始めに、分線金物外し装置1について説明する前に、分線金物100について図22及び図23を用いて説明する。
分線金物100は、例えば、図22に示すように、電信柱Pの間に架設される支持線Wの途中に設けられ、ドロップケーブルDを建物Hへ引き込む際に用いられる金具である。
具体的には、図23に示すように、分線金物100は、フックボルト110と、2枚の支持板130と、ナット150とを備えている。
フックボルト110は、略U字状に曲げられたフック部111と、このフック部111の一端に形成されたボルト部113と、フック部111とボルト部113の境に設けられ、支持板130の移動を規制するストッパーである凸部115と、を有する。
フック部111の先端119は、支持板130と若干重なる位置まで折り返し延びている。ボルト部113は、フック部111と略同径の円柱状を有し、フック部111の基端側に形成されている。凸部115は、フック部111とボルト部113の境界に設けられるフランジ状(略円環状)の固定物である。
支持板130は、ボルト部113に挿入され支持線Wを挟持する2枚の板状の部材である。支持板130の略中央部にはボルト部113を挿通する孔(図示せず)が設けられている。また、支持板130の内面には、支持線Wを挟持する溝131が設けられている。
ナット150は、2枚の支持板130が配置されたフックボルト110のボルト部113と螺合し、凸部115との間で支持板130を挟持して固定する。
このような、分線金物100は、2枚の支持板130の間の溝131に支持線Wを配置し、ボルト部の先端117からナット150をねじ込むことで、支持線Wを2枚の支持板130の間に挟み固定する。
次に、上述の支持線Wに固定されている分線金物100を後述する分線金物外し装置1を用いて回収する様子について、図22及び図24を用いて簡単に説明する。
図22に示すように、分線金物100は通常、電信柱Pの高所に架設されている支持線Wに設けられている。まず、作業者は、図24に示すように、支持線Wに固定されている回収が必要な分線金物100を確認する。作業者は、分線金物外し装置1を使用して作業を開始する。作業者は、後述する操作棒10を分線金物100に向かって伸ばす。その後に、作業者は、操作棒10の先端に設けられている後述する回収部20を分線金物100の周囲を囲むようにセットする。この状態で、作業者は、後述する操作ひも399を操作して、ラチェットレンチ機構330を駆動することで、ナット150を緩め、支持線Wから分線金物100を回収する。
以下、本発明の第1の実施形態に係る分線金物外し装置1について図1から図9を参照して説明する。
図1は、第1の実施形態に係る分線金物外し装置1の正面図である。図2は、分線金物外し装置1の側面図である。図3は、分線金物外し装置1が分線金物100を把持している状態を示す説明図である。図4は、分線金物100を把持する前の分線金物外し装置1を図1のF4−F4線で切断した断面図である。図5は、分線金物100を把持した状態の分線金物外し装置1を図1のF4−F4線で切断した断面図である。図6は、分線金物100を把持する前の分線金物外し装置1を図4のF6−F6線で切断した断面図である。図7は、分線金物100を把持した状態の分線金物外し装置1を図5のF7−F7線で切断した断面図である。図8は、分線金物外し装置1が支持線Wに固定されている分線金物100を捉えた状態を示す平面図である。図9は、図1の分線金物外し装置1が支持線Wに固定されている分線金物100を把持した状態を示す平面図である。
以下、第1の実施形態に係る分線金物外し装置1の構成について説明する。
分線金物外し装置1は、図24に示すように、操作棒10と回収部20を備えている。
始めに、操作棒10について簡単に説明する。図24に示すように、本実施形態に示す分線金物外し装置1の操作棒10は、例えば、複数の円筒部材を伸縮自在に連結した棒状部材を用いることができる。回収部20と接続される側の先端にはネジ孔(図示せず)を備え、回収部20と締結される。一方、基端部には、図24に示すように、操作棒10の操作を安定させるための足で踏むことができるステップSが設けられている。
このような構成を有する操作棒10は、回収が必要な分線金物100が取り付けられている高さに合わせて、操作棒10の伸縮量を調整することができる。また、基端部にステップSを備えていることにより、作業者の手の力だけでは操作棒10を支持することが困難な場合においても、ステップSを踏むことにより、操作棒10を支えることができる。また、ステップSを脚で支える構造としているため、両手を用いて操作棒10を操作することができる。このため、回収操作における、安全性を確保することができるとともに、作業者の疲労を軽減することができる。
なお、操作棒10の材料としては、軽量であって、ある程度の強度を有し、絶縁性であることが好ましい。例えば、樹脂材料やFRP等を採用することができる。
次に、第1の実施形態に係る分線金物外し装置1の回収部20の構造について図1〜図9を用いて詳細に説明する。
回収部20は、図1及び図2に示すように操作棒10と連結される本体部30と、本体部30と接続される把持部40を有している。
本体部30は、図1乃至図5に示すように、連結部300と、外側筒体310と、内側筒体370と、ガイド部350と、を備えている。
連結部300は、図4に示すように、断面略U字状に折り曲げられた下側部材301と下側部材301の両側面の外幅と略同じ内幅を有する断面略U字状の上側部材303とを有している。下側部材301と上側部材303は、略平行に配置された2本のボルト305で固定される。下側部材301の底面部307は、略中央において操作棒10の先端部と連結される。また、連結部300は、上側部材303の上面部309の略中央において、内側筒体370の底面部371と回転可能に軸ボルト302で連結される。
外側筒体310は、例えば、板部材を曲げ加工することにより形成される角型の筒状部材である。外側筒体310の内側には、図4に示すように、ラチェットレンチ機構330、内側筒体370、リンク機構390を備えている。図2に示すように、外側筒体310の正面部311には丸棒状のガイド部350が突設される。図1及び図4に示すように、ガイド部350の図示下側には分線金物100のナット150をラチェットレンチ機構330へ導入するナット導入孔部312が設けられている。図2に示すように、側面部313には、後述するラチェットレンチ機構330の柄331が通る孔314が設けられている。また、側面部313の上端側の両面には、把持部40を本体部30と離接可能に摺動させる摺動機構340が固定されている。
ラチェットレンチ機構330は、図1に示すように、柄331と、円筒部(係合部)333と、図4に示す、第1コイルばね335(第1付勢手段)と、第2コイルばね337(第2付勢手段)と、操作ひも339(操作杆)とを備えている。
柄331は、外側筒体310から孔314を通して突出し、外側筒体310の長手方向(図示上下方向)に円筒部333を中心に回動可能な棒状の部材である。また、柄331は、外側筒体310の内側に配置される内端部が円筒部333に接続されるとともに、外端部に操作ひも339の一端が固定されている。
