JP6127927B2 - エンジン用燃料のサロゲート燃料決定方法、サロゲート燃料を用いたエンジン用燃料の燃焼特性の予測方法、予測装置及び予測プログラム - Google Patents

エンジン用燃料のサロゲート燃料決定方法、サロゲート燃料を用いたエンジン用燃料の燃焼特性の予測方法、予測装置及び予測プログラム Download PDF

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Description

本発明は、エンジン用燃料のサロゲート燃料決定方法、サロゲート燃料を用いたエンジン用燃料の燃焼特性の予測方法、予測装置及び予測プログラムに関する。
自動車のエンジン用燃料としては石油由来のガソリン及び軽油が一般に使用されているが、近年は、石炭やバイオマス、天然ガスから生成される合成燃料が注目されている。石炭を原料とする場合はCTL燃料と呼ばれ、バイオマスを原料とする場合はBTLと呼ばれ、天然ガスを原料とする場合はGTL燃料と呼ばれている。合成燃料は、原料から合成ガス(水素と一酸化炭素の混合ガス)を作り、この合成ガスをFT合成反応により液体燃料粗油とし、更に粗油を水素化精製や水素化分解(クラッキング)による所定の炭素鎖での切断、異性化を施すなど、アップグレーディングすることで最終製品化されたものであり、n−アルカン及びiso−アルカンを主成分とし、硫黄分や芳香族化合物を殆ど含まない。
ところで、燃料の燃焼反応はエンジンにおいて重要な要素であり、その燃焼反応について詳細な知見が必要とされる。その場合、実燃料の燃焼試験によって燃焼特性を把握する方法では限界がある。そこで、燃焼試験によらず、シミュレーションによって燃焼特性を把握することが考えられる。しかし、ガソリンや軽油は非常に多くの炭化水素成分からなり、合成燃料であっても、非常に多くの成分よりなり、しかも分析できない成分も存在する。そのため、実燃料の物理的・化学的性質を全て組み込んだシミュレーションを行なうことはできない。
これに対して、非特許文献1には、ガソリンに関して、サロゲート燃料によって燃焼特性を予測することが記載されている。そのサロゲート燃料としては、ガソリンのアンチノック性を評価するオクタン価の指標として用いられる標準物質である、ノルマルヘプタンとイソオクタンを成分とする二成分混合燃料、並びにそれら燃料にトルエンを加えた三成分混合燃料が挙げられている。
ガソリンサロゲート燃料の成分混合比率はオクタン価のみが実燃料(ガソリン)と一致するように設定されるのが通常である。或いは、実燃料を分析して化学構造によって特徴付けられる組成群(n−アルカン群、iso−アルカン群、cyclo-アルカン群、アルケン群、芳香族炭化水素群)に分類し、各組成群に属する代表的な化学種(標準物質の二成分を含む)でサロゲート燃料を構成し、それら代表化学種の混合比率の決定に、オクタン価と共に実燃料の組成群の成分比率を考慮することも行なわれている。
ディーゼル燃料に関しても、自己着火性を評価するセタン価の指標として用いられる標準物質である、n−ヘキサデカン(n−セタン)及びヘプタメチルノナンを含めた、実燃料の各組成群に属する代表的な化学種でサロゲート燃料を構成し、それら代表化学種の混合比率の決定に、セタン価と共に実燃料の組成群の成分比率を考慮することも行なわれている。
また、上記非特許文献1には、サロゲート燃料成分の燃焼反応モデルの構築に詳細反応自動生成プログラムKUCRSを利用すること、シミュレーションにCHEMKINを用いること、並びに、そのシミュレーションによってモデルの着火遅れ時間を計算し、実燃料の自己着火性を予測することも記載されている。
公益社団法人 自動車技術界 学術講演会前刷集No.64-11 11〜16頁「ガソリンサロゲート燃料の多段着火反応機構」
実燃料には炭素数が異なる多くのn−アルカン及びiso−アルカンが含まれ、それらのセタン価やオクタン価は相異なる。また、iso−アルカンには側鎖の置換位置が異なる多くの異性体があり、それらのセタン価やオクタン価は相異なる。従って、サロゲート燃料を構成するにあたり、従来のようなn−アルカン群及びiso−アルカン群各々から代表的な化学種を一種ずつ選定するという手法では、実燃料に即応したサロゲート燃料が得られるとは必ずしも云えない。
また、サロゲート燃料は、その成分の選定に加えて、その成分の混合比率も重要になる。しかし、単にセタン価又はオクタン価が実燃料に一致するように混合比率を設定するだけでは、実燃料に即したサロゲート燃料が得られるとは必ずしも云えない。
また、実燃料の各組成群に属する代表的な化学種の混合比率の決定に、セタン価又はオクタン価と共に実燃料の組成群の成分比率を考慮するという手法も実際には難しい。すなわち、各組成群を代表する化学種の混合比率を実燃料の組成群の成分比率に合わせると、その混合比率によってサロゲート燃料のセタン価又はオクタン価が一義的に決まり、必ずしも実燃料のセタン価又はオクタン価には一致しない。
本発明の観点の一つは、実燃料に即したサロゲート燃料の成分を選定する手法を確立することにある。特に、パラフィン系の合成燃料に係るサロゲート燃料の決定に有用な手法を確立するものである。
本発明の別の観点は、サロゲート燃料成分の混合比率を実燃料に即して最適化する手法を確立することにある。特に、パラフィン系の合成燃料に係るサロゲート燃料の決定に有用な手法を確立するものである。
また、本発明のさらに別の観点は、上述の如き観点から決定したサロゲート燃料を用いて実燃料の燃焼特性を予測する手法を確立することにある。
本発明は、上記課題を解決するために、実燃料のアルカン成分の分析結果に基づき、各アルカン成分の比率、炭素数及び着火性を考慮して、実燃料の模擬に適したアルカン成分を選定し、それらアルカン成分によってサロゲート燃料を構成するようにした。
