以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。なお、以下の説明においては、従来の通信システムについて適宜参照しながら、本発明の実施形態に係る通信システムの構成を説明する。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る通信システムの全体構成を示す図である。図1に示すように、通信システム1には、中継網N1を介して通信可能な複数の処理分散装置10A,10B,10Cと、中継網N1に接続して通信を行う既設処理装置21,22と、処理分散装置10Aに対して構内網N2を介して接続可能な複数の新設処理装置30Aと、処理分散装置10Bに対して構内網N3を介して接続可能な複数の新設処理装置30Bと、処理分散装置10Cに対して構内網N2を介して接続可能な複数の新設処理装置30Cと、処理分散装置10A〜10C及び新設処理装置30A〜30Cと通信可能な制御装置40とを含んで構成される。
この通信システム1においては、既設処理装置21,22から送信されるデータ通信パケットを処理分散装置10A,10B,10Cが受信すると共に当該データ通信パケットについて構内網を介して接続する配下の新設処理装置30A,30B,30Cに対して振り分けて処理を行う。
処理分散装置10A〜10Cは、既設処理装置21,22から送信されるタスク(所定の処理)に係るデータ通信パケットを新設処理装置30A〜30Cに対して割り振る機能を有する。処理分散装置10A〜10Cによる新設処理装置に対して割り振り方法は適宜設定できるが、例えばタスクの送信元アドレス等タスクに関するフロー(データ送受信の流れ)の情報を利用して割り振り先を決めておくことができる。
新設処理装置30A〜30Cは、処理分散装置10A〜10Cから割り振られたタスクを処理する機能を有する。本実施形態に係る新設処理装置30A〜30Cは、例えば、ハイパーバイザ等と呼ばれるVMM(Virtual Machine Monitor)を実行してVM(Virtual Machine:仮想マシン)を稼働させる情報処理装置である。
既設処理装置21,22とは、データ通信に係る処理を行う装置であり、例えば他のデータ通信を制御する装置であってもよいし、ユーザ等によって操作される端末装置であってもよい。既設処理装置21,22によって所定の処理が必要なタスクが発生した場合、タスクの処理を指示するデータ通信パケットを処理分散装置10A,10B,10Cのうち、当該タスクの処理を請け負う装置に送信する。この際に、既設処理装置21,22は、特定のタスクに対して対応付けられたIPアドレスを用いて宛先(宛先アドレス)を指定して送信することで、当該タスクを処理する処理分散装置に対して送信することができる。タスクに係るデータ通信パケットを受け取った処理分散装置は、配下の新設処理装置に対して振り分けを行って処理を行う。
制御装置40とは、処理分散装置10A,10B,10C及び新設処理装置30A,30B,30Cとの間で情報が送受信可能な装置であって、新設処理装置30A,30B,30Cの構成変更等の情報を受信し、これに基づいて処理分散装置10A,10B,10C側の情報の更新を指示する機能を有する。
なお、本実施形態では、情報処理を行う装置に関して「既設処理装置」と「新設処理装置」というように区別をしているが、これは、従来型の処理装置を「既設処理装置」として、本実施形態に係る特徴を具備する処理装置を「新設処理装置」として既設処理装置から区別しているものである。ただし、タスクの送信元となる既設処理装置21,22が従来型の処理装置である必要はなく、適宜変更することができる。
図2は、従来の処理分散装置及び新設処理装置の機能ブロックについて説明する図である。図1及び図2を参照しながら、処理分散装置及び新設処理装置の基本的な機能及び従来の構成における技術的な課題について説明する。図2に示すように、従来の処理分散装置10Xは、中継網N1を介した通信を行う通信部11と、データ通信パケットを処理装置に振り分ける振り分け部12と、を備える。従来の処理分散装置10Xは、宛先アドレス変換部13を備えている場合と備えていない場合がある。
処理分散装置10Xが宛先アドレス変換部13を備えていない場合、タスクに対応した宛先アドレスを変更せずに、データ通信に係る処理を他の処理分散装置の配下の新設処理装置に対して割り振る(図1の処理分散装置10Aから処理分散装置10Bへ送信して、配下の新設処理装置30Bで処理を行う)ことはできない。このため、他の処理分散装置の配下のタスクに対応した宛先アドレスを持つ新設処理装置にも処理を分散させるということはできず、新設処理装置の有効な活用ができないという課題がある。
一方、処理分散装置10Xが宛先アドレス変換部13を備えている場合、宛先アドレス変換部13がデータ通信パケットの宛先アドレスを変更することで、配下の処理装置で処理を行うことに代えて中継網N1を介して他の処理分散装置にデータ通信パケットを送信することができる。しかしながら、宛先アドレスを変更して他の処理分散装置へ送信した場合、タスク終了時の既設処理装置(タスクの送信元)への応答が転送先の処理分散装置から送信されることになるため、既設処理装置側で同一のフローに係るデータであると判断することができずエラーとなる可能性がある。
このように、従来の処理分散装置10Xは、中継網N1を介して接続される他の処理分散装置の配下の新設処理装置を利用したタスクの実行ができないという技術的な課題があった。
次に、従来の新設処理装置30Xは、仮想スイッチ部31と、仮想マシン部32とを備える。仮想スイッチ部31は、処理分散装置と通信可能な通信部311を備える。また、仮想マシン部32は、仮想スイッチ部31と通信可能な内部通信部321と、タスクに係る処理を実行する処理部322とを有する。仮想マシン部32の数は適宜変更することができ、仮想スイッチ部31は、処理分散装置から受信したタスクを複数の仮想マシン部32の中の何れかに対して送信する。どの仮想マシン部32に対して送信するかはタスクによって予め決められていて、処理分散装置から指示される。
ところで、新設処理装置30Xにおける仮想マシン部32は、必要に応じてその数が変更される。例えば、仮想マシン部32を増やすことで、同時に処理できるタスクの数を増やすこともできる。しかしながら、仮想マシン部32の数が増えたとしても、処理分散装置がそのことを把握していないと、増設された仮想マシン部32を用いた処理はできないため、処理効率の向上を達成できないという課題が生じる。
このように、従来の処理分散装置10X及び新設処理装置30Xでは、処理の分散による処理効率の向上の点において改善の余地があった。
図3では、本実施形態に係る通信システム1に含まれる処理分散装置10(10A〜10C)、新設処理装置30(30A〜30C)及び制御装置40の機能ブロックについて説明する図である。処理分散装置10は、振り分け部12及び宛先アドレス変換部13に代えて、カプセル化部振り分け部14(振り分け先判定部)と、トンネル構成部15と、分散制御部16と、を備えることを特徴とする。カプセル化部振り分け部14及びトンネル構成部15は、他装置の配下の新設処理装置に対してデータ通信パケットを送信して処理を実行するためのデータ通信パケットの加工を担う機能部である。分散制御部16とは、処理分散装置10における処理分散に係る制御を行う機能部である。カプセル化部振り分け部14、トンネル構成部15、及び分散制御部16についての詳細は後述する。
