以下に添付図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係る画像検査装置、画像形成装置および撮像制御方法について詳しく説明する。なお、以下で説明する実施形態では、本発明を適用した画像形成装置の一例として、記録媒体にインクを吐出して画像を記録するインクジェットプリンタを例示する。この画像形成装置は、記録媒体に画像として記録したパッチを撮像し、その画像データを用いてパッチの測色値を算出する機能を持つ。画像として記録したパッチの測色は、画像検査の一例である。ただし、本発明の適用例は以下で説明する実施形態に限らない。本発明は、可動部材に設けられた撮像部により記録媒体に記録された画像を被写体として撮像し、その画像データを用いて画像の検査を行う様々な画像検査装置や画像形成装置に対して広く適用できる。
<画像形成装置の機械的構成>
まず、図1乃至図3を参照しながら、本実施形態の画像形成装置100の機械的な構成例について説明する。図1は、画像形成装置100の内部を透視して示す斜視図、図2は、画像形成装置100の内部の機械的構成を示す上面図、図3は、キャリッジ5に搭載される記録ヘッド6の配置例を説明する図である。
図1に示すように、本実施形態の画像形成装置100は、主走査方向(図中矢印A方向)に往復移動するキャリッジ(可動部材の一例)5を備える。キャリッジ5は、主走査方向に沿って延設された主ガイドロッド3により支持されている。また、キャリッジ5には連結片5aが設けられている。連結片5aは、主ガイドロッド3と平行に設けられた副ガイド部材4に係合し、キャリッジ5の姿勢を安定化させる。
キャリッジ5には、図2に示すように、4つの記録ヘッド6y,6m,6c,6k(画像記録部の一例)が搭載されている。記録ヘッド6yは、イエロー(Y)インクを吐出する記録ヘッドである。記録ヘッド6mは、マゼンタ(M)インクを吐出する記録ヘッドである。記録ヘッド6cは、シアン(C)インクを吐出する記録ヘッドである。記録ヘッド6kは、ブラック(Bk)インクを吐出する記録ヘッドである。以下、これら記録ヘッド6y,6m,6c,6kを総称する場合は、記録ヘッド6という。記録ヘッド6は、その吐出面(ノズル面)が下方(記録媒体M側)に向くように、キャリッジ5に支持されている。
記録ヘッド6にインクを供給するためのインク供給体であるカートリッジ7は、キャリッジ5には搭載されず、画像形成装置100内の所定の位置に配置されている。カートリッジ7と記録ヘッド6はパイプで連結されており、このパイプを介して、カートリッジ7から記録ヘッド6に対してインクが供給される。
キャリッジ5は、駆動プーリ9と従動プーリ10との間に張架されたタイミングベルト11に連結されている。駆動プーリ9は、主走査モータ8の駆動により回転する。従動プーリ10は、駆動プーリ9との間の距離を調整する機構を有し、タイミングベルト11に対して所定のテンションを与える役割を持つ。キャリッジ5は、主走査モータ8の駆動によりタイミングベルト11が送り動作されることにより、主走査方向に往復移動する。キャリッジ5の主走査方向への移動は、例えば図2に示すように、キャリッジ5に設けられたエンコーダセンサ13がエンコーダシート14のマークを検知して出力するエンコーダ信号に基づいて制御される。
また、本実施形態の画像形成装置100は、記録ヘッド6の信頼性を維持するための維持機構15を備える。維持機構15は、記録ヘッド6の吐出面の清掃やキャッピング、記録ヘッド6からの不要なインクの排出などを行う。
記録ヘッド6の吐出面と対向する位置には、図2に示すように、プラテン16が設けられている。プラテン16は、記録ヘッド6から記録媒体M上にインクを吐出する際に、記録媒体Mを支持するためのものである。本実施形態の画像形成装置100は、キャリッジ5の主走査方向の移動距離が長い広幅機である。このため、プラテン16は、複数の板状部材を主走査方向(キャリッジ5の移動方向)に繋いで構成している。記録媒体Mは、後述の副走査モータ12(図8参照)によって駆動される搬送ローラにより挟持され、プラテン16上を、副走査方向に間欠的に搬送される。
記録ヘッド6は、複数のノズル列を備えており、プラテン16上を搬送される記録媒体M上にノズル列からインクを吐出することで、記録媒体Mに画像を記録する。本実施形態では、キャリッジ5の1回の走査で印刷できる画像の幅を多く確保するため、図3に示すように、キャリッジ5に、上流側の記録ヘッド6と下流側の記録ヘッド6とを搭載している。また、ブラックのインクを吐出する記録ヘッド6kは、カラーのインクを吐出する記録ヘッド6y,6m,6cの2倍の数だけキャリッジ5に搭載している。また、記録ヘッド6y,6mは左右に分離して配置されている。これは、キャリッジ5の往復動作で色の重ね順を合わせ、往路と復路とで色が変わらないようにするためである。なお、図3に示す記録ヘッド6の配列は一例であり、図3に示す配列に限定されるものではない。
本実施形態の画像形成装置100を構成する上記の各構成要素は、外装体1の内部に配置されている。外装体1にはカバー部材2が開閉可能に設けられている。画像形成装置100のメンテナンス時やジャム発生時には、カバー部材2を開けることにより、外装体1の内部に設けられた各構成要素に対して作業を行うことができる。
本実施形態の画像形成装置100は、記録媒体Mを副走査方向(図中矢印B方向)に間欠的に搬送し、記録媒体Mの副走査方向の搬送が停止している間に、キャリッジ5を主走査方向に移動させながら、キャリッジ5に搭載された記録ヘッド6のノズル列からプラテン16上の記録媒体M上にインクを吐出して、記録媒体Mに画像を記録する。
特に、画像形成装置100の色調整などのキャリブレーションを行う際には、キャリッジ5に搭載された記録ヘッド6のノズル列からプラテン16上の記録媒体M上にインクを吐出して、多数のパッチが並ぶテストパターンを記録媒体Mに記録する。そして、このテストパターンに含まれる各パッチに対して測色を行う。テストパターンに含まれる各パッチは、画像形成装置100が実際にインクを用いて基準色のパターンを印刷した画像であり、画像形成装置100に固有の特性を反映している。したがって、これらのパッチの測色値を用いて、画像形成装置100に固有の特性を記述したデバイスプロファイルを生成、あるいは修正することができる。そして、このデバイスプロファイルに基づいて標準色空間と機器依存色との間の色変換を行うことで、画像形成装置100は再現性の高い画像を出力することができる。
本実施形態の画像形成装置100は、記録媒体Mに記録したテストパターンの各パッチを被写体として撮像し、その画像データを用いてパッチの測色値を算出する測色カメラ(撮像部の一例)20を備える。測色カメラ20は、図2に示すように、記録ヘッド6が搭載されたキャリッジ5に支持されている。そして、測色カメラ20は、記録媒体Mの搬送およびキャリッジ5の移動によりテストパターンが記録された記録媒体M上を移動して、各パッチと対向する位置にきたときに、画像の撮像を行う。特に本実施形態の画像形成装置100では、キャリッジ5が停止直前(または急減速時)に振動している状態で測色カメラ20によるパッチの撮像を行う。そして、撮像により得られたパッチのRGB値に基づいて、パッチの測色値を算出する。キャリッジ5が振動している状態で測色カメラ20による撮像を行うことで、従来技術のように光学ローパスフィルタを用いたり、アクチュエータを用いて撮像素子を微小駆動させたりする必要がなく、簡便な構成でモアレを効果的に低減できるようになる。
