JP6408257B2 - コンタクトプローブ及びその製造方法、非破壊的なコンタクト形成方法、多層膜の製造過程における測定方法並びにプローバー - Google Patents

コンタクトプローブ及びその製造方法、非破壊的なコンタクト形成方法、多層膜の製造過程における測定方法並びにプローバー Download PDF

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Description

本発明はコンタクトプローブに関し、特に従来のプローバを用いた場合には試料を破壊してしまうような、非常に薄い膜や壊れやすい試料に対して非破壊的に電気的コンタクトを取ることができるコンタクトプローブ及びその製造方法に関する。更に、そのようなコンタクトプローブを使用した非破壊的なコンタクト形成方法、多層膜の製造過程における測定方法及びプローバーに関する。
キャパシタ―、トランジスター、メモリーデバイスそのほかのデバイスに使用される材料開発において、数原子程度のきわめて薄い膜が多層に積層された積層膜が多用されるようになっている。また、グラフェンが電極材料として有望視されている他、二硫化モリブデンなどの層状物質がその二次元性を利用した極薄チャンネル材料として期待されるなど、従来のプローバでは試料を破壊してしまうような薄い材料に電気的コンタクトを形成して試料のさまざまな特性を評価するニーズは非常に高まっている。
上述のような積層膜に最適な材料・プロセスなどを見つけるには膨大な数の確認すべきパラメータがある。このようなパラメータの中でも材料選択は重要で、バルクではなく薄い膜状のデバイスと同じ積層構造になった時点での電気特性を調査して材料のスクリーニングを行うことは、様々な材料・膜厚を絞り込むための有効な手段となる。すなわち、先ず材料のスクリーニングを行い、スクリーニングされた材料について実際にデバイス構造を形成し、従来のプローバーで電気特性測定を行ってプロセスなどのファインチューニングを行っていくという開発工程が取られる。
ところが、通常のデバイス電気特性測定装置である半導体プローバーで用いられている、タングステン探針を押し付ける方法では、電極パッドを数nm以上の深さにわたって破壊して電気的コンタクトを得ている。この従来技術を説明する図1を参照するに、この種の探針(プローブ)でコンタクトを取る場合には、プローブをコンタクトを取るべき対象に積極的に押し付ける。また、多くのプローブではこのような押し付けによりプローブが撓むことにより、プローブの先端が対象の表面で摺動する。このような押し付け(場合によっては先端の摺動も追加される)により、コンタクト対象の表面はほぼ20nm以上も変形する。この程度の変形は特に対象表面に存在するnm厚の膜にとっては非可逆的な変形あるいは膜の破壊という結果をもたらす。図2に、従来技術の探針を押し付けた部分の光学顕微鏡写真を示す。同図右寄りの縦長楕円状の破線で囲まれた部分に着目されたい。探針を押し付けた部分の膜上部が破壊されていることがわかる。
更には摺動による剥離等の損傷が起こる、あるいは摺動が起こらなくても、極めて薄い膜表面に平行な力が印加されることによる膜への悪影響が起こる可能性がある。このような非可逆的な変形や表層の剥離等が問題とならない対象へのコンタクトを取る場合には、試料表面のごく薄い膜の破壊は対象の表面に存在する汚染などの影響を避けて確実なコンタクトを実現するという点でむしろ有益な場合も多い。しかし、このような従来技術は、nm厚さの膜自体が測定対象、あるいは測定対象の構造の一部である場合には当然適用できない。従って、薄くて壊れやすいデバイス膜を対象とする場合には、それを作製後、周りの配線なども行って厚さ100nmを越える電極パッドまで作製した上で、電極バッド上にタングステン探針を押し付けて特性チェックを行っている。あるいは、図3に示すように、絶縁性の基板上に電極パターンを蒸着しておき、そのパターン上に測定したい材料の膜(図中の絶縁体基板上の正方形領域)を蒸着する。プローブを電極パターン(図中では、正方形の膜の四隅に位置する円形部分)のうちの測定したい材料の膜がかぶさっていない部分に押し付けてコンタクトさせることにより、膜自体を破壊せずに特性チェックを行っている。更に別の方法として、図4に示すように、試料をデバイスの形まで作り込むとともに、この測定用デバイスにはプローブをコンタクトさせる電極パッドまで設けておくこともある。
また、デバイスの電気特性を決定付けるバンドアライメントの評価にはX線光電子分光(XPS)測定が有効であるが、半導体・絶縁体が電極と接する構造では、図5に示したように、どの材料をグランド電位にするかによって測定結果が異なる可能性がある。さらに、半導体・絶縁体が電極にはさまれた構造では、上下の両方から電気コンタクトをとってバイアス電圧を印加すると、XPS測定からフラットバンド電圧の評価もできる。特許文献1及び非特許文献1ではこれを利用し、非オーミックコンタクト界面を有する測定試料との電気的な接続を自由に切り替え、その上下に各種の電圧を印加した状態で電子スペクトルを取得することで、非オーミックコンタクトの起こっている界面の特定、ショットキーバリア高さ、フラットバンド電圧等を電子分光的に求めている。
本発明はnm厚さの膜に対しても非破壊的な電気コンタクトを可逆的に形成することができるコンタクトプローブを提供することを課題とする。
本発明の一側面によれば、折り曲げられた線状の形状であって電気伝導性を有する弾性体の支持体と、前記支持体の折り曲げ箇所に取り付けられ、少なくとも表面の一部が球面の電気伝導性を有する接触部とを設けコンタクトプローブが与えられる。
ここで、前記接触部は少なくとも表面を被覆する第1の材料からなる被膜と、前記第1の材料により被覆された第2の材料からなる部材とを有してよい。
また、前記支持体のバネ定数kが下式で表される範囲であってよい。
π×10−2 [N/m]≦k≦5π×10 [N/m]
また、前記接触部の前記球面の表面は溶解した物質を凝固させた面であってよい。
また、前記支持体の長さは2mm以上であってよい。
また、前記球面の表面の少なくとも一部が所望面積の開口部を有する絶縁性領域であってよい。
また、前記開口部の直径は100μm以下であってよい。
また、前記絶縁性領域は絶縁性層で被覆された領域であってよい。
本発明の他の側面によれば、折り曲げられた線状の形状であって電気伝導性を有する弾性体の支持体を準備し、前記弾性体よりも融点が低くかつ電気伝導性を有する物質を前記支持体の前記折り曲げ箇所に取り付け、前記支持体に通電することにより前記物質を溶融させ、前記溶融後に通電を停止することにより前記溶融した物質を凝固させる、前記何れかのコンタクトプローブの製造方法が与えられる。
ここで、前記物質の凝固後にその表面を他の導電性物質で被覆してよい。
また、前記物質の凝固後または前記他の導電性物質による被覆後に、その表面に開口部を有する絶縁性領域を形成してよい。
また、前記絶縁性領域の形成は絶縁性層の被覆により行ってよい。
また、前記絶縁層の被覆は前記絶縁性領域を形成すべき領域及び前記開口部を形成すべき領域の両者に対して行い、前記絶縁層の被覆後に開口部を形成すべき領域の前記絶縁層を除去することによっておこなってよい。
また、前記絶縁性層はフォトレジスト層であり、前記開口部の形成はフォトレジストのレーザーによる露光及び露光後の現像により行ってよい。
また、前記絶縁層の被覆は前記開口を有する状態で形成されてよい。
また、前記絶縁層の被覆は反応すると絶縁物になる物質を気化してビームを照射した部分だけ反応させることによって行ってよい。
本発明の更に他の側面によれば、前記何れかのコンタクトプローブの前記接触部の前記球面の表面を試料上の薄膜が設けられている表面に接触させている間はフィードバックによる接触圧の継続的な制御を行わない、前記薄膜と前記コンタクトプローブとの間の非破壊的なコンタクト形成方法が与えられる。
本発明の更に他の側面によれば、前記何れかのコンタクトプローブの前記接触部の前記球面の表面を試料上の薄膜が設けられている表面に接触させている間は前記接触部を前記試料の前記表面に沿って相対的に移動させない、前記薄膜と前記コンタクトプローブとの間の非破壊的なコンタクト形成方法が与えられる。
本発明の更に他の側面によれば、前記何れかのコンタクトプローブの前記接触部の前記球面の表面を試料上の薄膜が設けられている表面に非破壊的に接触させるコンタクト形成方法において、前記接触が行われるコンタクト面は半径が1μm以上であることを特徴とする、前記薄膜と前記コンタクトプローブとの間の非破壊的なコンタクト形成方法が与えられる。
