以下、本発明の一実施の形態に係る検査装置および基板処理装置について図面を用いて説明する。なお、以下の説明において、基板とは、半導体基板、液晶表示装置用基板、プラズマディスプレイ用基板、フォトマスク用ガラス基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板またはフォトマスク用基板等をいう。
[1]第1の実施の形態
(1)基板処理装置の全体構成
図1は、第1の実施の形態に係る基板処理装置100の構成を示す模式的平面図である。図1および図2以降の所定の図には、位置関係を明確にするために互いに直交するX方向、Y方向およびZ方向を示す矢印を付している。X方向およびY方向は水平面内で互いに直交し、Z方向は鉛直方向に相当する。
図1に示すように、基板処理装置100は、インデクサブロック11、第1の処理ブロック12、第2の処理ブロック13、洗浄乾燥処理ブロック14Aおよび搬入搬出ブロック14Bを備える。洗浄乾燥処理ブロック14Aおよび搬入搬出ブロック14Bにより、インターフェイスブロック14が構成される。搬入搬出ブロック14Bに隣接するように露光装置15が配置される。露光装置15においては、液浸法により基板Wに露光処理が行われる。
インデクサブロック11は、複数のキャリア載置部111および搬送部112を含む。各キャリア載置部111には、複数の基板Wを多段に収納するキャリア113が載置される。
搬送部112には、制御部114および搬送機構115が設けられる。制御部114は、例えばCPU(中央演算処理装置)およびメモリ、またはマイクロコンピュータを含み、基板処理装置100の種々の構成要素を制御する。搬送機構115は、基板Wを保持するためのハンド116を有する。搬送機構115は、ハンド116により基板Wを保持しつつその基板Wを搬送する。
搬送部112の側面には、メインパネルPNが設けられる。メインパネルPNは、制御部114に接続されている。使用者は、基板処理装置100における基板Wの処理状況等をメインパネルPNで確認することができる。
第1の処理ブロック12は、塗布処理部121、搬送部122および熱処理部123を含む。塗布処理部121および熱処理部123は、搬送部122を挟んで対向するように設けられる。搬送部122と搬送部112との間には、基板Wが載置される基板載置部PASS1および後述する基板載置部PASS2〜PASS4(図4参照)が設けられる。搬送部122には、基板Wを搬送する搬送機構127および後述する搬送機構128(図4参照)が設けられる。
第2の処理ブロック13は、塗布現像処理部131、搬送部132および熱処理部133を含む。塗布現像処理部131および熱処理部133は、搬送部132を挟んで対向するように設けられる。搬送部132と搬送部122との間には、基板Wが載置される基板載置部PASS5および後述する基板載置部PASS6〜PASS8(図4参照)が設けられる。搬送部132には、基板Wを搬送する搬送機構137および後述する搬送機構138(図4参照)が設けられる。
洗浄乾燥処理ブロック14Aは、洗浄乾燥処理部161,162および搬送部163を含む。洗浄乾燥処理部161,162は、搬送部163を挟んで対向するように設けられる。搬送部163には、搬送機構141,142が設けられる。搬送部163と搬送部132との間には、載置兼バッファ部P−BF1および後述の載置兼バッファ部P−BF2(図4参照)が設けられる。
また、搬送機構141,142の間において、搬入搬出ブロック14Bに隣接するように、基板載置部PASS9および後述の載置兼冷却部P−CP(図4参照)が設けられる。載置兼冷却部P−CPにおいて、基板Wが露光処理に適した温度に冷却される。
搬入搬出ブロック14Bには、搬送機構146が設けられる。搬送機構146は、露光装置15に対する基板Wの搬入および搬出を行う。露光装置15には、基板Wを搬入するための基板搬入部15aおよび基板Wを搬出するための基板搬出部15bが設けられる。
図2は、主として図1の塗布処理部121、塗布現像処理部131および洗浄乾燥処理部161を示す基板処理装置100の模式的側面図である。
図2に示すように、塗布処理部121には、塗布処理室21,22,23,24が階層的に設けられる。塗布現像処理部131には、現像処理室31,33および塗布処理室32,34が階層的に設けられる。塗布処理室21〜24,32,34の各々には、塗布処理ユニット129が設けられる。現像処理室31,33の各々には、現像処理ユニット139が設けられる。
各塗布処理ユニット129は、基板Wを保持するスピンチャック25およびスピンチャック25の周囲を覆うように設けられるカップ27を備える。本実施の形態では、各塗布処理ユニット129に2つのスピンチャック25および2つのカップ27が設けられる。スピンチャック25は、図示しない駆動装置(例えば、電動モータ)により回転駆動される。また、図1に示すように、各塗布処理ユニット129は、処理液を吐出する複数の塗布ノズル28およびその塗布ノズル28を搬送するノズル搬送機構29を備える。
各塗布処理ユニット129においては、複数の塗布ノズル28のうちのいずれかの塗布ノズル28がノズル搬送機構29により基板Wの上方に移動される。図示しない駆動装置によりスピンチャック25が回転される状態で、その塗布ノズル28から処理液が吐出される。それにより、基板W上に処理液が塗布される。また、図示しないエッジリンスノズルから、基板Wの周縁部にリンス液が吐出される。それにより、基板Wの周縁部に付着する処理液が除去される。
本実施の形態においては、塗布処理室22,24の塗布処理ユニット129において、反射防止膜用の処理液が塗布ノズル28から基板Wに供給される。塗布処理室21,23の塗布処理ユニット129において、レジスト膜用の処理液が塗布ノズル28から基板Wに供給される。塗布処理室32,34の塗布処理ユニット129において、レジストカバー膜用の処理液が塗布ノズル28から基板Wに供給される。
図2に示すように、各現像処理ユニット139は、塗布処理ユニット129と同様に、スピンチャック35およびカップ37を備える。本実施の形態では、各現像処理ユニット139に3組のスピンチャック35およびカップ37が設けられる。スピンチャック35は、図示しない駆動装置(例えば、電動モータ)により回転駆動される。また、図1に示すように、現像処理ユニット139は、現像液を吐出する2つの現像ノズル38およびその現像ノズル38をX方向に移動させる移動機構39を備える。現像処理ユニット139においては、一方の現像ノズル38がX方向に移動しつつ各基板Wに現像液を供給し、続いて、他方の現像ノズル38が移動しつつ各基板Wに現像液を供給する。この場合、基板Wに現像液が供給されることにより、基板W上のレジストカバー膜が除去されるとともに、基板Wの現像処理が行われる。
洗浄乾燥処理部161には、複数(本例では4つ)の洗浄乾燥処理ユニットCD1が設けられる。洗浄乾燥処理ユニットCD1においては、露光処理前の基板Wの洗浄および乾燥処理が行われる。
図3は、主として図1の熱処理部123,133および洗浄乾燥処理部162を示す基板処理装置100の模式的側面図である。
