JP6418224B2 - スポット溶接物の製造方法およびスポット溶接電極 - Google Patents
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Description
本発明は、スポット溶接に関する。より詳細には、本発明は、重ね合わせた鋼板などの被溶接板を電気抵抗発熱で溶融させて接合するスポット溶接によって溶接物を製造する方法に関すると共に、かかる溶接のためのスポット溶接電極にも関する。
従前より、鋼板同士の接合には溶接が多く用いられている。例えば自動車の車体は、鋼板同士を溶接することで一般に構成されている。溶接の種類としてスポット溶接があり、自動車1台でみた場合では鋼板の接合箇所の多くがスポット溶接で接合されている。
スポット溶接では、重ね合わせた鋼板に対して電極間で局所的に通電して抵抗熱を発生させる。抵抗発熱により鋼板が溶融するので、最終的には溶融に起因して鋼板同士の接合がなされる。より具体的には、スポット溶接は、対を成す電極を備えた溶接ガンを一般的に用いる。かかる対を成す電極で重ね合わせた鋼板を挟み込み圧力を加えながら電極間に電流を流す。これにより鋼板に抵抗発熱が生じ、鋼板が局所的に溶融するので、その部分が最終的に冷却固化して点状の溶接部が形成される。
スポット溶接で形成される点状の溶接部は“ナゲット”と一般に称される。ナゲットは、抵抗発熱に起因した鋼板の溶融部分が冷却固化した部分に相当し、このナゲットの存在によって鋼板同士が接合され、所望のスポット溶接物が得られることになる。
本願発明者らは、スポット溶接に起因する応力の問題点に気付き、そのための対策を取る必要性を見出した。
具体的には以下の問題があることを本願発明者は見出した。スポット溶接では、上述した如く溶接に供する重ね合わせた鋼板(以下では「被溶接積層体」とも称す)を電極で挟持した状態で被溶接積層体を加圧しながら通電させるが、かかるスポット溶接に起因して被溶接積層体に不都合な応力がもたらされる虞がある。特に、スポット溶接に起因して、被溶接積層体にもたされる不都合な応力の分布(例えば「最大引張応力以上となる引張応力の分布」)が鋼板母材とナゲットとの界面に位置付けられることがある。このような界面における応力は、溶接物にとって望ましくなく、遅れ破壊および/または疲労破壊などの誘因となり得る。そのような場合には、例えば特許文献1のように溶接工程・溶接条件を工夫することで対応可能であるものの、今度は生産性が低下する等の新たな問題が発生する虞がある。
本発明はかかる事情に鑑みて為されたものである。即ち、本発明の主たる目的は、溶接物にもたらされる応力に鑑みた好適なスポット溶接技術を提供することである。
本願発明者は、従来技術の延長線上で対応するのではなく、新たな方向で対処することによって上記問題点の解決を試みた。その結果、上記主たる目的が達成されたスポット溶接物の製造方法の発明に至ると共に、それを実施するためのスポット溶接電極の発明にも至った。
本発明の製造方法の発明は、スポット溶接物を製造する方法に関し、
少なくとも2枚の鋼板を重ね合わせて得られる被溶接積層体を一対の電極で加圧しながら通電を行うスポット溶接において、電極と被溶接積層体との接触面は、互いに直交する方向の一方の寸法が他方の寸法より小さい非均一形状を有することを特徴とする。
少なくとも2枚の鋼板を重ね合わせて得られる被溶接積層体を一対の電極で加圧しながら通電を行うスポット溶接において、電極と被溶接積層体との接触面は、互いに直交する方向の一方の寸法が他方の寸法より小さい非均一形状を有することを特徴とする。
また、本発明の溶接電極は、スポット溶接に用いる電極に関している。かかる本発明のスポット溶接電極は、互いに直交する方向の一方の寸法が他方の寸法よりも小さい非均一形状面が電極先端部に含まれていることを特徴とする。
本発明では、被溶接積層体に生じ得る応力を好適に偏移させることができる。具体的には、被溶接積層体にもたらされる不都合な応力の分布(例えば「最大引張応力以上となる引張応力の分布」)を鋼板母材とナゲットとの界面よりも内側に位置付けることができる。これは、不都合となり得る応力を鋼板母材とナゲットとの界面を避けるように制御できることを意味している。このように本発明では不都合な応力の分布領域を鋼板母材とナゲットとの界面から外すことができるので、遅れ破壊および/または疲労破壊などの誘因が減じられた所望の溶接物を得ることができる。なお、本発明は、電極と被溶接積層体との接触面を“非均一形状”の特異な面にすることに存するので、スポット溶接の生産性自体の低下を引き起こす虞はない。
以下では、図面を参照して本発明の一実施形態に係る「スポット溶接物の製造方法」および「スポット溶接電極」をより詳細に説明する。図面における各種の要素は、本発明の理解のために模式的かつ例示的に示したにすぎず、外観や寸法比などは実物と異なり得る。
本明細書において「スポット溶接物」といった用語は、いわゆるスポット溶接(抵抗スポット溶接)によって得られる溶接物、即ち、電気抵抗による発熱(ジュール熱)を利用して互いに溶接された鋼板を指している。したがって、本発明において「スポット溶接物」は、広義には、溶接ガンを用いてスポット溶接された少なくとも2枚の鋼板のことを意味しており、狭義には、「互いに直交する方向の一方の寸法が他方の寸法よりも小さい非均一形状面が電極先端部に含まれるスポット溶接電極」によってスポット溶接された鋼板のことを意味している。