前記何れかの非破壊的なコンタクトプローブの形成方法において、前記コンタクトプローブの前記球面の表面の少なくとも一部が所望面積の開口部を有する絶縁性領域であり、前記開口部を介して前記非破壊的な接触を行ってよい。
また、前記開口部の直径は100μm以下であってよい。
また、前記絶縁性領域は絶縁性層で被覆された領域であってよい。
また、複数の前記コンタクトプローブを使用し、前記薄膜と前記複数のコンタクトプローブとの間にそれぞれ非破壊的なコンタクトを形成してよい。
また、前記試料上の前記薄膜の厚さは50nm未満であってよい。
また、前記試料上の前記薄膜の厚さは1nm以上であってよい。
本発明の更に他の側面によれば、一または複数の膜を形成後に前記何れかの非破壊的なコンタクト形成方法により前記コンタクトを形成して所望の測定を行い、前記測定後に更に他の膜を形成する多層膜の製造過程における測定方法が与えられる。
本発明の更に他の側面によれば、前記何れかのコンタクトプローブを一または複数使用したプローバーが与えられる。
本発明によれば、nm厚さの膜の上から、膜を破壊せずに電気的コンタクトを可逆的に形成することができるようになるため、配線や電極パッドを作製せずに電気特性評価ができ大幅な時間短縮が可能になるほか、XPSによるバンドアライメント評価、内部光電効果や起電力測定等の多様な評価・測定も同様に行うことができる。更に、弾性変形領域におけるコンタクトが可能なため、コンタクト対象の試料に痕跡を残さない測定が可能となる。つまり、全く非破壊で可逆的なコンタクトであれば、特性評価後さらに膜を積層し続けることも可能で、製膜条件の最適化へのその場フィードバックや製膜中のモニタリングも可能になる。これにより、開発コストや製造歩留まりの向上に貢献できるようになる。更には、本発明でコンタクトの対象としている膜は、デバイスの構成要素として実際に使用される際には、ほとんどの場合、膜材料単体ではなく電極などの他の材料と組み合わせて使用される。従って、膜の材料と電極などの材料との組み合わせの選択もデバイスの設計に当たって重要なパラメーターである。本発明によれば、コンタクトプローブの材料を電極材料に見立てることで、実際にデバイスを作製する代わりにプローブ材料を変えることで適切な電極材料を見出すことができる。また、接触部と電気的コンタクト対象とのコンタクト面積を一定にすることが簡単に実現できるので、電気容量−電圧特性の測定等のコンタクト面積が測定値に影響を与えるような場合の測定の再現性を良好にすることができ、更には他の測定結果との比較が容易になる。また、これにより実際のコンタクト面積を個別に測定することなしにコンタクト面積を知ることができるため、コンタクト面積が影響する測定の結果から単位面積当たりの物理パラメータ値を容易に求めることができるようになる。
従来技術によるコンタクトプローブの測定対象膜への悪影響を説明する図。 従来技術のコンタクトプローブによる測定後の測定対象膜の破壊を示す光学顕微鏡写真。 測定対象膜への悪影響を回避するための従来技術の一例を説明する図。 測定対象膜への悪影響を回避するための従来技術の他の例を説明する図。 測定結果に違いをもたらす可能性のある各種の電気コンタクトの取り方を示す図。ここで、M、M1、M2は金属を、Iは絶縁体を、またSは半導体を表す。 カンチレバーを試料に接触させた際のフォースカーブを示す図。 剛体の球面を平板に接触させた際の変形のモデルを示す図。 本発明の一実施例のコンタクトプローブの概略を示す図。 コンタクト材料として金を、また支持体材料としてタングステンを使用した場合のコンタクトプローブの一例の全体写真。 コンタクト材料として金を、また支持体材料としてタングステンを使用した場合のコンタクトプローブの一例の先端部の写真。 本発明の実施例の動作の実証実験のための測定対象試料の構造を示す図。 本発明の実施例の動作の実証実験のための測定システムの構成を示す図。 本発明の一実施例のコンタクトプローブを用いた測定によって得られたPt 4fスペクトル、Hf 4f及びO 1sスペクトルを示すグラフ。 非特許文献1で得られた、図13に対応するスペクトルを示すグラフ。 図13に示すそれぞれのスペクトルのピーク位置を印加バイアス電圧の関数としてプロットしたグラフ。 非特許文献1で得られた、図15に対応するピーク位置を示すグラフ。 本発明の一実施例のコンタクトプローブのAu球が試料表面に接触していたコンタクト部分及びその周囲の写真。このコンタクト部分のXPS測定を行った。 本発明の一実施例のコンタクトプローブのAu球が表面に薄膜を有する試料表面に接触していたコンタクト部分及びその周囲の顕微鏡写真。 図17のコンタクト部分から得られたXPSスペクトルを示すグラフ。差し込み図はAu 4fピーク位置周辺の拡大図であり、当該コンタクト部分からのXPSスペクトルには金に対応付けられるピークが全く見られないことを示す。 本発明のコンタクトプローブを使用して行うことができる内部光電効果、起電力の測定の態様を説明する概念図。 高真空中で本発明の実施例のコンタクトプローブを使用して電気コンタクトを実現する機構及びマイカ上の金薄膜を用いた当該機構の動作の実証の様子を示す写真。 製膜中に層毎に測定・評価を行う方法を説明する方法を説明する概念図。 本発明のコンタクトプローブと測定対象とのコンタクトを一動作で形成・解除する機構の概念図。 本発明のコンタクトプローブを使用したマルチコンタクトプローブ測定の概念図。 パターン化された薄膜に対してマルチコンタクトプローブ測定を行う態様の概念図。 バックコンタクトを取りながらマルチコンタクトプローブ測定を行う態様の概念図。 接触面積を限定した開口付きコンタクトプローブを作製する方法の一例を概念的に示す図。 表1に示す試料番号#1−1〜#1−6の開口付きコンタクトプローブの開口周辺の光学顕微鏡写真。 表1に示す試料番号#2−1、#2−3及び#2−5の開口付きコンタクトプローブの開口周辺の光学顕微鏡写真。 表1に示す試料番号#2−2、#2−4及び#2−6の開口付きコンタクトプローブのポストベーク前及びポストベーク後における開口周辺の光学顕微鏡写真。
[非破壊コンタクト実現の原理]
まず、nm厚さの膜を破壊せずに電気的コンタクトを実現する原理について述べる。「電気的コンタクトが取れている」ということは、物理的にどういうことかを考える。簡単のために2つの金属の間に「電気的コンタクトが取れている」ことを考える。この場合、2つの金属表面の電子分布が十分に重なり合って電子が自由に行き来し、フェルミレベルがそろうことが「電気的コンタクトが取れている」状況である。この状況は、原子間力顕微鏡(AFM)で実現可能である。なお、走査型トンネル電子顕微鏡の測定条件下では電子はトンネルにより行き来するが、自発的にフェルミレベルがそろう訳では無い(自発的にフェルミレベルがそろうなら、チップ−試料間にバイアス電圧が印加できない)。チップ先端を金属でコーティングしたカンチレバーを用いたAFMにおいて、金属試料表面との間に斥力が働くほどチップを近づけた状態で電流‐電圧(I−V)特性を測定すると、オーミックな挙動が観測され、試料とチップ先端との間に「電気的コンタクトが取れている」ことが分かる。たとえ斥力領域であったとしても、フォースカーブにおいて元のところに戻る(弾性変形している)場合には、コンタクトAFMは非破壊測定とみなされる(図6参照)。すなわち、2つの材料間が、斥力が働くほど原子が接近しているが、弾性変形していて力をはずせば元に戻るような状態を実現すれば、非破壊で電気的コンタクトが取れる。
しかし、膜面方向にミクロンオーダーで均一な極薄膜の電気特性を測定するのに、AFMを用いるのは非現実的である。なぜなら、AFMにおいては、電気的にコンタクトする領域が原子レベルで、精密な力のフィードバック機構と除振機構を必要とする上、量子化コンダクタンスの問題が発生する可能性もあるからである(非特許文献2)。電気特性測定用のプローブとしては、比較的広い領域で試料に接触して力が分散し(精密な力のフィードバックが不要)、かつ深さ方向には弾性変形領域に収まるものが必要である。
