1.加飾シート
本発明の加飾シートは、射出樹脂層、絵柄層、及び熱線遮蔽層をこの順に有する加飾樹脂成形品を成形するために使用される加飾シートである。すなわち、本発明の加飾シートに含まれる絵柄層及び熱線遮蔽層によって、樹脂成形品の射出樹脂層が加飾され、加飾樹脂成形品となる。本発明の加飾シートは、基材層と、当該基材層の上に、少なくとも絵柄層及び熱線遮蔽層とを有し、絵柄層が塩素系樹脂を含み、熱線遮蔽層が熱線遮蔽剤を含むことを特徴とする。以下、本発明の加飾シート、当該加飾シートを利用した加飾樹脂成形品、及びこれらの製造方法について詳述する。
加飾シートの積層構造
本発明の加飾シートは、少なくとも、基材層1と、絵柄層2と、熱線遮蔽層3とを含む積層構造を有する。後述の通り、本発明の加飾シートがインサート成形に供されるもの(以下、「インサート成形用加飾シート」ということがある)である場合には、基材層1(以下、インサート成形用加飾シートの基材層1を「インサート成形用基材層1a」ということがある。)は、絵柄層2側に位置する。すなわち、インサート成形用加飾シートでは、インサート成形用基材層1a、絵柄層2、及び熱線遮蔽層3がこの順に積層されている。インサート成形用加飾シートを加飾樹脂成形品の成形に用いた場合、インサート成形用基材層1a側において樹脂成形品と一体化されるため、インサート成形用基材層1aは加飾樹脂成形品と一体化される。一方、本発明の加飾シートが射出成形同時加飾に供されるもの(以下、「射出成形同時加飾用加飾シート」ということがある)である場合には、基材層1(以下、射出成形同時加飾用加飾シートの基材層1を「離型用基材層1b」ということがある。)は、熱線遮蔽層3側に位置する。すなわち、射出成形同時加飾用加飾シートでは、絵柄層2、熱線遮蔽層3、離型用基材層1bがこの順に積層されている。射出成形同時加飾用加飾シートを加飾樹脂成形品の成形に用いた場合、絵柄層2側において樹脂成形品と一体化され、加飾シートが加飾樹脂成形品として一体化された後、最表面に位置する離型用基材層1bは加飾樹脂成形品から剥離される。
本発明の加飾シートにおいて、絵柄層2の上には、後述の保護層3a、プライマー層3b、透明樹脂層3cなどが適宜設けられており、絵柄層2の上に位置する層のうち少なくとも1層が熱線遮蔽層3を構成している。例えば、基材層1を除き、絵柄層2の上に保護層3aのみが設けられている場合、本発明の加飾シートにおいては、保護層3aが熱線遮蔽剤を含み、熱線遮蔽層3となる。また、例えば、絵柄層2の上に、プライマー層3b及び保護層3aが設けられている場合であれば、プライマー層3b及び保護層3aの少なくとも1層が熱線遮蔽剤を含み、熱線遮蔽層3となる。さらに、例えば、絵柄層2の上に透明樹脂層3c、プライマー層3b、及び保護層3aが設けられている場合であれば、これらの層のうち少なくとも1層が熱線遮蔽剤を含み、熱線遮蔽層3となる。すなわち、熱線遮蔽層3は、単層であってもよいし、複層であってもよい。
加飾シートを形成する各層の組成
[基材層1]
基材層1は、本発明の加飾シートにおいて支持体としての役割を果たす樹脂シート(樹脂フィルム)により形成される。本発明の加飾シートがインサート成形に供されるものである場合、加飾シート中の基材層1(インサート成形用基材層1a)は、絵柄層2及び熱線遮蔽層3などと共に射出樹脂層6と一体化されて、加飾樹脂成形品の層を構成する。また、本発明の加飾シートが射出成形同時加飾に供されるものである場合、基材層1(離型用基材層1b)は、加飾シートが射出樹脂層6と一体化された後に、加飾樹脂成形品から剥離される。
基材層1に使用される樹脂シートについては、特に制限されず、三次元成形性や射出樹脂との相性等に応じて適宜選定すればよいが、好ましくは、熱可塑性樹脂からなる樹脂シートが挙げられる。熱可塑性樹脂としては、具体的には、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(以下「ABS樹脂」と表記することもある)、アクリロニトリル−スチレン−アクリル酸エステル樹脂、アクリル樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエチレンテレフタラート(PET)などのポリエステル樹脂等が挙げられる。基材層1は、これら樹脂の単層シートで形成されていてもよく、また同種又は異種樹脂による複層シートで形成されていてもよい。インサート成形用基材層1a及び離型用基材層1bとして好ましい樹脂シートについては、後述の通りである。
基材層1は、隣接する層との密着性などを向上させるために、必要に応じて、片面又は両面に酸化法や凹凸化法等の物理的又は化学的表面処理が施されていてもよい。基材層1の表面処理として行われる酸化法としては、例えば、コロナ放電処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン紫外線処理法等が挙げられる。また、基材層1の表面処理として行われる凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法等が挙げられる。これらの表面処理は、基材層1を構成する樹脂シートの種類に応じて適宜選択されるが、効果及び操作性等の観点から、好ましくはコロナ放電処理法が挙げられる。
また、基材層1には、公知の接着層を形成する等の処理を施してもよい。
さらに、基材層1は、着色剤を用いて着色されていてもよく、着色されていなくてもよい。また、基材層1は、無色透明、着色透明、及び半透明のいずれの態様であってもよい。基材層1に用いられる着色剤としては、特に制限されないが、好ましくは150℃以上の温度条件でも変色しない着色剤が挙げられ、具体的には、既存のドライカラー、ペーストカラー、マスターバッチ樹脂組成物等が挙げられる。
基材層1の厚さは、加飾シートの用途等に応じて適宜設定され、後述の通り、例えば、インサート成形用基材層1aの厚さは、通常50〜1000μm程度であり、離型用基材層1bの厚さは、通常10〜150μm程度である。
[絵柄層2]
絵柄層2は、加飾シートに装飾性を付与する目的で設けられる層である。絵柄層2は、例えば絵柄層用インキ組成物を用いて形成され、所望の絵柄を有している。
絵柄層用インキ組成物としては、例えば、バインダー樹脂に、顔料、染料等の着色剤、体質顔料、溶剤、安定剤、可塑剤、触媒、硬化剤等を適宜混合したものが使用される。絵柄層用インキ組成物には、バインダー樹脂として塩素系樹脂が含まれている。このため、例えば印刷などにより絵柄層2を形成する場合、絵柄層用インキ組成物は、基材層1などの絵柄層2と隣接する層への転移性に優れている。より具体的には、絵柄層用インキ組成物中に、バインダー樹脂として塩素系樹脂が含まれているため、印刷などによって絵柄層用インキ組成物を絵柄層2と隣接する層に転移させる際に、転移不良が生じにくく、目的とする絵柄に精度よく絵柄層用インキ組成物を転移させることができる。
絵柄層用インキ組成物のバインダー樹脂に含まれる塩素系樹脂としては、特に制限されないが、例えば、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリエチレン、ポリ塩化ビニリデン、エチレン−塩化ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−(メタ)アクリル共重合体などのポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化プロピレン、塩素化ポリプロピレンなどが挙げられる。絵柄層用インキ組成物の転移性を高める観点からは、塩素系樹脂としては、これらの中でも、好ましくはポリ塩化ビニル系樹脂が挙げられ、より好ましくは塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体が挙げられる。塩素系樹脂は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。なお、本発明において、「(メタ)アクリル」とは「アクリル又はメタクリル」を意味し、他の類似するものも同様の意である。
