本発明を好適な実施形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。
本発明の実施形態は、商用電源や太陽電池からの電力を負荷へ供給するとともに、その電力を蓄電池へ蓄え、蓄電池に蓄えられた電力を負荷に供給することのできる蓄電システムに関する。このような蓄電システムは、例えばオフィスや家庭内等に設置される。蓄電池に蓄えられた電力は、商用電源が停電したときに、照明や通信機器等の重要な機器を動作させるためのバックアップ電源として用いられる。蓄電池はさらに、一般に電気の使用量が大きくなる昼間の時間帯において放電することによって、昼間の商用電力における使用量の最大値を下げる、いわゆるピークシフトとしても用いられる。このような蓄電システムは、設置される場所の環境や季節によらずに、例えば、厳冬期に外気温が氷点下となる寒冷地においても安定して電力供給できることが望ましい。
一方、このような蓄電システムに用いられる蓄電池は、所定の使用推奨温度とされる範囲内で用いることが望ましく、その範囲外の温度で蓄電池を充放電すると、劣化が進んだり、本来の性能を発揮できなかったりする。そこで、寒冷地において蓄電システムを用いる場合、蓄電池が使用推奨温度となるよう加熱するなどして温度を上げる必要があり、商用電源の停電時などには、蓄電池に蓄えられた電力を用いてファンやヒータを動作させる必要がある。蓄電池に蓄えられている電力は、ファンやヒータを作動させるためではなく、本来負荷へ供給するためのものであるため、できるだけ少ない電力で蓄電池を所望の温度に調整できることが求められる。
そこで、本実施形態に係る蓄電システムは、蓄電池を温風で加熱するためのファンおよびヒータを好適に配置し、ファンおよびヒータを作動および停止させるタイミングを制御することにより、より少ない消費電力で蓄電池の温度調節を実現する。
図1は、実施形態に係る蓄電システム100の外観を示す正面図である。蓄電システム100は、外部筐体10を備える。外部筐体10の内部構造については、後述する。外部筐体10は、4つの側面、上面、下面を有する略直方体の箱型形状であり、鉄などを含む金属板で構成される。外部筐体10は、4つの側面のうち1つの面が正面扉14により構成され、上面が上面板22により構成され、下面が下面板23により構成される。正面扉14は、通気口16、スイッチ18、表示部20を備える。上面板22は、排気口24、排気ファン26を備える。
なお、蓄電システム100は、外部筐体10の上面の上に、傘板28と、支柱29とを備えていてもよい。傘板28は、板状の部材であり、外部筐体10から離れた位置において上面板22と平行に配置される。支柱29は、排気口24を塞がないように、上面板22上の端部付近に設けられており、傘板28を支持する。これにより、排気口24に風雨が直接当たることを防止できる。
正面扉14の通気口16は、正面扉14の下方に設けられる複数の矩形の小孔により構成される。通気口16を通じて外気が外部筐体10の内部に採り込まれる。スイッチ18は、蓄電システム100を動作させるための電源スイッチや、リセットスイッチなどにより構成される。表示部20は、蓄電システム100の動作状態を表示するものであり、例えば、液晶ディスプレイなどにより構成される。
上面板22の排気口24は、上面板22の一部領域に設けられた開口部である。正面扉14の通気口16を通じて外部筐体10の内部に採り込まれた空気は、排気口24から排出される。排気ファン26は、排気口24の近傍に配置されており、外部筐体10の内部に採り込まれた空気の排出を促すために動作する。
図2は、図1の蓄電システム100の内部構成を示す正面図であり、正面扉14を紙面右手側に開けた状態を示している。図3は、図1の蓄電システム100の内部構成を示す側面図であり、図1の蓄電システム100を矢印Aから見た状態を示している。以下の説明においては、図2の紙面手前側を前面又は正面、奥側を後面、右側を右側面、左側を左側面として説明する。なお、図3では、内部構成を示すため、外部筐体10として設けられる右側面板を外した状態を図示している。