本明細書で直接的または間接的に説明される“上下”の方向は、製造時にスポット溶接される鋼板の重ね合せに基づいており、鋼板同士が重ね合わされる方向(すなわち、重ね合せで得られる被溶接積層体の積層方向)が上下方向に相当する。本発明に係る典型的な態様として鋼板同士が全体に水平状態で重ね合わされる場合を例にとると「鉛直下向き」が「下方向」に相当し、その反対側が「上方向」に相当する。
[本発明の製造方法]
本発明に係る製造方法は、スポット溶接物を製造するための方法である。具体的には、本発明の製造方法は、少なくとも2枚の鋼板を重ね合わせて得られる被溶接積層体を一対の電極で加圧しながら通電を行うスポット溶接において、電極と被溶接積層体との接触面が「互いに直交する方向の一方の寸法が他方の寸法より小さい非均一形状」となるように電極と被溶接積層体とを互いに接触させる。
本発明に係る製造方法は、スポット溶接物を製造するための方法である。具体的には、本発明の製造方法は、少なくとも2枚の鋼板を重ね合わせて得られる被溶接積層体を一対の電極で加圧しながら通電を行うスポット溶接において、電極と被溶接積層体との接触面が「互いに直交する方向の一方の寸法が他方の寸法より小さい非均一形状」となるように電極と被溶接積層体とを互いに接触させる。
本発明の製造方法では、いわゆる溶接ガン電極を鋼板に対して接触させた状態でスポット溶接を行うところ、かかる電極と被溶接積層体との接触面が“非均一形状”(互いに直交する方向の一方の寸法が他方の寸法より小さい非均一形状)となっている。つまり、“電極と鋼板との接触面”という観点でスポット溶接を捉えた場合、そのスポット溶接の接触面が「互いに直交する方向の一方の寸法が他方の寸法より小さい非均一形状」となるように電極が被溶接積層体に対して接触する。このような特徴に起因して、被溶接積層体に生じる応力が好適に制御される。より具体的には、被溶接積層体に生じる不都合な応力の分布を好適に偏移させることができ、鋼板母材とナゲットとの界面を避けるように「鋼板の最大引張応力以上となる引張応力」の発生位置・分布領域を制御できる。
被溶接積層体において鋼板母材とナゲットとの界面に「鋼板の最大引張応力以上となる引張応力」が存在すると、遅れ破壊および/または疲労破壊などの誘因となり得る。つまり、そのような過度な応力がもたらされる被溶接積層体の領域に「鋼板母材とナゲットとの界面」が含まれると、静的・動的疲労破壊を誘発する要因となり得る。この点、本発明では鋼板母材とナゲットとの界面から外れるように過度な応力を位置付けることができる。本発明では「鋼板の最大引張応力以上となる引張応力」が鋼板母材とナゲットとの界面に存在せず、かかる界面よりも内側にかかる不都合な応力の分布を偏移させることができる。よって、本発明に従って得られた溶接物は、静的・動的疲労破壊を誘発する要因が減じられ、長期疲労強さなどの点でより優れた溶接鋼板となる。
本発明の製造方法は、スポット溶接時の電極と被溶接積層体との接触面に特徴を有しており、特にその接触面の平面視形状10に特徴を有している(図1参照)。具体的には、図示するように接触面の平面視形状10は「互いに直交する方向の一方の寸法aが他方の寸法bより小さい非均一形状」となっている。つまり、電極20が被溶接積層体50(鋼板30の重ね合せで得られる積層体50)に接触させて行うスポット溶接において電極20と被溶接積層体50との接触面の形状10は、互いに直交する寸法aおよび寸法bが“非均一形状の接触面”を形成すべく寸法差を有している。
本明細書にいう「電極と被溶接積層体との接触面」とは、広義には、少なくとも2枚の鋼板の重ね合わせで構成される被溶接積層体と、スポット溶接に用いる電極とを互いに接触させた際にもたらされる接触面を意味しており、狭義には、図1に示す如くスポット溶接時にて被溶接積層体50の外側主面と溶接ガンの電極20とが成す接触部分の平面視形状10(被溶接積層体の積層方向に沿って上側または下側からみた接触部分の透視平面形状)を意味している。
また、本明細書にいう「互いに直交する方向の一方の寸法が他方の寸法より小さい非均一形状を有する」とは、広義には、平面形状の直交寸法が互いに異なることを意味しており、狭義には、電極と被溶接積層体との接触面の平面形状について、図1に示す如く互いに直交する方向の一方の寸法aと他方の寸法bとを比べた場合、一方の寸法aが他方の寸法bよりも小さくなり、それによって、スポット溶接時における電極20と被溶接積層体50との接触部の平面視形状10が異方形となることを意味している。
「一方の寸法aが他方の寸法bよりも小さい非均一形状」としては、種々の形状が考えられ、例えば図1の下側に示すように楕円形、矩形または菱形(もしくは斜方形)であってよい。“楕円形”は図1の最下左に示すように互いに直交する短径長さa1と長径長さb1とから成る非均一形状である。“矩形”は図1の最下中央に示すように互いに直交する短軸長さa2と長軸長さb2とから成る非均一形状である。そして、“菱形”/“斜方形”は図1の最下右に示すように互いに直交する短軸長さa3と長軸長さb3とから成る4辺が等しい四角形の非均一形状である。本発明では、このような形状が電極と被溶接積層体との接触面の非均一形状として得られると、スポット溶接に際して被溶接積層体に生じる応力を好適に制御できる。つまり、被溶接積層体に生じる応力の分布を好適に偏移させることができ、鋼板母材とナゲットとの界面を避けるように不都合な応力(鋼板の最大引張応力以上となる引張応力)の発生位置・分布領域を制御できる。