絵柄層用インキ組成物は、塩素系樹脂に加えて、他のバインダー樹脂を含んでいてもよい。他のバインダー樹脂としては、特に制限されないが、例えば、(メタ)アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ブチラール樹脂、ポリスチレン樹脂、ニトロセルロース樹脂、酢酸セルロース樹脂等が挙げられ、好ましくは(メタ)アクリル樹脂が挙げられる。これらのバインダー樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
絵柄層用インキ組成物の転移性を高める観点からは、バインダー樹脂は、(メタ)アクリル系樹脂と塩素系樹脂との混合樹脂であることが好ましい。同様の観点から、バインダー樹脂中における(メタ)アクリル系樹脂と塩素系樹脂との質量比は、特に制限されないが、好ましくは3/7〜8/2程度の範囲、より好ましくは5/5〜8/2程度の範囲、さらに好ましくは5/5〜7/3程度の範囲である。本発明においては、絵柄層用インキ組成物の転移性を高めるために塩素系樹脂を多く含有させる場合においても耐候性を良好とすることができる点で特に有用である。
絵柄層用インキ組成物に含まれる着色剤としては、特に制限されないが、例えば、カーボンブラック(墨)、鉄黒、チタン白、アンチモン白、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青、コバルトブルー等の無機顔料;キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー等の有機顔料又は染料;アルミニウム、真鍮等の鱗片状箔片からなる金属顔料;二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の鱗片状箔片からなる真珠光沢(パール)顔料等が挙げられる。
絵柄層2によって形成される模様についても、特に制限されないが、例えば、木目模様、大理石模様(例えばトラバーチン大理石模様)等の岩石の表面を模した石目模様、布目や布状の模様を模した布地模様、タイル貼模様、煉瓦積模様等が挙げられ、これらを複合した寄木、パッチワーク等の模様であってもよい。これらの模様は、通常の黄色、赤色、青色、及び黒色のプロセスカラーによる多色印刷によって形成されるが、模様を構成する個々の色の版を用意して行う特色による多色印刷等によっても形成することができる。なお、絵柄層2は、木目模様等の模様を表現する柄パターン層と、全面ベタ層との組み合わせでも使用される。全面ベタ層は、通常、隠蔽層、着色層、着色隠蔽層等として使用される。
絵柄層2の厚さは、特に制限されず、例えば1〜10μm程度、好ましくは1〜7μm程度である。
[熱線遮蔽層3]
熱線遮蔽層3は、熱線遮蔽剤を含み、熱線を遮蔽する機能を有する層である。本発明の加飾シートは、熱線遮蔽層3側が加飾樹脂成形品の表面側に位置するようにして使用される。上述のとおり、熱線遮蔽層3は、単層であってもよいし、複層であってもよい。例えば、加飾シートが、絵柄層2の上に後述の保護層3aのみを有する場合、当該表面層3aが熱線遮蔽層3となり、熱線遮蔽層3は単層となる。また、例えば、絵柄層2の上に後述のプライマー層3b及び保護層3aを有し、これらのうち1層が熱線遮蔽剤を含む場合にも、熱線遮蔽層3は単層となる。一方、プライマー層3b及び保護層3aが共に熱線遮蔽剤を含む場合には、熱線遮蔽層3は複層(2層)となる。また、例えば、絵柄層2の上に後述の透明樹脂層3c、プライマー層3b、及び保護層3aを有し、これらのうち1層が熱線遮蔽剤を含む場合には、熱線遮蔽層3は単層となり、これらのうち2層が熱線遮蔽剤を含む場合には、熱線遮蔽層3は複層(2層)となり、これらすべての層が熱線遮蔽剤を含む場合には、熱線遮蔽層3は複層(3層)となる。
上記の通り、絵柄層2に含まれる塩素系樹脂は、絵柄層用インキ組成物の転移性を向上させるという利点を有する一方、光や熱によって劣化しやすいという欠点を有する。これに対して、本発明の加飾シートにおいては、絵柄層2の上に熱線遮蔽剤を含む熱線遮蔽層3が設けられている。このため、加飾シートが加飾樹脂成形品に使用された際に、加飾シートの熱線遮蔽層3側からくる光を熱線遮蔽剤が吸収し、熱線遮蔽層3の下に位置する絵柄層2に含まれる塩素系樹脂を、光や熱による劣化から好適に保護することができる。特に、熱線遮蔽剤は、近赤外光を効率よく吸収する。このため、絵柄層2に到達する近赤外光を低減することができる。よって、加飾シートの耐候性を効果的に高めることができる。さらに、本発明の加飾シートにおいては、熱線遮蔽層3が熱線遮蔽剤を含むことによって耐候性が高められるため、紫外線吸収剤などを多量に使用する必要が無い。よって、加飾シートに生じるブリードアウトを抑制でき、加飾シートの経時的安定性を高めることができる。
熱線遮蔽剤としては、特に制限されず、例えば、熱線遮蔽層3となり得る後述の保護層3a、プライマー層3b、透明樹脂層3cなどが果たす機能などに応じて適宜選択することができる。加飾シートの耐候性を効果的に高める観点からは、無機系の熱線遮蔽剤を用いることが好ましく、具体的にはアンチモンドープ酸化スズ、スズドープ酸化インジウム、酸化亜鉛、タングステンブロンズなどが挙げられ、より好ましくはアンチモンドープ酸化スズ、スズドープ酸化インジウム、及び酸化亜鉛が挙げられる。無機系の熱線遮蔽剤は経時による劣化や失活を起こし難いため、耐候性を長期に亘って持続できる。熱線遮蔽剤は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
また、加飾シートの耐候性をより効果的に高める観点から、本発明の加飾シートを積層方向から見たときの1m2当たりに含まれる熱線遮蔽層3中の熱線遮蔽剤の量としては、好ましくは0.1g/m2以上、より好ましくは0.2g/m2以上、さらに好ましくは0.3g/m2以上が挙げられる。なお、熱線遮蔽剤の量が多すぎると、着色して意匠が変化する場合があるため、加飾シートの耐候性をより効果的に高める観点から、本発明の加飾シートを積層方向から見たときの1m2当たりに含まれる熱線遮蔽層3中の熱線遮蔽剤の量の上限値としては、例えば2g/m2が挙げられる。
上述の通り、本発明の加飾シートにおいては、絵柄層2の上に設けられた保護層3a、プライマー層3b、透明樹脂層3cなどの層のうち少なくとも1層が熱線遮蔽層3となる。さらに、絵柄層2の上に、接着層などの他の層が設けられ、当該他の層が熱線遮蔽層3となってもよい。以下においては、絵柄層2の上に設けられ、熱線遮蔽層3となり得る、保護層3a、プライマー層3b、及び透明樹脂層3cについて詳述する。
[保護層3a]
保護層3aは、加飾シートが加飾樹脂成形品の射出樹脂層の上に積層された際に、加飾樹脂成形品の最表面に位置し、耐傷性などの表面物性を向上させる目的で形成される層である。保護層3aは、樹脂により形成することができる。また、保護層3aが熱線遮蔽剤を含む場合には、熱線遮蔽層3となる。例えば、加飾シートにおいて、絵柄層2の上に設けられた層が1つのみである場合、当該1つの層は保護層3aであり、保護層3aは熱線遮蔽層3となる。また、例えば、絵柄層2の上にプライマー層3b及び保護層3aの2層がこの順に設けられている場合、プライマー層3b及び保護層3aの少なくとも1層が熱線遮蔽層3となる。プライマー層3bと保護層3aの両層に熱線遮蔽剤が含まれていれば、両層が熱線遮蔽層3となる。
加飾シートにおける熱線遮蔽層3が保護層3aのみの単層である場合、表面層3a中における熱線遮蔽剤の含有量は、特に制限されないが、加飾シートの耐候性を効果的に高める観点からは、保護層3a中の樹脂100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは15質量部以上が挙げられる。なお、熱線遮蔽剤の量が多すぎると、着色して意匠が変化する場合があるため、保護層3a中の熱線遮蔽剤の上限値としては、樹脂100質量部に対して、例えば20質量部が挙げられる。
また、加飾シートにおいて、熱線遮蔽層3が複層であり、保護層3aに加えて、プライマー層3bなども熱線遮蔽層3である場合、保護層3a中における熱線遮蔽剤の含有量は、特に制限されないが、加飾シートの耐候性を効果的に高める観点からは、表面層3a中の樹脂100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上が挙げられる。なお、表面層3a中の熱線遮蔽剤の上限値としては、樹脂100質量部に対して、例えば20質量部が挙げられる。