なお、本実施形態では、撮像により得られたパッチのRGB値から算出されるパッチの測色値を用いて画像形成装置100の色調整を行う例を説明するが、撮像により得られたパッチのRGB値を用いて画像形成装置100の色調整を行うことも可能である。この場合、色調整によって、記録媒体M上に吐出されるインクの量が調整される。
<測色カメラの機械的構成>
次に、図4乃至図6を参照しながら、本実施形態の測色カメラ20の機械的な構成例について説明する。図4は、測色カメラ20の分解斜視図、図5は、測色カメラ20の縦断面図、図6は、測色カメラ20内部の部品レイアウトを説明する図である。
測色カメラ20は、図4および図5に示すように、取り付け片22が一体形成された筐体21を備える。筐体21は、例えば、所定の間隔を空けて対向する底板部21aおよび天板部21bと、これら底板部21aと天板部21bとを繋ぐ側壁部21c,21d,21e,21fを有する。筐体21の底板部21aと側壁部21d,21e,21fは、例えばモールド成形により取り付け片22とともに一体に形成され、これに対して天板部21bと側壁部21cとが着脱可能な構成とされる。図4では天板部21bと側壁部21cとを取り外した状態を示している。
測色カメラ20は、例えば、筐体21の側壁部21eおよび取り付け片22をキャリッジ5の側面部に突き当てた状態で、ネジなどの締結部材を用いてキャリッジ5の側面部に締結されることにより、キャリッジ5に取り付けられる。このとき、測色カメラ20は、図5に示すように、筐体21の底板部21aが所定の間隙dを介してプラテン16上の記録媒体Mに対し略平行な状態で対向するように、キャリッジ5に取り付けられる。
プラテン16上の記録媒体Mと対向する筐体21の底板部21aには、記録媒体Mに記録されたテストパターンのパッチ(被写体)を筐体21の内部から撮影可能にするための開口部23が設けられている。また、筐体21の底板部21aの内面側には、支え部材33を介して開口部23と隣り合うようにして、基準チャート40が配置されている。基準チャート40は、テストパターンのパッチの測色やRGB値の取得を行う際に、後述のセンサユニット25によりパッチとともに撮像されるものである。なお、基準チャート40の詳細については後述する。
一方、筐体21内部の天板部21b側には、回路基板24が配置されている。また、筐体21の天板部21bと回路基板24との間には、画像を撮像するセンサユニット25が配置されている。センサユニット25は、図5に示すように、CCDセンサまたはCMOSセンサなどの二次元イメージセンサ25aと、センサユニット25の撮像範囲の光学像を二次元イメージセンサ25aの受光面に結像する結像レンズ25bとを備える。
センサユニット25は、例えば、筐体21の側壁部21eと一体に形成されたセンサホルダ26により保持される。センサホルダ26には、回路基板24に形成された貫通孔24aと対向する位置にリング部26aが設けられている。リング部26aは、センサユニット25の結像レンズ25b側の突出した部分の外形形状に倣った大きさの貫通孔を有する。センサユニット25は、結像レンズ25b側の突出した部分をセンサホルダ26のリング部26aに挿通することで、結像レンズ25bが回路基板24の貫通孔24aを介して筐体21の底板部21a側を臨むようにして、センサホルダ26により保持される。
このとき、センサユニット25は、図5に一点鎖線で示す光軸が筐体21の底板部21aに対して略垂直となり、且つ、開口部23と後述の基準チャート40とが撮像範囲に含まれるように、センサホルダ26により位置決めされた状態で保持される。これにより、センサユニット25は、二次元イメージセンサ25aの撮像領域の一部で、筐体21外部のパッチ(被写体)を開口部23を介して撮像するとともに、二次元イメージセンサ25aの撮像領域の他の一部で基準チャート40を撮像することができる。
なお、センサユニット25は、各種の電子部品が実装される回路基板24に対して、例えばフレキシブルケーブルを介して電気的に接続される。また、回路基板24には、後述する画像形成装置100のメイン制御基板120(図8参照)に対して測色カメラ20を接続するための接続ケーブルが装着される外部接続コネクタ27が設けられている。
また、筐体21の内部には、少なくともセンサユニット25の撮像範囲を照明する照明光源28が設けられている。照明光源28としては、例えばLED(Light Emitting Diode)が用いられる。本実施形態においては、図6に示すように、照明光源28として2つのLEDを用いる。図6は、測色カメラ20の内部を回路基板24側から筐体21の底板部21a側に垂直に(光軸方向に沿って)見下ろしたときのセンサユニット25、照明光源28、開口部23および基準チャート40の位置関係を示している。
照明光源28として用いる2つのLEDは、例えば回路基板24の底板部21a側の面に実装される。ただし、照明光源28は、センサユニット25の撮像範囲を拡散光により略均一に照明できる位置に配置されればよく、必ずしも回路基板24に直接実装されていなくてもよい。また、本実施形態では、照明光源28としてLEDを用いているが、光源の種類はLEDに限定されるものではない。例えば、有機ELなどを照明光源28として用いるようにしてもよい。有機ELを照明光源28として用いた場合は、太陽光の分光分布に近い照明光が得られるため、測色精度の向上が期待できる。
本実施形態では、図6に示すように、照明光源28として用いる2つのLEDを回路基板24側から筐体21の底板部21a側に垂直に見下ろしたときの底板部21a上の投影位置が、開口部23と基準チャート40との間の領域内となり、且つ、センサユニット25を中心として対称となる位置となるように、これら2つのLEDが配置されている。換言すると、センサユニット25の光軸方向に沿って見たときに、照明光源28として用いる2つのLEDを結ぶ線Lがセンサユニット25の結像レンズ25bの中心を通り、且つ、この2つのLEDを結ぶ線Lを境界として一方に開口部23、他方に基準チャート40が位置するように、照明光源28として用いる2つのLEDが配置される。照明光源28として用いる2つのLEDをこのように配置することにより、筐体21外部の被写体となるパッチと筐体21内部に配置された基準チャート40とを、概ね同一の条件にて照明することができる。
