本件発明者らは、入射光の光路を連続的に変化させ得る走査装置について検討を行った結果として、反射面102を有した反射部材101を当該反射面102への法線方向ndxに対して傾斜した回転軸線Raxを中心として回転可能に保持したデバイス100(図12参照)を発明するに至った。このデバイスは、簡易な構成にて光路を調整し得る点において優れ、したがって、上述の照明装置等への適用に好適といえる。
しかしながら、本件発明者らが更に検討を重ねたところ、図12に示されたデバイスに対する次の不具合が確認された。すなわち、図12に示すように、反射部材101を駆動装置104に安定して接続する観点から、反射部材101の駆動装置104への接続面103は、回転軸線Raxに直交していることが好ましい。この場合、図12に示すように、反射部材101の反射面102は接続面103に対して傾斜する。そして、このような反射部材101の重心は、回転軸線Rax上からずれてしまう。したがって、駆動装置104によって反射部材101を高速回転させた場合、駆動装置104が振動し、結果として、このデバイス100によって光路を高精度に制御することが難しくなってしまう。とりわけデバイス100によって光路を大きく変化させたい場合には、反射面102の法線方向ndxが回転軸線Raxに対してなす傾斜角度θxを大きくする必要が生じ、この結果、この不具合がより顕著となってしまう。また、振動に起因する騒音についても問題となる可能性がある。
本発明は、光の進行方向を高精度に制御することができる走査装置を提供することを目的とする。また、本発明は、この走査装置を含んだ光学モジュール、照明装置及び投射装置を提供することを目的とする。
本発明による照明装置は、
光学素子と、
前記光学素子上を走査するようにして前記光学素子に光を照射する照射装置と、を備え、
前記照射装置は、
光を射出する光源装置と、
前記光源装置からの光を反射する反射面を含む反射部材を有した走査装置と、を含み、
前記反射部材は、前記反射面の法線方向に対して傾斜した回転軸線を中心として回転可能であり、
前記反射部材は、前記反射面を覆い且つ厚みが一定ではない透明体を有する。
本発明による照明装置において、前記反射面は、前記反射部材の内部に位置していてもよい。
本発明による照明装置において、
前記反射部材は、前記透明体と積層された基材を、さらに有し、
前記反射面は、前記基材と前記透明体との間に位置していてもよい。
本発明による照明装置において、前記基材の厚みは一定ではなくてもよい。
本発明による照明装置において、前記回転軸線に直交する一軸方向に沿って、前記透明体の厚みは漸次薄くなるようにしてもよい。
本発明による照明装置において、
前記回転軸線に直交する一軸方向に沿った一方の側から他方の側へ向け、前記透明体の厚みは漸次薄くなり、
前記一軸方向に沿った一方の側から他方の側へ向け、前記基材の厚みは漸次厚くなるようにしてもよい。
本発明による照明装置において、前記反射部材は、その板面が前記回転軸線と直交する板状の部材であるようにしてもよい。
本発明による照明装置において、前記反射部材は、厚みが一定となっている板状の部材であるようにしてもよい。
本発明による照明装置において、前記反射部材の入光面となる表面は、前記回転軸線と直交していてもよい。
本発明による照明装置において、
前記走査装置は、前記反射部材の前記反射面からの光を反射する第2反射面を含む第2反射部材を、さらに有し、
前記第2反射部材は、前記第2反射面の法線方向に対して傾斜した回転軸線を中心として回転可能であり、
前記第2反射部材は、前記第2反射面を覆い且つ厚みが一定ではない透明体を有するようにしてもよい。
本発明による照明装置において、前記反射面と前記第2反射面とが平行に維持されるよう、前記反射部材および前記第2反射部材は回転可能であるようにしてもよい。
本発明による照明装置において、
前記反射部材の前記回転軸線と前記第2反射部材の前記回転軸線は平行であり、
前記反射部材の前記回転軸線を中心とした回転の向きと前記第2反射部材の前記回転軸線を中心とした回転の向きは同一であるようにしてもよい。
本発明による照明装置において、前記第2反射面は、前記反射面よりも大きくなっていてもよい。
本発明による照明装置において、前記光源装置は、複数の光源を含んでいてもよい。
本発明による光学モジュールは、
光源装置から光を受ける光学モジュールであって、
光学素子と、
前記光源装置からの光の進行方向を変化させ、前記光学素子上を走査するようにして前記光学素子に光を入射させる走査装置と、を備え、
前記走査装置は、前記光源装置からの光を反射する反射面を含む反射部材を有し、
前記反射部材は、前記反射面の法線方向に対して傾斜した回転軸線を中心として回転可能であり、
前記反射部材は、前記反射面を覆い且つ厚みが一定ではない透明体を有する。
本発明による光学モジュールにおいて、前記反射面は、前記反射部材の内部に位置していてもよい。
本発明による光学モジュールにおいて、
前記反射部材は、前記透明体と積層された基材を、さらに有し、
前記反射面は、前記基材と前記透明体との間に位置していてもよい。
本発明による光学モジュールにおいて、前記基材の厚みは一定ではなくてもよい。
本発明による光学モジュールにおいて、前記回転軸線に直交する一軸方向に沿って、前記透明体の厚みは漸次薄くなるようにしてもよい。
本発明による光学モジュールにおいて、
前記回転軸線に直交する一軸方向に沿った一方の側から他方の側へ向け、前記透明体の厚みは漸次薄くなり、
前記一軸方向に沿った一方の側から他方の側へ向け、前記基材の厚みは漸次厚くなるようにしてもよい。
本発明による光学モジュールにおいて、前記反射部材は、その板面が前記回転軸線と直交する板状の部材であるようにしてもよい。
本発明による光学モジュールにおいて、前記反射部材は、厚みが一定となっている板状の部材であるようにしてもよい。
本発明による光学モジュールにおいて、前記反射部材の入光面となる表面は、前記回転軸線と直交していてもよい。
本発明による光学モジュールにおいて、
前記走査装置は、前記反射部材の前記反射面からの光を反射する第2反射面を含む第2反射部材を、さらに有し、
前記第2反射部材は、前記第2反射面の法線方向に対して傾斜した回転軸線を中心として回転可能であり、