円筒部333は、図1及び図4に示すように、柄331に接続される外筒部332と外筒部332の内側に沿って回動可能に設けられ、分線金物100のナット150と嵌め合いナット150を緩める方向に回動するレンチ部334とを備えている。レンチ部334は、いわゆるラチェット構造を有しており、一方向のみ回動可能に構成されている。本実施形態においては、ナット150を緩める方向にのみ回動可能に構成されている。また、円筒部333は、外側筒体310の正面部311から背面315へ貫通して設けられている。
第1コイルばね335は、図2に示すように、外側筒体310の背面315から突出した円筒部333の外端部333aに設けられる。第1コイルばね335は、レンチ部334の空転を防ぐ方向にレンチ部334を付勢するいわゆるワンウェイばねである。なお、空転とは、ナット150がボルト部113に締め付けられている状態から緩められたときに、柄331の位置戻し動作(操作位置Q2から初期位置Q1に柄331が反時計回りに回動する動作)に連れてレンチ部334とナット150も一緒に回動して、実質的にナット150の位置が変化しなくなることをいう。
第2コイルばね337は、図4に示すように、外側筒体310の内側であって、円筒部333の第1コイルばね335と反対側に設けられる付勢手段である。第2コイルばね337は、柄331を図示上方へ向かって回動する方向に付勢するいわゆる戻しばねである。すなわち、第2コイルばね337は、ナット150を緩めるために図示下方向に降ろされた柄331を図1において破線で示される操作位置Q2から初期位置Q1まで戻す付勢手段である。
操作ひも339の一端部は、図1に示すように、柄331の外端側に固定される。操作ひも339の他端部は、地上側の作業者の手元側まで延出されている。作業者は、操作ひも339の他端部を操作棒10の軸方向に沿って引っ張ることにより、柄331を初期位置Q1から操作位置Q2(図示下方向)の方向へ回動させる。なお、操作ひも339の材料は特に限定されていない。本実施形態においては、例えば、絶縁性や強度を考慮して、KEVLAR(登録商標)を含むひもを使用している。
内側筒体370は、例えば、板部材を曲げ加工により形成される角型の筒状部材であり、外側筒体310の内周よりも若干小さい外周を有する。内側筒体370は、図4に示すように、ラチェットレンチ機構330の円筒部333より図示下側において外側筒体310の内側に重なるように挿通され上下方向に摺動自在に配置される。
内側筒体370は、図4及び図6に示すように4つの側壁373と底面部371とを備えている。内側筒体370の内側には、上方にリンク機構390が設けられ、下方に把持部40を本体部30へ近接させた状態で固定するロック機構320が設けられる。
ロック機構320は、図6に示すように、軸ボルト302と、2つの係止具321と、回転盤323と、引張コイルばね325とを備えている。軸ボルト302は、回転盤323及び内側筒体370の底面部371、そして、連結部300の上側部材303を貫通しナット302aで固定される。係止具321は、回転盤323の回動に伴って、内側筒体370の側壁373に設けられた係止孔375から突没可能に設けられる板状の部材である。回転盤323は、軸ボルト302に固定され内側筒体370の内側において回動自在に配置される板状の部材である。引張コイルばね325は、一端部を回転盤323に固定され、他端部を内側筒体370に固定されるばね部材である。引張コイルばね325は、ロック機構320のロックが解除されている状態(図6参照)において、回転盤323をロック状態(図7参照)へ回動する方向に付勢する。すなわち、引張コイルばね325は、ロック機構320のロック動作を補助する。
摺動機構340は、本体部30の側面部313の両側に図8及び図9に示すように、一対のベースプレート341と、一対のレール部分343と、2本の第3コイルばね345と、2本の第4コイルばね347とを有している。すなわち、摺動機構340は、外側筒体310の側面部313の両面に対向してそれぞれ設けられている。なお、一対のベースプレート341、一対のガイドレール343、2本の第3コイルばね345、2本の第4コイルばね347は、それぞれ同じ部材であるため、両部材には、同一の符号を付し、その一つの摺動機構340について以下詳細に説明する。なお、図8は、第1の実施形態に係る分線金物外し装置1が支持線Wに固定されている分線金物100を捉えた状態を示す平面図である。図9は、分線金物外し装置1が支持線Wに固定されている分線金物100を把持した状態を示す平面図である。
ベースプレート341は、外側筒体310の側面部313の上方に取り付けられるU字形の固定部材である。ベースプレート341は、外側筒体310の上方において、底部342を外側筒体310の側面部313に接触させてネジ固定される。
ガイドレール343は、ベースプレート341の2つの壁部346(第1壁部346a及び第2壁部346b)を貫通して配置される円柱状の部材である。第3コイルばね345は、ガイドレール343上の第1壁部346aと後述する把持部40のスライド板430との間に設けられるばね部材である。第3コイルばね345は、把持部40を本体部30から離間させる方向に押圧する。
第4コイルばね347は、後述するスライド板430と外側プレート400との間に配置され、外側プレート400とスライド板430を離間する方向に押圧するばね部材である。第4コイルばね347は、分線金物100が把持部40に捉えられ、外側筒体310との間に把持されると、その衝撃を吸収する。その後、把持された分線金物100のナット150が緩められると、ナット150の位置は固定されているため、フックボルト110は、外側筒体310から離間する方向に外側プレート400を第4コイルばね347のばね力に抗して押圧する。これにより、ナット150と凸部115との間の間隔が拡大する。ナット150と凸部115との間の間隔が拡大すると、2枚の支持板130の固定が緩められる。2枚の支持板130の固定が緩むと、作業者は、その間に挟持されている支持線Wを支持板130の間から外すことができる。
すなわち、第4コイルばね347は、ロック機構320が把持部40をロックしている状態において、支持線Wと支持板130との固定を解除を補助するためのものである。なお、ガイドレール343の端部には、留め具349が設けられ、把持部40、第3コイルばね345、第4コイルばね347が外れることを防いでいる。
次に、把持部40について図1、図2、図8、図9を用いて説明する。
把持部40は、外側プレート400と、押さえプレート410と、スライド板430と、を有している。
外側プレート400は、例えば、一枚のプレートを曲げ加工により略U字形状に折り曲げて作製される。外側プレート400は、正面部401、及び、2つの側面部403を有している。正面部401は、図1に示すように、略方形の面を備え、図示上辺側にガイドレール343を貫通する左右一対のレール孔405が設けられている。
また、外側プレート400は、図1中で下辺部406の中央から略Y字形状の切り込み407が設けられている。切り込み407は、V字状の導入溝402と直線状の保持溝404とを備えている。導入溝402は、分線金物100のフック部111を引っ掛けやすくするため、下辺へ向かって広がるように傾斜面が形成されている。保持溝404は、導入溝402と連続して設けられ、導入溝402よりも外側プレート400の正面部401の中心側に設けられる。
