以下、本発明の一実施形態に係る電動補助装置及び電動補助自転車を、図面を参照して具体的に説明する。
図1は、本実施形態に係る電動補助自転車の構成を示す側面図である。図1に示すように、本実施形態に係る電動補助自転車1は、フレーム10を備えている。フレーム10は、フロントフォーク11、ヘッドパイプ12、及びダウンチューブ13を備えている。さらに、フレーム10は、シートチューブ14、シートステー15、及びチェーンステー16を備えている。なお、以下の説明にあたり、電動補助自転車1の通常の走行方向に合わせて、電動補助自転車1の前側(図1の右側)を前側、電動補助自転車1の後側(図1の左側)を後側として説明する。
フロントフォーク11は、電動補助自転車1の前部に配置されており、フロントフォーク11の上端部にヘッドパイプ12が接続されている。また、ヘッドパイプ12における後部側には、ダウンチューブ13の一端部が接続されている。さらに、ヘッドパイプ12におけるダウンチューブ13が接続された部位の直上部には、シートチューブ14が接続されている。
シートチューブ14は、前後方向部材14Aと、上下方向部材14Bとを備えている。前後方向部材の14Aは、略前後方向に延在しながら、後方に行くにしたがってやや下降する傾斜を備えている。また、上下方向部材14Bは、略上下方向に延在しながら後方に行くに上方が後方にやや傾いている。前後方向部材14Aにおける後端部が上下方向部材14Bにおける下端位置に接合されることでシートチューブ14が形成されている。また、前後方向部材14Aにおける一端部がヘッドパイプ12に接続されており、上下方向部材14Bの下端部と、ダウンチューブ13の他端部とが接続されている。
シートチューブ14の上下方向部材14Bにおける上端部の後部側には、シートステー15の一端部が接続されており、シートチューブ14の下端部の後部側には、チェーンステー16の一端部が接続されている。そして、シートステー15の他端部とチェーンステー16の他端部とが互いに接続されている。
フレーム10におけるフロントフォーク11には、前輪21が回動可能に取り付けられており、シートステー15とチェーンステー16との接続部には、後輪22が回動可能に取り付けられている。後輪22には、図示しないスプロケット(以下「後方スプロケット」という)が後輪22と同軸上に配置されて取り付けられている。
また、ヘッドパイプ12には、ハンドルステム23が挿通されている。ハンドルステム23は、ヘッドパイプ12に対して回動可能とされている。さらに、ハンドルステム23の上端にはハンドル24が取り付けられている。また、シートチューブ14における上下方向部材14Bにはシートポスト25が嵌め込まれている。このシートポスト25の上端にはサドル26が取り付けられている。
さらに、シートチューブ14とチェーンステー16との接続部には、図示しないスプロケット(以下「前方スプロケット」という)を介してクランク27の一端部が取り付けられており、クランク27の他端部には、ペダル28が取り付けられている。クランク27は、左右方向(図1の紙面を貫く方向)に沿った回動軸周りに回動可能とされている。また、ペダル28は、クランク27の他端部に位置し、左右方向に沿った回動軸周りに回動可能とされている。なお、クランク27及びペダル28は、図示されたクランク27及びペダル28の左右対称位置にも設けられている。このため、電動補助自転車1は、1組のクランク27及びペダル28を備えている。
前方スプロケット及び後方スプロケットには、チェーン29が巻きまわされている。ペダル28に運転者等の踏力が加えられると、前方スプロケットが回転する。前方スプロケットの回転は、チェーン29を介して後方スプロケットに伝達されて後方スプロケットが回転し、後方スプロケットの回転によって後輪22が回転する。
他方、前輪21の車軸には、補助駆動力付加手段である電動モータ30が取り付けられている。電動モータ30は、前輪21を回転させる駆動力を生成するモータである。電動モータ30の回転は、図示しない減速機構によって減速され前輪21に伝達される。こうして、電動モータ30は、前輪21に補助トルクを付加している。電動モータ30としては、適宜のモータを用いることができるが、例えばブラシレスDCモータを好適に用いることができる。
また、シートチューブ14の後部には、バッテリ31がシートチューブ14に対して着脱可能に取り付けられている。バッテリ31は、電動モータ30に対して電気的に接続されており、電動モータ30に対して電力を供給可能とされている。バッテリ31は、例えばリチウムイオン二次電池からなり、充電を行うことによって繰り返し使用することができる。さらに、バッテリ31は、電動モータ30が回生電力を生成可能である場合には、この回生電力も充電可能である。