外部筐体10は、蓄電池などを包含する内部筐体12を内部に備える。内部筐体12は、外部筐体10と同様に金属板などで構成されている。内部筐体12は、下段30、中段40、上段50の三つに分かれている。下段30と中段40との間は、第1仕切板41で仕切られている。中段40と上段50との間は、第2仕切板56で仕切られている。第2仕切板56には、開口部58が形成されている。
下段30は、前面板36と、左右の側面板37と、後面板38と、下面板23と、第1仕切板41とから構成される。下段30は、下段30を構成する各板によって筐体12の外側の領域と仕切られている。前面板36は、水平方向に並んで配置された3つの吸気口33を備える。前面板36の外壁には、吸気口33のそれぞれに対して吸気ファン32が設けられる。また、前面板36の内壁には、吸気口33のそれぞれに対してヒータ34が設けられる。なお、吸気口33および吸気ファン32の数は3つに限られず、2個以下であっても4個以上であってもよい。後面板38は、下端部が上端部よりも前面側に形成されている。すなわち、後面板38を図1の矢印の方向Aの方向から見た場合、右上がりに傾斜している。
吸気ファン32は、作動させることにより内部筐体12の内部に外気を取り込む。吸気ファン32を作動させた場合、図3の矢印X1で示すように、正面扉14の通気口16と、前面板36の吸気口33を通じて、下段30の内部に外気が採り込まれる。下段30の内部に採り込まれた外気は、図3の矢印X2で示すように、後面板38に当たるなどして上方の中段40へ流れていく。なお、下段30と中段40を仕切る第1仕切板41は、メッシュ状の部材や、小孔が多数設けられた金属部材などにより構成され、吸気口33から下段30の内部に採り込まれた空気は中段40へ自由に流入できる。
ヒータ34は、吸気ファン32が吸入した外気を加熱するためのヒータである。ヒータ34は、例えば、通電することにより加熱される電熱線などで構成される。ヒータ34は、吸気ファン32によって採り込まれる空気を効率よく加熱するため、内部筐体12の内側であって、吸気口33に隣接する位置に設けられる。このように配置することで、吸気口33を通り抜ける空気だけでなく、下段30の内部に滞留している空気を加熱することができるため、下段30の内部の空気を効率よく加熱することができる。なお、ヒータ34は、自身の温度を測定するための温度センサを備えていても良い。
なお、吸気ファン32は、下段30を仕切る前面板36、側面板37、後面板38のうち、その一面である前面板36に複数設けられる。前面板36に複数の吸気ファン32を設けることで、側面板37や、後面板38にも吸気ファンを設けた場合と比較して、温風を効率よく中段40に供給することができる。例えば、左右の側面板37の両方に吸気ファンを設けたとすると、左の側面板37に設けられた吸気ファンにより流入した空気は、その一部が右の側面板37に設けられる吸気口から外部に流出してしまい、ヒータにより加熱した空気の一部が蓄電池42の加熱に利用されないこととなる。
一方、吸気ファン32を前面板36にのみ設けた場合、左右の側面板37に吸気ファンを設けた場合と比較して、前面板36の吸気ファン32により吸入されヒータ34により加熱された空気が、同じ前面板36に設けられた吸気口33から流出してしまうことは少なくなる。また、前面板36に対向する後面板38を斜めに配置することで、吸気ファン32により吸入されヒータ34により加熱された空気は、後面板38に反射して中段40に供給される。したがって、複数の吸気ファン32を一つの面である前面板36に設けることで、複数のヒータ34により加熱した空気を効率よく蓄電池42の加熱に用いることができ、電力の消費量を節約することができる。
下段30は、ヒータ34の上方であって、第1仕切板41の下方に遮蔽部材39をさらに備えてもよい。遮蔽部材39は、排気口24を通じて内部筐体12の内部に入り込んだり、内部筐体12の上段50や中段40から落下してきたりする異物が加熱中のヒータ34に直接ふれてしまうことを防ぐための部材である。遮蔽部材39を設けることで、予期せず下段30に侵入した異物が加熱されてしまうことを防ぐことができる。