導入溝402は、フック部111の凸部115の外径よりも幅広に形成される切れ込みである。すなわち、切り込み407は、分線金物100のフック部111を導入溝402で取り込み、保持溝404で保持する。
側面部403は、図3に示すように、下辺部に切り込み409を備える。切り込み409は、分線金物100の支持線Wに沿った方向への移動を制限する。また、切り込み409の切り込みの深さは、支持線Wと切り込み409が当接したときに、分線金物100のナット150が円筒部333と対向する位置となるようにした。言い換えれば、切り込み409の切り込みの深さは、支持線Wと切り込み409が当接したときに、分線金物100のフック部111の先端119と収容部353が対向する位置とした。
押さえプレート410は、図1に示すように、方形の板状の部材であり、外側プレート400の正面部401に設けられた保持溝404に重ねて配置される。押さえプレート410は、図示下辺側の中央部分から上方に向かって切り込み溝411が設けられる。押さえプレート410は、保持溝404よりも幅が狭く形成され、保持溝404と切り込み溝411で外側プレート400の正面部401の内面に段部413を形成する。
なお、段部413の形成方法はこれに限られない、例えば、外側プレート400の内側面の一部を削ることにより段部413を形成することも可能である。
すなわち、押さえプレート410の切り込み溝411は、フック部111を保持し、さらに、段部413は、ストッパーである凸部115を係止して、分線金物100を確実に保持する。
スライド板430は、図4に示すように、外側プレート400の2つの側面部403の内側にガイドレール343に摺動可能に設けられる板状の部材である。スライド板430は、略中央部の本体部30側に連結板450を備えている。連結板450は、図8に示すように、底面部453をスライド板430固定した略U字形のプレートであり、一対の連結部451には、後述するリンク機構390の第2杆395がそれぞれ連結される。
リンク機構390は、把持部40を摺動機構340のガイドレール343に沿って摺動させるための機構である。本実施形態において、リンク機構390は、外側筒体310の2つの側面部313に沿って、それぞれ1つずつ設けられている。なお、2つのリンク機構390の構成は同じであるため、その1つを説明し、ここでは、もう1つのリンク機構390の同一の部分には同一の符号を付して、その詳細な説明は省略する。
図4に示すように、リンク機構390は、内側筒体370と連結される第1杆391と、把持部40と連結される第2杆395と、第1杆391と第2杆395とを連結する回動プレート393とを備えている。
第1杆391は、図4に示すように、外側筒体310の長手方向に延びる細長い棒状の部材である。第1杆391は、内側筒体370の側壁373と回動プレート393の第1固定部392とを連結する。第1杆391は、内側筒体370の外側筒体310に対する長手方向(図示上下方向)のスライド動作に連動して図示上下方向に摺動する。
回動プレート393は、略三角形のプレートであり、3つの角部にそれぞれ第1固定部392、第2固定部394、第3固定部396を備えている。上述のように、第1固定部392は、第1杆391の一端と連結される。第2固定部394は、外側筒体310の側面部313に回動可能に固定され、回動プレート393の回動軸として機能する。第3固定部396は、第2杆395の一端と連結される細長い棒状の部材である。第2杆395は、その一端を回動プレート393の第3固定部396と連結され、他端を把持部40の連結部451と固定される。
すなわち、リンク機構390は、図4及び図5に示すように、内側筒体370の上下方向の動作を、回動プレート393を介して第2杆395にガイドレール343に沿った方向の動作に変換して伝達し、把持部40を摺動機構340に沿って摺動させる。
ガイド部350は、図3に示すように、分線金物100が分線金物外し装置1に把持されたときに、分線金物100のフック部111の先端119を収容する部分である。
ガイド部350は、台座351と収容部353とを有している。台座351は、図4に示すように、外側筒体310の正面部311のナット導入孔部312の図示上方に取り付けられる板状の部材である。収容部353は、分線金物100のフック部111よりも若干大きな直径を有する円筒形の突起部材である。また、収容部353は、フック部111の先端119が収容されたときに、分線金物100のナット150が円筒部333と同軸になる位置に設けられている。収容部353の突出量については、特に定められていないが、ナット150がナット導入孔部312と当接するよりも先にフック部111の先端119が収容部353に収容される突出量であって、分線金物100を把持部40が押さえる動作を妨げない程度の突出量を有している。
次に、図1から図9及び図24を用いて分線金物外し装置1を用いた分線金物100の回収操作について説明する。
始めに、図2及び図4に示すようにセットされている回収部20を連結部300で操作棒10の先端に連結し固定する。図24に示すように、作業者は、高所に架設されている支持線Wの一部に固定されている分線金物100の位置を確認する。
次に、作業者は、図24に示すように、操作棒10を伸ばし回収部20の把持部40の下辺部406が支持線Wを超える高さまで回収部20を持ち上げる。
作業者は、操作棒10を操作し、持ち上げられた回収部20の把持部40の外側プレート400に設けられた導入溝402に分線金物100のフック部111が収まるように調整する。分線金物100のフック部111が導入溝402に収まる位置において、作業者は、回収部20を支持線Wと当接する位置まで下降させる。これにより、フック部111が導入溝402に収まる。そして、フック部111は、導入溝402の傾斜に沿って、導入溝402と連続して設けられている保持溝404に導入される。
作業者は、回収部20を操作棒10を用いて上下に揺らすように振動を分線金物100に与える。フック部111が保持溝404に収まった後、作業者は、操作棒10を操作棒10の軸に沿って下方向に引く。すると、回収部20のリンク機構390が作動する。具体的には、図4に示すように、内側筒体370が第3コイルばね345(図8参照)のばね力に抗して引かれると、リンク機構390の第1杆391が内側筒体370と連動して下方向に移動する(図5参照)。この動作に伴い、回動プレート393が第2固定部394を軸として時計回り方向に回動し、第1固定部392を下方向に移動させる。すると、回動プレート393の回動に連動して、第3固定部396に連結さている第2杆395がスライドする(図5参照)。これにより、第2杆395と連結板450を介して連結している把持部40のスライド板430が第3コイルばね345を収縮させながら本体部30へ向かって移動する。
スライド板430の本体部30への移動により、外側プレート400と本体部30の間に保持されている分線金物100は、ガイドレール343に沿って本体部30へ向かって移動する。分線金物100のフック部111の先端119は、ガイド部350の収容部353へ収容され、本体部30に保持される(図3及び図9参照)。