ある好適な態様では、一方の寸法が他方の寸法の50%以上83%以下となっている。つまり、図2に示すように、電極と被溶接積層体との接触面につき、一方の寸法が他方の寸法の50%以上83%以下となっている。より具体的にいえば、接触部分の平面視形状10において互いに直交する一方の寸法aと他方の寸法bとを比べた場合、一方の寸法aが他方の寸法bの50%以上83%以下となることで相対的に短くなっている。
図示する態様でいえば、電極と被溶接積層体との接触面の楕円形につき、好ましくは短径長さa1が長径長さb1の50%以上83%以下となっている。つまり、電極と被溶接積層体との接触面が0.5b≦a≦0.83bの直交寸法比を有する平面視楕円形となるようにスポット溶接を行うことが好ましい。
このように「一方の寸法が他方の寸法の50%以上83%以下」となる直交寸法比の条件では、スポット溶接に際して被溶接積層体に生じる応力がより好適に制御される。つまり、被溶接積層体に生じる応力の分布を好適に偏移させることができ、鋼板母材とナゲットとの界面を避けるように発生位置・分布領域が制御された応力(鋼板の最大引張応力以上となる引張応力)が被溶接積層体にもたらされる。
別のある好適な態様では、他方の寸法が6mm以上8mm以下となっている。つまり、図3に示すように、電極と被溶接積層体との接触面につき、相対的に長い寸法である“他方の寸法”が6mm以上8mm以下となっている。より具体的にいえば、接触部分の平面視形状10において互いに直交する寸法のうちでより長い寸法が6mm以上8mm以下となっている。一方の寸法aが他方の寸法bの50%以上83%以下となっている態様を兼ねる場合、“他方の寸法b”が6mm以上8mm以下となり、“一方の寸法a”は3mm以上6.64mm以下となる。
図示する態様でいえば、電極と被溶接積層体との接触面の楕円形につき、長径長さb1が好ましくは6mm以上8mm以下となっている。つまり、電極と被溶接積層体との接触面につき6mm以上8mm以下の長径条件を有する平面視楕円形となるようにスポット溶接を行うことが好ましい。
このように「他方の寸法が6mm以上8mm以下」となる直交寸法の条件では、スポット溶接に際して被溶接積層体に生じる応力がより好適に制御される。つまり、被溶接積層体に生じる応力の分布を好適に偏移させることができ、鋼板母材とナゲットとの界面を避けるように発生位置・分布領域が制御された応力(鋼板の最大引張応力以上となる引張応力)が被溶接積層体にもたらされる。
ここで、本発明に関連する“非均一形状”に起因する被溶接積層体の応力制御を詳述しておく。本発明では、電極と被溶接積層体との接触面について互いに直交する方向の一方の寸法が他方の寸法より小さい非均一形状となっており、それによって、被溶接積層体に生じる応力が好適に制御され得る。特に、引張応力などの応力に関して「鋼板の最大引張応力以上となる応力の分布」が鋼板母材とナゲットとの界面には存在せず、かかる界面よりも内側に偏移するように制御され得る。これは図4(A)と図4(B)とを比べると良く理解できる。図4(A)は、電極と被溶接積層体との接触面が“非均一形状”となるスポット溶接の場合の「界面」と「最大引張応力以上となる引張応力の領域」との相対的な位置関係を平面透過図で示している。一方、図4(B)は、電極と被溶接積層体との接触面が“非均一形状”となっていないスポット溶接(特に従来技術の如く接触面が“円形”となるスポット溶接)の場合の「界面」と「最大引張応力以上となる引張応力の領域」との相対的な位置関係を平面透過図で示している。双方とも、図5に示す如くのスポット溶接に基づいている。つまり、図4(A)および図4(B)に示す「界面」と「最大引張応力以上となる引張応力の領域」との相対的な位置関係は、鋼板合せ間隙57が存在する被溶接積層体50をスポット溶接電極20で加圧しながらスポット溶接する態様に基づいている。
ここでいう「界面」とは、鋼板母材とナゲットとの界面(特に図4に示すように平面透過視における界面)のことを指しており、それゆえ、被溶接積層体においてナゲット(例えばスポット溶接後のナゲット)と鋼板との境目ポイントを示している。そして、「最大引張応力以上となる引張応力の領域」とは、広義には、スポット溶接に際して被溶接積層体に発生する応力に関して被溶接積層体又は鋼板の引張応力以上となる過度の応力のことを意味しており(ある見方で捉えるとスポット溶接後の被溶接積層体に残留し得る過度の応力)のことを指しており、狭義には、鋼板合せ間隙を有する被溶接積層体に対してスポット溶接を実施した後で得られる溶接鋼板にて遅れ破壊および/または疲労破壊などを誘発する要因となる応力(特に引張応力)のことを意味している。