また、新設処理装置30は、仮想スイッチ部31内に通信部311の他にトンネル構成部312と、仮想化制御部36を備えることを特徴とする。トンネル構成部312は、新設処理装置30が構内網を介して接続する処理分散装置10のトンネル構成部15と対になっていて、両者を接続するトンネルを設けてデータ通信パケットを送受信する際の処理を行うための機能部である。仮想化制御部36とは、新設処理装置30における仮想マシン部の増設・減設に係る制御を行う機能部である。トンネル構成部312及び仮想化制御部36における処理等は後述する。
制御装置40は、通信システム1においてデータ通信パケットを分散して処理する装置を管理する全体管理部41を備える。制御装置40の全体管理部41は、図4に示すように、特定のタスクを処理するための処理分散装置の情報及び新設処理装置に係る情報をタスクに対応付けて保持している。
具体的には、全体管理部41に格納されている情報は、タスク(図4では、タスクA)と、宛先アドレスを特定する情報(ここでは、タスクA用アドレス)と、タスクの処理を行う処理分散装置を特定する情報(図4では、処理分散装置A)と、処理分散のための判定条件(図4では、判定条件として、送信元のアドレスがどの既設処理装置であるかによって処理分散を行うことが示されている)と、当該判定条件に基づいて割り振られる新設処理装置及び当該新設処理装置(図4では、新設処理装置A)における仮想マシン部を特定する情報(図4では、仮想マシンA1,A2)と、この仮想マシン部に対してデータ通信パケットを送信する際のトンネルの識別子(図4では、Tunnel0,1)が対応付けられている。全体管理部41において保持される情報は、新設処理装置における仮想マシン部の増設又は削除、新設処理装置自体の追加又は削除、及び、判定条件の変更等に応じて更新されると共に、全体管理部41において保持する情報が更新された場合には、関連する処理分散装置及び新設処理装置に対して更新を通知し、所望の処理を実行させる。
図5に、処理分散装置10、新設処理装置20及び制御装置40のハードウェア構成例を示す。図4に示すように、処理分散装置10、新設処理装置20及び制御装置40は、例えば、CPU101、主記憶装置であるRAM(Random Access Memory)102及びROM(Read Only Memory)103、通信を行うための通信モジュール104、並びにハードディスク等の記憶装置105等のハードウェアを備えるコンピュータを含むものとして構成される。これらの構成要素がプログラム等により動作することにより、上述した処理分散装置10、新設処理装置20及び制御装置40それぞれの機能が発揮される。
次に、処理分散装置10の各機能部について、図6を参照しながら詳細を説明する。
処理分散装置10の通信部11は、データ通信ケット受信部111A及びデータ通信パケット送信部111Bを備えるインタフェース111(interface)と、転送先判定部112と、転送先判定部112において転送先を判定する際に用いられる転送表を格納する転送表DB113と、備える。
通信部11は外部通信用のインタフェース111を複数備える。インタフェース111は、データ通信パケットの入出力を行う。複数のインタフェース111は、それぞれ、「eth1」、「eth2」等の識別子が振られ、データの種類等に応じて使用するインタフェース111が指定される。
転送先判定部112は、インタフェース111のデータ通信パケット受信部又はトンネル構成部15から送信された情報を、転送表DB113で保持される転送表に基づいて所定の装置又は機能部へ送信する機能を有する。
転送表DB113で保持される転送表の例を図7に示す。転送表では、転送先判定部112に送られるデータ通信パケットの宛先アドレスに応じて出力するインタフェースが指定されている。例えば、宛先のアドレスとして所定のタスクに対応したアドレス(ここでは、タスクA用アドレス)が記されているデータ通信パケットの場合には、出力先として、「Tunnel−lb0」(カプセル化部振り分け部14に含まれる)が指定されている。また、宛先アドレスが処理分散装置Bである場合には、中継網を介した通信を行うことが「Next hop」項目で指定されていて、出力先として、「eth1」(通信部11のインタフェース111に含まれる)が指定されている。
処理分散装置10のカプセル化部振り分け部14は、複数の振り分け先判定部141A,141Bと、それぞれに対応した判定表DB142A,142Bと、を備える。複数の振り分け先判定部141A,141Bは、それぞれ「Tunnel−lb0」、「Tunnel−lb0」と言う識別子を有するインタフェースとして機能する。複数の振り分け先判定部141A,141Bは、例えばタスクAに係るデータ通信パケットは振り分け先判定部141Aにて振り分け判定を行い、タスクBに係るデータ通信パケットは振り分け先判定部141Bにて振り分け判定を行うというように、処理分散装置10によって処理されるタスクの種類に応じて複数設けることができる。
カプセル化部振り分け部14は、データ通信パケットに係る処理を分散して行う際に、どの新設処理装置のどの仮想マシン部に対して処理を振り分けるかを決定する機能を担う。なお「カプセル化」とは、他の装置等から受信したデータ通信パケットを、振り分け先の装置(仮想マシン部)に対応したアドレスを宛先アドレスとしたパケットに埋め込む処理をいう。カプセル化されたパケットの例については後述する。そして振り分け先判定部141A,141Bは、判定表DB142A,142Bにて保持される判定表に基づいて、振り分け先を判定する。
判定表DB142A,142Bにて保持される判定表の例を図8に示す。判定表では、データ通信パケットを振り分ける際の判定条件と、判定条件毎の出力インタフェースとが対応付けられている。ここでは、判定条件がデータ通信パケットの送信元アドレスであって、出力インタフェースとして、それぞれTunnelが指定されている。なお、「Tunnel」とは、処理分散装置と新設処理装置の仮想マシン部との間でそれぞれ設けられる通信路のことである。すなわち、出力インタフェースとして「Tunnel0」、「Tunnel1」と指定されていることは、データ通信パケットを処理する新設処理装置の仮想マシン部が特定されているということを意味する。
振り分け先判定部141A,141Bにて振り分け先が判定されたデータ通信パケットは、判定結果に応じてトンネル構成部15のカプセル化部151A〜151Dへ送られる。