なお、筐体21内部に配置された基準チャート40と同一の照明条件により筐体21外部のパッチを照明するには、筐体21外部のパッチに外光が当たらないようにして、照明光源28からの照明光のみでパッチを照明する必要がある。筐体21外部のパッチに外光が当たらないようにするには、筐体21の底板部21aと記録媒体Mとの間の間隙dを小さくし、パッチに向かう外光が筐体21によって遮られるようにすることが有効である。ただし、筐体21の底板部21aと記録媒体Mとの間の間隙dを小さくしすぎると、記録媒体Mが筐体21の底板部21aに接触してしまい、適切な撮像を行えなくなる虞がある。そこで、筐体21の底板部21aと記録媒体Mとの間の間隙dは、記録媒体Mの平面性を考慮して、記録媒体Mが筐体21の底板部21aに接触しない範囲で小さな値に設定することが望ましい。例えば、筐体21の底板部21aと記録媒体Mとの間の間隙dを1mm〜2mm程度に設定すれば、記録媒体Mが筐体21の底板部21aに接触することなく、記録媒体M上のパッチに外光が当たることを有効に防止できる。
また、筐体21の内部には、センサユニット25と該センサユニット25により開口部23を介して撮像される筐体21外部のパッチ(被写体)との間の光路中に、光路長変更部材29が配置されている。光路長変更部材29は、照明光源28の光(照明光)に対して十分な透過率を有する屈折率nの光学素子である。光路長変更部材29は、筐体21外部の被写体の光学像の結像面を筐体21内部の基準チャート40の光学像の結像面に近づける機能を持つ。つまり、本実施形態の測色カメラ20では、センサユニット25と筐体21外部の被写体との間の光路中に光路長変更部材29を配置することによって光路長を変更し、筐体21外部の被写体となるパッチの光学像の結像面と、筐体21内部の基準チャート40の結像面とを、ともにセンサユニット25の二次元イメージセンサ25aの受光面に合わせるようにしている。これによりセンサユニット25は、筐体21外部のパッチと筐体21内部の基準チャート40との双方にピントの合った画像を撮像することができる。
光路長変更部材29は、例えば図4および図5に示すように、一対のリブ30,31によって、底板部21a側の面の両端部が支持されている。また、光路長変更部材29の天板部21b側の面と回路基板24との間に押さえ部材32が配置されることで、光路長変更部材29が筐体21内部で動かないようになっている。光路長変更部材29は、筐体21の底板部21aに設けられた開口部23を塞ぐように配置されるため、筐体21外部から開口部23を介して筐体21内部に進入するインクミストや塵埃などの不純物が、センサユニット25や照明光源28、基準チャート40などに付着するのを防止する機能も有することになる。
また、筐体21の内部には、センサユニット25の撮像範囲内で正反射光となる照明光源28からの光を吸収するための光吸収体50が設けられている。光吸収体50は、センサユニット25の撮像範囲内において照明光源28の正反射光をセンサユニット25に入射させる位置を正反射位置Pmとしたときに、照明光源28から正反射位置Pmに向かう光の光路中に配置される。
本実施形態の測色カメラ20では、照明光源28として用いる2つのLEDが、センサユニット25に対して図6に示した位置関係で配置される。このため、筐体21の開口部23と基準チャート40との間の領域内に、照明光源28として用いる2つのLEDの各々に対応する2つの正反射位置Pm(図6の破線の円)が存在することになる。光吸収体50は、少なくとも、照明光源28として用いる一方のLEDから一方の正反射位置Pmに向かう光の光路と、他方のLEDから他方の正反射位置Pmに向かう光の光路とを遮るように、これらの光路中に配置される。
具体的には、光吸収体50は、例えば図4および図5に示すように、光路長変更部材29の天板部21b側の面と支え部材33とにより支持された状態で、照明光源28から正反射位置Pmに向かう光の光路中に配置される。光吸収体50としては、例えば、ラシャ紙を用いることができる。ラシャ紙は、紡毛を起毛させた織物であるラシャのような構造を持つ紙であり、例えば株式会社光洋製の「黒色無反射ラシャ紙」(http://shop.koyo-opt.co.jp/i-shop/product.pasp?cm_id=156400&to=pr)のように、黒色(スーパーブラック)の紙からなる基材に黒色(スーパーブラック)の起毛状突起を植毛したものが市販されている。起毛状突起は、一般的に、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、水不溶性熱可塑性ポリマーなどからなる。
本実施形態の測色カメラ20では、このように照明光源28から正反射領域Pmに向かう光の光路中に光吸収体50を配置し、この光吸収体50により照明光源28から正反射位置Pmに向かう光を吸収することにより、正反射領域Pmで正反射した照明光源28の正反射光がセンサユニット25に入射することを防止している。
なお、以上説明した測色カメラ20の機械的な構成はあくまで一例であり、これに限らない。本実施形態の測色カメラ20は、少なくとも、キャリッジ5に設けられ、キャリッジ5の振動中にセンサユニット25により被写体を撮像する構成であればよく、上記の構成に対して様々な変形や変更が可能である。
<基準チャートの具体例>
次に、図7を参照しながら、測色カメラ20の筐体21内部に配置される基準チャート40の具体例について説明する。図7は、基準チャート40の具体例を示す図である。
図7に示す基準チャート40は、測色用の基準パッチを配列した複数の基準パッチ列41〜44、ドット径計測用パターン列46、距離計測用ライン45、およびチャート位置特定用マーカ47を有する。
基準パッチ列41〜44は、YMCKの1次色の基準パッチを階調順に配列した基準パッチ列41と、RGBの2次色の基準パッチを階調順に配列した基準パッチ列42と、グレースケールの基準パッチを階調順に配列した基準パッチ列(無彩色の階調パターン)43と、3次色の基準パッチを配列した基準パッチ列44と、を含む。ドット径計測用パターン列46は、大きさが異なる円形パターンが大きさ順に配列された幾何学形状測定用のパターン列であり、記録媒体Mに印刷された画像のドット径の計測に用いることができる。
距離計測用ライン45は、複数の基準パッチ列41〜44やドット径計測用パターン列46を囲む矩形の枠として形成されている。チャート位置特定用マーカ47は、距離計測用ライン45の四隅の位置に設けられていて、各基準パッチの位置を特定するためのマーカとして機能する。センサユニット25により撮像される基準チャート40の画像から、距離計測用ライン45とその四隅のチャート位置特定用マーカ47を特定することで、基準チャート40の位置および各基準パッチやパターンの位置を特定することができる。
測色用の基準パッチ列41〜44を構成する各基準パッチは、測色カメラ20の撮像条件を反映した色味の基準として用いられる。なお、基準チャート40に配置されている測色用の基準パッチ列41〜44の構成は、図7に示す例に限定されるものではなく、任意の基準パッチ列を適用することが可能である。例えば、可能な限り色範囲が広く特定できる基準パッチを用いてもよいし、また、YMCKの1次色の基準パッチ列41や、グレースケールの基準パッチ列43は、画像形成装置100に使用されるインクの測色値のパッチで構成されていてもよい。また、RGBの2次色の基準パッチ列42は、画像形成装置100で使用されるインクで発色可能な測色値のパッチで構成されていてもよく、さらに、Japan Color等の測色値が定められた基準色票を用いてもよい。