図4(A)および図4(b)の双方とも「最大引張応力以上となる引張応力」の分布領域が斜線で示されている。図示するように“均一形状”の図4(B)では「最大引張応力以上となる引張応力」の斜線領域がより広範となっており、界面ポイントを含みつつそれを超えて大きく存在しているのに対して、“非均一形状”の図4(A)では「最大引張応力以上となる引張応力」の斜線領域がより狭幅となっており、界面ポイントにまで至っていない。つまり、本発明に従った“非均一形状”の図4(A)の場合、鋼板母材とナゲットとの界面に過度な応力の領域が存在しておらず、“均一形状”の図4(B)と比べると、かかる不都合な応力が界面よりも内側に偏移したと解すことができる。ここで、界面に「最大引張応力以上となる引張応力」が存在すると、遅れ破壊および/または疲労破壊などの誘因となり得る。つまり、引張応力などに代表される応力として大きい不都合な応力が鋼板母材とナゲットとの界面に含まれると、静的・動的疲労破壊を誘発する要因となり得る。この点、図4(A)に示すように本発明においては鋼板母材とナゲットとの界面から避けるようにかかる応力の分布が位置付けられることになる。特に図5にも鑑みると、被溶接積層体を加圧しながらスポット溶接する際に発生する高い引張応力の分布がナゲットの径内に収まることによって割れ起点となりやすい「ナゲットの“際(きわ)”での局所的な応力集中」が本発明で抑制されるといえる。従って、本発明においては、遅れ破壊(例えば水素脆化による破壊)および/または疲労破壊の発生が抑制された溶接鋼板が最終的に得られることになる。
本発明の製造方法において「互いに直交する方向の一方の寸法が他方の寸法より小さい非均一形状」としては、上述したように種々の形状が考えられ、例えば、楕円形、矩形または菱形(もしくは斜方形)などが挙げられる。ある好適な1つ態様でいえば、図6に示すように、接触面の形状10が略楕円形状となっている。つまり、スポット溶接時の電極と被溶接積層体との接触部について平面視(平面透過視)の形状が略楕円形状となっていることが好ましい。
本明細書でいう「略楕円形状」とは、完全な楕円形であることに限らず、それから変更されつつも当業者の認識として依然“楕円”に通常含まれ得る形状をも含んでいる。本発明の観点でいえば、直交する短軸長さと長軸長さを有する形状であれば、楕円の曲部分の態様はいかなるものであってもよい。
接触面の形状が略楕円形状となる態様では、例えば、図6に示すように電極先端部が楕円形態となった電極20を用いてよい。あくまでも1つの例示にすぎないが、図示するように、電極先端部が切頭形状を有し、電極切頭面28が楕円形となったガン電極20を用いてよい。
ある好適な態様では、“一方の寸法”が成す方向に沿って複数のナゲットが整列するようにスポット溶接を実施する。例えば図7に示すように、電極と被溶接積層体とが成す接触面の非均一形状10につき、相対的に短い寸法に沿って複数のナゲット60が整列するようにスポット溶接を逐次実施する。図示する態様から分かるように「複数のナゲットが整列するようにスポット溶接を実施する」とは、複数のスポット溶接によってもたらされる複数のナゲット60が“一方の寸法aが成す方向”、即ち、“相対的に短い寸法の方向”に沿って略整列していることを意味している。これは、スポット溶接時の電極と被溶接積層体との接触面の形状10につき、ナゲットの配列方向に垂直な方向の長さがより短くなっていることを意味している。換言すれば、複数のナゲット60の整列ラインと、“一方の寸法aが成す方向”、即ち、“相対的に短い寸法の方向”とが略平行になっている。ここでいう「略平行」とは、完全に“平行”でなくてもよく、それから僅かにずれた態様であってもよい(例えばそれらが成す鋭角が0°よりも大きくかつ10°以下となる態様であってもよい)ことを意味している。
“一方の寸法”が成す方向に沿って複数のナゲットが整列するようにスポット溶接を実施する場合、スポット溶接に際して応力が被溶接積層体に発生し易い。複数のナゲットが横並びで設けられることになるので、隣接するナゲット(即ち、接合部)に起因して、個々のナゲットでは、それと鋼板母材との界面で応力(特に引張応力)が生じやすい(図5を参照のこと)。この点、本発明では、そのような応力が発生したとしても、応力を制御して、鋼板母材とナゲットとの界面に対して「最大引張応力以上となる引張応力」の分布領域を外すことができる。つまり、本発明はかかる応力発生の不都合を好適に回避するように働くので、応力に起因する静的・動的疲労破壊の発生を減じることができる。換言すれば、「一方の寸法が成す方向に沿って複数のナゲットが整列するようにスポット溶接を実施する態様」では、特に本発明の応力の発生位置・分布領域の制御が功を奏しやすいといえる。
ここで、本発明の応力の発生位置・分布領域の制御が功をより奏しやすいといった観点でいえば、本発明に用いる鋼板は、いわゆる“高張力鋼板”および/または“高炭素含有鋼板”であってよい。これにつき詳述する。例えば自動車製造におけるスポット溶接を例にとると、鋼板はいわゆる“自動車鋼板”である。本発明で用いる鋼板の鋼材自体は、特に限定されるものでなく、炭素鋼、合金鋼、ニッケルクロム鋼、ニッケルクロムモリブデン鋼、クロム鋼、クロムモリブデン鋼、マンガン鋼などであってよい。また、代表的な鋼板の種類でいうと、被溶接板としての鋼板は、冷間圧延鋼板(SPC材)、熱延鋼板、熱間圧延軟鋼板(SPH材)、電気亜鉛めっき鋼板(SEC材、SEH材)、溶融亜鉛めっき鋼板(SGC材、SGH材)、溶融アルミめっき鋼板、塗装電気めっき鋼板、ステンレス鋼板(SUS材)、アルミ板、銅板などであってよい。なお、鋼板の厚さは、特に制限はないものの、0.3mm以上10mm以下、より限定すれば0.5mm以上5.0mm以下、更に限定すれば0.5mm以上2.0mm以下(1つ例示すれば、約1.6mm)であってよい。