そこで、AFMにおける非破壊測定とみなされる斥力の圧力を計算する。Cuに対してバネ定数〜3[N/m]のカンチレバーを用いて試料表面が探針に接触するまで近づけたのち、さらに〜5nm程度試料を探針へ押し付けた場合に、図6のような、アプローチとリトラクトとでフォースカーブが重なり、試料には斥力が働いているが弾性変形していることが分かった。カンチレバー先端の接触部の曲率半径は25nm以下で、そのカンチレバーを用いて測定したコンタクトモードにおける原子間力によるイメージの空間分解能から、カンチレバーが試料に接触している円の半径は10nm程度と推測される。すなわち、3[N/m]×5[nm]の力が、接触面積π×(10nm)にかかっている。したがって、斥力の圧力は{3[N/m]×5[nm]}/{π×(10nm)}〜5×10[Pa]となる。一般的な無機材料の降伏強さは1×10[Pa]程度なので、この斥力範囲で弾性変形しているというフォースカーブの結果は妥当である。なお、上で「〜5nm程度試料を探針へ押し付けた場合に」と書いたが、この「5nm」は、カンチレバーのたわみに相当し、試料の弾性にもよるが、試料に実際にめり込む深さは5nmよりはかなり少ないと考えられる。ここで、図7に示すような、半径rの剛体の球をかつ圧力により変形可能な平坦な板に接触させるというモデルを考える。上に示した条件を、同図に記載の式である、カンチレバー先端の接触部の曲率半径r、接触面の円の半径yとめり込む深さxの関係式に入れると、めり込む深さxは2nmよりわずかに少ないことになる。実際にめり込む深さは試料の弾性率や膜厚・形態に依存するものであって、試料により大きく変化するものである。更には、球面上のカンチレバー接触部を平坦な試料に押し付けた場合、両者の弾性率が同程度であれば球面の変形の方が大きいと考えられるので、上に挙げためり込む深さxは更に小さな値となることが多いと考えられる。従って、このめり込む深さ自体はそれほど本質的なパラメーターではない。
次に、接触面の円半径がミクロンオーダーになるコンタクトプローブで、上で求めた圧力範囲の力を、精密なフィードバックなしに実現できるかどうかを、図7に示すモデルに基づいて検討する。先ず、本発明のコンタクトプローブは接触部がほぼ球面状なので、その製造や取扱いを考えても球状接触部を極端に小径とすることはできない。また、球状接触部及び接触の相手となる試料の通常の材質を考えても、わずかな接触圧で大きく変形することは通常は考える必要がない。よって、接触面の現実的な最小円半径もミクロンオーダー、つまり1μmであると考えてよい。この接触圧により平板が変形してその中に球がxだけ入り込むことにより、球と平板とが半径yの円で接触したとすれば、r、x、yの関係は
=(r−x)+y
と表すことができる。例えば、接触面の円の半径が100μmとすると、上で求めた圧力を与える力は、5×10[Pa]×{π×(100μm)}〜1.5[N]となる。押さえばねとして市販されている厚さ0.5mmの薄板ばねに50[N]の荷重をかけた場合の垂直たわみは〜30mm程度(バネ定数〜2×10[N/m])なので、1.5[N]の力がかかればそのたわみ量は1mm程度となり、十分に目視でたわみが検出できる。すなわち、目で見てたわみはじめるぐらいコンタクトプローブを試料に押し付ければ、弾性変形領域の圧力を試料に加えることができる。実際に本コンタクトプローブの支持体としてはもっと薄い板ばねや、あるいは板状ではなくワイヤー状のバネなど、よりバネ定数の小さいばねを用いるので、同じ荷重でより大きなたわみが得られる。したがって、精密なフィードバック無しに、容易に、コンタクトプローブを弾性変形する斥力範囲で試料に接触させて電気的接触を取ることができると考えられる。
ここで、必要なバネ定数の範囲を求めれば、接触面(円形)の半径をy[m]、バネ定数をk[N/m]として、次の関係式
π×1010 [N/m ≦k/y≦5π×1011 [N/m
を満たす必要がある。一方、接触面の半径yを検討するに、下限は上述のように1μmとしてよい。また、上限については半径yが100μmを超えると、接触面が不均一になりがちであること、また接触部及び試料の通常の材質では変形量がそれほど大きくならないことから考えて接触部の曲率半径が極端に大きくなって測定の際の邪魔になる恐れがあること、更には電流を流して測定するデバイス評価としては電流値が過大になる恐れがあることなどから、現実的ではない。従って、現実的なコンタクト面の半径yの範囲は
1μm≦y≦100μm
とすることができる。よって、上述の関係式及び接触面の半径の範囲の条件を満たすバネ定数kの範囲は以下のようになる。
π×10−2 [N/m]≦k≦5π×10 [N/m]
このバネ定数範囲は、原子力顕微鏡で用いられるカンチレバーのバネ定数の範囲とオーバーラップしつつも少し値の大きい範囲で、かつ、電磁リレーで使用されるような従来技術のカンチレバー型電気接点用コンタクトのバネ定数よりも2桁あるいはそれ以上小さい値となっている。また、従来のプローバーで用いられているまっすぐな針状のプローブについてはバネとしてとらえられていないため、そのバネ定数は通常は仕様として公表されていないが、従来技術のカンチレバー型電気接点用コンタクトよりも更に高いばね定数を有していると考えられる。

上述の垂直たわみの目視による具体的な確認方法としては、これに限定するわけではないが、例えば以下のような方法がある。先ずコンタクトプローブの位置を固定し、コンタクトを取るべき試料の上面がコンタクトプローブ先端の球面の接触子に近づくように試料をせり上げていく。接触子あるいはこれに直接連動する何らかの部材を注視していると、最初はコンタクトプローブの接触子は試料に接触していないため、接触子位置は当然変化がない。接触子の球面部分が試料に接触し、なおも試料位置がせりあがっていくと、接触子が接続されているばね部分の変形による反発力が球面部分を介して試料上面の間に印加され、試料上面を弾性変形させる。一方、接触後の試料位置のせり上がりは接触子を上方へ持ち上げるので、ばね部分のばね定数を十分小さくしておくことにより、試料上面の変形が弾性変形領域にある間に接触子の上の移動量が目視検出可能な大きさとなる。
なお、接触子と試料上面との間の相対運動の方向は、接触子と試料との接触後のこの相対運動により両者の間に試料上面に平行な方向の力が実質的に印加されないような方向にするのが好ましい。具体的には、ばね部により接触子の運動方向が拘束されるが、この拘束された運動の方向が接触子と試料との相対運動方向と平行になるようにするのが好ましい。なぜなら、この平行な力が印加されると、接触子が試料上面上で摺動して膜を損傷する可能性があり、また摺動が起こらなくても、そのような膜面に平行な力の印加が極めて薄い膜の内部構造を変化させるなどの悪影響が起こり得るので、このような悪影響がほとんど無視できる程度までこの平行な力を抑えるのが好ましいからである。
あるいは、目視に頼らなくても、部材の微量な偏位を光学的、電気的等の別の手段を用いて検出する多様な方法やそれを実現する具体的な装置構成はよく知られているので、このような既存の技術を採用することも当然可能である。
本発明のコンタクトプローブがコンタクトする主要な対象としている極めて薄い膜が形成された試料については、その弾性変形領域としてはほぼ5nm以下であると考えられるが、上で数値例を用いて説明した垂直たわみの計算結果などから、球が5nm程度試料に入り込めば、フィードバック等の制御を全く行わなくとも、上述の垂直たわみは目視で十分検出可能である。なお、実際には試料の弾性変形の程度は試料の弾性係数と厚みに依存する部分が多く、支持体の垂直たわみとの間には直接的な数量関係が乏しい。従って、本発明のコンタクトプローブによるコンタクト形成の有無やその検出の可否の直接の指標として弾性変形量を取ることは適切ではない。例えば、以下で説明する本発明の実施例に挙げた5層グラフェンの場合にはコンタクト形成時のグラフェンの弾性変形は1nmよりかなり小さいと考えられるが、それでも十分な電気的コンタクトが取れていることが確認され、また支持体の垂直たわみも目視により十分に検出することができた。
このような、コンタクト用部材(コンタクトプローブ)は、通常のカンチレバー状の、全体として一様な構造のコンタクトプローブとは異なり、測定対象の試料上の測定の対象となっている層の厚さ(nm厚)と比較すれば十分に大きな曲率半径を有する球面で試料と接触する接触子と、撓みやすい薄板状、細線状等のばね部材との、互いに明確に異なり、またそれぞれ単純な形状および要求される機能を有する2つの要素を持つ。そのため、要素毎に最適な材料、サイズを採用するなどの最適化が容易となる。