なお、本実施形態では、一般的なパッチ(色票)の形状の基準パッチ列41〜44を有する基準チャート40を用いているが、基準チャート40は、必ずしもこのような基準パッチ列41〜44を有する形態でなくてもよい。基準チャート40は、測色に利用可能な複数の色が、それぞれの位置を特定できるように配置された構成であればよい。
基準チャート40は、上述したように、筐体21の底板部21aの内面側に開口部23と隣り合うように配置されているため、センサユニット25によって、筐体21外部の被写体と同時に撮像することができる。なお、ここでの同時に撮像とは、筐体21外部の被写体と基準チャート40とを含む1フレームの画像データを取得することを意味する。つまり、画素ごとのデータ取得に時間差があっても、筐体21外部の被写体と基準チャート40とが1フレーム内に含まれる画像データを取得すれば、筐体21外部の被写体と基準チャート40とを同時に撮像したことになる。
<画像形成装置の制御機構の概略構成>
次に、図8を参照しながら、本実施形態の画像形成装置100の制御機構の概略構成について説明する。図8は、画像形成装置100の制御機構の構成例を示すブロック図である。
本実施形態の画像形成装置100は、図8に示すように、CPU101、ROM102、RAM103、記録ヘッドドライバ104、主走査ドライバ105、副走査ドライバ106、制御用FPGA(Field-Programmable Gate Array)110、記録ヘッド6、測色カメラ20、エンコーダセンサ13、主走査モータ8、および副走査モータ12を備える。CPU101、ROM102、RAM103、記録ヘッドドライバ104、主走査ドライバ105、副走査ドライバ106、および制御用FPGA110は、メイン制御基板120に搭載されている。記録ヘッド6、エンコーダセンサ13、および測色カメラ20は、上述したようにキャリッジ5に搭載されている。
CPU101は、画像形成装置100の全体の制御を司る。例えば、CPU101は、RAM103を作業領域として利用して、ROM102に格納された各種の制御プログラムを実行し、画像形成装置100における各種動作を制御するための制御指令を出力する。
記録ヘッドドライバ104、主走査ドライバ105、副走査ドライバ106は、それぞれ、記録ヘッド6、主走査モータ8、副走査モータ12を駆動するためのドライバである。
制御用FPGA110は、CPU101と連携して画像形成装置100における各種動作を制御する。制御用FPGA110は、機能的な構成要素として、例えば、CPU制御部111、メモリ制御部112、インク吐出制御部113、センサ制御部114、モータ制御部115、および撮像制御部116を備える。
CPU制御部111は、CPU101と通信を行って、制御用FPGA110が取得した各種情報をCPU101に伝えるとともに、CPU101から出力された制御指令を入力する。
メモリ制御部112は、CPU101がROM102やRAM103にアクセスするためのメモリ制御を行う。
インク吐出制御部113は、CPU101からの制御指令に応じて記録ヘッドドライバ104の動作を制御することにより、記録ヘッドドライバ104により駆動される記録ヘッド6からのインクの吐出タイミングを制御する。
センサ制御部114は、エンコーダセンサ13から出力されるエンコーダ信号などのセンサ信号に対する処理を行う。例えばセンサ制御部114は、エンコーダセンサ13から出力されるエンコーダ信号に基づいて、キャリッジ5の位置、移動速度、移動方向などを計算する処理を実行する。なお、エンコーダ信号に基づいてキャリッジ5の位置、移動速度、移動方向などを計算する処理の具体例は後述する。
モータ制御部115は、CPU101からの制御指令に応じて主走査ドライバ105の動作を制御することにより、主走査ドライバ105により駆動される主走査モータ8を制御して、キャリッジ5の主走査方向への移動を制御する。また、モータ制御部115は、CPU101からの制御指令に応じて副走査ドライバ106の動作を制御することにより、副走査ドライバ106により駆動される副走査モータ12を制御して、プラテン16上の記録媒体Mの副走査方向への移動を制御する。
撮像制御部116は、測色カメラ20を用いて記録媒体Mに記録されたテストパターンの各パッチの測色を行う際に、測色カメラ20がパッチの撮像を行うタイミングを制御する。具体的には、撮像制御部116は、キャリッジ5が振動している状態で測色カメラ20によるパッチの撮像が行われるように、測色カメラ20による撮像のタイミングを制御する。
記録媒体Mに記録されたテストパターンの各パッチの測色を行う場合、測色対象となるパッチに対して測色カメラ20の開口部23が対向する位置で停止(または急減速)するように、測色カメラ20を搭載するキャリッジ5の移動が制御される。この際、キャリッジ5が所望の位置で完全に停止(移動速度が収束)するまでの間に、キャリッジ5の慣性力と主走査モータ8やタイミングベルト11の反力の影響により、キャリッジ5に細かな振動(主走査方向の微小な往復移動)が発生する。撮像制御部116は、このようにキャリッジ5が振動している状態で測色カメラ20によるパッチの撮像が行われるように、測色カメラ20による撮像のタイミングを制御する。
例えば、キャリッジ5が第1の方向(例えば主走査方向の往路側)に移動するときの移動速度を正の移動速度とし、キャリッジ5が第1の方向とは逆向きの方向である第2の方向(例えば主走査方向の復路側)に移動するときの移動速度を負の移動速度とする。このとき、撮像制御部116は、キャリッジ5の移動速度の正負が反転するタイミングを含む時間帯を受光期間として、測色カメラ20のセンサユニット25により1フレーム分の撮像が行われるように、測色カメラ20を制御する。なお、撮像制御部116による制御の具体例については、詳細を後述する。
なお、以上の各部は、制御用FPGA110により実現する制御機能の一例であり、これら以外にも様々な制御機能を制御用FPGA110により実現する構成としてもよい。また、上記の制御機能の全部または一部を、CPU101または他の汎用のCPUにより実行されるプログラムによって実現する構成であってもよい。また、上記の制御機能の一部を、制御用FPGA110とは異なる他のFPGAやASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの専用のハードウェアにより実現する構成であってもよい。
また、制御用FPGA110により実現される上記の制御機能のうち、特に撮像制御部116については、測色カメラ20において実現する構成であってもよい。
記録ヘッド6は、CPU101および制御用FPGA110により動作制御される記録ヘッドドライバ104により駆動され、プラテン16上の記録媒体Mにインクを吐出して画像を形成する。