処理分散装置10のトンネル構成部15は、データ通信パケットの振り分け先に応じてカプセル化を行う複数のカプセル化部151A〜151Dと、カプセル化されて送信されたデータ通信パケットからデータ通信パケットを取り出す複数のデカプセル化部152A〜152Dと、を備える。処理分散装置10では、新設処理装置の仮想マシン部との間でデータ通信パケットの送受信を行う際にカプセル化を行う。カプセル化後のパケットの送受信は、新設処理装置の仮想マシン部との間で個別に設けられた通信路(トンネル)を介した通信とすることができる。トンネル構成部15では、この通信路を介したデータの送受信を実現するための処理を行う。
複数のカプセル化部151A〜151Dは、それぞれ互いに異なる振り分け先へデータ通信パケットを振り分けるためのカプセル化に係る処理を行う。また、デカプセル化部152A〜152Dは、カプセル化部151A〜151Dとそれぞれ一対となるように設けられていて、カプセル化部151Aによってカプセル化されたパケットを送信するトンネルを介して相手方の新設処理装置の仮想マシン部より送信されたパケットから、埋め込まれたデータ通信パケットを取り出す処理を行う。
このように、トンネル構成部15は、新設処理装置の仮想マシン部との間に設けられる通信路の終端として機能し、通信路を介したデータ送信を行うためのカプセル化及び通信路を介して送信されたデータを利用するためのデカプセル化を行う。
分散制御部16は、構成管理部161を有し、制御装置40との間で制御通信パケットを送受信して、通信部11の転送表、カプセル化部振り分け部14の判定表、及び、トンネル構成部15内の機能部構成を制御する機能を有する。構成管理部161では、例えば図9に示すような表を保持している。具体的には、特定のタスクを実行することができる新設処理装置の仮想マシン部を特定する情報と、当該仮想マシン部との間に設けられるトンネルを特定する情報と、が対応付けられている。このように、仮想マシン部に対応してそれぞれ通信路が設定され、当該通信路に対応して、トンネル構成部15内にカプセル化部及びデカプセル化部が設けられることで、当該仮想マシン部との間でデータ通信パケットの送受信が可能となる。なお、構成管理部161で管理する情報は、制御装置40からの指示によって更新される。そして、構成管理部161が更新されると、それに対応してトンネル構成部15内のカプセル化部及びデカプセル化部の構成等が変更される。
次に、新設処理装置30の各機能部について、図10を参照しながら詳細を説明する。
新設処理装置30の仮想スイッチ部31は、通信部311とトンネル構成部312とを備えている。このうち、通信部311は、データ通信パケット受信部331A及びデータ通信パケット送信部331Bを備えるインタフェース331(interface)と、転送先判定部332と、転送先判定部332において転送先を判定する際に用いられる転送表を格納する転送表DB333と、備える。
通信部311のインタフェース331は、データ通信パケットの入出力を行う。図10に示す新設処理装置30では、インタフェース331には、「eth0」という識別子が振られている。
転送先判定部332は、インタフェース331のデータ通信パケット受信部331A又はトンネル構成部312から送信された情報を、転送表DB333で保持される転送表に基づいて所定の装置又は機能部へ送信する機能を有する。
転送表DB333では、図7に示す処理分散装置における転送表と同様に、転送先判定部332に送られるデータ通信パケットの宛先アドレスに応じて出力するインタフェースが指定された転送表を保持している。
新設処理装置30の仮想スイッチ部31のトンネル構成部312は、処理分散装置10のトンネル構成部15と同様にカプセル化部341A,341Bとデカプセル化部342A,342Bとを備えている。これらのカプセル化部341A,341B及びデカプセル化部342A,342Bは、トンネル構成部15のカプセル化部及びデカプセル化部と対応していて、通信路を介してデータ通信パケットを送信するためのカプセル化及び受信したカプセル化パケットからのデータ通信パケットの取り出すデカプセル化を行う機能を有する。
新設処理装置30では、2つの仮想マシン部32A,32Bが設けられている。仮想マシン部32A,32Bでは、それぞれ、データ通信パケット受信部351A、データ通信パケット送信部351Bを含んで構成されるインタフェース351と、データ通信パケット受信部351Aで受信したパケットに関して以降の処理を実行してよいかの受信判定部352とを含む内部通信部321A,321Bと、受信したデータ通信パケットに係る処理を実行する処理部322A,322Bと、を備える。
仮想化制御部36は、構成管理部361を有し、制御装置40との間で制御通信パケットを送受信して、通信部11の転送表、仮想マシン部の増設等の制御、及び、トンネル構成部15内の機能部構成の制御等を行う機能を有する。構成管理部361では、例えば図11に示すような表を保持している。具体的には、仮想マシン部を特定する情報と、仮想マシン部の内部通信部321におけるインタフェースを特定する情報と、当該仮想マシン部と処理分散装置との間に設けられるトンネルを特定する情報と、が対応付けられている。構成管理部361で管理する情報は、制御装置40からの指示によって更新される。また、制御装置40からの指示に応じて新設処理装置30内の仮想マシン部の構成を変更する等の制御を行う。
次に、上記の通信システムにおける各処理について説明する。まず、図12を参照しながら、新設処理装置において仮想マシンを増設した際の、データ通信パケットの振り分け先の更新に係る処理を説明する。
まず、操作者(例えば、通信システム1の管理者等)が、制御装置40に対して、仮想マシンを増設する新設処理装置を指定した上で、仮想マシンの増設を要求する(S101)。制御装置40は、指定された新設処理装置30Aの仮想化制御部36に対して、仮想マシン部の生成を要求する(S102)。仮想化制御部36では、制御装置40からの指示に基づき、仮想マシンの生成に係る処理を行うことで、仮想マシン部32Cが新たに生成される(S103)。
次に、制御装置40は、新設処理装置30Aの仮想化制御部36と、新設処理装置30Aと接続する処理分散装置10Aとに対して、仮想マシン部の増設に伴うトンネルの生成要求を送信する(S104)。新設処理装置30Aの仮想化制御部36及び処理分散装置10Aの分散制御部16では、制御装置40からの指示に基づいて、それぞれカプセル化部及びデカプセル化部を生成する(S105)。その後、新設処理装置30Aのトンネル構成部312と、処理分散装置10のトンネル構成部15との間でトンネルの通信路を確立する(S106)。また、新設処理装置30Aでは、トンネル構成部312と増設した仮想マシン部32Cの内部通信部321Cとの間で、トンネルの接続を確立される(S107)。これにより、処理分散装置10Aから仮想マシン部32Cまでの通信路が確立される。
次に、制御装置40から処理分散装置10Aに対して、増設された仮想マシン部32Cにおいて実行させる処理(タスク)を通知すると共に、仮想マシン部32Cを考慮したカプセル化部振り分け部14の設定変更を要求する(S108)。処理分散装置10Aの分散制御部16では、制御装置40からの指示に応じてカプセル化部振り分け部14における設定の変更に係る処理を実施する(S109)。