加飾シートの耐候性をより効果的に高める観点からは、保護層3aには、紫外線吸収剤及び光安定化剤のうち少なくとも一方が含まれていることが好ましい。紫外線吸収剤としては、特に制限されず、例えば公知の紫外線吸収剤を用いることができる。紫外線吸収剤は、無機系、有機系のいずれでもよい。無機系紫外線吸収剤としては、例えば、平均粒径が5〜120nm程度の二酸化チタン、酸化セリウム、酸化亜鉛などを好ましく用いることができる。また、有機系紫外線吸収剤としては、例えばベンゾトリアゾール系、トリアジン系、ベンゾフェノン系などを用いることができる。トリアゾール系としては、例えば、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、ポリエチレングリコールの3−[3−(ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル]プロピオン酸エステルなどが挙げられる。
トリアジン系としては、例えば2−(2−ヒドロキシ−4−[1−オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)−4,6−ビス(4−フェニルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−ドデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス[2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル]−6−(2,4−ジブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−トリデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−(2'−エチル)ヘキシル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンなどが好ましく挙げられ、ベンゾフェノン系としては、例えば2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンなどが挙げられる。
また、紫外線吸収剤として、分子内に(メタ)アクリロイル基などの重合性基を有する反応性紫外線吸収剤の重合物を含有することもできる。紫外線吸収剤は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
保護層3a中における紫外線吸収剤の含有量は、特に制限されないが、加飾シートの耐候性を効果的に高める観点からは、保護層3a中の樹脂100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上が挙げられる。なお、紫外線吸収剤の量が多すぎると、ブリードアウトが発生する場合があるため、保護層3a中の紫外線吸収剤の上限値としては、樹脂100質量部に対して、好ましくは9質量部、より好ましくは7質量部が挙げられる。
光安定化剤としては、特に制限されず、例えば公知の光安定化剤を用いることができる。光安定化剤としては、好ましくはヒンダードアミン系光安定化剤、具体的には2−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2’−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレートなどが挙げられる。光安定化剤は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
保護層3a中における光安定化剤の含有量は、特に制限されないが、加飾シートの耐候性を効果的に高める観点からは、保護層3a中の樹脂100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上が挙げられる。なお、光安定化剤の量が多すぎると、ブリードアウトが発生する場合があるため、表面層3a中の光安定化剤の上限値としては、樹脂100質量部に対して、好ましくは9質量部、より好ましくは7質量部が挙げられる。
保護層3aを形成する樹脂は、特に制限されないが、耐傷性等の表面物性を確保する観点より、電離放射線硬化性樹脂や、2液硬化性樹脂が挙げられる。また、電離放射線硬化性樹脂と2液硬化性樹脂を組み合わせて使用してもよく、これら以外の樹脂と組み合わせて使用してもよい。
保護層3aを形成する2液硬化性樹脂としては、ウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂などの公知の樹脂が例示できる。
保護層3aを形成する電離放射線硬化性樹脂とは、電離放射線を照射することにより、架橋、硬化する樹脂であり、具体的には、分子中に重合性不飽和結合又はエポキシ基を有する、プレポリマー、オリゴマー、及びモノマーなどのうち少なくとも1種を適宜混合したものが挙げられる。ここで電離放射線とは、電磁波又は荷電粒子線のうち、分子を重合あるいは架橋しうるエネルギー量子を有するものを意味し、通常紫外線(UV)又は電子線(EB)が用いられるが、その他、X線、γ線等の電磁波、α線、イオン線等の荷電粒子線も含むものである。電離放射線硬化性樹脂の中でも、電子線硬化性樹脂は、無溶剤化が可能であり、光重合用開始剤を必要とせず、安定な硬化特性が得られるため、表面層3aの形成において好適に使用される。
電離放射線硬化性樹脂として使用される上記モノマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレートモノマーが好適であり、中でも多官能性(メタ)アクリレートモノマーが好ましい。多官能性(メタ)アクリレートモノマーとしては、分子内に重合性不飽和結合を2個以上(2官能以上)、好ましくは3個以上(3官能以上)有する(メタ)アクリレートモノマーであればよい。多官能性(メタ)アクリレートとして、具体的には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのモノマーは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、電離放射線硬化性樹脂として使用される上記オリゴマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレートオリゴマーが好適であり、中でも分子内に重合性不飽和結合を2個以上(2官能以上)有する多官能性(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましい。多官能性(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、例えば、ポリカーボネート(メタ)アクリレート、アクリルシリコーン(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリブタジエン(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート、分子中にカチオン重合性官能基を有するオリゴマー(例えば、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂肪族ビニルエーテル、芳香族ビニルエーテル等)等が挙げられる。ここで、ポリカーボネート(メタ)アクリレートは、例えば、ポリカーボネートポリオールを(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。アクリルシリコーン(メタ)アクリレートは、シリコーンマクロモノマーを(メタ)アクリレートモノマーとラジカル共重合させることにより得ることができる。ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアネートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。エポキシ(メタ)アクリレートは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得ることができる。また、このエポキシ(メタ)アクリレートを部分的に二塩基性カルボン酸無水物で変性したカルボキシル変性型のエポキシ(メタ)アクリレートも用いることができる。ポリエステル(メタ)アクリレートは、例えば多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、或いは多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリエーテル(メタ)アクリレートは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリブタジエン(メタ)アクリレートは、ポリブタジエンオリゴマーの側鎖に(メタ)アクリル酸を付加することにより得ることができる。シリコーン(メタ)アクリレートは、主鎖にポリシロキサン結合をもつシリコーンの末端又は側鎖に(メタ)(メタ)アクリル酸を付加することにより得ることができる。これらのオリゴマーは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