ここで、AFMで使用されるカンチレバーと本発明のコンタクトプローブの相違点について更に説明する。上述のように、AFMは本発明のコンタクトプローブと比べて接触面の面積がはるかに小さいだけではなく、フィードバックをかけながら適切な接触圧で接触させるという点で本発明のコンタクトプローブとは使用形態が本質的に異なることから、要求される支持体の長さが全く異なる。AFMのカンチレバーはフィードバックをかけて非常に微細な位置や圧力の制御を行うため、その質量をできるだけ小さくする必要がある上に、長いと各種の外乱の影響を受けやすくなるため、非常に短いカンチレバーが使用される。具体的には、通常入手可能なAFMのカンチレバーでは、長さは高々500μm程度である。
これに対して本発明のコンタクトプローブでは、支持体の長さをAFM程度の短い値にすると非常に作り難いものになるなど、短い支持体長は実際に製造するに当たって不利になる。また、接触させるに当たって接触圧力を適切な値に維持するためのフィードバックを行わないため、上述したように支持体のたわみをある程度大きくする必要があることからも、支持体をあまり短くすることはできない。例えば支持体長を通常のAFMカンチレバー長の上限である500μmとすると、この支持体の先端を上述したように1mm程度たわませるためには、支持体と試料表面とが成す角度の変化がかなり大きくなる(0度よりは90度にかなり近い角度変化となる)。このようなたわみを支持体に与えると、たわみ始めの位置と最終的なたわみ位置とではバネ定数が大きく変わってしまう。更に、たわみ始めの位置で接触領域と試料上面との間に垂直方向の力だけが印加されるようにしておいても、たわみが大きくなってくると試料上面に平行な力の成分も増大し、またたわみ量に合わせて試料をその上面の方向に平行移動させない限り、接触部分が試料上面で摺動する。そのため、短い支持体長は試料上面に対して非破壊的なコンタクトを取るという点で非常に不利になる。従って、本発明のコンタクトプローブにおいてはその支持体長は支持体先端の最大たわみ距離に比べて十分長くすることが望ましい。具体的には通常は10mm以上とするのが望ましく、特別な用途や使用状況まで考えても、下限は2mm、好ましくは3mm、更に好ましくは5mmとなる。なお、支持体長の上限については理論的には特に制限はないが、コンタクトプローブの実際の使用環境(例えば、真空チャンバー内の狭い空間で使用する、他の機器等と共に使用する、等)から、10cm程度よりも長くすると実用性を失うと考えられる。
上述の解析は図7に示すモデルに基づくものであるので、このモデルから大きく外れる状況では不都合が起こることがある。具体的には、平板と接触する球は、少なくとも半径yの接触面においてはなめらかな球面になっている必要がある。この部分に凹凸があると、そこに応力が集中して平板(具体的にはnm厚の薄膜)に不可逆的な変形を起こしたり、あるいはこの凹凸部が試料表面を削ったり、逆に球表面の材料が剥落して試料側に付着する等によって、測定対象の試料に悪影響を与える可能性がある。すなわち、応力集中のない滑らかな曲面と、ある程度の接触面積(支持体のたわみが目視できる程度の圧力が試料を破壊しない程度に分散するだけの接触面積)の2つが重要である。
更には、コンタクト領域のうちの実際に電気的なコンタクトが取られる面積(接触面積)が一定になるようにしたい、あるいは接触面積が既知であってほしいという要求もある。例えば電気容量−電圧特性(キャパシタ特性、MOS特性)を測定する場合には当然接触面積に比例する測定値が得られるが、知りたい値は単位面積当たりの容量であることが多い。ところが、接触面積を実測することは多くの場合困難である。あるいは、必ずしも単位面積当たりの値が必要とされなくとも、測定値が接触面積の影響を受ける可能性がある測定では、測定結果同士の比較のためには接触面積が毎回(同一のコンタクトプローブの繰り返し使用の場合、あるいは使用するコンタクトプローブを取り換えた場合)一定であることが保証されていることが望ましい。特に、本発明のように比較的大きな曲率半径を有する滑らかな曲面とある程度の弾性を有する面との接触においては、わずかな条件の違いで接触面積が変化することを考慮することが必要な場合がある。
コンタクト領域における実際の接触面積が一定、あるいは既知であるようにするためには、コンタクト領域のうちの少なくとも対象にコンタクトを取ることが予定されている領域を絶縁性とするとともに(もちろん、このような領域を含む更に広い領域全体、更には接触部全体、を絶縁性としてもよい)、この絶縁性領域に開口部を設け、この開口部を介して測定対象にコンタクトさせればよい。これにより、接触面積はこの開口部の面積に規制される。もちろん、開口部を有するコンタクト領域を作製する方法はこれに限定されるものではない。これに限定する意図はないが、他の方法を例示すれば、ナノインク等を用いてプリントすることで開口部以外の部分をコーティングする、反応すると絶縁物になる物質を気化してビームを照射した部分だけ反応させることで開口部以外をコーティングする等によって開口部を形成することができる。具体的には、例えば塩化チタン(TiCl)やトリメチルガリウムのような金属元素を含んだガスを導入した真空装置内で酸素ビームを照射して、ビームが照射された部分にのみ非常に薄いアモルファス絶縁膜を作製する、などの方法で実現できる。また、有機分子を蒸着しておいて電子ビームや光を照射し、照射された部分のみ重合反応を起こさせることにより、開口付きの有機絶縁膜を形成することもできる。
開口部の大きさは、絶縁性領域を全く設けなかった場合にコンタクト領域と測定対象とが実際に接触することが予測される微小な領域よりも小さくすることが好ましい。導電性領域上に所望の大きさ・形状の絶縁性領域を形成する方法は微細加工技術の領域では確立された技術であり、必要に応じて好適な方法を適宜採用すればよい。また、開口部の大きさは通常は開口部付近の球面の曲率半径よりもかなり小さいので、開口部から露出している導電性の接触部表面が測定対象の面にコンタクトするのを妨げないように、絶縁性領域(絶縁性の膜等)の厚さは十分薄いことが好ましい。また、コンタクト時に測定対象に対して損傷を与えることを防止するなどの目的で、絶縁性領域は十分に柔軟であることが好ましい。具体的には絶縁性領域の下地となっている材料(Au等)よりも柔らかいことが望ましい。また、開口部により接触面積を規制するということから、通常は開口部周辺の絶縁性領域は測定対象の面に接触することを想定する必要がある。そのため、測定対象や要求されている繰り返し使用回数等の使用形態にもよるが、絶縁性領域にはある程度の強度が求められることが多い。以下で説明する実施例ではコンタクト領域に形成されたレジスト膜上の所望位置をレーザーを用いて所望の形状及びサイズで露光し、その後に現像処理を行うことで、直径が充分に制御された円形の開口部を設けたレジスト膜をコンタクト領域上に形成した。もちろん、他の任意の方法を採用してもよい。また、開口部の形状を円形以外としてもよい。
なお、金属と半導体や絶縁体とのコンタクトの場合、「電気的コンタクトが取れて」いてもオーミックな挙動にはならないことが多いが、それでもフェルミレベルが揃えば「電気的コンタクトが取れている」と言える。従って、本発明で実現する「電気的コンタクト」はフェルミレベルが揃うことを意味する。
また、上述の本発明の原理説明においては、単に破壊を起こさないだけではなく、コンタクトが測定対象の試料に対して高々弾性変形の範囲で行われる、つまり塑性変形を与えないことにより、コンタクトが一旦解除されると試料はコンタクト前の状態に完全に復帰する場合について説明を行った。しかし、破壊は起こっていないが試料表面に塑性変形が残るようなコンタクトの態様も、目的や適用分野によっては十分に有用である。従って、本願では「非破壊的」、「破壊せずに」等の用語が表す事態は、特に明記しない限り、塑性変形が残る場合を包含するものとする。
「なお、本願で言う「nm厚」とは、50nm未満、例えば20nm以下、10nm以下、5nm以下の厚さを言う。また、膜厚の下限は好ましくは1nmである。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものでないことは言うまでもない。
[コンタクトプローブの作製]