次に、電動補助装置について説明する。図2は、本発明の一実施形態に係る電動補助装置のブロック構成図である。図1に示す電動補助自転車1は、図2に示す電動補助装置Mを搭載している。
図2に示すように、本実施形態に係る電動補助装置Mは、電源回路41、入力トルク検出部42、クランク回転数検出部43、及び操作・表示部44を備えている。また、電動補助装置Mは、モータ駆動回路45、モータトルク検出部46、及びモータ回転数検出部47を備えている。さらに、電動補助装置Mは、制御手段であるMCU(Micro Controller Unit)50並びに上記の電動モータ30及びバッテリ31を備えて構成されている。
電動補助装置Mにおける電源回路41、入力トルク検出手段である入力トルク検出部42、回転数検出手段であるクランク回転数検出部43、操作・表示部44、及びモータ駆動回路45は、いずれもMCU50に接続されている。さらに、電動モータ30はモータ駆動回路45に接続されており、バッテリ31は電源回路41及びモータ駆動回路45に接続されている。
電源回路41は、例えばチョッパ方式の降圧型DC−DCコンバータを備えて構成されている。電源回路41では、バッテリ31から出力された直流電流を降圧型DC−DCコンバータで降圧し、降圧した直流電流をMCU50の駆動電力としてMCU50に供給している。
入力トルク検出部42は、トルクセンサを含んで構成されている。トルクセンサは、図1に示す電動補助自転車1のクランク27と前方スプロケットが設けられた位置に配設されている。入力トルク検出部42は、運転者等がペダル28を踏み込んだ際に、ペダルに加えられた踏力による入力トルクを検出し、検出した入力トルクの大きさを示す入力トルク信号をMCU50に出力する。
トルクセンサとしては、適宜公知のものを用いることができる。例えば、ばね等の弾性体と、この弾性体の変位量から、トルクセンサが固定された固定部における変位量を求めるポテンショメータを備えるトルクセンサを用いることができる。このトルクセンサにおける弾性体は、クランク27と前方スプロケットの間に配置されている。弾性体は、運転者等のペダル28の踏み込みによって生じる入力トルクに応じて変位する。このときの弾性体の変位量をカムや遊星ギヤ等によって固定部での変位量に変換し、変換した変位量をポテンショメータで電気信号に変換する。あるいは、磁歪効果を有する磁歪材と検出用のコイルとで構成された非接触式のトルクセンサを用いることもできる。
クランク回転数検出部43は、クランク27の回転数を検出し、検出したクランク回転数を示すクランク回転数信号をMCU50に出力する。クランク回転数検出部43は、例えばクランクの回転数を非接触式の回転センサで読み取って検出している。クランク回転数検出部43は、検出したクランク回転数を示すクランク回転数信号をMCU50に出力する。
操作・表示部44は、操作入力部と表示部とを一体的に構成したものである。操作入力部は、電源スイッチやアシストモード切替スイッチを備えている。電源スイッチは、図2に示す電動補助装置M全体の起動及び停止を切り替えるスイッチである。また、アシストモード切替スイッチは、電動モータ30による補助トルクの大きさを切り替えるためのスイッチである。操作・表示部44は、操作入力部に対する操作入力の内容を示す操作入力信号をMCU50に出力する。
操作・表示部44における表示部は、MCU50から出力される操作入力信号に応じた情報に基づいて、各種の表示を行う。操作・表示部44は、例えば図1に示す電動補助自転車1のハンドル24に取り付けられている。操作・表示部44がハンドル24に取り付けられていることにより、運転者が操作・表示部44の操作や視認を行いやすくされている。
モータ駆動回路45は、例えばPWM(Pulse Width Modulation)方式によって電動モータ30の駆動制御を行っている。モータ駆動回路45では、MCU50から供給される補助トルク信号に基づいて、電動モータ30を駆動するための駆動電力をバッテリ31から取り出して電動モータ30に供給する。電動モータ30は、モータ駆動回路45から供給される駆動電力に応じた補助トルクを発生させて前輪21を回転駆動する。この前輪21の回転駆動によって補助駆動力が発生する。このように、本実施形態では、電動モータ30から前輪21に補助トルクを付加するいわば前輪駆動方式とされているが、電動モータは前輪21と後輪22のいずれの車輪に取り付けられていてもよく、例えば後輪22に補助トルクを付加する後輪駆動方式のものとすることもできる。