図3に示すように、熱処理部123は、上方に設けられる上段熱処理部301および下方に設けられる下段熱処理部302を有する。上段熱処理部301および下段熱処理部302の各々には、複数の熱処理ユニットPHP、複数の密着強化処理ユニットPAHPおよび複数の冷却ユニットCPが設けられる。
熱処理ユニットPHPにおいては、基板Wの加熱処理および冷却処理が行われる。以下、熱処理ユニットPHPにおける加熱処理および冷却処理を単に熱処理と呼ぶ。密着強化処理ユニットPAHPにおいては、基板Wと反射防止膜との密着性を向上させるための密着強化処理が行われる。具体的には、密着強化処理ユニットPAHPにおいて、基板WにHMDS(ヘキサメチルジシラサン)等の密着強化剤が塗布されるとともに、基板Wに加熱処理が行われる。冷却ユニットCPにおいては、基板Wの冷却処理が行われる。
熱処理部133は、上方に設けられる上段熱処理部303および下方に設けられる下段熱処理部304を有する。上段熱処理部303および下段熱処理部304の各々には、冷却ユニットCP、エッジ露光部EEW、検査ユニットIPおよび複数の熱処理ユニットPHPが設けられる。エッジ露光部EEWにおいては、基板Wの周縁部の露光処理(エッジ露光処理)が行われる。検査ユニットIPにおいては、現像処理後の基板Wの外観検査が行われる。検査ユニットIPおよび図1の制御部114により、検査装置が構成される。検査ユニットIPの詳細については後述する。上段熱処理部303および下段熱処理部304において、洗浄乾燥処理ブロック14Aに隣り合うように設けられる熱処理ユニットPHPは、洗浄乾燥処理ブロック14Aからの基板Wの搬入が可能に構成される。
洗浄乾燥処理部162には、複数(本例では4つ)の洗浄乾燥処理ユニットCD2が設けられる。洗浄乾燥処理ユニットCD2においては、露光処理後の基板Wの洗浄および乾燥処理が行われる。
図4は、主として図1の搬送部122,132,163を示す模式的側面図である。図4に示すように、搬送部122は、上段搬送室125および下段搬送室126を有する。搬送部132は、上段搬送室135および下段搬送室136を有する。上段搬送室125には搬送機構127が設けられ、下段搬送室126には搬送機構128が設けられる。また、上段搬送室135には搬送機構137が設けられ、下段搬送室136には搬送機構138が設けられる。
搬送機構127,128,137,138の各々は、ハンドH1,H2を有する。搬送機構127,128,137,138の各々は、ハンドH1,H2を用いて基板Wを保持し、X方向およびZ方向に自在に移動して基板Wを搬送することができる。
搬送部112と上段搬送室125との間には、基板載置部PASS1,PASS2が設けられ、搬送部112と下段搬送室126との間には、基板載置部PASS3,PASS4が設けられる。上段搬送室125と上段搬送室135との間には、基板載置部PASS5,PASS6が設けられ、下段搬送室126と下段搬送室136との間には、基板載置部PASS7,PASS8が設けられる。
上段搬送室135と搬送部163との間には、載置兼バッファ部P−BF1が設けられ、下段搬送室136と搬送部163との間には載置兼バッファ部P−BF2が設けられる。搬送部163においてインターフェイスブロック14と隣接するように、基板載置部PASS9および複数の載置兼冷却部P−CPが設けられる。
搬送機構127は、基板載置部PASS1,PASS2,PASS5,PASS6、塗布処理室21,22(図2)および上段熱処理部301(図3)の間で基板Wを搬送可能に構成される。搬送機構128は、基板載置部PASS3,PASS4,PASS7,PASS8、塗布処理室23,24(図2)および下段熱処理部302(図3)の間で基板Wを搬送可能に構成される。
搬送機構137は、基板載置部PASS5,PASS6、載置兼バッファ部P−BF1、現像処理室31(図2)、塗布処理室32および上段熱処理部303(図3)の間で基板Wを搬送可能に構成される。搬送機構138は、基板載置部PASS7,PASS8、載置兼バッファ部P−BF2、現像処理室33(図2)、塗布処理室34および下段熱処理部304(図3)の間で基板Wを搬送可能に構成される。
(2)検査ユニットの構成
図5および図6は、検査ユニットIPの構成について説明するための模式的側面図および模式的斜視図である。図5に示すように、検査ユニットIPは、保持回転部51、照明部52、反射ミラー53およびCCDラインセンサ54を含む。
保持回転部51は、スピンチャック511、回転軸512およびモータ513を含む。スピンチャック511は、基板Wの下面の略中心部を真空吸着することにより、基板Wを水平姿勢で保持する。モータ513によって回転軸512およびスピンチャック511が一体的に回転される。それにより、スピンチャック511により保持された基板Wが鉛直方向(Z方向)に沿った軸の周りで回転する。本例では、基板Wの表面が上方に向けられる。基板Wの表面とは、回路パターンが形成される基板Wの面である。
図6に示すように、照明部52は、帯状の検査光を出射する。検査光は、スピンチャック511により保持された基板Wの表面の半径方向に沿った線状の領域(以下、半径領域と呼ぶ)RRに照射される。半径領域RRで反射された検査光は、反射ミラー53によってさらに反射され、CCDラインセンサ54に導かれる。CCDラインセンサ54の受光量分布は、半径領域RRでの反射光の明るさの分布に相当する。CCDラインセンサ54の受光量分布に基づいて、基板Wの表面画像データが生成される。表面画像データは、基板Wの表面の画像(以下、表面画像と呼ぶ)を表す。本例では、CCDラインセンサ54の受光量分布が図1の制御部114に与えられ、制御部114により表面画像データが生成される。
図7は、表面画像データの生成について説明するための図である。図7(a),(b),(c)には、基板W上における検査光の照射状態が順に示され、図7(d),(e),(f)には、図7(a),(b),(c)の状態で生成される表面画像データに対応する表面画像が示される。なお、図7(a)〜(c)において、検査光が照射された基板W上の領域にドットパターンが付される。
図7(a)〜(c)に示すように、基板W上の半径領域RRに継続的に検査光が照射されつつ基板Wが回転される。それにより、基板Wの周方向に連続的に検査光が照射される。基板Wが1回転すると、基板Wの表面の全体に検査光が照射される。
基板Wが1回転する期間に得られるCCDラインセンサ54の受光量分布に基づいて、図7(d)〜(f)に示すように、矩形の表面画像SD1を表す表面画像データが生成される。図7(d)〜(f)において、表面画像SD1の横軸は、CCDラインセンサ54の各画素の位置に対応し、表面画像SD1の縦軸は、基板Wの回転角度に対応する。この場合、基板Wの半径方向における基板Wの表面での反射光の明るさの分布が表面画像SD1の横軸の方向に表される。また、基板Wの周方向における基板Wの表面での反射光の明るさの分布が表面画像SD1の縦軸の方向に表される。基板Wが1回転した時点で、基板Wの表面全体での反射光の明るさの分布が1つの矩形の表面画像SD1を表す表面画像データとして得られる。
