JP6407746B2 - ピッチ系炭素繊維及びその製造方法 - Google Patents
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Description
項1.等方性ピッチを炭素前駆体とするピッチ系炭素繊維であって、
平均繊維径が10μm以下であり、且つ、ホウ素を6〜1000massppm含有する、
ことを特徴とする、ピッチ系炭素繊維。
項2.X線回折法から得られる黒鉛結晶のa軸方向の結晶子の大きさLaが100nm以上であり、且つ、
X線回折法の(004)回折線から得られる黒鉛結晶のc軸方向の結晶子の大きさLcが100nm以上である、
項1に記載のピッチ系炭素繊維。
項3.前記炭素繊維の側面から得られるラマンスペクトルの1320〜1370cm−1のバンドのピーク高さIDと、前記炭素繊維の側面から得られるラマンスペクトルの1560〜1610cm−1のバンドのピーク高さIGの比であるID/IGが、0.3〜1.0である、項1又は2に記載のピッチ系炭素繊維。
項4.細孔容積が0.001〜0.01cm3/gであるメソ孔を有する、項1〜3のいずれかに記載のピッチ系炭素繊維。
項5.前記等方性ピッチが、石炭を原料として得られる、項1〜4のいずれかに記載のピッチ系炭素繊維。
項6.等方性ピッチを炭素前駆体とし、平均繊維径が10μm以下であり、且つ、ホウ素を6〜1000massppm含有するピッチ系炭素繊維の製造方法であって、
前記等方性ピッチを原料として得られる前記炭素繊維の前駆体繊維を、ホウ素を含む雰囲気下、2800〜3000℃で熱処理する熱処理工程を有する、
ことを特徴とする、ピッチ系炭素繊維の製造方法。
項7.前記等方性ピッチが、石炭を原料として得られる、項6に記載のピッチ系炭素繊維の製造方法。
本発明のピッチ系炭素繊維は、等方性ピッチを炭素前駆体とするピッチ系炭素繊維であって、平均繊維径が10μm以下であり、且つ、ホウ素を6〜1000massppm含有することを特徴とする。当該特徴を有する本発明のピッチ系炭素繊維は、従来の等方性ピッチ系炭素繊維よりも繊維径が小さいため、優れた断熱性能、吸音性能、摺動性等を発現させることができる。
(i)ピッチ系炭素繊維を拡大鏡及び画像解析装置を用いて、1000倍に拡大し、
(ii)次いで、ピッチ系炭素繊維を任意に10点選び出し、上記10点の繊維径を測定し、
(iii)最後に、上記(ii)で得られた10点の繊維径の平均値を算出する、
を行うことにより、決定したものである。
本発明のピッチ系炭素繊維は、主に、断熱材、吸音材、摺動材における潤滑剤、電極材料等の各種用途に好適に使用することができる。ここで、上記各種用途について、本発明のピッチ系炭素繊維を応用した各種製品と併せて詳しく述べる。
本発明のピッチ系炭素繊維の製造方法は、等方性ピッチを炭素前駆体とし、平均繊維径が10μm以下であり、且つ、ホウ素を6〜1000massppm含有するピッチ系炭素繊維の製造方法であって、前記等方性ピッチを原料として得られる前記炭素繊維の前駆体繊維を、ホウ素を含む雰囲気下、2800〜3000℃で熱処理する熱処理工程を有する、ことを特徴とする。当該特徴を有する本発明の製造方法によれば、平均繊維径が10μm以下であるピッチ系炭素繊維を得ることができる。当該ピッチ系炭素繊維は、従来の等方性ピッチ系炭素繊維よりも、優れた断熱性能、吸音性能、摺動性等を発現させることができる。
本発明のピッチ系炭素繊維の製造方法では、原料として本発明のピッチ系炭素繊維の前駆体を使用する(以下、上記本発明のピッチ系炭素繊維の前駆体を、単に「前駆体繊維」ともいう)。