これらの電離放射線硬化性樹脂は1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
これらの電離放射線硬化性樹脂の中でも、加飾シートの耐候性をより高めるという観点から、好ましくはポリカーボネート(メタ)アクリレート、アクリルシリコーン(メタ)アクリレートが挙げられる。
(保護層3aに含まれ得る他の添加成分)
保護層3aを形成する樹脂には、保護層3aに備えさせる所望の物性に応じて、各種添加剤を配合することができる。この添加剤としては、例えば耐摩耗性向上剤、重合禁止剤、架橋剤、帯電防止剤、接着性向上剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、溶剤、着色剤等が挙げられる。これらの添加剤は、常用されるものから適宜選択して用いることができる。
(保護層3aの形成方法)
保護層3aが、2液硬化性樹脂により形成されている場合、表面層3aは、後述のプライマー層3bと同様の形成方法により形成することができる。
また、保護層3aが電離放射線硬化性樹脂により形成されている場合、保護層3aの形成は、例えば、電離放射線硬化性樹脂を含む電離放射線硬化性樹脂組成物を調製し、これを塗布し、架橋硬化することにより行われる。なお、電離放射線硬化性樹脂組成物の粘度は、後述の塗布方式により、保護層3aに隣接する層上に未硬化樹脂層を形成し得る粘度であればよい。本発明においては、調製された塗布液を、前記厚さとなるように、保護層3aに隣接する層上に、グラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコート等の公知の方式、好ましくはグラビアコートにより塗布し、未硬化樹脂層を形成させる。このようにして形成された未硬化樹脂層に、電子線、紫外線等の電離放射線を照射して該未硬化樹脂層を硬化させて保護層3aを形成する。ここで、電離放射線として電子線を用いる場合、その加速電圧については、用いる樹脂や層の厚みに応じて適宜選定し得るが、通常加速電圧70〜300kV程度が挙げられる。
なお、電子線の照射において、加速電圧が高いほど透過能力が増加するため、保護層3aの下に電子線照射によって劣化しやすい樹脂を使用する場合には、電子線の透過深さと保護層3aの厚みが実質的に等しくなるように、加速電圧を選定する。これにより、保護層3aの下に位置する層への余分の電子線の照射を抑制することができ、過剰電子線による各層の劣化を最小限にとどめることができる。また、照射線量は、保護層3aの架橋密度が飽和する量が好ましく、通常5〜300kGy(0.5〜30Mrad)、好ましくは10〜50kGy(1〜5Mrad)の範囲で選定される。さらに、電子線源としては、特に制限はなく、例えばコックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器を用いることができる。電離放射線として紫外線を用いる場合には、波長190〜380nmの紫外線を含む光線を放射すればよい。紫外線源としては、特に制限されないが、例えば、高圧水銀燈、低圧水銀燈、メタルハライドランプ、カーボンアーク燈等が挙げられる。
保護層3aには、各種の添加剤を添加することにより、ハードコート機能、防曇コート機能、防汚コート機能、防眩コート機能、反射防止コート機能、紫外線遮蔽コート機能、赤外線遮蔽コート機能等の機能を付与する処理を行ってもよい。
保護層3aの厚さについては、特に制限されないが、例えば、1〜1000μm程度、好ましくは1〜50μm程度、さらに好ましくは1〜30μm程度が挙げられる。このような範囲の厚さを満たすと、耐傷付き性、耐候性等の保護層としての十分な物性が得られる。また、保護層3aを電離放射線硬化性樹脂により形成する場合であれば、電離放射線硬化性樹脂組成物に対して電離放射線を均一に照射することが可能であるため、均一に硬化することが可能となり、経済的にも有利になる。さらに、保護層3aの硬化後の厚さが前記範囲を充足することによって、加飾シートの三次元成形性が一層向上するため自動車内装用途等の複雑な三次元形状に対して高い追従性を得ることができる。このように、本発明の加飾シートは表面層3aの厚さを従来のものより厚くしても、十分に高い三次元成形性が得られることから、特に保護層3aに高い膜厚を要求される部材、例えば車両外装部品等の加飾シートとしても有用である。
[プライマー層3b]
プライマー層3bは、保護層3aとその下に位置する層との密着性を高めることなどを目的として、絵柄層2と保護層3aとの間に必要に応じて設けられる層である。プライマー層3bは、樹脂により形成することができる。また、プライマー層3bが熱線遮蔽剤を含む場合、プライマー層3bは、熱線遮蔽層3となる。
加飾シートにおいて、熱線遮蔽層3が複層であり、プライマー層3bに加えて、保護層3aなども熱線遮蔽層3である場合、プライマー層3b中における熱線遮蔽剤の含有量は、特に制限されないが、加飾シートの耐候性を効果的に高める観点からは、プライマー層3b中の樹脂100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上が挙げられる。なお、プライマー層3b中の熱線遮蔽剤の上限値としては、樹脂100質量部に対して、例えば20質量部が挙げられる。
プライマー層3bを形成する樹脂としては、特に制限されないが、例えば、ウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、(メタ)アクリル−ウレタン共重合体樹脂、ポリエステル樹脂、ブチラール樹脂等が挙げられる。これらの樹脂の中でも、好ましくは、ウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、及び(メタ)アクリル−ウレタン共重合体樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
上記ウレタン樹脂としては、ポリオール(多価アルコール)を主剤とし、イソシアネートを架橋剤(硬化剤)とするポリウレタンを使用できる。ポリオールとしては、分子中に2個以上の水酸基を有する化合物であればよく、具体的には、ポリエステルポリオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、アクリルポリオール、ポリエーテルポリオール等が挙げられる。上記イソシアネートとしては、具体的には、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する多価イソシアネート;4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂肪族(又は脂環族)イソシアネートが挙げられる。
上記ウレタン樹脂の中でも、架橋後の密着性の向上等の観点から、好ましくは、ポリオールとしてアクリルポリオール、又はポリエステルポリオールと、架橋材としてヘキサメチレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネートとから組み合わせ;さらに好ましくは、アクリルポリオールとヘキサメチレンジイソシアネートとを組み合わせが挙げられる。