エンコーダセンサ13は、エンコーダシート14のマークを検知して得られるエンコーダ信号を制御用FPGA110に出力する。このエンコーダ信号は、制御用FPGA110のセンサ制御部114において、キャリッジ5の位置、移動速度および移動方向を計算するために用いられる。センサ制御部114がエンコーダ信号から計算したキャリッジ5の位置、移動速度および移動方向は、CPU101に送られる。CPU101は、このキャリッジ5の位置、移動速度および移動方向に基づき、主走査モータ8を制御するための制御指令を生成してモータ制御部115に出力する。
測色カメラ20は、上述したように、画像形成装置100の色調整を行う際に、記録媒体Mに形成されたテストパターンのパッチを基準チャート40とともにセンサユニット25により撮像し、撮像画像から得られるパッチのRGB値と基準チャート40の各基準パッチのRGB値とに基づいて、パッチの測色値(標準色空間における表色値であり、例えばL*a*b*色空間におけるL*a*b*値)を算出する。測色カメラ20が算出したテストパターンのパッチの測色値は、制御用FPGA110を介してCPU101に送られる。なお、パッチの測色値を算出する具体的な方法としては、例えば特開2013−051671号公報に開示される方法を利用することができる。
なお、画像形成装置100の色調整は、上述したように、撮像により得られたパッチのRGB値を用いて実施することもできる。この場合、測色カメラ20は、テストパターンの各パッチを基準チャート40とともにセンサユニット25により撮像し、撮像画像から得られるパッチのRGB値に対し、基準チャート40の各基準パッチのRGB値を用いて、照明光源28の変動などに起因する誤差を補正する処理を行う。補正されたパッチのRGB値は、例えば、測色カメラ20から制御用FPGA110を介してCPU101に送られる。そして、CPU101が、このRGB値を用いて記録ヘッド6のインク吐出量を制御するためのパラメータなどを調整することにより、記録ヘッド6から記録媒体M上に吐出されるインクの量が調整される。
<測色カメラの制御機構の構成>
次に、図9を参照しながら、測色カメラ20の制御機構の概略構成について説明する。図9は、測色カメラ20の制御機構の構成例を示すブロック図である。
測色カメラ20は、図9に示すように、上述したセンサユニット25および照明光源28のほか、光源駆動制御部61、フレームメモリ62、平均化処理部63、測色演算部64および不揮発性メモリ65を備える。これらの各部は、例えば、測色カメラ20の筐体21内部に配置された回路基板24に実装される。
センサユニット25は、結像レンズ25bを介して入射した光を二次元イメージセンサ25aにより電気信号に変換して、照明光源28により照明された撮像範囲の画像データを出力する。二次元イメージセンサ25aの各種動作条件の設定は、CPU101からの各種設定信号に従って行われる。この設定信号には、二次元イメージセンサ25aによる1フレーム分の受光期間の長さを設定する信号が含まれる。また、パッチの測色に用いる1フレーム分の画像を撮像する際の二次元イメージセンサ25aによる受光期間の開始は、撮像制御部116からのタイミング信号に基づいて制御される。
センサユニット25は、二次元イメージセンサ25aの光電変換により得られたアナログ信号をデジタルの画像データにAD変換し、その画像データに対してシェーディング補正やホワイトバランス補正、γ補正、画像データのフォーマット変換などの各種の画像処理を行った後に出力する機能を内蔵している。なお、画像データに対する各種の画像処理は、その一部あるいは全部をセンサユニット25の外部で行うようにしてもよい。
光源駆動制御部61は、センサユニット25による画像の撮像時に、照明光源28を点灯させるための光源駆動信号を生成して、照明光源28に供給する。
フレームメモリ62は、センサユニット25から出力された1フレーム分の画像データを一時的に格納する。
平均化処理部63は、テストパターンのパッチに対する測色を行う際に、センサユニット25から出力されてフレームメモリ62に一時的に格納された画像データから、測色対象のパッチを映した領域と、基準チャート40の各基準パッチを映した領域とを抽出する。そして、平均化処理部63は、測色対象のパッチの領域の画像データを平均化して、得られた値をパッチのRGB値として測色演算部64に出力するとともに、基準チャート40の各基準パッチの領域の画像データを各々平均化して、得られた値を各基準パッチのRGB値として測色演算部64に出力する。
測色演算部64は、平均化処理部63の処理によって得られた測色対象のパッチのRGB値と、基準チャート40の各基準パッチのRGB値とに基づいて、パッチの測色値を算出する。測色演算部64が算出したパッチの測色値は、メイン制御基板120上のCPU101へと送られる。なお、測色演算部64は、例えば特開2013−051671号公報に開示される方法によりパッチの測色値を算出できるため、ここでは測色演算部64の処理の詳細な説明は省略する。
不揮発性メモリ65は、測色演算部64がパッチの測色値を算出するために必要な各種データなどを記憶する。
<測色カメラの撮像タイミング>
次に、テストパターンのパッチに対する測色を行う際の測色カメラ20の撮像タイミングについて説明する。測色カメラ20の撮像タイミングは、撮像制御部116により制御される。撮像制御部116は、上述したように、測色カメラ20を用いてパッチの測色を行う際に、キャリッジ5が振動している状態でパッチの撮像が行われるように、測色カメラ20による撮像のタイミングを制御する。これにより、測色カメラ20により撮像したパッチの画像データにモアレが生じてパッチの測色精度を低下させる不都合を、簡便な構成で有効に防止することができる。
画像形成装置100が記録ヘッド6からインクを吐出して記録媒体Mに形成したテストパターンの各パッチは、微細なインク滴が付着したドットが規則的に並ぶドットパターンにより構成される画像である。以下、このようなドットパターンにより構成される画像をパターン像と呼ぶ。図10は、このようなパターン像における輝度分布を概念的に示す図である。図10に示すように、パターン像は、画像の位相に合わせて周期的に輝度が増減している。
図11は、図10に示したパターン像の輝度分布に対して、撮像におけるサンプリング間隔が広い場合を概念的に示す図である。図11中の上向きの矢印の位置が、撮像におけるサンプリング位置を示している。なお、撮像におけるサンプリング位置は、測色カメラ20のセンサユニット25によるパターン像の観測位置、つまり、二次元イメージセンサ25aの受光面における受光素子(画素)の位置に対応する。
図11の例のように、輝度変化の周期に対して撮像におけるサンプリング間隔が広いと、パターン像の輝度分布に追従しきれずに、折り返し歪みが生じて全く異なる周期の画像として捉えてしまう。その結果、撮像により得られる画像データにモアレ(干渉縞)が生じる。図11中の破線で示す輝度の増減がモアレである。モアレは被写体にはないパターンであるため、モアレが生じた画像データを用いてパッチのRGB値を求めると、正しいRGB値が得られない懸念がある。そして、このRGB値をもとにパッチの測色値を算出すると、正しい測色値を算出できない懸念がある。