すなわち、本発明に係るサロゲート燃料の決定方法は、エンジン用燃料としてのパラフィン系合成燃料の燃焼特性を解析するためのサロゲート燃料を決定する方法であって、
上記エンジン用燃料のn−アルカン群及び少なくともモノメチルアルカン群を含むiso−アルカン群を定性定量分析するステップと、
上記n−アルカン群に、成分比率最大のn−アルカンが属する炭素数18〜21の大炭素数クラスと、該大炭素数クラスよりも炭素数が少ない炭素数10〜13の小炭素数クラスを設定するステップと、
上記n−アルカン群の大炭素数クラスの炭素数に対応する炭素数18〜21の大炭素数クラスを上記分析で得られた着火性が最も低いモノメチルアルカン群に設定し、上記n−アルカン群の小炭素数クラスの炭素数に対応する炭素数10〜13の小炭素数クラスを上記分析で得られた着火性が最も低いモノメチルアルカン群に設定するステップと、
上記設定した各クラスからサロゲート燃料を構成するアルカン成分を選定するステップと、
上記エンジン用燃料の燃焼特性に係る属性をターゲットとして、上記選定したアルカン成分の混合比率を最適化するステップとを備え
上記属性として、セタン価、セタン指数及びオクタン価から選ばれる一種の着火性指標を採用することを特徴とする。
パラフィン系合成燃料は、炭化水素原料を一旦ガス化した後、FT合成及びクラッキングによって得られる。その主成分はアルカン(n−アルカン及びモノメチルアルカン)である。このように合成燃料はアルカンを主成分とするから上記サロゲート燃料の決定方法を利用に相応しいということができる。
ここに、「着火性」とは、ガソリンのアンチノック性、並びにディーゼル燃料の自己着火性を含む概念である。従って、上記着火性の指標としては、アンチノック性に係るオクタン価、自己着火性に係るセタン価やセタン指数を用いることができる。この点は、後述の燃焼特性予測方法、燃焼特性予測装置及び燃焼特性予測プログラムも同じである。
さて、n−アルカン及びモノメチルアルカンは、その炭素数が多くなるほど着火性が高くなる(オクタン価は低くなり、セタン価やセタン指数は高くなる。)。また、モノメチルアルカンは、メチル基の置換位置が主鎖の端から中央に行くに従って着火性が低下していき、例えば、炭素数が20程度以下などのように、多くの場合、4M−アルカン(「M」は「メチル」を意味する。以下、同じ。)において着火性が最も低くなり、その後は逆転して、5M−アルカンでは4M−アルカンよりも着火性が高くなる。
そうして、上記方法においては、n−アルカン群に大炭素数クラス及び小炭素数クラスを設定し、当該大炭素数クラスに対応する大炭素数クラスを着火性が最も低いモノメチルアルカン群に設定し、当該小炭素数クラスに対応する小炭素数クラスを着火性が最も低いモノメチルアルカン群に設定し、各クラスからサロゲート燃料用のアルカン成分を選定している。
このことは、要するに、サロゲート燃料成分として、全アルカン成分中から、着火性が高く炭素数が多いn−アルカン、着火性が高く炭素数が少ないn−アルカン、着火性が低く炭素数が多いモノメチルアルカン、並びに着火性が低く炭素数が少ないモノメチルアルカンを選定しているということである。
このように、炭素数と着火性を基準にして、各々実燃料に含まれる互いに物性が異なる少なくとも4種のアルカン成分をサロゲート燃料の成分として選定するから、得られるサロゲート燃料の属性は実燃料に対応したものになり易い。しかも、n−アルカン群の大炭素数クラスは、成分比率が最大のn−アルカンが属するクラスであるから、実燃料との対応性がさらに良くなる。
よって、このサロゲート燃料によれば、実燃料の燃焼特性を把握するためのシミュレーションの信頼性が高くなる。
小炭素数クラスが設定されるモノメチルアルカン群と、大炭素数クラスが設定されるモノメチルアルカン群とは、同じ場合と異なる場合がある。つまり、大炭素数クラスを設定したモノメチルアルカン群に、n−アルカン群の小炭素数クラスのn−アルカンに対応するモノメチルアルカン異性体が存在するときは、当該モノメチルアルカン群に小炭素数クラスを設定する。そのようなモノメチルアルカン異性体が当該モノメチルアルカン群に存在しないときは、そのようなモノメチルアルカン異性体が存在する別の着火性が最も低いモノメチルアルカン群に小炭素数クラスを設定する。
好ましいのは、さらに、
上記n−アルカン群に、上記大炭素数と小炭素数クラスの中間の炭素数14〜17の中間炭素数クラスを設定するステップと、
上記n−アルカン群の中間炭素数クラスの炭素数に対応する炭素数14〜17の中間炭素数クラスを複数のモノメチルアルカン群各々に設定するステップとを備え、
上記n−アルカン群及び上記複数のモノメチルアルカン群に設定した各中間炭素数クラスから上記サロゲート燃料を構成するアルカン成分をさらに選定することである。
このように、中間炭素数クラスを設定してサロゲート燃料成分を選定することにより、得られるサロゲート燃料と実燃料との対応性が良くなる。
好ましいのは、上記モノメチルアルカン群の大炭素数クラス及び小炭素数クラスを4−メチルアルカン群に設定することである。これにより、得られるサロゲート燃料と実燃料との対応性が良くなる。
好ましいのは、上記サロゲート燃料成分の混合比率を最適化するステップでは、上記ターゲットとなる上記エンジン用燃料の属性として、セタン価、セタン指数及びオクタン価から選ばれる一種の着火性指標、上記分析されたアルカンの総量に占めるn−アルカンの比率、並びに当該総量に占めるiso−アルカンの比率を採用することである。以下のその理由を説明する。