・大阪ガスケミカル(株)製ドナカーボ・チョップ(品番:S−231,S−232)
・大阪ガスケミカル(株)製ドナカーボ・ミルド(品番:S−2404N,S−249K,S−241,S−242,S−243,S−244,S−246,S−247,SC−244,SG−249,SG−241)
・大阪ガスケミカル(株)製炭素繊維マット(品番:S−210)
等が挙げられる。
本発明における前駆体繊維の製造方法は、特に限定されないが、以下の各工程:
(i)等方性ピッチ(炭素前駆体)を紡糸する工程1、
(ii)前記工程1で得られた紡糸(ピッチ繊維)を不融化処理する工程2、
(iii)前記工程2で得られた不融化繊維(不融化ピッチ繊維)を炭素化処理する工程3、
を含む製造方法で前駆体繊維を製造することが好ましい。以下、各工程について説明する。
工程1では、等方性ピッチ(炭素前駆体)を紡糸する。この工程1により、紡糸(ピッチ繊維)が得られる。
工程2では、紡糸(ピッチ繊維)を不融化処理する。この工程2により、不融化繊維が得られる。不融化処理とは、一般的には、炭素前駆体に繊維形状を与えた後、後続する炭素化(炭化)で繊維形状を維持できるように、酸化的な脱水素環化や縮合により熱硬化性とする処理をいう。本工程では、前記不融化処理をすることにより、ピッチ繊維に酸素を導入して酸素との架橋結合によって安定化させることができる。
工程3では、不融化繊維を炭素化処理する。この工程3により、本発明における前駆体繊維が得られる。炭素化処理(炭化処理)とは、炭素以外の元素を放出して炭素含有率の高い固体を生成させる処理をいう。
炭素化処理を行った後、本発明における前駆体繊維が得られる。一般的には、前記前駆体繊維の形態は、マット状であることが多い。前駆体繊維が得られた後、必要に応じて、前記前駆体繊維に対して、予備的な黒鉛化処理、切断処理、粉砕処理等を行ってもよい。前記切断処理及び粉砕処理は、前駆体繊維の形状を適宜変更することができる。
本発明のピッチ系炭素繊維の製造方法では、前駆体繊維をホウ素を含む雰囲気下、2800〜3000℃で熱処理する熱処理工程を有することを特徴とする。前駆体繊維をホウ素を含む雰囲気下、2800〜3000℃で熱処理することにより、原料である前駆体繊維の平均繊維径は小さくなり、結果として平均繊維径が10μm以下であるピッチ系炭素繊維が得られる。なお、平均繊維径が小さくなる理由は、前駆体繊維に黒鉛構造の発達化が生じることにより、炭素繊維全体が熱収縮するためと考えられる。
ピッチ系炭素繊維の平均繊維径を減少させる本発明の方法は、前記等方性ピッチを原料として得られる前記炭素繊維の前駆体繊維を、ホウ素を含む雰囲気下、2800〜3000℃で熱処理する熱処理工程を有する、ことを特徴とする。当該特徴を有する本発明の方法によれば、等方性ピッチ系炭素繊維の平均繊維径を10μm以下にすることができる。つまり、従来のピッチ系炭素繊維よりも平均繊維径を減少させることができる。当該得られた等方性ピッチ系炭素繊維は、従来の等方性ピッチ系炭素繊維よりも、優れた断熱性能、吸音性能、摺動性等を発現させることができる。各工程の説明は、上記2.の項目と同様である。