中段40は、前後左右の側面板と、第1仕切板41と、第2仕切板56とから構成されている。なお、中段40の前面は、開閉自在な前面板により構成されていてもよい。中段40には、蓄電池42が設けられる。蓄電池42は複数の蓄電池ユニット44により構成される。中段40を構成する各板により、内部筐体12の外側の領域と、蓄電池42が設けられる内側の領域とが仕切られる。図3の矢印X2、X3で示すように、下段30から流入した空気は、複数の蓄電池ユニット44の間を通り抜け、中段40と上段50との間の第2仕切板56に形成された開口部58を通って上段50へ抜けていく。なお、中段40の前面板を開閉自在にすることにより、夏場は前面を開放することができ、蓄電池42から効率良く放熱できる。
蓄電池42は、複数の蓄電池ユニット44により構成され、例えば、6個の蓄電池ユニット44が直列または並列接続されることにより蓄電池42を構成する。蓄電池ユニット44は、繰り返し充電して使用できる二次電池であり、例えば、単位セルと呼ばれるリチウムイオン二次電池が複数個直列および並列接続された一つの蓄電池モジュールとして構成される。例えば、蓄電池ユニット44は、並列に24個、直列に13個接続された、計312個の単位セルにより構成される。なお、蓄電池ユニット44は、その他の二次電池で構成されていてもよく、例えば、ニッケル水素電池や、ナトリウム硫黄電池、鉛蓄電池などを用いてもよい。
蓄電池ユニット44は、箱状の部材の内部に、複数の単位セルが含まれた構成である。蓄電池ユニット44の下面および上面部分は開口していてもよく、この場合、下段30から流入した空気は、蓄電池ユニット44内部の単位セルの間を通り抜け、上段50へと抜けていく。これにより、より効率良く蓄電池42を加熱又は冷却することができる。
蓄電池ユニット44は、図示しない複数の温度センサを備えており、蓄電池ユニット44を構成する単位セルの温度を計測することができる。例えば、蓄電池ユニット44は、蓄電池ユニット44の四隅の位置にあたる4箇所と、中央の位置にあたる1箇所の計5箇所に温度センサが設けられる。なお、蓄電池ユニット44が備える温度センサの数は、4個以下であってもよいし、6個以上設けられてもよい。複数の温度センサではなく、例えば蓄電池ユニット44の中央部に1個の温度センサが設けられていてもよい。
上段50は、前後左右の側面板と、第2仕切板56とから構成されている。上段50の上面は、開口されている。なお、上段50の上面は、上段50の空気が外部に排出される構成であればよく、メッシュ状の部材や、小孔が多数設けられた金属部材が設けられていてもよい。上段50には、制御基板52および双方向パワーコンディショナ54が設けられる。図3の矢印X3、X4に示すように、開口部58を通って上段50に流入した空気は、そのまま上方へ流れていき、外部筐体10の排気口24を通じて外へ排出される。なお、空気の排出を促すために排気口24に設けられる排気ファン26を動作させてもよい。
制御基板52は、排気ファン26、吸気ファン32、ヒータ34、蓄電池42と電気的に接続され、これらの動作を制御するための制御信号を送受信する。制御基板52は、例えば、コンピュータのCPUをはじめとする素子や機械装置で実現される。また、制御基板52は、後述する双方向パワーコンディショナ54と制御信号の送受信を行う。
双方向パワーコンディショナ54は、双方向インバータを備え、このインバータは直流電力と交流電力とを相互に変換する。双方向パワーコンディショナ54は、蓄電システム100に接続される商用電源から供給される交流電力を直流電力に変換し、蓄電池42に対して充電のための電力を供給する。また、蓄電池42が放電する直流電力を交流電力に変換し、停電時などに電力を供給させたい特定の負荷に交流電力を供給する。
以上の構成に基づく蓄電システム100について、その機能構成を説明する。
図4は、蓄電システム100の機能構成を模式的に示す図である。蓄電システム100は、前述した排気ファン26、吸気ファン32、ヒータ34、蓄電池42を備え、制御基板52の機能ブロックとして実現される制御部60を備える。また、蓄電システム100には、商用電源112、負荷114、太陽電池120が接続される。本明細書において、再生可能エネルギーの発電装置として太陽電池120を例に説明するが、再生可能エネルギーの発電装置は太陽電池に限られず、例えば風力発電装置であってもよく、またこれらが併存していてもよい。
