前記の特許文献1の煙感知器は、具体的には、第1発光素子からの光による散乱光率(A1)と第2の発光素子からの散乱光率(A2)との比率により受光量の比率(R)を算出し、白色煙側としての綿灯芯のくん焼煙に対する比率(R)と、黒色煙側としてのケロシンの燃焼煙に対する比率(R)とに基づいて予め設定された閾値と比較することにより白煙火災か黒煙火災かを判定することを開示している。尚、同文献の煙感知器は、前記の白煙火災か黒煙火災かを判定するための閾値よりも大きな閾値により水蒸気や湯気なのか否かを判定することも開示している。
ところで、光電式煙感知器は、通常、ろ紙のくん焼煙に対する検知感度(例えば10%/m等の所定の煙濃度として減光率計(CS計)により測定されたものが用いられている。)が基準として設定されており、その感度で煙感知器が火災判定し、その結果を火災受信機に出力し、火災受信機が発報するか、または、煙感知器からその感度で出力される検知信号により火災受信機が火災判定をし、発報するようになっている。
しかしながら、前記の特許文献1の煙感知器は、前記の通り、綿灯芯のくん焼煙に対する比率(R)とケロシンの燃焼煙に対する比率(R)とに基づいて設定された閾値により煙の種類を判定することを開示しているが、ろ紙のくん焼煙に対する比率(R)については開示しておらず、それに基づく閾値により煙の種類を判定することも開示していない。即ち、綿灯芯のくん焼煙のような煙の種類とケロシンのくん焼煙のような煙の種類とを判定することは開示しているが、それに加えてろ紙のくん焼煙のような煙の種類も判定することは開示していない。
又、光電式煙感知器は、前記の通り、通常はろ紙のくん焼煙に対する検知感度により火災判定をする基準感度が設定されている。前記の特許文献1の煙感知器の場合、受光量の比率(R)を綿灯芯のくん焼煙に対する散乱光率とケロシンの燃焼煙に対する散乱光率とにより設定された閾値と比較することにより煙の種類を判定し、更に比率(R)の信号により火災判定もしている。そうすると、「ろ紙」のくん焼煙に対する検知感度により火災判定の基準感度を設定した場合、その基準感度に対する実際の火災判定の感度が煙の種類によっては高過ぎたり、或いは低過ぎたりする可能性があると解される。つまり、前記の特許文献1の煙感知器の場合、火災判定の感度に均一性がなく、火災判定の動作が不安定になる可能性があると解される。
この発明は、上記の事情に鑑み、光電式煙感知器において、煙等の種類を広い範囲で判定できるようにすることを目的とする。又、煙等の種類が異なっても、均一性のある火災判定の感度が得られるようにすることを目的とする。
この発明は、第1の波長の光を検煙部に向けて出射する第1の発光素子と、第2の波長の光を検煙部に向けて出射する第2の発光素子と、前記第1の発光素子と前記第2の発光素子とが出射する光が直接は入射しない位置に設けられた受光素子とを備え、前記第1の発光素子はその光軸が前記受光素子の光軸との間に第1の散乱角を形成する位置に設けられると共に、前記第2の発光素子はその光軸が前記受光素子の光軸との間に第2の散乱角を形成する位置に設けられた光電式煙感知器であって、前記第1の発光素子が出射する第1の波長の光は、青色領域の450nm〜500nmの波長の範囲内にピーク波長を有する光であると共に、前記第2の発光素子が出射する第2の波長の光は、赤色領域の600nm〜700nmの波長の範囲内にピーク波長を有する光であり、かつ、前記第1の散乱角は、100度〜120度の角度であると共に、前記第2の散乱角は、50度〜70度の角度であり、又、記憶部と処理部とを更に備え、前記第1の発光素子の光による散乱光を前記受光素子が受光した量に基づき、第1の煙濃度の値を算出して記憶し、更に、前記第2の発光素子の光による散乱光を前記受光素子が受光した量に基づき、第2の煙濃度の値を算出して記憶し、そして、前記第1の煙濃度の値と前記第2の煙濃度の値との比を算出し、それを所定の閾値と比較することにより煙等の種類を判定し、更に、前記第1の煙濃度の値又は前記第2の煙濃度の値を利用して火災判定をするように構成されていることを特徴とする光電式煙感知器である。