上記(メタ)アクリル樹脂としては、特に制限されないが、例えば、(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体、2種以上の異なる(メタ)アクリル酸エステルモノマーの共重合体、又は(メタ)アクリル酸エステルと他のモノマーとの共重合体が挙げられる。(メタ)アクリル樹脂として、より具体的には、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸プロピル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、(メタ)アクリル酸エチル−(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体等の(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。これらの(メタ)アクリル樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
(メタ)アクリル−ウレタン共重合体樹脂としては、特に制限されないが、例えば、アクリル−ウレタン(ポリエステルウレタン)ブロック共重合系樹脂が挙げられる。また、硬化剤としては、前述する各種イソシアネートが用いられる。アクリル−ウレタン(ポリエステルウレタン)ブロック共重合系樹脂におけるアクリルとウレタン比の比率については、特に制限されないが、例えば、アクリル/ウレタン比(質量比)として、9/1〜1/9、好ましくは8/2〜2/8が挙げられる。
加飾シートがプライマー層3bを有する場合、加飾シートの耐候性をより効果的に高める観点からは、プライマー層3bには、紫外線吸収剤及び光安定化剤のうち少なくとも一方が含まれていることが好ましい。プライマー層3bに含まれ得る紫外線吸収剤及び光安定化剤としては、特に制限されないが、例えば、上記の保護層3aで例示したものが挙げられる。
また、プライマー層3bが紫外線吸収剤を含む場合、プライマー層3b中における紫外線吸収剤の含有量は、特に制限されないが、加飾シートの耐候性を効果的に高める観点からは、プライマー層3b中の樹脂100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上が挙げられる。なお、紫外線吸収剤の量が多すぎると、ブリードアウトが発生する場合があるため、プライマー層3bの紫外線吸収剤の上限値としては、樹脂100質量部に対して、好ましくは9質量部、より好ましくは7質量部が挙げられる。プライマー層3bが光安定化剤を含む場合、プライマー層3b中における光安定化剤の含有量は、特に制限されないが、加飾シートの耐候性を効果的に高める観点からは、プライマー層3b中の樹脂100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上が挙げられる。なお、光安定化剤の量が多すぎると、ブリードアウトが発生する場合があるため、プライマー層3bの光安定化剤の上限値としては、樹脂100質量部に対して、好ましくは9質量部、より好ましくは7質量部が挙げられる。
プライマー層3bの厚さについては、特に制限されないが、例えば0.1〜10μm程度、好ましくは1〜10μm程度が挙げられる。プライマー層3bがこのような厚さを充足することにより、加飾シートの耐候性をより高めると共に、保護層3aの割れ、破断、白化等を有効に抑制することができる。
プライマー層3bは、プライマー層3bを形成する樹脂を用いて、グラビアコート、グラビアリバースコート、グラビアオフセットコート、スピンナーコート、ロールコート、リバースロールコート、キスコート、ホイラーコート、ディップコート、シルクスクリーンによるベタコート、ワイヤーバーコート、フローコート、コンマコート、かけ流しコート、刷毛塗り、スプレーコート等の通常の塗布方法や転写コーティング法により形成される。ここで、転写コーティング法とは、薄いシート(フィルム基材)にプライマー層や接着層の塗膜を形成し、その後に加飾シート中の対象となる層表面に被覆する方法である。
[透明樹脂層3c]
透明樹脂層3cは、加飾シートの耐薬品性や耐傷付き性を向上させることなどを目的として、絵柄層2の上に設けられる層である。透明樹脂層3cは、透明な樹脂により形成することができる。透明樹脂層3cが熱線遮蔽剤を含む場合、透明樹脂層3cは、熱線遮蔽層3となる。
加飾シートにおける熱線遮蔽層3が透明樹脂層3cのみの単層である場合、透明樹脂層3c中における熱線遮蔽剤の含有量は、特に制限されないが、加飾シートの耐候性を効果的に高める観点からは、透明樹脂層3c中の樹脂100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上が挙げられる。なお、熱線遮蔽剤の量が多すぎると、着色して意匠が変化する場合があるため、透明樹脂層3c中の熱線遮蔽剤の上限値としては、樹脂100質量部に対して、例えば20質量部が挙げられる。
また、加飾シートにおいて、熱線遮蔽層3が複層であり、透明樹脂層3cに加えて、保護層3a、プライマー層3bなども熱線遮蔽層3である場合、透明樹脂層3c中における熱線遮蔽剤の含有量は、特に制限されないが、加飾シートの耐候性を効果的に高める観点からは、透明樹脂層3c中の樹脂100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上が挙げられる。なお、透明樹脂層3c中の熱線遮蔽剤の上限値としては、樹脂100質量部に対して、例えば20質量部が挙げられる。
透明樹脂層3cを形成する樹脂成分としては、透明性、三次元成形性、形状安定性、耐薬品性等に応じて適宜選定されるが、通常、熱可塑性樹脂が使用される。熱可塑性樹脂としては、特に制限されないが、例えば、アクリル樹脂、ポリプロピレン,ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂等が使用される。これらの熱可塑性樹脂の中でも、耐薬品性、耐傷付き性等の観点から、好ましくは、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂;さらに好ましくは、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂;より好ましくは、ポリエステル樹脂が挙げられる。
加飾シートが透明樹脂層3cを有する場合、加飾シートの耐候性をより効果的に高める観点からは、透明樹脂層3cには、紫外線吸収剤及び光安定化剤のうち少なくとも一方が含まれていることが好ましい。透明樹脂層3cに含まれ得る紫外線吸収剤及び光安定化剤としては、特に制限されないが、例えば、上記の保護層3aで例示したものが挙げられる。
また、透明樹脂層3cが紫外線吸収剤を含む場合、透明樹脂層3c中における紫外線吸収剤の含有量は、特に制限されないが、加飾シートの耐候性を効果的に高める観点からは、透明樹脂層3c中の樹脂100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上が挙げられる。なお、紫外線吸収剤の量が多すぎると、ブリードアウトが発生する場合があるため、透明樹脂層3c中の紫外線吸収剤の上限値としては、樹脂100質量部に対して、10質量部が挙げられる。透明樹脂層3cが光安定化剤を含む場合、透明樹脂層3c中における光安定化剤の含有量は、特に制限されないが、加飾シートの耐候性を効果的に高める観点からは、透明樹脂層3c中の樹脂100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上が挙げられる。なお、光安定化剤の量が多すぎると、ブリードアウトが発生する場合があるため、透明樹脂層3cの光安定化剤の上限値としては、樹脂100質量部に対して、10質量部が挙げられる。
透明樹脂層3cは、接面する他の層との密着性を向上させるために、必要に応じて、片面又は両面に酸化法や凹凸化法等の物理的又は化学的表面処理が施されていてもよい。これらの物理的又は化学的表面処理は、基材層に施される表面処理と同様である。
透明樹脂層3cの厚さについては、特に制限されないが、例えば10〜200μm程度、好ましくは15〜150μm程度が挙げられる。