商用電源112は、電力会社からの電力が供給される交流電源である。分電盤116は、双方向パワーコンディショナ54および商用電源112と接続され、商用電源112から交流電力を受け付け、双方向パワーコンディショナ54および負荷114に交流電力を供給する。太陽電池120は、光起電力効果を利用し、光エネルギーを直接電力に変換する発電装置である。太陽電池120として、シリコン太陽電池、化合物半導体などを素材にした太陽電池、色素増感型(有機太陽電池)等が使用される。
双方向パワーコンディショナ54は、直流側に蓄電池42および太陽電池120が接続され、交流側に、負荷114および分電盤116を介して商用電源112が接続される。双方向パワーコンディショナ54は、太陽電池120が発電する直流電力や蓄電池42が放電した直流電力を交流電力に変換し、負荷114に交流電力を供給する。また、商用電源112からの交流電力を直流電力に変換し、蓄電池42に直流電力を供給する。その際、双方向パワーコンディショナ54は、蓄電池42に対して充放電の開始および停止を指示してもよい。
蓄電池42は、双方向パワーコンディショナ54によって直流電力に変換された商用電源112からの電力や、太陽電池120が発電した電力を蓄える。また、蓄電池42は、蓄えた直流電力を双方向パワーコンディショナ54により交流電力に変換して負荷114に供給する。
排気ファン26、吸気ファン32およびヒータ34は、制御部60から送信される制御信号をもとに、動作を開始または停止する。なお、ヒータ34は、図示しない温度センサにより測定した自身の温度データを、制御部60からの要求に応じて制御部60に対し通知してもよい。
蓄電池42は、蓄電池42を構成する複数の蓄電池ユニット44に設けられる温度センサにより測定した温度データを、制御部60に定期的に送信する。例えば、その送信間隔は1秒ごとであり、1秒ごとに最新の温度データを制御部60に送信する。なお、蓄電池42は、制御部60からの送信要求に応じて最新の温度データを制御部60に送信してもよい。上述の通り、蓄電池ユニット44は、複数の温度センサを備えており、例えば、5箇所の温度センサを備える場合には、それぞれの温度センサが計測した温度データを制御部60に送信する。なお、5箇所の温度センサが計測した温度のうち、最大値と最小値を算出して制御部60に送信してもよい。
制御部60は、蓄電池42から取得した蓄電池42の温度データをもとに、排気ファン26、吸気ファン32、ヒータ34の動作を制御し、蓄電池42を加熱または冷却する。このとき、制御部60は、定期的に蓄電池42の温度データを取得し、制御部60の図示しないメモリに予め格納された蓄電池42の使用推奨温度と比較することで、蓄電池42の加熱または冷却が必要か否かを判断する。ここで、蓄電池42の加熱が必要と判断される使用推奨温度の下限となる閾値の値を、下限温度と記載し、蓄電池42の冷却が必要と判断される使用推奨温度の上限となる閾値の値を、上限温度と記載する。
制御部60は、複数の蓄電池ユニット44のそれぞれの温度データを取得し、その温度データの中での最大値と最小値を算出する。なお、以下の説明において、制御部が算出した最大値を蓄電池42の最高温度、最小値を蓄電池42の最低温度と記載する。
まず、外気温が低く、蓄電池42の温度が下限温度未満であるため、加熱が必要な状況における制御部60の動作について説明する。制御部60は、蓄電池42の最低温度が下限温度未満であった場合、蓄電池42の加熱が必要であると判断し、蓄電池42を加熱するためにヒータ34をオンにする。ここで、下限温度は例えば5℃と設定されるが、蓄電池42の特性などに応じてその他の値を設定してもよい。このとき、制御部60は、吸気ファン32の作動を開始させない。ヒータ34をオンにした直後は、まだヒータ34が暖まっていないため、この状態で吸気ファン32を作動させてしまうと、外から冷気が流入することにより内部筐体12の内部の気温が下がり、かえって逆効果となるおそれがあるためである。また、蓄電池42を加熱する際には排気ファン26は作動させない。排気ファン26を作動させてしまうと、吸気ファン32を作動させた場合と同様、外から冷気が流入してしまうためである。