得られた表面画像SD1の表面画像データが、基板Wの形状(円形)の表面画像を表すように補正される。補正後の表面画像データに基づいて、基板Wの外観検査が行われる。本実施の形態においては、現像処理によってパターン化されたレジスト膜(以下、レジストパターンと呼ぶ)の外観検査が行われる。
(3)外観検査の方法
基板Wの表面画像のうち正常な部分の明るさは、例えば欠陥のないサンプル基板の表面画像データに基づいて知ることができる。図8は、欠陥のないサンプル基板の表面画像を示す図である。図8の表面画像SD2では、網目状のレジストパターンRPを含む基板Wの表面構造が表される。ここで、基板Wの表面構造は、欠陥ではなく、回路パターンおよびレジストパターン等の正常に形成された構造を意味する。本例において、表面画像SD2の明るさは、各画素の階調値によって表される。階調値が大きいほど画素が明るい。
図9は、欠陥のないサンプル基板の表面画像データにおける階調値の出現頻度を示す図である。図9において、横軸は階調値を示し、縦軸は各階調値の出現頻度を示す。図9に示すように、本例では、表面画像データにおける階調値の下限値がTH1であり、上限値がTH2である。下限値TH1と上限値TH2との間に2つのピークが示される。2つのピークのうち階調値が小さいピークは主として図8のレジストパターンRPの階調値に基づくものであり、階調値が大きいピークは主としてレジストパターンRPを除く基板Wの表面構造の階調値に基づくものである。
通常、欠陥の階調値は、正常な部分の階調値とは異なる。したがって、図9に白抜きの矢印a1および点線で示すように、上記の下限値TH1と上限値TH2との間から外れる階調値が検出された基板Wは外観上の欠陥があると判定することができる。また、下限値TH1と上限値TH2との間から外れる階調値が検出されない基板Wは外観上の欠陥がないと判定することができる。
しかしながら、基板W上に形成される欠陥によっては、図9に白抜きの矢印a2および一点差線で示すように、その欠陥に対応する画素の階調値が上記の下限値TH1と上限値TH2との間に位置する可能性がある。この場合、上記の判定方法では、外観上の欠陥がないと判定される。
そこで、本実施の形態では、図1の制御部114により以下の欠陥判定処理が行われる。図10および図11は、第1の実施の形態に係る欠陥判定処理のフローチャートである。図12は、欠陥判定処理において生成される複数の表面画像を示す図である。以下の説明では、検査すべき基板Wを検査基板Wと呼ぶ。
欠陥判定処理の開始前には、予め高い精度で検査が行われ、その検査で欠陥がないと判定された基板がサンプル基板として用意される。図10に示すように、制御部114は、まず欠陥のないサンプル基板の表面画像データを取得し(ステップS11)、取得された表面画像データを補正して基板Wの形状の表面画像を生成する(ステップS12)。本実施の形態では、表面画像データは上記の検査ユニットIPにより取得される。なお、表面画像データは検査ユニットIPに代えて他の装置により取得されてもよい。図12(a)に、ステップS12の処理により生成されるサンプル基板の表面画像SD2が示される。図12(a)の表面画像SD2には、レジストパターンRPを含むサンプル基板の表面構造が表される。
続いて、制御部114は、補正後のサンプル基板の表面画像データに基づいて許容範囲設定処理を行う(ステップS13)。許容範囲設定処理では、後述するステップS18の処理で用いられる許容範囲が設定される。許容範囲設定処理の詳細は後述する。
次に、制御部114は、ステップS11,S12の処理と同様に、検査基板Wの表面画像データを取得し(ステップS14)、取得された表面画像データを補正して基板Wの形状の表面画像を生成する(ステップS15)。図12(b)に、ステップS14の処理により生成される検査基板Wの表面画像SD3が示される。図12(b)の表面画像SD3には、検査基板Wの表面構造に加えて外観上の欠陥DPが表される。図12(b)および後述する図12(c),(d),(e)では、欠陥DPの形状を理解しやすいように、欠陥DPの外縁が点線で示される。
続いて、図11に示すように、制御部114は、検査基板Wおよびサンプル基板の表面画像データの互いに対応するとみなされる画素の階調値の差分を算出する(ステップS16)。より具体的には、制御部114は、表面画像SD3の各画素の階調値からその画素に対応するとみなされる表面画像SD2の各画素の階調値を減算する。
この場合、表面画像SD2と表面画像SD3との間で互いに対応するとみなされる画素は、例えば表面画像SD2に含まれるサンプル基板の表面構造と表面画像SD3に含まれる検査基板Wの表面構造とのパターンマッチングにより求められる。または、表面画像SD2と表面画像SD3との間で互いに対応するとみなされる画素は、例えばサンプル基板および検査基板Wの位置決め用の切り欠きと図6のCCDラインセンサ54の各画素との位置関係に基づいて求められる。切り欠きは、例えばオリエンテーションフラットまたはノッチである。
検査基板Wの表面画像SD3には、欠陥DPの画像とともに表面画像SD2に含まれるサンプル基板の表面構造と同様の画像が含まれる。したがって、検査基板Wの正常な部分に対応する画素については、ステップS16の処理により得られる差分は小さい。一方、検査基板Wに外観上の欠陥が存在する場合、その欠陥の部分に対応する画素については、上記の差分は大きい。それにより、欠陥の部分に対応する画素についての階調値の差分と正常な部分に対応する画素についての階調値の差分とを区別することができる。
以下の説明では、ステップS16の処理により得られる差分からなる表面画像データを差分画像データと呼ぶ。図12(c)には、差分画像データにより表される表面画像SD4が示される。図12(c)の表面画像SD4においては、欠陥DPの部分の明るさが検査基板Wの正常な部分の明るさに比べて十分に暗い。
次に、制御部114は、差分画像データの各画素の階調値に一定の値を加算する(ステップS17)。以下、ステップS17の処理後の表面画像データを判定画像データと呼ぶ。例えば、階調値の範囲の中心値が各画素の階調値に加算される。具体的には、階調値が0以上255以下の数値で表される場合に、各画素の階調値に128が加算される。図12(d)には、判定画像データにより表される表面画像SD5が示される。図12(d)の表面画像SD5は、適度な明るさを有する。
制御部114は、例えば生成された表面画像SD5を図1のメインパネルPNに表示する。この場合、使用者は、図12(d)の表面画像SD5を違和感なく視認することができる。なお、使用者が表面画像SD5を視認しない場合、上記のステップS17の処理は行われなくてもよい。
その後、制御部114は、判定画像データの各画素の階調値がステップS13の許容範囲設定処理で設定された許容範囲内にあるか否かを判定する(ステップS18)。許容範囲は、基本的に、正常な部分に対応する判定画像データの画素の階調値を含み、欠陥の部分に対応する判定画像データの画素の階調値を含まないように設定される。
判定画像データの各画素の階調値が許容範囲内にある場合、制御部114は、検査基板Wに外観上の欠陥がないと判定し(ステップS19)、欠陥判定処理を終了する。一方、いずれかの画素の階調値が許容範囲外にある場合、制御部114は、検査基板Wに外観上の欠陥があると判定する(ステップS20)。また、制御部114は、階調値が許容範囲外にある1または複数の画素を抽出することによりその欠陥を検出し(ステップS21)、欠陥判定処理を終了する。