撮像におけるサンプリング間隔とパターン像の規則的な輝度変化の周期との関係が、下記式(1)に示すサンプリング定理の関係を満たさないときに、画像に折り返し歪み(エリアシングエラー)が生じてモアレとなる。なお、下記式(1)において、Δxはサンプリング間隔(二次元イメージセンサ25aの受光素子(画素)間の距離)を表し、fmaxはパターン像の最高周波数成分を表している。
Δx<1/(2×fmax) ・・・(1)
図12は、測色カメラ20の開口部23がパッチと対向する位置でキャリッジ5を停止させたときにキャリッジ5の移動速度が収束するまでの様子を示す図である。キャリッジ5は、上述したように、主走査モータ8の駆動によりタイミングベルト11が送り動作されることにより主走査方向に移動する。そして、主走査モータ8およびタイミングベルト11が停止すると、キャリッジ5が停止する。この際、キャリッジ5の慣性力と主走査モータ8やタイミングベルト11の反力の影響により、キャリッジ5の移動速度が収束してキャリッジ5が完全に停止するまでの間に、キャリッジ5に振動が発生する。つまり、図12に示すように、キャリッジ5の移動速度が短時間の間に正(+)から負(−)に反転した後に負(−)から正(+)に反転するといった現象が発生する。このキャリッジ5の振動は、摩擦や弾性によるエネルギーの消費により減衰する。
キャリッジ5は主走査モータ8の駆動により移動するため、モータ制御部115が例えばPWM制御などにより主走査モータ8を滑らかに減速させることにより、以上のようなキャリッジ5の振動を抑制することができる。しかし、本実施形態では、キャリッジ5が振動している状態で測色カメラ20によるパッチ(パターン像)の撮像を行うため、主走査モータ8を滑らかに減速させる制御は行わずに、キャリッジ5を積極的に振動させる。
なお、以上のようなキャリッジ5の振動は、キャリッジ5を停止させた場合だけでなく、キャリッジ5を急減速させた場合にも生じうる。したがって、測色カメラ20の開口部23がパッチと対向する位置でキャリッジ5を急減速させたときにキャリッジ5が振動している状態で、測色カメラ20によるパッチ(パターン像)の撮像を行うようにしてもよい。
図13は、キャリッジ5が振動している状態で観測されるパターン像の輝度分布を概念的に示す図である。なお、図11と同様に、撮像におけるサンプリング位置を図中の上向きの矢印で示している。図13に示すように、キャリッジ5が振動している状態で観測されるパターン像は、図11に示した例と比較して、主走査方向(図の横軸の方向)に広がりを持った輝度変化を示すようになる。これは、キャリッジ5の振動により、パターン像を構成する各ドットのサイズが見かけ上大きくなるためである。このため、キャリッジ5が振動している状態で測色カメラ20によりパッチ(パターン像)を撮像すると、観測されるパターン像の最高周波数成分fmaxが低くなる。したがって、撮像におけるサンプリング間隔Δxが同じであっても、上記式(1)に示したサンプリング定理の関係を満たすこととなり、画像の折り返し歪みが抑制される。つまり、画像データにおけるモアレを低減することができる。
以上のように、キャリッジ5が振動している状態で測色カメラ20による撮像を行うことで、光学ローパスフィルタや撮像素子を微小駆動させるためのアクチュエータなどを使用せずに、簡便な構成でモアレを効果的に低減できるようになる。
なお、キャリッジ5の振動の振幅は、キャリッジ5を停止(または急減速)させる際の初速と加速度の変化を制御することで調整可能である。キャリッジ5の速度や加速度の制御は、例えば、モータ制御部115が主走査モータ8をPWM制御することで実現できる。このようにキャリッジ5を停止させるまでの速度や加速度を制御してキャリッジ5の振幅を必要最小限まで抑えることにより、キャリッジ5が振動している状態で測色カメラ20による撮像を行う場合でも、被写体の狙った位置を適切に撮像できる。このため、パッチを被写体とする場合には、振動中の撮像に合わせてパッチを大きくする必要はなく、各種規格や標準で決められたパッチをそのまま使用できる。また、パッチ以外の任意の画像を被写体とする場合は、画像の狙った位置を正しく撮像できる。
撮像制御部116は、以上のようにキャリッジ5が振動している状態でパッチ(パターン像)の撮像が行われるように、測色カメラ20による撮像のタイミングを制御する。図14は、撮像制御部116による制御例を説明する図である。撮像制御部116は、例えば図14に示すように、少なくともキャリッジ5の移動速度の正負が反転するタイミングを含む時刻T1から時刻T2の間の時間帯を2次元イメージセンサ25aの受光期間として、パターン像であるパッチの測色に用いる1フレーム分の撮像を行うように、測色カメラ20による撮像のタイミングを制御する。なお、図14中のT0は、モータ制御部115が主走査モータ8を停止させる制御を開始した時刻を示している。
具体的には、撮像制御部116は、パッチの測色に用いる1フレーム分の撮像を行う際の二次元イメージセンサ25aによる受光期間の開始を制御するためのタイミング信号を、測色カメラ20に対して供給する。二次元イメージセンサ25aによる受光期間の長さは、上述したように、CPU101から測色カメラ20に対して供給される設定信号により設定される。したがって、撮像制御部116が図14の時刻T1で二次元イメージセンサ25aによる受光期間を開始させるタイミング信号を測色カメラ20に供給することにより、キャリッジ5が振動している状態でパッチの測色に用いる1フレーム分の撮像を行うことができる。
図14に示した例において、モータ制御部115が主走査モータ8を停止させる制御を開始した時刻T0から、二次元イメージセンサ25aによる受光期間を開始させる時刻T1までの時間は、停止制御の方法が固定されている場合、ほぼ一定である。したがって、この場合撮像制御部116は、例えば、モータ制御部115が主走査モータ8を停止させる制御を開始した時刻T0を基準として、時間的なトリガにより、測色カメラ20にタイミング信号を供給して1フレーム分の撮像を開始させることができる。すなわち、撮像制御部116は、モータ制御部115が主走査モータ8を停止させる制御を開始してから所定時間が経過したときに、測色カメラ20にタイミング信号を供給して1フレーム分の撮像を開始させることができる。
また、撮像制御部116は、エンコーダセンサ13が出力するエンコーダ信号に基づいて算出されるキャリッジ5の移動速度が所定速度になったタイミングで、測色カメラ20による1フレーム分の撮像を開始させるようにしてもよい。すなわち、撮像制御部116は、エンコーダ信号に基づいてセンサ制御部114が算出するキャリッジ5の移動速度を監視し、キャリッジ5の移動速度が図14の時刻T1の速度になったタイミングで二次元イメージセンサ25aの受光期間が開始されるように、測色カメラ20にタイミング信号を供給する。
ここで、センサ制御部114がエンコーダセンサ13から出力されるエンコーダ信号に基づいてキャリッジ5の位置、移動速度および移動方向を計算する方法の具体例について説明する。図15は、エンコーダシート14の構成を示す図、図16は、エンコーダセンサ13の検知面におけるセンサ素子の配置関係を示す図である。