制御部60は、ヒータ34をオンにした後、ヒータ34の温度が第1の閾値以上となった場合、吸気ファン32を作動させる。ここで、第1の閾値は、下段30の内部の空気を十分に暖めることのできるヒータ34の温度として設定され、具体的には、下段30の容量などに基づいて、実験等により最適値を求めることが望ましい。ヒータ34が第1の閾値以上となった後は、吸気ファン32を作動させることによりヒータ34により加熱された下段30の空気を、蓄電池42が備えられる中段40に送ることができる。なお、このとき排気ファン26は作動させない。排気ファン26を作動させてしまうと、加熱した空気が中段40から排出されてしまい、蓄電池42を効率的に加熱できないためである。
その後、蓄電池42の最低温度が下限温度をある程度上回った場合、制御部60は、蓄電池42の加熱を停止すべきと判断する。ここで、制御部60が加熱を停止すべきと判断する温度は、例えば下限温度より2℃高い温度であり、下限温度を5℃に設定した場合は、その基準となる温度は7℃である。このように下限温度に近い値を設定することで、蓄電池42の加熱に用いる電力の消費量を抑えることができる。
制御部60が加熱を停止すべきと判断した場合、制御部60は、ヒータ34をオフにする。このとき、制御部60は吸気ファン32の作動を停止させない。ヒータ34をオフにした直後はヒータ34の温度が高い状態にあるため、吸気ファン32を停止させてしまうと、局所的に空気が加熱され、場合によっては蓄電池42の一部が動作推奨温度以上となってしまうおそれがあるためである。また、ヒータ34の温度がある程度高い状態において吸気ファン32を作動させることで、引き続き蓄電池42に温風を供給することができる。
その後、ヒータ34の温度が第2の閾値以下となった場合、吸気ファン32を停止させる。ここで、第2の閾値は、吸気ファン32を停止させても下段30内部の空気が局所的に加熱される支障のない温度として設定され、具体的には、ヒータ34の特性などに応じて実験等により求めることが望ましい。
次に、外気温が高い場合や、蓄電システム100の作動時により熱が発生する場合に、蓄電池42の温度が上限温度を超えるため、冷却が必要な状況における制御部60の動作について説明する。制御部60は、蓄電池42の最高温度が上限温度を超えた場合、蓄電池42の冷却が必要であると判断し、蓄電池42を空冷するために吸気ファン32と排気ファン26を作動させる。吸気ファン32と排気ファン26の双方を作動させることにより、より効果的に蓄電池42を空冷することができる。ここで、上限温度は例えば50℃と設定されるが、蓄電池42の特性などに応じてその他の値を設定してもよい。このとき、制御部60は、ヒータ34をオンにしない。ヒータ34をオンにすると、空冷するための空気が加熱されてしまい、逆効果となるおそれためである。なお、消費電力を節約するため、蓄電池42を空冷するために、排気ファン26と吸気ファン32のどちらか一方のみを作動させてもよい。
その後、蓄電池42の最高温度が上限温度をある程度下回った場合、制御部60は、蓄電池42の冷却を停止すべきと判断し、排気ファン26及び吸気ファン32を停止させる。ここで、制御部60が加熱を停止すべきと判断する温度は、上限温度より2℃低い温度であり、上限温度を50℃に設定した場合は、その基準となる温度は48℃である。このように上限温度に近い値を設定することで、蓄電池42の空冷に用いる電力の消費量を抑えることができる。
以上の構成による蓄電システム100の動作を説明する。
図5は、蓄電システム100の処理の流れを示すフローチャートである。制御部60は、蓄電池42の温度データを取得し、蓄電池42の加熱が必要か否かを判断する(S10)。蓄電池42の加熱が必要と判断した場合(S10のY)、ヒータ34をオンにする(S12)。制御部60は、ヒータ34をオンにした後、ヒータ34の温度が第1の閾値以上となった場合(S14のY)、吸気ファン32を作動させる(S16)。一方、ヒータ34の温度が第1の閾値未満である場合(S14のN)、吸気ファンを作動させず、ヒータ34の加熱を待つ。