その後、カプセル化部振り分け部14では、仮想マシン部32Cにおいて実行する処理(タスク)が新規のものである場合には、振り分け先判定部を作成(S110)した上で、判定表DB142に格納される判定表を新たに作成する(S111)。その後、カプセル化部振り分け部14とトンネル構成部15との接続を確立する(S112)ことで、増設された仮想マシン部32Cに対応した一連の変更処理が完了する。なお、仮想化制御部36の構成管理部361及び分散制御部16の構成管理部161にて管理される情報は、制御装置40からの指示に応じて適宜更新される。このように、通信システム1においては、仮想マシン部の構成変更に対して処理分散装置10の設定等も動的に変更することができるという特徴を有する。
次に、既設処理装置から分散して処理を行うデータ通信パケットが送信された場合の一連の処理について説明する。まず、処理分散装置10Aがデータ通信パケットを受信して、配下の新設処理装置30Aの仮想マシン部32Aに振り分ける場合について、図13を参照しながら説明する。
図13に示すように、既設処理装置21からデータ通信パケットが送信される(S201)。このときのデータ通信パケットは、図14(A)に示すように、送信元アドレスとして既設処理装置21が記載されていて、宛先アドレスとして処理するタスクに応じた宛先アドレス(ここでは、タスクA用アドレス)が記載されている。既設処理装置21から送信されたデータ通信パケットは、中継網N1において送信先に応じて転送処理が行われて(S202)、処理分散装置10Aの通信部11に送信される(S203)。通信部11では、受信したデータ通信パケットに関して、転送表を用いて転送先の判定が行われた後に、カプセル化部振り分け部14へ送られ、振り分け先判定部141において判定表に基づいて振り分け先の判定が行われる(S204)。ここでは、データ通信パケットが新設処理装置30Aの仮想マシン部32Aへ振り分けられると判定され、トンネル構成部15のうち仮想マシン部32Aとの間に設けられた通信路(トンネル)に対応したカプセル化部151へ送られる(S205)。
カプセル化部151では、タスクに係るデータ通信パケットを送信元アドレスと宛先アドレスとを変更したパケットに埋め込むカプセル化が行われる(S206)。カプセル化後のパケットは、図14(B)に示すように、送信元アドレスとして処理分散装置10Aのアドレスと、宛先アドレスとして新設処理装置30Aのアドレスと、通信路を特定する情報としてのトンネルヘッダとが付与されたパケットとなる。このようにカプセル化されたパケットは、通信部11に戻される(S207)。通信部11では、カプセル化後のパケットの宛先アドレスを参照して、新設処理装置30Aに対して転送する(S208)。
新設処理装置30Aの仮想スイッチ部31内の通信部311においてカプセル化後のパケットを受信すると、転送先判定部332にて転送先を判定した(S209)後に、トンネル構成部312の処理分散装置10Aに対応したデカプセル化部341へ送られ、デカプセル化部341においてデカプセル化処理を行う(S210)。これにより、図14(A)に示すデータ通信パケットがカプセル化されたパケットから取り出される。
デカプセル化されたデータ通信パケットは、仮想マシン部32Aの内部通信部321Aに設けられた受信判定部352において受信判定処理が行われた(S211)後に、処理部322Aにおいてデータ通信の処理が実行される(S212)。
このように、既設処理装置21から送信されてカプセル化処理が実行されるまでの期間T1(S201〜S206)及びデカプセル化後の期間T3(S210〜S212)は、図14(A)に示すデータ通信パケットの状態で送受信が行われ、カプセル化されている期間T2(S206〜S210)は、図14(B)に示すように、送信元アドレス、宛先アドレス及びトンネルヘッダが新たに設定されたカプセル化されたパケットとして情報の送受信が行われる。
これは、新設処理装置30Aにおいてデータ通信に係る処理が行われた後に既設処理装置21に対して処理済みデータを送信する場合も同様である。
図15に示すように、処理後のデータ通信パケットは、処理部322Aから内部通信部321Aへ送信され(S301)、さらにトンネル構成部312のカプセル化部へ送信される(S302)。このときは、図16(A)に示すように、送信元アドレスがタスクA用アドレスであって、宛先アドレスが既設処理装置21となるように設定される。トンネル構成部312のカプセル化部341Aでは、タスクに係るデータ通信パケットを送信元アドレスと宛先アドレスとを変更したパケットに埋め込むカプセル化が行われる(S303)。カプセル化後のパケットは、図16(B)に示すように、送信元アドレスとして新設処理装置30Aのアドレスと、宛先アドレスとして処理分散装置10Aのアドレスと、通信路を特定する情報としてのトンネルヘッダとが付与されたパケットとなる。
このようなカプセル化されたパケットは、新設処理装置30Aの通信部311を経て処理分散装置10Aの通信部11へ送信され(S304)、通信部11から処理分散装置10Aのトンネル構成部15におけるデカプセル化部へ送られて(S305)、デカプセル化が行われる(S306)。これにより、カプセル化されたパケットから処理後のデータ通信パケット、すなわち、図16(A)に示すパケットが取り出され、当該データ通信パケットに記載された宛先アドレスによって特定される既設処理装置21に対して、通信部11、中継網N1を経て送信される(S307、S308)。これにより、既設処理装置21は、処理後のデータ通信パケットを受信することができる。
このように、新設処理装置30Aにおいてカプセル化処理が実行されるまでの期間T4(S301〜S303)及びデカプセル化後の期間T6(S306〜S308)は、図16(A)に示すデータ通信パケットの状態で送受信が行われ、カプセル化されている期間T5(S303〜S306)は、図16(B)に示すように、送信元アドレス、宛先アドレス及びトンネルヘッダが新たに設定されたカプセル化されたパケットとして情報の送受信が行われる。
なお、図13及び図15では、処理分散装置10Aの配下の新設処理装置30Aに対してデータ通信パケットを割り振る場合について説明した。なお、処理分散装置10Aから、他の処理分散装置10Bの配下の新設処理装置30Bに対してデータ通信パケットを割り振る場合も同様の処理で行うことができる。
具体的には、図17に示すように、既設処理装置21からデータ通信パケットが送信される(S401)。このときのデータ通信パケットは、図14(A)に示すものである。既設処理装置21から送信されたデータ通信パケットは、中継網N1において送信先に応じて転送処理が行われて(S402)、処理分散装置10Aの通信部11に送信される(S403)。通信部11では、受信したデータ通信パケットに関して、転送表を用いて転送先の判定が行われた後に、カプセル化部振り分け部14へ送られ、振り分け先判定部141において判定表に基づいて振り分け先の判定が行われる(S404)。ここでは、データ通信パケットが新設処理装置30Bの仮想マシン部へ振り分けられると判定され、トンネル構成部15のうち新設処理装置30Bの仮想マシン部との間に設けられた通信路(トンネル)に対応したカプセル化部151へ送られる(S405)。