又、この発明は、前記閾値は、前記第1の発光素子の光の散乱光についての、ろ紙のくん焼煙に対する感度を基準とする判定対象の前記煙等の種類のそれぞれに対する感度の比である第1の相対感度と、前記第2の発光素子の光の散乱光についての、ろ紙のくん焼煙に対する感度を基準とする判定対象の前記煙等の種類のそれぞれに対する感度の比である第2の相対感度との比に基づいて設定されるものであることを特徴とする光電式煙感知器である。
又、この発明は、前記第1の発光素子の光による散乱光についての基準感度となる第1の基準煙濃度の値又は第2の発光素子の光による散乱光についての基準感度となる第2の基準煙濃度の値を記憶するように構成されており、更に、前記火災判定をするのに利用される前記第1の煙濃度の値又は前記第2の煙濃度の値は、前記第1の基準煙濃度の値又は前記第2の基準煙濃度の値に近づける補正が必要に応じてされるように構成されていることを特徴とする光電式煙感知器である。
尚、この発明において、前記火災判定をするのに利用されるのは、前記第2の煙濃度の値とすることができる。
又、この発明において、前記火災判定をするのに利用される前記第2の煙濃度の値は、判定された煙の種類に応じ、そのまま利用されるか、或いは、前記第2の基準煙濃度の値に近づける補正がされたものが利用されるものとすることができる。
又、この発明において、ろ紙のくん焼煙のような煙と綿灯芯のくん焼煙のような煙とが白色煙として煙の種類が判定され、ケロシンの燃焼煙のような煙が黒色煙として煙の種類が判定されるように構成されているものとすることができる。
又、この発明において、前記第1の基準煙濃度の値及び前記第2の基準煙濃度の値は、ろ紙のくん焼煙に対する煙濃度の値とすることができる。
この発明においては、第1の発光素子が出射する第1の波長の光が青色領域の波長の範囲内にピーク波長を有する光であると共に、第2の発光素子が出射する第2の波長の光が赤色領域の波長の範囲内にピーク波長を有する光であることにより、後記で詳細に説明する通り、ろ紙のくん焼煙のような煙と、綿灯芯のくん焼煙のような煙と、ケロシンの燃焼煙のような煙とについて、煙の種類を判定することができる。また、火災と判別するべき各種煙と、非火災と判別するべき湯気等とを判定することもできる。
又、この発明においては、第1の煙濃度の値と第2の煙濃度の値との比から煙の種類を判定し、そして、第1の煙濃度の値又は第2の煙濃度の値を利用して火災判定をするように構成されている。それにより、火災判定をするのに利用する第1の煙濃度の値又は第2の煙濃度の値を基準感度として予め記憶される対応する基準煙濃度の値に必要に応じて近づける補正をするようにすることができ、判定する煙等の種類が異なっても、火災判定をする際の感度を基準感度に揃えるようにすることができる。
従って、この発明によれば、光電式煙感知器において、煙等の種類を広い範囲で判定できるようにすることができる。又、煙等の種類が異なっても、均一性のある火災判定の感度が得られるようにすることができる。
この発明の光電式煙感知器の実施形態の一例を図1乃至図5に基づいて説明する。
光電式煙感知器1は、図1に示した通り、第1の波長λ1の光を検煙部2に向けて出射する第1の発光素子3と、第2の波長λ2の光を検煙部2に向けて出射する第2の発光素子4と、第1の発光素子3と第2の発光素子4とが出射する光が直接は入射しない位置に設けられた受光素子5とを備えている。又、光電式煙感知器1において、第1の発光素子3はその光軸3Aと受光素子5の光軸5Aとの間に第1の散乱角θ1が形成される位置に設けられており、第2の発光素子4はその光軸4Aと受光素子5の光軸5Aとの間に第2の散乱角θ2が形成される位置に設けられている。尚、本実施形態の場合、第1の発光素子3としても、第2の発光素子4としても、発光ダイオードを用いており、又、受光素子5としては、フォトダイオードを用いている。