以下に、実施例1〜4及び比較例1〜2で使用される等方性ピッチ系炭素繊維マット(マット繊維)の製造例を記載する。まず、石炭系の等方性ピッチ(炭素前駆体)を出発原料とし、渦流法によって前記等方性ピッチに対して紡糸(紡糸処理)を行った。次いで、前記処理で得られたピッチ繊維に対して、空気(大気)雰囲気下で不融化処理を行った。次に、前記処理で得られた不融化繊維(不融化ピッチ繊維)に対して、不活性ガス雰囲気下で900〜1000℃の熱処理を行い、炭素化処理を行った。なお、前記紡糸処理、不融化処理、及び炭素化処理は、連続的に行った。以上により、実施例1〜4及び比較例1〜2で使用される等方性ピッチ系炭素繊維マットが得られた。この手法は、強化プラスチックス(1998年)Vol. 34, No. 3, p. 89-93でも示されている。
等方性ピッチ系炭素繊維マット(前駆体繊維、商品名:S-210(DONACARBO(登録商標)カタログに記載)、大阪ガスケミカル(株)製、平均繊維径13μm)125gを黒鉛製の容器(内径160mm、内側の高さ230mmの円筒であり、内容積4622cm3)に入れ、上記容器に対して黒鉛製の蓋をした。この黒鉛容器のまわりを1mass%(10000massppm)程度ホウ素でドープされた黒鉛粉末で囲った。ホウ素は高温では拡散しやすいので、後述の熱処理により、等方性ピッチ系炭素繊維マットが入った黒鉛容器の開気孔や隙間等から、炭素繊維中にホウ素が侵入される。次に、上記炭素繊維マットが入った上記容器をアチソン炉に入れて、約2900℃(2800〜3000℃)に熱した(熱処理)。この熱処理により、実施例1のピッチ系炭素繊維(等方性ピッチ系炭素繊維)を得た。
等方性ピッチ系炭素繊維マット(商品名:S-210(DONACARBO(登録商標)カタログに記載)、大阪ガスケミカル(株)製、平均繊維径13μm)を用意した。次に、上記炭素繊維マットを粉砕機で粉砕することにより、ミルド炭素繊維(前駆体繊維、平均繊維長:約0.11mm(約110μm))を得た(以下、ミルド繊維ともいう)。上記ミルド繊維302gを黒鉛製の容器(内径50mm、内側の高さ90mmの円筒であり、内容積177cm3)に入れ、上記容器に対して黒鉛製の蓋をした。この黒鉛容器のまわりを1mass%(10000massppm)程度ホウ素でドープされた黒鉛粉末で囲った。ホウ素は高温では拡散しやすいので、後述の熱処理により、等方性ピッチ系炭素繊維ミルドが入った黒鉛容器の開気孔や隙間等から、炭素繊維中にホウ素が侵入される。次に、上記ミルド繊維が入った上記容器をアチソン炉に入れて、約2900℃(2800〜3000℃)に熱した(熱処理)。この熱処理により、実施例2のピッチ系炭素繊維(等方性ピッチ系炭素繊維)を得た。
実施例2において、上記ミルド繊維を上記黒鉛製の容器に入れ、この黒鉛製の容器を、より大きな別の黒鉛製の容器(内径160mm、内側の高さ140mmの円筒)に入れ、二つの容器の隙間を黒鉛粉末で充填したこと以外は同様に処理を行った。これにより、実施例2と比較して、ピッチ系炭素繊維のホウ素ドープ量を低減した。
実施例2において、上記ミルド繊維を上記黒鉛製の容器に入れ、この黒鉛製の容器を、より大きな別の黒鉛製の容器(内径160mm、内側の高さ140mmの円筒)に入れ、二つの容器の隙間を黒鉛粉末で充填し、さらに、これら二つの容器を、さらに大きな別の黒鉛製の容器(内径240mm、内側の高さ245mmの円筒)に入れ、容器間の隙間を黒鉛粉末で充填したこと以外は同様に処理を行った。これにより、実施例2及び3と比較して、ピッチ系炭素繊維のホウ素ドープ量を低減した。
実施例1で使用した等方性ピッチ系炭素繊維マット(前駆体繊維、商品名:S-210)82gを黒鉛製の容器(内径150mm、内側の高さ160mmの円筒であり、内容積2826cm3)に入れ、上記容器に対して黒鉛製の蓋をした。その黒鉛容器を抵抗加熱炉に入れ、温度及び時間を2400℃且つ2時間として熱処理を行った。また、前記抵抗炉内にはアルゴンガスを流した。これにより、比較例1のピッチ系炭素繊維を得た。