このとき、分線金物100のナット150は、ガイド部350の収容部353の下側に設けられているナット導入孔部312へ挿入されるとともに、その内側に設けられている円筒部333へ嵌め合わされる(図3参照)。
フック部111の先端119が収容部353に収容されると、作業者は、操作棒10を操作棒10の軸を中心に回動させる。図6及び図7に示すように、操作棒10を回動するとロック機構320が駆動する。具体的には、連結部300の内部に設けられている回転盤323が軸ボルト302を中心に反時計回り方向に回動する。
これにより、回転盤323に設けられている2つの係止具321が内側筒体370の対向する壁部に設けられた係止孔375から同時に突出する(図7参照)。2つの係止具321は、内側筒体370の側壁に係止され、内側筒体370がスライドして外側筒体310の内側へ戻ることを防ぐ。すなわち、第3コイルばね345が伸長して、分線金物100が収容部353及びナット導入孔部312から外れることを防止する。
作業者は、このロック状態(図5、図7参照)において、図1に示すように、ラチェットレンチ機構330の柄331の端部に設けられた操作ひも339を初期位置Q1から操作位置Q2へ向けて下方向に引っ張る。すると、ラチェットレンチ機構330の円筒部333の内側に納められているナット150は、レンチ部334とともに回動し緩まる。
なお、操作位置Q2から初期位置Q1までのラチェットレンチ機構330の柄331の戻し動作は、第2コイルばね337のばね力により行われる。そして、作業者は、柄331を繰り返し下方向に引張り操作することにより、円筒部333に納められているナット150を緩めることができる。ナット150が緩み、ナット150がボルト部113の先端117側へ移動する。なお、ナット150の位置が固定されている場合には、フック部111が外側プレート400を押圧する方向へ動くことになる。
なお、本実施形態における分線金物外し装置1においては、ロック機構320が作動している状態においても、第4コイルばね347の収縮により、ナット150の緩みに対応して外側プレート400を所定幅において移動可能としている。これにより、2枚の支持板130の間に隙間が生じ、支持線Wが支持板130から外れる。
作業者は、ラチェットレンチ機構330の柄331を所定の回数動作した後に、分線金物100が支持線Wから外れた状態で、回収部20を持ち上げる。このとき、ナット150が緩み、支持線Wが支持板130により挟持されていない場合には、作業者は、回収部20を上方向に持ち上げることにより、分線金物100を支持線Wから取り外すことができる。
分線金物100の取り外し作業において、分線金物100は、ガイド部350の収容部353により保持されているため、落下することがない。また、ナット150も円筒部333に収容されているため落下することがない。
その後、作業者は、操作棒10を収縮させて回収部20に保持されている分線金物100を回収し、分線金物100の取り外し作業を終了する。
このように、第1の実施形態に係る分線金物外し装置1は、地上から作業者一人で支持線Wに固定されている分線金物100を回収することができる。また、分線金物外し装置1は、外側プレート400に導入溝402が設けられていることから、高所に設置されている分線金物100いても容易アクセスできる。また、導入溝402は、下辺部406に向かって広がる切り込みであるため、容易にフック部111を挟むことができる。
また、保持溝404には、段部413が設けられている。このため、製造年により支持板の形状が多少ことなっている種々の分線金物100に対しても、フック部111と凸部115とを2段階で把持することにより、確実に分線金物100を押さえることができる。
また、分線金物外し装置1は、ガイド部350を有していることにより、最初にフック部111の先端119をガイド部350の収容部353で固定することができる。このため、フック部111の下側に設けられているナット150を容易にナット導入孔部312へ導入することができる。
また、分線金物外し装置1は、ラチェットレンチ機構330の柄331に第2コイルばね337を設け、柄331を付勢している。このため、ナット150を緩めるストローク毎に柄331を手動で開始位置へ戻す必要ない。
また、分線金物外し装置1は、ラチェットレンチ機構330の円筒部333の背面315側に第1コイルばね335を設けている。このため、緩み始めたナット150と連動して円筒部333の内側に設けられているレンチ部334が空転することを防ぐことができる。これにより、作業者は、柄331を往復動させることのみで、レンチ部334を確実にナット150が緩む方向に継続的に回動させることができる。
また、分線金物外し装置1は、ロック機構320を備えている。このため、回収部20は、把持部40が一度把持した分線金物100を、例えば、ラチェットレンチ機構330の柄331の操作や、操作棒10の位置の調整等により、誤って取り逃がしてしまうこと防ぐことができる。
また、ロック機構320のロック動作は、操作棒10の軸を中心に操作棒10を回動させるだけの簡単な操作である。このため、作業者は、容易にロック機構320を動作させることができる。また、逆動作によりロック機構320を解除することができるため、回収する必要のない分線金物100を把持した場合であっても容易に解除することができる。
また、分線金物外し装置1は、第4コイルばね347を備えている。第4コイルばね347は、ナット150の緩みに連動して、本体部30から離間する方向に移動するフック部111により収縮可能に配置されている。このため、分線金物100が把持部40と本体部30の間に固く押さえられている状態においても、2枚の支持板130の間に第4コイルばね347の収縮分の隙間を作ることができる。このため、作業者は、分線金物100を支持板130から容易に取り外すことができる。また、第4コイルばね347は、同時に一定の付勢力で分線金物100を押圧している。このため、支持線Wから分線金物100が取り外されたときにも、分線金物外し装置1は、分線金物100を把持することができる。
さらに、分線金物外し装置1は、ガイド部350の収容部353において、分線金物100のフック部111の先端119を保持している。また、円筒部333においてナット150を保持している。このため、分線金物100の回収操作において、分線金物100が分線金物外し装置1から外れて落下することがない。
続いて、第2の実施形態に係る分線金物外し装置2について図10〜図18を用いて説明する。図10は、第2の実施形態に係る分線金物外し装置2の回収部50を示す斜視図である。図11は、第2の実施形態に係る分線金物外し装置2の正面図である。図12は、第2の実施形態に係る分線金物外し装置2の側面図であり、把持部500に分線金物100が捉えられている状態を示している。
図13は、第2の実施形態に係る分線金物外し装置2を図11のF13−F13線で切断した状態を示す断面図であり、分線金物外し装置2が分線金物を把持する前の状態(通常時)を示している。図14は、第2の実施形態に係る分線金物外し装置2を図11のF14−F14線で切断した状態を示す断面図であり、分線金物外し装置2が分線金物を把持した後の状態(把持時)を示している。