モータトルク検出部46は、電動モータ30のトルクを検出し、検出したトルクの大きさを示すモータトルク検出信号をMCU50に出力する。ここで、電動モータ30が発生させるトルクは、電動モータ30に供給される電流に比例する。従って、モータトルク検出部46は、電動モータ30に供給される電流に基づいて電動モータ30のトルクを検出してもよい。
モータ回転数検出部47は、電動モータ30の回転数を検出し、検出した回転数を示す回転数検出信号をMCU50に出力する。例えば、電動モータ30がブラシレスDCモータによって構成される場合、モータ回転数検出部47は、マグネットロータの回転位置を検出するためにホール素子などの磁気センサを備えて構成され、この磁気センサが電動モータ30に付随して設けられる。本実施形態では、磁気センサの出力信号に基づいて電動モータ30の回転数を検出する。なお、モータ回転数検出部47は、例えば光学式の回転検出器を含んで構成されていてもよい。光学式の回転検出器としては、例えば発光ダイオード等の光源からの光を、スリット円盤上の位置検出パターンを通して受光素子で読み取るものを用いることができる。
MCU50は、単一の半導体チップにCPU、メモリ、入出力回路、タイマ回路等を含むコンピュータシステムを集積したLSI(Large Scale Integration)である。MCU50は、入力トルク検出部42が検出した入力トルクを修正トルクに変換し、修正トルクに基づいて補助トルクを求めて、電動モータ30を制御する。
図2に示すように、MCU50は、修正トルク算出部51及び補助トルク算出部52を備えて構成されている。修正トルク算出部51は、補助トルク算出部52において補助トルクを算出する前処理に位置づけられる入力側の処理として、入力トルク検出部42を含む各種センサから送信されたデータの処理を行い、入力トルク検出部42から送信される入力トルクの調整を行っている。修正トルク算出部51では、入力側の処理として、入力トルク検出部42が検出した入力トルクの修正を行っている。一方の補助トルク算出部52では、出力側の処理として、修正トルク算出部51で算出された修正トルク等の情報に基づいて、電動モータ30が補助駆動力を付与する際の補助トルクを算出している。このように、修正トルク算出部51では、いわば入力側に関するトルクの調整を行っており、補助トルク算出部52では、出力側に関するトルクの算出を行っている。したがって、修正トルクは、修正トルク算出部51において実行される入力側の処理で算出される。
修正トルク算出部51は、入力トルク検出部42から出力された入力トルクを修正トルクに変換する。修正トルク算出部51は、図3に示す修正トルク変換マップを記憶しており、入力トルク検出部42から出力された入力トルクを修正トルクに変換するにあたって、図3に示す修正トルク変換マップを利用している。このように、入力トルクから修正トルクへの変換は、入力側の処理で行っている。修正トルク変換マップの具体的内容及び修正トルク変換マップを用いて入力トルクから修正トルクへの変換する際の手順については、後にさらに説明する。
補助トルク算出部52は、モータトルク検出部46及びモータ回転数検出部47から出力される各種信号に基づいて、走行状況に適したアシスト比率を算出する。例えば、電動モータ30の回転数が低くかつ電動モータ30のトルクが大きい場合には、発進直後の状態または上り坂を走行している状態等であると推測される。このような場合、MCU50は、より大きな補助駆動力を発生させるアシスト比率を算出する。
さらに、補助トルク算出部52は、算出したアシスト比率及び修正トルク算出部51で算出された修正トルクに基づいて、電動モータ30で発生させる補助トルクに応じた駆動電力を算出する。そして、算出した駆動電力を示すモータ出力指令値をモータ駆動回路45に出力する。
次に、本実施形態に係る電動補助装置Mによる主な制御について説明する。本実施形態に係る電動補助装置Mでは、MCU50の修正トルク算出部51において、入力トルク検出部から出力される入力トルクを、モータ出力指令値の算出に用いる修正トルクに変換する。MCU50では、修正トルクに基づいて電動モータ30に付加する補助トルクを発生させるためのモータ出力指令値を算出する。このため、修正トルク以外の諸条件が一定の場合、修正トルクの増減に伴って補助トルクも増減する。また、修正トルクが0である場合には、補助トルクも0となる。