この光電式煙感知器1は、基本的には、第1の発光素子3と第2の発光素子4からの光に基づき、検煙部2において煙等の粒子により発生する散乱光を受光素子5が受光することにより煙等を検知し、火災判定をしたときに発報をするように構成されているものである。
そして、光電式煙感知器1において、第1の発光素子3は、第1の波長λ1の光として青色領域の波長の範囲内にピークを有する光を出射するものが用いられており、又、第2の発光素子4は、第2の波長λ2として赤色領域の波長の範囲内にピークを有する光を出射するものが用いられている。即ち、第1の発光素子3も、第2の発光素子4も、どちらも可視領域の波長の範囲内にピークを有する光を出射するものが用いられている。更に、第1の発光素子3及び第2の発光素子4は、第1の散乱角θ1が第2の散乱角θ2よりも大きくなる位置に設けられている。
本実施形態の場合、具体的には、第1の発光素子3は、第1の波長λ1の光として青色領域の465nmの波長にピークを有する光を出射するものとしており、第2の発光素子4は、第2の波長λ2の光として655nmの波長にピークを有する光を出射するものとしている。更に、第1の発光素子3は、第1の散乱角θ1が110度になる位置に設けられたものとしており、第2の発光素子4は、第2の散乱角θ2が60度になる位置に設けられたものとしている。
尚、第1の発光素子3は、第1の波長λ1の光として、前記の465nmの波長以外にも、その前後の青色領域の450nm〜500nmの波長範囲から適宜選択した波長にピークを有する光を出射するものとすることができ、第2の発光素子4は、第2の波長λ2として、前記の655nmの波長以外にも、その前後の600nm〜700nmの波長範囲、好ましくは620nm〜670nmの波長範囲から適宜選択した波長にピークを有する光を出射するものとすることができる。更に、第1の発光素子3は、第1の散乱角θ1として、前記の110度以外にも、その前後の100度〜120度の角度範囲から適宜選択した角度になる位置に設けられたものとすることができ、第2の発光素子4は、前記の60度以外にも、その前後の50度〜70度の角度範囲から適宜選択した角度になる位置に設けられたものとすることができる。
更に、光電式煙感知器1は、図2に示した通り、回路構成中に記憶部6と処理部7 とを備えている。それら記憶部6や処理部7等により、第1の発光素子3の光による散乱光についての検知の基準感度(火災判定の基準となる感度であり、減光率計による測定値に基づき、予め調整されて設定されるものである。本実施形態の場合、ろ紙のくん焼煙に対する感度として設定され、例えば「10%/m」の煙濃度として設定される。)となる第1の基準煙濃度の値を予め記憶し、又、第2の発光素子4の光による散乱光についての基準感度(同上)となる第2の基準煙濃度の値を予め記憶し、更に、第1の発光素子3の光による散乱光を受光素子5が受光した量に基づき、第1の煙濃度の値を算出して記憶し、又、第2の発光素子4の光による散乱光を受光素子5が受光した量に基づき、第2の煙濃度の値を算出して記憶し、そして、第1の煙濃度の値と第2の煙濃度の値との比を算出し、それを煙の種類等の判定用の所定の閾値と比較することにより煙の種類を判定する処理をするように構成されている。尚、火災判定をした場合には、発報部8により火災信号を発報(出力)するように構成されている。
