以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上、誇張されて実際の比率とは異なる場合がある。
<第1実施形態>
第1実施形態に係る医療用デバイス1は、経皮的に血管内に挿入されるデバイスであり、冠動脈や冠動脈から延びる心筋内の微小血管を、超音波を照射することにより発達または新生させて、心臓の虚血状態を改善するために用いられる。本医療用デバイス1は、図1〜4に示すように、超音波を照射するための照射部4を内部に収容して血管内に挿入され、外部駆動装置7に接続されて駆動される。なお、本明細書では、生体の管腔に挿入する側を「遠位」若しくは「遠位側」、操作する手元側を「近位」若しくは「近位側」と称することとする。また、本明細書では、「虚血状態」は、動脈血量が減少している状態、および動脈血量がなくなった状態の両方の意味を含むこととする。
医療用デバイス1は、図1〜3に示すように、血管の管腔内に挿入されるシース2(シャフト部)と、シース2の近位側に位置する操作部3と、超音波を照射する照射部4と、シース2の遠位部に配置されるバルーン5(拡張部)とを備えている。
シース2は、ガイドワイヤルーメン21、拡張用ルーメン22および照射用ルーメン23が形成され、遠位部にX線造影マーカ24が設けられている。医療用デバイス1は、予め管腔内に挿入されるガイドワイヤWをガイドワイヤルーメン21に通しながら、患部まで導かれる。X線造影マーカ24は、管腔内挿入時にX線透視下で医療用デバイス1の遠位位置を確認できるように設けられている。
シース2内には、照射部4がシース2の軸方向にスライド可能に内蔵されている。この照射部4は、シース2の壁面を通ってシース2の径方向外側へ向けて超音波を照射するための振動子ユニット41と、この振動子ユニット41を遠位部に取り付けるとともに回転させる駆動シャフト42とを備える。振動子ユニット41は、超音波を照射する振動子411と、振動子411を収納するハウジング412とで構成されている。
照射部4が照射する超音波の周波数は、0.1〜50MHzが好ましく、0.5〜10MHzがより好ましく、1.0〜5MHzがさらに好ましい。照射部4からパルス状に超音波を照射する場合、パルス繰り返し周波数は、10〜100000Hzが好ましく、100〜50000Hzがより好ましく、1000〜10000Hzがさらに好ましい。照射部4が照射する超音波のIspta(ディレーテッド強度、空間的ピーク時間的平均)は、0.001〜200mW/cm2が好ましく、0.005〜150mW/cm2がより好ましく、0.01〜100mW/cm2がさらに好ましい。照射部4が照射する超音波の照射時間は、1〜180分が好ましく、5〜120分がより好ましく、10〜60分がさらに好ましい。虚血部位またはその近傍の血管に超音波を照射して刺激を与えることで、血管内皮型の一酸化窒素合成酵素であるeNOSが発生して、血管の発達または新生が促進される。また、超音波を照射することにより、心筋細胞の分裂を促すこともできる。
シース2は、振動子411から照射される超音波を通過させやすいように、バルーン5が設けられる側と反対側に、照射用ルーメン23から開口する窓部25がスリット状に形成されている。したがって、回転する振動子411からの超音波の照射方向が窓部25に一致する場合に、超音波がパルス状となるとともに、超音波の外部への照射強度(例えば、Ispta)が増加する。なお、窓部25は、開口部ではなく、超音波の透過性の高い材料(例えば、ナイロン)により形成されもよい。
駆動シャフト42は、柔軟で、しかも操作部3(図1参照)において生成された回転の動力を振動子ユニット41に伝達可能な特性をもち、たとえば、右左右と巻き方向を交互にしている3層コイルなどの多層コイル状の管体で構成されている。駆動シャフト42が回転の動力を伝達することによって、振動子ユニット41が回転し、1つの振動子ユニット41によって任意の方向へ超音波を照射することができる。また、駆動シャフト42の内部には、操作部3から延びて振動子411に接続される信号線54が通されている。
操作部3は、図1に示すように、シース2の近位部に中継コネクタ33を介して連結される外管32と、外管32の近位部に連結されるユニットコネクタ37と、外管32に対して軸線方向へ移動可能な内管34と、内管34の近位部に連結されるハブ31とを備えている。
