JP6418222B2 - 自着火エンジン用燃料 - Google Patents

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Description

本発明は、自着火エンジン用燃料に関するものである。
内燃機関の燃料としては、ガソリンや軽油などの石油系燃料が一般に使用されているが、近年は、CO排出量削減やエネルギセキュリティ要求から、バイオエタノールやバイオディーゼルなどの植物由来燃料の利用が促進されつつある。また、化石燃料も、シェールガスやオイルサンドなどに代表されるようにその燃料源は多様化してきている。このような変化に伴い、使用される燃料の種類や組成、特性に変化が生じつつある。
ところで、CO排出量ゼロ及びクリーン燃焼を両立し得る燃料として改質燃料や合成燃料が注目されている。前者には、例えば、各種の植物油脂や藻類産生油等を原料とする水素化処理油(BHD:Bio Hydro−fined Diesel)が、後者には、天然ガスや石炭、バイオマスなどの原料から合成されるFT合成油(FTD:Fischer−Tropsch Diesel)等がある。
これらの燃料は、石油系燃料とは異なり、成分は殆ど全てパラフィン(鎖状や環状のアルカン)である。また、その大部分は主鎖から枝分かれ構造をもつ分岐アルカンである。
例えば、特許文献1には、実燃料に即応したサロゲート燃料を得る方法として、実燃料のアルカン成分の分析結果に基づき、各アルカン成分の比率、炭素数及び着火性を考慮して、実燃料の模擬に適したアルカン成分を選定し、それらアルカン成分によってサロゲート燃料を構成する方法が開示されている。
特開2015−093945号公報
ところで、ディーゼル機関やガソリンHCCI機関での圧縮着火や火花点火機関でのノッキングなどは、本質的に燃料の酸化という化学反応を介する現象であるため、アルカン成分の組成等の化学特性は、燃費やエミッション性能に大きな影響を及ぼす。
そこで本発明では、アルカン成分の組成及び含有量を制御することにより燃費やエミッション性能を向上し得る自着火エンジン用燃料を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、本発明では、アルカンを含有する自着火エンジン用燃料において、アルカンの構造によってその含有量を調整するようにした。
すなわち、ここに開示する第1の技術に係る自着火エンジン用燃料は、パラフィン系炭化水素からなり、第1アルカンと第2アルカンとを含有する自着火エンジン用燃料であって、上記第1アルカンは、炭素数7以上16以下の直鎖アルカンであり、上記第1アルカンの主鎖を構成する炭素における2級炭素の数は3以上であり、上記第2アルカンは複数の置換基を有するとともに、該第2アルカンの主鎖を構成する炭素における2級炭素の数は2以下であり且つ3級炭素及び4級炭素の少なくとも一方に隣接する少なくとも1つの炭素の級数は3以上であり、上記第1アルカンの含有量は、16体積%以上であり、上記第2アルカンの含有量は、84体積%以下であることを特徴とする。
本願発明者らは、鋭意研究の結果、主鎖を構成する炭素のうち2級炭素の数が所定値以上の第1アルカンは、着火遅れ時間が短い高自着火性成分となること、及び、主鎖を構成する炭素のうち2級炭素の数が所定値以下であり且つ分岐位置が隣接する特定の第2アルカンは、着火遅れ時間が長い低自着火性成分となることを見出した。
第1の技術によれば、上記第1アルカンの含有量を16体積%以上とし、上記第2アルカンの含有量を84体積%以下とすることにより、着火遅れ時間の増加を抑制し、燃費やエミッション性能を向上させることができる。
また、上記第1アルカンは、炭素数7以上16以下の直鎖アルカンである。
直鎖アルカンは、軽油やガソリンよりも着火遅れ時間が特に短くなる傾向がある。また、直鎖アルカンは、主鎖の炭素数の増加に伴い沸点が上昇する傾向がある。本構成によれば、着火遅れ時間の増加及び沸点の上昇を抑制し、燃費やエミッション性能をさらに向上させることができる。
の技術は、第の技術において、上記第1アルカンの含有量は、37体積%以上であり、上記第2アルカンの含有量は、63体積%以下である。
の技術によれば、約860K以上の高温雰囲気下での運転状態において、着火遅れ時間の増加を効果的に抑制し、燃費やエミッション性能を効果的に向上させることができる。
第3の技術に係る自着火エンジン用燃料は、パラフィン系炭化水素からなり、第1アルカンと第2アルカンとを含有する自着火エンジン用燃料であって、上記第1アルカン及び上記第2アルカンの炭素数は同一であり、上記第1アルカンの主鎖を構成する炭素における2級炭素の数は3以上であり、上記第2アルカンは複数の置換基を有するとともに、該第2アルカンの主鎖を構成する炭素における2級炭素の数は2以下であり且つ3級炭素及び4級炭素の少なくとも一方に隣接する少なくとも1つの炭素の級数は3以上であり、上記第1アルカンの含有量は、16体積%以上であり、上記第2アルカンの含有量は、84体積%以下であることを特徴とする。
第4の技術は、第の技術において、上記第1アルカンは、置換基として1つのアルキル基を有するモノアルキルアルカンであり、上記第1アルカンの含有量は、41体積%以上であり、上記第2アルカンの含有量は、59体積%以下である。
モノアルキルアルカンは、直鎖アルカンに比較すると着火遅れ時間は長くなるものの、依然として軽油よりも着火遅れ時間が短い傾向がある。第4の技術によれば、着火遅れ時間の増加を効果的に抑制して、燃費やエミッション性能を向上させることができる。
第5の技術は、第3又は第4の技術において、上記第1アルカンの含有量は、88体積%以上であり、上記第2アルカンの含有量は、12体積%以下である。
第5の技術によれば、約880K以上約930K以下の高温雰囲気下での運転状態において、着火遅れ時間の増加を効果的に抑制し、燃費やエミッション性能を効果的に向上させることができる。
第6の技術に係る自着火エンジン用燃料は、パラフィン系炭化水素からなり、第1アルカンと第2アルカンとを含有する自着火エンジン用燃料であって、上記第1アルカンは複数の置換基を有するとともに、該第1アルカンの主鎖を構成する炭素における2級炭素の数は3以上であり且つ3級炭素及び4級炭素の少なくとも一方に隣接する少なくとも1つの炭素の級数は3以上であり、上記第2アルカンは複数の置換基を有するとともに、該第2アルカンの主鎖を構成する炭素における2級炭素の数は2以下であり且つ3級炭素及び4級炭素の少なくとも一方に隣接する少なくとも1つの炭素の級数は3以上であり、上記第1アルカンの含有量は、28体積%以上であり、上記第2アルカンの含有量は、72体積%以下である。
複数のアルキル基を有し、分岐位置が隣接する分岐アルカンであっても、主鎖を構成する炭素のうち、2級炭素の数が3以上である場合には、軽油よりも着火遅れ時間が短くなる傾向がある。第6の技術によれば、着火遅れ時間の増加を効果的に抑制し、燃費やエミッション性能を効果的に向上させることができる。