ここで、光電式煙感知器1において、前記の第1の波長λ1及び第2の波長λ2の波長と、前記の第1の散乱角θ1及び第2の散乱角θ2の角度とは、ろ紙のくん焼煙のような煙(白色煙)と、綿灯芯のくん焼煙のような煙(白色煙と黒色煙との中間的な煙)と、ケロシンの燃焼煙のような煙(黒色煙)とについて煙の種類を判定することができるものとして設定した条件である。具体的には、ろ紙のくん焼煙のような煙と綿灯芯のくん焼煙のような煙とを白色煙として判定し、ケロシンの燃焼煙のような煙を黒色煙として判定することができるものとして設定した条件である。又、それらの条件は、ろ紙のくん焼煙に対する検知感度と、綿灯芯のくん焼煙に対する検知感度と、ケロシンの燃焼煙に対する検知感度との相対感度を煙濃度の比として得たものに基づき、前記のように判定することができるものとして決定したものである。
図3は、その相対感度を示したグラフである。グラフは、940nmの波長にピークを有する近赤外領域の光を出射する発光素子である比較例としての「近赤外LED」と、655nmの波長にピークを有する赤色領域の光を出射する発光素子である「赤色LED」と、465nmの波長にピークを有する発光素子である「青色LED」とを用い、「近赤外LED」の散乱角(発光素子の光軸と受光素子の光軸との間に形成される角度)を60度とし、「赤色LED」の散乱角を60度とし、「青色LED」の散乱角を110度とし、各LEDのろ紙のくん焼煙に対する検知感度を基準とし、その感度に対する各LEDの綿灯芯のくん焼煙とケロシンの燃焼煙とに対する検知感度の比を相対感度として示したものである。尚、グラフ上の値は、減光率計によるろ紙のくん焼煙に対する煙濃度の測定値に基づき、光電式煙感知器の基準感度を調整した場合の実験による測定結果から得たものである。
このグラフは、数値としては、「近赤外LED」のろ紙のくん焼煙に対する相対感度が「1」であるのに対し、同LEDの綿灯芯のくん焼煙に対する相対感度は略「0.7」程度であると共に、同LEDのケロシンの燃焼煙に対する相対感度は略「0.2」程度であることを示している。また、このグラフは、「赤色LED」のろ紙のくん焼煙に対する相対感度が「1」であるのに対し、同LEDの綿灯芯のくん焼煙に対する相対感度は略「1」であると共に、同LEDのケロシンの燃焼煙に対する相対感度は略「0.2」程度であることを示している。また、このグラフは、「青色LED」のろ紙のくん焼煙に対する相対感度が「1」であるのに対し、同LEDの綿灯芯のくん焼煙に対する相対感度は略「1.4」程度であると共に、同LEDのケロシンの燃焼煙に対する相対感度は略「0.4」程度であることを示している。
即ち、例えば、光電式煙感知器の火災判定の基準感度をろ紙のくん焼煙に対して「10%/m」の煙濃度になるように調整することを想定した場合、「近赤外LED」のろ紙のくん焼煙に対する相対感度が煙濃度としては「10%/m」であるのに対し、同LEDの綿灯芯のくん焼煙に対する相対感度は煙濃度としては略「7%/m」程度であると共に、同LEDのケロシンの燃焼煙に対する相対感度は煙濃度としては略「2%/m」程度である。又、「赤色LED」のろ紙のくん焼煙に対する相対感度が煙濃度としては「10%/m」であるのに対し、同LEDの綿灯芯のくん焼煙に対する相対感度は煙濃度としては略「10%/m」であると共に、同LEDのケロシンの燃焼煙に対する相対感度は煙濃度としては略「2%/m」程度である。又、「青色LED」のろ紙のくん焼煙に対する相対感度が煙濃度としては「10%/m」であるのに対し、同LEDの綿灯芯のくん焼煙に対する相対感度は煙濃度としては略「14%/m」程度であると共に、同LEDのケロシンの燃焼煙に対する相対感度は煙濃度としては略「4%/m」程度であることを示していることになる。