実施例2で得たミルド炭素繊維(前駆体繊維、平均繊維長:約0.11mm(約110μm))96gを黒鉛製の容器(内径50mm、内側の高さ90mmの円筒であり、内容積177cm3)に入れ、上記容器に対して黒鉛製の蓋をした。その黒鉛容器を抵抗加熱炉に入れ、温度及び時間を2400℃且つ2時間として熱処理を行った。また、前記抵抗炉内にはアルゴンガスを流した。これにより、比較例2のピッチ系炭素繊維を得た。
実施例及び比較例で得られた各ピッチ系炭素繊維の平均繊維径を測定した。具体的には、以下の(i)〜(iii)の工程を行うことにより測定した。
(i)実施例及び比較例で得られた各ピッチ系炭素繊維を、Hirox製拡大鏡及び画像解析装置を用いて、1000倍に拡大した。
(ii)次いで、各ピッチ系炭素繊維をそれぞれ任意に10点選び出し、上記10点の繊維径を測定した。
(iii)最後に、上記(ii)で得られた10点の繊維径の平均値を算出することにより、各ピッチ系炭素繊維の平均繊維径として決定した。
・実施例1のピッチ系炭素繊維の平均繊維径:8.7μm
・実施例2のピッチ系炭素繊維の平均繊維径:8.7μm
・実施例3のピッチ系炭素繊維の平均繊維径:7.2μm
・実施例4のピッチ系炭素繊維の平均繊維径:8.5μm
・比較例1のピッチ系炭素繊維の平均繊維径:13.4μm
・比較例2のピッチ系炭素繊維の平均繊維径:13.2μm
・実施例2のピッチ系炭素繊維の拡大鏡写真:図1
・比較例2のピッチ系炭素繊維の拡大鏡写真:図2
であった。
実施例及び比較例で得られた各ピッチ系炭素繊維のホウ素ドープ量を測定した。具体的には、実施例及び比較例で得られた炭素繊維にドープされたホウ素の定量分析は、50程度のサンプルを灰化後、灰分を酸溶解し、ICP−AES(発光法)により行った。
・実施例1のピッチ系炭素繊維のホウ素ドープ量:300massppm
・実施例2のピッチ系炭素繊維のホウ素ドープ量:300massppm
・実施例3のピッチ系炭素繊維のホウ素ドープ量:40massppm
・実施例4のピッチ系炭素繊維のホウ素ドープ量:6massppm
・比較例1のピッチ系炭素繊維のホウ素ドープ量:なし
・比較例2のピッチ系炭素繊維のホウ素ドープ量:なし
であった。
実施例2及び比較例2の各ピッチ系炭素繊維に対してX線回折測定を行うことにより、上記各ピッチ系炭素繊維のX線回折図形を得た(図3)。上記X線回折図形は、Siを標準物質とし、学振法(日本学術振興会第117委員会によってラウンドロビンテストを経て制定された、X線回折装置を用いて炭素材料の格子定数と結晶サイズの測定を行う場合の一般的事項について規定した手法)に準拠して得た。図3の上側の図形(図3(a))が実施例2のピッチ系炭素繊維のX線回折図形であり、図3の下側の図形(図3(b))が比較例2のピッチ系炭素繊維のX線回折図形である。次いで、実施例2のピッチ系炭素繊維の格子定数、及び結晶サイズ(結晶子サイズ又は結晶子の大きさともいう)等を、Carbon Analyzer Version 4. 10Dを用いて解析した。なお、この手法は、例えば、藤本宏之 炭素No. 206 (2003) p.1-6でも示されている。実施例3〜4も同様に測定した。実施例2〜4のピッチ系炭素繊維の解析結果を以下に示す。
[1]004回折線((004)回折線)から得られるd002(002面の面間隔)は、実施例2:0.3355nm(=3.355Å)、実施例3及び4:0.3356nm(=3.356Å)であった。