第7の技術は、第6の技術において、上記第1アルカンの含有量は、92体積%以上であり、上記第2アルカンの含有量は、8体積%以下である。
第7の技術によれば、約850K以上の高温雰囲気下での運転状態において、着火遅れ時間の増加を効果的に抑制し、燃費やエミッション性能を効果的に向上させることができる。
以上述べたように、本発明によれば、着火遅れ時間の増加を抑制し、燃費やエミッション性能を向上させることができる。
図1は、初期温度750Kにおける自着火時の着火遅れ時間と燃料成分の沸点の関係を示すグラフである。 図2は、炭素数5〜16の直鎖アルカンについて、初期温度に対する着火遅れ時間をプロットしたグラフである。 図3は、n−ノナンnC9及び置換基数1のC20異性体について、初期温度に対する着火遅れ時間をプロットしたグラフである。 図4は、n−ノナンnC9及び置換基数4のC20異性体について、初期温度に対する着火遅れ時間をプロットしたグラフである。 図5は、置換基数4のC20異性体について、初期温度750Kにおける着火遅れ時間と燃料成分の沸点の関係を示すグラフである。 図6は、低温領域におけるn−ノナンnC9の酸化反応機構を説明するための図である。 図7は、低温領域における2,2,3,3−テトラメチルペンタン2233MC5の酸化反応機構を説明するための図である。 図8は、置換基数1のC1226異性体について、初期温度750Kにおける着火遅れ時間と燃料成分の沸点の関係を示すグラフである。 図9は、置換基数4のC1226異性体について、初期温度750Kにおける着火遅れ時間と沸点の関係を示すグラフである。 図10は、表11に示す参考実験例1、実施例〜4及び比較例1のC20異性体の混合燃料並びに参考例1の軽油について、初期温度に対する着火遅れ時間をプロットしたグラフである。 図11は、参考実験例1、実施例〜4及び比較例1のC20異性体の混合燃料において、2233MC5の混合割合に対する着火遅れ時間の変化を初期温度毎にプロットしたグラフである。なお、初期温度1000K、962K、769K及び714Kのデータにはフィッティング結果を示している。 図12は、図11のグラフにおいて、初期温度833K〜952Kのデータについてのフィッティング結果を示したものである。 図13は、参考実験例1、実施例〜4及び比較例1のC20異性体の混合燃料において、nC9、2MC8及び3MC8の総含有量に対する着火遅れ時間の変化を初期温度毎にプロットしたグラフである。なお、初期温度1000K、962K、769K及び714Kのデータにはフィッティング結果を示している。 図14は、図13のグラフにおいて、初期温度833K〜952Kのデータについてのフィッティング結果を示したものである。 図15は、表12に示す実施例5〜8及び比較例1のC20異性体の混合燃料において、n−ノナンnC9の混合割合に対する着火遅れ時間の変化を初期温度毎にプロットしたグラフである。なお、初期温度毎のデータについてフィッティング結果を示している。 図16は、表13に示す参考実験例9、実施例10〜14及び比較例1のC20異性体の混合燃料において、モノメチルオクタン2MC8,3MC8の混合割合に対する着火遅れ時間の変化を初期温度毎にプロットしたグラフである。なお、初期温度毎のデータについてフィッティング結果を示している。 図17は、表14に示す参考実験例15、実施例16〜18、参考実験例19のC1226異性体の混合燃料について、初期温度に対する着火遅れ時間をプロットしたグラフである。 図18は、表16に示す参考実験例19、実施例20〜23及び比較例1、並びに参考例1の軽油について、初期温度に対する着火遅れ時間をプロットしたグラフである。 図19は、参考実験例19、実施例20〜23及び比較例1の混合燃料において、初期温度909K及び833Kにおける、2233MC8の混合割合に対する着火遅れ時間の変化をプロットしたグラフである。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
<自着火エンジン用燃料>
本実施形態に係る自着火エンジン用燃料は、パラフィン系炭化水素からなる改質燃料、若しくは合成燃料である。具体的には例えば、パーム、ヤトロファなどの植物油脂やシュードコリシスチスなどの藻類産生油等を原料として水素化処理して得られる炭化水素燃料の水素化処理油(BHD)や、天然ガスや石炭、バイオマス、オイルサンド等の原料から生成されたCOとHからFT法によって合成して得られる炭化水素燃料のFT合成油(FTD)等が挙げられる。パラフィン系炭化水素燃料は既存の内燃機関や燃料インフラ等の改良・改造の必要性も少なく、硫黄分や芳香族化合物を殆ど含まないため、触媒への悪影響や煤の発生も殆どないクリーンな燃料として期待される。本実施形態に係る自着火エンジン用燃料は、例えばディーゼル機関、ガソリンHCCI機関、火花点火機関等の自着火エンジンに好適に用いることができる。
パラフィン系炭化水素燃料は、直鎖アルカン及び分岐アルカンを含み、原料の種類や燃料化の工程によりその成分比や炭素数分布などは異なり得る。
なお、本明細書において、「直鎖アルカン」とは、置換基を有しないアルカンのことをいい、以下、「n−アルカン」、「ノルマルアルカン」と称するときがある。また、「分岐アルカン」とは、置換基としてアルキル基を有するアルカンのことをいい、最長の炭素鎖を「主鎖」、主鎖から分岐した置換基の炭素鎖を「側鎖」という。
<着火遅れ時間及び沸点>
着火遅れは、エンジンの性能を左右する重要な燃焼特性の指標の一つである。着火遅れ時間が長くなると、エンジンの燃焼状態(燃焼のタイミングや燃焼期間)を最適な状態に制御することが難しくなる。この着火遅れは、燃料の化学的な特性の影響を強く受ける。着火遅れ時間が長くなる程、燃料の着火性が劣ることになる。
もうひとつの燃料の重要な特性として、蒸発性(沸点)がある。蒸発性が高い(沸点が低い)燃料ほど、燃料が気化し易く、空気との混合が促進されることで、良好な可燃混合気の形成、ひいては良好な燃焼の実現が容易となる。
以上のことから、エンジンの燃焼においては、着火性と蒸発性の両方に優れた燃料が望ましい。しかしながら、一般的なエンジンに使用される炭化水素系燃料では、着火性と蒸発性(沸点)は相反する関係にある。すなわち、着火性の高い燃料は蒸発性が劣り、蒸発性に優れた燃料は着火性が劣る。それゆえ、エンジン燃焼において優れた燃費と排気エミッションを両立させることが困難となっている。
<着火遅れ時間の計算方法>
本願発明者らは、燃料自体の化学反応に由来する化学的着火遅れについて、燃料の化学構造や化学反応機構と関連付けて検討した。特に分岐アルカンによる着火遅れの変化を把握するため、詳細反応モデルにより計算された定容断熱条件下での均一予混合気の着火遅れ時間と分岐アルカンの分子構造を比較した。そして、分岐構造を形成する置換基の数、置換位置やその相対位置関係などの影響について検討した。また、低温酸化領域の反応経路を解析し、分岐アルカンの低温酸化反応への影響について考察した。