図3は、本実施形態に係る修正トルク変換マップを示す図である。図3に示すように、修正トルク変換マップは、横軸に入力トルクが設定され、縦軸に修正トルクが設定されている。修正トルク変換マップには、入力トルクを修正トルクに変換するにあたり、入力トルクの増加に伴って修正トルクを増加させる基準増加ラインBLが設定されている。基準増加ラインBLは、入力トルク=修正トルクであり、入力トルク:修正トルクが、1:1となる関係とされた増加直線である。基準増加ラインBLに沿った修正トルク変換マップでは、入力トルクがそのまま修正トルクとなり(入力トルク=修正トルク)、例えば入力トルクTα=修正トルクCαとなる。
また、入力トルクが所定のしきい値Tt未満の範囲では、修正トルクを非走行値とする。本実施形態では、入力トルクが所定のしきい値Tt未満の範囲では、修正トルクを0としている。このとき、非走行値としては、0以外の値とすることもできるが、非走行値は、0に近い値、例えば停止中の電動補助自転車1が自走を開始しない程度の値とすることができる。
しきい値Ttは、例えば停止中の電動補助自転車1の自走を抑制するために設定されるしきい値であり、例えば停止中の電動補助自転車1が自走する可能性があるトルクよりも小さいトルクの値で設定される。しきい値Ttは、適宜の数値とすることができるが、例えば、10(Nm)〜40(Nm)の範囲内における15(Nm)、18(Nm)、20(Nm)、25(Nm)、30(Nm)など、適宜の数値とすることができる。また、10(Nm)〜40(Nm)の範囲内の他の適宜の数値とすることができる。あるいは、この範囲を外れた適宜の数値とすることもできる。このように、本実施形態の修正トルク変換マップでは、入力トルクがしきい値Tt未満の場合には、基準増加ラインBLから外れたマップとなっている。
さらに、入力トルクが所定のしきい値Tt以上の場合、入力トルクが所定の増加値Tuとなるまでの範囲では、入力トルクの増加に伴って修正トルクが増加する際の増加ラインの傾斜が、基準増加ラインBLの傾斜よりも大きくなる条件下で設けられた漸増ラインRLに沿って、入力トルクの増加に応じて修正トルクを漸増させる。言い換えると、入力トルクがしきい値Tt以上の場合に、基準増加ラインBLに到達するまでの間は、基準増加ラインBLの傾斜よりも大きな傾斜をもって入力トルクの増加に応じて修正トルクを漸増させる。
ここでの入力トルクの増加値Tuは、漸増ラインRLと基準増加ラインBLとが交差するときの入力トルクの値である。所定の増加値Tuは適宜の数値とすることができるが、例えば、しきい値Tt+(3(Nm)〜20(Nm))の範囲内における適宜の数値とすることができる。あるいは、基準増加ラインBLの傾斜角度の所定倍数、例えば2倍の傾斜角度の漸増ラインRLを設定して、基準増加ラインBLと漸増ラインRLとが交差する点の入力トルクの値を増加値Tuとすることもできる。
さらに、入力トルクがしきい値Ttであるときに、修正トルクを、非走行値(=0)を超えて入力トルクTt未満の値にオフセットさせる。具体的には、入力トルクがしきい値Tt未満の状態では修正トルクを0とする。また、入力トルクがしきい値Ttになった際には、修正トルクを0としたり、入力トルクTtと同等の値である第1修正トルクCtとしたりするのではなく、0からCtまでの間における所定のオフセット修正トルク(オフセット値)Cofに修正トルクをオフセットさせる(Tt>Cof)。なお、修正トルクをオフセットさせる入力トルクの値は、しきい値Ttとするほか、しきい値Ttよりも大きい値とすることもできる。なお、ここでのオフセットとは、基準増加ラインBLに沿うように、入力トルクの増加に伴って連続的に修正トルクを変化させるのではなく、しきい値Ttにおける修正トルクにおける0から修正トルクオフセット値Cofに間隔をあけて変化するような断続的な変化をさせるために修正トルクをずらすことをいう。
ここでのオフセットは、入力トルクを示す座標軸に対して垂直となるように設定する。また、オフセット修正トルクCofは、入力トルクTtに対応する第1修正トルクCtに対して所定の割合となる値としている。本実施形態では、第1修正トルクCtの50%の値をオフセット修正トルクCofとしている。また、オフセット値は、入力トルク未満の数値の範囲でその他の値とすることもできる。
次に、本実施形態に係る電動補助装置Mを搭載した電動補助自転車1の作用について説明する。