このグラフ上の値について、先ずは、比較例である「近赤外LED」と「青色LED」とによる各煙に対する相対感度の比を見てみると、「近赤外LED」による相対感度に対する「青色LED」による相対感度の比としては、基準であるろ紙のくん焼煙に対する相対感度の比の値は「1」であるのに対し、綿灯芯のくん焼煙に対する相対感度の比の値は略「2」であり、ケロシンの燃焼煙に対する相対感度の比の値も略「2」である。即ち、各LEDにおけるろ紙のくん焼煙に対する感度を基準とすると、綿灯芯のくん焼煙に対する相対感度の比の値とケロシンの燃焼煙に対する相対感度の比の値とが同程度であり、綿灯芯のくん焼煙とケロシンの燃焼煙とを識別することができないことになる。尚、この結果は、各LEDにおける綿灯芯のくん焼煙に対する感度を基準とする場合でも同様であり、即ち、綿灯芯のくん焼煙とケロシンの燃焼煙とを識別することはできないことに変わりはない。
一方、「赤色LED」と「青色LED」とによる各煙に対する相対感度の比を見てみると、「赤色LED」による相対感度に対する「青色LED」による相対感度の比としては、基準であるろ紙のくん焼煙に対する相対感度の比の値は「1」であるのに対し、綿灯芯のくん焼煙に対する相対感度の比の値は略「1.4」であるが、ケロシンの燃焼煙に対する相対感度の比の値は略「2」である。即ち、各LEDにおけるろ紙のくん焼煙に対する感度を基準としていても、綿灯芯のくん焼煙に対する相対感度の比の値とケロシンの燃焼煙に対する相対感度の比の値との間には両者を識別するのに十分な差があり、例えば両者を識別する閾値として例えば「1.5」の値を設定することにより、綿灯芯のくん焼煙のような煙とケロシンの燃焼煙のような煙とを識別することができる。又、ろ紙のくん焼煙に対する相対感度の比の値である「1」と綿灯芯のくん焼煙に対する相対感度の比の値である「1.4」との間にも両者を識別するのに十分な差があり、例えば両者を識別する閾値として「1.2」の値を設定することにより、ろ紙のくん焼煙のような煙と綿灯芯のくん焼煙のような煙とを識別することができる。
一般に、ケロシンの燃焼煙が黒色煙として区別されるのに対し、ろ紙のくん焼煙も、綿灯芯のくん焼煙も、どちらも白色煙として区別される。従って、ろ紙のくん焼煙のような煙と綿灯芯のくん焼煙のような煙とを識別しなくとも、例えば前記の閾値「1.5」により煙を識別すれば、綿灯芯のくん焼煙ような煙とろ紙のくん焼煙のような煙とを共にケロシンの燃焼煙のような煙から識別することができる。即ち、綿灯芯のくん焼煙とろ紙のくん焼煙とを白色煙として識別することができ、ケロシンの燃焼煙を黒色煙として識別することができる。
つまり、図3のグラフは、ろ紙のくん焼煙に対する感度を基準とすると、「近赤外LED」と「青色LED」との組み合わせの場合、ろ紙のくん焼煙、綿灯芯のくん焼煙及びケロシンの燃焼煙の3種の煙を判定することはできないが、「赤色LED」と「青色LED」との組み合わせの場合、それら3種の煙を判定することができることを示している。
従って、光電式煙感知器1においては、第1の発光素子3を第1の波長λ1の光として青色領域の465nmの波長にピークを有する光を出射するものとすると共に、第2の発光素子4を第2の波長λ2の光として赤色領域の655nmの波長にピークを有する光を出射するものとすることができる。更に、第1の発光素子3を第1の散乱角θ1が110度になる位置に設けられたものとすると共に、第2の発光素子4を第2の散乱角θ2が60度になる位置に設けられたものとすることができる。それにより、記憶部6及び処理部7等による前記のような処理をすれば、ろ紙のくん焼煙のような煙と、綿灯芯のくん焼煙のような煙と、ケロシンの燃焼煙のような煙とについて煙の種類を判定することできるようになる。具体的には、ろ紙のくん焼煙のような煙と綿灯芯のくん焼煙のような煙とを白色煙として判定し、ケロシンの燃焼煙のような煙を黒色煙として判定することができるようになる。