具体的には、詳細反応を考慮した反応動力学ソフトウェアCHEMKIN−PROを用いて数値解析を行った。燃焼の計算モデルは、予混合密閉容器とし、液体の要素や壁面からの熱損失を除外した。また、計算解析に必要な各化合物の反応動力学データベースおよび熱物性データベースは、燃焼詳細反応機構自動生成システムKUCRSで作成した。計算条件を表1に示す。初期条件は温度700〜1100K(50K毎)、圧力40atmとし、燃料は空気(N:79%,O:21%)と混合し、当量比は1.0とした。
Figure 0006418222
着火遅れは、圧力上昇や温度上昇、OHラジカルの変動に基づいて定義され得る。本解析においては、「OHラジカルのピーク発現時間」を「着火遅れ時間」として定義した。
<沸点予測方法>
式(1)は、Marrero and Pardilloらが提案する、group interaction contribution technique [AIChE J.,45: 615 (1999)]と呼ばれる手法によって、純物質の沸点を予測するものである。
=M−0.404ΣN(tbb)+156.00 ・・・(1)
但し、式(1)中、T、M、tbb、N及びkは、各々沸点(K)、分子量、沸点への寄与度、C−C結合の数及びC−C結合タイプを表す。
分子中のすべての結合を、原子や原子団の種類とその組み合わせごとに分類し、それらの沸点への寄与度を与えて計算する。
表2は、アルカンの場合のC−C結合のタイプごとの寄与度である。なお、本明細書において、「C1」、「C2」、「C3」、「C4」はそれぞれ、「1級炭素」、「2級炭素」、「3級炭素」、「4級炭素」を意味する。本予測式での誤差は、5%以下であることが示されており、特に後述するC20アルカン及びC1226アルカンの構造異性体の沸点の予測に使用した。
Figure 0006418222
<直鎖アルカン及びC20異性体の着火遅れ時間と蒸発性>
図1に、炭素数7〜炭素数16の直鎖アルカン、及びC20異性体の沸点と初期温度750Kにおける着火遅れ時間との関係を示す。なお、表3、表4A及び表4Bに炭素数5〜炭素数16の直鎖アルカン及びC20異性体の炭素原子数及び置換基数を示す。表4A及び表4Bに示すように、炭素数9のノナン(C20)は、炭素数が比較的少ない一方で、様々な構造異性体をとることができる。
Figure 0006418222
Figure 0006418222
Figure 0006418222
図1に示すように、直鎖アルカン(nC7、nC9、nC10、nC12、nC13、nC16)の結果から、燃料の沸点は、炭素数が増えるほど高くなる傾向があることが判る。これは炭素数(=分子量)が増えるほど、分子間に働く分散力(ファンデルワールス力)が大きくなるためである。一般に、この分散力は、分子の表面積に比例して増加する。例えば、直鎖アルカンのように表面積が大きいと、周りの分子同士がより強い力で結びつく。これに対して、分岐アルカンのように側鎖を持つと、分子の構造が空間的にコンパクトになるため、周りの分子と接する表面積が減少し、分子間に働く力は弱くなる。このため、例えばC20異性体のうち直鎖アルカンnC9の沸点は高く、分岐アルカン(モノメチルオクタン、ジメチルヘプタン、トリメチルヘキサン、テトラメチルペンタン)ではnC9に比べて沸点が低くなる傾向を示す。一方、着火遅れ時間は、軽油、ガソリン、分岐アルカンのいずれよりも短くなる傾向を示す。なお、着火遅れ時間の詳細については後述する。
軽油は、近似的に平均分子式C15.630で表されるが、沸点(ここでは、90%留出温度)は610K程度と直鎖アルカンnC16に比べて高く、着火遅れ時間も1.9ms程度と直鎖アルカンやモノメチルオクタン、ジメチルヘプタンに比べて長くなっている。これは炭素数が広範囲に分布した複数成分の混合物である軽油中に、相対的に沸点が高く、着火遅れ時間の長い(セタン価の低い)アルキルベンゼンや、着火遅れ時間が顕著に長い(セタン価が顕著に低い)多環芳香族を多く含むことによるものと考えられる。なお、90%留出温度とは、液体の温度を徐々に上げていった場合に、当該液体の全容積の90%が蒸発する温度である。
ガソリンは、近似的に平均分子式C7.514で表されるが、沸点(ここでは、90%留出温度)は450K程度と直鎖アルカンnC10の沸点と近い値となっており、着火遅れ時間は4.5msとC20異性体よりも長くなっている。これは炭素数が広範囲に分布した複数成分の混合物であるガソリン中に、着火遅れ時間が顕著に長い(セタン価が顕著に低い)トルエンなどの芳香族や、ペンテンなどのオレフィン、環状アルカンなどを多く含むことによるものであると考えられる。
初期温度750Kにおいて、C20異性体における沸点は、380K〜420K程度となっている。一方、着火遅れ時間は、nC9の0.9ms程度からテトラメチルペンタンの4.0ms程度まで、図1中破線で示すように、分岐アルカンの種類(異性体の分子構造の違い)により大きく異なっていることが判る。
以下、表3、表4A及び表4Bに示す直鎖アルカン及び分岐アルカンの着火遅れ時間について検討する。
<直鎖アルカンの主鎖の鎖長の着火遅れ時間への影響>
表3で示した直鎖アルカンnC5〜nC16について、主鎖の鎖長が着火遅れ時間へ与える影響について検討した。
まず、図2に示すように、全ての直鎖アルカンにおいて、初期温度900Kから950Kにおいて、着火遅れ時間は遅れ側に立ち上がっていることが判る。これは、初期温度900Kから950Kにおいて、燃料の酸化反応が、低温酸化反応から高温酸化反応に遷移するためと考えられる。反応経路について、詳細は後述するが、一般に、アルカンの酸化反応は、OHラジカル等によるC−H結合からのH原子引き抜きにより開始する。そして、このH原子引き抜きにより生じるアルキルラジカルに対して、O分子の付加が起こるか否かにより反応経路が異なる。アルキルラジカルへのO分子の付加は平衡反応であり、低温領域では、O分子の付加反応が起こって低温酸化反応の進行が優勢となる。一方、高温領域では、O分子が付加せずC−C結合等の開裂を伴いアルケン類を生成する高温酸化反応の進行が優勢となる。
次に、初期温度950K以上の高温度領域では、鎖長による着火遅れ時間の差が殆ど見られず、着火遅れ時間の分子構造への依存性が低いことが判る。他方、初期温度900K以下の低温度領域では、着火遅れ時間は鎖長に依存し、鎖長が長くなるにつれて着火遅れ時間が短縮している。これは、後述するように、C−H結合解離エネルギがC1よりも低いC2の数が増加することで、着火時期が短縮されるためと考えられる。しかしながら、この着火遅れの短縮時間は、鎖長の増加とともに次第に小さくなり、鎖長が12以上の高級炭化水素では、着火遅れ時間の更なる短縮は見られない。これは、本計算結果が同一当量比(当量比1.0)での比較であり、鎖長5、7、9、10、12、13、16と長くなるにつれて、初期燃料濃度が0.026、0.019、0.015、0.013、0.011、0.010、0.009と減少しているためと考えられる。すなわち、初期燃料濃度の低下に起因してOHラジカル生成量が低下するとともに、それらOHラジカルと反応できる燃料濃度も低下することによる相乗作用のためと考えられる。