上記のステップS21において、制御部114は、図12(e)に示すように、抽出された欠陥DPを示す表面画像SD6を生成してもよい。また、制御部114は生成された表面画像SD6を図1のメインパネルPNに表示してもよい。上記のように、検査基板Wの外観上の欠陥が検出されることにより、その欠陥の位置および形状を識別することが可能になる。
欠陥判定処理で欠陥があると判定された検査基板Wは、基板処理装置100から搬出された後、欠陥がないと判定された基板Wとは異なる処理が行われる。例えば、欠陥があると判定された検査基板Wには、精密検査または再生処理等が行われる。
(4)許容範囲設定処理
上記のように、欠陥判定処理のステップS16の処理では、検査基板Wおよびサンプル基板の表面画像データの互いに対応するとみなされる画素の階調値の差分が算出される。このとき、サンプル基板の表面画像データの画素に対応するとみなされる検査基板Wの表面画像データの画素が、真に対応する画素からずれる場合がある。このような画素の対応関係のずれは、例えば表面画像データの生成時における検査基板Wの配置状態または検査基板Wの表面構造等に起因して発生する。
図13は、検査基板Wおよびサンプル基板の表面画像データの間で画素の対応関係にずれが生じた状態で生成される差分画像データを説明するための図である。図13(a)にサンプル基板の表面画像SD2の一部拡大図が示される。図13(b)に図13(a)の表面画像SD2に対応するとみなされる検査基板Wの表面画像SD3の一部拡大図が示される。図13(c)に図13(a),(b)の表面画像SD2,SD3の差分を表す表面画像SD4が示される。図13(a)〜(c)では、表面画像上の画素が点線で表される。また、図13(c)の表面画像SD4では、差分(階調値)が0である画素が白色で示され、差分(階調値)が0以外の画素がドットパターンで示される。
検査基板Wおよびサンプル基板の表面画像データの各画素の対応関係が正確であるとすると、正常な部分について検査基板Wおよびサンプル基板の表面画像データの互いに対応する画素の階調値の差分は理想的には0になると考えられる。しかしながら、図13(a),(b)の例では、表面画像SD2の各画素に対応するとみなされる表面画像SD3の各画素が、実際に対応する画素から縦方向および横方向に1つずつずれている。この場合、図13(c)に示すように、表面画像SD4においては一部の画素について差分(階調値)が0にならない。
そのため、複数の検査基板Wについて同様の欠陥判定処理を行う場合には、正常な部分について検査基板Wごとに得られる判定画像データに差が生じる可能性がある。図14は、検査基板Wごとに得られる判定画像データのばらつきを示す図である。図14(a)に、画素の対応関係にずれが生じていない状態で生成される判定画像データの表面画像SD5の一例が示される。図14(b)に、画素の対応関係にずれが生じた状態で生成される判定画像データの表面画像SD5の一例が示される。
図14(a)に示すように、画素の対応関係にずれが生じていない状態で生成される表面画像SD5にはレジストパターンRPが表れない。一方、図14(b)に示すように、画素の対応関係にずれが生じた状態で生成される表面画像SD5には、レジストパターンRPの一部が表れる。この場合、画素の対応関係にずれが生じた状態であっても、正常な表面構造に対応する判定画像データの階調値が許容範囲内となるように、許容範囲を大きく設定する必要が生じる。それにより、画素の対応関係のずれに起因する誤判定を防止することができる。一方、許容範囲が過剰に大きく設定されると、欠陥の検出精度が低下する。
そこで、本実施の形態では、検査基板Wおよびサンプル基板の表面画像データの対応関係のずれを考慮しつつ許容範囲を適切に設定するために、以下の許容範囲設定処理が行われる。
図15は、許容範囲設定処理のフローチャートである。本例では、図10のステップS12で生成されるサンプル基板の表面画像SD2(図12(a))のうちN個の画素が予め対象画素として定められている。Nは2以上でかつサンプル基板の表面画像データの全画素数以下の数を表す。本実施の形態では、Nは表面画像データの全画素数である。
図15に示すように、制御部114は、サンプル基板の表面画像データのうちi番目(iは自然数)の対象画素とその対象画素を含む一定領域内の複数の画素との階調値の差分を算出する(ステップS101)。変数iの初期値は1である。一定領域は、例えば対象画素を中心としてその対象画素から一定数の画素を含むように設定される。
ステップS101で算出される複数の差分は、検査基板Wに欠陥がないときに、そのi番目の対象画素についてサンプル基板と検査基板Wとの対応関係のずれに起因して算出される階調値の差分にほぼ相当すると考えられる。そこで、制御部114は、算出された階調値の差分の平均値をi番目の対象画素に対応する代表値として決定する(ステップS102)。決定された代表値は、画素の対応関係にずれがありかつi番目の対象画素に対応するとみなされる検査基板Wの部分が正常である場合に差分画像データとして算出されることになる階調値の差分を代表している。
ここで、サンプル基板の表面画像データの各画素をx軸およびy軸からなる平面座標系で表す場合に、一定領域が、例えば対象画素の座標(a,b)を中心として、座標(a−1,b−1)、(a−1,b)、(a−1,b+1)、(a,b−1)、(a,b)、(a,b+1)、(a+1,b−1)、(a+1,b)および(a+1,b+1)に位置する9つの画素を含むように設定されるものとする。
この場合、座標(u,v)の対象画素の階調値をP(u,v)で表すと、ステップS101,S102の処理により決定される代表値P’(a,b)は、例えば下記式(1)で表すことができる。
P’(a,b)=[{P(a−1,b−1)+P(a−1,b)+P(a−1,b+1)+P(a,b−1)+P(a,b)+P(a,b+1)+P(a+1,b−1)+P(a+1,b)+P(a+1,b+1)}−P(a,b)×9]/9 …(1)
上記の代表値P’(a,b)は、検査基板Wにおける座標(a,b)の画素について、対応関係に1画素分のずれが生じた状態で算出される可能性がある差分画像データの階調値を代表する。
上記のようにi番目の対象画素に対応する代表値を決定した後、制御部114は、変数iの値がNであるか否かを判定する(ステップS103)。変数iがNでない場合、制御部114は、変数iに1を加算し(ステップS104)、ステップS101の処理に進む。それにより、制御部114は、次の対象画素に対応する代表値を決定する。一方、変数iがNである場合、制御部114は、算出された全ての代表値に一定の値を加算する(ステップS105)。
以下、ステップS105において一定の値が加算された代表値を加算代表値と呼ぶ。ここで、ステップS105で代表値に加算される値は、図11のステップS17で差分画像データの各画素の階調値に加算される値と等しい。なお、ステップS17の処理が行われない場合には、本ステップS105の処理も行われない。