エンジンにおける炭化水素燃料の自己着火燃焼は低温酸化反応と呼ばれる連鎖分岐反応により表現される。この酸化反応は、混合気中の酸素による燃料分子からの水素引抜き反応とそれに伴うアルキルラジカルの生成により開始され、次いでアルキルラジカルへの酸素付加反応、分子内異性化反応と呼ばれる分子内部での水素引抜き反応、二次酸素付加反応を経て進行する。このサイクルは低温酸化反応サイクルと呼ばれているが、上述の如く、低温酸化の開始反応や分子内異性化反応は、燃料分子のC−H結合からの水素引抜き反応が支配している。すなわち、C−H結合からの水素引抜き速度の大小は燃料の自己着火のし易さを決める重要な要因となる。
この水素引抜き速度は、C−H結合の結合解離エネルギーの大きさと強く相関する。結合解離エネルギーが小さいほど、水素引抜き速度が大きく、水素を引抜き易い。更に、この結合解離エネルギーは、各C-H結合中の水素が結合している炭素の級数に依存する。一般に炭素は、結合している炭素数によって、一級(primary)・二級(secondary)・三級(tertiary)に分類されるが、それらの炭素と結合する一級水素・二級水素・三級水素の順に結合解離エネルギーが小さくなる。従って、水素引抜き速度は、三級水素>二級水素>一級水素の順に小さくなる。すなわち、燃料分子の化学構造と自己着火のし易さには強い関係があり、n−アルカンに対して相対的に一級水素を多数有するiso−アルカンでは、水素引抜き速度の点から自己着火のし易さに差異があるということである。
そこで、サロゲート燃料成分の混合比率の最適化するステップでは、セタン価等の着火性指標だけでなく、実燃料の分析によって得られるn−アルカン及びiso−アルカン各々の比率をターゲットとして採用している。これにより、得られるサロゲート燃料と実燃料との対応性が良くなる。
そうして、着火性が異なる複数のn−アルカンと着火性が異なる複数のiso−アルカンを組み合わせてサロゲート燃料を構成するようにしているから、実燃料の上記着火性指標、n−アルカン成分比率及びiso−アルカン成分比率をターゲットとして、サロゲート燃料の上記着火性指標、n−アルカン成分比率及びiso−アルカン成分比率を合わせ込むことが可能になる。
好ましいのは、上記ターゲットとなる上記エンジン用燃料の属性として、さらに、H/Cモル比、密度、発熱量及び蒸留特性を採用し、最適化において、上記着火性指標、上記n−アルカン成分の比率及び上記iso−アルカン成分の比率の重みをH/Cモル比、密度、発熱量及び蒸留特性の重みよりも大とすることである。これにより、得られるサロゲート燃料と実燃料との対応性がさらに良くなる。
次に本発明に係るエンジン用燃料の燃焼特性予測方法は、上記方法によって当該エンジン用燃料のサロゲート燃料を決定し、このサロゲート燃料の燃焼反応モデルを構築し、この燃焼反応モデル用いたシミュレーションによって上記エンジン用燃料の燃焼特性を予測することを特徴とする。
ここに予測する「燃焼特性」には、燃料の着火時期(着火遅れ時間)をはじめとして、燃焼生成物や燃焼温度の経時変化特性、さらには、未燃HC、NOx、Soot(煤)等の排出性等を含む。この点は、以下に述べる燃焼特性予測装置及び燃焼特性予測プログラムも同じである。
また、本発明に係るエンジン用燃料としてのパラフィン系合成燃料の燃焼特性予測装置は、
上記エンジン用燃料の定性定量分析によって得られたn−アルカン群及び少なくともモノメチルアルカン群を含むiso−アルカン群の分析データ、上記エンジン用燃料の燃焼特性に係る属性、並びに燃料の反応条件を入力する手段と、
上記エンジン用燃料の燃焼特性を予測するためのサロゲート燃料を構成する成分をn−アルカン群及びモノメチルアルカン群から選定するためのクラス設定ルールを予め記憶する手段と、
上記n−アルカン群及びモノメチルアルカン群の分析データに基いて上記クラス設定ルールによってサロゲート燃料を構成する成分を選定するためのクラスを設定する手段と、
上記エンジン用燃料の属性をターゲットとして、上記クラスから選定したサロゲート燃料を構成する成分の混合比率を最適化する手段と、
上記サロゲート燃料成分の燃焼詳細反応機構データを生成する手段と、
上記サロゲート燃料成分の燃焼詳細反応機構データと燃料の反応条件をもとにシミュレーションによって上記エンジン用燃料の燃焼特性を予測するデータを得る手段とを備え、
上記属性として、セタン価、セタン指数及びオクタン価から選ばれる一種の着火性指標が採用され、
上記クラス設定ルールは、上記入力されたn−アルカン群に、成分比率最大のn−アルカンが属する炭素数18〜21の大炭素数クラスと、該大炭素数クラスよりも炭素数が少ない炭素数10〜13の小炭素数クラスを設定するステップとを設定し、該n−アルカン群の大炭素数クラスの炭素数に対応する炭素数18〜21の大炭素数クラスを上記入力された着火性が最も低いモノメチルアルカン群に設定し、上記n−アルカン群の小炭素数クラスの炭素数に対応する炭素数10〜13の小炭素数クラスを上記入力された着火性が最も低いモノメチルアルカン群に設定するというものである。
また、上記クラス設定ルールは、さらに、上記n−アルカン群に、上記大炭素数と小炭素数クラスの中間の炭素数14〜17の中間炭素数クラスを設定し、この中間炭素数クラスの炭素数に対応する炭素数14〜17の中間炭素数クラスを複数のモノメチルアルカン群各々に設定するものであることが好ましい。
本発明に係るエンジン用燃料としてのパラフィン系合成燃料の燃焼特性予測プログラムは、
エンジン用燃料の燃焼特性を予測するために、燃料成分の指定によって該燃料成分の詳細反応機構データを生成する第1ソフト、燃料属性をターゲットとして燃料成分の混合比率を最適化する第2ソフト、並びに上記燃料成分の詳細反応機構データ及び反応条件をもとにシミュレーションによって化学種の濃度及び温度の時間変化を推算する第3ソフトを記憶させたコンピュータを、