[2]002回折線((002)回折線)から得られるc軸方向の結晶子サイズLcは、実施例2:69nm、実施例3:100nm以上、実施例4:92nmであった。
[3]004回折線から得られるc軸方向の結晶子サイズLcは、実施例2〜4いずれも100nm以上であった。
[4]a軸方向の結晶子サイズLaは、実施例2〜4いずれも100nm以上であった。
[5]112回折線((112)回折線)から得られるL112は実施例2:15nm、実施例3:22nm、実施例4:11nmであった。この値は、3次元的な規則性を示す。
・[1]〜[5]の結果から、実施例2〜4のピッチ系炭素繊維は、黒鉛構造が発達していることがわかった。特に、[1]の結果から得られたd002の値(0.3355〜0.3356nm)は、黒鉛の単結晶におけるd002の値(0.3354nm)と近い値であった。
・図3(a)の図形から示されるように、実施例2のピッチ系炭素繊維は、002回折線のピークが明確に認められた。また、図3(b)の下側の図形から示されるように、比較例2のピッチ系炭素繊維は、002回折線のピークが明確に認められず、ブロードな回折線しか認められなかった。比較例2のピッチ系炭素繊維における004回折線から得られるd002は、0.3424nm(=3.424Å)であった。002回折線及び004回折線から得られるc軸方向の結晶子サイズLcは、いずれも10nm以下と見積もられた。また、a軸方向の結晶子サイズLaも10nm以下と見積もられた。
実施例2及び比較例2の各ピッチ系炭素繊維に対して、ラマン分光測定を行い、ラマンスペクトル(ラマン散乱スペクトル)を得た(図4)。ラマン分光測定は、サーモフィッシャーサイエンティフィック(株)製のラマン分光装置(Raman DXR microscope)を使用した。条件は、レーザー光の出力:2mW、レーザー光の波長:532nmであった。また、25μmスリットのアパーチャーでレーザー光を絞り、対物レンズは50倍のものを使用して測定した。ラマンスペクトルから、Dバンドと呼ばれる1360cm−1付近(1320〜1370cm−1)のバンドのピーク高さIDと、Gバンドと呼ばれる1580cm−1付近(1560〜1610cm−1)のバンドのピーク高さIGとの比(即ち、ID/IG)を求めた。なお、上記ID/IGについては、(i)前記炭素繊維の側面からのID/IG、及び、(ii)前記炭素繊維の断面からのID/IG、の両者を求めた。実施例3〜4も同様に測定した。
・実施例2のピッチ系炭素繊維の、炭素繊維側面から得られたID/IG値:0.40
・実施例2のピッチ系炭素繊維の、炭素繊維断面から得られたID/IG値:0.55
・実施例3のピッチ系炭素繊維の、炭素繊維側面から得られたID/IG値:0.42
・実施例3のピッチ系炭素繊維の、炭素繊維断面から得られたID/IG値:0.56
・実施例4のピッチ系炭素繊維の、炭素繊維側面から得られたID/IG値:0.43
・実施例4のピッチ系炭素繊維の、炭素繊維断面から得られたID/IG値:0.60
・比較例2のピッチ系炭素繊維の、炭素繊維側面から得られたID/IG値:1.15
・比較例2のピッチ系炭素繊維の、炭素繊維断面から得られたID/IG値:1.08
・(参考)天然黒鉛(鱗片状黒鉛のベーサル面側)のID/IGは、0.1以下である。