透明樹脂層3cは、接着剤を介して積層させてもよく、また接着剤を介さず直接積層させてもよい。接着剤を介して積層させる場合、使用される接着剤としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、セルロース樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、アミノ樹脂、ゴム、シリコン樹脂等が挙げられる。また、接着剤を介さず積層させる場合には、押出し法、サンドラミ法、サーマルラミネート法等の方法で行うことができる。
本発明の加飾シートは、例えば、後述のインサート成形または射出成形同時加飾に供されることによって、射出樹脂層の上に積層されて樹脂成形品を加飾することができる。以下、本発明の加飾シートのうち、インサート成形に供されるインサート成形用加飾シート及び射出成形同時加飾に供される射出成形同時加飾用加飾シートについて、詳述する。
インサート成形用加飾シート
本発明において、インサート成形用加飾シートは、上記基材層1の上に、少なくとも、上記絵柄層2及び上記熱線遮蔽層3をこの順に有する。すなわち、インサート成形用加飾シートの絵柄層2の上には、上記保護層3a、上記プライマー層3b、上記透明樹脂層3cなどが適宜設けられており、絵柄層2の上に位置する層のうち少なくとも1層が熱線遮蔽層3を構成している。
インサート成形用加飾シートの積層構造の例として、インサート成形用基材層/絵柄層/保護層が順に積層され、保護層が熱線遮蔽層である積層構造;インサート成形用基材層/絵柄層/プライマー層/保護層が順に積層され、プライマー層及び保護層の少なくとも一方が熱線遮蔽層である積層構造;インサート成形用基材層/絵柄層/透明樹脂層/保護層が順に積層され、透明樹脂層及び保護層の少なくとも一方が熱線遮蔽層である積層構造;インサート成形用基材層/絵柄層/透明樹脂層/プライマー層/保護層が順に積層され、透明樹脂層、プライマー層、及び保護層の少なくとも1層が熱線遮蔽層である積層構造等が挙げられる。図1に、本発明のインサート成形用加飾シートの積層構造の一態様として、インサート成形用基材層/絵柄層/保護層が順に積層され、保護層が熱線遮蔽層である加飾シートの略図的断面図を示す。図2に、本発明のインサート成形用加飾シートの積層構造の一態様として、インサート成形用基材層/絵柄層/プライマー層/保護層が順に積層され、プライマー層及び保護層の両層が熱線遮蔽層である加飾シートの略図的断面図を示す。
[インサート成形用基材層1a]
インサート成形用加飾シートに含まれるインサート成形用基材層1aは、例えば図3に示されるように、射出樹脂層6、絵柄層2、熱線遮蔽層3と共に、加飾樹脂成形品として一体化される。インサート成形における三次元成形性などを高める観点から、インサート成形用基材層1aは、上記の基材層1を形成する樹脂の中でも、ABS樹脂により形成されていることが好ましい。また、インサート成形用基材層1aの厚さは、インサート成形用加飾シートの用途等に応じて適宜設定され、通常50〜1000μm程度、好ましくは100〜700μm程度、さらに好ましくは100〜500μm程度が挙げられる。インサート成形用基材層1aの厚さが上記範囲内であると、より一層優れた表面物性、三次元成形性及び意匠性をインサート成形用加飾シートに備えさせることができ、印刷作業性(生産性)も良好になり、コストの観点からも有利になる。
(インサート成形用加飾シートの製造方法)
インサート成形用加飾シートは、例えば次のようにして製造することができる。まず、インサート成形用基材層1aを構成する樹脂フィルムの一方の表面上に、絵柄層2を形成する上記の絵柄層形成用インキを塗布して、インサート成形用基材層1aの上に絵柄層2を形成する。絵柄層形成用インキの塗布は、例えばグラビア印刷などにより行うことができる。次に、絵柄層2の上に、保護層3a、プライマー層3b、透明樹脂層3cなど層を上述の各方法により積層することにより、インサート成形用加飾シートが得られる。
射出成形同時加飾用加飾シート
本発明において、射出成形同時加飾用加飾シートは、上記離型用基材層1bの上に、少なくとも、上記熱線遮蔽層3及び上記絵柄層2をこの順に有する。離型用基材層1bと絵柄層2との間には、離型用基材層1b側から順に上記保護層3a、上記プライマー層3b、上記透明樹脂層3cなどが適宜設けられており、離型用基材層1bと絵柄層2の上に位置する層のうち少なくとも1層が熱線遮蔽層3を構成している。
射出成形同時加飾用加飾シートの積層構造の好ましい例として、離型用基材層/保護層/絵柄層が順に積層され、保護層が熱線遮蔽層である積層構造;離型用基材層/保護層/プライマー層/絵柄層が順に積層され、プライマー層及び保護層の少なくとも一方が熱線遮蔽層である積層構造;離型用基材層/保護層/透明樹脂層/絵柄層が順に積層され、透明樹脂層及び保護層の少なくとも一方が熱線遮蔽層である積層構造;離型用基材層/保護層/プライマー層/透明樹脂層/絵柄層が順に積層され、透明樹脂層、プライマー層、及び保護層の少なくとも1層が熱線遮蔽層である積層構造等が挙げられる。また、好ましい上記の積層構造として、離型用基材層と保護層との間に離型層が設けられている積層構造も挙げられる。図4に、本発明の射出成形同時加飾用加飾シートの積層構造の一態様として、離型用基材層/保護層/絵柄層が順に積層され、保護層が熱線遮蔽層である加飾シートの断面の模式図を示す。図5に、本発明の射出成形同時加飾用加飾シートの積層構造の一態様として、離型用基材層/離型層/保護層/プライマー層/絵柄層/接着剤層が順に積層され、プライマー層及び保護層の両層が熱線遮蔽層である加飾シートの断面の模式図を示す。
[離型用基材層1b]
射出成形同時加飾用加飾シートに含まれる離型用基材層1bは、後述の通り、射出成形同時加飾によって射出樹脂層6と一体化された後、樹脂成形品から離型される。すなわち、加飾樹脂成形品において、離型用基材層1bは、熱線遮蔽層3の上に位置している。射出成形同時加飾における三次元成形性に加えて、加飾樹脂成形品からの剥離性を高める観点から、離型用基材層1bは、上記の基材層1を形成する樹脂の中でも、ポリエステル樹脂により形成されていることが好ましい。
本発明において、ポリエステル樹脂とは、多価カルボン酸と、多価アルコールとから重縮合によって得られるエステル基を含むポリマーをいう。多価カルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、アゼライン酸、ドデカジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などが挙げられる。また、多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、デカンジオール、2−エチル−ブチル−1−プロパンジオール、ビスフェノールAなどが挙げられる。さらに本発明で用いるポリエステル樹脂は、3種類以上の多価カルボン酸や多価アルコールの共重合体であってもよく、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコールなどのモノマーやポリマーとの共重合体であってもよい。
ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などを好ましく挙げることができ、ポリエチレンテレフタレート(PET)が、耐熱性や寸法安定性の点で特に好ましい。なお、該ポリエステル樹脂はホモポリマーでもよく、コポリマーでもよく、また第三成分を共重合させたものであってもよい。例えば、一般に耐熱性や寸法安定性に優れるポリエチレンテレフタレートを主成分(通常90モル%以上、好ましくは95モル%以上)としたポリエステル樹脂と、一般に成形性に優れるポリブチレンテレフタレートを主成分(通常90モル%以上、好ましくは95モル%以上)とするポリエステル樹脂とを配合することができる。該配合比としては、得られるフィルムの動的弾性率により適宜選択すればよく、通常70/30〜95/5程度、好ましくは75/25〜85/15程度が挙げられる。このように配合したポリエステル樹脂は、耐熱性、寸法安定性、及び成形性に優れるため、本発明の基材シートとして好適に用いることができる。