カプセル化部151では、タスクに係るデータ通信パケットを送信元アドレスと宛先アドレスとを変更したパケットに埋め込むカプセル化が行われる(S406)。カプセル化後のパケットは、図18に示すように、送信元アドレスとして処理分散装置10Aのアドレスと、宛先アドレスとして新設処理装置30Bのアドレスと、通信路を特定する情報としてのトンネルヘッダとが付与されたパケットとなる。このようにカプセル化されたパケットは、通信部11に戻される(S407)。通信部11では、カプセル化後のパケットの宛先アドレスを参照して、新設処理装置30Bに対して転送するために中継網N1へ向けて送信する(S408)。
中継網N1は、カプセル化後のパケットの宛先アドレスを参照して、配下に新設処理装置30Bが設けられている処理分散装置10Bへ転送する(S409)。さらに、処理分散装置10Bにおいてもカプセル化後のパケットの宛先アドレスを参照して、新設処理装置30Bへ転送する(S410)。これにより、カプセル化後のパケットは、中継網N1を経て新設処理装置30Bへ送られる。
新設処理装置30Bでは、新設処理装置30Aと同様に処理が行われる。すなわち、新設処理装置30Bの仮想スイッチ部31内の通信部311においてカプセル化後のパケットを受信すると、転送先判定部332にて転送先を判定した(S411)後に、トンネル構成部312の処理分散装置10Aに対応したデカプセル化部341へ送られ、デカプセル化部341においてデカプセル化処理を行う(S412)。これにより、図14(A)に示すデータ通信パケットがカプセル化されたパケットから取り出される。
デカプセル化されたデータ通信パケットは、新設処理装置30Bにおける仮想マシン部32の内部通信部321Aに設けられた受信判定部352において受信判定処理が行われた(S413)後に、処理部322Aにおいてデータ通信の処理が実行される(S414)。
このように、既設処理装置21から送信されてカプセル化処理が実行されるまでの期間T7(S401〜S406)及びデカプセル化後の期間T9(S412〜S414)は、図14(A)に示すデータ通信パケットの状態で送受信が行われ、カプセル化されている期間T8(S406〜S412)は、図8に示すように、送信元アドレス、宛先アドレス及びトンネルヘッダが新たに設定されたカプセル化されたパケットとして情報の送受信が行われる。
また、新設処理装置30Bにおいてデータ通信に係る処理が行われた後に既設処理装置21に対して処理済みデータを送信する場合も、新設処理装置30Aからの送信の場合と同様の処理が行われる。
具体的には、図19に示すように、処理後のデータ通信パケットは、新設処理装置30Bの処理部322Aから内部通信部321Aへ送信され(S501)、さらにトンネル構成部312のカプセル化部へ送信される(S502)。このときは、図16(A)に示すように、送信元アドレスがタスクA用アドレスであって、宛先アドレスが既設処理装置21となるように設定される。新設処理装置30Bのトンネル構成部312のカプセル化部341Aでは、タスクに係るデータ通信パケットを送信元アドレスと宛先アドレスとを変更したパケットに埋め込むカプセル化が行われる(S503)。カプセル化後のパケットは、図20に示すように、送信元アドレスとして新設処理装置30Bのアドレスと、宛先アドレスとして処理分散装置10Aのアドレスと、通信路を特定する情報としてのトンネルヘッダとが付与されたパケットとなる。
このようなカプセル化されたパケットは、新設処理装置30Aの通信部311から、処理分散装置B、中継網N1を経て(S504、S505)、処理分散装置10Aの通信部11へ送信される(S506)。その後、処理分散装置10Aの通信部11からトンネル構成部15におけるデカプセル化部へ送られて(S507)、デカプセル化が行われる(S508)。これにより、カプセル化されたパケットから処理後のデータ通信パケット、すなわち、図16(A)に示すパケットが取り出され、当該データ通信パケットに記載された宛先アドレスによって特定される既設処理装置21に対して、通信部11、中継網N1を経て送信される(S509、S510)。これにより、既設処理装置21は、処理後のデータ通信パケットを受信することができる。
このように、新設処理装置30Bにおいてカプセル化処理が実行されるまでの期間T10(S501〜S503)及びデカプセル化後の期間T12(S508〜S510)は、図16(A)に示すデータ通信パケットの状態で送受信が行われ、カプセル化されている期間T11(S503〜S508)は、図20に示すように、送信元アドレス、宛先アドレス及びトンネルヘッダが新たに設定されたカプセル化されたパケットとして情報の送受信が行われる。
このように、本実施形態に係る通信システムでは、既設処理装置21からのデータ通信パケットが処理分散装置10Aにおいてカプセル化された後に新設処理装置30A,30Bへ送信され、かつ、新設処理装置30A,30Bがカプセル化データを受信して、当該カプセル化データに含まれるタスクを実行する1以上の仮想マシン部と、仮想マシン部の増設又は減設を実行する仮想スイッチ部と、によって構成される構成とすることで、仮に新設処理装置30Bのように、振り分け先の装置が処理分散装置10Aではなく処理分散装置10Bの配下であって、中継網N1を介して接続する場合であり、かつ、同じ処理分散装置の配下に同じアドレスが割り当てられた処理部を持つ処理装置が複数ある場合であっても、カプセル化部によって新設処理装置30Bを宛先アドレスとしたパケットにデータ通信パケット(タスクに係るパケットデータ)をカプセル化することで、カプセル化後のパケット(カプセル化データ)を新設処理装置30Bの対象の仮想マシン部32に対して好適に送信することができる。したがって、データ通信における処理の分散をより好適に行うことができる。
また、通信システム1では、新設処理装置30A,30Bが仮想スイッチ部と仮想マシン部とによって構成され、仮想マシン部の構成が適宜変更される場合がある。このとき、仮想マシン部の構成の変更に応じて、処理分散装置10Aのカプセル化部振り分け部14内の判定表DB142A,142Bで保持する判定表を更新する構成とすることで、仮想マシン部の構成の変更に応じて振り分け先を決定するための判定表を動的に更新することができることから、データ通信における処理の分散をより好適に行うことができる。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る通信システムについて、説明する。第2実施形態に係る通信システムは、第1実施形態に係る通信システムと比較して、タスクに係る処理を行う新設処理装置が仮想マシン部によって構成されていない点、及び、タスク処理に係る一連のフローを識別するための識別子の挿入することができる点が、相違する。