実施例2〜4のピッチ系炭素繊維は、比較例2のピッチ系炭素繊維よりも、結晶表面のエッジや欠陥が少ない。よって、実施例2〜4のピッチ系炭素繊維は、より黒鉛構造が発達していることがこの分析4でもわかった。しかしながら、実施例2〜4のピッチ系炭素繊維のID/IG値は0.40〜0.60であり、天然黒鉛と比較すると大きな値を示している。つまり、結晶子サイズLa及びLcが大きな値を示している割には、エッジや結晶欠陥が多いと考えられる。以上を纏めると、本発明に相当する実施例2〜4のピッチ系炭素繊維は、以下の(1)及び(2):
(1)黒鉛の三次元規則性と、
(2)光学的等方性(即ち、分子又は分子の集団が無秩序に配向する性質)と、
を併せ持つといえる。
実施例2〜4及び比較例2の各ピッチ系炭素繊維に対して、以下の(i)〜(v)の工程を行った。
(i)上記各ピッチ系炭素繊維の吸脱着等温線を求めた。具体的には、マイクロトラック・ベル(株)製BELSORP-maxを用いて、N2(77K)吸着による上記吸脱着等温線を求めた。
(ii)次に、得られた吸脱着等温線に基づいて、BET法にて上記各ピッチ系炭素繊維の比表面積及び全細孔容積を求めた。
(iii)次に、αs法を用いて、上記各ピッチ系炭素繊維のミクロ孔細孔容積の値を算出した。
(iv)次に、t法を用いて、上記各ピッチ系炭素繊維のミクロ孔細孔容積とメソ孔細孔容積とを足し合わせた細孔容積の値を算出した。
(v)最後に、上記(iv)で得られた値から、上記(iii)で得られた値を差し引くことにより、上記各ピッチ系炭素繊維のメソ孔の細孔容積を求めた。
・実施例2のピッチ系炭素繊維の吸脱着等温線:図5
・実施例2のピッチ系炭素繊維の比表面積:3.7m2/g
・実施例2のピッチ系炭素繊維の全細孔容積:0.0205cm3/g
・実施例2のピッチ系炭素繊維のメソ孔の細孔容積:0.00424cm3/g
・実施例3のピッチ系炭素繊維の比表面積:4.0m2/g
・実施例3のピッチ系炭素繊維の全細孔容積:0.0199cm3/g
・実施例3のピッチ系炭素繊維のメソ孔の細孔容積:0.00297cm3/g
・実施例4のピッチ系炭素繊維の比表面積:8.3m2/g
・実施例4のピッチ系炭素繊維の全細孔容積:0.0255cm3/g
・実施例4のピッチ系炭素繊維のメソ孔の細孔容積:0.00664cm3/g
・比較例2のピッチ系炭素繊維の吸脱着等温線:図6
・比較例2のピッチ系炭素繊維の比表面積 :0.47m2/g
・比較例2のピッチ系炭素繊維の全細孔容積:0.00190cm3/g
に示す。なお、比較例2のピッチ系炭素繊維のメソ孔の細孔容積は、0.001cm3/g以下と見積もられた。
・図5は、実施例2のピッチ系炭素繊維の吸脱着等温線である。この図5からも明らかなように、実施例2のピッチ系炭素繊維は、吸着等温線と脱着等温線との間で、毛管凝縮によるヒステリシスな現象がみられた。この現象から、実施例2のピッチ系炭素繊維には、メソ孔が存在することが確認された。
・図6は、比較例2のピッチ系炭素繊維の吸脱着等温線である。この図6からも明らかなように、比較例2のピッチ系炭素繊維は、実施例2のピッチ系炭素繊維とは異なり、吸着等温線と脱着等温線との間で、毛管凝縮によるヒステリシスな現象がみられなかった。そのため、メソ孔の顕著な存在は認められなかった。
実施例1及び比較例1の各ピッチ系炭素繊維に対して、抵抗率測定を行った。具体的には、以下の工程によって抵抗率測定を行った。
(i)図7に示す穴あき台紙(25±0.5mm)を15枚用意した。
(ii)実施例1及び比較例1の各ピッチ系炭素繊維から、それぞれ5本の単繊維を取り出した。
(iii)前記台紙の中央線に沿って前記単繊維を載置し、前記単繊維をセロテープで固定した。