本実施形態に係る電動補助装置Mでは、図4に示す修正トルク変換マップTMを参照して入力トルクを修正トルクに変換する。修正トルク変換マップでは、入力トルクがしきい値Tt未満の場合には、修正トルクが0となる。このため、入力トルク検出部42におけるトルクセンサが誤検出をしたとしても、この誤検出による電動補助装置Mの誤作動、さらには、電動補助装置Mを搭載した電動補助自転車1の不意の自走を抑制することができる。
また、入力トルクがしきい値Ttとなったときには、修正トルクが増加する方向に修正トルクをオフセットさせて入力トルクを修正トルクに変換している。具体的に、入力トルクがしきい値Ttであるときには、修正トルクを一気に入力トルクと同一の値とするのではなく、このときの入力トルク(=しきい値)Ttよりも小さいオフセット修正トルクCofとしている。このため、修正トルク及び電動モータ30による補助駆動力の変動量を小さくすることができる。したがって、アシストフィーリングへの悪影響を抑制することができる。
さらには、入力トルクがしきい値Ttであるときには、修正トルクを0とするのではなく、オフセット修正トルクCofとしている。このため、入力トルクがしきい値Tt未満のときに修正トルクを0に設定したことに伴う補助駆動力の減少量を抑制することができるので、電動モータ30の補助駆動力が小さくなりすぎないようにすることができる。よって、電動補助装置Mを搭載した電動補助自転車1では、アシストフィーリングへの悪影響を抑制しながらも、電動モータ30の補助駆動力が小さくなりすぎないようにすることができる。
以下、従来の制御との比較において本実施形態に係る電動補助装置Mを搭載した電動補助自転車1の作用効果について説明する。以下の説明にあたり、図4に破線で示す変換マップを第1比較マップCM1とし、1点鎖線で示す変換マップを第2比較マップCM2とする。また、本実施形態に係る変換マップを実線で示し、実施マップTMとしている。なお、入力トルクが0〜しきい値Tt未満の範囲、及び参考値Trより大きい範囲では、第1比較マップCM1、第2比較マップCM2、及び実施マップTMが重なり合い、図4では実施マップTMを優先して図示している。また、入力トルクが増加値Tuより大きい範囲では、第1比較マップCM1及び実施マップTMが重なり合い、実施マップTMを優先して図示している。
第1比較マップCM1では、入力トルクがしきい値Ttに到達すると、修正トルクが0から第1修正トルクCt(=入力トルクTt)まで一気に大きくなるので、修正トルクが急激に変動する。このため、電動モータ30による補助トルクが急激に変動するとともに、補助駆動力も急激に変動する。この補助トルク及び補助駆動力の急激な変動が、アシストフィーリングに与える悪影響の原因となりえる。
また、第2比較マップCM2では、入力トルクがしきい値Ttに到達した時点から、入力トルクの増加に伴って修正トルクが漸増する。このため、修正トルクに急激な変動が生じることはなく、アシストフィーリングへの悪影響の抑制に寄与する。ところが、入力トルクがしきい値Ttに到達した後は、入力トルクの増加に伴って修正トルクは徐々に増加するのみであるので、補助駆動力が小さくなりすぎる懸念がある。
これらの比較マップCM1,CM2に対して、実施マップTMでは、入力トルクがしきい値Ttとなったときに修正トルクを0からオフセット修正トルクCof(<入力トルクTt)までオフセットさせている。このため、アシストフィーリングへの悪影響を抑制しながらも、電動モータ30による補助駆動力が小さくなりすぎないようにすることができる。
また、本実施形態の電動補助自転車1では、入力トルクがしきい値Tt以上の場合に、基準増加ラインBLに到達するまでの間は、基準増加ラインBLの傾斜よりも大きな傾斜をもつ漸増ラインRLに沿って、入力トルクの増加に応じて修正トルクを漸増させている。このように、漸増ラインRLに沿って修正トルクを漸増させることにより、電動モータ30によって付加される補助トルクの変動を小さくすることができる。したがって、電動モータ30の補助トルクが増加している間におけるアシストフィーリングの違和感を軽減することができる。
以下、本発明の変形例について説明する。上記の実施形態では、入力トルクがしきい値Ttとなって修正トルクをオフセットさせる際のオフセット値Cofは一定とされているが、修正トルクのオフセット量を諸条件によって変動させることもできる。この変形例では、オフセット値Cofをクランク回転数に応じて変動させている。クランク回転数は、図2に示すクランク回転数検出部43で検出される。また、MCU50における修正トルク算出部51では、クランク回転数検出部43から出力されたクランク回転数に基づいて、オフセット値Cofを設定する。