以上より、直鎖アルカンの主鎖の炭素数は、特に限定されるものではないが、軽油やガソリンよりも短縮された着火遅れ時間を得つつ沸点の上昇を抑える観点から、好ましくは5以上20以下、より好ましくは6以上16以下、特に好ましくは7以上16以下である。
<モノアルキルアルカンの置換基位置及び側鎖の鎖長の着火遅れ時間への影響>
モノアルキルアルカンとしての置換基数1のC20異性体について、置換基位置(分岐アルカンの分岐点位置)及び側鎖の鎖長の影響を検討した。なお、表4A及び表4Bに示すように、置換基数1のC20異性体では、メチル基1つを側鎖とする場合、主鎖はオクタンとなる。また、エチル基1つを側鎖とする場合、主鎖はヘプタンとなる。
図3に、n−ノナンnC9と分岐アルカン2MC8、3MC8、4MC8、3EC7、4EC7について、初期温度と着火遅れ時間との関係を示す。なお、n−ノナンnC9と、分岐アルカン2MC8、3MC8、4MC8、3EC7、4EC7の分子構造は以下の通りである。
Figure 0006418222
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Figure 0006418222
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図3に示すように、置換基数1の分岐アルカンにおいて、置換基位置が変化したり、側鎖の鎖長が長くなったりした場合であっても着火遅れ時間の大きな変化はないことが判った。すなわち、例えば初期温度750Kにおける着火遅れ時間は1ms程度で、図1に示す軽油の着火遅れ時間1.9ms程度よりも短く、この着火遅れ時間は置換基位置、及び側鎖の鎖長には依存しないことが判った。
<C20異性体のうち複数の置換基を有する分岐アルカンの置換基位置の着火遅れ時間への影響>
図4に示すように、n−ノナンnC9と置換基数4のテトラメチルペンタンの異性体2233MC5、2234MC5、2244MC5、2334MC5の初期温度に対する着火遅れ時間を検討した。また、図5に示すように、それらテトラメチルペンタンの異性体の初期温度750Kにおける着火遅れ時間と沸点との関係についても検討した。なお、テトラメチルペンタンの異性体2233MC5、2234MC5、2244MC5、2334MC5の分子構造は下記式に示す通りである。
Figure 0006418222
Figure 0006418222
Figure 0006418222
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図4に示すように、いずれの温度域においても、nC9に比べてテトラメチルペンタンの着火遅れ時間が長い。また、図5に示すように、初期温度750Kの低温度域において、テトラメチルペンタンの中でも、2つのC4が隣接する2233MC5が最も着火遅れ時間が長いことが判る。以下、nC9及び2233MC5の酸化反応の反応経路から着火遅れ時間について考察する。
[n−ノナンnC9の酸化反応経路について]
図6は、nC9の低温度域(初期温度750K)での主要な反応経路を示す。図6中、分子の構造を表示する構造式に付与した・印は、ラジカルを表す。酸化反応は、OHラジカル(・OH)等による初期燃料からのH原子の引き抜きが起点となる。この時、燃料の分子構造により、H原子の引き抜き易さが異なる。
表5は、1級〜3級炭素原子(C1〜C3)と結合する水素原子との間のC−H結合(炭素-水素間の共有結合)を切断するのに必要なエネルギを示している。表5に示すよう
に、このC−H結合解離エネルギはCの級数によって大きく異なり、それに基づいて水素の引き抜き反応の速度が決まる。C−H結合解離エネルギが高いほど結合が切れ難く、水素の引き抜き速度が遅いため、反応性が低くなる。
Figure 0006418222
表5に示すように、燃料分子の末端のC1−H結合は、その他のC2−H結合よりも強く、切断し難い。このため、図6に示すように、その経路を辿る割合(16.4%)は、他の経路を辿る割合(23.9%)と比べて低い。なお、図6では、それ以降の反応は、2位の2級炭素原子からH原子が引き抜かれたアルキルラジカルの反応経路のみを、その代表として記載している。H原子が引き抜かれた箇所には、O分子が付加する。その後、O−O基の酸化作用により、分子内部でのH原子の引き抜き反応が進む。他方、O分子が付加することなく直ちに熱分解に至る経路として「前期熱分解経路S4」があるが、初期温度750Kといった低温度域においては、前者のO分子が付加する反応経路を辿る割合がほぼ100%となる。この反応以降、経路が3つに分かれる。1つ目は、分子内部でH原子が引き抜かれた箇所に、再びO分子が付加する反応を経て連鎖分岐に至る、「低温酸化経路S1」である。2つ目は分子内部でH原子を引き抜くことによって生じたO−O−H基のO−O結合が切断され、切れた箇所とH原子が引き抜かれた箇所が繋がり、環状のエーテル構造を形成する「サイクリック経路S2」である。3つ目は、H原子が引き抜かれた炭素原子から1つ炭素原子を飛ばした箇所のC−C結合が切断されて熱分解を起こす「後期熱分解経路S3」である。このように、低温酸化反応では、「低温酸化経路S1」、「サイクリック経路S2」及び「後期熱分解経路S3」の反応が主に進行するが、初期温度の高い高温酸化反応では、前述の「前期熱分解経路S4」等のOが付加しない反応が主に進行する。
[テトラメチルオクタン2233MC5の酸化反応経路について]
図7には、最も着火遅れ時間の長い、2233MC5の反応経路を示す。初期燃料からH原子を引き抜く箇所の割合が大きく異なるが、これには、C−H結合の強さ(切断の難易度)のみならず、その結合の数も影響している。表6に示すように、nC9と2233MC5の1級炭素C1及び2級炭素C2に結合する水素原子数を比較した。
Figure 0006418222
この2233MC5燃料中の全H原子20個のうち、1級炭素原子と結合しているものが18個を占め、その半数が、主鎖の2位の炭素原子に結合している3個の1級炭素原子のC−H結合のものである。このため、図7に示すOHラジカルによる燃料分子からの最初のH原子の引き抜き反応において、40.1%と高い割合を示す反応経路を辿る要因となる。同図において、それ以降の反応は、代表としてこの反応経路のみを記載しているが、基本的な反応はn−ノナンnC9の場合と変わらない。
[OHラジカルの生成・消費と着火遅れ時間について]