ハブ31は、駆動シャフト42および内管34を保持する。ハブ31が移動して内管34がユニットコネクタ37および外管32に押し込まれ(図1を参照)、または引き出されることによって(図5を参照)、駆動シャフト42が連動してシース2内を軸線方向にスライドする。ハブ31には、エア抜きのための生理食塩液を注入するポート311が形成されている。ポート311は、照射用ルーメン23(図3を参照)に連通している。
中継コネクタ33には、バルーン5を拡張させるための流体を注入するためのポート331が形成されている。ポート331は、拡張用ルーメン22を介してバルーン5の内部と連通している。
ユニットコネクタ37は、外部駆動装置7に形成される保持部73(図4を参照)に保持される。
内管34を最も押し込んだときには、図1に示すように、内管34は、外管32の遠位側端部付近、すなわち、中継コネクタ33付近まで到達する。そして、この状態では、振動子ユニット41は、シース2の遠位側端部付近に位置する。
また、内管34を最も引き出したときには、図5に示すように、内管34は、遠位側に形成されたストッパー315がユニットコネクタ37の内壁に引っかかり、引っかかった遠位部以外が露出する。そして、この状態では、振動子ユニット41は、シース2を残したままその内部を近位方向へ引き戻されている。振動子ユニット41が回転しながら移動することによって、1つの振動子ユニット41により広い範囲へ超音波を照射できる。
操作部3のハブ31は、ジョイント312と、駆動シャフト42の近位部に接続されたハブ側コネクタ313と、耐キンクプロテクタ314とを有する。
ジョイント312は、医療用デバイス1の近位側に開口部を有し、ハブ側コネクタ313を内部に配置する。ハブ側コネクタ313は、ジョイント312の近位側から外部駆動装置7が有する駆動側コネクタ711(図4を参照)に連結可能であり、これにより、外部駆動装置7とハブ側コネクタ313とが機械的および電気的に接続される。
ハブ側コネクタ313には、信号線54の一端が接続されており、この信号線54は、図2に示すように、駆動シャフト42内を通り抜けて、他端が振動子ユニット41に接続されている。外部駆動装置7から駆動側コネクタ711、ハブ側コネクタ313を介して振動子ユニット41に送信される信号によって、振動子ユニット41から超音波が照射される。
バルーン5は、図2、3に示すように、シース2の遠位部の外表面に、周方向の一部にのみ設けられる。バルーン5の内部は、シース2に形成される拡張用ルーメン22と連通している。ポート331、拡張用ルーメン22を介してバルーン5内に拡張用流体が注入されると、バルーン5は拡張する(図3(B)を参照)。このとき、バルーン5は周方向の一部にのみ設けられているため、シース2の軸線と交差する特定方向へ偏って拡張し、血管内でシース2を偏心させて位置させることができる。
上述した医療用デバイス1は、図4に示すように、外部駆動装置7に接続されて駆動される。外部駆動装置7は、基台75上に、モータ等の外部駆動源を内蔵して駆動シャフト42を回転駆動する駆動部71と、駆動部71を把持してモータ等により軸方向へ移動させる直線移動部72と、医療用デバイス1のユニットコネクタ37を位置固定的に保持する保持部73とを備えている。外部駆動装置7は、駆動部71、直線移動部72および振動子ユニット41を制御する制御部79に接続されている。制御部79は、振動子ユニット41に超音波を発生させるための信号を送信する超音波発生器としての機能を備えている。
直線移動部72は、駆動部71を把持して固定することが可能であり、把持した駆動部71を、基台75上の溝レール76に沿って前後進させる送り機構を備えている。
駆動部71は、医療用デバイス1のハブ側コネクタ313が接続可能な駆動側コネクタ711と、医療用デバイス1のジョイント312に接続可能なジョイント接続部712と、を有している。ハブ側コネクタ313を駆動側コネクタ711に接続し、ジョイント312をジョイント接続部712に接続することによって、振動子ユニット41へ信号を送信可能となると同時に、駆動シャフト42を回転させることが可能となる。
医療用デバイス1による超音波照射を行う際には、駆動部71内のモータの回転運動を駆動シャフト42に伝達し、かつ、直線移動部72により駆動シャフト42をシース2内で軸線方向へスライド移動させることで、駆動シャフト42の遠位部に固定された振動子411を回転させつつ軸線方向に移動させる。これにより、血管内の軸線方向にわたる任意の方向へ超音波を照射することができる。