第1実施形態に係る通信システムでは、タスクの実行を指示する既設処理装置21が送信元アドレスとして示されているため、処理後のデータを既設処理装置21に対して確実に返送することができる。しかしながら、例えば、図1の新設処理装置30Cのように、別のタスクを処理する処理装置から、処理分散装置10Aに対してタスクの実行を要求する場合には、送信元のアドレスとして新設処理装置30Cの上位の処理分散装置10Cが処理するタスク(例えばタスクC)用のアドレスが記載される場合がある。この場合、処理分散装置10Cの配下のどの新設処理装置30Cからの指示なのかを判断することが困難となり、送信元の装置に対して処理後のデータを好適に返送することができない場合がある。第2実施形態に係る通信システムでは、データ通信パケットの送信によるタスク処理の要求から処理後のデータの返送までの一連の処理を一つのフローとして、フローを識別する識別子を付与することを特徴とする。一方で、既設処理装置21のようにフローの識別子が不要な装置との情報の送受信の場合には、フローの識別子を除去することも可能とする。処理分散装置及び新設処理装置のどちらでフローの識別子の付与に係る処理を行うかによって各装置の装置構成が変わるので、以下2つの例について説明する。
(第2実施形態−1)
図21は、第2実施形態の第1例に係る処理分散装置10’について説明する図である。第2実施形態に係る通信システムにおいて、新設処理装置30’は仮想スイッチを備えた仮想マシン部により構成されるものではないので、処理分散装置10’では、新設処理装置における仮想マシン部の増設/減設に応じて構成を管理する分散制御部を備えていない。
一方、トンネル構成部15に含まれるカプセル化部の内の1つのカプセル化部151Eが、フロー情報除去判定部171とフロー情報除去部172とを備える構成となっている。フロー情報除去判定部171は更に、フロー情報除去設定記憶域173を備える。また、カプセル化部151Eに対応するデカプセル化部152Eは、フロー情報挿入判定部181とフロー情報挿入部182とフロー情報挿入設定記憶域183とを備える。
フロー情報除去設定記憶域173及びフロー情報挿入設定記憶域183では、フローを特定する識別子の除去又は挿入が必要な装置の情報等を保持するものであり、フロー情報除去判定部171、フロー情報挿入判定部181は、記憶域の情報に基づいてフロー情報の除去又は挿入に係る判断(処理の要否に係る判断及びどの識別子を付与するかの判断)を行い、その結果に基づいて、フロー情報除去部172、フロー情報挿入部182において適宜処理が実行される。フローを特定する識別子の除去又は挿入が必要な装置としては、例えば本実施形態における新設処理装置のように、処理装置の上位に処理分散装置が設けられている装置が挙げられる。これに対して、フローを特定する識別子の除去又は挿入が不要な装置としては、例えば既設処理装置が挙げられる。なお、フローを特定する識別子の除去又は挿入については、処理装置に関わらず全て実施する設定とし、除去又は挿入する識別子に係る情報をフロー情報除去設定記憶域173又はフロー情報挿入設定記憶域183から取得する構成としてもよい。
図22は、カプセル化部振り分け部14において格納される判定表の例である。第1実施形態では、カプセル化部振り分け部14での振り分けの判定には、送信元アドレスのみを用いていたが、本実施形態では、送信元アドレスに加えてフローを特定する情報を用いて振り分け先を判定する。このように、フロー情報は、フローを特定するための情報として用いる他に、処理を分散するための振り分けの判定条件として用いてもよい。
図23は、新設処理装置30’の構成を説明する図である。新設処理装置30A’では、内部通信部321及び処理部322が仮想マシン部に含まれておらず、仮想マシン部の構成を管理する仮想化制御部36を備えていない点が相違する。新設処理装置30A’において行われる処理は、第1実施形態における新設処理装置30Aと同様である。
ここで、図24を参照しながら、新設処理装置30A’から、処理分散装置10A’及び処理分散装置10C’を経て、新設処理装置30C’に対してデータ通信パケットを送信する場合について説明する。ここでは、新設処理装置30A’がタスクの送信者(端末装置)となる。
まず、既設処理装置21がデータ通信パケットを送信する場合と同様に、新設処理装置30A’の処理部322がデータ通信パケットを送信する(S601)。処理部322から送信されるデータ通信パケットは、図25(A)に示すように、送信元アドレスがタスクA用のアドレスであって、宛先アドレスがタスクC用のアドレスである。すなわち、送信側も受信側も処理装置を特定する情報がアドレスに含まれていない。このデータ通信パケットは、内部通信部321を経てカプセル化部341においてカプセル化された(S602)後に、処理分散装置10A’へ送られる(S603)。カプセル化後のデータ通信パケットでは、図25(B)に示すように、送信元アドレスが新設処理装置30A’とされ、宛先アドレスが処理分散装置10A’とされる。その後、処理分散装置10A’のデカプセル化部152においてデカプセル化が行われる(S604)。また、デカプセル化部152においてフロー情報の挿入判定条件に基づいてフロー情報の挿入が決定された場合には、フロー情報の挿入が行われる(S605)。フロー情報を挿入するか否かの判断は、例えば、送信元アドレスと宛先アドレスとが特定の組み合わせの場合には、フロー識別子として「フロー1」を挿入する、等の予め決められた基準に基づいて行われる。この結果、図25(C)に示すようにフロー識別子が付与されたデータ通信パケットが作成される。
その後、処理分散装置10A’から処理分散装置10C’へ向けて中継網N1を介してデータ通信パケットが送信される(S606)。処理分散装置10C’のカプセル化部振り分け部14では、フロー識別子も参照して振り分け先が決定され(S607)、カプセル化部151においてカプセル化が実行される(S608)。このとき、フロー識別子が付与されている場合には、フロー識別子が除去されて(S609)、図25(D)に示すようなカプセル化後のパケットが作成される。その後、カプセル化後のパケットの宛先アドレスに基づいて、処理分散装置10C’から新設処理装置30C’に対してカプセル化後のパケットが送信される(S610)。そして、新設処理装置30C’では、デカプセル化を行った後に(S611)、処理部322においてタスクに係る処理が実行される(S612)。
このような構成とした場合、期間T21(S601〜S602)と期間T25(S611〜S612)、すなわち、新設処理装置内では、図25(A)に示すデータ通信パケットが用いられる。また、期間T22(S602〜S604)では、図25(B)に示すカプセル化されたパケットが用いられ、期間T24(S609〜S611)では、図25(D)に示すカプセル化されたパケットが用いられる。また、期間T23(S605〜S608)では、従来の構成ではフロー情報が付与されないパケットが用いられるが、本実施形態では、図25(C)に示すようにフロー情報を含むパケットが用いられる。このように、期間T23においてフローを識別する情報を付与したパケットを用いて情報を送受信することで、送信元の装置が特定する情報が含まれていない場合であっても、フロー情報を付与することでこれを用いてカプセル化部振り分け部において振り分け判定を行うことができる。すなわち、処理の分散を好適に行うことができる。