前記第2反射部材は、前記第2反射面を覆い且つ厚みが一定ではない透明体を有するようにしてもよい。
本発明による光学モジュールにおいて、前記反射面と前記第2反射面とが平行に維持されるよう、前記反射部材および前記第2反射部材は回転可能であるようにしてもよい。
本発明による光学モジュールにおいて、
前記反射部材の前記回転軸線と前記第2反射部材の前記回転軸線は平行であり、
前記反射部材の前記回転軸線を中心とした回転の向きと前記第2反射部材の前記回転軸線を中心とした回転の向きは同一であるようにしてもよい。
本発明による光学モジュールにおいて、前記第2反射面は、前記反射面よりも大きくなっていてもよい。
本発明による光学モジュールが、前記光学素子からの光によって照明される空間光変調器を、さらに備えるようにしてもよい。
本発明による走査装置は、
入射光を反射する反射面を含む反射部材を備え、
前記反射部材は、前記反射面の法線方向に対して傾斜した回転軸線を中心として回転可能であり、
前記反射部材は、前記反射面を覆い且つ厚みが一定ではない透明体を有する。
本発明による走査装置において、前記反射面は、前記反射部材の内部に位置していてもよい。
本発明による走査装置において、
前記反射部材は、前記透明体と積層された基材を、さらに有し、
前記反射面は、前記基材と前記透明体との間に位置していてもよい。
本発明による走査装置において、前記基材の厚みは一定ではなくてもよい。
本発明による走査装置において、前記回転軸線に直交する一軸方向に沿って、前記透明体の厚みは漸次薄くなるようにしてもよい。
本発明による走査装置において、
前記回転軸線に直交する一軸方向に沿った一方の側から他方の側へ向け、前記透明体の厚みは漸次薄くなり、
前記一軸方向に沿った一方の側から他方の側へ向け、前記基材の厚みは漸次厚くなるようにしてもよい。
本発明による走査装置において、前記反射部材は、その板面が前記回転軸線と直交する板状の部材であるようにしてもよい。
本発明による走査装置において、前記反射部材は、厚みが一定となっている板状の部材であるようにしてもよい。
本発明による走査装置において、前記反射部材の入光面となる表面は、前記回転軸線と直交していてもよい。
本発明による走査装置において、
前記走査装置は、前記反射部材の前記反射面からの光を反射する第2反射面を含む第2反射部材を、さらに有し、
前記第2反射部材は、前記第2反射面の法線方向に対して傾斜した回転軸線を中心として回転可能であり、
前記第2反射部材は、前記第2反射面を覆い且つ厚みが一定ではない透明体を有するようにしてもよい。
本発明による走査装置において、前記反射面と前記第2反射面とが平行に維持されるよう、前記反射部材および前記第2反射部材は回転可能であるようにしてもよい。
本発明による走査装置において、
前記反射部材の前記回転軸線と前記第2反射部材の前記回転軸線は平行であり、
前記反射部材の前記回転軸線を中心とした回転の向きと前記第2反射部材の前記回転軸線を中心とした回転の向きは同一であるようにしてもよい。
本発明による走査装置において、前記第2反射面は、前記反射面よりも大きくなっていてもよい。
本発明による投射装置は、
上述した本発明による照明装置のいずれかと、
前記照明装置からの光によって照明される空間光変調器と、を備える。
本発明による投射装置が、前記照明装置からの光を前記空間光変調器に中継するリレー光学系を、さらに備え、
前記リレー光学系は前記照明装置により形成される中間像を空間光変調器上に写像するようにしてもよい。
本発明によれば、透明体によって反射部材の重心位置の調整を図ることができる。したがって、この反射部材を回転可能に保持した走査装置によって、光の進行方向を高精度に制御することができる。
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
また、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
図1に示す投射型映像表示装置10は、スクリーン15と、映像光を投射する投射装置20と、を有している。投射装置20は、仮想面上に位置する被照明領域LZを照明する照明装置40と、被照明領域LZと重なる位置に配置され照明装置40によって照明される空間光変調器30と、空間光変調器30からのコヒーレント光をスクリーン15に投射する投射光学系25と、を有している。図示された例において、投射光学系25は、フィールドレンズ26とプロジェクションレンズ27とを、光路に沿ってこの順番で含んでいる。すなわち、ここで説明する一実施の形態において、照明装置40は、空間光変調器30を照明するための照明装置として、投射装置20に組み込まれている。とりわけ本実施の形態において、照明装置40は、コヒーレント光によって被照明領域LZを照明し、且つ、照明装置40には、スペックルを目立たなくさせる工夫がなされている。
まず、照明装置40について説明する。図1に示されているように、照明装置40は、光の進行方向を被照明領域LZへ向ける光学素子50と、光学素子50へ光、とりわけ本例ではコヒーレント光を照射する照射装置60と、を有している。図1に示された例において、照射装置60は、コヒーレント光が光学素子50上を走査するようにして、光学素子50へコヒーレント光を照射するようになっている。したがって、ある瞬間に、照射装置60によってコヒーレント光を照射されている光学素子50上の領域は、光学素子50の表面の一部分となる。
照射装置60は、特定波長帯域のコヒーレント光を射出する光源装置61と、光源装置61からの光の進行方向を光学素子50に向ける走査装置70と、を有している。なお、走査装置70と光学素子50とによって、光学モジュール45が形成されている。光源装置61は、コヒーレント光を生成する光源62、例えばレーザー光源62を有している。図示された例において、走査装置70は、平行光束をなす光線の光路をたどるようにして、光源装置61の光源62で生成されたコヒーレント光を光学素子50へ入射させるようになっている。