以上、図6および図7より、初期燃料が熱分解に至る反応過程には、全体として4つの経路が存在することが判る。まず、O分子が2回付加し、熱分解に至る低温酸化経路S1、O分子が1回付加した後、環状エーテル構造を経て熱分解に至るサイクリック経路S2、環状エーテル構造を取ることなくそのまま熱分解に至る後期熱分解経路S3、そして、初期燃料からH原子の引き抜きが終わった後に、1回目のOが付加することなく直ちに熱分解に至る前期熱分解経路S4である。これら4つの経路は、初期燃料からH原子が引き抜かれる位置が変わっても、変化することはない。一方、熱分解に至る経路ごとに、OHラジカルの生成と消費の状況は異なる。すなわち、低温酸化経路S1では2つのOHラジカルが生成される。サイクリック経路S2ではOHラジカルが一度生成されるが、熱分解に至るまでに消費するため、OHラジカルの生成/消費の収支は見かけ上±0となる。後期熱分解経路S3では1つのOHラジカルが生成される。そして、前期熱分解経路S4はOHラジカルの生成も消費もない。これらOHラジカルの生成/消費に関わる反応経路の割合が、酸化反応速度、ひいては着火遅れ時間に関連していると考えられる。
表7に各々の初期燃料が熱分解に至るまでに辿る反応経路の割合を示す。
Figure 0006418222
ここで、反応経路の割合は、燃料分子から水素原子がひとつ引き抜かれたアルキルラジカルの消費速度の速度比で表した。2つの燃料での最も顕著な相違は、2233MC5において、OHラジカルを生成しない前期熱分解経路S4の割合が多いことである。これにより、初期燃料のOHラジカルによる消費反応の速度が抑制され、その結果、着火遅れ時間が増大すると言える。
[C−C結合の結合エネルギについての考察]
この前期熱分解経路S4は、図7に示すように、2位炭素原子と3位炭素原子の間のC−C結合の切断によるものであるが、その要因は、当該C−C結合の結合エネルギの弱さにあると推察される。
表8は、アルカンのC−C結合を切断するのに必要なエネルギを示している。
Figure 0006418222
C−C結合解離エネルギは相互に結合される炭素原子の級数の組み合わせによって異なり、それに基づいて炭素原子間の結合の切れ易さが決まる。C−C結合エネルギが低いほど結合が切れ易く、熱分解が起こり易くなる。
表8に示すように、隣接する炭素の級数の和が増加するにつれてC−C結合解離エネルギは低下する傾向がある。例えば、C1−C1、C2−C2、C3−C3、及びC4−C4では、級数の和は各々2、4、6、及び8となり、級数の和が増加するにつれて、C−C結合解離エネルギが低くなる。また、C1−C1、C1−C2、C1−C3、及びC1−C4でも、級数の和は各々2、3、4及び5であるが、同様にC−C結合解離エネルギは低下し、結合は切れ易くなる。
20異性体のうち置換基数4のテトラメチルペンタンでは、図5に示すように、初期温度750Kにおける着火遅れ時間は2233MC5が最も長く、2234MC5、2334MC5、2244MC5の順に短くなっている。
表9にnC9及びこれら4種のテトラメチルペンタンのC−C結合の本数を示す。
Figure 0006418222
表9に示すように、4種のテトラメチルペンタン2233MC5、2234MC5、2334MC5及び2244MC5では、最もC−C結合解離エネルギが低いC−C結合は、各々C4−C4、C3−C4、C3−C4及びC2−C4であり、そのC−C結合解離エネルギ(kcal/mol)は、各々68、74、74及び78である。これらのC−C結合はいずれも2位炭素原子と3位炭素原子の間の結合に該当する。従って、例えば2233MC5のように、2つのメチル置換基をもつ4級炭素原子が隣接する構造の異性体の場合、最も結合エネルギが低いC4−C4結合が容易に切断され、熱分解を起こす。この熱分解はOHラジカルを生成しない。また、図7に示すように、熱分解で生じる鎖長の短いアルキルラジカルは、C1と結合する水素原子の割合、すなわち、表5に示す結合解離エネルギの大きいC1−H結合の割合が相対的に増加するため、水素の引き抜き速度も低下する。これらにより、2233MC5の着火遅れ時間が、テトラメチルペンタンの全ての構造異性体の中で最も遅くなると考えられる。
一方、図5に示すように、4種のテトラメチルペンタンの中では、2244MC5の沸点が最も低くなっている。
これは、2233MC5、2234MC5及び2334MC5では、表2に示す沸点への寄与度の大きいC3−C4結合やC4−C4結合が存在するのに対し、2244MC5では、これらの結合はいずれも存在しない構造であるため、沸点が低くなると考えられる。
[まとめ]
従って、これらC20異性体についての結果から推察すると、テトラメチルアルカンのような複数の置換基を有する分岐アルカンの場合には、同一の炭素原子に重なるメチル置換基が他のメチル置換基と隣接しないことが、高い着火性と高い蒸発性を両立する構造条件と考えられる。換言すると、分岐アルカンを含有する自着火エンジン用燃料において、分岐アルカンの主鎖を構成する炭素のうち、級数が3以上の炭素(すなわち3級炭素及び4級炭素)に隣接する炭素の級数が2以下であるときに、その分岐アルカンは高い着火性と高い蒸発性を両立する可能性がある。また、分岐アルカンの主鎖を構成する炭素のうち、級数が3以上の炭素(すなわち3級炭素及び4級炭素)に隣接する少なくとも1つの炭素の級数が3以上であるときに、その分岐アルカンは着火性及び/又は蒸発性の低下の原因となり得ると考えられる。
<C1226異性体の着火遅れ時間と蒸発性>
図8及び図9に、C1226異性体のうち、それぞれ置換基数1のモノメチル異性体及び置換基数4のテトラメチル異性体の沸点と初期温度750Kにおける着火遅れ時間との関係を示す。また、表10にこれらC1226異性体とn−ドデカンnC12の炭素原子数及び置換基数を示す。
Figure 0006418222
なお、n−ドデカンnC12と、分岐アルカン3MC11、2233MC8の分子構造は以下の通りである。
Figure 0006418222
Figure 0006418222
Figure 0006418222
例えば、「3MC11」では、最初の数字3は、3位の炭素にメチル基が結合していることを示している。そして、末尾の数字11は、主鎖の炭素数が11であることを示している。従って、表10中の置換基数1のC1226異性体、2MC11、4MC11、及び5MC11では、3MC11の化学式中に示すように、それぞれ2位、4位、及び5位の炭素にメチル基が結合した分子構造であることを示している。同様に、置換基数4のC1226異性体では、2233MC8の分子式に示すように、2位から7位までの炭素のいずれかに4つのメチル基が結合した分子構造を有している。
図8に示すように、置換基数1のモノメチルウンデカンの着火遅れ時間は、軽油の着火遅れ時間1.9ms程度(図1)よりも短くなることが判る。また、メチル基の位置が、主鎖の端から中央側へ移動するに伴って、着火遅れ時間が短縮することが判る。
図9に示すように、表10中の置換基数4のテトラメチルオクタンでは、4級炭素数の増加に伴って、着火遅れ時間は長くなる傾向が見られる。例えば、4級炭素数を2つ有する、2233MC8、2244MC8、2255MC8、2266MC8において、概ね着火遅れ時間が長い。なお、同一置換基数同士で比較すると、主鎖の炭素数の多いC1226異性体のテトラメチルオクタンは、図5のC20異性体のテトラメチルペンタンよりも、全体として着火遅れ時間が短くなることが判る。また、全体的に軽油よりも着火遅れ時間は短縮化される傾向があることが判る。