本願発明者は、高強度の鋼板のスポット溶接において上述した如く鋼板母材との界面に応力(不都合な引張応力)が生じやすいことを見出した。特に、引張強度が高い鋼板はその傾向が見られやすく、それゆえ、高張力鋼板および/または高炭素含有鋼板を被溶接積層体として含むスポット溶接では、鋼板母材との界面に応力(特に不都合な引張応力)が生じやすいといえる。この点、本発明では、そのような応力が発生したとしても、応力の発生位置・分布領域を制御して、鋼板母材とナゲットとの界面から「最大引張応力以上となる引張応力」の分布領域を外すことができる。つまり、本発明は応力発生の不都合を好適に回避するように働くことになり、応力に起因する静的・動的疲労破壊の発生を減じることができる。換言すれば、“高張力鋼板”および/または“高炭素含有鋼板”を被溶接積層体に含むスポット溶接の態様」では、本発明の応力の発生位置・分布領域の制御が功を奏しやすいといえる。“高張力鋼板”および/または“高炭素含有鋼板”につき包括的に述べると、本発明では例えば0.2重量%の炭素含有量および980MPa以上の引張強さの少なくとも一方を有する鋼板を被溶接積層体として含むことが好ましい。炭素含有量の上限値は特に制限はないものの例えば1重量%であり、引張強さの上限値も特に制限はなく例えば2000MPaである。
同様に本発明の応力の発生位置・分布領域の制御が功をより奏しやすいという観点でいえば、スポット溶接前では被溶接積層体に鋼板合せ隙間が存在していてよい。例えば図8に示す如く、鋼板同士の間の鋼板接触部分55に起因して鋼板合せ隙間57が存在していてよい。かかる場合、図5に示すように鋼板合せ間隙57が存在する被溶接積層体50に対してスポット溶接電極20で加圧しながらスポット溶接を行うことになり(加圧力は例えば0.5kN以上20kN以下、より限定すれば1kN以上10kN以下、1つ例示すると6.3kNである)、被溶接積層体に応力がよりもたらされ易くなる(図5の態様では特に発明の理解のためにスポット溶接時の加圧で鋼板30が撓む態様を示している)。この点、本発明では、そのような応力が発生したとしても、応力の発生位置・分布領域を制御して、鋼板母材とナゲットとの界面から「最大引張応力以上となる引張応力」の分布領域を外すことができる。つまり、本発明はかかる応力発生の不都合を回避するように働くことになり、応力に起因する静的・動的疲労破壊の発生を減じることができる。なお、本発明に関していう「鋼板合せ隙間」は、スポット溶接前の被溶接積層体における鋼板間の微小間隙を実質的に意味しており、鋼板接触部分55に起因してもたらされるものに限らず、鋼板(鋼板材料)の公差によってもたらされる隙間であってもよい。鋼板合せ隙間につき、隙間高さ寸法(鋼板の積層方向に沿った隙間寸法)は、例えば0.5mm以上2.5mm以下であり、より限定すれば1.0mm以上2.0mm以下、更に限定すれば1.2mm以上1.6mm以下(1つ例示すると約1.4mm)である。一方、隙間幅寸法(鋼板の積層方向と直交する方向に沿った間隙寸法)は、20mm以上60mm以下であり、より限定すれば30mm以上50mm以下、更に限定すれば35mm以上45mm以下(1つ例示すると約40mm)である。また、ここでいう「鋼板接触部分」は、被溶接積層体において鋼板間に存在して鋼板同士を橋渡しするものを意味しており、例えば鋼板接続部材(ナゲット、リベットおよび螺子部材など)である。ある1つの好適な態様にすぎないが、鋼板合せ隙間の幅方向(図8に示すように鋼板30の主面に沿った方向)は、スポット溶接時の電極と被溶接積層体との接触面の「非均一形状」の“一方の寸法が成す方向”と略整合していてよい。つまり、鋼板合せ隙間の幅方向と、上記接触面の「非均一形状」における“相対的に短い寸法の方向”とが略平行となっていてよい。
[本発明のスポット溶接電極]
次に、本発明のスポット溶接電極について説明する。本発明の電極は、上述のスポット溶接物の製造に好適な電極である。すなわち、本発明のスポット溶接電極では、互いに直交する方向の一方の寸法が他方の寸法よりも小さい非均一形状面が電極先端部に含まれている。
次に、本発明のスポット溶接電極について説明する。本発明の電極は、上述のスポット溶接物の製造に好適な電極である。すなわち、本発明のスポット溶接電極では、互いに直交する方向の一方の寸法が他方の寸法よりも小さい非均一形状面が電極先端部に含まれている。
本発明の電極は、その先端部の形状に特徴を有している。図9に示すように、電極先端部には、互いに直交する寸法aおよび寸法bにつき寸法差を有する非均一形状面10が含まれている。これは、スポット溶接時に被溶接積層体と接触する部分として互いに直交する方向の一方の寸法が他方の寸法よりも小さい非均一形状面を電極が含んでいることを意味している。
