[エンジンの概略構成]
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態に係るターボ過給機付エンジンを詳細に説明する。先ずは、当該エンジンの概略構成について説明する。図1は、本発明の実施形態に係るターボ過給機付エンジン1の斜視図、図2は、エンジン1のターボ過給機3の部分を一部破断して示す斜視図である。図1、図2及び他の図面において、前後、左右、上下の方向表示を付している。これは説明の便宜のためであり、実際の方向を必ずしも示すものではない。
ターボ過給機付エンジン1は、多気筒型のエンジン本体10と、エンジン本体10の左側面に連結された排気マニホールド14と、図略の吸気マニホールドと、エンジン本体10の左方に隣接して配置されたターボ過給機3とを含む。図1では除去した状態を示しているが、排気マニホールド14の周囲はマニホールドインシュレータ15で囲まれ、エンジン本体10の左側面はエンジン本体インシュレータ16で覆われ、ターボ過給機3の周囲はターボインシュレータ17で覆われている。
エンジン本体10は、直列四気筒のディーゼルエンジンであり、シリンダブロック11と、シリンダブロック11の上面に取り付けられたシリンダヘッド12と、シリンダヘッド12の上方に配置されたシリンダヘッドカバー13とを備えている。シリンダブロック11は、燃料の燃焼室を形成する4つの気筒2(図9参照)を備えている。
排気マニホールド14は、各気筒2の排気ポート25(図5参照)から排出される排気ガスを一つの流路に集合させるマニホールド通路を内部に備えている。排気マニホールド14の入気側はシリンダヘッド12に連結され、出気側はターボ過給機3に接続されている。前記吸気マニホールドは、一つの吸気通路から各気筒2の吸気ポート24に吸気を供給するマニホールド通路を内部に備えている。
ターボ過給機3は、エンジン本体10の左後方の側部に隣接して配置され、エンジン本体10から排出される排気エネルギーを利用して、エンジン本体10へ導入される吸気を過給する装置である。ターボ過給機3は、エンジン本体10の全回転域において動作して吸気を過給する大型ターボ部3Aと、低速回転域で主に動作して吸気を過給する小型ターボ部3Bとを備えている。本実施形態では、大型ターボ部3Aの下方に小型ターボ部3Bが連設されている。大型ターボ部3A及び小型ターボ部3Bは各々、前方側に配置されるタービン室と、後方側に配置されるコンプレッサ室とを備える。ターボ過給機3内には、前記各タービン室を経由し、エンジン本体10から排気が供給される排気通路と、前記各コンプレッサ室を経由し、エンジン本体10へ供給される吸気が流通する吸気通路とが備えられている。つまり、前記各タービン室はエンジン本体10の排気経路に、前記各コンプレッサ室はエンジン本体10の吸気経路に、各々組み込まれている。
マニホールドインシュレータ15は、高温の排気が流通する排気マニホールド14から発せられる熱によって周辺部品が熱害を受けないよう遮熱するインシュレータである。エンジン本体インシュレータ16は、排気マニホールド14及びターボ過給機3から発せられる熱から、シリンダヘッドカバー13、ハーネス、センサ類を保護する。ターボインシュレータ17は、同じく高温の排気が流通するターボ過給機3のタービン室の周囲を覆い、周辺部品の熱害を抑止するインシュレータである。
[ターボ過給機の外観構成]
図3は、ターボ過給機3の斜視図、図4は、ターボ過給機3の側面図である。大型ターボ部3Aは、前方側に配置された大型タービンケース31T(タービンケース)と、後方側に配置された大型コンプレッサケース31C(コンプレッサケース)とを備える。同様に、小型ターボ部3Bは、前方側に配置された小型タービンケース32Tと、後方側に配置された小型コンプレッサケース32Cとを備える。各々、大型タービンケース31Tの下方に小型タービンケース32Tが、大型コンプレッサケース31Cの下方に小型コンプレッサケース32Cが配置されている。
大型タービンケース31Tは、排気通路に連通する大タービン室33(図5)を区画する。大型タービンケース31Tは、板金製のケースからなる板金ハウジング311と、板金ハウジング311の下端を支持する上フランジ部312と、ターボ過給機3からの排気の出口となる排気口を備えた排気側フランジ部313とを含む。排気側フランジ部313には、排気通路の下流側配管が接続される。
小型タービンケース32Tは、排気通路に連通する小タービン室35(図5)を区画する。小型タービンケース32Tは、鋳鉄性のケースからなるハウジングであり、排気通路の上流側には排気導入フランジ部321が、下流側には下フランジ部322が一体的に備えられている。排気導入フランジ部321は、排気マニホールド14との連結を行うためのフランジ部であり、ターボ過給機3への排気の入口となる排気導入口51Aが形成されている。下フランジ部322は、大型タービンケース31Tとの連結を行うためのフランジ部である。
大型タービンケース31Tの上フランジ部312の下面からは、フランジスタッド312Aが下方に向けて突設されている。一方、小型タービンケース32Tの下フランジ部322には、フランジスタッド312Aを受容する貫通孔が備えられている。下フランジ部322の上に上フランジ部312が載置され、フランジスタッド312Aを利用して両者がボルト締結されることによって、大型タービンケース31Tと小型タービンケース32T(大型ターボ部3Aと小型ターボ部3B)とが一体化されている。