上述のごとく、C20異性体のテトラメチルペンタンに関する考察から、分岐アルカンを含有する自着火エンジン用燃料において、分岐アルカンの主鎖を構成する炭素のうち、級数が3以上の炭素(すなわち3級炭素及び4級炭素)に隣接する少なくとも1つの炭素の級数が3以上であるときは、着火性及び/又は蒸発性の低下の原因となり得ることが判った。しかしながら、C1226異性体のテトラメチルオクタンについての考察から、分岐アルカンの主鎖を構成する炭素のうち、級数が3以上の炭素(すなわち3級炭素及び4級炭素)に隣接する少なくとも1つの炭素の級数が3以上であるときであっても、分岐アルカンの主鎖を構成する炭素のうち、2級炭素の数が好ましくは3以上、特に好ましくは4以上であるときは、その分岐アルカンは高い着火性と高い蒸発性を両立し得ると考えられる。
<分岐アルカンの主鎖の炭素の級数についてのまとめ>
以上まとめると、分岐アルカンを含有する自着火エンジン用燃料において、分岐アルカンの主鎖を構成する炭素のうち、級数が3以上の炭素(すなわち3級炭素及び4級炭素)に隣接する炭素の級数が2以下か、又は、2級炭素の数が好ましくは3以上、特に好ましくは4以上であるときに、その分岐アルカンは、後述する高自着火性成分(第1アルカン)となり得ると考えられる。また、分岐アルカンを含有する自着火エンジン用燃料において、分岐アルカンの主鎖を構成する炭素のうち、級数が3以上の炭素(すなわち3級炭素及び4級炭素)に隣接する少なくとも1つの炭素の級数が3以上であり、且つ、2級炭素の数が好ましくは2以下、より好ましくは1以下であるときに、その分岐アルカンは、後述する低自着火性成分(第2アルカン)となり得ると考えられる。
<C20異性体で構成される混合燃料の着火遅れ解析>
本実施形態に係る自着火エンジン用燃料は、パラフィン成分のみで構成される合成燃料であるが、多数の小濃度の分岐アルカンの混合物により構成される。このような多成分混合燃料の着火遅れを検討すべく、表4A及び表4Bに示すC20異性体の中から複数種類の成分を、比率を変えて混合し、それら混合比率の違いがどのように着火遅れ時間に影響を及ぼすかを検討した。アルカン成分の混合割合(体積%)を表11に示す。
Figure 0006418222
表11に示すように、直鎖アルカンはn−ノナンnC9、分岐アルカンは、モノアルキルアルカンとしてモノメチルオクタン2MC8、3MC8及びテトラアルキルアルカンとしてテトラメチルペンタン2233MC5を混合した。
なお、本明細書において、第1アルカンとしての「高自着火性成分」とは、実際の内燃機関で圧縮行程後半の状態に相当する圧力、約40気圧下において、初期温度750Kにおける着火遅れ時間が軽油の着火遅れ時間(1.9ms程度)よりも短いアルカン成分をいう。また、第2アルカンとしての「低自着火性成分」とは、実際の内燃機関で圧縮行程後半の状態に相当する圧力、約40気圧下において、初期温度750Kにおける着火遅れ時間が軽油の着火遅れ時間よりも長いアルカン成分をいう。
すなわち、図1より、nC9及びモノメチルオクタン2MC8、3MC8は、軽油よりも着火遅れ時間が短いことから、高自着火性成分(第1アルカン)である。また、テトラメチルペンタン2233MC5は、軽油よりも着火遅れ時間が長いことから、低自着火性成分(第2アルカン)である。
参考実験例1及び実施例〜4では、高自着火性成分であるn−ノナンnC9及びモノメチルオクタン2MC8,3MC8の総含有量と低自着火性成分であるテトラメチルペンタン2233MC5の含有量との比率を、体積比で各々1:0、2:1、1:1、1:2とする試料を準備した。また、比較例1として、テトラメチルペンタン2233MC5のみの試料を準備した。さらに、参考例1として、軽油を準備した。すなわち、高自着火性成分及び低自着火性成分の総量に対する低自着火性成分の含有量は、参考実験例1、実施例2、実施例3、実施例4及び比較例1では、各々、0体積%、33体積%、50体積%、67体積%及び100体積%である。
図10に初期温度に対する着火遅れ時間の比較結果を示す。初期温度に対する着火遅れ時間には、初期温度769K以下(1000/Tが約1.3以上)の低温酸化反応に支配される領域(図10中二点鎖線で囲む領域)、初期温度962K以上(1000/Tが約1.04以下)の高温酸化反応に支配される領域(図10中一点鎖線で囲む領域)、及びその間の温度域の遷移領域が存在することが判る。また、低温酸化反応と高温酸化反応に支配される両領域では、初期温度の上昇に伴い、着火遅れ時間が短縮されることが判る。これに対して、中間の温度で現れる遷移領域では、初期温度の上昇に伴い、着火遅れ時間が増大している。この領域は負の温度係数として、特にアルカン燃料で顕著に現れることがよく知られているが、これは表7に示すような初期温度に対する酸化反応経路の違いに起因する。図10から明らかなように、高自着火性成分と低自着火性成分の混合割合により、低温酸化反応や高温酸化反応が支配的となる温度領域やその効き方が異なる。
図10より、[高自着火性成分]のみの参考実験例1の試料と[低自着火性成分]のみの比較例1の試料の着火遅れ時間が大きく異なることが判る。これは、上述のごとく、分岐アルカン構造の特性によるものである。[高自着火性成分]と[低自着火性成分]を1対1に混合した実施例3の試料は、参考実験例1と比較例1のちょうど中間に位置する着火遅れ時間を示した。また、実施例2と実施例4のように、混合割合を変えた場合、相対的に多い成分の着火遅れの特性に近づくことが分かった。このことから、完全予混合において、同一炭素数の異性体を複数成分混合した場合、低自着火性成分の混合割合に比例して高自着火性成分の高自着火性が希釈される傾向があることが判る。
なお、参考例1の軽油では、初期温度700K〜1100Kにおいて、着火遅れ時間は1ms程度から10ms程度の範囲を示した。
図11及び図12は、参考実験例1、実施例〜4及び比較例1における低自着火性成分(第2アルカン)2233MC5の含有量に対する着火遅れ時間を初期温度毎にプロットしたものである。また、図13及び図14は、参考実験例1、実施例〜4及び比較例1における高自着火性成分(第1アルカン)nC9、2MC8、及び3MC8の総含有量に対する着火遅れ時間を初期温度毎にプロットしたものである。なお、図11及び図13では、初期温度962K以上の高温度域及び初期温度769K以下の低温度域のデータについてフィッティング結果を実線で示している。また、図12及び図14では、初期温度833K〜952Kの温度域におけるデータについてフィッティング結果を実線で示している。
図11及び図13に示すように、上記高温度域及び上記低温度域では、低自着火性成分2233MC5の含有割合が増加、すなわち高自着火性成分nC9,2MC8,3MC8の総含有割合が低下するにつれ、比例的に着火遅れ時間が長くなることが判った。