ここでいう「互いに直交する方向の一方の寸法が他方の寸法よりも小さい非均一形状面が電極先端部に含まれている」は、広義には、電極先端部の平面視形状の直交寸法が互いに異なることを意味しており、狭義には、電極の長手方向(電極高さ方向)に直交する平面における電極先端部の形状が異方形となっていることを意味している。かかる直交平面における電極先端部の形状は、図9に示す如く互いに直交する方向の一方の寸法aと他方の寸法bとを比べた場合、一方の寸法aが他方の寸法bよりも小さくなっている。本発明でいう「電極先端部」とは、図9に示すように、電極最先端に向かってテーパ状に幅寸法が減じられる部分を指している。図示する態様でいえば、テーパ開始ポイント25aから電極最先端ポイント25bにまで至る局所的部分が電極先端部に相当する。
図示する態様から分かるように、本発明のスポット溶接電極でいう“非均一形状面”は、電極先端部の断面図における形状に関しており、それゆえ、本発明のスポット溶接電極は、テーパ開始ポイント25aから電極最先端ポイント25bまでの局所的部分の断面形状が“非均一形状”となっている。換言すれば、本発明のスポット溶接電極では、電極高さ方向と直交する面で切り取った電極先端部の断面形状が「互いに直交する方向の一方の寸法が他方の寸法よりも小さい非均一形状」となっている。
本発明のスポット溶接電極に関して「一方の寸法aが他方の寸法bよりも小さい非均一形状面」は、種々のものが考えられ、例えば図9に示すように楕円形、矩形または菱形(もしくは斜方形)であってよい。“楕円形”は図9の最下左に示すように互いに直交する短径長さa1と長径長さb1とから成る非均一形状である。“矩形”は図9の最下中央に示すように互いに直交する短軸長さa2と長軸長さb2とから成る非均一形状である。“菱形”/“斜方形”は図9の最下右に示すように互いに直交する短軸長さa3と長軸長さb3とから成る4辺が等しい四角形の非均一形状である。本発明のスポット溶接電極は、その電極先端部に非均一形状面を含んでいるので、スポット溶接に際して被溶接積層体に生じる応力を好適に制御することができる。つまり、被溶接積層体に生じる応力の分布を好適に偏移させることができ、鋼板母材とナゲットとの界面を避けるように「最大引張応力以上となる引張応力」の発生位置・分布領域を制御できる(図4(A)および4(B)参照)。
ある好適な態様では、電極先端部が切頭形状を有し、電極切頭面が非均一形状面となっている。例えば図10(A)〜10(C)に示すように、スポット溶接電極20が切頭型の電極となっており、その切頭面28が非均一形状面を成している。つまり、“切頭型”の場合、本発明のスポット溶接電極は、その最先端面が非均一形状面(互いに直交する寸法につき一方の寸法が他方の寸法よりも小さい非均一形状面)となっている。図10(A)は切頭面28が短径長さa1と長径長さb1とから成る楕円形状面となっており、図10(B)は切頭面28が互いに直交する短軸長さa2と長軸長さb2とから成る矩形状面となっており、図10(C)は切頭面28が互いに直交する短軸長さa3と長軸長さb3とから成る菱形状面・斜方形面となっている。
特に図10(A)の電極は、切頭面28が略楕円形を有するが、“楕円”がそもそも角張った形状でなく、その点で図10(B)および10(C)と区別され得る。図10(A)に示すスポット溶接電極20は、その電極先端部の「互いに直交する方向の一方の寸法が他方の寸法よりも小さい非均一形状面」が略楕円形となっている。ここでいう「略楕円形」とは、上述した如く、完全な楕円形に限らず、それから変更されつつも当業者の認識として依然“楕円”に通常含まれる形状を含んでいる(つまり、直交する短軸長さと長軸長さを有する形状であれば、楕円の曲部分の態様はいかなるものであってもよい)。あくまでも一例であるが、本発明のスポット溶接電極20に係る略楕円形状の切頭面28は、好ましくは短径長さa1が長径長さb1の50%以上83%以下となっている。また、本発明のスポット溶接電極20に係る略楕円形状の切頭面28は、好ましくは長径長さb1が6mm以上8mm以下となっている。このような態様の溶接電極を用いると、スポット溶接に際して被溶接積層体に生じる応力をより好適に制御できる。つまり、被溶接積層体に生じる応力の分布を好適に偏移させることができ、鋼板母材とナゲットとの界面を避けるように「最大引張応力以上となる引張応力」の発生位置・分布領域が制御され得る。
本発明のスポット溶接電極の先端部は、“切頭面”を有する形態に特に限定されるものではない。図11に示すように、切頭面を有さないようにスポット溶接電極20の先端部にて電極幅寸法が電極最先端まで漸次減じられた形態を本発明のスポット溶接電極が有していてもよい。つまり、電極高さ方向と直交する面で切り取った電極先端部の断面形状面が「互いに直交する方向の一方の寸法が他方の寸法よりも小さい非均一形状面」となっていれば、電極と被溶接積層体との接触面が“非均一形状”となるので、スポット溶接に際して被溶接積層体に生じる応力を好適に制御できる。よって、被溶接積層体に生じる応力の分布を好適に偏移させることができ、鋼板母材とナゲットとの界面を避けるように「最大引張応力以上となる引張応力」の発生位置・分布領域を制御できる。図11においては、電極高さ方向と直交する面で切り取った電極先端部の2つの断面Iおよび断面IIの双方とも“非均一形状面”となっている。