図示された具体例として、走査装置70は、光源62からの光を反射する第1反射面85aを有する第1反射デバイス80と、第1反射面85aからの光を反射する第2反射面95aを有する第2反射デバイス90と、第1反射デバイス80及び第2反射デバイス90に接続された制御器72と、を有している。第1反射デバイス80の第1反射面85aの向きは、所定の可動範囲内において繰り返し変動可能となっている。同様に、第2反射デバイス90の第2反射面95aの向きも、所定の可動範囲内において繰り返し変動可能となっている。第1反射面85aの向き及び第2反射面95aの向きが、繰り返し変動することにより、光源62から照射された光が、光学素子50上を走査するようになる。制御器72は、第1反射面85aの向き及び第2反射面95aの向きを制御する。
ここで説明する走査装置70では、第1反射デバイス80の第1反射面85aの向きの変動と、第2反射デバイス90の第2反射面95aの向きの変動は、同期するようになっている。すなわち、第1反射面85a及び第2反射面95aは、互いにから独立して無関係に向きを変化させるのではない。第1反射面85aの向き及び第2反射面95aの向きの一方は、他方の向きに応じて所定の向きを向くようになる。とりわけ、ここで説明する走査装置70では、第1反射面85aの向きと第2反射面95aの向きとが互いに平行となるよう、第1反射面85aと第2反射面95aとが動作する。
図示された例において、第1反射デバイス80は、第1反射面85aを有した第1反射部材85と、第1反射部材85を回転駆動する第1駆動装置81と、を有している。図1〜3に示すように、第1駆動装置81は、一例としてモータとして構成され、ステータとして機能するケーシング82と、ロータとして機能する軸部材83と、を有している。第1反射部材85は、軸部材83に取り付けられており、軸部材83とともに第1回転軸Ra1を中心として回転可能となっている。ただし、第1反射面85aは、第1回転軸線Ra1に対して直交していない。言い換えると、第1反射面85aの法線方向nd1(図3参照)は、第1回転軸線Ra1と非平行であり、第1回転軸線Ra1に対して傾斜している。したがって、反射部材85が、第1回転軸線Ra1を中心として回転すると、第1反射面85aは、向きを変化させるようになる。このとき、反射部材85の回転が定速であれば、第1反射面85aは、第1回転軸線Ra1と直交する第1仮想面Vp1を中心として、周期的に向きを変動させることになる。
図示された例において、第2反射デバイス90は、第1反射デバイス80と同様に構成されている。すなわち、第2反射デバイス90は、第2反射面95aを有した第2反射部材95と、第2反射部材95を回転駆動する第2駆動装置91と、を有している。第2駆動装置91は、ケーシング92と、ケーシング92に回転可能に保持された軸部材93と、を有している。軸部材93は、その軸線方向と一致する第2回転軸Ra2を中心として回転可能となっている。第2反射部材95は、軸部材93に取り付けられており、軸部材93とともに第2回転軸Ra2を中心として回転可能となっている。ただし、第2反射面95aは、第2回転軸線Ra2に対して直交していない。言い換えると、第2反射面95aの法線方向nd2は、第2回転軸線Ra2と非平行であり、第2回転軸線Ra2に対して傾斜している。したがって、第2反射部材95が、第2回転軸線Ra2を中心として回転すると、第2反射面95aは、向きを変化させるようになる。このとき、第2反射部材95の回転が定速であれば、第2反射面95aは、第2回転軸線Ra2と直交する第2仮想面Vp2を中心として、周期的に向きを変動させることになる。
図示された例において、第1反射面85aの第1回転軸線Ra1と第2反射面95aの第2回転軸線Ra2は平行となっている。また、第1反射面85aの第1回転軸線Ra1を中心とした回転の向きと、第2反射面95aの第2回転軸線Ra2を中心とした回転の向きは、同一の向きとなっている。そして、第1反射面85aの回転周期と第2反射面95aの回転周期は同一となっている。この結果、第1反射面85aと第2反射面95aは、互いに対して平行な状態に維持される。
なお、第1反射面85aの第1回転軸線Ra1を中心とした回転の向きは、第1回転軸線Ra1に沿って一方の側から他方の側へ第1反射面85aを観察した場合における第1反射面85aの回転の向き(図2における矢印AR1)であり、第2反射面95aの第2回転軸線Ra2を中心とした回転の向きは、第1回転軸線Ra1と平行な第2回転軸線Ra2に沿って前記一方の側から前記他方の側へ第2反射面95aを観察した場合における第2反射面95aの回転の向き(図2における矢印AR2)である。
ここで、図4には、制御器72による、第1反射面85a及び第2反射面95aの向きを制御する方法の一例が示されている。図4に示された制御方法では、一例として、駆動装置81,91の位相、具体例としては、駆動装置81,91をなすモータのロータの位相を制御することにより、反射面85a,95aの向きを制御している。駆動装置81,91の位相制御手法としては、例えば、PWM信号の変調による制御手法を例示することができる。
図4に示された例では、走査装置70の動作が開始すると、まず、第1反射面71を回転駆動する第1駆動装置81の位相を検出する。同時に、第2反射面95aを回転駆動する第2駆動装置91の位相を検出する。そして、制御器72は、第1駆動装置81の位相および第2駆動装置91の位相のずれ量を特定する。制御器72は、特定された位相のずれ量に基づき、第1駆動装置81の位相および第2駆動装置91の位相を同一にするよう、第1駆動装置81及び第2駆動装置91を調整する。これにより、第1反射デバイス80の第1反射面85aと、第2反射デバイス90の第2反射面95aとが、平行に保持されて、それぞれ対応する駆動装置81,91によって回転駆動される。
図4に示された制御方法では、走査装置70の動作が終了するまでの間、例えば連続的に又は一定間隔をあけて、第1駆動装置81の位相および第2駆動装置91の位相が確認される。駆動装置81,91間で位相にずれが生じている場合には、当該ずれを解消して、第1駆動装置81の位相および第2駆動装置91の位相を合わせる。このようにして、第1反射面85aと第2反射面95aは、回転駆動されている間、互いに対して平行な状態に維持され得る。
なお、以上に説明した、第1反射面85a及び第2反射面95aの向きを制御する方法は、一例に過ぎず、他の制御方法を採用することも可能である。例えば、撮像装置等を用いて第1反射面85a及び第2反射面95aの向きを直接検出して、この検出結果に基づいて、第1反射面85a及び第2反射面95aの向きを制御するようにしてもよい。さらに別の方法として、駆動装置81,91の回転数、具体例としては、駆動装置81,91をなすモータのロータの回転数を制御することにより、反射面85a,95aの向きを制御するようにしてもよい。