尚、前記の通り、第1の発光素子3の第1の波長λ1としては、前記の465nm以外でも、その前後の青色領域の波長範囲内、例えば450nm〜500nmの範囲内の波長とすることができ、又、第2の発光素子4の第2の波長λ2としては、前記の655nm以外でも、その前後の赤色領域の波長範囲内、例えば600nm〜700nmの範囲内の波長、好ましくは620nm〜670nmの範囲内の波長とすることができる。更に、第1の発光素子3の第1の散乱角θ1としては、前記の110度以外でも、その前後の角度範囲内、例えば100度〜120度の範囲内の角度とすることができ、又、第2の発光素子4の第2の散乱角θ2としては、前記の60度以外でも、その前後の角度範囲内、例えば50度〜70度の範囲内の角度とすることができる。即ち、そのようにしても、前記と同様、ろ紙のくん焼煙のような煙と、綿灯芯のくん焼煙のような煙と、ケロシンの燃焼煙のような煙とについて煙の種類を判定することができるようになると解される。 具体的には、ろ紙のくん焼煙のような煙と綿灯芯のくん焼煙のような煙とを白色煙として判定し、ケロシンの燃焼煙のような煙を黒色煙として判定することができるようになる。
つまり、光電式煙感知器1においては、第1の発光素子3は、第1の波長λ1の光として、450nm〜500nmの青色領域の波長範囲内から適宜選択された波長(具体的には、例えば465nmの波長)にピークを有する光を出射するものとすることができると共に、第2の発光素子4は、第2の波長の光として、600nm〜700nm、好ましくは620nm〜670nmの赤色領域の波長範囲内から適宜選択された波長(具体的には、例えば655nmの波長)にピークを有する光を出射するものとすることができ、更に、第1の発光素子3は、第1の散乱角θ1として、100度〜120度の角度範囲から適宜選択された角度(具体的には、例えば110度)になる位置に設けられたものとすることができると共に、第2の発光素子4は、第2の散乱角θ2として、50度〜70度の角度範囲から適宜選択された角度(具体的には、例えば60度)になる位置に設けられたものとすることができる。
次に、本実施形態の光電式煙感知器1の火災判定の処理の流れを説明する。
光電式煙感知器1は、第1の発光素子3の光による散乱光についての基準感度となる第1の基準煙濃度の値を記憶部6に予め記憶し、又、第2の発光素子4の光による散乱光についての基準感度となる第2の基準煙濃度の値を記憶部6に予め記憶する。更に、第1の発光素子3の光による散乱光を受光素子5が受光した量に基づき、第1の煙濃度の値を算出して記憶部6に記憶し、又、第2の発光素子4の光による散乱光を受光素子5が受光した量に基づき、第2の煙濃度の値を算出して記憶部6に記憶する。そして、処理部7により、第1の煙濃度の値と第2の煙濃度の値との比を算出し、それを煙等の種類の判定用の所定の閾値と比較することにより煙の種類を判定するように構成されているが、本実施形態の場合、更に、火災判定をする煙濃度の値として第2の煙濃度の値が利用されるように構成されており、又、その火災判定をするのに利用される第2の煙濃度の値を第2の基準煙濃度の値に近づける補正が必要に応じてされるように構成されている。尚、火災判定をする煙濃度の値としては第1の煙濃度の値を利用するようにしてもよいが、散乱角が第2の散乱角θ2として60度になる位置に設けられている第2の発光素子4の光による散乱光に基づく第2の煙濃度の値の方が信号としては安定していることから、第2の煙濃度の値を利用する方が好ましいと言える。又、火災判定をするのに利用するのが、第1の煙濃度の値であるか、第2の煙濃度の値であるかに応じ、予め記憶する第1の基準煙濃度の値又は第2の基準煙濃度の値を何れか一方だけにしてもよい。例えば、火災判定をするのに第2の煙濃度の値を利用する場合は、予め記憶するのは第2の基準煙濃度の値だけにしてよい。
図4は、具体的な処理の流れを示したフローチャートである。尚、前提として、第2の発光素子4の光による散乱光についての基準感度となる第2の基準煙濃度の値が予め記憶されている。