上記エンジン用燃料の定性定量分析によって得られたn−アルカン群及び少なくともモノメチルアルカン群を含むiso−アルカン群の分析データ、上記エンジン用燃料の燃焼特性に係る属性としての、セタン価、セタン指数及びオクタン価から選ばれる一種の着火性指標、並びに燃料の反応条件を入力する手段、
上記エンジン用燃料の燃焼特性を予測するためのサロゲート燃料を構成する成分をn−アルカン群及びモノメチルアルカン群から選定するためのクラス設定ルールを予め記憶する手段、
上記n−アルカン群及びモノメチルアルカン群の分析データに基づいて上記クラス設定ルールによってサロゲート燃料を構成する成分を選定するためのクラスを設定する手段、
上記第2ソフトを動作させて、上記エンジン用燃料の属性をターゲットとして、上記クラスから選定したサロゲート燃料を構成する成分の混合比率を最適化する手段、
上記第1ソフトを動作させて、上記サロゲート燃料成分の燃焼詳細反応機構データを生成する手段、及び
上記第3ソフトを動作させて、上記サロゲート燃料成分の燃焼詳細反応機構データ及び燃料の反応条件をもとにシミュレーションによって上記エンジン用燃料の燃焼特性を予測するデータを得る手段として機能させるためのプログラムであり、
上記クラス設定ルールは、上記入力されたn−アルカン群に、成分比率最大のn−アルカンが属する炭素数18〜21の大炭素数クラスと、該大炭素数クラスよりも炭素数が少ない炭素数10〜13の小炭素数クラスを設定するステップとを設定し、該n−アルカン群の大炭素数クラスの炭素数に対応する炭素数18〜21の大炭素数クラスを上記入力された着火性が最も低いモノメチルアルカン群に設定し、上記n−アルカン群の小炭素数クラスの炭素数に対応する炭素数10〜13の小炭素数クラスを上記入力された着火性が最も低いモノメチルアルカン群に設定するというものである。
また、上記クラス設定ルールは、さらに、上記n−アルカン群に、上記大炭素数と小炭素数クラスの中間の炭素数14〜17の中間炭素数クラスを設定し、この中間炭素数クラスの炭素数に対応する炭素数14〜17の中間炭素数クラスを複数のモノメチルアルカン群各々に設定するものであることが好ましい。
上記エンジン用燃料の燃焼特性を予測する方法、装置及びプログラム各々によれば、上述の実燃料との対応性が良いサロゲート燃料を用いることにより、実燃料の燃焼特性に関して信頼性が高い予測が可能になる。
以上のように、本発明に係るサロゲート燃料の決定方法によれば、実燃料の分析で得られたn−アルカン群に成分比率最大のn−アルカンが属する大炭素数クラス及び小炭素数クラスを設定し、当該大炭素数クラスの炭素数に対応する大炭素数クラスを着火性が最も低いモノメチルアルカン群に設定し、当該小炭素数クラスの炭素数に対応する小炭素数クラスを着火性が最も低いモノメチルアルカン群に設定し、これら各クラスからサロゲート燃料成分を選定するから、実燃料との対応性が良いサロゲート燃料が得られる。
また、本発明に係るサロゲート燃料の決定方法によれば、サロゲート燃料成分の混合比率の最適化するステップにおいて、セタン価等の着火性指標だけでなく、実燃料の分析によって得られるn−アルカン及びiso−アルカン各々の比率をターゲットとして採用しているから、実燃料との対応性が良いサロゲート燃料が得られる。
また、本発明に係るエンジン用燃料の燃焼特性を予測する方法、装置又はプログラムによれば、上述の実燃料との対応性が良いサロゲート燃料を用いることにより、実燃料の燃焼特性に関して信頼性が高い予測が可能になる。
エンジン用燃料の燃焼特性予測装置の構成図である。 エンジン用燃料の燃焼特性予測方法の構成図である。 サロゲート燃料の決定及び燃焼特性予測に係る処理の流れ図である。 実燃料の定性定量分析されたアルカン成分を各異性体別に炭素数とセタン価の二次元マップに配列した図である。 サロゲート燃料Sur#0の属性値と実燃料の属性値との一致度を示すレーダーチャート図である。 サロゲート燃料Sur#1の属性値と実燃料の属性値との一致度を示すレーダーチャート図である。 サロゲート燃料Sur#2の属性値と実燃料の属性値との一致度を示すレーダーチャート図である。 サロゲート燃料Sur#3の属性値と実燃料の属性値との一致度を示すレーダーチャート図である。 サロゲート燃料Sur#4の属性値と実燃料の属性値との一致度を示すレーダーチャート図である。 サロゲート燃料Sur#5の属性値と実燃料の属性値との一致度を示すレーダーチャート図である。 サロゲート燃料Sur#6の属性値と実燃料の属性値との一致度を示すレーダーチャート図である。 サロゲート燃料Sur#1によるGTL燃料の燃焼特性解析結果(着火時期と温度の関係)を示すグラフ図である。
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
<全体構成>
図1は本実施形態に係る自動車エンジン用燃料の燃焼特性予測装置を構成するコンピュータのシステム構成図である。本実施形態に係るエンジン用燃料は天然ガスから生成されるディーゼルエンジン用のGTL軽油(パラフィン系合成燃料)である。
本実施形態は、実燃料(エンジン用燃料)のサロゲート燃料を決定し、該サロゲート燃料を用いたシミュレーションにより実燃料の燃焼特性を予測する。図1に示すように、本実施形態の燃焼特性予測装置10は、入力手段20、CPU30、記憶装置40及び出力装置50を備えている。
入力手段20は、各種データを入力するキーボードやマウスに相当する処理を実行するものであり、実燃料の定性定量分析によって得たn−アルカン及び少なくともモノメチルアルカンを含むiso−アルカンの分析データ、実燃料の燃焼特性に係る属性、並びに燃焼特性予測シミュレーションのための反応条件の入力に用いられる。