制御部60は、吸気ファン32を作動させた後、蓄電池42の加熱を停止すべきか否かを判断する(S18)。蓄電池42の温度が下限温度をある程度上回った場合、蓄電池42の加熱を停止すべきと判断し(S18のY)、ヒータ34をオフにする(S20)。一方、蓄電池42の加熱を停止すべきでないと判断した場合(S18のN)、そのまま蓄電池42の加熱を継続する。制御部60は、ヒータ34をオフにした後、ヒータ34の温度が第2の閾値以下となった場合(S22のY)、吸気ファン32を停止させる(S24)。ヒータ34の温度が第2の閾値より大きい場合には(S22のN)、吸気ファン32を作動させたままとする。
一方、蓄電池42の加熱が必要でないと判断した場合(S10のN)、蓄電池42の冷却が必要か否かを判断する(S30)。蓄電池42の冷却が必要と判断した場合(S30のY)、制御部60は、吸気ファン32を作動させるとともに(S32)、排気ファン26を作動させる(S34)。蓄電池42の冷却が必要でないと判断した場合(S30のN)、継続して蓄電池42の温度データを取得し、蓄電池42の加熱が必要か否かを判断する(S10)。
制御部60は、排気ファン26を作動させた後、蓄電池42の冷却を停止すべきか否かを判断する(S36)。蓄電池42の温度が上限温度をある程度下回った場合、蓄電池42の冷却を停止すべきと判断し(S36のY)、吸気ファン32を停止させるとともに(S38)、排気ファン26を停止させる(S40)。一方、蓄電池42の冷却を停止すべきでないと判断した場合(S36のN)、そのまま蓄電池42の冷却を継続する。
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について例示する。
制御部60は、蓄電池42の最高温度および最低温度を用いて、蓄電池42の冷却または加熱をすべきか否かを判断したが、例えば、蓄電池42を構成する蓄電池ユニット44の複数箇所に設けられる温度センサの測定値の平均した平均温度を用いて、その判断をしてもよい。その他、下限温度未満の温度が計測された箇所が全体の半分以上となった場合に加熱が必要と判断するなど、蓄電池42の温度分布に応じて加熱または冷却の必要性を判断してもよい。具体的な基準については、蓄電池42に設けられる温度センサの位置や、内部筐体12の形状、吸気ファン32およびヒータ34の性能などに応じて、実験等などにより求めた条件を予め設定しておくことが望ましい。
また、蓄電池42を加熱する場合に、ヒータ34により加熱された空気を中段40に滞留させることにより、より効率よく蓄電池42を加熱できるよう、中段40と上段50との間に設けられる第2仕切板56の開口部58を一時的に塞ぐようにしてもよい。例えば、開口部58にシャッターを設け、蓄電池42を加熱する場合には、制御部60がそのシャッターを制御して開口部58を塞ぐ。一方、蓄電池42を冷却する場合、制御部60がシャッターを制御して開口部58を開けることで、下段30から中段40を通って上段50へ空気が流れるようになり、蓄電池42をより効率よく空冷できる。
また、蓄電池42を加熱する場合に、吸気ファン32を作動させる条件として、ヒータ34が第1の閾値以上の温度となることをその条件として紹介したが、その条件の替わりに、ヒータ34をオンにしてから所定時間経過後に吸気ファン32を作動させることとしてもよい。例えば、ヒータ34をオンにして所定時間経過させることにより、その温度が第1の閾値以上となるような時間としてその時間を設定する。このように設定することで、ヒータ34に温度センサを設ける必要がなくなりコスト削減につながる。なお、条件として設定すべき具体的な時間値については、ヒータ34の特性や、ヒータ34に通電させる電流値などにより実験等により求めることが望ましい。同様に、蓄電池42の加熱を停止する場合についても、ヒータ34をオフにしてから所定時間経過後に吸気ファン32を停止させるとしてもよい。
また、蓄電池42を加熱する場合に、ヒータ34が第1の閾値より大きい第3の閾値以上の温度となった場合に、一時的にヒータ34をオフにしてもよい。ヒータ34が加熱されすぎることで内部筐体12の内部において局所的に温度が高まり、蓄電池42の一部が局所的に加熱されてしまうことを防ぐためである。なお、ヒータ34を一時的にオフにした後、ヒータ34の温度が第3の閾値を下回った場合には、必要に応じて再度、ヒータ34をオンにしてもよい。