大型コンプレッサケース31Cは、吸気通路に連通する大コンプレッサ室34(図5)を区画する。大型コンプレッサケース31Cは、例えばアルミニウム製のケースからなり、吸気導入フランジ部314、大スクロール部315及び第1カップリング部316を含む。吸気導入フランジ部314は、ターボ過給機3への吸気の入口となる吸気導入口45Aが形成されたフランジ部である。大スクロール部315は、大コンプレッサ室34の一部を形成し、大コンプレッサ34B(図5)の周囲に渦巻き状の吸気通路を形成する部分である。第1カップリング部316は、大スクロール部315の下流端に位置し、その内径が大スクロール部315の上流部分よりも拡径された円筒型の部分である。第1カップリング部316は、下方に向けて開口しており、大型コンプレッサケース31Cからの吸気の出口となる。
小型コンプレッサケース32Cは、吸気通路に連通する小コンプレッサ室36(図5)を区画する。上記の大コンプレッサ室34は、吸気通路においてこの小コンプレッサ室36よりも上流側に配置されている。小型コンプレッサケース32Cは、例えばアルミニウム製のケースからなり、第2カップリング部323、小スクロール部324、下流ハウジング325及び吸気吐出フランジ部326を含む。
第2カップリング部323は、小型コンプレッサケース32Cへの吸気の入口となる円筒型の部分であり、上方に向けて開口している。第2カップリング部323は、第1カップリング部316と同じ内径を有する円筒体であり、両カップリング部316、323は、両者の開口が上下方向に正対するように配置されている。第2カップリング部323の下流側は、小コンプレッサ室36の入口に連通している。
両カップリング部316、323間は、円筒管からなるコールドデカップラ317が介在されている。コールドデカップラ317は、可撓性を有する円筒管の外周面にフッ素ゴム等のシール層を有するカップリングパイプである。コールドデカップラ317の上端部分は、第1カップリング部316に気密に内挿され、下端部分は第2カップリング部323に気密に内挿され、中間部分は外部に露出している。
小スクロール部324は、小コンプレッサ室36の一部を形成し、小コンプレッサ36B(図5)の周囲に渦巻き状の吸気通路を形成する部分である。下流ハウジング325は、小スクロール部324の下流側の吸気通路や小コンプレッサ室36をバイパスする吸気通路(吸気バイパス通路49)を形成している。吸気吐出フランジ部326は、ターボ過給機3への吸気の出口となる吸気吐出口48Aが形成されているフランジ部である。
[エンジンの内部的構成]
図5は、ターボ過給機付エンジン1及びその周辺部品の構成と、吸気及び排気のフローとを模式的に示す図である。エンジン1は、エンジン本体10と、エンジン本体10に燃焼用の空気を導入するための吸気通路P1と、エンジン本体10で生成された燃焼ガス(排気)を排出するための排気通路P2と、これら吸気通路P1及び排気通路P2の一部を各々構成する通路を備えたターボ過給機3と、排気通路P2の下流端付近に配置された排気浄化装置70と、吸気通路P1と排気通路P2との間に配置されたEGR(Exhaust Gas Recirculation)装置80とを備えている。
エンジン本体10の各気筒2には、ピストン21、燃焼室22、クランク軸23、吸気ポート24、排気ポート25、吸気弁26及び排気弁27が備えられている。図5では、1つの気筒2が示されている。ピストン21は、気筒2内に往復運動可能に収容されている。燃焼室22は、気筒2内においてピストン21の上方に形成されている。燃焼室22には、図略のインジェクタからディーゼル燃料が噴射される。前記インジェクタから噴射された燃料は、吸気通路P1から供給される空気と混合して燃焼室22内で自着火する。ピストン21は、この燃焼による膨張力で押し下げられて上下方向に往復運動する。
クランク軸23は、エンジン本体10の出力軸であり、ピストン21の下方に配設されている。ピストン21とクランク軸23とは、コネクティングロッドを介して互いに連結されている。クランク軸23は、ピストン21の往復運動に応じて、その中心軸回りに回転する。吸気ポート24は、吸気通路P1から供給される空気(吸気)を気筒2に導入する開口である。排気ポート25は、気筒2内での燃料の燃焼によって生成された排気を排気通路P2に導出するための開口である。吸気弁26は、吸気ポート24を開閉する弁であり、排気弁27は排気ポート25を開閉する弁である。
吸気通路P1には、吸気のフローの上流側から順に、エアクリーナ41、ターボ過給機3のコンプレッサ部(大コンプレッサ室34及び小コンプレッサ室36)、インタークーラ42及びスロットルバルブ43が設けられている。吸気通路P1の下流端は、前記吸気マニホールドを介して吸気ポート24に接続されている。エアクリーナ41は、吸気通路P1に取り入れる空気を浄化する。インタークーラ42は、吸気ポート24を通して燃焼室22に送る吸気を冷却する。スロットルバルブ43は、燃焼室22に送る吸気の量を調整するバルブである。なお、吸気通路P1においてターボ過給機3の上流側には、ブローバイガスを燃焼室22に送るブローバイ還流路411が接続されている。吸気は、後記で詳述するターボ過給機3の前記コンプレッサ部を通過する際に過給される。
排気通路P2の上流端は、排気マニホールド14を介して、排気ポート25に接続されている。排気通路P2には、排気のフローの上流側から順に、ターボ過給機3のタービン部(小タービン室35及び大タービン室33)、排気浄化装置70が設けられている。排気浄化装置70は、排気中のNOxを一時的に吸蔵し後に還元するNOx吸蔵還元触媒を含む触媒装置71と、排気中の粒子状物質を捕集するDPF(Diesel Particulate Filter)72とからなる。排気が有する運動エネルギーは、当該排気がターボ過給機3の前記タービン部を通過する際に回収される。