以上のような走査装置70を用いた場合、第1反射面85aと第2反射面95aが平行に維持されることから、第2反射面95aから進み出る光の進行方向は、第1反射面85aへ入射する光の進行方向と平行になる。一方、光源装置61の光源62が固定されており、光源62から射出される光は、常に一定方向から第1反射デバイス80へ向かう。すなわち、第1反射面85aへ入射する光源62からの光の進行方向は、常に一定である。したがって、第2反射デバイス90の第2反射面95aで反射された光は、常に一定の向きに進む。図示された例では、照射装置60から光学素子50へ向けて、常に一定の方向から光が入射している。すなわち、照射装置60からの光は、平行光束をなす光線の光路を辿るようにして、光学素子50へ入射することになる。
次に、図2及び図3を主に参照して、反射部材85,95の構成についてさらに詳述する。なお、以下に説明する例において、第1反射デバイス80の第1反射部材85と第2反射デバイス90の第2反射部材95は、同一の構成されているものとする。
上述したように、反射部材85,95は、当該反射部材85,95の反射面85a,95aの法線方向nd1,nd2に対して傾斜した回転軸線Ra1,Ra2を中心として回転可能となっている。図3に示された例において、反射部材85,95は、対向して配置された基材76と透明体75とを有している。反射面85a,95aは、基材76と透明体75との間に配置されている。より具体的には、透明体75の基材76に対面する側の面上に、反射材料層77が形成されている。そして、反射材料層77が形成された透明体75と、基材76とが、接合層78によって互いに接合されている。
反射材料層77は、反射性を有した材料、例えばアルミニウム、銀、銅、これらの合金等の金属の層や、誘電体多層膜による反射層とすることができる。反射材料層77は、例えば、蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等により、透明体75上に成膜され得る。反射面85a,95aは、反射材料層77の表面、言い換えると、反射材料層77と透明体75との界面によって形成されている。すなわち、反射面85a,95aは、反射部材85,95の内部に形成されている。したがって、この反射部材85,95では、反射面85a,95aの損傷や、反射面85a,95aへの異物の付着を効果的に防止することができる。
透明体75は、反射部材85,95の入射側の表面、すなわち入光面85c,95cをなしている。したがって、反射部材85,95の内部に形成された反射面85a,95aへ高効率にて光を導くことが可能となるよう、透明体75は、高い可視光透過性を有していることが好ましい。具体的には、分光光度計((株)島津製作所製「UV−3100PC」)を用いてJIS K0115に準拠して測定された透明体75の可視光透過率が、98%以上となっていることが好ましく、99%以上となっていることがより好ましく、99.9%以上となっていることが更に好ましい。透明体75は、例えば透明樹脂やガラスを用いて作製され得る。
基材76は、反射部材85,95の駆動装置81,91に対面する側の表面、すなわち接続面85b,95bをなしている。基材76は、駆動装置81,91の軸部材83,93との安定した接続状態を確保し得る程度の強度を有した材料、典型的には樹脂材料を用いて作製され得る。図示された例において、接続面85b,95bは、反射部材85,95の回転軸線Ra1,Ra2に直交する平坦面となっている。このような接続面85b,95bによれば、安価に入射可能なフランジ材等の接続部材74を用いて、反射部材85,95と駆動装置81,91とを安定して接続することが可能となる。
接合層78は、特に制限されることなく粘着性または接着性を有した層とすることできる。図3に示すように、接合層78は、反射材料層77の背面に位置して、光源装置61から光学素子50へ向かう光路上に位置していない。したがって、ポリマーの凝集等が生じて白濁化や黄色化したとしても、光源装置61から光学素子50へ向かう光に悪影響を及ぼすことはない。
図3から明らかなように、反射面85a,95aを覆う透明体75は、一定ではない厚みを有している。言い換えると、透明体75の厚みは、変化している。図示された透明体75の厚みは、反射部材85,95の回転軸線Ra1,Ra2に直交する断面において、とりわけ回転軸線Ra1,Ra2を通過し且つ回転軸線Ra1,Ra2に直交する図3に示された断面において、一軸方向d1に沿って、漸次薄くなっている。
また、図示された例では、基材76の厚みも一定ではない。そして、反射部材85,95の回転軸線Ra1,Ra2に直交する断面において、とりわけ回転軸線Ra1,Ra2を通過し且つ回転軸線Ra1,Ra2に直交する図3に示された断面において、基材76は、透明体75と相補的な断面形状を有している。
より具体的には、透明体75の厚みは、反射部材85,95の回転軸線Ra1,Ra2に直交する断面において、とりわけ回転軸線Ra1,Ra2を通過し且つ回転軸線Ra1,Ra2に直交する図3に示された断面において、一軸方向d1における一方の側から他方の側へ向けて、漸次薄くなっていき、逆に、基材76の厚みは、当該一軸方向d1における一方の側から他方の側へ向けて、漸次厚くなっていく。このような構成により、図示された反射部材85,95は、厚みが一定の板状、とりわけ厚みが一定の円板状の部材となっている。したがって、反射部材85,95の接続面85b,95bと同様に、反射部材85,95の入光面85c,95cは、反射部材85,95の回転軸線Ra1,Ra2と直交している。そして、反射部材85,95の板面は、回転軸線Ra1,Ra2と直交している。
以上のように本実施の形態では、反射部材85,95が、反射面85a,95aを覆う透明体75を含んでいる。そして、この透明体75の厚みを変化させている。したがって、反射部材85,95は、単に反射面85a,95aを保護するだけでなく、反射部材85,95の重心位置を積極的に調整することが可能となる。すなわち、透明体75の厚みを変化させることにより、図12に示されたデバイス100と比較して、反射部材85,95の重心を反射部材85,95の回転軸線Ra1,Ra2により接近させることができ、さらには、反射部材85,95の重心を反射部材85,95の回転軸線Ra1,Ra2上に位置させることも可能である。