処理を開始し(「START」)、先ずは、第1の発光素子3を発光駆動し(P1)、受光素子5の受光量に基づき、第1の煙濃度の値S1を算出して記憶する(P2)。次に、第2の発光素子4を発光駆動し(P3)、受光素子5の受光量に基づき、第2の煙濃度の値S2を算出して記憶する(P4)。ここで、第2の煙濃度の値S2を予備的な火災判定用の第1の閾値 (例えば、1%/mとすることができる。)と比較し、火災の可能性があるか否かを判断する(P5)。第1の閾値を超えておらず、火災の可能性がないと判断される場合(「NO」)は、(P1)に戻る。第1の閾値を超えており、火災の可能性があると判断される場合(YES)は、第1の煙濃度の値S1と第2の煙濃度の値S2の比率Rを「R=S1/S2」として算出する(P6)。そして、算出した比率の値Rを煙の種類を判定するために前記の相対感度の測定結果より設定した煙等の種類の判定用の第2の閾値の一例である「1.5」と「R≧1.5?」として比較する(P7)。比率の値Rが第2の閾値以上の場合(「YES」)、煙の種類を「黒色煙」と判定し(P8)、比率の値Rが第2の閾値未満の場合(「NO」)、煙の種類を「白色煙」と判定する(P9)。
この際、最終的な火災判定をするための煙濃度の値Sを第2の煙濃度の値S2を利用して算出するが、前記の測定結果より、黒色煙として識別されるケロシンの燃焼煙に対する相対感度が基準となるろ紙のくん焼煙に対する相対感度の1/5〜1/4であることから、ろ紙のくん焼煙に対する感度により基準感度が設定される本実施形態においては、煙の種類を「黒色煙」として判定する場合、第2の煙濃度の値S2を第2の基準煙濃度の値に近づけるために必要な補正として例えば係数「4」を乗じ(乗ずる補正係数は「5」としてもよい。)、即ち「S=S2×4」として最終的な火災判定用の煙濃度の値Sを算出する(P8)。一方、白色煙として識別されるろ紙のくん焼煙に対する相対感度は基準感度そのものであり、又、同様に白色煙として識別される綿灯芯のくん焼煙に対する相対感度は基準感度よりも若干大きい程度であることから、ろ紙のくん焼煙に対する感度により基準感度が設定される本実施形態においては、煙の種類を「白色煙」として判定する場合、第2の煙濃度の値S2を補正せずにそのまま利用し、即ち「S=S2」として最終的な火災判定用の煙濃度の値Sを算出する(P9)。次いで、その算出した最終的な火災判定用の煙濃度の値Sにより、火災判定をし(P10)、火災か否かを最終的な火災判定用の第3の閾値(例えば、10%/mとすることができる。)と比較することにより、火災か否かを最終的に判定する(P10)。そして、火災と判定されない場合(「NO」)、(P1)に戻る一方、火災と判定された場合(「YES」)、火災発報処理をし(P11)、発報部8により火災信号を火災受信機に向けて発報し、処理を終了する(「END」)。
光電式煙感知器1は、前記の通りであるところ、先ずは、第1の煙濃度の値と第2の煙濃度の値との比から煙の種類を判定することができるようになっている。更には、本実施形態の場合、第2の煙濃度の値を火災判定をする煙濃度の値として利用しており、その火災判定を煙濃度の値として利用する第2の煙濃度の値を第2の基準煙濃度の値に必要に応じて近づける補正をすることができるようになっており、判定する煙の種類が異なっても、火災判定をする煙濃度の値として利用する第2の煙濃度の値を第2の基準煙濃度の値に揃えることができ、火災判定をする際の感度を基準感度に揃えることができるようになっている。即ち、判定する煙の種類が異なっても、均一性のある火災判定の感度が得られるようになっている。