本発明のスポット溶接電極の材質は、常套的な溶接ガン電極と同様であってよい。あくまでも例示にすぎないが、例えば、本発明ののスポット溶接電極の電極材質は、アルミナ分散銅、クロム銅およびクロムジルコニウム銅から成る群から選択される少なくとも1種であってよい。また、本発明のスポット溶接電極は、電極先端部と電極胴部とが一体化して成る“一体型”に特に限定されず、電極先端部を取り替えることができる“キャップ型”であってもよい。“キャップ型”の場合、電極チップが消耗した際の廃棄部品をより減じることができる。
本発明の電極のより詳細な事項、更なる具体的な態様、または使用時の態様などその他の事項は、上述の[本発明の製造方法]で説明しているので、重複を避けるためにここでの説明は省略する。なお、本発明の電極を備えたスポット溶接装置についていえば、それは、常套的なスポット溶接機と同様の加圧・通電部、電源部、電力制御部および接続用のケーブル類などから構成されていてよい(つまり、溶接ガン電極以外の各種の装置要素は常套的なものであってよい)。また、かかる溶接装置は、その全体として捉えた装置タイプにつき、“定置形スポット溶接機”、“卓上形スポット溶接機”、“ポータブルスポット溶接機”または“マルチスポット溶接機”のいずれのタイプであってもよい。
以上、本発明の実施態様について説明してきたが、本発明の適用範囲における典型例を示したに過ぎない。したがって、本発明は、上記の実施形態に限定されず、種々の変更がなされ得ることは当業者に容易に理解されよう。
例えば、上記においては、一対のスポット溶接電極の各々につき、被溶接積層体との接触面が“非均一形状”となる態様を中心に説明してきたが、本発明はかかる態様に限定されない。例えば、一対のスポット溶接電極のいずれか一方のみ(すなわち、対を成す2つの電極のうちのいずれか1つの電極のみ)が、被溶接積層体との間で“非均一形状”の接触面となるような態様であってもよい。
また、上記においては、“抵抗スポット溶接”によって溶接物を得る態様を中心に説明してきたが、本発明はかかる態様に限定されない。例えば、被溶接板表面の溶接箇所となる部分に突起を設ける“プロジェクション溶接”であってもよく、あるいは、接合面にろう材を設置して抵抗発熱でろう付けを行う“抵抗ろう付け”の態様などであってもよい。
本発明に関連する実施例を説明する。
以下の条件のスポット溶接についてシミュレーションを実施した(図5および図8参照)。
(被溶接積層体)
・鋼板枚数:2枚
・鋼板厚さ:各1.6mm
・鋼板合せ間隙:1.4mm
・鋼板の全板幅:100mm
・鋼板の板奥行き:50mm
・スポット溶接位置:鋼板100mm×50mmの中央ポイント
・鋼板の材料強度:1300MPa
・鋼板合せ隙間の幅寸法(隙間幅寸法):40mm
(実施例のスポット溶接プロセス)
シミュレーションで想定したスポット溶接態様は図5に示される。まず、図5(i)に示すように、2枚の鋼板30を重ね合わせた被溶接積層体50を前提とする。図示するように2枚の鋼板30の間には接続部分/鋼板接触部分55(例えば既に形成されたナゲット部など)に起因して鋼板合せ間隙57が存在する。かかる被溶接積層体50を一対のスポット溶接電極20で挟み込んでスポット溶接を行う。具体的には、電極間で通電路が形成されるように、図5(ii)に示すように被溶接積層体50の対向する外面にそれぞれ当接するように同一の溶接電極20で被溶接積層体50を挟み込み、その状態でスポット溶接を行う。かかるスポット溶接に際しては一対のスポット溶接電極20から被溶接積層体50に対して外側から内側に向かって加圧力(より具体的には鋼板の積層方向に沿って被溶接積層体の外側から内側へと向かう加圧力)が加えられるが、その際の加圧力は6.3kNとした。かかる加圧力に起因して、図5(iii)に示すようにスポット溶接時に鋼板30は局所的・部分的に撓むことになる。
(被溶接積層体)
・鋼板枚数:2枚
・鋼板厚さ:各1.6mm
・鋼板合せ間隙:1.4mm
・鋼板の全板幅:100mm
・鋼板の板奥行き:50mm
・スポット溶接位置:鋼板100mm×50mmの中央ポイント
・鋼板の材料強度:1300MPa
・鋼板合せ隙間の幅寸法(隙間幅寸法):40mm
(実施例のスポット溶接プロセス)
シミュレーションで想定したスポット溶接態様は図5に示される。まず、図5(i)に示すように、2枚の鋼板30を重ね合わせた被溶接積層体50を前提とする。図示するように2枚の鋼板30の間には接続部分/鋼板接触部分55(例えば既に形成されたナゲット部など)に起因して鋼板合せ間隙57が存在する。かかる被溶接積層体50を一対のスポット溶接電極20で挟み込んでスポット溶接を行う。具体的には、電極間で通電路が形成されるように、図5(ii)に示すように被溶接積層体50の対向する外面にそれぞれ当接するように同一の溶接電極20で被溶接積層体50を挟み込み、その状態でスポット溶接を行う。かかるスポット溶接に際しては一対のスポット溶接電極20から被溶接積層体50に対して外側から内側に向かって加圧力(より具体的には鋼板の積層方向に沿って被溶接積層体の外側から内側へと向かう加圧力)が加えられるが、その際の加圧力は6.3kNとした。かかる加圧力に起因して、図5(iii)に示すようにスポット溶接時に鋼板30は局所的・部分的に撓むことになる。