EGR装置80は、エンジン本体10から排出された排気の一部(EGRガス)を吸気に還流させるための装置である。EGR装置80は、排気通路P2と吸気通路P1とをそれぞれ連通させる第1EGR通路81及び第2EGR通路84と、これら通路81、84を各々開閉する第1EGRバルブ82及び第2EGRバルブ85とを有する。第1EGR通路81には、EGRクーラ83が設けられている。EGRガスは、第1EGR通路81の通過途中にEGRクーラ83により冷却されて、その後、吸気通路P1に流入する。一方、第2EGR通路84にはEGRクーラは設けられておらず、EGRガスは高温のまま吸気通路P1に流入可能である。第1、第2EGR通路81、84は、排気通路P2のターボ過給機3よりも上流側の部分と、吸気通路P1のスロットルバルブ43よりも下流側の部分とを連通している。従って、ターボ過給機3の前記タービン部へ導入される前の排気が、吸気と共に吸気ポート24に供給される。
[ターボ過給機の詳細]
続いて、本実施形態に係るターボ過給機3の詳細構造について、図3〜図5を参照して説明する。既述の通りターボ過給機3は、中速〜高速回転域動作用の大型ターボ部3Aと低速回転域動作用の小型ターボ部3Bとを備える。大型ターボ部3Aは、大タービン室33及び大コンプレッサ室34を備える。同様に、小型ターボ部3Bは、小タービン室35及び小コンプレッサ室36を備える。大タービン室33及び小タービン室35は排気通路P2に連通しており、大コンプレッサ室34及び小コンプレッサ室36は吸気通路P1に連通している。
大タービン室33には大タービン33Tが、大コンプレッサ室34には大コンプレッサ34B(コンプレッサ)が、各々内蔵されている。大タービン33Tと大コンプレッサ34Bとは、大タービン軸37(タービン軸)で連結されている。大タービン軸37は、大タービン室33と大コンプレッサ室34との間に延び、大タービン軸37の一端に大タービン33Tが取り付けられ、他端に大コンプレッサ34Bが取り付けられている。大タービン33Tは、排気のフロー(運動エネルギー)を受け取り、大タービン軸37の軸回り回転する。大コンプレッサ34Bは、同じく大タービン軸37の軸回りに回転して吸気を圧縮(過給)する。大タービン33Tが排気の運動エネルギーを受けて回転すると、大コンプレッサ34Bも大タービン軸37の軸回りに一体回転する。
本実施形態では、大コンプレッサ34Bに対向する位置に回転センサ91が配置されている。回転センサ91は、大タービン軸37の回転数に応じた電気信号を発生するセンサである。本実施形態では、回転センサ91は、大タービン軸37に直結された大コンプレッサ34Bの扇車の動きを電気的に検出するセンサであり、該回転センサ91の出力電気信号に基づいて大タービン軸37の回転数が求められる。回転センサ91の配置及びその周辺機器装置等については、図8に基づき、後記で詳述する。
大タービン33Tとしては、複数の翼を有しこれら翼に排気が衝突することで大タービン軸37の軸回りに回転するインペラを用いることができる。この大タービン33Tは、排気の流速(タービン容量)を変更する可変ベーン機構39が付設されたVGT(Variable Geometry Turbocharger)仕様とされている。可変ベーン機構39は、大タービン33Tの外周部に配置され、角度変更が可能な複数のノズルベーンを含む。前記ノズルベーンの角度が調整されることによって、大タービン33Tに流入する排気の流路面積が変更され、これにより排気の流速が調整される。前記ノズルベーンの角度は、VGTアクチュエータ39Aによって調整される。
小タービン室35には小タービン35Tが、小コンプレッサ室36には小コンプレッサ36Bが、各々内蔵されている。小タービン35Tと小コンプレッサ36Bとは、小タービン軸38で連結されている。小タービン軸38は、小タービン室35と小コンプレッサ室36との間に延び、小タービン軸38の一端に小タービン35Tが取り付けられ、他端に小コンプレッサ36Bが取り付けられている。小タービン35Tは、排気の運動エネルギーを受け取り、小タービン軸38の軸回り回転する。小コンプレッサ36Bは、同じく小タービン軸38の軸回りに回転して吸気を圧縮(過給)する。小タービン35Tが排気の運動エネルギーを受けて回転すると、小コンプレッサ36Bも小タービン軸38の軸回りに一体回転する。本実施形態では、小タービン35Tとして、流入する排気の流速を変更不能な、いわゆるFGT(Fixed Geometry Turbocharger)が用いられている。
大タービン33Tの容量は小タービン35Tの容量よりも大きく、また、大コンプレッサ34Bの容量は小コンプレッサ36Bの容量よりも大きく設定されている。これにより、大型ターボ部3Aは、小型ターボ部3Bよりも大きな流量の排気によって大タービン33Tを回転させ、大コンプレッサ34Bの回転によってより大きな流量の吸気を過給することが可能である。
ターボ過給機3には、その機内において吸気通路P1の一部を担う通路として、過給機内吸気通路44が備えられている。過給機内吸気通路44は、吸気導入通路45、コンプレッサ間通路46、下流通路47、出口通路48及び吸気バイパス通路49を含む。吸気導入通路45は、ターボ過給機3内において最も上流側の吸気通路であり、大タービン軸37の軸方向から大コンプレッサ室34内の大コンプレッサ34Bに向かう通路である。コンプレッサ間通路46は、大コンプレッサ34Bの外周のスクロール部(大スクロール部315)から、小コンプレッサ室36内の小コンプレッサ36Bの軸心へ向けて吸気を案内する通路である。上述の第1カップリング部316、第2カップリング部323及びコールドデカップラ317は、コンプレッサ間通路46の一部を形成している。