図15は、第2の実施形態に係る分線金物外し装置2を図13に示すF15−F15線で切断した状態を示す断面図である。図16は、第2の実施形態に係る分線金物外し装置2を図13に示すF16−F16線で切断した状態を示す断面図である。
図17は、第2の実施形態に係る分線金物外し装置2が分線金物100を捉えた状態を示す説明図である。図18は、第2の実施形態に係る分線金物外し装置2が分線金物100を把持した状態を示す説明図である。図19は、第2の実施形態に係る分線金物外し装置2の円筒部633と分線金物100のナット150の位置がずれていた場合の状態を示す説明図である。
始めに、第2の実施形態に係る分線金物外し装置2と、第1の実施形態に係る分線金物外し装置1の主要な相違点について簡単に説明する。第1の実施形態に係る分線金物外し装置1は、上述の通り、本体部30にガイド部350及びラチェットレンチ機構330を固定し、把持部40がガイドレール343に沿って摺動する。これに対し、第2の実施形態に係る分線金物外し装置2は、第1の実施形態に係る分線金物外し装置1において、把持部40に該当する部分を固定して、ガイド部350及びラチェットレンチ機構330に該当する部分を可動式としている点が大きく異なっている。すなわち、分線金物外し装置2と分線金物外し装置1とは、分線金物100の把持の仕方が異なっている。
次に、分線金物外し装置2の構造について説明する。なお、操作棒10は、第1の実施形態に係る分線金物外し装置1と同じ物を用いているため、その詳細な説明は省略する。
分線金物外し装置2は、図10に示すように、操作棒10と回収部50を備えている。
回収部50は、図10に示すように、外側部分610と、把持部500と、操作棒受け部700と、図13に示すように、摺動機構640と、本体部600と、リンク機構690と、を備えている。
外側部分610は、図10に示すように、略U字形状の方形のカバー体である。外側部分610の一端には、把持部500が設けられている。
外側部分610の2つの側面部613には、長円形のスライド孔693を備えている。スライド孔693には、リンク機構690の先端部694が摺動自在に連結される。また、側面部613は、上面部611よりも長手方向に長く形成され、把持部500と反対側の面が操作棒受け部700の側面部713と重なって配置される。すなわち、操作棒受け部700は、外側部分610の側面部613に挟まれて配置されている。そして、外側部分610の側面部613と操作棒受け部700の側面部713が重なる部分にネジ770が設けられる。
把持部500は、図10及び図11に示すように、操作棒受け部700と反対側の端部に設けられる板状の部材である。把持部500は、正面部501と、2枚の側面部503とを備えている。
正面部501は、方形の板の下辺部506から上辺に向かって略Y字状の切り込み507が設けられている。切り込み507は、略V字状の導入溝502と、直線状の保持溝504とを備えている。導入溝502は、下辺部506へ向かって広がり、分線金物100のフック部111を取り込みやすい傾斜面を有している。保持溝504は、取り込んだフック部111の位置がずれないように保持する所定幅の直線状の溝状を有する。
また、正面部501には、図11に破線で示すように、裏面側にもう一枚形の異なる切り込み507が設けられている板を備えている。この2枚の板により、段部505が形成されている。段部505は、図12に示すように、取り込まれた分線金物100の凸部115と係合し、分線金物100の位置がずれるのを防止する。
なお、段部505の形成方法はこれに限られない、例えば、正面部501の内側面の一部を削ることにより段部505を形成することも可能である。
側面部503は、図10に示すように、正面部501と同様に下辺に切り込み509が設けられた板状の部材である。切り込み509は、図10示すように、支持線Wが外側部分610の長手方向に沿って移動することを制限する。また、切り込み509の切り込みの深さについては、支持線Wと切り込み509が当接したときに、分線金物100のナット150が円筒部633と対向する位置となるようにした。言い換えれば、切り込み509の切り込みの深さは、支持線Wと切り込み509が当接したときに、分線金物100のフック部111の先端119と後述するガイド部650の保持孔655が対向する位置とした(図12参照)。
摺動機構640は、図13及び図14に示すように、ベースプレート641と、一対のガイドレール643と、2本の第4コイルばね647と、を有している。一対のガイドレール643は、外側部分610の側面部613の内側の長手方向に沿って互いに並ぶように設けられている。なお、一対のガイドレール643、2つの第4コイルばね647は、それぞれ同じ部材であるため、同一の符号を付し、その片方について以下詳細に説明する。
ベースプレート641は、外側部分610の外側部分610側の端部に配置される板状の部材である。ベースプレート641は、外側部分610に固定され、ガイドレール643の一端を固定している。
ガイドレール643は、ベースプレート641に一端を固定され、他方の端部を把持部500の正面部501の裏面において固定される丸棒状の部材である。
第4コイルばね647は、後述する連結板695とスライド板638との間に配置され、連結板695とスライド板638を離間する方向に押圧するばね部材である。第4コイルばね647は、分線金物100が把持部500に捉えられ、本体部600との間に把持されると、その衝撃を吸収する。その後、分線金物100のナット150の位置が固定されている状態において、ナット150が緩められると、フックボルト110は、本体部600から離間する方向にスライド版638を第4コイルばね647のばね力に抗して押圧する。これにより、ナット150と凸部115との間の間隔が拡大する。ナット150と凸部115との間の間隔が拡大すると、2枚の支持板130の固定が緩められる。2枚の支持板130の固定が緩むと、作業者は、その間に挟持されている支持線Wを支持板130の間から外すことができる。
すなわち、第4コイルばね647は、ロック機構620が把持部500をロックしている状態において、支持線Wと支持板130との固定を解除を補助するためのものである。
続いて、本体部600について図13及び図14を用いて説明する。
本体部600は、ラチェットレンチ機構630と、ガイド部650とを備えている。
ラチェットレンチ機構630は、スライド板638と、背板636と、円筒部633と、柄631と、第1コイルばね635と、第2コイルばね637と、を有する。
スライド板638は、図13に示すように、把持部500の正面部501(図10参照)と並列に配置される板状の部材である。スライド板638は、図15に示すように、略中央部に分線金物100のナット150を収容するための円形の孔部632を備えている。また、スライド板638は、上方にガイドレール643が挿通する孔部657を有し、ガイドレール643に沿って摺動可能に配置されている。
背板636は、図13に示すように、スライド板638と並列に配置される板状の部材である。背板636は、スライド板638と所定の間隔を空けて、外側部分610側に設けられる。背板636は、スライド板638と同様に、ガイドレール643に貫通して配置され、ガイドレール643に沿って摺動可能に配置される。