その後、制御部114は、算出された加算代表値の最小値および最大値をそれぞれ許容範囲の下限値および上限値として設定する(ステップS106)。なお、上記のステップS17,S105の処理が行われない場合には、ステップS101〜S104の処理で算出されたN個の代表値の最小値および最大値をそれぞれ許容範囲の下限値および上限値として設定する。このようにして、許容範囲設定処理が終了する。許容範囲設定処理の終了時には、変数iが初期値1にリセットされる。
このようにして許容範囲が設定されることにより、正常な部分について、画素の対応関係のずれに起因して算出される判定画像データの階調値が許容範囲から外れる可能性が低くなる。したがって、正常な部分が欠陥であると誤判定される可能性が低くなる。
また、許容範囲の下限値および上限値が加算代表値の最小値および最大値に制限される。それにより、欠陥の部分について、画素の対応関係のずれに起因して算出される判定画像データの階調値が許容範囲内に含まれる可能性が低くなる。したがって、欠陥の部分が正常であると誤判定される可能性が低くなる。その結果、検査基板Wおよびサンプル基板の表面画像データの対応関係にずれがある場合でも、検査基板Wの外観上の欠陥を高い精度で検出することが可能になる。
上記のステップS102においては、算出された階調値の差分の平均値に代えて、算出された階調値の差分の最小値、中央値または最大値のいずれかがi番目の対象画素に対応する代表値として決定されてもよい。このように、ステップS102で決定される代表値は、複数の階調値の最小値から最大値までの範囲内の値であれば、平均値、最小値、中央値または最大値等のいずれの値に設定されてもよい。この場合、欠陥の判定条件等に応じて所望の許容範囲を適切に設定することができる。
ノイズまたは外乱等の影響により、正常な部分に対応する画素について判定画像データの階調値が加算代表値の最小値よりも小さくなる可能性がある。また、正常な部分に対応する画素について判定画像データの階調値が加算代表値の最大値よりも大きくなる可能性がある。そこで、制御部114は、ステップS106の処理において、加算代表値の最小値および最大値をそれぞれ許容範囲の下限値および上限値として設定する代わりに、以下の処理を行ってもよい。
例えば、制御部114は、加算代表値の最小値よりも予め定められた値分小さい第1の値を許容範囲の下限値として設定し、加算代表値の最大値よりも予め定められた値分大きい第2の値を許容範囲の上限値として設定する。それにより、正常な部分に対応する画素について判定画像データの階調値が加算代表値の最小値よりも小さくなる場合でも、その階調値が第1の値以上であるときには誤判定が生じない。また、正常な部分に対応する画素について判定画像データの階調値が加算代表値の最大値よりも大きくなる場合でも、その階調値が第2の値以下であるときには誤判定が生じない。その結果、ノイズまたは外乱等に起因する誤判定を防止することができる。
(5)基板処理装置の全体の動作
図1〜図4を参照しながら基板処理装置100の動作を説明する。インデクサブロック11のキャリア載置部111(図1)には、未処理の基板Wが収容されたキャリア113が載置される。搬送機構115は、キャリア113から基板載置部PASS1,PASS3(図4)に未処理の基板Wを搬送する。また、搬送機構115は、基板載置部PASS2,PASS4(図4)に載置された処理済みの基板Wをキャリア113に搬送する。
第1の処理ブロック12において、搬送機構127(図4)は、基板載置部PASS1(図4)に載置された基板Wを密着強化処理ユニットPAHP(図3)、冷却ユニットCP(図3)、塗布処理室22(図2)、熱処理ユニットPHP(図3)、冷却ユニットCP(図3)、塗布処理室21(図2)、熱処理ユニットPHP(図3)および基板載置部PASS5(図4)に順に搬送する。
この場合、密着強化処理ユニットPAHPにおいて、基板Wに密着強化処理が行われた後、冷却ユニットCPにおいて、反射防止膜の形成に適した温度に基板Wが冷却される。次に、塗布処理室22において、塗布処理ユニット129(図2)により基板W上に反射防止膜が形成される。続いて、熱処理ユニットPHPにおいて、基板Wの熱処理が行われた後、冷却ユニットCPにおいて、レジスト膜の形成に適した温度に基板Wが冷却される。次に、塗布処理室21において、塗布処理ユニット129(図2)により、基板W上にレジスト膜が形成される。その後、熱処理ユニットPHPにおいて、基板Wの熱処理が行われ、その基板Wが基板載置部PASS5に載置される。
また、搬送機構127は、基板載置部PASS6(図4)に載置された現像処理後の基板Wを基板載置部PASS2(図4)に搬送する。
搬送機構128(図4)は、基板載置部PASS3(図4)に載置された基板Wを密着強化処理ユニットPAHP(図3)、冷却ユニットCP(図3)、塗布処理室24(図2)、熱処理ユニットPHP(図3)、冷却ユニットCP(図3)、塗布処理室23(図2)、熱処理ユニットPHP(図3)および基板載置部PASS7(図4)に順に搬送する。また、搬送機構128(図4)は、基板載置部PASS8(図4)に載置された現像処理後の基板Wを基板載置部PASS4(図4)に搬送する。塗布処理室23,24(図2)および下段熱処理部302(図3)における基板Wの処理内容は、上記の塗布処理室21,22(図2)および上段熱処理部301(図3)における基板Wの処理内容と同様である。
第2の処理ブロック13において、搬送機構137(図4)は、基板載置部PASS5(図4)に載置されたレジスト膜形成後の基板Wを塗布処理室32(図2)、熱処理ユニットPHP(図3)、エッジ露光部EEW(図3)および載置兼バッファ部P−BF1(図4)に順に搬送する。
この場合、塗布処理室32において、塗布処理ユニット129により基板W上にレジストカバー膜が形成される。続いて、熱処理ユニットPHPにおいて、基板Wに熱処理が行われた後、エッジ露光部EEWにおいて、基板Wのエッジ露光処理が行われ、その基板Wが載置兼バッファ部P−BF1に載置される。
また、搬送機構137(図4)は、洗浄乾燥処理ブロック14Aに隣接する熱処理ユニットPHP(図3)から露光処理後でかつ熱処理後の基板Wを取り出し、その基板Wを冷却ユニットCP(図3)、現像処理室31(図2)、熱処理ユニットPHP(図3)、検査ユニットIP(図3)および基板載置部PASS6(図4)に順に搬送する。
この場合、冷却ユニットCPにおいて、現像処理に適した温度に基板Wが冷却された後、現像処理室31において、現像処理ユニット139により基板Wの現像処理が行われる。続いて、熱処理ユニットPHPにおいて、基板Wの熱処理が行われた後、検査ユニットIPにおいて、基板Wの外観検査が行われる。外観検査後の基板Wは、基板載置部PASS6に載置される。