また、図12及び図14に示すように、初期温度833K〜952Kの中温度域(図10中の初期温度1000/Tでは、約1.05〜1.2に相当)では、低自着火性成分2233MC5の混合割合が増加、すなわち高自着火性成分nC9,2MC8,3MC8の総含有量が低下するにつれて、高自着火性成分単独の場合よりも着火遅れ時間は増加する。なお、この温度範囲においては、いずれの混合割合においても、各々、顕著に着火遅れ時間が増加する領域A(中温度域のより高温側、すなわち、より高温酸化反応に近い温度域)と、緩やかに増加する領域B(中温度域のより低温側、すなわち、より低温酸化反応に近い温度域)が存在することが判った。更に、この領域Aから領域Bへの移行は、初期温度の低下に伴い、低自着火性成分の含有割合の増加、すなわち、高自着火性成分の含有割合の低下側へシフトしていくことが判る。
顕著に着火遅れ時間が増加する領域A、すなわち、図14では例えば初期温度952K、909K、889K、870Kにおいて、上述のごとく、低温酸化反応から高温酸化反応への移行に伴って、着火時間が顕著に増加すると考えられる。
一方、緩やかに着火遅れ時間が増加する領域B、すなわち、図14では例えば初期温度851K、833Kにおいて、高自着火性成分の低温酸化反応における発熱と活性化学種の生成により、低温酸化反応から高温酸化反応への移行が抑制され、低自着火性成分を多く混合した場合でも着火は促進されると考えられる。
従って、図12及び図14に示すように、初期温度952K、909K、889K、870K、851K、833Kにおいて、軽油と同等かそれよりも短い着火遅れ時間を得る観点から、高自着火性成分nC9,2MC8,3MC8の総含有量が各々80体積%以上、77体積%以上、60体積%以上、44体積%以上、27体積%以上、17体積%以上、すなわち、低自着火性成分2233MC5の含有量が各々20体積%以下、23体積%以下、40体積%以下、56体積%以下、73体積%以下、83体積%以下であることが望ましい。
なお、例えば833K以上851K以下の低温雰囲気下での燃焼状態を維持する定置型運転を行う自着火エンジンにおいては、高自着火性成分nC9,2MC8,3MC8の総含有量は、好ましくは17体積%以上、より好ましくは20体積%以上、特に好ましくは27体積%以上、低自着火性成分2233MC5の含有量は、好ましくは83体積%以下、より好ましくは80体積%以下、特に好ましくは73体積%以下とすることができる。
また、図12及び図14に示すように、広い環境下において、軽油と同等かそれよりも短い着火遅れ時間を得るためには、高自着火性成分nC9,2MC8,3MC8の総含有量を80体積%以上、すなわち、低自着火性成分2233MC5の含有量を20体積%以下とすることが好ましい。
<n−ノナンの含有量>
高自着火性成分としてのn−ノナンnC9と、低自着火性成分としての2233MC5とを、比率を変えて混合し、軽油と同等かそれよりも優れた短い着火遅れ時間を得るための高自着火性成分nC9及び低自着火性成分2233MC5の含有量について検討した。アルカン成分の混合割合(体積%)を表12に示す。
Figure 0006418222
図15は、実施例5〜8及び比較例1におけるnC9の含有割合に対する着火遅れ時間を初期温度毎にプロットしたものである。初期温度952K、909K、889K、870K、851K、833Kにおいて、軽油と同等かそれよりも短い着火遅れ時間を得る観点から、高自着火性成分nC9の含有量は各々37体積%以上、37体積%以上、37体積%以上、37体積%以上、16体積%以上、33体積%以上、換言すると、低自着火性成分2233MC5の含有量は、63体積%以下、63体積%以下、63体積%以下、63体積%以下、84体積%以下、67体積%以下であることが望ましい。
<モノメチルオクタンの含有量>
高自着火性成分としてのモノメチルオクタン2MC8,3MC8と、低自着火性成分としての2233MC5とを、比率を変えて混合し、軽油と同等かそれよりも優れた短い着火遅れ時間を得るための高自着火性成分2MC8,3MC8、及び低自着火性成分2233MC5の含有量について検討した。アルカン成分の混合割合(体積%)を表13に示す。
Figure 0006418222
図16は、参考実験例9、実施例10〜14及び比較例1における2MC8及び3MC8の総含有量に対する着火遅れ時間を初期温度毎にプロットしたものである。初期温度909K、889K、870K、851K、833Kにおいて、軽油と同等かそれよりも短い着火遅れ時間を得る観点から、高自着火性成分2MC8,3MC8の総含有量は各々88体積%以上、88体積%以上、42体積%以上、42体積%以上、41体積%以上、換言すると、低自着火性成分2233MC5の含有量は、12体積%以下、12体積%以下、58体積%以下、58体積%以下、59体積%以下あることが望ましい。
<C1226異性体で構成される混合燃料の着火遅れ解析>
表10に示すC1226異性体の中から複数種類の成分を、比率を変えて混合し、それら混合比率の違いがどのように着火遅れ時間に影響を及ぼすかを検討した。アルカン成分の混合割合(体積%)を表14に示す。
Figure 0006418222
表14に示すように、直鎖アルカンはn−ドデカンnC12、分岐アルカンは、モノアルキルアルカンとしてモノメチルウンデカン2MC11、3MC11、4MC11、5MC11及びテトラアルキルアルカンとしてテトラメチルオクタン2233MC8を混合した。
なお、図8及び図9に示すように、表14に示すアルカン成分は、初期温度750Kにおける着火遅れ時間が軽油よりも短いことから、全て高自着火性成分である。
図17に、初期温度に対する着火遅れ時間の比較結果を示す。参考実験例15のn−ドデカンnC12及びモノメチルウンデカン2MC11、3MC11、4MC11、5MC11の混合試料と参考実験例19のテトラメチルオクタン2233MC8のみの着火遅れ時間を比較すると、両者は大きく異なることが判る。また、参考実験例15の試料に参考実験例19の試料を混合させてなる実施例16〜18の混合試料の着火遅れ時間は、参考実験例15,19の試料の着火遅れ時間の間に位置している。このことから、着火遅れ時間については、C1226異性体においても、図10に示すC20異性体と同様の傾向を示すことが判る。
<主鎖の長さが異なるテトラメチル異性体からなる混合燃料の着火遅れ解析>
しかしながら、図10に示す比較例1のテトラメチルペンタン2233MC5に比較して、図17に示す参考実験例19のテトラメチルオクタン2233MC8は、着火遅れ時間が大幅に短いことが判る。
表15に両テトラメチルアルカンの炭素原子数と置換基数を示す。
Figure 0006418222
表15から判るように、2233MC8は、2233MC5よりも主鎖の鎖長が長く、4級炭素以外の炭素、特に2級炭素の数が多い。言い換えると、2233MC8は、2233MC5よりも、C−H結合中に占める4級炭素原子同士のC−H結合の割合が相対的に低い。