オフセット値Cofを設定する際には、図5に示すオフセット値算出マップを用いる。図5に示すように、オフセット値算出マップの横軸はクランク回転数であり、縦軸はオフセット値(トルク)となっている。クランク回転数が0のときには、オフセット値Cofは所定の値、たとえばCa(Nm)とされており、クランク回転数がS0となるまでは、クランク回転数が増大するほどオフセット値Cofも増大する。また、クランク回転数がS0となったときのオフセット値CofをCbとする。そして、クランク回転数がS0以上となった時にも、オフセット値CofはCbとなる。
一般にクランク回転数が大きい際には電動補助自転車1の車速が速くなっている。電動補助自転車1の車速が速い場合には、補助トルクの変動量が大きくなっても、アシストフィーリングに与える悪影響は、車速が遅い場合よりも一般的に小さくなる。このため、クランク回転数が大きいほど、オフセット値Cofを大きくするようにしている。このように、クランク回転数が大きいほどオフセット値Cofを大きくすることにより、修正トルクと入力トルクの差が小さくなるので、運転者のペダルの操作に応じた補助トルクの損失を小さくすることができる。その結果、アシストフィーリングに与える悪影響を大きくなりにくい状態で運転者の労力を軽減することができる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。例えば、上記の実施形態においては、入力トルクが所定のしきい値Ttから増加値Tuとなるまでの範囲では、直線状の漸増ラインRLに沿って、入力トルクの増加に応じて修正トルクを漸増させている。この漸増ラインRLに対して、曲線状漸増ラインを設定し、曲線状漸増ラインに沿って入力トルクの増加に応じて修正トルクを漸増させることもできる。このときの曲線状漸増ラインとしては、上に凸となる曲線状とすることが好適である。上に凸となる曲線状漸増ラインとすることにより、基準増加ラインBLに滑らかに接続させることができる。その結果、修正トルクの急激な変化を抑制でき、アシストフィーリングに対する悪影響を抑制することができる。また、曲線状漸増ラインとして、しきい値Ttの位置では下に凸となり、増加値Tuの位置では上に凸となるようにすることもできる。この場合、しきい値Tt未満の修正トルクを示す直線と基準増加ラインBLとの双方に対して滑らかに接続させることができる。その結果、修正トルクの急激な変化を抑制でき、アシストフィーリングに対する悪影響をより好適に抑制することができる。さらには、直線状や曲線状以外の漸増ラインとすることもできる。例えば、階段状のラインとすることもできるし、直線と曲線とを組み合わせたラインとすることもできる。
また、上記実施形態では、修正トルクをオフセットさせるにあたって、オフセット値を一定の又は変動する数値で規定しているが、他の態様で規定することもできる。例えば、入力トルクと同一となる修正トルクに対する所定の割合、例えば50%や60%の割合で規定することもできる。上記の実施形態に当てはめ、入力トルクのしきい値Ttとなる場合に修正トルクをオフセットさせる例では、0.5Ttや0.6Ttをオフセット値とすることができる。また、上記の変形例のように、オフセット値を変動させる場合には、オフセット値自体を変動させる代わりに、ここでの所定の割合を変動させることもできる。
さらに、入力トルクに基づいて修正トルクを算出するにあたって、修正トルク変換マップを参照したが、所定の演算式等を用いて修正トルクを算出することもできる。さらには、所定のフローチャートに沿った条件付けによって修正トルクを算出することもできる。また、上記実施形態では、入力トルクがしきい値Ttとなったときに修正トルクをオフセットさせているが、入力トルクがしきい値Ttよりも大きくなったときに修正トルクをオフセットさせることもできる。この場合、入力トルクがしきい値Tt以上であり、修正トルクをオフセットさせるまでの間は、入力トルクの増加に伴って修正トルクを漸増させることができる。このときに修正トルクを漸増させるにあたっては、例えば漸増ラインRLの傾斜と同一の傾斜を持ったラインに沿って修正トルクを漸増させることができる。あるいは、漸増ラインRLよりも傾斜が大きい、又は傾斜が小さいラインに沿って修正トルクを漸増させることができる。さらには、所定の曲線に沿って修正トルクを漸増させることもできる。
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した変形例を適宜組み合わせてもよい。