下流通路47は、小コンプレッサ36Bの外周のスクロール部(小スクロール部324)から、出口通路48に向かう通路である。出口通路48は、ターボ過給機3内において最も下流の吸気通路であり、インタークーラ42に接続される通路である。このように、吸気のフローにおいて、大コンプレッサ34Bが小コンプレッサ36Bの上流側に配置されている。
吸気バイパス通路49は、小コンプレッサ室36をバイパスする通路、すなわち、小コンプレッサ36Bに吸気を与えることなく、吸気を下流に導く通路である。具体的には吸気バイパス通路49は、大コンプレッサ室34と小コンプレッサ室36とを繋ぐコンプレッサ間通路46の途中から分岐し、下流通路47と共に出口通路48に合流している。吸気バイパス通路49には、該通路49を開閉する吸気バイパス弁491が配置されている。上述の下流ハウジング325は、下流通路47及び吸気バイパス通路49を主に区画するハウジングである。
吸気バイパス弁491が全閉となり吸気バイパス通路49を閉鎖している状態では、吸気の全量が小コンプレッサ室36に流入する。一方、吸気バイパス弁491が開弁している状態では、吸気の多くは小コンプレッサ室36をバイパスし、吸気バイパス通路49を通して下流側に流れる。すなわち、小コンプレッサ室36に収容されている小コンプレッサ36Bは、吸気のフローに対して抵抗となるため、吸気バイパス弁491が開弁している状態では、吸気の多くはより抵抗の小さい吸気バイパス通路49に流入する。吸気バイパス弁491は、負圧式のバルブアクチュエータ492により開閉される。
ターボ過給機3には、その機内において排気通路P2の一部を担う通路として、過給機内排気通路50が備えられている。過給機内排気通路50は、排気導入通路51、連絡通路52、小スクロール通路53、ターボ間通路54、大スクロール通路55、排出通路56及び排気バイパス通路57を含む。排気導入通路51、連絡通路52及び小スクロール通路53は小型タービンケース32T内に形成される通路、大スクロール通路55及び排出通路56は大型タービンケース31T内に形成される通路、ターボ間通路54及び排気バイパス通路57は両ケース31、32に跨って形成される通路である。本実施形態では、小タービン35T(即ち小タービン室35)が、排気通路P2において大タービン33T(即ち大タービン室33)の上流側に配置されている。
排気導入通路51は、ターボ過給機3内において最も上流側の排気通路であり、エンジン本体10側から排気を受け入れる通路である。連絡通路52は、排気導入通路51の下流に連なり、排気を小タービン室35に向けて導く通路である。小スクロール通路53は、小タービン室35の一部を形成しており、小タービン35Tへ向けて排気を導く通路である。連絡通路52の下流端は、小スクロール通路53の上流部に連なっている。小スクロール通路53は、小タービン35Tの外周を周回するように配置された渦巻き状の通路であり、下流に向けて流路幅が徐々に狭くなっている。排気は、小スクロール通路53から小タービン35Tの径方向中心に向けて流入し、小タービン35Tを小タービン軸38の軸回りに回転させる。
ターボ間通路54は、小タービン35Tと大スクロール通路55の上流部とを繋ぐ通路である。ターボ間通路54の上流部分は、小タービン室35から小タービン35Tの軸方向に延び出す部分であり、下流部分は、大スクロール通路55の上流部に連なる部分である。小タービン35Tの外周から径方向内側に流入し小タービン35Tに対して膨張仕事を為した排気は、ターボ間通路54から取り出され、大タービン33Tに向かうことになる。
大スクロール通路55は、大タービン室33の一部を形成しており、大タービン33Tへ向けて排気を導く通路である。大スクロール通路55は、大タービン33Tの外周を周回するように配置された渦巻き状の通路であり、下流に向けて流路幅が徐々に狭くなっている。排気は、大スクロール通路55から大タービン33Tの径方向中心に向けて流入し、大タービン33Tを大タービン軸37の軸回りに回転させる。排出通路56は、ターボ過給機3内において最も下流の排気通路であり、大タービン室33から大タービン33Tの軸方向に延び出している。大タービン33Tの外周から径方向内側に流入し大タービン33Tに対して膨張仕事を為した排気は、排出通路56から取り出される。排出通路56の下流端は、排気側フランジ部313に設けられた開口であり、下流の排気浄化装置70に至る排気通路に接続される。
排気バイパス通路57は、小タービン室35をバイパスする通路、すなわち、小タービン35Tに排気を作用させることなく、排気を下流(大タービン33T)に導く通路である。具体的には排気バイパス通路57は、排気導入通路51と連絡通路52との間から分岐し、大スクロール通路55の上流部に合流しており、小スクロール通路53及びターボ間通路54をバイパスしている。排気バイパス通路57には、該通路57を開閉する排気バイパス弁6が配置されている。排気バイパス弁6は、実際に排気バイパス通路57を開閉する弁本体61と、弁本体61を動作させるバルブアクチュエータ6Aとを含む。
排気バイパス弁6(弁本体61)が全閉となり排気バイパス通路57を閉鎖している状態では、排気の全量が小タービン室35に流入する。なお、EGR装置80が作動して、EGRガスの還流が実施されている場合は、エンジン本体10から排出された排気から前記EGRガスを除いたガスの全量が、小タービン室35に流入する。一方、排気バイパス弁6が開弁している状態では、排気の多くは小タービン室35をバイパスして下流側の大タービン室33(大スクロール通路55)に流れ込む。すなわち、小タービン室35に収容されている小タービン35Tは、排気のフローに対して抵抗となるため、排気バイパス弁6が開弁している状態では、排気の多くはより抵抗の小さい排気バイパス通路57に流入する。つまり、排気は、小タービン35Tを通過せずに下流側に流れる。