搬送機構138(図4)は、基板載置部PASS7(図4)に載置されたレジスト膜形成後の基板Wを塗布処理室34(図2)、熱処理ユニットPHP(図3)、エッジ露光部EEW(図3)および載置兼バッファ部P−BF2(図4)に順に搬送する。また、搬送機構138(図4)は、洗浄乾燥処理ブロック14Aに隣接する熱処理ユニットPHP(図3)から露光処理後でかつ熱処理後の基板Wを取り出し、その基板Wを冷却ユニットCP(図3)、現像処理室33(図2)、熱処理ユニットPHP(図3)、検査ユニットIP(図3)および基板載置部PASS8(図4)に順に搬送する。塗布処理室34、現像処理室33および下段熱処理部304における基板Wの処理内容は、上記の塗布処理室32、現像処理室31および上段熱処理部303における基板Wの処理内容と同様である。
洗浄乾燥処理ブロック14Aにおいて、搬送機構141(図1)は、載置兼バッファ部P−BF1,P−BF2(図4)に載置された基板Wを洗浄乾燥処理部161の洗浄乾燥処理ユニットCD1(図2)および載置兼冷却部P−CP(図4)に順に搬送する。この場合、洗浄乾燥処理ユニットCD1において、基板Wの洗浄および乾燥処理が行われた後、載置兼冷却部P−CPにおいて、露光装置15(図1〜図3)における露光処理に適した温度に基板Wが冷却される。
搬送機構142(図1)は、基板載置部PASS9(図4)に載置された露光処理後の基板Wを洗浄乾燥処理部162の洗浄乾燥処理ユニットCD2(図3)に搬送し、洗浄および乾燥処理後の基板Wを洗浄乾燥処理ユニットCD2から上段熱処理部303の熱処理ユニットPHP(図3)または下段熱処理部304の熱処理ユニットPHP(図3)に搬送する。この熱処理ユニットPHPにおいては、露光後ベーク(PEB)処理が行われる。
インターフェイスブロック14において、搬送機構146(図1)は、載置兼冷却部P−CP(図4)に載置された露光処理前の基板Wを露光装置15の基板搬入部15a(図1)に搬送する。また、搬送機構146(図1)は、露光装置15の基板搬出部15b(図1)から露光処理後の基板Wを取り出し、その基板Wを基板載置部PASS9(図4)に搬送する。
なお、露光装置15が基板Wの受け入れをできない場合、露光処理前の基板Wが載置兼バッファ部P−BF1,P−BF2に一時的に収容される。また、第2の処理ブロック13の現像処理ユニット139(図2)が露光処理後の基板Wの受け入れをできない場合、露光処理後の基板Wが載置兼バッファ部P−BF1,P−BF2に一時的に収容される。
(6)効果
上記の欠陥判定処理においては、外観上の欠陥がないサンプル基板の表面画像データが取得され、検査基板Wの表面画像データが取得される。検査基板Wの正常な部分については、検査基板Wおよびサンプル基板の表面画像データの互いに対応する画素の階調値の差分は小さい。一方、欠陥の部分に対応する画素については、上記の差分は大きい。そのため、欠陥の部分に対応する画素の階調値が正常な部分に対応する画素の階調値に近い場合でも、欠陥の部分に対応する上記の差分は正常な部分に対応する上記の差分に比べて大きくなる。
そこで、検査基板Wおよびサンプル基板の表面画像データの互いに対応するとみなされる画素の階調値の差分が算出され、差分画像データが生成される。それにより、欠陥の部分に対応するとみなされる画素についての差分と正常な部分に対応する画素についての差分とを区別することができる。したがって、許容範囲が正常な部分に対応する差分を含みかつ欠陥の部分に対応する差分を含まないように予め許容範囲を定めることにより、欠陥があるか否かを判定することが可能となる。
サンプル基板のある画素に対応するとみなされる検査基板Wの画素が、真に対応する画素からずれる場合がある。この場合、サンプル基板および検査基板Wの表面画像データの対応関係が正確であるという前提に許容範囲が設定されると、正常な部分に対応する判定画像データが許容範囲から外れることがある。そのため、ずれに起因する誤判定を防止するために許容範囲を大きく設定する必要が生じる。一方、許容範囲が過剰に大きく設定されると、欠陥の検出精度が低下する。
本実施の形態においては、サンプル基板の複数の対象画素の各々について、当該対象画素とその対象画素を含む一定領域内の複数の画素との間の階調値の差分が算出される。この場合、各対象画素について算出される複数の差分は、検査基板Wに欠陥がないときに、サンプル基板および検査基板Wの表面画像データの対応関係のずれに起因して算出される階調値の差分にほぼ相当すると考えられる。
そこで、各対象画素について算出された複数の差分に基づいて複数の差分の平均値が代表値として決定される。この場合、各対象画素についての代表値は、画素の対応関係にずれがあるときに、各対象画素に対応する部分が正常である場合に算出されることになる階調値の差分を代表している。
そのため、サンプル基板の表面画像データの複数の対象画素について決定された複数の加算代表値の最小値および最大値がそれぞれ許容範囲の下限値および上限値として設定される。それにより、正常な部分について、画素の対応関係のずれに起因して算出される判定画像データが許容範囲から外れる可能性が低くなる。したがって、正常な部分が欠陥であると誤判定される可能性が低くなる。
また、許容範囲の下限値および上限値が加算代表値の最小値および最大値に制限される。それにより、欠陥の部分について、画素の対応関係のずれに起因して算出される判定画像データが許容範囲内に含まれる可能性が低くなる。したがって、欠陥の部分が正常であると誤判定される可能性が低くなる。その結果、サンプル基板および検査基板Wの表面画像データの互いに対応する画素にずれがある場合でも、検査基板Wの外観上の欠陥を高い精度で検出することが可能になる。
[2]第2の実施の形態
第2の実施の形態に係る基板処理装置は、以下の点を除いて第1の実施の形態に係る基板処理装置100と同じ構成および動作を有する。本実施の形態に係る基板処理装置においては、制御部114(図1)が、上記の欠陥判定処理においてモアレ除去処理を実行する。以下、モアレ除去処理について説明する。
(1)モアレ
欠陥判定処理において、ステップS12,S15により生成される表面画像SD2,SD3には、モアレ(干渉縞)が生じることがある。図16は、表面画像SD2に生じるモアレを模式的に示す図である。図16では、サンプル基板の表面画像SD2上に複数(本例では2つ)のモアレが生じている例が示される。図16の各モアレは、扇形状を有し、明るさが周方向に連続的に変化する。
モアレは、表面画像に周期的な模様がある場合に生じやすい。基板処理装置100において処理される基板Wには、複数の素子にそれぞれ対応する複数の回路パターンが形成される。これらの回路パターンは、互いに同じ構成を有する。そのため、基板W上において、複数の回路パターンが周期的な模様となる。
例えば、レジストパターンRPは、複数の回路パターンに対応しており、基板Wにおいて周期的な模様となる。そのため、レジストパターンRPを含む図12(a),(b)の表面画像SD2,SD3には、図16に示すようなモアレが生じやすい。
また、基板Wの製造工程においては、上記のレジスト膜形成処理、露光処理および現像処理を含むフォトリソグラフィー工程が、1つの基板Wに複数回にわたって行われる。そのため、初期の工程を除いて、基板Wには、回路パターンの少なくとも一部が形成されている。回路パターン上にレジスト膜等の他の膜が形成されていても、検査ユニットIPにおいて、検査光がこれらの膜を透過する。それにより、既に形成された回路パターンに起因して、表面画像にモアレが生じることもある。