(iv)所定のゲージ長となるように、図7に示す箇所(2箇所)に導電塗料を塗布した後、十分に乾燥させる。当該乾燥後の単繊維を試験片とした。
(v)前記試験片の抵抗を、抵抗測定器にて、0.1Ωまで測定する。前記抵抗測定器は、0.5%以上の精度が保証されているものを使用した。また、前記抵抗測定器では、直流を用いた。
(vi)前記試験片の抵抗率を、次式により求めた。
ρ:繊維の抵抗率(単位:μΩ・m)
R:試験片の抵抗(単位:Ω)
L:試験片の長さ(単位:μm)
D:試験片の繊維径(単位:μm)
である。なお、Dについては、万能投影機にて試験片(実施例1及び比較例1の各ピッチ系炭素繊維)の直径を50点測定し、その50点の平均値を試験片の繊維径とした。前記万能投影機は、倍率400倍で測定した。
(vii)(i)〜(vi)の工程を各5本の単繊維に対して行い、各々得られたρ値の平均値を算出した。前記算出されたρ値の平均値を、ピッチ系炭素繊維の抵抗率とした。
結果を以下:
・実施例1のピッチ系炭素繊維の抵抗率:25μΩ・m
・比較例1のピッチ系炭素繊維の抵抗率:32μΩ・m
に示す。
実施例1及び比較例1の各ピッチ系炭素繊維に対して、見かけ密度測定を行った。具体的には、気体置換法によって上記各ピッチ系炭素繊維の見かけ密度を測定した。測定装置は、マイクロメリティックス社製の乾式自動密度計アキュピック1330−03を使用した。測定に使用したガスはヘリウムガスとし、温度は25℃であった。
・実施例1のピッチ系炭素繊維の見かけ密度:1.71g/cm3
・比較例1のピッチ系炭素繊維の見かけ密度:1.62g/cm3
に示す。
2.中央線
3.単繊維試験片
4.導電塗料
5.アチソン炉
6.パッキングコークス
7.処理物
8.断熱層(粉体)
9.レンガ
10.水冷ジャケット
11.ブスバー(銅)
12.黒鉛電極
Claims (7)
- 等方性ピッチを炭素前駆体とするピッチ系炭素繊維であって、
平均繊維径が10μm以下であり、且つ、ホウ素を6〜1000massppm含有する、
ことを特徴とする、ピッチ系炭素繊維。 - X線回折法から得られる黒鉛結晶のa軸方向の結晶子の大きさLaが100nm以上であり、且つ、
X線回折法の(004)回折線から得られる黒鉛結晶のc軸方向の結晶子の大きさLcが100nm以上である、
請求項1に記載のピッチ系炭素繊維。 - 前記炭素繊維の側面から得られるラマンスペクトルの1320〜1370cm−1のバンドのピーク高さIDと、前記炭素繊維の側面から得られるラマンスペクトルの1560〜1610cm−1のバンドのピーク高さIGの比であるID/IGが、0.3〜1.0である、請求項1又は2に記載のピッチ系炭素繊維。
- 細孔容積が0.001〜0.01cm3/gであるメソ孔を有する、請求項1〜3のいずれかに記載のピッチ系炭素繊維。
- 前記等方性ピッチが、石炭を原料として得られる、請求項1〜4のいずれかに記載のピッチ系炭素繊維。
- 等方性ピッチを炭素前駆体とし、平均繊維径が10μm以下であり、且つ、ホウ素を6〜1000massppm含有するピッチ系炭素繊維の製造方法であって、
前記等方性ピッチを原料として得られる前記炭素繊維の前駆体繊維を、ホウ素を含む雰囲気下、2800〜3000℃で熱処理する熱処理工程を有する、
ことを特徴とする、ピッチ系炭素繊維の製造方法。 - 前記等方性ピッチが、石炭を原料として得られる、請求項6に記載のピッチ系炭素繊維の製造方法。
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