換言すると、排気バイパス弁6が如何に動作しようとも、排気は必ず大タービン室33の大タービン33Tを通過する。つまり、常に大型ターボ部3Aが動作して吸気の過給を行わせることができるので、ターボ過給機3による吸気の過給圧を高くし、エンジンシステム全体でのエネルギー効率を高めることができる。
[ターボ過給機の動作]
ターボ過給機3は、エンジン本体10の低速回転域においては、小型ターボ部3B及び大型ターボ部3Aが協働して吸気を過給し、エンジン本体10の中速から高速回転域においては大型ターボ部3Aが吸気を過給する。
排気バイパス弁6は、エンジン本体10が低速回転域で動作している場合には全閉とされ、連絡通路52及び小スクロール通路53を通して小タービン35Tに排気が供給される。小タービン35Tはイナーシャが小さいため、たとえ排気流量が小さくても早期に回転数が上昇し、小コンプレッサ36Bによる過給力を高めることができる。その後、排気は、ターボ間通路54及び大スクロール通路55を通過し、大タービン33Tに供給される。すなわち、低速回転域では大タービン33T及び小タービン35Tの双方が回転し、これに伴い大コンプレッサ34B及び小コンプレッサ36Bも回転する。従って、大型ターボ部3A及び小型ターボ部3Bの双方が動作して、吸気を過給することができる。
この際、大タービン33Tに付設されている可変ベーン機構39のノズルベーン開度は小さく設定される。すなわち、図略の制御装置は、VGTアクチュエータ39Aが図略のノズルベーンを所定角度だけ回動させ、排気の流路面積が小さくなるように制御する。これにより、大タービン33Tに流入する排気の流速が高められ、低速回転域における大コンプレッサ34Bによる過給力を高めることができる。
一方、エンジン本体10が中速〜高速回転域で動作している場合に、排気バイパス弁6は全開とされ、排気は排気バイパス通路57を通して専ら大タービン33Tに供給される。つまり、排気のフロー抵抗を極力抑えて、大タービン33Tに排気を供給することができるので、エネルギー効率を高めることができる。この際、可変ベーン機構39のノズルベーン開度は、予め設定された所定の過給圧を得るための基本ベーン開度とされる。
バルブアクチュエータ6Aは、電動式のアクチュエータ装置からなり、弁本体61を単純に開閉させるだけでなく、全閉から全開の間で弁本体61の開度を調整することが可能である。弁本体61の開度は、運転条件毎に、過給圧が目標の圧力になるように設定される。目標の過給圧及び弁本体61の開度は、エンジン回転数とエンジン負荷とによって予め設定されている。バルブアクチュエータ6Aは、その設定に従い、弁本体61の開度を制御する。
次に、吸気のフローについて説明する。図6は、低速回転域におけるターボ過給機3内の吸気フローを、図7は、中速から高速回転域におけるターボ過給機3内の吸気フローを各々示した、ターボ過給機3の側面図である。低速回転域では、図6において矢印F0で示すように、吸気は吸気導入口45Aを通して大型コンプレッサケース31C(大コンプレッサ室34)内に入る。このときの吸気のフロー方向は、大コンプレッサ34Bの回転軸(大タービン軸37)に向かう方向である。
大タービン33Tに連動して大コンプレッサ34Bが軸回りに回転している場合、吸気は過給される。吸気は、矢印F1で示すように、大コンプレッサ34Bの外周をスクロールした後に下方に向かい、コールドデカップラ317を通して小型コンプレッサケース32Cに流れ込む。その後、矢印F21で示すように、吸気は小コンプレッサ36Bの回転軸(小タービン軸38)に向かうように小コンプレッサ室36に入り、小コンプレッサ36Bによって過給される。続いて吸気は、小コンプレッサ36Bの外周の小スクロール部324を経て、下流ハウジング325に向かう。そして、矢印F3で示す通り、吸気は吸気吐出フランジ部326の吸気吐出口48Aを通して、ターボ過給機3の外部に吐出される。
中速から高速回転域では、吸気バイパス弁491が全閉となり吸気バイパス通路49を閉鎖するので、吸気のフロー経路は、小コンプレッサ室36に入った後の経路が低速回転域とは異なるものとなる。すなわち、図7において、矢印F0及び矢印F1の経路は、図6と同じである。しかし、小型コンプレッサケース32Cに入り込んだ後、矢印F22で示すように、吸気は小コンプレッサ室36へは向かわず、下流ハウジング325内の吸気バイパス通路49を通過する。そして、矢印F3で示す通り、吸気は吸気吐出口48Aを通してターボ過給機3の外部に吐出される。
[回転センサ及びその周辺機器の詳細]
図8は、回転センサ91及びその周辺機器を示し、且つ回転センサ91の大型コンプレッサケース31Cへの取り付け状態を示す断面図である。ターボ過給機付エンジン1は、大タービン軸37の回転数を検出するために、回転センサ91と、回転センサ91が出力する電気信号を増幅するアンプ92と、アンプ92が出力する電気信号に基づいて大タービン軸37の回転数を導出するECU(Engine Control Unit)93とを備える。回転センサ91とアンプ92とは、シールドケーブル94によって電気的に接続されている。アンプ92とECU93とは、信号ケーブル95によって電気的に接続されている。
回転センサ91は、大タービン軸37の回転数を検出するセンサである。大タービン軸37の回転数を回転センサ91によってモニターすることによって、オーバーシュートによるタービンの破損等が未然に防止される。また、回転数のモニターにより、オーバーシュートを回避する安全マージンを小さくでき、ターボ過給機3が保有する能力を最大限に生かして過給性能を高めることができる。