上述のごとく、表7に示すように、2233MC5では、OHラジカルを生成しない前期熱分解経路S4をたどる割合がnC9に比べて多い傾向が見られた。これに対し、2233MC8では、C−H結合中に占める4級炭素原子同士のC−H結合の割合が相対的に低いことから、前期熱分解経路S4をたどる割合が低下すると考えられる。また、図7に示すように、前期熱分解経路S4をたどるとアルキルラジカルが生成されるが、2233MC8では2233MC5よりもアルキルラジカルの鎖長が長くなる。そうすると、H原子引き抜き速度の速い2級炭素の割合が多くなるため、最終的に他の反応経路S1〜S3をたどって熱分解に至る割合が多くなる。そうして、着火遅れ時間が短くなるものと考えられる。
表15に示すように、2233MC5の2級炭素数は1であるのに対し、2233MC8の2級炭素数は4である。置換基として複数のアルキル基を有するアルカンについて、例えば2233MC8のように、3級炭素及び4級炭素に隣接する少なくとも1つの炭素の級数は3以上であっても、その主鎖を構成する炭素のうち、2級炭素の数が多い場合には着火遅れ時間は短くなるものと考えられる。主鎖を構成する炭素について、2級炭素の数は、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、特に好ましくは4以上である。
表15に示すテトラメチル異性体を、比率を変えて混合し、それら混合比率の違いがどのように着火遅れ時間に影響を及ぼすかを検討した。アルカン成分の混合割合(体積%)を表16に示す。
Figure 0006418222
表16に示すように、参考実験例19は、テトラメチルオクタン2233MC8のみ、比較例1は、テトラメチルペンタン2233MC5のみの試料である。また、実施例20〜23は、両者を表16に示す比率で混合した試料である。
図18に、参考実験例19、実施例20〜23及び比較例1の試料、並びに参考例1の軽油についての、初期温度に対する着火遅れ時間の比較結果を示す。上述のごとく、参考実験例19の試料と比較例1の試料の着火遅れ時間が大きく異なることが判る。また、両試料を、比率を変えて混合した実施例20〜23の試料では、着火遅れ時間は、参考実験例19及び比較例1の試料の着火遅れ時間の間に位置することが判る。このことから、完全予混合において、主鎖の鎖長が異なるテトラメチル異性体を混合した場合においても、図10に示すC20異性体を混合した場合や、図17に示すC1226異性体を混合した場合と同様に、低自着火性成分の混合割合に比例して高自着火性成分の高自着火性が希釈される傾向があることが判る。
図19は、参考実験例19、実施例20〜23及び比較例1における2233MC8の含有量に対する着火遅れ時間を初期温度毎にプロットしたものであり、初期温度909K及び833Kのデータについて、各々フィッティング結果を示している。
図19に示すように、軽油と同等又はそれよりも短い着火遅れ時間を得る観点から、初期温度909Kの場合では、高自着火性成分2233MC8の含有量は92体積%以上、換言すると、低自着火性成分2233MC5の含有量は8体積%以下であることが好ましい。また、初期温度833Kの場合では、高自着火性成分2233MC8の含有量は28体積%以上、換言すると、低自着火性成分2233MC5の含有量は72体積%以下であることが好ましい。
本発明は、着火遅れ時間の増加を抑制し、燃費やエミッション性能を向上させることができるので、極めて有用である。

Claims (7)

  1. パラフィン系炭化水素からなり、第1アルカンと第2アルカンとを含有する自着火エンジン用燃料であって、
    上記第1アルカンは、炭素数7以上16以下の直鎖アルカンであり、
    上記第1アルカンの主鎖を構成する炭素における2級炭素の数は3以上であり、
    上記第2アルカンは複数の置換基を有するとともに、該第2アルカンの主鎖を構成する炭素における2級炭素の数は2以下であり且つ3級炭素及び4級炭素の少なくとも一方に隣接する少なくとも1つの炭素の級数は3以上であり、
    上記第1アルカンの含有量は、16体積%以上であり、
    上記第2アルカンの含有量は、84体積%以下である
    ことを特徴とする自着火エンジン用燃料。
  2. 請求項1において、
    上記第1アルカンの含有量は、37体積%以上であり、
    上記第2アルカンの含有量は、63体積%以下である
    ことを特徴とする自着火エンジン用燃料。
  3. パラフィン系炭化水素からなり、第1アルカンと第2アルカンとを含有する自着火エンジン用燃料であって、
    上記第1アルカン及び上記第2アルカンの炭素数は同一であり、
    上記第1アルカンの主鎖を構成する炭素における2級炭素の数は3以上であり、
    上記第2アルカンは複数の置換基を有するとともに、該第2アルカンの主鎖を構成する炭素における2級炭素の数は2以下であり且つ3級炭素及び4級炭素の少なくとも一方に隣接する少なくとも1つの炭素の級数は3以上であり、
    上記第1アルカンの含有量は、16体積%以上であり、
    上記第2アルカンの含有量は、84体積%以下である
    ことを特徴とする自着火エンジン用燃料。
  4. 請求項3において、
    上記第1アルカンは、置換基として1つのアルキル基を有するモノアルキルアルカンであり、
    上記第1アルカンの含有量は、41体積%以上であり、
    上記第2アルカンの含有量は、59体積%以下である
    ことを特徴とする自着火エンジン用燃料。
  5. 請求項3又は請求項4において、
    上記第1アルカンの含有量は、88体積%以上であり、
    上記第2アルカンの含有量は、12体積%以下である
    ことを特徴とする自着火エンジン用燃料。
  6. パラフィン系炭化水素からなり、第1アルカンと第2アルカンとを含有する自着火エンジン用燃料であって、
    上記第1アルカンは複数の置換基を有するとともに、該第1アルカンの主鎖を構成する炭素における2級炭素の数は3以上であり且つ3級炭素及び4級炭素の少なくとも一方に隣接する少なくとも1つの炭素の級数は3以上であり、
    上記第2アルカンは複数の置換基を有するとともに、該第2アルカンの主鎖を構成する炭素における2級炭素の数は2以下であり且つ3級炭素及び4級炭素の少なくとも一方に隣接する少なくとも1つの炭素の級数は3以上であり、
    上記第1アルカンの含有量は、28体積%以上であり、
    上記第2アルカンの含有量は、72体積%以下である
    ことを特徴とする自着火エンジン用燃料。
  7. 請求項6において、
    上記第1アルカンの含有量は、92体積%以上であり、
    上記第2アルカンの含有量は、8体積%以下である
    ことを特徴とする自着火エンジン用燃料。
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