CPU30は、記憶装置40に記憶したプログラムに従って、実燃料の燃焼特性を予測するための処理を実行するものであり、サロゲート燃料を構成する成分を選定するためのクラスを設定する手段31、サロゲート燃料を構成する成分の混合比率を最適化する手段32、サロゲート燃料成分の燃焼詳細反応機構データを生成する手段33、サロゲート燃料成分の燃焼詳細反応機構データ及び設定された反応条件をもとに、シミュレーションによって実燃料の燃焼特性を予測するデータを得る手段34として機能する。
記憶装置40は、ブートプログラム等を記憶しているROM、各種データ及び処理結果を一時的に記憶するデータ格納手段としてのRAM、並びに燃焼特性予測のための各種プログラム(ソフト)を記憶するHDD等の記憶手段を備えている。その燃焼特性予測のためのプログラムとしては、燃焼詳細反応機構自動生成ソフト(第1ソフト)、実燃料の属性をターゲットとしてサロゲート燃料成分の混合比率を最適化するソフト(第2ソフト)、及び詳細化学反応解析ソフト(第3ソフト)がある。第1ソフト乃至第3ソフトについては、それぞれ一般公開されているものを利用することができ、さらには、それらを改良して用いることもできる。記憶装置40には、さらに、上記第1乃至第3のソフトを記憶させたコンピュータのCPUを、上記サロゲート燃料成分選定のためのクラス設定手段31、サロゲート燃料成分の混合比率最適化手段32、サロゲート燃料成分の燃焼詳細反応機構データ生成手段33、実燃料の燃焼特性予測データ取得手段34として機能させるプログラム(第4ソフト)が記憶されている。
出力装置50は、各種データを出力するディスプレイやプリンタに相当する処理を実行する。
図2にサロゲート燃料を決定し、実燃料の燃焼特性を予測するプロセスの全体構成を示す。
サロゲート燃料を決定するために、実燃料を分析して、そのセタン価、密度、蒸留特性、発熱量、H/C比及びアルカン成分を調べる。セタン価はH-NMR分析によって推定する(S1,S2)。燃料品質(密度、蒸留特性、発熱量、H/C比)は各種の分析装置によって分析する(S3,S4)。アルカン成分はGC-MS分析(ガスクロマトグラフィー質量分析)によって定性定量する(S5,S6)。
アルカン成分の分析結果に基づいて所定の手順でサロゲート燃料を構成する成分の組み合わせ候補を決定する(S7)。各候補について、実燃料の属性(セタン価、n−アルカン成分比率、iso−アルカン成分比率等)をターゲットとして、燃料成分の混合比率の最適化を行ない、サロゲート燃料を決定する(S8)。そして、決定したサロゲート燃料成分の反応機構データを作成する(S9)。得られたサロゲート燃料の反応機構データを用いてシミュレーション(数値解析)により実燃料の燃焼特性を予測する(S10)。
<セタン価の推定(S1,S2)>
先に説明したように、燃料分子のC−H結合からの水素引抜き速度が燃料の自己着火のし易さを決める重要な要因となり、この水素引抜き速度は、C−H結合の種類によって異なる。そして、C−H結合の特徴はケミカルシフトで規定することができる。そこで、実燃料のH-NMR分析結果から重回帰分析によってそのセタン価を推定した。すなわち、H-NMRスペクトルのケミカルシフト値を閾値とする燃料の分子構造の情報(燃料分子を構成するC−H結合の種類とその結合種に属する水素原子の数)を、燃料の分子構造を表すパラメータとして、実燃料のセタン価を推定した。実施形態に係る実燃料のセタン価は略75であった。
<品質試験(S3,S4)>
実施形態に係る実燃料の品質を調べた結果を表1に示す。T10は10%留出温度、T50は50%留出温度、T90は90%留出温度である。
<GC-MS分析(S5,S6)>
実燃料のGC-MS分析により、炭素数6〜25のn−アルカン、並びに炭素数12〜20の2M−アルカン、3M−アルカン、4M−アルカン、5M−アルカン、6M−アルカン、7M−アルカン及び8M−アルカンを定性定量することができた。定性定量することができたアルカン成分は燃料全量の略40vol%であった。この定性定量することができたアルカン成分の総量に占めるn−アルカンの質量比率は略15%であった。残りの略85%がiso−アルカンで、そのうち、モノメチルアルカンの質量比率は略20%であった。
<サロゲート燃料の決定,燃焼特性予測(S7〜S10)>
上述の実燃料の定性定量分析によって得たn−アルカン及び少なくともモノメチルアルカンを含むiso−アルカンの分析データ、実燃料の燃焼特性に係る属性、並びに燃焼特性予測シミュレーションのための反応条件は、入力手段20によって入力され、RAMに保存される。
図3に上記第4ソフトによるサロゲート燃料の決定及び燃焼特性予測に係る処理の流れを示す。ステップA2及びA3がクラス設定手段31に相当し、ステップA65がサロゲート燃料成分の混合比率最適化手段32に相当し、ステップA56がサロゲート燃料成分の燃焼詳細反応機構データ生成手段33に相当し、ステップA7が実燃料の燃焼特性予測データ取得手段34に相当する。
スタート後のステップA1で上記n−アルカン群及びモノメチルアルカン群を含むiso−アルカン群の定性定量分析データが読み込まれ、そのn−アルカン群及びモノメチルアルカン群に所定のクラス設定ルールに基づいてサロゲート燃料を構成する成分を選定するためのクラスが設定される(ステップA2,A3)。以下、具体的に説明する。
図4は定性定量することができたアルカン成分を各異性体別に炭素数とセタン価の二次元マップに配列したものである。n−アルカン群のうちの成分比率が最大のアルカンはn−ノナデカンであり、成分比率は約2質量%である。サロゲート燃料を構成する成分の候補は以下のステップで決定する。