本実施形態では、回転センサ91として渦電流式変位センサが用いられている。一般に、大コンプレッサ34Bの扇車341は、金属製の複数枚(例えば8枚)の扇車羽根を備えている。回転センサ91は、これら扇車羽根に高周波磁界を作用させて渦電流を発生させることにより、前記扇車羽根の回転移動を検知する。
既述の通り、大型コンプレッサケース31Cは大コンプレッサ室34を区画しており、大コンプレッサ室34には大タービン軸37の一端に連結された大コンプレッサ34Bが収容されている。大コンプレッサ34Bに対して、大タービン軸37の軸方向に延びる吸気導入通路45より吸気が供給される。本実施形態では、大型コンプレッサケース31Cの適所に、ケース表面の座部31Jから大コンプレッサ室34へ貫通する検知孔31Hが穿孔されている。穿孔位置は、扇車341に対向する位置である。この検知孔31Hに回転センサ91が取り付けられる。
回転センサ91は、基部911と、基部911から一方向に延びるセンサロッド912と、センサロッド912の突出端に位置する先端感応部913とを備える。基部911は、座部31Jに載置される部分であり、固定ネジ914によって大型コンプレッサケース31Cに固定されている。センサロッド912は、基部911に保持された状態で検知孔31Hに挿通される部分であり、検知孔31Hと略同じ長さを備えている。先端感応部913の内部には、高周波電流が流されるセンサコイルが内蔵されている。先端感応部913は、扇車341の最突出部分に対して所定の微小ギャップを介して対向している。前記最突出部分は、前記扇車羽根の一部である。
先端感応部913のセンサコイルに高周波電流が通電されると、その周囲には高周波磁界が発生する。大コンプレッサ34Bの回転によって、前記高周波磁界に一の扇車羽根が接近すると、前記扇車羽根には渦電流が発生し前記センサコイルのインピーダンスが変化する。回転センサ91は、このインピーダンス変化に相当する微弱なパルス(電気信号)を出力する。扇車341が8枚の扇車羽根を備えている場合、大コンプレッサ34Bの1回転当たり、回転センサ91は8個のパルスを出力する。従って、回転センサ91が出力するパルス数を計測することにより、大タービン軸37の回転数を知見することができる。
なお、回転センサ91は、大タービン軸37よりも上方側において、大型コンプレッサケース31Cに取り付けられることが望ましい。図8に示す通り、吸気導入通路45にはブローバイ還流路411が合流している。ブローバイ還流路411から吸気通路に導入されるブローバイガスは、水分を含むことがある。このため、大コンプレッサ室34の大タービン軸37よりも下方側の内壁面には、重力によって水分が表出することが起こり得る。このため、仮に検知孔31Hを、大タービン軸37よりも下方側において大型コンプレッサケース31Cに穿孔すると、当該検知孔31Hに水分が滞留し、回転センサ91の検知精度を低下させる懸念がある。従って図8に示す通り、回転センサ91は、大コンプレッサ34Bの上方側に対向するように配置することが望ましい。
アンプ92は、回転センサ91が出力するパルスを増幅すると共に分周する機能を備えている。回転センサ91の出力パルスは、上述の通り微弱であると共に、大タービン軸37の回転数(十数万rpm程度)に応じた周波数のパルスとなる。このため、前記出力パルスは、そのままではノイズの影響を受け易く、あまりに周波数が高すぎてECU93での処理用には適合しない。この点に鑑み、アンプ92は、前記出力パルスを1/100〜1/500程度の周波数に分周すると共に、所定の信号強度に増幅する。アンプ92は、前記分周及び前記増幅のための電気回路を構成する電子部品等が、半田付けにて搭載されたプリント基板を備えている。
ECU93は、エンジン1から離間した位置に配置されたマイクロコンピュータ等からなり、アンプ92から出力される電気信号を受信する。ECU93は、前記電気信号に基づき所定の演算処理を行い、大タービン軸37の回転数を導出する。
シールドケーブル94は、信号線や高周波給電線の撚線体の周囲に、半導電層や金属箔の巻回層等からなるノイズシールド層を備えたケーブルである。回転センサ91とアンプ92との間においては、微弱な出力パルスを伝送させる必要があるので、該出力パルスが外来ノイズの混入によって影響を受けないよう、ノイズを遮蔽する必要がある。このため、回転センサ91とアンプ92との間は、シールドケーブル94にて前記出力パルスの伝送が行われる。
信号ケーブル95は、信号伝送用の信号線を含む一方で、ノイズシールド層を具備しないケーブルである。アンプ92とECU93との間は、アンプ92によって分周され且つ増幅されたパルスが伝送される。このようなパルスは、耐ノイズ性に優れる。従って、アンプ92とECU93との間は、ノイズ遮蔽の要さずパルス伝送が行えるので、信号ケーブル95が用いられる。
[回転センサ及びアンプの配置位置について]
続いて、回転センサ91及びアンプ92のターボ過給機3における配置位置について説明する。図9は、大、小タービン軸37、38の配置関係を示す模式的な上面図、図10は、ターボ過給機3及び排気浄化装置70の左後方からの斜視図、図11は、ターボ過給機3を、コンプレッサ室側から見た側面図である。
図9に示されているように、ターボ過給機3の大型ターボ部3Aには、吸気導入管40が接続されている。吸気導入管40は、エアクリーナ41(図5)と大型ターボ部3Aの吸気導入口45Aとを接続する管部材である。図中に矢印で示すように、この吸気導入管40を通して、エアクリーナ41によって浄化された吸気が大型ターボ部3Aの大コンプレッサ室34に供給される。