エンコーダシート14は、例えば図15に示すように、その長手方向である主走査方向(キャリッジ5の移動方向)に所定間隔でマーク(黒線)が形成された構成である。図15に例示するエンコーダシート14は、黒線と白線が交互に形成されている。
一方、エンコーダセンサ13には、例えば図16に示すように、2つのセンサ素子13a,13bが搭載されている。これら2つのセンサ素子13a,13bは、図15に示したエンコーダシート14の黒線と白線が交互に形成されている主走査方向において、図16に示すようにギャップgの間隔でずれた状態で配置されている。そのため、センサ素子13aとセンサ素子13bのそれぞれによるエンコーダシート14の表面の検知信号であるエンコーダ信号(エンコーダパルス)は、図16に示したギャップgに応じて位相がずれた信号となる。
エンコーダ信号を処理するセンサ制御部114は、例えば、エンコーダ信号(エンコーダパルス)のA相とB相による4逓倍(1200LPI)アップダウンカウンタを搭載している。この4逓倍アップダウンカウンタは、2つの300LPIカウンタと、1つのステータスカウンタとを備えている。
図17は、エンコーダセンサ13のセンサ素子13a,13bそれぞれから出力されるエンコーダ信号と4逓倍アップダウンカウンタのカウントアップタイミングの一例を示すタイミングチャートである。図17においては、センサ素子13aから出力されるエンコーダ信号をエンコーダパルスA相とし、センサ素子13bから出力されるエンコーダ信号をエンコーダパルスB相としている。
図17に示すように、キャリッジ5が主走査方向の一方向に移動してエンコーダセンサ13のセンサ素子13aがエンコーダシート14の黒線を読み取る状態になると、エンコーダパルスA相が立ち上がる。また、エンコーダセンサ13のセンサ素子13bがエンコーダシート14の黒線を読み取る状態になると、エンコーダパルスB相が立ち上がる。エンコーダパルスA相は、4逓倍アップダウンカウンタの一方の300LPIカウンタに入力される。この300LPIカウンタは、エンコーダパルスA相の立ち上がりでカウントを行う。また、エンコーダパルスB相は、4逓倍アップダウンカウンタの他方の300LPIカウンタに入力される。この300LPIカウンタは、エンコーダパルスB相の立ち上がりでカウントを行う。エンコーダパルスA相およびB相は、4逓倍アップダウンカウンタのステータスカウンタにも入力される。ステータスカウンタは、エンコーダパルスA相およびB相それぞれの立ち上がりおよび立ち下がりを示すステータスパルスでカウントを行う。
各カウンタのカウント方向は、エンコーダパルスのA相とB相の位相差により決定される。例えば、A相がB相より進んでいる場合には各カウンタがアップカウントを行う。一方、A相がB相に遅れている場合には各カウンタがダウンカウントを行う。よって、4逓倍アップダウンカウンタ(実際にはステータスカウンタ)のカウント値は、キャリッジ5が主走査方向の往路側へ移動している場合に増加し、復路側へ移動している場合に減少する。
センサ制御部114は、以上のような4逓倍アップダウンカウンタのカウント値から、キャリッジ5の位置と移動方向を求めることができる。また、センサ制御部114は、ステータスパルスのカウント周期(単位時間あたりのカウント数)をもとに、キャリッジ5の移動速度を求めることができる。
撮像制御部116は、以上のようにセンサ制御部114によって計算されるキャリッジ5の移動速度を監視し、キャリッジ5の移動速度が所定速度になったタイミングで、測色カメラ20による1フレーム分の撮像を開始させることができる。
図18は、撮像制御部116がキャリッジ5の移動速度を監視して測色カメラ20による撮像タイミングを制御する例を説明する概念図である。図18に示すように、センサ制御部114は、エンコーダセンサ13から出力されるエンコーダ信号に基づいて計算されるキャリッジ5の移動速度を、撮像制御部116に随時供給する。撮像制御部116は、センサ制御部114から取得したキャリッジ5の移動速度が所定速度になったタイミングで測色カメラ20による1フレーム分の撮像を開始させるように、測色カメラ20に対してタイミング信号を供給する。
なお、センサ制御部114は、上述したように、エンコーダセンサ13から出力されるエンコーダ信号に基づいて、キャリッジ5の位置を計算することもできる。したがって、撮像制御部116は、センサ制御部114により計算されるキャリッジ5の移動速度の代わりにキャリッジ5の位置を監視して、キャリッジ5の位置が所定位置になったタイミングで測色カメラ20による1フレーム分の撮像を開始させるように、測色カメラ20に対してタイミング信号を供給するようにしてもよい。
また、撮像制御部116は、主走査モータ8の負荷状態を監視して、主走査モータ8の負荷状態が所定状態になったタイミングで測色カメラ20による1フレーム分の撮像を開始させるように、測色カメラ20に対してタイミング信号を供給するようにしてもよい。
図19は、撮像制御部116が主走査モータ8の負荷を監視して測色カメラ20による撮像タイミングを制御する例を説明する概念図である。この例の場合、図19に示すように、主走査モータ8の負荷状態を検出する負荷検出部150が設けられる。負荷検出部150としては、例えば、主走査モータ8を流れる電流を検出する電流センサなどを用いることができる。負荷検出部150は、主走査モータ8の負荷状態を随時検出して撮像制御部116に供給する。撮像制御部116は、負荷検出部150から取得した主走査モータ8の負荷状態が所定状態となったタイミングで測色カメラ20による1フレーム分の撮像を開始させるように、測色カメラ20に対してタイミング信号を供給する。例えば負荷検出部150として電流センサを用いる場合、撮像制御部116は、主走査モータ8を流れる電流値が所定値となったタイミングで測色カメラ20による1フレーム分の撮像を開始させるように、測色カメラ20に対してタイミング信号を供給する。
なお、以上説明した撮像制御部116による測色カメラ20の制御は一例であり、これらに限定されるものではない。撮像制御部116は、キャリッジ5が振動している状態で測色カメラ20がパッチの測色に用いる1フレーム分の撮像を行うように、測色カメラ20による撮像のタイミングを制御すればよい。
また、測色カメラ20による撮像は、動画の中で測色に用いるフレームをキャプチャする方法であってもよいし、測色に用いるフレームを静止画として記録する方法であってもよい。いずれの場合も、撮像制御部116の制御に従って上述した撮像タイミングで撮像を行う。
また、測色に用いるフレームを静止画として記録する場合は、測色カメラ20のセンサユニット25として、図20に示すように、シャッタ機構25cを備えたセンサユニット25’を用いることが望ましい。この図20に示すセンサユニット25’は、二次元イメージセンサ25aによる受光期間を終了させるタイミングでシャッタ機構25cを閉じて、二次元イメージセンサ25aに対する光の入射を遮断することができる。これにより、被写体が移動している際に生じるローリングシャッタ歪みを解消できる。
<画像形成装置の動作>