シミュレーション結果を図12に示す。図12に示すグラフおよび表は、接触面形状(スポット溶接時の電極と被溶接積層体との接触面の平面視形状)と、「最大引張応力以上となる引張応力」の分布領域(最大引張応力以上となる長手方向の引張応力分布長さ)との相関関係を示している。かかる図12から下記事項を把握することができる。
・電極と被溶接積層体との接触面として一方の寸法が他方の寸法よりも小さい“非均一形状”の場合、被溶接積層体にもたらされる「最大引張応力以上となる引張応力」の分布が鋼板母材とナゲットとの界面よりも内側に位置付けられる。
・電極と被溶接積層体との接触面として一方の寸法(短径長さ)が他方の寸法(長径長さ)の50%以上83%以下となる“非均一形状”の場合に応力分布の偏移効果がより明確にみられる。
・同様にして電極と被溶接積層体との接触面として他方の寸法(長径長さ)が6mm以上8mm以下となる“非均一形状”の場合に応力分布の偏移効果がより明確にみられる。
・電極と被溶接積層体との接触面として一方の寸法が他方の寸法よりも小さい“非均一形状”の場合、被溶接積層体にもたらされる「最大引張応力以上となる引張応力」の分布が鋼板母材とナゲットとの界面よりも内側に位置付けられる。
・電極と被溶接積層体との接触面として一方の寸法(短径長さ)が他方の寸法(長径長さ)の50%以上83%以下となる“非均一形状”の場合に応力分布の偏移効果がより明確にみられる。
・同様にして電極と被溶接積層体との接触面として他方の寸法(長径長さ)が6mm以上8mm以下となる“非均一形状”の場合に応力分布の偏移効果がより明確にみられる。
以上の如く、本発明に従ってスポット溶接を実施すれば、「最大引張応力以上となる引張応力」が鋼板母材とナゲットとの界面に存在せず、かかる界面よりも内側に不都合な応力を偏移させることができることが分かった。つまり、本発明に従って得られた溶接物は、静的・動的疲労破壊を誘発する要因が減じられ、長期疲労強さにより優れた溶接鋼板となり得る。
本発明の製造方法およびスポット溶接電極は、例えば自動車の車体製造に用いることができ、より具体的には鋼板同士の溶接に用いることができる。特に、本発明では、遅れ破壊および/または疲労破壊などの誘因が減じられるので、その利用価値は高いといえる。
また、本発明は、特に自動車製造の分野に限ることはなく、溶接が必要とされる他の製造業分野で利用することもできる。あくまでも例示にすぎないが、例えば自動二輪、トラック、トラクター、造船、大型容器製造、高層ビル鉄骨、各種金属製品・電化製品などの種々の製造業分野で本発明を利用できる。
10 電極と被溶接積層体との接触面の形状/非均一形状面
20 電極(スポット溶接に用いる電極/溶接ガン電極)
25a テーパ開始ポイント
25b 電極最先端ポイント
28 電極切頭面
30 鋼板
50 被溶接積層体
55 鋼板接触部分
57 鋼板合せ隙間
60 ナゲット
20 電極(スポット溶接に用いる電極/溶接ガン電極)
25a テーパ開始ポイント
25b 電極最先端ポイント
28 電極切頭面
30 鋼板
50 被溶接積層体
55 鋼板接触部分
57 鋼板合せ隙間
60 ナゲット
Claims (7)
- スポット溶接物を製造する方法であって、
少なくとも2枚の鋼板を重ね合わせて得られる被溶接積層体を一対の電極で加圧しながら通電を行うスポット溶接において、該電極と該被溶接積層体との接触面は、互いに直交する方向の一方の寸法が他方の寸法より小さい非均一形状を有し、
前記一方の寸法が前記他方の寸法の50%以上83%以下の直交寸法比となっており、前記被溶接積層体では最大引張応力以上となる応力分布が前記鋼板の母材とナゲットとの界面よりも内側に位置付けられ、
前記一方の寸法が成す方向に沿って複数の前記ナゲットが整列するように前記スポット溶接を実施する、スポット溶接物の製造方法。 - 前記他方の寸法が6mm以上8mm以下である、請求項1に記載のスポット溶接物の製造方法。
- 前記接触面の形状が略楕円形状である、請求項1または2に記載のスポット溶接物の製造方法。
- 前記スポット溶接の前では前記被溶接積層体に鋼板合せ隙間が存在する、請求項1〜3のいずれかに記載のスポット溶接物の製造方法。
- 少なくとも2枚の鋼板を重ね合わせて得られる被溶接積層体のスポット溶接に用いる電極であって、
互いに直交する方向の一方の寸法が他方の寸法よりも小さい非均一形状面が電極先端部に含まれ、
前記一方の寸法が前記他方の寸法の50%以上83%以下の直交寸法比となっており、前記スポット溶接において前記被溶接積層体では最大引張応力以上となる応力分布が前記鋼板の母材とナゲットとの界面よりも内側に位置付けられる、スポット溶接電極。 - 前記電極先端部が切頭形状を有し、電極切頭面が前記非均一形状面となっている、請求項5に記載のスポット溶接電極。
- 前記非均一形状面が略楕円形を有する、請求項5または6に記載のスポット溶接電極。
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