次に、光学素子50について説明する。光学素子50は、各領域への入射光を当該領域の位置に応じた特定の方向に向ける光路制御機能を有している。ここで説明する光学素子50は、各領域への入射光の進行方向を補正して所定の領域LZに向ける。この領域が、被照明領域LZとなる。すなわち、光学素子50の入射面を平面分割してなる各領域に照射された照射装置60からの光は、光学素子50を経由した後に、少なくとも一部分において重なり合う領域を照明するようになる。
一例として、図1及び図5に示された例において、光学素子50は、照射装置60からの光の入射方向に対応して形成されたレンズアレイ51を含んで構成され得る。ここで「レンズアレイ」とは、単位レンズとも呼ばれる小さなレンズの集合体であり、屈折または反射によって光の進行方向を偏向させる素子として機能する。図示された例において、光学素子50は、各単位レンズ51aに対応する各領域に入射する光を、それぞれ、少なくとも被照明領域LZの全域に入射するように拡散させる。すなわち、光学素子50は、各領域に照射装置60から入射する光を拡散させることによって、同一の被照明領域LZを照明する。
図示された例では、光学素子50に入射する光は、一定の方向に沿って進む光である。したがって、図5に示されたレンズアレイ51は、凸レンズからなる単位レンズ51aを敷き詰めてなるフライアイレンズとして構成されている。各単位レンズ51aは、互いに同一に形成されている。単位レンズ51aは、その光軸が互いに平行となるようにして敷き詰められている。
また、図5に示された光学素子50は、このようなレンズアレイ51と、レンズアレイ51に対向して配置されたコンデンサレンズ52またはフィールドレンズと、を有している。図2の光学素子50において、レンズアレイ51が、光学素子50の最入光側に配置されており、照射装置60からの光を受ける。レンズアレイ51をなす各単位レンズ51aは、平行光束をなす光線の光路をたどるようにして入射する光を、焦点に収束させる。そして、コンデンサレンズ52は、各単位レンズ51aによる焦点によって画成される面上に配置され、各凸レンズからの光を、被照明領域LZに向ける。とりわけ、コンデンサレンズ52によれば、各凸レンズからの光を、同一の被照明領域LZのみに向けることができ、各方向からの照明光を被照明領域LZに重畳させる。
次に、空間光変調器30について説明する。空間光変調器30は、被照明領域LZに重ねて配置される。そして、空間光変調器30は、照明装置40によって照明され、変調画像を形成する。照明装置40からの光は、上述したように被照明領域LZの全域のみを照明する。したがって、空間光変調器30の入射面は、照明装置40によって光を照射される被照明領域LZと同一の形状および大きさであることが好ましい。この場合、照明装置40からの光を、変調画像の形成に高い利用効率で利用することができるからである。
空間光変調器30は、特に制限されることなく、種々の公知の空間光変調器を利用することができる。例えば、偏光を利用することなく変調画像を形成する空間光変調器、例えばデジタルミラーデバイス(DMD)や、偏光を利用して変調画像を形成する透過型の液晶マイクロディスプレイや反射型のLCOS(Liquid Crystal On Silicon)を、空間光変調器30として用いることができる。
図1に示された例のように、空間光変調器30が、透過型の液晶マイクロディスプレイである場合、照明装置40によって面状に照明される空間光変調器30が、画素毎にコヒーレント光を選択して透過させることにより、空間光変調器30をなすディスプレイの画面上に変調画像が形成されるようになる。こうして得られた変調画像は、最終的には、投射光学系25によって、等倍で或いは変倍されてスクリーン15へ投射される。これにより、観察者は、スクリーン15上に投射された当該画像を観察することができる。スクリーン15は、透過型スクリーンとして構成されていてもよいし、反射型スクリーンとして構成されていてもよい。
次に、以上の構成からなる照明装置40、投射装置20および投射型映像表示装置10の作用について説明する。
まず、照射装置60は、光学素子50上を走査するようにして、光学素子50へコヒーレント光を照射する。具体的には、光源装置61の光源62で一定方向に沿って進む特定波長帯域のコヒーレント光が生成され、このコヒーレント光が走査装置70で進行方向を変えられる。走査デバイス70は、周期的な動作を行っており、この結果、光学素子50上でのコヒーレント光の入射位置も、周期的に変化するようになる。
光学素子50の各領域に入射したコヒーレント光は、それぞれ、光学素子50での光路調整機能により、被照明領域LZに重畳されるようになる。すなわち、照射装置60から光学素子50の各領域に入射したコヒーレント光は、それぞれ、光学素子50で拡散ないしは拡げられて、被照明領域LZの全域に入射するようになる。このようにして、照射装置60は、被照明領域LZをコヒーレント光で照明することができる。
図1に示すように、投射装置20においては、照明装置40の被照明領域LZと重なる位置に空間光変調器30が配置されている。このため、空間光変調器30は、照明装置40によって面状に照明され、画素毎にコヒーレント光を選択して透過させることにより、映像を形成するようになる。この映像は、投射光学系25によってスクリーン15に投射される。スクリーン15に投射されたコヒーレント光は、拡散され、観察者に映像として認識されるようになる。
ところで、スクリーン上に投射されたコヒーレント光は拡散によって干渉し、スペックルを生じさせることになる。一方、ここで説明する照明装置40によれば、次に説明するように、スペックルを極めて効果的に目立たなくさせることができる。