すなわち、スライド板638と背板636は、外側部分610の内部において、ガイドレール643に沿って並べて配置される。また、スライド板638と背板636の間には、円筒部633の一部、第2コイルばね637及び第4コイルばね647が設けられる。
また、円筒部633は、図13に示すように、柄631に延設される外筒部639と外筒部639の内側に沿って回動可能に設けられ、分線金物100のナット150と嵌め合いナット150を緩める方向に回動するレンチ部634とを備えている。レンチ部634は、いわゆるラチェット構造を有しており、一方向のみ回動可能に構成されている。このようなラチェットレンチ機構630は、上述の第1の実施形態に示した分線金物外し装置1のラチェットレンチ機構330と同様にナット150を緩める方向にのみ回動可能に構成されている。
また、円筒部633は、スライド板638と背板636を貫通して、スライド板638と背板636と共にガイドレール643に沿って摺動自在に配置される。円筒部633は、背板636を貫通し突出した部分に第1コイルばね635を有する。また、円筒部633は、第1コイルばね635と反対側の端部に第2コイルばね637を有している。なお、第1コイルばね635及び第2コイルばね637の機能は、上述の第1の実施形態に示した分線金物外し装置1と同様であるため、その詳細な説明は省略する。
ガイド部650は、図13及び図15に示すように、方形の板状の部材である収容部653と、収容部653をラチェットレンチ機構630に固定する台座651とを備えている。収容部653は、ガイドレール643を貫通する2つの孔部657と、分線金物100のフック部111の先端119を収容し、保持するための保持孔655を有している。台座651は、収容部653を本体部600の動作に合わせて摺動させるため、ラチェットレンチ機構630と固定するための板状の部材である。
次に、操作棒受け部700及びリンク機構690について図12から図16を用いて説明する。
操作棒受け部700は、ロック機構720と、2本の第3コイルばね745とをその内部に備えている。操作棒受け部700の外側部分710は、略直方体の図示上下方向に長い4枚の周壁を有する筒状の部材である。そして、外側部分710の内側には、図16に示すように、第3コイルばね745を配置するためのばねストッパー775が突設されている。また、外側部分710は、中央部に操作棒10を取り付けるための挿管部730を有している。また、外側部分710には、図12に示すように、それぞれの側面部713の長手方向に沿って対向する位置に長円形のスライド孔791が設けられている。また、正面部711は、方形の板状の形状であって、一部に係止孔714が設けられている。
また、外側部分710の側面部713の図示下方は、図12に示すように、外側部分610の側面部613の一部と重なる。そして、側面部613から側面部713に向けてネジ770が挿入される。
ネジ770は、操作棒受け部700と外側部分610の当接角度を調整するものである。そして、所望の角度に設定された操作棒受け部700は、ネジ770を締めることにより当接角度を固定することができる。
第3コイルばね745は、図16に示すように、操作棒受け部700の内側に挿管部730を介して両側に2つ設けられる。第3コイルばね745は、ばねストッパー775と摺動蓋771の間に配置され、摺動蓋771を図示上方へ向かって押圧する。
摺動蓋771は、リンク機構690の基端部792と摺動杆722を介して固定される。すなわち、摺動蓋771は、スライド孔791に沿ってリンク機構690の動作に連動して上下に移動する。また、摺動蓋771は、その中央部において操作棒10と接続される。このため、摺動蓋771は、操作棒10の軸方向に沿った動きに連動して移動可能である。
すなわち、図13及び図14に示すように、操作棒10が第3コイルばね745のばね力に抗して図示下方へ引かれると、摺動蓋771は、第3コイルばね745を収縮する(図14参照)。
ロック機構720は、図13に示すように、例えば、係止具721と、係止孔714とを含む。係止具721は、外側部分710の内側であって、摺動蓋771の図示上側に配置される板状の部材である(図16参照)。係止具721は、略楕円形状を有し、外周の一部に切欠きが形成されている。また、係止具721は、切欠きと隣接する係止部725を備えている。係止具721は、その中心に操作棒10の先端が連結される孔部723を備えている。
このような係止具721は、図14に示すように、摺動蓋771(図16参照)が図示下方に移動した状態において、係止孔714が設けられている位置で操作棒10をその軸を中心に回動させることにより作動する。すなわち、係止具721が回動すると、係止孔714から、係止部725が突出し、リンク機構690の基端部792が図示上方へ第3コイルばね745の反力により戻ることを規制する(図14参照)。なお、ロック機構720は、この構造に限定されない。例えば、上述の第1の実施形態で示したロック機構320を用いることもできる。
リンク機構690は、2本の第1杆696を有している。第1杆696は、基端部792を摺動杆722を介して摺動蓋771に固定されるとともに、スライド孔791に沿って図示上下方向にスライド自在に配置される。また、第1杆696の先端部694は、本体部600の連結板695と固定され、スライド孔693に沿ってスライド自在に配置される。
すなわち、リンク機構690は、図13に示す位置にある操作棒10を図14に示す方向に向かって図示下方向に引っ張ると、第1杆696が連動して下降するとともに、本体部600に固定される連結板695を把持部500へ向かって押し出す。これにより、本体部600が把持部500へ向かってスライドする。
また、所定量操作棒10の位置を下げた地点において、操作棒10の軸を中心として回動させることにより、ロック機構720が機能する。すなわち、係止具721が係止孔714から突出し、第3コイルばね745の戻りを防ぐ。
次に、図10から図19を用いて分線金物外し装置2を用いた分線金物100の回収操作について説明する。図17は、分線金物外し装置2が分線金物100を捉えた状態を示す説明図である。図18は、分線金物外し装置2が分線金物100を把持した状態を示す説明図である。図19は、分線金物外し装置2のレンチ部634とナット150の位置がずれていた場合の状態を示す説明図である。
始めに、回収部50の操作棒受け部700に操作棒10を挿入し、その先端を固定する(図16参照)。図24に示すように、作業者は、高所に架設されている支持線Wの一部に固定されている分線金物100の位置を確認する。
ここで、作業者は、分線金物100が支持線Wに対してどのような角度で取り付けられているかを確認する。そして、作業者は、支持線Wに取り付けられている分線金物100の角度に合わせて、ネジ770を緩めて操作棒受け部700の角度を調節する。
次に、作業者は、操作棒10を伸ばし、分線金物100のナット150側から、操作棒10の先端に設けられた回収部50の把持部500の下辺部506が支持線Wを超える高さまで回収部50を持ち上げる。