次に、記録媒体Mに画像として記録したパッチを測色カメラ20により撮像する場合の画像形成装置100の動作の一例を説明する。図21は、画像形成装置100の動作例を示すフローチャートであり、キャリッジ5の移動中に測色カメラ20により被写体のモニタリングを行いながら、測色カメラ20の開口部23がパッチと対向する位置へとキャリッジ5を移動させて撮像を行う場合の例を示している。なお、図21のフローチャートで示す動作が開始される前に、画像形成装置100は、白色の記録媒体M上に記録ヘッド6からインクを吐出して多数のパッチが並ぶテストパターンを形成しており、このテストパターンが形成された記録媒体Mがプラテン16上の所定位置にセットされているものとする。
図21のフローチャートで示す動作が開始されると、まず、測色カメラ20が被写体のモニタリングを開始するとともに(ステップS101)、モータ制御部115が主走査モータ8を動作させてキャリッジ5の移動を開始させる(ステップS102)。なお、測色カメラ20による被写体のモニタリングとは、二次元イメージセンサ25aの受光面における画素の信号を監視して被写体の色などを判定する処理であり、センサユニット25から出力される画像データを、パッチの測色値を算出するためにフレームメモリ62に格納する「撮像」とは異なる処理である。
次に、測色カメラ20による被写体のモニタリングによって測色対象となるパッチが発見されたか否かが判定される(ステップS103)。例えば、二次元イメージセンサ25aの受光面のうち、キャリッジ5の移動方向の前方側に位置する画素のラインを判定領域としたときに、判定領域に含まれる所定数以上の画素が白以外の色を示す信号を出力した場合に、測色対象となるパッチが発見されたと判定できる。
測色対象となるパッチが発見されると(ステップS103:Yes)、パッチの中央付近を測色カメラ20により撮像できるようにキャリッジ5を所定距離だけ移動させた後(ステップS104)、モータ制御部115が主走査モータ8を停止させる制御を開始する(ステップS105)。なお、測色対象となるパッチが発見されていない間は(ステップS103:No)、ステップS103の判定が繰り返される。
モータ制御部115が主走査モータ8を停止させる制御を開始した後、撮像制御部116は、測色カメラ20に撮像を開始させるトリガがONになったか否かを判定する(ステップS106)。測色カメラ20に撮像を開始させるトリガは、上述したように、時間的トリガであってもよいし、エンコーダ信号に基づいて計算されるキャリッジ5の移動速度であってもよいし、主走査モータ8の負荷状態であってもよい。そして、測色カメラ20に撮像を開始させるトリガがONになると(ステップS106:Yes)、撮像制御部116から測色カメラ20に対してタイミング信号が供給されて、測色カメラ20によるパッチの撮像が行われる(ステップS107)。なお、測色カメラ20に撮像を開始させるトリガがONにならない間は(ステップS106:No)、ステップS106の判定が繰り返される。
その後、テストパターンに含まれるすべてのパッチに対する撮像が終了したか否かが判定され(ステップS108)、撮像していないパッチがあれば(ステップS108:No)、ステップS101に戻って以降の処理が繰り返される。そして、テストパターンに含まれるパッチのすべてに対する撮像が終了すると(ステップS108:Yes)、図21のフローチャートで示す画像形成装置100の動作が終了する。
以上、具体的な例を挙げながら詳細に説明したように、本実施形態の画像形成装置100は、測色カメラ20を用いてパッチの測色を行う際に、測色カメラ20を支持するキャリッジ5が振動している状態で、測色カメラ20によるパッチの撮像を行う。したがって、光学ローパスフィルタや撮像素子を微小駆動させるためのアクチュエータなどを使用せずに、画像形成装置100に本来備わる機構を利用した簡便な構成で、画像データに生じるモアレを有効に低減できる。そして、この画像データをもとにパッチの測色値を高精度に算出し、適切な色調整を行うことができる。
<補足説明>
上述した実施形態では、パッチの測色値を算出する機能を測色カメラ20に持たせるようにしているが、測色値の算出を測色カメラ20の外部で行う構成としてもよい。例えば、画像形成装置100のメイン制御基板120に実装されたCPU101や制御用FPGA110が、パッチの測色値を算出するように構成することができる。この場合、測色カメラ20は、パッチの測色値の代わりに、センサユニット25の撮像によって得られるパッチのRGB値や基準チャート40に含まれる基準パッチのRGB値を、CPU101や制御用FPGA110に送る構成となる。つまり、測色カメラ20は、測色値を算出する機能を持たない撮像装置として構成される。
また、上述した実施形態では、画像検査の一例として、記録媒体Mに画像として記録されたパッチの測色値を算出する例を説明したが、本発明は、画像を被写体として撮像し、得られた画像データに基づいて画像の検査を行う様々な画像検査装置に適用できる。この場合、画像を被写体として撮像する撮像部(上述した実施形態の測色カメラ20に相当)は、画像検査装置が備える可動部材(上述した実施形態のキャリッジ5に相当)に設けられる。そして、可動部材が振動している状態で撮像部が検査対象となる画像を撮像するように撮像部の撮像タイミングを制御することで、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
なお、上述した実施形態の画像形成装置100および測色カメラ20を構成する各部の制御機能は、ハードウェア、または、ソフトウェア、あるいは、両者の複合構成を用いて実現することができる。画像形成装置100および測色カメラ20を構成する各部の制御機能をソフトウェアにより実現する場合は、画像形成装置100や測色カメラ20が備えるプロセッサが処理シーケンスを記述したプログラムを実行する。プロセッサにより実行されるプログラムは、例えば、画像形成装置100や測色カメラ20内部のROMなどに予め組み込まれて提供される。また、プロセッサが実行するプログラムを、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD−ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD−R、DVD(Digital Versatile Disc)などのコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供するようにしてもよい。
また、プロセッサにより実行されるプログラムを、インターネットなどのネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成してもよい。また、プロセッサにより実行されるプログラムを、インターネットなどのネットワーク経由で提供または配布するように構成してもよい。
以上、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上述した実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で様々な変形や変更を加えながら具体化することができる。