スペックルを目立たなくさせるには、偏光・位相・角度・時間といったパラメータを多重化し、モードを増やすことが有効であるとされている。ここでいうモードとは、互いに無相関なスペックルパターンのことである。例えば、複数のレーザー光源から同一のスクリーンに異なる方向からコヒーレント光を投射した場合、レーザー光源の数だけ、モードが存在することになる。また、同一のレーザー光源からのコヒーレント光を、時間を区切って異なる方向から、スクリーンに投射した場合、人間の目で分解不可能な時間の間にコヒーレント光の入射方向が変化した回数だけ、モードが存在することになる。そして、このモードが多数存在する場合には、光の干渉パターンが無相関に重ねられ平均化され、結果として、観察者の目によって観察されるスペックルが目立たなくなるものと考えられている。
上述した照明装置40では、コヒーレント光が、光学素子50上を走査するようにして、光学素子50に照射される。また、照射装置60から光学素子50の各領域に入射したコヒーレント光は、それぞれ、同一の被照明領域LZの全域をコヒーレント光で照明するが、当該被照明領域LZを照明するコヒーレント光の照明方向は互いに異なる。そして、コヒーレント光が入射する光学素子50上の領域が経時的に変化するため、被照明領域LZへのコヒーレント光の入射方向も経時的に変化する。
被照明領域LZを基準にして考えると、被照明領域LZ内の各領域には絶えずコヒーレント光が入射してくるが、その入射方向は、図1に矢印A1で示すように、常に変化し続けることになる。結果として、空間光変調器30の透過光によって形成された映像の各画素をなす光が、図1に矢印A2で示すように経時的に光路を変化させながら、スクリーン15の特定の位置に投射されるようになる。
以上のことから、上述してきた照明装置40を用いることによれば、映像を表示しているスクリーン15上の各位置において時間的にコヒーレント光の入射方向が変化していき、且つ、この変化は、人間の目で分解不可能な速さであり、結果として、人間の目には、相関の無いコヒーレント光の散乱パターンが多重化されて観察されることになる。したがって、各散乱パターンに対応して生成されたスペックルが重ねられ平均化されて、観察者に観察されることになる。これにより、スクリーン15に表示されている映像を観察する観察者に対して、スペックルを極めて効果的に目立たなくさせることができる。
なお、人間によって観察される従来のスペックルには、スクリーン15上でのコヒーレント光の散乱を原因とするスクリーン側でのスペックルだけでなく、スクリーンに投射される前におけるコヒーレント光の散乱を原因とする投射装置側でのスペックルも発生し得る。この投射装置側で発生したスペックルパターンは、空間光変調器30を介してスクリーン15上に投射されることによって、観察者に認識され得るようにもなる。しかしながら、本実施の形態によれば、コヒーレント光が光学素子50上を連続的に走査し、そして光学素子50の各領域に入射したコヒーレント光が、それぞれ、空間光変調器30が重ねられた被照明領域LZの全域を照明するようになる。すなわち、光学素子50が、スペックルパターンを形成していたそれまでの波面とは別途の新たな波面を形成し、複雑且つ均一に、被照明領域LZ、さらには、空間光変調器30を介してスクリーン15を照明するようになる。このような光学素子50での新たな波面の形成により、投射装置側で発生するスペックルパターンは不可視化されることになる。
ところで、ここで説明した照明装置40では、光源装置61からの光の光路を変化させる走査装置70は、光源62からの光を反射する第1反射面85aを含んだ第1反射部材85を有する第1反射デバイス80と、第1反射面85aからの光を反射する第2反射面95aを含んだ第2反射部材95を有する第2反射デバイス90と、を有している。そして、各反射デバイス80,90において、反射部材85,95は、反射面85a,95aの法線方向nd1,nd2と非平行な回転軸線Ra1,Ra2を中心として、回転するようになっている。したがって、反射部材85,95が回転すると、反射面85a,95aの向きが経時的に変化し、且つ、反射面85a,95aの向きの変化は周期性を持つようになる。このため、反射面85a,95aで反射した光の進行方向は経時的に変化し、且つ、反射光の進行方向の変化は周期性を持つようになる。このような第1反射デバイス80及び第2反射デバイス90は、反射面85a,95aの向きの変化にともなって、占有スペースを大きく変化させることはない。とりわけ、反射部材85,95の入光面85c,95cが回転軸線Ra1,Ra2に対して直交している場合には、反射部材85,95が回転した際に、反射デバイス80,90の占有スペースは実質的に変化しない。したがって、本実施の形態によれば、省スペースを図りながら、光学素子50上の広い領域に亘った入射光の走査が可能となる。
ところで、図12を参照して既に説明したように、反射面102の法線方向ndxが回転軸線Raxに対して傾斜しているデバイス100において、反射面102が反射部材101の入光面も兼ねている場合、反射部材101の重心は、回転軸線Rax上からずれてしまう。反射部材101の重心が回転軸線Rax上に位置していないと、反射部材101の回転中、振動装置104が反射部材101とともに振動してしまう。とりわけ反射部材101の振れ幅は大きくなり、反射面102は意図した方向を向かなくなる。結果として、このデバイス100では光路を高精度に制御することが難しくなる。
一方、本実施の形態では、反射部材85,95には、反射面85a,95aを覆い且つ厚みが一定ではない透明体75が設けられている。この透明体75は、反射部材85,95の入光面85c,95cをなしている。また、この透明体75の厚みは変化しており、一定ではない。したがって、透明体75は、反射面85a,95aを覆って保護することができるとともに、更に、反射部材85,95の重心位置を積極的に調整することが可能となる。すなわち、透明体75の厚みを変化させることにより、図12に示されたデバイス100と比較して、反射部材85,95の重心を反射部材85,95の回転軸線Ra1,Ra2により接近させることが可能であり、反射部材85,95の重心を反射部材85,95の回転軸線Ra1,Ra2上に位置させることも可能である。図示された形態のように、透明体75が基材76と相補的な形状となっている場合、比重が同一な材料を用いて透明体75と基材76とを作製すると、例えば同一の材料を用いて透明体75と基材76とを作製すると、反射部材85,95の重心が反射部材85,95の回転軸線Ra1,Ra2上に位置するようになる。
