシフェラーゼを発現するプラスミドDNAであるpGL4.13を混合した50μLのOpti-MEM Mediumを混合した溶液を混合することで、プラスミドDNA/ポリカチオン性脂質複合体を作成した。この100μLのpGL4.13/Lipofectamine2000複合体を上述のようにして作製した試料基板上に滴下し、24ウェル細胞培養プレート中で、室温で30分間保持した。次に試料基板を1mLの滅菌超純水で3回洗浄することで、付着しなかったpGL4.13/Lipofectamine2000複合体を除去した。1mLのHEK293LX/null細胞懸濁液(2.0×10細胞/mL)を生体培養プレートの各ウェルに添加し、5%CO中において37℃で48時間培養した。
トランスフェクションが行なわれたHEK293XL/null細胞のルシフェラーゼ遺伝子の発現をルシフェラーゼ活性測定試薬であるDual-Glo Luciferase Assay Systemを用いて、ルミノメーター(Promega社のTD-20/20)で測定した。
図4はシリカナノシート網目構造体を堆積させたスライドガラス及びこれを堆積していないスライドガラス上でのルシフェラーゼのHEK293XL/null細胞中での発現の状況の結果である。また、図5はシリカナノシート網目構造体を堆積させた24ウェルプレート及びこれを堆積していない24ウェルポリスチレンプレート上でのルシフェラーゼのHEK293XL/null細胞中での発現の状況の結果である。これからわかるように、シリカナノシート網目構造体に付着した細胞ではルシフェラーゼの発現が起こったが、シリカナノシート網目構造体を持たない基板ではHEK293XL/null細胞への遺伝子発現はほとんど起こらないことがわかった。すなわち、成長用基板上に成長させたシリカナノシート網目構造体を一旦剥離してコロイド溶液を形成し、これを別の基板上に塗布、堆積させることで移転させたシリカナノシート構造体は、その外見上の構造が維持されるだけではなく、遺伝子トランスフェクションを発現させるという性質も維持していることが確認された。
以上、本発明を実施例に基づいて説明したが、当業者であれば、本発明は上記特定の実施例にのみ限定されるものではなく、本発明の思想及び範囲から外れることなく多様な修正及び変形が可能であることを理解するであろう。従って、本願特許請求の範囲で規定されるその範囲から逸脱しない限り、その種の修正・変形は本発明の範囲内にあるものと解釈しなければならない。
以上詳細に説明したように、本発明によれば、ウイルスベクターを使用しないために安全性が高く、また任意の表面形状の基板等の基材上にコロイド溶液を堆積させることで遺伝子トランスフェクションを発現させる表面を形成することができるため、遺伝子トランスフェクション分野で高い実用性を発揮すると期待される。
更には、本発明は薬物担体としても有用である。本発明のシリカナノシート構造体は、例えば、吸着したUV吸収剤分子を持続的に放出することが確認された。これ以外に本発明のシリカナノシート構造体は、大量の金ナノ粒子をその触媒活性を維持したままで表面に良好に固定することができ、これにより、例えばニトリフェノールの還元を効果的に向上させることができた。
Ji, Q.; Yamazaki, T.; Hanagata, N.; Lee, M.V.; Hill, J.P.; Ariga, K. Chem. Commun. 2012, 48, 8496-8498.

Claims (18)

  1. 直立したシリカナノシートが横方向に網目構造をなして接続されたシリカナノシート網目構造体が分散したコロイド溶液。
  2. 前記シリカナノシート網目構造体の横方向のサイズは5μmから20μmの範囲である、請求項1に記載のコロイド溶液。
  3. 前記網目構造の個々の網目のサイズは100nmから500nmの範囲である、請求項1または2に記載のコロイド溶液。
  4. 前記直立したシリカナノシートの高さは30nmから200nmの範囲である、請求項1から3の何れかに記載のコロイド溶液。
  5. 分散媒として水を含む請求項1から4の何れかに記載のコロイド溶液。
  6. 直立したシリカナノシートが横方向に網目構造をなして接続されたシリカナノシート網目構造体が複数個、基材の表面全体または表面の一部を被覆した、シリカナノシート網目構造体被覆基材。
  7. 前記シリカナノシート網目構造体の横方向のサイズは5μmから20μmの範囲である、請求項6に記載のシリカナノシート網目構造体被覆基材。
  8. 前記網目構造の個々の網目のサイズは100nmから500nmの範囲である、請求項6または7に記載のシリカナノシート網目構造体被覆基材。
  9. 前記直立したシリカナノシートの高さは30nmから200nmの範囲である、請求項6から8の何れかに記載のシリカナノシート網目構造体被覆基材。
  10. 請求項1から5の何れかに記載のコロイド溶液を基材上に塗布して製造されるシリカナノシート網目構造体被覆基材。
  11. 前記塗布は複数回行なわれる、請求項10に記載のシリカナノシート網目構造体被覆基材。
  12. 前記基材は親水化処理されている、請求項10または11に記載のシリカナノシート網目構造体被覆基材。
  13. 請求項10から12の何れかに記載のシリカナノシート網目構造体被覆材からなる、遺伝子トランスフェクション用基材。
  14. 少なくとも表面がシリカである成長用基板をNaBH溶液に浸漬して、直立したシリカナノシートが横方向に網目構造をなして接続されたシリカナノシート網目構造体を前記表面上に成長させ、
    前記表面上に成長した前記シリカナノシート網目構造体を前記成長用基板から剥離し、
    前記剥離した前記シリカナノシート網目構造体を液体中に分散して作製した
    コロイド溶液の製造方法。
  15. 前記剥離するステップは、前記シリカナノシート網目構造体の成長終了後直ちに行う、
    請求項14に記載のコロイド溶液の製造方法。
  16. 前記剥離するステップは液体中に浸漬した前記シリカナノシート網目構造体が成長した前記成長用基板に超音波を照射するステップを含む、
    請求項14または15に記載のコロイド溶液の製造方法。
  17. 前記分散させるステップの前に、前記剥離したシリカナノシート網目構造体を単独で取り出すステップを含み、
    前記分散させるステップは前記単独で取り出した前記シリカナノシート網目構造体を前記液体中に分散するステップを含む
    請求項14から16の何れかに記載のコロイド溶液の製造方法。
  18. 前記液体は水を含む、請求項14から17の何れかに記載のコロイド溶液の製造方法。
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