また、基板Wの回路パターンは、基板Wの周方向においても周期性を有する。上記のように、表面画像は、基板Wが回転されつつ一定の半径領域RR(図7(a)〜(c))に検査光が照射され、その反射光がCCDラインセンサ54によって受光されることにより生成される。したがって、このような基板Wの回転を伴う表面画像の生成方法も表面画像にモアレが生じる要因になる可能性がある。
図12(b)の表面画像SD3にモアレが生じると、表面画像SD3において基板Wの外観上の欠陥とモアレとの区別ができない可能性がある。また、図12(a)の表面画像SD2に生じるモアレと図12(b)の表面画像SD3に生じるモアレとが異なる場合がある。この場合、欠陥判定処理のステップS18(図11)において欠陥ではなくモアレに起因する階調値が許容範囲内となるように、許容範囲を予め広く設定する必要が生じる。
(2)モアレ除去処理
本実施の形態では、欠陥判定処理時に、サンプル基板の表面画像SD2からモアレを除去するためのモアレ除去処理が行われるとともに、検査基板Wの表面画像SD3からモアレを除去するためのモアレ除去処理が行われる。本例においては、図1の制御部114がモアレ除去処理を行う。
図17は、モアレ除去処理のフローチャートである。図18および図19は、検査基板Wについてモアレ除去処理を行う場合の表面画像SD3の変化について説明するための図である。図17〜図19の例では、外観上の欠陥DPを有する検査基板Wの表面画像SD3からモアレが除去される。
図18(a)には、モアレ除去処理前の表面画像SD3が示される。図18(a)の表面画像SD3には、モアレおよび検査基板Wの欠陥DPが表される。図18(a)および後述する図19(a),(b)では、欠陥DPの形状を理解しやすいように、欠陥DPの外縁が点線で示される。また、図18(a)に示すように、この表面画像SD3には、網目状のレジストパターンRPを含む検査基板Wの表面構造が表される。
図17に示すように、まず、制御部114は、表面画像データの平滑化を行う(ステップS1)。表面画像データの平滑化とは、表面画像SD3の濃淡変動を小さくすることである。例えば、移動平均フィルタ処理により表面画像データが平滑化される。移動平均フィルタ処理では、注目画素を中心とする規定数の周辺画素に関して階調値の平均が算出され、その平均値が注目画素の階調値とされる。本例では、表面画像SD3の全画素が注目画素とされ、各画素の階調値がその周辺画素の平均値に変更される。移動平均フィルタ処理における周辺画素の数は、例えば100(横)×100(縦)である。移動平均フィルタ処理における周辺画素の数は、想定される欠陥の大きさおよびモアレの大きさ等によって適宜設定されてもよい。
移動平均フィルタ処理により、短時間で容易に表面画像データを平滑化することができる。なお、移動平均フィルタ処理の代わりに、ガウシアンフィルタ処理またはメディアンフィルタ処理等の他の平滑化処理により、表面画像データの平滑化が行われてもよい。
図18(b)には、図17のステップS1における平滑化後の表面画像SD3が示される。欠陥による階調値のばらつきおよび検査基板Wの表面構造による階調値のばらつきは、モアレによる階調値のばらつきに比べて局所的にまたは分散的に生じる。そのため、欠陥による階調値のばらつきおよび検査基板Wの表面構造による階調値のばらつきは、ステップS1の処理でなくなる。一方、モアレによる階調値のばらつきは広範囲において連続的に生じるので、ステップS1の処理ではなくならない。したがって、図18(b)の表面画像SD3には、モアレのみが表され、欠陥DPおよび検査基板Wの表面構造が表されない。
次に、制御部114は、図17に示すように、平滑化前の表面画像データの各画素の階調値から平滑化後の表面画像データの各画素の階調値を減算する(ステップS2)。これにより、表面画像SD3からモアレが除去される。以下、ステップS2の処理後の表面画像データを修正画像データと呼ぶ。図19(a)には、修正画像データに対応する表面画像SD3が示される。図19(a)の表面画像SD3には、欠陥DPおよび検査基板Wの表面構造のみが表され、モアレが表されない。また、表面画像SD3は全体的に暗い。
次に、制御部114は、図17に示すように、修正画像データの各画素の階調値に一定の値を加算する(ステップS3)。以下、ステップS3の処理後の表面画像データを加算画像データと呼ぶ。例えば、図11のステップS17の処理と同様に、階調値の範囲の中心値が各画素の階調値に加算される。図19(b)には、加算画像データに対応する表面画像SD3が示される。図19(b)の表面画像SD3は、適度な明るさを有する。
これにより、制御部114は、モアレ除去処理を終了する。モアレ除去処理の終了後、制御部114は、例えば生成された表面画像SD4を図1のメインパネルPNに表示する。それにより、使用者は、図19(b)の表面画像SD3を違和感なく視認することができる。なお、使用者が表面画像SD3を視認することがない場合、上記のステップS3の処理は行われなくてもよい。
図17〜図19の例では、検査基板Wの表面画像SD3からモアレを除去する場合のモアレ除去処理について説明したが、サンプル基板の表面画像SD2からモアレを除去する場合についても上記の例と同様の処理が行われる。
(3)外観検査の方法
図20は、第2の実施の形態に係る欠陥判定処理の一部を示すフローチャートである。図20に示すように、制御部114は、第1の実施の形態と同様にステップS11〜S15の処理を行った後、サンプル基板の表面画像SD2のモアレ除去処理を行う(ステップS31)。続いて、制御部114は、検査基板Wの表面画像SD3のモアレ除去処理を行う(ステップS32)。その後、制御部114は、モアレ除去処理が行われた表面画像SD2,SD3に基づいて、図11のステップS16以降の処理を行う。
(4)効果
本実施の形態では、サンプル基板の表面画像SD2および検査基板Wの表面画像SD3についてモアレ除去処理が行われる。モアレ除去処理では、取得された表面画像データが平滑化され、平滑化前の表面画像データの各画素の階調値から平滑化後の表面画像データの各画素の階調値が減算される。それにより、モアレが除去された修正画像データが生成される。その修正画像データに基づいて、モアレが除去された表面画像SD2,SD3が得られる。
この場合、欠陥DPを含む検査基板Wにおいては、欠陥DPとモアレとの区別が容易になる。また、欠陥判定処理のステップS16,S17において、差分画像データおよび判定画像データにモアレに起因する階調値のばらつきが生じることが防止される。それにより、モアレに起因する階調値のばらつきを含むように許容範囲を広く設定する必要がない。したがって、検査基板Wの外観上の欠陥をより高い精度で検出することが可能になる。
[3]他の実施の形態
(1)上記実施の形態では、欠陥判定処理のステップS18において、判定画像データの各画素の階調値が許容範囲外にある場合に検査基板Wに外観上の欠陥があると判定されるが、本発明はこれに限らない。
判定画像データにおいては、ノイズまたは外乱等の影響により欠陥に対応しない一部の画素の階調値が許容範囲外にある可能性がある。そこで、欠陥判定処理においては、図11のステップS18の処理に代えて以下の処理が行われてもよい。