このような本実施の形態によれば、駆動装置81,91による反射部材85,95の回転中、反射部材85,95および反射部材85,95を保持する駆動装置81,91が振動してしまうことを効果的に防止することができる。これにより、簡易な構成および単純な動作の走査装置70によって、光源装置61からの光の進行方向を高精度に制御することができる。
またこのような照明装置40では、光学素子50上における走査領域を大きく確保すれば、スペックルをより効果的に目立たなくさせることができる。ただし、照明装置40の占有スペースを拡大させることなく、走査領域をより大きく確保するには、反射面102の法線方向ndxが回転軸線Raxに対してなす傾斜角度θxを大きくする必要がある。図12を参照して既に言及したように、この傾斜角度θxが大きくなると、反射部材101の重心の回転軸線Raxからのずれ量が大きくなり、上述した振動の問題がより顕著となる。加えて、傾斜角度θxが大きくなると、反射部材101が回転軸線Raxに沿って大型化することになる。
一方、透明体75によって反射面85a,95aが覆われている本実施の形態によれば、図3に示すように、光源装置61からの光は、透明体75に入射する際に屈折する。この結果、透明体75の内部での反射前後における光路の角度差θiは、透明体75の外部での反射前後における光路の角度差θoよりも小さくなる。すなわち、透明体75を設けていない場合との比較において、透明体75を設けた本実施の形態では、反射面85a,95aの法線方向nd1,nd2が回転軸線Ra1,Ra2に対してなす角度を小さく抑えながら、同程度に光路を変化させることができる。すなわち、本実施の形態によれば、反射デバイス80,90の振動を効果的に防止することができるとともに、更に、反射部材85,95の小型化を図ることもできる。
さらに、図示された照明装置40では、第1反射面85aの向きと第2反射面95aの向きとが互いに平行となるよう、第1反射部材85と第2反射部材95とが動作する。このように第1反射面85aと第2反射面95aが平行に維持されることから、第2反射面95aから進み出る光の進行方向は、第1反射面85aへ入射する光の進行方向と平行になる。一方、光源装置61の光源62が固定されており、光源62から射出される光が、常に一定方向から第1反射デバイス80へ向かう。すなわち、第1反射面85aへ入射する光源62からの光の進行方向は、常に一定である。したがって、第2反射デバイス90の第2反射面95aで反射された光は、一定の向きに進むようになる。とりわけ本例では、照射装置60から射出する光は、平行光束をなす光線の光路を辿るようにして、光学素子50へ入射することになる。
このように、照射装置60からの出射光が一定の方向となっているので、当該出射光の取り扱い、例えば搬送が、非常に容易となる。また、発散光束の場合と異なり、照射装置60からの出射光が通過することになる光路幅は一定であり、光路幅の変動が生じない。したがって、照明装置40が大型化してしまうことを効果的に回避することができる。また、照射装置60から光を照射される光学素子50は、その各領域への入射光を異なる方向に曲げることによって、入射光を照明光として被照明領域LZに誘導している。そして、光学素子50への入射方向が一定となっていれば、光学素子50の設計及び製造を簡易化することができる。
また、図1及び図2に示すように、光源62から射出する光は、或る程度のスポット径を有することになる。このようなスポット径を有した光を、レンズ効果を持つ偏向素子を用いてコリメートしようとしても、光軸の向きを制御することしかできない。偏向素子では、スポット径内の各位置を通過するすべての光の光路を所望の方向に向けることは不可能である。一方、平行に維持される二枚の反射面85a,95aを有した走査装置70によれば、スポット径の大小に関わらず、第1反射面85aに入射する光の光路と、第2反射面95aで反射した光の光路とを、平行にすることができる。すなわち、光源62から射出した光のスポット径の大小に関わらず、照射装置60は、平行光束をなす光線の光路を辿るようにして光を光学素子50に照射することが可能となる。光学素子50に入射した光は、光学素子50によって予定した方向に高精度に光路を調整される。すなわち、ここで説明した走査装置70及び照明装置40によれば、被照明領域LZを所望の方向から極めて高精度に照明することができる。
さらに、図示された走査装置70では、第1反射デバイス80は、第1反射面85aの法線方向nd1に対して傾斜した第1回転軸線Ra1を中心として、第1反射面85aを回転可能の保持している。第2反射デバイス90は、第2反射面95aの法線方向nd2に対して傾斜した第2回転軸線Ra2を中心として、第2反射面95aを回転可能の保持している。このような第1反射デバイス80及び第2反射デバイス90によれば、コンパクトな構成及び簡易な制御により、光路を大きく変化させることができる。とりわけ、同様に構成された第1反射デバイス80及び第2反射デバイス90を第1回転軸線Ra1と第2回転軸線Ra2とが平行となるように配置することによって、第1反射面85a及び第2反射面95aを平行に維持することが可能となる。すなわち、単純でコンパクトな構成および制御によって、被照明領域LZを一定の方向から極めて高精度に照明することが可能となる。
また、図2から理解され得るように、図示された走査装置70を用いた場合、照射装置60から光学素子50上に入射する光の光学素子50上での走査経路は、円形状となる。すなわち、簡易な構成の走査装置70を用いながら、光学素子50上での光の入射位置を広範囲に分布させること、言い換えると、大きく広げることができる。これにより、光学素子50の大きさを有効に利用して、被照明領域LZの各位置へ向かう照明光の入射角度範囲を大きく広げることができる。結果として、スペックルを目立たなくさせることができる。
なお、装置の大型化を回避する観点からすれば、その法線方向nd1,nd2に対して傾斜した軸Ra1,Ra2を中心として回転可能な反射面85a,95aは、走査経路に対応して、円形状の輪郭を有していることが好ましい。この例によれば、走査デバイス71,73の反射面85a,95aを有効に利用しながら、走査装置70の大型化を回避することができる。また、第2走査デバイス90の第2反射面95aが、第1走査デバイス80の第1反射面85aよりも大きくなっていることが好ましい。この例によれば、第1走査デバイス80によって光路が拡大された光を、第2走査デバイス90によって有効に反射することができる。すなわち、走査装置70によって上述した有用な光路制御を可能にしながら、走査装置70の大型化を回避することができる。