ヘヤピン状にしたタングステン等の支持体となる材料のワイヤー先端に、金等のコンタクト材料のワイヤーを少量絡み付かせ、支持体ワイヤーの2つの先端をそれぞれ電流導入端子に接続する。これを真空容器に接続して高真空領域(10−6Torr程度)に真空引きする。電流導入端子を定電流電圧源につなぎ、ワイヤーに電流を流して(ジュール)加熱する。ワイヤー先端の温度をコンタクト材料の融点まで上昇させ、コンタクト材料を融融させる。溶融したコンタクト材料は他の部材に接触していないため、表面張力により表面が非常にスムーズな球状になる(もちろん、重力、溶融したコンタクト材料とワイヤー材料との濡れ性その他の影響により、完全な球面にはならないが、本願ではこのような場合も含め、本願の目的・作用効果を達成する限り、真の球面から多少のずれがあっても球面と呼ぶ)。この状態で電流を停止することにより、溶融したコンタクト材料は非常にスムーズな表面状態を維持したまま凝固する。このようにして作製した球状コンタクト材料が融着しているワイヤーをコンタクトプローブとして用い、積層膜に接触させて電気的コンタクトを形成する。コンタクト材料の接触面が非常にスムーズで積層膜に接触した際に積層膜を傷つけず、支持体ワイヤーを通じて金属球を接触させるので、支持体ワイヤーがたわむことで接触圧が抑えられ、積層膜を破壊しない。
上述のようにして作製したコンタクトプローブの一例の概念図を図8に示す。ここに示す接触子はヘアピン形状としたタングステンワイヤー(Wワイヤー)の先端(折り曲げ箇所)に金属球として金の球(Au球)を溶着させたものである。ワイヤーを折り曲げてあるのは、これによって、先端にAu球が搭載され、それを2本の柔軟で容易に撓むWワイヤーで支持したカンチレバー構造が得られるからである。このようなカンチレバー構造を有するコンタクトプローブは、プローバーなどにおいて従来の探針を容易に代替できる。また、溶着のためにAu等のワイヤーをヘアピン構造の折り曲げ部に絡ませることで、金属球の位置を簡単に制御できる点も好都合である。なお、コンタクトプローブは、接触子から2本のWワイヤー等の支持体がヘアピン状に同じ方向に延びていてこれらの支持体を単一の梁と見なすことができる純粋なカンチレバー構成となっている必要は必ずしもない。例えば、ヘアピンの足が開いた状態、すなわち2本の支持体が平行ではなく互いに別の方向に延びるなど、使用形態や作製の都合に合わせて任意の形状とすることもできる。なお、特定の形状に限定する意図はないが、上記の形状以外の例と して、2本のワイヤを絡ませて1本のようにした形状、ほとんど一直 線状になっているワイヤの途中に接触子がついている形状などが挙 げられる。更には、接触子の形成後に片方のワイヤを切断する、あるいは上述した以外の方法により1本のワイヤの先端に接触子を取り付ける等により、実際に1本のワイヤだけで接触子を片持ちするなどの他の形状も可能である。
このようにして作製されたコンタクトプローブの具体的な形状等は、コンタクト材料の融点や量、支持体の径、溶融したコンタクト材料の表面張力や支持体への濡れ性、加熱温度・加熱時間等により変化するが、コンタクト材料として金を、また支持体材料としてタングステンを使用した場合のコンタクトプローブの一例の全体写真及びその先端部の写真をそれぞれ図9及び図10に示す。なお、図9の全体写真には、当該コンタクトプローブの一例の大きさをわかりやすくするため、ピンセットも映っている。また、図10から、金属(金)球の表面は非常に滑らかになっていることがわかる。
上の例で示したように、コンタクト材料として最も一般的なものは金、支持体材料として最も一般的なものはタングステンである。実際に下記の表の系でコンタクトプローブ作製を行った。
上記の方法ではコンタクト材料の融点は支持体材料の融点よりもかなり低い必要がある。しかし、コンタクト材料としてはこれ以外に白金なども考えられる。白金などのように高融点の材料をコンタクト材料として使用したい場合は、比較的低融点の金などで融融した非常にスムーズな表面を有する球を支持体ワイヤー先端に形成後、白金などの高融点材料をスパッタ蒸着などで薄くコーティングすることにより、スムーズな表面をもつ球状という形状を維持したまま任意の材料をコンタクト材料とすることができる。
[電気的コンタクトの実証]
このようにして作製したコンタクトプローブが、厚膜に対して使用されている半導体プローバーやテスターなどと比較してそれらと同等の電気的コンタクトが可能であることを実証するために、以下のような実験を行った。
実験に用いた試料は、非特許文献1に示されているバイアス印加XPSの実験用に作製された図11の構造を持つMOS試料である。図11の試料では最上層に4nmのPt膜を設けたが、その左端部分は60nm厚とした。非特許文献1で行ったバイアス印加XPS実験では、この60nm厚のPt膜上に、AuコートCuBeバネ板を通じて電気的コンタクトを得た。非特許文献1の実験では、Pt膜と試料下面のSi基板との間にバイアス電圧をさまざまに印加してXPSスペクトルを取得し、MOS構成成分のそれぞれの元素の結合エネルギーのバイアス依存性を測定することで、AuコートCuBeバネ板と60nm厚のPt膜との間に接触抵抗の無い電気コンタクトが得られていることが実証されている。本願実施例においては、Pt膜の60nm厚の部分ではなく、XPS測定用の4nm厚のPt膜上(図11に「接触点」として示す)に、上で作製した図8に例示したようなAu球をコンタクト材料とし、またタングステンワイヤーを支持体とするコンタクトプローブを用いて電気コンタクトを取り、XPS装置内に入れて、バイアス印加XPSを測定した。この測定システム構成を図12に示す。測定手順や条件などは60nm厚のPt膜上にAuコートCuBeバネ板を通じて電気的コンタクトを取って行った非特許文献1の実験と同様である。本発明はXPS測定方法それ自体ではないのでこの実験の条件等の詳細についてはこれ以上説明しないが、必要であれば非特許文献1を参照されたい。
図13a)にPt膜側をグランドに、Si基板側にバイアス電圧を印加した場合のPt 4fスペクトル、Hf 4f、O 1sスペクトルを示す。図13b)には、Si基板側をグランドに、Pt膜側にバイアス電圧を印加した場合のPt 4fスペクトル、Hf 4f、O 1sスペクトルを示す。図14には、非特許文献1に示した測定結果、つまりPt薄膜の60nm厚の部分にAuコートCuBeバネ板を通じて電気的コンタクトを取った場合の図13に示したものにそれぞれ対応する測定結果を示す。また図15a)及び図15b)には、図13に示すそれぞれのスペクトルのピーク位置を印加バイアス電圧の関数としてプロットしたグラフを示す。図16は、図14と同様、非特許文献に示した図15に対応するグラフである。非特許文献1における60nm厚のPt膜上の結果と同様、Pt側の電位を常にグランドにした場合、Pt 4fのピーク位置はバイアス電圧に依存していない。これは、今回作製したコンタクトプローブと4nm厚Pt膜との間に接触抵抗の無い電気コンタクトが得られていることを示している。また、これらの結果は、XPS測定位置はコンタクト点から離れているので、コンタクトにより4nm厚のPt膜に亀裂が入るなどして膜の連続性が損なわれていることも無いことを示している。さらに、Pt 4fとHf 4fとO 1sのピーク位置のバイアス電圧依存性の違いから求まるバンドアライメントの理想からのずれがPt膜とHfO膜界面で印加電圧の約30%であるという結果も、60nm厚のPt膜上の結果と同様であった。これらの結果から、ここで作製したAu球とタングステン支持体とを組み合わせたコンタクトプローブを用いて、非破壊で十分な電気的コンタクトが得られていることが実証された。
[コンタクトによる汚染がないことの確認]
上述の実験に使用したMOS試料からコンタクトプローブの接触を解除して、コンタクトが起こっていた部分の表面組成をXPSにより調べた。コンタクトプローブのAu球が試料表面に接触していたコンタクト部分及びその周囲の写真を図17に示す。図19にXPSスペクトルを示したように、コンタクト部分からはコンタクトプローブの金の光電子ピークは全く検出されなかった。この結果は、本実施例のコンタクトプローブを試料にコンタクトさせても、コンタクトプローブ先端の物質が試料表面に付着することによる汚染が無いことを示している。これにより、素子の作製途中でその段階で出来上がっている膜についての測定を行い、その後素子の作製プロセスを継続しても、当該途中での測定は最終的な素子の動作等に悪影響を及ぼすことがない。
[コンタクトによる膜の破壊が起こらないことの確認]