また、ポリエステル樹脂には、作業性を向上させる目的で、微粒子を含有させることが好ましい。微粒子としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、リン酸リチウム、リン酸マグネシウム、リン酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、カオリンなどの無機粒子、アクリル系樹脂などからなる有機粒子、内部析出粒子などを挙げることができる。微粒子の平均粒径としては、特に制限されず、例えば0.01〜5.0μm程度、好ましくは0.05〜3.0μm程度が挙げられる。また、ポリエステル系樹脂中の微粒子の含有量としては、特に制限されず、例えば0.01〜5.0質量%程度、好ましくは0.1〜1.0質量%程度が挙げられる。また、必要に応じて各種安定剤、潤滑剤、酸化防止剤、帯電防止剤、消泡剤、蛍光増白剤などを配合することもできる。
離型用基材層1bの厚みは、特に制限されず、例えば10〜150μm程度、好ましくは10〜125μm程度、より好ましくは10〜80μmが挙げられる。
[離型層4]
離型層4は、離型用基材層1bの加飾樹脂成形品からの離型を容易に行うために設けられるものである。離型層4は、離型用基材層1bと共に加飾樹脂成形品から剥離される。離型層4は、例えば図5に示すように、全面を被覆(全面ベタ状)しているベタ離型層であってもよいし、一部に設けられるものであってもよい。通常は、剥離性を考慮して、ベタ離型層が好ましい。
離型層4は、フッ素系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、セルロース系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体樹脂、硝化綿などの熱可塑性樹脂、該熱可塑性樹脂を形成するモノマーの共重合体、これらの樹脂を(メタ)アクリル酸やウレタンで変性したもの、あるいはシリコーン系樹脂、アクリルシリコーン系樹脂、メラミン樹脂、アクリルメラミン樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂、又は合成ワックス、石油ワックス、動物由来のワックス、植物由来のワックスなどのワックスを、単独で又は複数を混合した組成物を用いて形成することができる。
離型層4の厚みは、特に制限されず、例えば0.01〜5μm程度、好ましくは0.05〜3μm程度が挙げられる。
[接着剤層5]
射出成形同時加飾用加飾シートにおいては、絵柄層2の熱線遮蔽層3とは反対側の表面上に接着剤層5が形成されていることにより、射出成形同時加飾用加飾シートを接着性良く樹脂成形品に転写することができる。接着剤層5は、例えば、感熱接着剤、加圧接着剤などの樹脂組成物によって形成することができる。接着剤層5に含まれる樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合樹脂、スチレン−アクリル系共重合樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂などが挙げられる。接着剤層5は、例えば、これらの樹脂と溶媒を含む樹脂組成物を絵柄層2の上に塗布、乾燥することによって形成することができる。
接着剤層5の厚みとしては、特に制限されず、射出成形同時加飾用加飾シートを接着性良く、かつ効率的に樹脂成形品に転写し得るという観点からは、好ましくは0.1〜6μm程度が挙げられる。
(射出成形同時加飾用加飾シートの製造方法)
射出成形同時加飾用加飾シートは、例えば、次のようにして製造することができる。まず、離型用基材層1bを構成する樹脂フィルムの一方の表面上に、必要に応じて離型層4を形成する。次に、熱線遮蔽層3を構成する層として、保護層3a、プライマー層3b、透明樹脂層3cなどの層を上述の各方法により形成する。次に、上記の絵柄層形成用インキを絵柄層2の下に位置する層の上に塗布して、絵柄層2を形成する。さらに、必要に応じて、上記の接着剤層5を上記の方法により形成する。以上のようにして、射出成形同時加飾用加飾シートが得られる。
2.加飾樹脂成形品
本発明の加飾樹脂成形品は、本発明の加飾シートと射出樹脂とを一体化させることにより成形されてなるものである。即ち、本発明の加飾樹脂成形品は、少なくとも、射出樹脂層、絵柄層、及び熱線遮蔽層をこの順に有しており、絵柄層が、塩素系樹脂を含み、熱線遮蔽層が、熱線遮蔽剤を含むことを特徴とする。
本発明の加飾樹脂成形品は、本発明の加飾シートを用いて、例えば、上記のインサート成形法、射出成形同時加飾法などにより作製される。
(インサート成形法による加飾樹脂成形品の製造)
インサート成形法では、まず、真空成形工程において、本発明のインサート成形用加飾シートを真空成形型により予め成形品表面形状に真空成形(オフライン予備成形)し、次いで必要に応じて余分な部分をトリミングしてインサート成形用成形シートを得る。このインサート成形用成形シートを射出成形型に挿入し、射出成形型を型締めし、流動状態の樹脂を型内に射出し、固化させて、射出成形と同時に樹脂成形品の外表面にインサート成形用加飾シートを一体化させることにより、図3に示されるような加飾樹脂成形品が製造される。
より具体的には、下記の工程を含むインサート成形法によって、本発明のインサート成形用加飾シートを用いた加飾樹脂成形品が製造される。
本発明のインサート成形用加飾シートを真空成形型により予め立体形状に成形する真空成形工程、
真空成形されたインサート成形用加飾シートの余分な部分をトリミングしてインサート成形用成形シートを得るトリミング工程、及び
インサート成形用成形シートを射出成形型に挿入し、射出成形型を閉じ、流動状態の射出樹脂を射出成形型内に射出して射出樹脂とインサート成形用成形シートを一体化する一体化工程。
インサート成形法における真空成形工程では、インサート成形用加飾シートを加熱して成形してもよい。この時の加熱温度は、特に限定されず、インサート成形用加飾シートを構成する樹脂の種類や、インサート成形用加飾シートの厚さなどによって適宜選択すればよいが、例えば基材層としてABS樹脂フィルムを使用する場合であれば、通常100〜250℃程度、好ましくは130〜200℃程度とすることができる。また、一体化工程において、流動状態の樹脂の温度は、特に限定されないが、通常180〜320℃程度、好ましくは220〜280℃程度とすることができる。
(射出成形同時加飾法による加飾樹脂成形品の製造)
射出成形同時加飾法による本発明の加飾樹脂成形品の製造方法は、以下の工程(1)〜(4)を含む。
(1)まず、本発明の射出成形同時加飾用加飾シートの離型用基材層1b側を金型の雌型側に向けた状態で型締する工程、
(2)射出樹脂を金型内に射出する工程、
(3)該射出樹脂が冷却した後に金型から加飾樹脂成形品を取り出す工程、及び
(4)該加飾樹脂成形品から離型用基材層1bを剥離する工程。
また、上記工程(1)においては、型締に先立ち、射出成形同時加飾用加飾シートを金型内形状に沿うように予備成形して金型内面に密着させる工程や、上記予備成形に先立って射出成形同時加飾用加飾シートを熱盤によって加熱する工程を備えていてもよい。射出成形同時加飾用加飾シートを加熱する温度は、離型用基材層1bを形成する樹脂のガラス転移温度近傍以上で、かつ、溶融温度(又は融点)未満の範囲であることが好ましい。通常はガラス転移温度近傍の温度で行うことが、より好ましい。なお、上記のガラス転移温度近傍とは、ガラス転移温度±5℃程度の範囲をさし、離型用基材層1bを形成する樹脂として好適なポリエステル樹脂を使用する場合には、一般に70〜130℃程度である。
上記工程(2)において、上述の射出樹脂を溶融させて、キャビティ内に射出して該射出成形同時加飾用加飾シートと射出樹脂とを一体化させる。射出樹脂が熱可塑性樹脂の場合は、加熱溶融によって流動状態にして、また、射出樹脂が熱硬化性樹脂の場合は、未硬化の液状組成物を室温又は適宜加熱して流動状態で射出して、冷却して固化させる。これによって、射出成形同時加飾用成形用加飾シートが、射出樹脂と一体化して貼り付き、加飾樹脂成形品となる。射出樹脂の加熱温度は、射出樹脂の種類によるが、一般に180〜320℃程度、好ましくは220〜280℃程度である。次に、加飾樹脂成形品を冷却した後に金型から取り出し、離型用基材層1b及び離型層4を剥離することにより、熱線遮蔽層3及び絵柄層2が転写された加飾樹脂成形品となる。