(第2実施形態−2)
図26は、第2実施形態の第2例に係る処理分散装置10”について説明する図であり、図27は、第2実施形態の第2例に係る新設処理装置30”について説明する図である。第2実施形態に係る通信システムにおいて、新設処理装置30”は仮想スイッチを備えた仮想マシン部により構成されるものではないので、処理分散装置10”では、新設処理装置における仮想マシン部の増設/減設に応じて構成を管理する分散制御部を備えていない。
また、第2例では、新設処理装置30”側でフロー情報の付与及び除去を実行する構成とされている。すなわち、新設処理装置30”のカプセル化部341がフロー情報挿入判定部371とフロー情報挿入部372とフロー情報挿入設定記憶域373とを備える構成となっている。また、新設処理装置30”のデカプセル化部342がフロー情報除去判定部391とフロー情報除去部392とフロー情報除去設定記憶域393とを備える構成となっている。
ここで、図28を参照しながら、新設処理装置30A”から、処理分散装置10A”及び処理分散装置10C”を経て、新設処理装置30C”に対してデータ通信パケットを送信する場合について説明する。ここでは、新設処理装置30A”がタスクの送信者となる。
まず、既設処理装置21がデータ通信パケットを送信する場合と同様に、新設処理装置30A”の処理部322がデータ通信パケットを送信する(S701)。処理部322から送信されるデータ通信パケットは、図25(A)に示すように、送信元アドレスがタスクA用のアドレスであって、宛先アドレスがタスクC用のアドレスである。すなわち、送信側も受信側も処理装置を特定する情報がアドレスに含まれていない。このデータ通信パケットは、内部通信部321を経てカプセル化部341においてカプセル化される(S703)前にフロー情報挿入の要否が判定されて、フロー情報が挿入される(S702)。すなわち、図29(A)に示すように、フロー情報が挿入されたデータ通信パケットがカプセル化されたカプセル化データが得られる。このカプセル化されたパケットは、処理分散装置10A”へ送られる(S704)。その後、処理分散装置10A”のデカプセル化部152においてデカプセル化が行われる(S705)。デカプセル化後のデータ通信パケットは、図25(C)に示すようにフロー識別子が付与されたものである。
その後、処理分散装置10A”から処理分散装置10C”へ向けて中継網N1を介してデータ通信パケットが送信される(S706)。処理分散装置10C”のカプセル化部振り分け部14では、フロー識別子も参照して振り分け先が決定され(S707)、カプセル化部151においてカプセル化が実行される(S708)。このときも、第2例ではフロー識別子が付与されたままカプセル化が行われる。すなわち、図29(B)に示すように、フロー情報が挿入されたデータ通信パケットがカプセル化されたカプセル化データが得られる。その後、カプセル化後のパケットの宛先アドレスに基づいて、処理分散装置10C”から新設処理装置30C”に対してカプセル化後のパケットが送信される(S709)。そして、新設処理装置30C’では、デカプセル化を行う(S710)と共にフロー情報の除去が行われる(S711)、その後、処理部322においてタスクに係る処理が実行される(S712)。
このような構成とした場合、期間T31(S701)及び期間T35(S711〜S712)は、図25(A)に示すデータ通信パケットが用いられる。また、期間T32(S702〜S705)では、図29(A)に示すカプセル化されたパケットが用いられ、期間T34(S708〜S710)では、図29(B)に示すカプセル化されたパケットが用いられる。また、期間T33(S705〜S708)では、従来の構成ではフロー情報が付与されないパケットが用いられるが、本実施形態では、図25(C)に示すようにフロー情報を含むパケットが用いられる。このように、期間T33においてフローを識別する情報を付与したパケットを用いて情報を送受信することで、送信元の装置が特定する情報が含まれていない場合であっても、フロー情報を付与することでこれを用いてカプセル化部振り分け部において振り分け判定を行うことができる。すなわち、処理の分散を好適に行うことができる。
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係る通信システムについて、説明する。第3実施形態に係る通信システムは、第1実施形態に係る通信システムと比較して、タスクに係る処理を行う新設処理装置が仮想マシン部によって構成されていない点、及び、処理分散の振り分け先判定を新設処理装置自体が行うこと点が、相違する。
第1実施形態に係る通信システムでは、1つのタスクの処理は1つの処理分散装置10(例えば処理分散装置10A)において行われていた。しかしながら、この場合には、処理分散装置10に負荷が集中する可能性がある。第3実施形態に係る通信システムでは、第2実施形態でも用いたフローを識別する識別子を用いて、振り分け先を指定したカプセル化を行うことを特徴とする。
第3実施形態に係る通信システムでは、図30に示すように新設処理装置30'''内にインタフェース振り分け部38(事前振り分け先判定部)をさらに備える。このインタフェース振り分け部38は、図31に示すように、判定表DB382に格納された判定表に基づいて、振り分け先判定部381において振り分け先を決定する機能を有する。判定表DB382では、図32に示すような判定表を保持している。これは、新設処理装置30'''において振り分け先を判定する判定条件として、データ通信パケットの入力インタフェースを用いている例を示している。入力インタフェースに応じて出力先の内部通信部321のインタフェースを指定する構成とすることで、内部通信部321のインタフェース毎に互いに異なるカプセル化部(図31では、カプセル化部341Aとカプセル化部341E)にパケットが送信されて、宛先アドレスが異なったカプセル化データが生成される。
このような新設処理装置30'''を用いた構成の場合の処理の例を以下説明する。図33では、処理後のデータ通信パケットを既設処理装置21へ返送する例を示す。まず、新設処理装置30A'''の処理部322からインタフェース振り分け部38に送信されて振り分け先が判定され(S801)、内部通信部321へ送信された後に(S802)、内部通信部321と対のカプセル化部341においてカプセル化が行われる(S803)。カプセル化前のデータ通信パケットは、図16(A)に示すように、送信元アドレスがタスクA用アドレスであって、宛先アドレスが既設処理装置21となるように設定される。また、カプセル後のパケットは、図16(B)に示すように、送信元アドレスとして新設処理装置30Aのアドレスと、宛先アドレスとして処理分散装置10Aのアドレスと、通信路を特定する情報としてのトンネルヘッダとが付与されたパケットとなる。