尚、光電式煙感知器1は、火災による煙以外の湯気等も判定するようにすることもできる。具体的には、水蒸気や湯気の場合、図3の測定結果には示していないが、前記の第1の煙濃度の値S1と第2の煙濃度の値S2の比率Rは、「0.5」程度となる。水蒸気や湯気を識別する閾値として例えば「0.7」を設定し、処理の順番としては、前記の処理の流れ中、(P6)と(P7)の間とすると共に、処理の内容としては、「R≧0.7」の判断処理とし、「YES」の場合は(P7)に進み、「NO」の場合は非火災として(P1)に戻るようにすることにより、湯気等の識別も可能である。
ここで、この発明の光電式煙感知器による補正前後の煙濃度の値の変化について説明する。
図5は、調理用油を用いた火災実験において、光電式煙感知器が検知した煙濃度(補正前後)と減光率計(CS計)が測定した煙濃度とについての時間経過による推移を示したグラフである。尚、実験に利用した光電式煙感知器は、前記で説明した光電式煙感知器1と同様の構成のものを用いており(但し、第1の発光素子3としてはピーク波長が470nmの光を出射するものを用い、第2の発光素子4としてはピーク波長が640nmの光を出射するものを用いた。)、CS計による測定値に基づき、白色煙とされるろ紙のくん焼煙に対する検知の基準感度(煙濃度)が事前に調整されたものを用いている。又、グラフ中、光電式煙感知器が検知した煙濃度は、補正前のものも、補正後のものも、第2の発光素子の光(赤色領域の光)由来の散乱光による煙濃度である。
グラフ中、800秒の時点が「発火」の時点であり、煙の種類としては、それ以降の煙が「黒色煙」として区別され、それ以前の煙が「白色煙」として区別される。実験に用いた光電式煙感知器は、前記の通り、CS計による測定値に基づき、白色煙とされるろ紙のくん焼煙に対する検知の感度が調整されており、白色煙に対しては基準感度との感度比が同程度になることから、「発火」前の白色煙を検知した煙濃度の値は、CS計が測定した煙濃度の値と同程度の値で推移している(図示の便宜上、「発火」前の値の推移を太い実線で示しているが、「発火」前の白色煙である間は実際には補正をしていない。)。黒色煙に対しては基準感度との感度比に差があることから、「発火」後の黒色煙を検知した煙濃度は、補正前の煙濃度の場合、CS計が測定した煙濃度の値との間に差がある値で推移している。そして、「発火」後の煙濃度の値に対し、必要な補正をすると(4倍の補正)、CS計が測定した煙濃度の値に近い値で推移している。
つまり、図5のグラフは、この発明の光電式煙感知器によれば、補正をする必要はあるが、時間の経過に従って白色煙から黒色煙に変化するような煙に対し、その変化の前後を通じ、検知される煙濃度の値がCS計により測定される煙濃度の値の変化に追従して同程度の煙濃度の値を保ちつつ変化することを示している。即ち、この発明の光電式煙感知器によれば、煙の種類が時間経過に従って変化しても、その変化の前後を通じ、CS計による測定値に基づき設定される基準感度と同程度の感度を保ちつつ変化し、均一性のある火災判定の感度が得られることを示している。
以上説明した通り、この発明の光電式煙感知器1によれば、煙等の種類を広い範囲で判定することができ、又、煙等の種類が異なっても、均一性のある 火災判定の感度を得ることができる。
以上、この発明の光電式煙感知器の実施形態の一例を説明したが、この発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で種々の変更が可能である。
例えば、光電式煙感知器1において、通常時は第1の発光素子3と第2の発光素子4とを交互に発光し、火災を監視しているとして説明したが、それだけに限らず、通常時は第2の発光素子4だけを発光させて火災を監視しても良い。その場合、第2の 煙濃度S2が閾値を超えたときに、第1の発光素子3を発光させて、第1の煙濃度S1を算出し、そして、第1の煙濃度の値S1と第2の煙濃度の値S2の比率Rを「R=S1/S2」を算出することになる。