ステップA2;上記アルカン成分のn−アルカン群に、成分比率最大のn−ノナデカンが属する炭素数18〜21の大炭素数クラス(1)と、n−ドデカンが属する炭素数10〜13の小炭素数クラス(3)とを設定する。好ましくは、さらに、大炭素数クラス(1)と小炭素数クラス(3)の中間の炭素数14〜17の中間炭素数クラス(2)を設定する。なお、この中間炭素数クラス(2)にはn−ヘキサデカンが属する。
ステップA3;n−アルカン群の大炭素数クラス(1)に対応する炭素数18〜21の大炭素数クラス(4)をセタン価が最も低い(着火性が最も低い)4M−アルカン群に設定する。n−アルカン群の小炭素数クラス(3)に対応する炭素数10〜13の小炭素数クラス(8)をセタン価が最も低い(着火性が最も低い)4M−アルカン群に設定する。好ましくは、さらに、n−アルカン群の中間炭素数クラス(2)に対応する炭素数14〜17の中間炭素数クラス(5)〜(7)を2M−アルカン群、3M−アルカン群及び4M−アルカン群の各々に設定する。
なお、大炭素数クラス(4)には4M−ノナデカン、小炭素数クラス(8)には4M−ウンデカン、中間炭素数クラス(5)には2M−ペンタデカン、中間炭素数クラス(6)には3M−ペンタデカン、中間炭素数クラス(7)には4M−ペンタデカンが属する。
ステップA4において、サロゲート燃料を構成する必須成分として、大炭素数クラス(1),(4)及び小炭素数クラス(3),(8)の各々から1つずつ計4成分を選定する。好ましくは、上記必須の4成分に加えて、さらに、中間炭素数クラス(2)、(5)〜(7)のうちの少なくとも1つのクラスから1つを、サロゲート燃料を構成する成分として選定する。中間炭素数クラス(2)、(5)〜(7)の各々から1つずつ選定した場合、サロゲート燃料は計8成分で構成されることになる。また、上記必須の4成分に加えて、上記中間炭素数クラス(2)、(5)〜(7)に属しないモノメチルアルカンをサロゲート燃料の成分として選定することもできる。
以上により、サロゲート燃料を構成する成分の組み合わせに関して、複数の候補を決める。
表2はサロゲート燃料候補Sur#0〜Sur#6を示す。Sur#0〜Sur#2は上記ステップA2〜A4によって設定した実施例に係るサロゲート燃料候補である。Sur#3〜Sur#6は任意設定した比較例に係るサロゲート燃料候補である。なお、表2のサロゲート燃料候補Sur#0〜Sur#6各々を構成する成分欄には便宜上実燃料の属性をターゲットとして最適化した混合比率(質量%)を記載している。
Sur#0は、大炭素数クラス(1),(4)及び小炭素数クラス(3),(8)各々から1つずつ選定した4成分と中間炭素数クラス(5),(6)各々から選定した2成分の計6成分でサロゲート燃料を構成するケースである。
Sur#1は、大炭素数クラス(1),(4)及び小炭素数クラス(3),(8)各々から1つずつ選定した4成分と中間炭素数クラス(2)、(5)〜(7)各々から選定した4成分の計8成分でサロゲート燃料を構成するケースである。
Sur#2は、大炭素数クラス(1),(4)及び小炭素数クラス(3),(8)各々から1つずつ選定した4成分と、中間炭素数クラス(2)、(5)〜(7)に属しない2M−ウンデカン、2M−ノナデカン、3M−ウンデカン及び3M−ノナデカンの4成分の、計8成分でサロゲート燃料を構成するケースである。
<サロゲート燃料の決定(S8)>
ステップA5において、各サロゲート燃料候補について、実燃料の属性をターゲットとして、燃料成分の混合比率の最適化を行なわれる。この最適化には、実燃料の属性をターゲットとしてサロゲート燃料成分の混合比率を最適化するソフトが用いられる。
ターゲットとすべき属性としては、ステップS1,S2のH-NMR分析で得られた実燃料のセタン価、ステップS3,S4の品質試験で得られた実燃料の密度、蒸留特性(T10、T50及びT90)、低位発熱量及びH/Cモル比、並びにステップS5,S6のGC-MS分析で得られたアルカンの総量に占めるn−アルカンの比率、並びに当該総量に占めるiso−アルカンの比率が読み込まれて用いられる。
これらターゲットには重み付けされ、セタン価、n−アルカン比率及びiso−アルカン比率の重みが最大とされ、その次にT50の重みが大とされる。各属性の重み係数の一例を示すと、n−アルカン成分の比率、iso−アルカン成分比率、及びセタン価では1.1、蒸留特性(T50)では1.05、H/Cモル比、密度、発熱量、及び蒸留特性(T10、T90)では1.0程度である。
各サロゲート燃料候補について燃料成分の混合比率を変えながら各属性値が計算される。そして、実燃料の属性値との一致性が最も高くなるように燃料成分の混合比率(質量%)を最適化することで、サロゲート燃料を決定する。
サロゲート燃料候補Sur#0〜Sur#6の最適化された成分の混合比率は表2に示すとおりである。サロゲート燃料候補Sur#0〜Sur#6の属性値と実燃料の属性値の一致度合を図5〜図11に示す。同図において、指標軸は実燃料の各属性値を1とした場合のサロゲート燃料の相対的な属性値を示す。
Sur#0(図5)、Sur#1(図6)及びSur#2(図7)は、Sur#3〜Sur#6(図8〜図11)に比べて、実燃料の属性との一致度が高く、実燃料の燃焼特性について、当該サロゲート燃料を用いたシミュレーションにより信頼性が高い予測ができることが見込まれる。Sur#0〜Sur#2のうちでは、大炭素数クラス(1),(4)及び小炭素数クラス(3),(8)に加えて、中間炭素数クラス(2)、(5)〜(7)からもサロゲート燃料成分を選定したSur#0(図5)及びSur#1(図6)では特に上記属性の一致度が高くなっている。
<数値解析用データの作成(S9)>