図2に従来技術による試料表面の膜の破壊の実例の写真を示したが、ここでは本発明のコンタクトプローブについての比較対照実験を行った。すなわち、上述の[電気的コンタクトの実証]において本発明のコンタクトプローブについての電気コンタクトの実証試験を行い、次に[コンタクトによる汚染がないことの確認]においてコンタクトプローブの接触を解除して汚染が無いことを確認した後の試料を、光学顕微鏡により撮影した。その結果を図18に示す。図18は図2と同じ光学顕微鏡により撮影したものだが、Au球の接触箇所(図の左上の破線の円で示す)の像からわかるように、図2とは異なり、接触の痕跡は全く見いだされなかった。
[応用例・変形例]
以上説明した本発明の新規なコンタクトプローブは、例えば半導体プローバーにおいて、従来用いられていたタングステン探針の代わりに装着して、非破壊測定に用いることができる。
また、上記実施例ではコンタクト部分の材料としてAuを使用したが、既に説明したように、例えばCu、Al、Pt等のこれ以外の多様な材料を使用することもできる。コンタクト部分として使用されるなめらかな球面を形成した後、そのままコンタクトプローブとして使用してもよいし、あるいは当該球面上にコーティングを行うこともできる。コーティングを行うことで、ほとんどすべての材料をコンタクト材料とすることが可能となる。
更には、測定対象側に電極を形成する前であっても、コンタクトプローブ側のコンタクト材料そのものを測定対象側の試料に形成されるべき電極等の要素と同じ材料として試料にコンタクトさせることにより、このコンタクト材料そのものをデバイスの一部(つまり本来デバイス側に形成されるべき電極等)として評価を行うことができる。
例えば、ゲート金属をコンタクト材料とすると、ゲートメタルをパターニングしなくても、あるいはゲート絶縁膜に穴があってもC−V測定が可能となる。また、電極金属をコンタクト材料とすると、ReRAM動作の電極金属依存性を簡便に測定できる。
本発明のコンタクトプローブを使用して行うことができる測定の他の例としては、例えば図20(a)にその概念図を示す内部光電効果測定、及び図20(b)にその概念図を示す起電力の測定がある。図20において測定対象の試料は金属1、半導体2、金属或いは半導体3である(他の組み合わせもある)。また、図示しないが、測定対象の試料はもっと多くの層を有し、それにより金属/半導体界面、半導体/半導体界面が図20に示した場合よりももっと多くてもよい。このような構成の試料にその上面から本発明のコンタクトプローブでコンタクト(フロントコンタクト)を取り、また試料の下面には別の手段によりコンタクト(バックコンタクト)を取る。この状態で試料に照射する光のエネルギーを変えながら、光で励起された電子の量を電流から測定し、光電流の流れだす閾値エネルギーを測定する(図20(a))。あるいは照射する光のエネルギーを変えながら、電流が流れないようにバイアス電圧を印加し、その電圧から光起電力を測定する(図20(b))などの計測を行う。なお、電圧を発生するメカニズムとして、光照射の場合は光起電力だが、熱(試料を加熱・冷却する)の場合は熱起電力、化学反応の場合は電池の起電力など、さまざまな電圧発生メカニズムがあり、本方法は、電圧発生メカニズムを問わず適用可能である。なお、本願全体にわたって、Vは電圧計または電圧源を、またAは電流計または電流源を表す。また、図20(a)や後で説明する図24(a)、(c)では電圧計/電圧源Vと電流計/電流源Aとが2つの端子の間に直列に接続されているかのように見えるが、これは必ずしも物理的に直列に接続されていることを意味するものではなく、2つの端子の間に電圧計/電圧源Vと電流計/電流源Aがともに機能するように適宜接続されていることを意味することに注意されたい。例えば、Vが電圧計、Aが電流源である場合には、実際には2つの端子の間に両者がともに正常に機能するように、電圧計Vと電流源Aとが物理的には並列に接続される。
また、本発明のコンタクトプローブを使用し、真空状態を維持したままで測定対象に対して可逆的にコンタクトするには、例えば図21(a)にその写真を示す機構を使用すればよい。図21(a)中央部に見える棒状の部分が真空チャンバー内に入るように、その右側にある機構を真空チャンバーに取り付ける。棒状部分の先端には本発明のコンタクトプローブを取り付け、またコンタクトプローブ先端から外部の測定システムへ電気的に接続する配線を設ける。この機構を真空チャンバーに取り付けた状態で、コンタクトプローブが取り付けられた棒状部を真空チャンバーの外部から操作することができ、これにより棒状部の出し入れやその先端部の首振り等を行うことで、コンタクトプローブの位置を制御する。これにより、真空チャンバー内の真空状態を維持したままでコンタクトプローブを使用した測定を行うことができる。
一旦真空でなくなってしまうと、元の真空状態に戻すには長い時間を要するので、このような機構を使用すると測定効率が大幅に向上する。また、本機構を製膜装置内に組み込めば、本発明のプローブコンタクトによって極めて薄い膜に対しても非破壊測定を行うことができる性質を利用して製膜中に積層毎に特性の評価を行うことができるようになる。このような評価を模式的に示す図22では、L1〜L5からなる積層膜の形成途中のL1〜L3まで形成された時点で、L3の表面に本発明のコンタクトプローブでコンタクトを取ることで、この時点までに作成された層構造の評価を行っている。この評価を行っても評価対象の層L1〜L3には破壊が起こっていないため、評価の終了後に層L4,L5の積層を継続することで、評価の影響を受けていないL1〜L5の積層構造が得られる。このように、多層膜構造を形成するプロセスの途中、つまり一部の膜しか形成されていない状態での測定・評価を行う場合には、真空状態を維持したままで測定を行うことは、作成途上の層構造の酸化や汚染防止のために極めて重要である。
なお、図21(a)に示す機構を用いて本発明のコンタクトプローブと測定対象の試料との間に十分なコンタクトを取ることができることを実証するため、マイカ表面に金薄膜を蒸着し、上記機構を用いてこの金薄膜とコンタクトプローブとのコンタクトを取った。図21(b)に示すように、この操作により金薄膜プローブと金薄膜との接触による電気抵抗が0であるとの測定結果が得られた。
なお、図21に示した機構はコンタクトプローブ位置を非常に高い自由度をもって制御できるが、コンタクトプローブとコンタクトを取りたい試料の位置が決まっているなど、位置制御の自由度が小さくてもよい場合には、簡略化された機構を使用することができる。そのような簡略化された機構の一例の概念図を図23に示す。同図に示すように、2つの部材が蝶番のように一本の軸の周りに互いに旋回できるような構造を設ける。これらの部材の一方に本発明のコンタクトプローブを取り付ける。この部材を付勢することで、図23(a)に示すような試料との接触状態にある位置と、図23(b)に示すような試料と接触していない状態との間で旋回させることができる。このような部材の付勢を行うには、例えば各種のアクチュエータを適宜設置すればよい。
また、以上で説明したコンタクトプローブの使用形態は、単一のコンタクトプローブで測定対象の基板などの上面からコンタクトを取り、他方の電極は本発明のコンタクトプローブを使用せずに測定対象の下面からコンタクトを取るものであった。しかし、下面からのコンタクトの代わりに、図24(a)に模式的に示すように、測定対象の上面の2か所において本発明のコンタクトプローブを使用してコンタクトを取ることができる。あるいは図24(b)、(c)に示すように、上面の4か所からコンタクトを取ることにより四端子法の測定を実現することもできる(このようにして複数のコンタクトを取って測定を行うことを、以下ではマルチコンタクトプローブ測定と称する)。このように測定対象の上面から複数個所のコンタクトを取るマルチコンタクトプローブ測定により、絶縁体上の非常に薄い金属やグラフェン、二硫化モリブデンなどの膜自体の電気特性が測定できる。なお、図24におけるV及びA、更にはそれらの接続については、図20についての説明において既に詳述した通りである。
また、パターン化された薄膜が測定対象である場合には、図25に模式的に示すように、面平行方向で界面を横切っての電気特性がマルチコンタクトプローブ測定により実現可能となる。つまり、パターン化された薄膜の所要部分にそれぞれ本発明のコンタクトプローブが接触するようにこれらのコンタクトプローブを配置し、必要に応じてこれらのコンタクトプローブに電圧計、電圧源、電流計、電流源などを接続することで、各種の測定を行うことができる。