作業者は、操作棒10を操作し、持ち上げられた回収部50の把持部500の正面部501に設けられた導入溝502に分線金物100のフック部111が収まるように調整する。分線金物100のフック部111が導入溝502に収まる位置において、作業者は、回収部50を支持線Wと当接する位置まで下降させる。これにより、フック部111が導入溝502に収まる。そして、フック部111は、導入溝502の傾斜に沿って、導入溝502と連続して設けられている保持溝504に導入される。
作業者は、回収部50を操作棒10を用いて上下に揺らすように振動を分線金物100に与える。フック部111が保持溝504に収まった後、作業者は、操作棒10を操作棒10の軸に沿って下方向に引く。すると、操作棒受け部700の内部に設けられている摺動蓋771が第3コイルばね745を収縮する(図14参照)。リンク機構690は、摺動蓋771が下降するとともに、第1杆696の基端部792がスライド孔791に沿って下降する。これと同時に、第1杆696の先端部694は、スライド孔693に沿って把持部500へ向かって移動する。
図17に示すように、把持部500において分線金物100が捉えられている状態において、上述のように、操作棒10が引かれると、図18に示すように、本体部600が把持部500へ向かって移動する。
そして、本体部600のガイド部650に設けられている保持孔655の位置と分線金物100のフック部111の先端119の位置とが同軸上に配置されている場合には、図18に示すように、先端119が保持孔655の内部へ挿入される。これと同時に、分線金物100の先端119の下側に設けられるナット150も孔部632(図15参照)へ収容される。そして、ナット150は、孔部632のさらに内部に設けられている円筒部633のレンチ部634と嵌めあう。
フック部111の先端119が保持孔655に収容されると、作業者は、操作棒10を操作棒10の軸を中心に回動させる。図14に示すように、操作棒10を回動するとロック機構720が駆動する。具体的には、操作棒受け部700の内部に設けられている係止具721が操作棒10の軸を中心に回動する。
これにより、係止具721が外側部分710の正面部711及び背面部715に設けられた係止孔714から突出する(図14参照)。すなわち、係止具721は、摺動蓋771が第3コイルばね745のばね力により上方へ移動することを防ぐ。言い換えれば、リンク機構690の第1杆696の移動を規制し、フック部111の先端119が保持孔655、及び、ナット150が孔部632から外れることを防止する。
作業者は、このロック状態(ナット150がレンチ部634に嵌め合わされている状態)において、ラチェットレンチ機構630の柄631の端部に設けられた操作ひも(図示せず)を下方向に引っ張る。すると、ラチェットレンチ機構630の円筒部633の内側に納められているナット150は、レンチ部634とともに回動し緩まる。
なお、ラチェットレンチ機構630による、ナット150を緩める動作については、第1の実施形態の分線金物外し装置1と同じであるため、その詳細な説明は省略する。
なお、本実施形態における分線金物外し装置2においては、ロック機構720が作動している状態においても、ナット150が緩められて、ナット150がボルト部113の先端117へ移動すると、第4コイルばね647が収縮し、支持線Wを取り外すのに必要な隙間を2枚の支持板130の間に形成することができる。
また、第4コイルばね647は、図19に示すように、ナット150が孔部632に上手く収まらない場合がある。このような場合に、ナット150は、スライド板638押す。反対に、第4コイルばね647は、ばね力によりナット150を押圧する。このため、作業者が操作棒10を操作してナット150と孔部632との相対位置を調整し、引っ掛かりが解消された時点において、ナット150と孔部632とを嵌め合うことができる。
その後、作業者は、ラチェットレンチ機構630の柄631を所定の回数動作した後に、分線金物100の支持板130が支持線Wを挟持しなくなった状態において、回収部50を持ち上げる。作業者は、回収部50を上方向に持ち上げることにより、分線金物100を支持線Wから取り外すことができる。
また、分線金物100は、ガイド部650の保持孔655により保持されているため、落下することがない。また、ナット150も円筒部633に収容されているため落下することがない。
その後、作業者は、操作棒10を収縮させて回収部50に保持されている分線金物100を回収し、分線金物100の取り外し作業を終了する。
このように、第2の実施形態に係る分線金物外し装置2は、地上から作業者一人で支持線Wに固定されている分線金物100を回収することができる。また、分線金物外し装置2は、把持部500に導入溝502が設けられていることから、高所に設置されている分線金物100ついても容易アクセスできる。また、導入溝502は、下辺部506に向かって広がる切り込みであるため、容易にフック部111を挟むことができる。また、保持溝504には、段部505が設けられている。このため、支持板130の形状が多少ことなっている種々の分線金物100に対しても、フック部111と凸部115とを2段階で把持することにより、確実に分線金物100を押さえることができる。
また、分線金物外し装置2は、ガイド部650を有していることにより、最初にフック部111の先端119をガイド部650の保持孔655で固定することができる。このため、フック部111の下側に設けられているナット150を容易に円筒部633へ導入することができる。
また、分線金物外し装置2は、ラチェットレンチ機構630の柄631に第2コイルばね637を設け、柄631を付勢している。このため、ナット150を緩めるストローク毎に柄631を手で開始位置へ戻す必要ない。
また、分線金物外し装置2は、ラチェットレンチ機構630の円筒部633に第1コイルばね635を設けている。このため、緩み始めたナット150と連動して円筒部633の内側に設けられているレンチ部634が空転することを防ぐことができる。これにより、作業者は、柄631を往復動させることで、レンチ部634を確実にナット150が緩む方向に継続的に回動させることができる。
また、分線金物外し装置2は、ロック機構720を備えている。このため、回収部50は、把持部500が一度把持した分線金物100を、例えば、ラチェットレンチ機構630の柄631の操作や、操作棒10の位置の調整等により、誤って取り逃がしてしまうこと防ぐことができる。また、ロック機構720のロック動作は、操作棒10の軸を中心に操作棒10を回動させるだけの簡単な操作である。このため、作業者は、容易にロック機構720を動作させることができる。また、逆動作によりロック機構720を解除することができるため、回収する必要のない分線金物100を把持した場合であっても容易に解除することができる。
また、分線金物外し装置2は、第4コイルばね647を備えている。第4コイルばね647は、ナット150の緩みに連動して、本体部600から離間する方向に移動するフック部111により収縮可能に配置されている。このため、分線金物100が把持部500と本体部600の間に固く押さえられている状態においても、2枚の支持板130の間に第4コイルばね647の収縮分の隙間を作ることができる。このため、作業者は、分線金物100を支持板130から容易に取り外すことができる。また、第4コイルばね647は、同時に一定の付勢力で分線金物100を押圧している。このため、支持線Wから分線金物100が取り外されたときにも、分線金物外し装置2は、分線金物100を把持することができる。