ステップA6において、燃料成分の混合比率が最適化されたサロゲート燃料の成分混合比率と属性値を入力することにより、サロゲート燃料の反応機構データが作成される。このデータ作成には、燃焼詳細反応機構自動生成ソフトが用いられる。
<サロゲート燃料による実燃料の燃焼特性予測(S10)>
ステップA7において、先に決定されたサロゲート燃料により、シミュレーションによって実燃料の燃焼特性の予測データが取得される。シミュレーションには詳細化学反応解析ソフトが用いられる。すなわち、先に設定したサロゲート燃料成分の詳細反応機構と反応条件をもとに、解が求められる。
GTL軽油のサロゲート燃料Sur#1について、反応条件を、密閉系完全混合反応器(Closed Homogeneous Reactor)モデルでの自己着火燃焼、燃料及び空気の均一予混合燃料(当量比=0.5)、反応器内の初期圧力=40気圧、並びに初期温度=700K〜1300K(100K毎)とし、Hの生成量がピークになった時点を着火と定義し、温度と着火時期(着火遅れ時間)の関係を示すデータを取得した。結果を比較燃料のデータと共に図12に示す。比較燃料は、ディーゼル軽油のサロゲート燃料(n−ヘキサデカン、デカリン、HMN及びAMNの混合燃料,セタン価=約50)である。
図12によれば、初期温度900K以上の中〜高温度域では、GTL軽油とディーゼル軽油の着火時期に差は殆どない。初期温度900Kよりも低温度域では、GTL軽油はディーゼル軽油よりも着火時期が早くなっている。この理由は、GTL軽油が実質的には強い低温酸化反応を示すパラフィンのみの燃料であるため、低温での燃焼促進効果が高いのに対して、ディーゼル軽油は低温酸化反応が弱い又は低温酸化反応を示さないオレフィンや芳香族炭化水素等を含有していることによると考えられる。
<その他>
上記実施形態はディーゼルエンジン用のGTL燃料を対象としているが、本発明は、ガソリンエンジン用及びディーゼルエンジン用いずれの燃料にも適用することができ、また、合成燃料に限らず、従前の軽油やガソリンにも適用することができる。
また、上記実施形態ではセタン価を着火性の指標としたが、セタン指数であってもよい。また、ガソリンエンジン用燃料にあってはオクタン価を着火性の指標とすればよい。なお、セタン価に代えてオクタン価を図4の横軸にすると、n−アルカン群及び各モノメチルアルカン群は、セタン価の場合とは逆の態様で配列されることになるが、クラス設定ルールはセタン価の場合と同じである。
10 燃焼特性予測装置
20 入力手段
30 CPU
31 クラス設定手段
32 混合比率最適化手段
33 燃焼詳細反応機構データ生成手段
34 燃焼特性予測データ取得手段
40 記憶装置
50 出力装置

Claims (10)

  1. エンジン用燃料としてのパラフィン系合成燃料の燃焼特性を解析するためのサロゲート燃料を決定する方法であって、
    上記エンジン用燃料のn−アルカン群及び少なくともモノメチルアルカン群を含むiso−アルカン群を定性定量分析するステップと、
    上記n−アルカン群に、成分比率最大のn−アルカンが属する炭素数18〜21の大炭素数クラスと、該大炭素数クラスよりも炭素数が少ない炭素数10〜13の小炭素数クラスを設定するステップと、
    上記n−アルカン群の大炭素数クラスの炭素数に対応する炭素数18〜21の大炭素数クラスを上記分析で得られた着火性が最も低いモノメチルアルカン群に設定し、上記n−アルカン群の小炭素数クラスの炭素数に対応する炭素数10〜13の小炭素数クラスを上記分析で得られた着火性が最も低いモノメチルアルカン群に設定するステップと、
    上記設定した各クラスからサロゲート燃料を構成するアルカン成分を選定するステップと、
    上記エンジン用燃料の燃焼特性に係る属性をターゲットとして、上記選定したアルカン成分の混合比率を最適化するステップとを備え
    上記属性として、セタン価、セタン指数及びオクタン価から選ばれる一種の着火性指標を採用することを特徴とするサロゲート燃料の決定方法。
  2. 請求項1において、さらに、
    上記n−アルカン群に、上記大炭素数と小炭素数クラスの中間の炭素数14〜17の中間炭素数クラスを設定するステップと、
    上記n−アルカン群の中間炭素数クラスの炭素数に対応する炭素数14〜17の中間炭素数クラスを複数のモノメチルアルカン群各々に設定するステップとを備え、
    上記n−アルカン群及び上記複数のモノメチルアルカン群に設定した各中間炭素数クラスから上記サロゲート燃料を構成するアルカン成分をさらに選定することを特徴とするサロゲート燃料の決定方法。
  3. 請求項1又は請求項2において、
    上記モノメチルアルカン群の大炭素数クラス及び小炭素数クラスを4−メチルアルカン群に設定することを特徴とするサロゲート燃料の決定方法。
  4. 請求項1乃至請求項3のいずれか一において、
    上記サロゲート燃料成分の混合比率を最適化するステップでは、上記ターゲットとなる上記エンジン用燃料の属性として、セタン価、セタン指数及びオクタン価から選ばれる一種の着火性指標、上記分析されたアルカンの総量に占めるn−アルカンの比率、並びに当該総量に占めるiso−アルカンの比率を採用することを特徴とするサロゲート燃料の決定方法。
  5. 請求項4において、
    上記ターゲットとなる上記エンジン用燃料の属性として、さらに、H/Cモル比、密度、発熱量及び蒸留特性を採用し、最適化において、上記着火性指標、上記n−アルカン成分の比率及び上記iso−アルカン成分の比率の重みをH/Cモル比、密度、発熱量及び蒸留特性の重みよりも大とすることを特徴とするサロゲート燃料の決定方法。
  6. エンジン用燃料としてのパラフィン系合成燃料の燃焼特性予測方法であって、