図21は、他の実施の形態に係る欠陥判定処理の一部を示すフローチャートである。本例では、制御部114は、欠陥判定処理において図10および図11のステップS11〜S17の処理を行った後、ステップS18の処理に代えて、許容範囲外の階調値を示す画素の個数を計数する(ステップS41)。また、制御部114は、計数された個数が予め定められた個数以上であるか否かを判定する(ステップS42)。さらに、制御部114は、ステップS42において、計数された個数が予め定められた個数よりも小さい場合に検査基板Wに外観上の欠陥がないと判定する(ステップS19)。一方、制御部114は、計数された個数が予め定められた個数以上である場合に検査基板Wに外観上の欠陥があると判定し(ステップS20)、欠陥を検出する(ステップS21)。
この場合、許容範囲外の階調値を示す画素の個数が予め定められた数以上でない場合には、欠陥があると判定されない。したがって、ノイズまたは外乱等の影響による誤判定を防止することができる。
(2)上記実施の形態では、一の検査基板Wについて欠陥判定処理が行われるごとにサンプル基板の表面画像データが取得され、図12(a)の表面画像SD2が生成されるが、本発明はこれに限らない。共通の表面構造を有する複数の検査基板Wについて欠陥判定処理を行う場合には、複数の検査基板Wの欠陥判定処理前にサンプル基板の表面画像データを取得するとともにその表面画像SD2を予め制御部114のメモリに記憶してもよい。この場合、各検査基板Wの欠陥判定処理を行う際には、ステップS11,S12の処理を省略することができる。したがって、欠陥判定処理の効率が向上する。
また、複数の検査基板Wの欠陥判定処理前にサンプル基板の表面画像データを取得するとともに上記の許容範囲設定処理を行ってもよい。さらに、許容範囲設定処理により設定される許容範囲を表面画像SD2とともに、予め制御部114のメモリに記憶してもよい。この場合、各検査基板Wの欠陥判定処理を行う際には、ステップS11,S12,S13の処理を省略することができる。したがって、欠陥判定処理の効率がさらに向上する。
(3)上記実施の形態では、サンプル基板の表面画像データが、サンプル基板の撮像により取得されるが、本発明はこれに限らない。サンプル基板の表面画像データとして予め定められた設計データが用いられてもよい。この場合、サンプル基板を撮像する必要がないので、ステップS11,S12の処理を省略することができる。
(4)上記実施の形態では、欠陥判定処理のステップS12,S15においてサンプル基板および検査基板Wの表面画像データが補正されることにより基板Wの形状の表面画像SD2,SD3が生成されるが本発明はこれに限らない。サンプル基板および検査基板Wの表面画像データは基板Wの形状に補正されなくてもよい。このような場合でも、図7(f)の矩形の表面画像SD1を表す表面画像データに基づいて、上記の例と同様の欠陥判定処理を行うことができる。
(5)上記実施の形態では、検査ユニットIPにおいて、基板Wが回転されつつ基板Wの半径領域RRに検査光が照射され、その反射光がCCDラインセンサ54に導かれることによって表面画像データが生成されるが、他の方法で表面画像データが生成されてもよい。例えば、基板Wが回転されることなく、エリアセンサによって基板Wの表面の全体が撮像されることにより表面画像データが生成されてもよい。
(6)上記実施の形態では、制御部114によって欠陥判定処理が行われるが、本発明はこれに限らない。例えば、検査ユニットIPに対応するように外観検査用の制御部が設けられ、その制御部により外観検査における種々の処理が行われてもよい。あるいは、インデクサブロック11、第1および第2の処理ブロック12,13およびインターフェイスブロック14にそれぞれ対応するように複数のローカルコントローラが設けられ、そのうちの一のローカルコントローラ(例えば、第2の処理ブロック13に対応するローカルコントローラ)により外観検査における種々の処理が行われてもよい。
(7)上記実施の形態では、検査ユニットIPにおいて現像処理後の基板Wの外観検査が行われるが、本発明はこれに限らない。例えば、レジスト膜が形成された後であって露光処理前の基板Wの外観検査が検査ユニットIPにより行われてもよい。また、レジスト膜の形成前の基板Wの外観検査が検査ユニットIPにより行われてもよい。
(8)上記実施の形態では、第2の処理ブロック13に検査ユニットIPが設けられるが、検査ユニットIPの配置および数は、適宜変更されてもよい。例えば、第1の処理ブロック12に検査ユニットIPが設けられてもよく、またはインターフェイスブロック14に検査ユニットIPが設けられてもよい。
(9)上記実施の形態では、液浸法により基板Wの露光処理を行う露光装置15に隣接する基板処理装置100に検査ユニットIPが設けられるが、本発明はこれに限らず、液体を用いずに基板Wの露光処理を行う露光装置に隣接する基板処理装置に検査ユニットIPが設けられてもよい。
(10)上記実施の形態では、露光処理の前後に基板Wの処理を行う基板処理装置100に検査ユニットIPが設けられるが、他の基板処理装置に検査ユニットIPが設けられてもよい。例えば、基板Wに洗浄処理を行う基板処理装置に検査ユニットIPが設けられてもよく、または基板Wのエッチング処理を行う基板処理装置に検査ユニットIPが設けられてもよい。あるいは、基板処理装置に検査ユニットIPが設けられるのではなく、検査ユニットIPが単独で用いられてもよい。
[4]請求項の各構成要素と実施の形態の各要素との対応
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各要素との対応の例について説明するが、本発明は下記の例に限定されない。
上記の実施の形態では、サンプル基板が外観上の欠陥がない基板の例であり、検査基板Wが検査すべき基板の例であり、検査ユニットIPおよび制御部114が検査装置の例であり、制御部114が範囲設定部および判定部の例であり、照明部52、CCDラインセンサ54および制御部114が画像データ取得部の例である。
また、サンプル基板の表面画像データが第1の画像データの例であり、検査基板Wの表面画像データが第2の画像データの例であり、差分画像データおよび判定画像データが差分情報の例であり、サンプル基板の修正画像データが第1の修正画像データの例であり、検査基板Wの修正画像データが第2の修正画像データの例であり、保持回転部51が基板保持回転装置の例であり、照明部52が照明部の例であり、CCDラインセンサ54がラインセンサの例である。
また、判定画像データの複数の画素の階調値が第1および第2の画像データの互いに対応するとみなされる画素についての階調値の差分に一定値を加算することにより得られる値の例である。また、加算代表値の最小値および最大値が複数の代表値の最小値および最大値にそれぞれ一定値を加算することにより得られる値の例である。
また、基板処理装置100が基板処理装置の例であり、露光装置15が露光装置の例であり、塗布処理ユニット129が膜形成ユニットの例であり、現像処理ユニット139が現像処理ユニットの例である。
請求項の各構成要素として、請求項に記載されている構成または機能を有する他の種々の要素を用いることもできる。