もちろん、測定対象の上面側からのこのようなコンタクトに加えて、その下面から同時にコンタクトを取ることも必要に応じて行うことができる。つまり、図26(a)は、図20に示す構成と同様に、上面側から1か所、下面側から1か所のコンタクトを取った場合を模式的に示すが、図26(b)に示すように、下面側のコンタクトに加えて、上面側から2か所、あるいはもっと多数のコンタクトを取ることも当然可能である。
なお、上述のようなマルチコンタクトプローブ測定を行うに当たって、測定対象へのコンタクト位置があらかじめ決めてある場合には、そのようなコンタクト位置に各コンタクトプローブがコンタクトするように、各コンタクトプローブを位置決めして取り付けたマルチコンタクトプローブアセンブリを準備しておくこともできる。もちろん、各コンタクトプローブの位置を個別に設定することで必要なコンタクト位置でコンタクトを取ってもよい。
また、本発明は従来から半導体デバイスなどで広く使用されてきた種類の材料だけではなく、薄膜一般にコンタクトを取る場合に広く適用可能である。例えば、図24(A)のレイアウトにて、コンタクトプローブ間の距離を約1mmとして、サファイア上に化学的手法により転写・形成された5層グラフェンの電気抵抗測定を行った。その結果、電気抵抗は約3kΩで、計算される電気抵抗率は約8×10−6[Ωm]となった。非特許文献3によると、無限層のグラフェンに相当するグラファイトの電気抵抗率は4.0×10−7[Ωm]、基板上に成膜した酸化グラフェン分散溶液を還元して作製された10層以下の低層グラフェンの電気抵抗率は8.8×10−5[Ωm]である。低層(単層ではなく、10層以下)グラフェンの電気抵抗率は、グラフェンの作製方法や層数に依存するが、本実施例で求められた電気抵抗率は、グラファイトと酸化グラフェンを還元して作製された低層グラフェンの間の値となっており、おおむね妥当な値と考えられる。従って、本発明はグラフェンに対するコンタクトを取る場合にも十分好適に適用できることが確認された。
[接触面積が既知のコンタクトプローブ]
接触面積が既知のコンタクトプローブを実現するため、コンタクトを取ることが想定されている領域をその周囲を含めて絶縁性とするとともに、その内部に所望の面積の開口部を設けることで、開口部によりコンタクトプローブと測定対象との間に実際に電気的なコンタクトが形成される範囲を規制する。領域を絶縁性とするためには、例えば絶縁性の膜を当該領域上に形成することにより行うことができる。
図27に概念的に示した製造方法に従ってこのコンタクトプローブを作製した。先ず、支持体として直径0.1mmで長さが約70mmのタングステン線を使用し、その折り返し部分に接触子として直径が約700μmのAu球を有するコンタクトプローブを作製した。このコンタクトプローブ自体の作製方法は既に説明したので、ここでは繰り返さない。次にAu球をフォトレジスト液にディップコーティングすることにより、その表面に絶縁性レジストの薄膜(1μm厚)を塗布した。次に、このコンタクトプローブを使用する際に測定対象に接触する位置(図27では、Au球の試料に接触する側が上を向き、タングステン線の支持体がほぼ水平になるようにコンタクトプローブを配置した時の、Au球の頂部)に、レーザーにより所望形状・面積の開口部に相当する範囲(具体例では直径70μm、50μm及び30μmの円盤状の範囲)を露光した。露光後、現像液でレジストの反応部を溶解し、脱イオン水ですすいで窒素ブローして後処理を行った。これにより、絶縁レジストの薄膜のうちのレーザー露光された領域が除去され、そこに図27の下側に示すように開口部が形成された。なお、絶縁性レジスト膜がAu球を被覆していることを明示するために実際よりもこの膜厚をかなり厚く図示したため、図27では開口部が絶縁性レジスト膜の縁よりも下に位置しているように見える。しかし、実際には絶縁性レジスト膜の厚さは1μmと非常に薄く、また絶縁性レジスト膜は十分に柔軟であるため、このようにして作製されたコンタクトプローブを、既に説明した態様で測定対象にコンタクトさせると、この開口部内のAu球表面のほとんど全てが測定対象に電気的にコンタクトする。従って、このような絶縁性レジスト膜等の絶縁性領域を有していないコンタクトプローブが測定対象と実際にコンタクトする領域よりもこの開口部が小さい限り、測定の際の接触面積の一定性・再現性は非常に良好になる。また、開口部の縁が測定対象に接触するが、この縁はレジストで構成されていて比較的柔軟であるため、この縁によって測定対象に損傷や塑性変形を引き起こすことはない。
以下ではこのようにして作製した開口部付きコンタクトプローブの具体例を示すが、そのフォトリソグラフィープロセスは以下に示す通りである。
レーザー露光は、レーザー露光装置としてDL−1000(ナノシステムソリューションズ社製)により、光源として405nm半導体レーザー(h線)を用い、照度300mW/cmで140mJ/cmのレーザー光を照射することにより行った。
フォトレジストはZA5214E(ポジレジストの商品名)を使用した。このフォトレジストの溶液であるレジスト液として、二種類(ZA5114Eと乳酸エチル(Ethyl lactate)またはPGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテル、別名は1−メトキシ−2−プロパノール(1-Methoxy-2-propanol acetate))とを1:1で混合したもの)を使用した。現像液としては、TMAH238%(AZ 300 MIFという商品名で販売されている水酸化テトラメチルアンモニウム(tetramethyl ammonium hydroxide、TMAH)を2.38wt%含んだ水溶液)を使用した。
また、フォトレジストを塗付した後、レジスト塗付の後処理として、真空乾燥(40分、または3時間)あるいは熱処理(110℃、10分間、以下ではプリベークと称する)を行ってから、レーザー露光を行った。更に、一部の試料に対しては、レーザー露光と現像の後に熱処理(110℃、10分間、以下ではポストベークと称する)を行った。
また、円形の領域のレーザー露光の際の露光領域の直径(以下では開口径と称する)は70μm、50μm及び30μmの三通りとした。
このように条件を変えて12種類の開口付きコンタクトプローブを作製した。その処理条件を以下の表2にまとめて示す。
このようにして作製した開口付きコンタクトプローブの開口周辺の光学顕微鏡写真を図28から図30に示す。これらの図中の写真と表2中に作製条件を示した試料との対応関係を示すため、各写真の右上部に表2左端カラム中の試料番号を示す。
図28は試料番号#1−1〜1−6の条件で作製したコンタクトプローブの光学顕微鏡写真である。これらのコンタクトプローブは、表2からわかるように、何れもレジスト処理直後の後処理としてプリベークではなく真空乾燥を行い、また現像直後の後処理はポストベークなどの処理は特に行っていないものである。これに対して図29に光学顕微鏡写真を示した試料番号#2−1、#2−3及び#2−5のコンタクトプローブは、プリベークは行ったが、現像直後はポストベークなどの処理を行っていない。また、図30に光学顕微鏡写真を示した試料番号#2−2、#2−4及び#2−6は、プリベークとポストベークの両方を行ったものである。図30では、その左側及び右側の列にそれぞれ各試料の同じ位置のポストベーク前及びポストベーク後の写真を示す。これらの光学顕微鏡写真からわかるように、後処理の違いにより開口径と実際の開口のサイズが僅かに異なるが、何れの場合でも同じ処理条件ならほぼ同じ開口サイズが得られた。