以上のように本実施の形態によれば、被照明領域LZを所望の方向から高精度に照明することができる。
上述した実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。以下、図面を参照しながら、変形の一例について説明する。以下の説明および以下の説明で用いる図面では、上述した実施の形態と同様に構成され得る部分について、上述の実施の形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いることとし、重複する説明を省略する。
上述した実施の形態では、走査装置70が、第1反射デバイス80及び第2反射デバイス90の二つを含む例を示したが、この例に限られない。図6及び図7に示すように、第2反射デバイス90を省略して、走査装置70が第1反射デバイス80のみを有するようにしてもよい。図5及び図6に示された例においては、走査装置70が、第1反射デバイス80からの反射光の光路を補正する偏向素子99を、さらに含んでいる。偏向素子99は、レンズ機能を有しており、概ね発散光束の光路を辿る第1反射デバイス80からの反射光をコリメートして、概ね平行光束の光路を辿るようにして光学素子50へ向ける。このような変形例によっても、第1反射デバイス80の第1反射部材85において、厚みが一定でない透明体75が第1反射面85aを覆うことにより、上述の実施の形態と同様の作用効果を奏することできる。
また上述した実施の形態において、光源装置61は、単一の光源62を有していた。しかしながら、この例に限られず、図8に示すように、光源装置61が、複数の光源を含むようにしてもよい。一例として、光源装置61が、複数のレーザー光源を含むレーザーアレイとして構成されていてもよい。光源装置61に含まれる複数の光源66,67,68は、互いに異なる波長帯域の光を生成するようにしてもよいし、同一波長帯域の光を生成するようにしてもよい。異なる波長帯域の光源66,67,68を用いた場合、加法混色により、単一の光源では生成することができない色の光によって、被照明領域LZを照明することができる。また、光源66,67,68が、赤色波長帯域の光、緑色波長帯域の光、青色波長帯域の光をそれぞれ生成する場合には、白色光にて被照明領域LZを照明することができる。一方、同一の波長帯域の光源66,67,68を用いた場合、高出力で被照明領域LZを照明することが可能となる。
さらに上述した実施の形態において、光学素子50が、レンズアレイ51を含んで構成される例を示したが、これに限られない。図9に示すように、光学素子50が、ホログラム記録媒体57を含むようにしてもよい。図9に示された例において、照射装置60から照射されてホログラム記録媒体57上を走査する光は、ホログラム記録媒体57上の各領域に、当該ホログラム記録媒体57の回折条件を満たすような入射角度で、入射するようになっている。照射装置60からホログラム記録媒体57の各領域に入射した光は、それぞれ、ホログラム記録媒体57で回折されて少なくとも一部分において互いに重なり合う領域を照明する。図9に示された例では、照射装置60からホログラム記録媒体57の各領域に入射した光は、それぞれ、ホログラム記録媒体57で回折されて同一の被照明領域LZを照明するようになっている。例えば、照射装置60からホログラム記録媒体57の各領域に入射した光が、それぞれ、被照明領域LZに重ねて散乱板の像を再生するようにしてもよい。
さらに上述した実施の形態では、照明装置40によって照明される被照明領域LZに空間光変調器30が配置されていたが、この例に限られない。一例として、図10及び図11に示された例では、被照明領域LZに均一化光学系37の入射面37aが配置されている。すなわち、照明装置40からの光は、均一化光学系37に入射するようになる。均一化光学系37に入射した光は、全反射を繰り返しながら均一化光学系37内を伝搬して、均一化光学系37から出射する。このような均一化光学系37の出射面37b上の各位置での照度は、均一化されることになる。均一化光学系37として、例えばインテグレータロッドを用いることができる。
図10に示された例では、空間光変調器30が、均一化光学系37の出射面37bに直面するようにして配置され、空間光変調器30が均一な光量にて照明されるようになっている。一方、図11に示された例においては、均一化光学系37と空間光変調器30との間にリレー光学系35が配置されている。この例において、リレー光学系35は、第1のレンズ35a及び第2のレンズ35bを、光路に沿ってこの順で含んでいる。リレー光学系35によって、空間光変調器30が配置されている位置は、均一化光学系37の出射面37bと共役な面となっている。このため、図11に示された例においても、空間光変調器30は、均一な光量にて照明される。また、均一化光学系37を用いずに、照明装置40によって被照明領域LZに中間像を形成し、中間像の位置は図11のインテグレータロッド37の出射面37bに対応する位置であり、リレー光学系35は、この中間像を空間光変調器30に写像する態様も可能である。
さらに、上述した実施の形態において、走査装置70の各反射デバイス80,90の駆動装置81,91として、軸部材83,93を有するモータを例示した。しかしながら、この例に限られず、駆動装置81,91として、反射部材80,90が接続可能な種々の装置、機構、部品、部材等を用いることができる。例えば、アウターロータモータ、シャフトレスモータ、フレームレスモータ等を、反射部材80,90を駆動する駆動装置81,91として用いることができる。
さらに、上述した実施の形態において、照明装置40が、投射装置20及び投射型映像表示装置10に組み込まれた例を示したが、これに限られず、スキャナ用の照明装置等、種々の用途に適用され得る。
なお、以上において上述した実施の形態に対するいくつかの変形例を説明してきたが、当然に、複数の変形例を適宜組み合わせて適用することも可能である。