本発明の加飾樹脂成形品において、インサート成形、射出成形同時加飾などにより加飾シートと一体化される射出樹脂層6は、用途に応じた射出樹脂を選択して形成すればよい。射出樹脂層6を形成する射出樹脂としては、熱可塑性樹脂であってもよく、また熱硬化性樹脂であってもよい。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ABS樹脂、スチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル系樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、熱硬化性樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの熱硬化性樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、上記工程(4)は、必ずしも上記工程(1)〜(3)の直後に行なわれる必要はない。すなわち、金型より加飾樹脂成形品を取り出した直後に離型用基材層1bを剥離してもよいし、加飾樹脂成形品の流通過程や、実際に加飾樹脂成形品を使用する直前に離型用基材層1bを剥離してもよい。
インサート成形及び射出成形同時加飾によって得られる加飾樹脂成形品は、加飾シートの基材層1が加飾樹脂成形品中に一体化されているか否かという点では異なるが、加飾樹脂成形品の表面側から順に熱線遮蔽層3と絵柄層2とが積層されているという点において共通する。従って、インサート成形法及び射出成形同時加飾のいずれの方法によって得られる加飾樹脂成形品においても、加飾樹脂成形品の熱線遮蔽層3側からくる光を熱線遮蔽剤が吸収し、熱線遮蔽層3の下に位置する絵柄層2に含まれる塩素系樹脂を、光や熱による劣化から好適に保護することができる。よって、加飾樹脂成形品の耐候性を効果的に高めることができる。さらに、本発明の加飾樹脂成形品においては、熱線遮蔽層3が熱線遮蔽剤を含むことによって耐候性が高められるため、紫外線吸収剤などを多量に使用する必要が無い。よって、加飾樹脂成形品に生じるブリードアウトを抑制でき、加飾樹脂成形品の経時的安定性を高めることができる。
本発明の加飾樹脂成形品は、耐候性に優れているので、例えば、自動車等の車両の内装材又は外装材;幅木、回縁等の造作部材;窓枠、扉枠等の建具;壁、床、天井等の建築物の内装材;テレビ受像機、空調機等の家電製品の筐体;容器等として利用することができる。
以下に、実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は、実施例に限定されない。
<実施例1〜9、比較例1〜3、及び参考例1>
(加飾シートの作製)
基材層として、ABS樹脂フィルム(厚さ400μm)を用いた。基材層の一方の表面上に、表1に記載の樹脂組成を有するインキを用い、グラビア印刷により木目柄の絵柄層(厚さ3μm)を形成した。絵柄層の黄・赤・青・黒顔料として、それぞれイソインドリノン、キナクリドン、フタロシアニン、カーボンブラックを用いた。次に、絵柄層の表面上に紫外線吸収剤、光安定化剤、及び熱線遮蔽剤を表1の配合比で添加したアクリル樹脂を用いて、厚さが3μmとなるようにして、グラビア印刷によりプライマー層を形成した。
次に、プライマー層の表面上に、紫外線吸収剤、光安定化剤、及び熱線遮蔽剤を表1の配合比で添加した未硬化の電子線硬化性樹脂を用いて、硬化後の厚さが10μmとなるようにして、グラビア印刷により未硬化の保護層を形成した。保護層を形成する電子線硬化性樹脂の組成は、2官能ポリカーボネートアクリレート(平均分子量10000)を64.7質量部、2官能ポリカーボネートアクリレート(平均分子量20000)を32.3質量部、4官能ポリカーボネートアクリレート(平均分子量6000)3質量部とした。
次に、未硬化の保護層に対して、加速電圧165kV、照射線量50kGy(5Mrad)の電子線を照射して、電子線硬化性樹脂を硬化させて加飾シートを得た。なお、プライマー層及び表面層の少なくとも一方に添加した紫外線吸収剤はヒドロキシフェニルトリアジン、光安定化剤はヒンダードアミン系光安定化剤(HALS)、熱線遮蔽剤は、実施例1〜8ではアンチモンドープ酸化錫(ATO)、実施例9では酸化亜鉛である。表1において、紫外線吸収剤、光安定化剤、及び熱線遮蔽剤の量は、プライマー層及び保護層の各層に含まれる樹脂100質量部に対する質量部である。なお、熱線遮蔽剤については、加飾シートを積層方向から見たときの1m2当たりの熱線遮蔽剤の量(g/m2)についても併記した。次に、実施例1〜9、比較例1〜3、及び参考例1で得られた各加飾シートについて、以下の方法によって、耐候性とブリードアウトの発生の有無を評価した。
(1)耐候性
加飾シートについて、Atras社製のアトラス・ウェザオメーターCi4000を用いて、総露光量1000kJ/m2の条件(照射(B.P.83℃)3.8時間、結露(B.P.38℃)1時間の繰り返し)で耐候性を試験した後、加飾シートの外観を評価した。評価基準は、以下のとおりである。
<色変化>
コニカミノルタ社製の分光測色計(CM−3700d)を用い、基準色と耐候性試験後のサンプルの色との色差を測定した。基準色としては、耐候性試験前のサンプルの色を使用した。結果を表1に示す。評価基準は以下の通りである。
○;色変化は見られなかった。(色差ΔE*<0.5)
△;色変化は見られたが、実用上問題ない。(0.5≦ΔE*≦1.0)
×;顕著な色変化が見られた。(1.0<ΔE*)
<艶変化>
BYKガードナー社製のマイクログロスを用い、耐候性試験後のサンプルの表面のグロス値(60°)を測定し、初期値(グロス値88)との差を算出した。結果を表1に示す。評価基準は以下の通りである。
○○;艶低下は見られなかった。(グロス値差9以内)
○;軽微な艶低下が見られた。(グロス値差10〜19)
△;艶低下が見られたが、実用上問題ない。(グロス値差20〜29)
×;艶低下が見られた。(グロス値差30〜39)
××;顕著な艶低下が見られた。(グロス値差40以上)
(2)ブリードアウトの発生
実施例1〜9、比較例1〜3、及び参考例1で得られた各加飾シートを、1週間、室温下で放置した後、加飾シートの表面を目視で観察した。結果を表1に示す。評価基準は以下の通りである。
○;ブリードアウトは見られなかった。
×;ブリードアウトが見られた。
表1に示されるように、保護層及びプライマー層の少なくとも一方に熱線遮蔽剤を含む実施例1〜9の加飾シートでは、耐候性(色変化と艶変化の抑制効果)に優れ、ブリードアウトの発生も抑制されていることが明らかとなった。一方、保護層及びプライマー層のいずれにも熱線遮蔽剤を含まない比較例1及び2の加飾シートでは、耐候性に劣ることが明らかとなった。また、保護層及びプライマー層のいずれにも熱線遮蔽剤を含まないが、保護層に多量の紫外線吸収剤を配合した比較例3の加飾シートでは、耐候性には優れるものの、製品として成立しないほどにブリードアウトが発生することが明らかとなった。また、絵柄層に使用する樹脂としてアクリル樹脂のみを用いた参考例1の加飾シートでは、耐候性に優れ、ブリードアウトの発生も抑制されていることが明らかとなった。ただし、参考例1のような加飾シートでは、絵柄層を形成する際に用いられるインキ組成物の転移性に劣るという問題がある。
<実施例10及び比較例4>
プライマー層を設けずに、絵柄層の表面上に、電子線硬化性樹脂の代わりにアクリル−ウレタン共重合体を用い、硬化後の厚さが3μmとなるようにして、グラビア印刷により保護層を形成したこと以外は、実施例1〜8と同様にして加飾シートを作製した。絵柄層及び保護層における樹脂等の組成は、表2の通りである。次に、実施例10及び比較例4で得られた各加飾シートについて、実施例1〜9と同様にして、耐候性について評価した。結果を表2に示す。
表2に示されるように、保護層に熱線遮蔽剤を含む実施例10によれば、プライマー層を有さず、さらに実施例1〜9、比較例1〜3に比して保護層が薄いにも関わらず、実用上、問題のない耐候性を有する加飾シートが得られることが明らかとなった。一方、表面層に熱線遮蔽剤を含まない比較例4の加飾シートでは、耐候性に劣ることが明らかとなった。