エンジン本体10において直列に配置された4つの気筒2の配列方向は、エンジン本体10前後方向であって、エンジン出力軸(クランク軸23)も前後方向に延びている。図9には、前記エンジン出力軸の延在方向に相当する直線L1(以下、エンジン出力軸L1という)が示されている。エンジン本体10は、上面視で大略的に前後方向に長い矩形の形状を有している。ターボ過給機3は、エンジン本体10の左側面10Lに隣接して配置されている。
図9では、大型ターボ部3Aの大タービン室33及び大コンプレッサ室34と、これら両室間に延びる大タービン軸37、また、小型ターボ部3Bの小タービン室35及び小コンプレッサ室36と、これら両室間に延びる小タービン軸38が模式的に描かれている。さらに、大タービン軸37の軸線に相当する直線L2と、小タービン軸38の軸線に相当する直線L3とが各々描かれている(以下、大ターボ軸L2、小ターボ軸L3という)。大ターボ軸L2及び小ターボ軸L3は、大略的にエンジン出力軸L1と同じく前後方向に延びように配置されている。
本実施形態では、気筒2の軸方向における平面視において、大ターボ軸L2及び小ターボ軸L3とは、互いに平行であって、いずれもエンジン出力軸L1と平行となるように、大型、小型ターボ部3A、3Bがエンジン本体10に対して組み付けられている。また、エンジン出力軸L1に対して大タービン軸37が小タービン軸38よりも遠い側に配置されている。図9に模式的に示す通り、回転センサ91及びアンプ92は、エンジン本体10(エンジン出力軸L1)に対して大タービン軸37よりもさらに遠い位置において、大コンプレッサ室34を区画する大型コンプレッサケース31Cに取り付けられている。
なお、大ターボ軸L2及び小ターボ軸L3のいずれか又は双方が、大略的には前後方向に延びつつも、エンジン出力軸L1に対して所定の傾きを持つような配置としても良い。例えば、大ターボ軸L2と小ターボ軸L3が、大、小タービン軸37、38の軸範囲内において、若しくは、軸範囲外において、大、小コンプレッサ室34、36側で交差する態様としても良い。
図10及び図11には、回転センサ91及びアンプ92の具体的な配置例が示されている。吸気が導入される大型コンプレッサケース31Cは、高温の排気が導入される大型タービンケース31T(図10では、ターボインシュレータ17で覆われているため表出していない)に比べて低温である。回転センサ91及びアンプ92は、このような大型コンプレッサケース31Cの外表面に、概ね同じ高さ位置において左右方向(水平方向)に並ぶように取り付けられている。アンプ92は、エンジン本体10に対して回転センサ91よりも遠い側に配置されている。両者を繋ぐシールドケーブル94は、上方に凸となるように湾曲された状態で、回転センサ91の出力端とアンプ92の入力端とを接続している。
図10には、回転センサ91及びアンプ92と排気浄化装置70との配置関係が示されている。排気浄化装置70の触媒装置71及びDPF72にも高温の排気が流通し、これらは高温の熱を発する。本実施形態では、排気浄化装置70は大型タービンケース31Tの前方側に配置され、大型コンプレッサケース31Cとは離間している。従って、大型コンプレッサケース31Cに取り付けられる回転センサ91及びアンプ92は、排気浄化装置70からの熱の影響を受け難い。
図11には、大タービン軸37を通り、気筒2の軸方向に延びる仮想線Wが示されている。回転センサ91及びアンプ92は、エンジン本体10に対して仮想線Wよりも遠い側に配置されている。仮想線Wよりもエンジン本体10に近い側は、エンジン本体10又は排気マニホールド14が発する熱の影響を受け易い領域である。回転センサ91及びアンプ92は、このような領域を避けて、エンジン本体10に対して仮想線Wよりも遠い側であってVGTアクチュエータ39Aの上方位置において、大型コンプレッサケース31Cに取り付けられている。
[アンプの取り付け構造の詳細]
図11に示されているように、アンプ92は、ブラケット96を介して大型コンプレッサケース31Cに取り付けられている。図12及び図13は、回転センサ91及びアンプ92の取り付け部分の拡大斜視図である。これらの図を参照して、アンプ92の取り付け構造について詳述する。
アンプ92は、電子部品等が搭載されたプリント基板を内蔵するアンプ本体921と、アンプ本体921の側方に突設された固定片922と、アンプ本体921の一端側及び他端側に各々取り付けられた入力ポート923及び出力ポート924とを備える。シールドケーブル94は、入力ポート923(入力端)と回転センサ91の基部911に連なるコネクタ部915(出力端)とを接続している。信号ケーブル95は、出力ポート924から延び出している。
ブラケット96は、大型コンプレッサケース31Cに取り付けられ、アンプ92を支持するための部材である。ブラケット96は、大型コンプレッサケース31Cの表面に対して固定される固定部961と、該固定部961から延び出す支持部962とを有する。ブラケット96は矩形平板状の板金部材からなり、その板金部材の一端側が固定部961、他端側が支持部962であって、両者間に設けられる曲げ部96Aで前記板金部材が折曲されることによって、固定部961と支持部962とに区分されている。
ブラケット96は、前記一端側の固定部961において大型コンプレッサケース31Cの表面と接触し、前記他端側の支持部962と大型コンプレッサケース31Cの表面との間には空間G(図13)が形成される、片持ち支持型のブラケットである。固定部961は、大型コンプレッサケース31Cに設けられたネジ孔を有するボス部31CAに位置合わせされ、第1ネジ963によって当該ボス部31CAに締結固定されている。支持部962は、このように固定された固定部961から、上記の空間Gを背面側に有する状態で、エンジン本体10から遠ざかる方向に延び出している。