さらに、分線金物外し装置2は、ガイド部650の保持孔655において、分線金物100のフック部111の先端119を保持している。また、円筒部633のレンチ部634においてナット150を保持している。このため、分線金物100の回収操作において、分線金物100が分線金物外し装置2から外れて落下することがない。
また、第2の実施形態に係る分線金物外し装置2は、支持線Wに固定されている分線金物100の設置角度によって、操作棒受け部700と外側部分610との連結角度を調節することができる。
このため、分線金物100の取り付けられている角度に応じて、もっとも把持しやすい角度に分線金物外し装置2を調節して分線金物100の回収を行うことができる。これにより、作業性が向上し、作業時間を短縮することができる。また、分線金物100の取付け角度に合わせて、作業者が操作棒10を様々な角度に傾ける作業が減少するため、作業者の疲労を低減することができる。
また、分線金物外し装置2の回収部50において、把持部500は、外側部分610の周囲に略壁状に取り付けられている。このため、分線金物100を捉えるために支持線Wに把持部500の切り込み509を引っ掛けて引っ張ることがある。この場合、把持部500には、大きな力が掛かることになる。分線金物外し装置2は、把持部500にこのような負荷が掛かった場合であっても、ガイドレール643が曲がることがない。このため、摺動機構640の摺動性能が長期間において低下することがない。
なお、本発明は上述の実施形態及び変形例に限定されるものではない。例えば、レンチ部334の空転防止手段800については、図20及び図21に記載する手段を採用することも可能である。
具体的には、空転防止手段800は、押さえ板810と、ベアリング830とを備えている。押さえ板810は、レンチ部334へ向かってベアリング830を押圧する板ばねである。ベアリング830は、押さえ板810に取り付けられ、押さえ板810により、レンチ部334の端部に設けられている溝部338へ押圧される。
このような構成を有する空転防止手段800は、ラチェットレンチ機構の操作によりナット150を緩める動作においては、ベアリング830が溝部338を乗り越えるため、レンチ部334は回動する。次に、回動動作よりも軽い回転動作が生じた場合(空転時)には、押さえ板810の押圧力よりも回転力が弱いため、レンチ部334は、ベアリング830と溝部338により係止される。
また、本実施形態においては、レンチ部の操作部材として、操作ひもを採用しているが、単一の操作棒により構成され、絶縁性を有し、軽量化できるのであれば、機械式の操作部材を適用することもできる。この他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能であるのは勿論である。
以下、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]略U字形に曲げられたフック部と、前記フック部の基端側に一体に形成されるボルト部と、前記フック部と前記ボルト部の境に凸部とを有するフックボルトと、前記ボルト部に挿入され電信柱間に架設された支持線を挟持する2枚の支持板と、前記2枚の支持板よりも前記ボルト部の基端側に設けられ、前記フックボルトと螺合するナットとを備える分線金物が固定された前記支持線から前記分線金物を回収する分線金物外し装置であって、 操作棒と、
前記操作棒の先端に設けられる回収部と、を備え、
前記回収部は、前記分線金物を捉える把持部と、前記分線金物のナットを緩める機能を有する本体部とを備え、
前記把持部は、前記フック部の先端側及び基端側を挟む切り込みと、前記凸部を支持する段部と、を備え、
前記本体部は、前記ナットと係脱可能に係合するレンチ部を含む係合部と、前記係合部に固定される柄と、前記レンチ部の空転を防止する方向に付勢する第1付勢手段と、前記柄を停止位置へ戻す方向に付勢する第2付勢手段と、前記柄の他端に固定される操作ひもと、を含むラチェットレンチ機構と、前記フック部の先端側が把持されると、前記ナットと前記レンチ部との相対位置を規定するガイド部と、を備えることを特徴とする分線金物外し装置。
[2]前記第1付勢手段は、前記係合部の一方の端部に設けられ、前記レンチ部が前記柄の戻り動作に連動して空転することを防止するばね部材であることを特徴とする[1]に記載の分線金物外し装置。
[3]前記第2付勢手段は、前記係合部の前記第1付勢手段と反対側の端部に設けられ、前記柄を停止位置へ付勢するばね部材であることを特徴とする[1]に記載の分線金物外し装置。
[4]前記把持部は、前記本体部から延出されるガイドレールに沿って、前記本体部と離接可能に設けられていることを特徴とする[4]に記載の分線金物外し装置。
[5]前記把持部と前記本体部は、前記操作棒に連結され、前記操作棒を前記操作棒の軸に沿って移動させることにより、前記把持部と前記本体部を離接可能とするリンク機構を備えている特徴とする[4]に記載の分線金物外し装置。
[6]前記本体部は、前記把持部から延出される摺動機構に配置され、前記摺動機構のガイドレールに沿って、前記把持部と離接可能に設けられていることを特徴とする[1]に記載の分線金物外し装置。
[7]前記本体部と前記把持部は、前記操作棒に連結され、前記操作棒を前記操作棒の軸に沿って摺動させることにより、前記本体部と前記把持部を離接可能とするリンク機構を備えている特徴とする[6]に記載の分線金物外し装置。
[8]略U字形に曲げられたフック部と、前記フック部の基端側に一体に形成されるボルト部と、前記フック部と前記ボルト部の境に凸部とを有するフックボルトと、前記ボルト部に挿入され電信柱間に架設された支持線を挟持する2枚の支持板と、前記2枚の支持板よりも前記ボルト部の基端側に設けられ、前記フックボルトと螺合するナットとを備える分線金物が固定された前記支持線から前記分線金物を回収する分線金物外し方法であって、 操作棒の先端に取り付けられる把持部及び本体部を有する回収部を用いて前記分線金物を捉える工程と、
前記回収部において前記分線金物を捉えるときに、前記本体部に備えられたガイド部を用いて前記フック部の先端を把持することにより、前記ナットの前記本体部のラチェットレンチ機構のレンチ部との相対位置を規定する工程と、
前記レンチ部に前記ナットを嵌め込み、前記ナットを緩めるとともに、前記支持線から前記分線金物を外す工程と、
を備えることを特徴とする分線金物外し方法。
[9]前記操作棒を前記操作棒の軸に沿って、前記分線金物から離間する方向に引くことにより前記本体部へ向かって前記把持部を移動させ、前記本体部と前記把持部により前記分線金物を把持する工程をさらに含むことを特徴とする[8]に記載の分線金物外し方法。
[10]前記操作棒を前記操作棒の軸に沿って、前記分線金物から離間する方向に引くことにより前記把持部へ向かって前記本体部を移動させ、前記把持部と前記本体部により前記分線金物を把持する工程をさらに含むことを特徴とする[8]に記載の分線金物外し方法。