このようにして作製した開口部付きコンタクトプローブを手で持ちながら金属に接触させることでコンタクトを取り、その際の当該金属とコンタクトプローブの支持部(ここではタングステン線)との間の抵抗を、0.1Ωの桁まで測定できる抵抗計を使用して測定した。プリベークとポストベークの何れも行っていないコンタクトプローブ(試料番号#1-1〜#1-6)、プリベークのみを行ったコンタクトプローブ(試料番号#2-1、#2-3及び#2−5)及びプリベークとポストベークの両方を行ったコンタクトプローブ(試料番号#2-2、#2−4及び#2−6)について具体的に抵抗値の測定を繰り返し、その耐久性を調べた。その結果、いずれのコンタクトプローブにおいてもゼロΩの抵抗値が得られたものの、耐久性には次のような違いが見られた。同じ開口径について処理の違いにより、プリベークとポストベークの何れも行っていないコンタクトプローブ→プリベークのみを行ったコンタクトプローブ→プリベークとポストベークの両方を行ったコンタクトプローブの順に耐久性が向上した。これは、ベークをより強力に行うにつれレジスト膜の強度が高くなる、具体的には例えばプリベークとポストベークの何れも行っていないものよりプリベークのみのもの、それよりプリベークとポストベークの両方を行ったもの、また、プリベークとポストベークの両方を行った場合でもポストベークの温度が高い方が強度が高く、強度が低いレジスト膜では最適なコンタクト位置・角度を手作業で試行錯誤している間にレジスト膜の剥離等が起こり易いことによると考えられる。実際に、プリベークとポストベークの何れも行っていない開口径30μmのコンタクトプローブでは、耐久性試験後にレジスト膜の一部剥離等が起こる場合があることが判った。しかし、コンタクトプローブのコンタクトの繰り返し試験は上に書いたように手作業で行ったため、抵抗の測定値を見ながら良好なコンタクトが取れるように両者のコンタクト位置や角度を変えながら測定を行った。このため、コンタクトプローブが金属にコンタクトしている状態で両者の間に横方向の力が印加されがちであるなど、レジスト膜にとっては厳しい条件下での試験であった。従って、上で使用したレジスト膜でも充分に実用になると考えられる。また、他の材料や他の手法を使用して開口部付きコンタクトプローブを実現してもよい。
以上説明したように、本発明によれば、従来技術ではパッドを引き出してそこでコンタクトを取るしかできなかったきわめて薄い膜に対しても非破壊的に直接コンタクトを取ることができるようになるため、本発明は半導体分野等に大いに貢献することが期待される。本発明を利用して特に有効な分野としては、もちろんこれに限定する意図はないが、例えばnm厚で使用される電子デバイス用材料を探索するに当たって、測定結果を詳細に解析する前の段階として、材料の候補に対して効率的なスクリーニングを行うことが挙げられる。本発明のコンタクトプローブを使用すれば、nm厚のきわめて薄い膜を簡単な手順により、しかも非破壊的に直接測定することができるので、現在デバイスまで作りこんで測定して行っているスクリーニングに対し、対象となる膜ができた段階で直ちに評価を行うことを可能とする本発明を適用すれば、スクリーニングの手間・時間・コストが大幅に低減される。更には、本発明は従来のプローバーで測定するような電気特性評価だけでなく、極薄膜配線の断線のチェック、起電力の測定などの電流値の定量的測定が不要な評価用途、内部光電効果によるショットキーバリア高さの測定など、従来のプローバーで目的としていない評価のための電気コンタクト用途にも広範に適用することができる。
特開2008−111800号公報
M. Yoshitake, K. Ohmori, T. Chikyow, Surf. Interface Anal. 2010, 42, 70-76. 川畑有郷、日本物理学会誌 Vol.55, No.4, 2000, p.256 重本 千尋、修士論文(日本大学理工学部、山本研究室、平成23年度)

Claims (27)

  1. 折り曲げられた線状の形状であって電気伝導性を有する弾性体の支持体と、
    前記支持体の折り曲げ箇所に取り付けられ、少なくとも表面の一部が球面の電気伝導性を有する接触部と
    を設けコンタクトプローブ。
  2. 前記接触部は少なくとも表面を被覆する第1の材料からなる被膜と、前記第1の材料により被覆された第2の材料からなる部材とを有する、請求項1に記載のコンタクトプローブ。
  3. 前記支持体のバネ定数kが下式で表される範囲である、請求項1または2に記載のコンタクトプローブ。
    π×10−2 [N/m]≦k≦5π×10 [N/m]
  4. 前記接触部の前記球面の表面は溶解した物質を凝固させた面である、請求項1からの何れかに記載のコンタクトプローブ。
  5. 前記支持体の長さは2mm以上である、請求項1からの何れかに記載のコンタクトプローブ。
  6. 前記球面の表面の少なくとも一部が所望面積の開口部を有する絶縁性領域である、請求項1からの何れかに記載のコンタクトプローブ。
  7. 前記開口部の直径は100μm以下である、請求項に記載のコンタクトプローブ。
  8. 前記絶縁性領域は絶縁性層で被覆された領域である、請求項6または7に記載のコンタクトプローブ。
  9. 折り曲げられた線状の形状であって電気伝導性を有する弾性体の支持体を準備し、
    前記弾性体よりも融点が低くかつ電気伝導性を有する物質を前記支持体の前記折り曲げ箇所に取り付け、
    前記支持体に通電することにより前記物質を溶融させ、
    前記溶融後に通電を停止することにより前記溶融した物質を凝固させる、
    請求項1からの何れかに記載のコンタクトプローブの製造方法。
  10. 前記物質の凝固後にその表面を他の導電性物質で被覆する、請求項に記載の製造方法。
  11. 前記物質の凝固後または前記他の導電性物質による被覆後に、その表面に開口部を有する絶縁性領域を形成する、請求項9または10に記載のコンタクトプローブの製造方法。
  12. 前記絶縁性領域の形成は絶縁性層の被覆により行う、請求項11に記載のコンタクトプローブの製造方法。
  13. 前記絶縁層の被覆は前記絶縁性領域を形成すべき領域及び前記開口部を形成すべき領域の両者に対して行い、
    前記絶縁層の被覆後に開口部を形成すべき領域の前記絶縁層を除去することによる、
    請求項12に記載のコンタクトプローブの製造方法。
  14. 前記絶縁性層はフォトレジスト層であり、前記開口部の形成はフォトレジストのレーザーによる露光及び露光後の現像により行う、請求項13に記載のコンタクトプローブの製造方法。
  15. 前記絶縁層の被覆は前記開口を有する状態で形成される、請求項12に記載のコンタクトプローブの製造方法。
  16. 前記絶縁層の被覆は反応すると絶縁物になる物質を気化してビームを照射した部分だけ反応させることによって行う、請求項15に記載のコンタクトプローブの製造方法。
  17. 請求項1からの何れかに記載のコンタクトプローブの前記接触部の前記球面の表面を試料上の薄膜が設けられている表面に接触させている間はフィードバックによる接触圧の継続的な制御を行わない、前記薄膜と前記コンタクトプローブとの間の非破壊的なコンタクト形成方法。
  18. 請求項1からの何れかに記載のコンタクトプローブの前記接触部の前記球面の表面を試料上の薄膜が設けられている表面に接触させている間は前記接触部を前記試料の前記表面に沿って相対的に移動させない、前記薄膜と前記コンタクトプローブとの間の非破壊的なコンタクト形成方法。
  19. 請求項1からの何れかに記載のコンタクトプローブの前記接触部の前記球面の表面を試料上の薄膜が設けられている表面に非破壊的に接触させるコンタクト形成方法において、前記接触が行われるコンタクト面は半径が1μm以上であることを特徴とする、前記薄膜と前記コンタクトプローブとの間の非破壊的なコンタクト形成方法。
  20. 前記コンタクトプローブの前記球面の表面の少なくとも一部が所望面積の開口部を有する絶縁性領域であり、前記開口部を介して前記非破壊的な接触を行う、請求項17から19の何れかに記載の非破壊的なコンタクト形成方法。
  21. 前記開口部の直径は100μm以下である、請求項20に記載の非破壊的なコンタクト形成方法。
  22. 前記絶縁性領域は絶縁性層で被覆された領域である、請求項20または21に記載の非破壊的なコンタクト形成方法。
  23. 複数の前記コンタクトプローブを使用し、前記薄膜と前記複数のコンタクトプローブとの間にそれぞれ非破壊的なコンタクトを形成する、請求項17から22の何れかに記載の非破壊的なコンタクト形成方法。
  24. 前記試料上の前記薄膜の厚さは50nm未満である、請求項17から23の何れかに記載の非破壊的なコンタクト形成方法。
  25. 前記試料上の前記薄膜の厚さは1nm以上である、請求項17から24の何れかに記載の非破壊的なコンタクト形成方法。
  26. 一または複数の膜を形成後に請求項17から25の何れかに記載の非破壊的なコンタクト形成方法により前記コンタクトを形成して所望の測定を行い、
    前記測定後に更に他の膜を形成する
    多層膜の製造過程における測定方法。
  27. 請求項1〜の何れかに記載のコンタクトプローブを一または複数使用したプローバー。
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