このようなカプセル化されたパケットは、新設処理装置30Aの通信部311を経て処理分散装置10Aの通信部11へ送信され(S804)、通信部11から処理分散装置10Aのトンネル構成部15におけるデカプセル化部へ送られて(S805)、デカプセル化が行われる(S806)。これにより、カプセル化されたパケットから処理後のデータ通信パケット、すなわち、図16(A)に示すパケットが取り出され、当該データ通信パケットに記載された宛先アドレスによって特定される既設処理装置21に対して、通信部11、中継網N1を経て送信される(S807、S808)。これにより、既設処理装置21は、処理後のデータ通信パケットを受信することができる。
このように、新設処理装置30Aにおいてカプセル化処理が実行されるまでの期間T41(S801〜S803)及びデカプセル化後の期間T43(S806〜S808)は、図16(A)に示すデータ通信パケットの状態で送受信が行われ、カプセル化されている期間T42(S803〜S806)は、図16(B)に示すように、送信元アドレス、宛先アドレス及びトンネルヘッダが新たに設定されたカプセル化されたパケットとして情報の送受信が行われる。
上記の処理は、インタフェース振り分け部において振り分けられた上でカプセル化が行われる点を除き、第1実施形態と同様に行われる。なお、既設処理装置21から、処理前のデータ通信パケットを送信する際の処理の流れは、第1実施形態と同様である。
次に、新設処理装置30A'''がタスクに係るデータ通信パケットを送信する端末装置として機能して、新設処理装置30A'''からデータ通信パケットを送信する場合について図34を参照しながら説明する。まず、新設処理装置30A'''の処理部322からインタフェース振り分け部38に送信されて、インタフェース振り分け部38において振り分け先が判定され(S901)、内部通信部321へ送信された後に(S902)、内部通信部321と対のカプセル化部341(第2のカプセル化部)においてカプセル化が行われる(S903)。カプセル化前のデータ通信パケットは、図35(A)に示すように、送信元アドレスがタスクA用アドレスであって、宛先アドレスがタスクC用アドレスとなるように設定される。また、カプセル後のパケットは、図35(B)に示すように、送信元アドレスとして新設処理装置30A'''のアドレスと、宛先アドレスとして新設処理装置30C'''のアドレスと、通信路を特定する情報としてのトンネルヘッダとが付与されたものとなる。
このようにカプセル化されたパケット(第2のカプセル化データ)は、新設処理装置30A'''の通信部311(端末通信部に相当する)を経て処理分散装置10Aへ送信される(S904)が、宛先アドレスが処理分散装置10A,10Cではないので、処理分散装置10A,10Cでは、適宜転送処理される(S905、S906)。その結果、新設処理装置30C'''の通信部311へ送信され、通信部311からトンネル構成部312におけるデカプセル化部341へ送られて(S907)、デカプセル化が行われる(S908)。これにより、カプセル化されたパケットから処理後のデータ通信パケット、すなわち、図35(A)に示すパケットが取り出され、処理部322において処理が行われる(S909)。
このように、新設処理装置においてカプセル化処理が実行されるまでの期間T51(S901〜S903)及びデカプセル化後の期間T53(S908〜S909)は、図35(A)に示すデータ通信パケットの状態で送受信が行われ、カプセル化されている期間T52(S903〜S908)は、図35(B)に示すように、送信元アドレス、宛先アドレス及びトンネルヘッダが新たに設定されたカプセル化されたパケットとして情報の送受信が行われる。
次に、新設処理装置30C'''からデータ通信パケットを送信する場合について図36を参照しながら説明する。処理後のデータの送信も、処理前のデータ通信パケットの送信と同様に行われる。まず、次に、新設処理装置30C'''からデータ通信パケットを送信する場合、まず、新設処理装置30C'''の処理部322からインタフェース振り分け部38に送信されて振り分け先が判定され(S1001)、内部通信部321へ送信された後に(S1002)、内部通信部321と対のカプセル化部341においてカプセル化が行われる(S1003)。カプセル化前のデータ通信パケットは、図35(A)に示すように、送信元アドレスがタスクA用アドレスであって、宛先アドレスがタスクC用アドレスとなるように設定される。また、カプセル後のパケットは、図37(B)に示すように、送信元アドレスとして新設処理装置30C'''のアドレスと、宛先アドレスとして新設処理装置30A'''のアドレスと、通信路を特定する情報としてのトンネルヘッダとが付与されたパケットとなる。
このようなカプセル化されたパケットは、新設処理装置30C'''の通信部311を経て処理分散装置10Cへ送信されるが(S1004)、宛先アドレスが処理分散装置10C,10Aではないので、処理分散装置10C,10Aでは、適宜転送処理される(S1005、S1006)。その結果、新設処理装置30A'''の通信部311へ送信され、通信部311からトンネル構成部312におけるデカプセル化部341へ送られて(S1007)、デカプセル化が行われる(S1008)。これにより、カプセル化されたパケットから処理後のデータ通信パケット、すなわち、図37(A)に示すパケットが取り出される(S1009)。
このように、新設処理装置においてカプセル化処理が実行されるまでの期間T61(S1001〜S1003)及びデカプセル化後の期間T63(S1008〜S1009)は、図37(A)に示すデータ通信パケットの状態で送受信が行われ、カプセル化されている期間T62(S1003〜S1008)は、図37(B)に示すように、送信元アドレス、宛先アドレス及びトンネルヘッダが新たに設定されたカプセル化されたパケットとして情報の送受信が行われる。
以上のように、端末装置として機能する新設処理装置側で振り分け先を判定した上で第2のカプセル化部によりカプセル化を行って第2のカプセルデータを生成する構成とした場合、処理分散装置10A,10Cにおける負荷を減らすことができる。なお、処理分散装置10A,10Cは、カプセル化されていないデータ通信パケットを例えば既設処理装置21等から受信した場合には、第1実施形態等と同様に、カプセル化及びデカプセル化に係る処理を行うことにより、処理の分散を行うことができる。
以上、本発明の実施形態に係る通信システムについて説明したが、上述した実施形態は本発明の一例を示すものである。本発明に係る通信システムは、各実施形態に係る通信システムに限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で、各実施形態に係る通信システムを変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。例えば、上記第1〜第3実施形態で説明した構成を適宜組み合わせた通信システムとすることもできる。