アンプ92は、支持部962の表面側に搭載されている。詳しくは、アンプ本体921の一部及び固定片922が支持部962の表面に接するように配置されている。固定片922はアンプ本体921と一体の舌片である。固定片922にはネジ孔が備えられ、支持部962の適所にもネジ孔が穿孔されている。固定片922と支持部962に対して、第2ネジ964で締結固定されている。
[作用効果]
以上説明した本実施形態に係るターボ過給機付エンジン1によれば、次のような作用効果を奏する。ターボ過給機付エンジン1は、エンジン本体10と、吸気を過給するターボ過給機3と、大タービン軸37の回転数に応じた電気信号を発生する回転センサ91と、前記電気信号を増幅するアンプ92と、回転センサ91とアンプ92とを電気的に接続するシールドケーブル94とを備える。ここで、回転センサ91は比較的熱に強いものの、アンプ92は、プリント基板に半田付けされた電子部品を含み、高熱に曝されると半田が溶融するため、熱害に対する対策が必要となる。アンプ92を当該エンジン1から離間させた位置に配置できれば、前記熱害は防止できる。しかし、アンプ92と回転センサ91とは、ノイズ対策のため高価なシールドケーブル94で接続する必要があり、両者間を離間させると該ケーブル94の長さが前記離間の分だけ長尺となってしまい、コストアップを招来する。従って、アンプ92と回転センサ91とを近接させた状態で、アンプ92の熱害対策を施すことが求められる。
上記実施形態では、この要請に対応するため、回転センサ91及びアンプ92が、ターボ過給機3において大型タービンケース31Tに比べて高温にはならない大型コンプレッサケース31Cに取り付けられている。また、回転センサ91及びアンプ92は、エンジン本体10に対して、大タービン軸37よりも遠い位置において大型コンプレッサケース31Cに取り付けられている。従って、エンジン本体10とターボ過給機3との間に配置され高熱を発する排気マニホールド14や、大型タービンケース31Tに隣接する排気浄化装置70からアンプ92を離間させることができ、アンプ92への熱害を抑止することができる。
さらに、アンプ92への熱害が抑止されているので、回転センサ91に対してアンプ92を接近させて配置することが可能となる。このため、両者を電気的に接続するシールドケーブル94のケーブル長を短くすることが可能となる。シールドケーブル94は、単位長あたりの価格が高価なケーブルであるが、その使用長を短くすることでコストダウンを図ることができる。若しくは、回転センサ91とアンプ92とが近接させることで、両者を繋ぐケーブル経路長が短くなり、当該ケーブルがノイズを拾い難くなることが期待できる。従って、回転センサ91とアンプ92とを接続する電気ケーブルとして、ノイズシールド層を具備しない安価なケーブルを用いることが可能となる。
アンプ92は、ブラケット96を介して大型コンプレッサケース31Cに取り付けられる。ブラケット96は、大型コンプレッサケース31Cの表面に対して固定される固定部961と、該固定部961から延び出す支持部962とを有する。アンプ92は、支持部962に搭載されて大型コンプレッサケース31Cに取り付けられている。このように、アンプ92を大型コンプレッサケース31Cに直接的に取り付けるのではなく、ブラケット96を介して取り付けるようにすることで、より熱の影響を受けない位置へアンプ92を配置し易くなる利点がある。
また、ブラケット96は、固定部961において大型コンプレッサケース31Cの表面と接触し、支持部962と大型コンプレッサケース31Cの表面との間には空間Gが形成される片持ち支持型のブラケットである。このような片持ち支持型のブラケット96によって、アンプ92を大型コンプレッサケース31Cの表面から浮かして支持させることができるので、アンプ92がより熱害を受け難くすることができる。
回転センサ91は、大コンプレッサ34Bに対向する位置に配置され、アンプ92は、エンジン本体10に対して回転センサ91よりも遠い側に配置されている。そして、アンプ92は、エンジン本体10から遠ざかる方向に固定部961から延び出している支持部962に支持されている。これにより、アンプ92を、高熱を発する排気マニホールド14の上方位置からより離間して配置することができる。
さらに、回転センサ91とアンプ92とは、略同じ高さ位置において水平方向に並ぶように大型コンプレッサケース31Cに取り付けられている。シールドケーブル94は、回転センサ91のコネクタ部915(出力端)とアンプ92の入力ポート923(入力端)とを接続するよう、U字型に湾曲されて配置されている。この構成によれば、回転センサ91とアンプ92とを熱的に離間しつつ、シールドケーブル94を最短の長さとすることが可能となり、コスト面やノイズ抑制の点で有利である。
以上説明した通り、本発明によれば、回転センサ91及びアンプ92を備えたターボ過給機3が付設されたエンジン1において、アンプ92への熱害を防止しつつ、回転センサ91の出力電気信号に対してコストアップを招来しないノイズ対策を施したターボ過給機付エンジンを提供することができる。
[変形実施形態の説明]
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、ターボ過給機として、大型ターボ部3Aと小型ターボ部3Bとを備える2ステージ型のターボ過給機3を例示した。これに代えて、ターボ過給機はシングルステージ型のターボ過給機としても良い。また、上記実施形態では、大型ターボ部3Aの大タービン軸37の回転数を検出するようにしたが、小型ターボ部3Bの小タービン軸38の回転数を検出するべく、回転センサ91及びアンプ92を小型コンプレッサケース32Cに取り付けるようにしても良い。