    請求項1乃至請求項5のいずれか一に記載された方法によって上記エンジン用燃料のサロゲート燃料を決定し、
    上記サロゲート燃料の燃焼反応モデルを構築し、
    上記燃焼反応モデル用いたシミュレーションによって上記エンジン用燃料の燃焼特性を予測することを特徴とするエンジン用燃料の燃焼特性予測方法。
  7. エンジン用燃料としてのパラフィン系合成燃料の燃焼特性予測装置であって、
    上記エンジン用燃料の定性定量分析によって得られたn−アルカン群及び少なくともモノメチルアルカン群を含むiso−アルカン群の分析データ、上記エンジン用燃料の燃焼特性に係る属性、並びに燃料の反応条件を入力する手段と、
    上記エンジン用燃料の燃焼特性を予測するためのサロゲート燃料を構成する成分をn−アルカン群及びモノメチルアルカン群から選定するためのクラス設定ルールを予め記憶する手段と、
    上記n−アルカン群及びモノメチルアルカン群の分析データに基づいて上記クラス設定ルールによってサロゲート燃料を構成する成分を選定するためのクラスを設定する手段と、
    上記エンジン用燃料の属性をターゲットとして、上記クラスから選定したサロゲート燃料を構成する成分の混合比率を最適化する手段と、
    上記サロゲート燃料成分の燃焼詳細反応機構データを生成する手段と、
    上記サロゲート燃料成分の燃焼詳細反応機構データと燃料の反応条件をもとにシミュレーションによって上記エンジン用燃料の燃焼特性を予測するデータを得る手段とを備え、
    上記属性として、セタン価、セタン指数及びオクタン価から選ばれる一種の着火性指標が採用され、
    上記クラス設定ルールは、上記入力されたn−アルカン群に、成分比率最大のn−アルカンが属する炭素数18〜21の大炭素数クラスと、該大炭素数クラスよりも炭素数が少ない炭素数10〜13の小炭素数クラスを設定するステップとを設定し、該n−アルカン群の大炭素数クラスの炭素数に対応する炭素数18〜21の大炭素数クラスを上記入力された着火性が最も低いモノメチルアルカン群に設定し、上記n−アルカン群の小炭素数クラスの炭素数に対応する炭素数10〜13の小炭素数クラスを上記入力された着火性が最も低いモノメチルアルカン群に設定するというものであるエンジン用燃料の燃焼特性予測装置。
  8. 請求項7において、
    上記クラス設定ルールは、さらに、上記n−アルカン群に、上記大炭素数と小炭素数クラスの中間の炭素数14〜17の中間炭素数クラスを設定し、この中間炭素数クラスの炭素数に対応する炭素数14〜17の中間炭素数クラスを複数のモノメチルアルカン群各々に設定するものであることを特徴とするエンジン用燃料の燃焼特性予測装置。
  9. エンジン用燃料としてのパラフィン系合成燃料の燃焼特性予測プログラムであって、
    エンジン用燃料の燃焼特性を予測するために、燃料成分の指定によって該燃料成分の詳細反応機構データを生成する第1ソフト、燃料属性をターゲットとして燃料成分の混合比率を最適化する第2ソフト、並びに上記燃料成分の詳細反応機構データ及び反応条件をもとにシミュレーションによって化学種の濃度及び温度の時間変化を推算する第3ソフトを記憶させたコンピュータを、
    上記エンジン用燃料の定性定量分析によって得られたn−アルカン群及び少なくともモノメチルアルカン群を含むiso−アルカン群の分析データ、上記エンジン用燃料の燃焼特性に係る属性としての、セタン価、セタン指数及びオクタン価から選ばれる一種の着火性指標、並びに燃料の反応条件を入力する手段、
    上記エンジン用燃料の燃焼特性を予測するためのサロゲート燃料を構成する成分をn−アルカン群及びモノメチルアルカン群から選定するためのクラス設定ルールを予め記憶する手段、
    上記n−アルカン群及びモノメチルアルカン群の分析データに基づいて上記クラス設定ルールによってサロゲート燃料を構成する成分を選定するためのクラスを設定する手段、
    上記第2ソフトを動作させて、上記エンジン用燃料の属性をターゲットとして、上記クラスから選定したサロゲート燃料を構成する成分の混合比率を最適化する手段、
    上記第1ソフトを動作させて、上記サロゲート燃料成分の燃焼詳細反応機構データを生成する手段、及び
    上記第3ソフトを動作させて、上記サロゲート燃料成分の燃焼詳細反応機構データ及び燃料の反応条件をもとにシミュレーションによって上記エンジン用燃料の燃焼特性を予測するデータを得る手段として機能させるためのプログラムであり、
    上記クラス設定ルールは、上記入力されたn−アルカン群に、成分比率最大のn−アルカンが属する炭素数18〜21の大炭素数クラスと、該大炭素数クラスよりも炭素数が少ない炭素数10〜13の小炭素数クラスを設定するステップとを設定し、該n−アルカン群の大炭素数クラスの炭素数に対応する炭素数18〜21の大炭素数クラスを上記入力された着火性が最も低いモノメチルアルカン群に設定し、上記n−アルカン群の小炭素数クラスの炭素数に対応する炭素数10〜13の小炭素数クラスを上記入力された着火性が最も低いモノメチルアルカン群に設定するというものであるエンジン用燃料の燃焼特性予測プログラム。
  10. 請求項9において、
    上記クラス設定ルールは、さらに、上記n−アルカン群に、上記大炭素数と小炭素数クラスの中間の炭素数14〜17の中間炭素数クラスを設定し、この中間炭素数クラスの炭素数に対応する炭素数14〜17の中間炭素数クラスを複数のモノメチルアルカン群各々に設定するものであることを特徴とするエンジン用燃料の燃焼特性予測プログラム。
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