次に、本実施形態に係る医療用デバイス1を用いて心臓の虚血状態を改善する処置(治療)を施すときの動作について説明する。ここでは、一例として、図6に示すように、心臓の左冠動脈前下行枝Lに狭窄部または閉塞部Oが形成された場合に、左冠動脈前下行枝Lに隣接する冠静脈Bに医療用デバイス1を挿入して処置を行う場合を説明する。
まず、医療用デバイス1のシース2を血管内に挿入する前に、当該医療用デバイス1内を生理食塩液で満たすプライミング操作を行う。プライミング操作を行うことによって、医療用デバイス1内の空気を除去し、血管などの管腔内に空気が入り込むことを防止する。
プライミングを行うには、ハブ31のポート311に接続した図示しないチューブおよび三方活栓からなる器具を介し、例えば注射筒等を用いて、生理食塩液を注入する。注入された生理食塩液は、ハブ31から順に照射用ルーメン23まで充填される。このプライミング操作を行うことによって、医療用デバイス1内の空気を除去し、血管内に空気が入り込むことを防止できる。
次に、図4に示すように、医療用デバイス1を図示しない滅菌されたポリエチレン製の袋などで覆った外部駆動装置7に連結する。すなわち、医療用デバイス1のハブ31のジョイント312を駆動部71のジョイント接続部712に接続し、ハブ側コネクタ313を駆動側コネクタ711に接続する。これにより、外部駆動装置7から振動子ユニット41へ信号を送信可能となると同時に、駆動シャフト42を回転させることが可能となる。そして、ユニットコネクタ37を保持部73に嵌合させると、連結は完了する。
次に、駆動部71を基台75上の溝レール76に沿って遠位側に動かすことで、ハブ31を遠位側へ押し込み、外管32に内管34が最も押し込まれた状態とする(図1を参照)。この状態で、血管内へ経皮的にイントロデューサシース(図示せず)を挿入し、このイントロデューサシースを介して医療用デバイス1用のガイドワイヤWとは異なる他のガイドワイヤ(図示せず)を血管内へ挿入する。次に、ガイドワイヤを押し進め、ガイドワイヤに沿ってガイディングカテーテル(図示せず)を血管内に挿入し、冠静脈の入口部にエンゲージする。次に、閉塞部Oが形成された左冠動脈前下行枝Lに隣接する冠静脈Bまで、医療用デバイス1用のガイドワイヤWを到達させる。この後、図7に示すように、ガイドワイヤWに沿って、シース2を冠静脈B内に挿入する(挿入ステップ)。この後、シース2の窓部25が、心臓の虚血部位へ向く位置までシース2を押し込んだ後、挿入を止める。このように、狭窄部または閉塞部Oが形成された左冠動脈前下行枝Lではなく、左冠動脈前下行枝Lと略平行に走る冠静脈Bにシース2を挿入することで、狭窄部や閉塞部Oに阻害されることなしに、虚血部位へ超音波を照射可能な位置までシース2を容易に到達させることができる。
次に、中継コネクタ33のポート331に接続した図示しないチューブおよび三方活栓からなる器具を介し、例えば注射筒等を用いて、拡張用流体を注入する。拡張用流体は、拡張用ルーメン22を介してバルーン5内に流入し、バルーン5を拡張させる(固定ステップ)。バルーン5が拡張すると、図8、9に示すように、シース2が血管内で偏心し、窓部25が形成される側が血管壁面に接触する。このとき、シース2が押し付けられる方向は、心膜Pと心筋Mの境界面Sよりも心筋M側へ向くことが好ましい。なお、バルーン5が拡張しても、冠静脈B内の流路は完全に塞がれず、血液の流れを確保できる。
次に、外部駆動装置7により駆動シャフト42をシース2内で回転させつつ軸線方向へスライド移動させ、図8〜10に示すように、振動子411から超音波を照射する(照射ステップ)。このとき、シース2に窓部25が設けられているため、振動子411は、回転することで照射方向が窓部25の方向と一致する際に、外部への照射強度が高くなる。そして、窓部25が形成される側は、心膜Pと心筋Mの境界面Sよりも心筋M側へ向いているため、心筋M側に強く超音波が照射され、心筋Mにおいて、冠動脈および冠動脈から延びる微小血管の発達または新生を促すことができる。なお、本実施形態では、発達および新生を促す冠動脈は、シース2を挿入した冠静脈に隣接する左冠動脈前下行枝Lであるが、他の冠動脈(左冠動脈回旋枝、左冠動脈主幹部、または右冠動脈など)であってもよい。超音波を照射する範囲は、虚血部位の縁に位置する冠動脈または微小血管を含むことが好ましく、これにより、虚血部位へ向かう血管を発達させ、または虚血部位へ向かう血管を新生させ、血流を増加させて虚血状態を改善することが可能となる。また、超音波の照射により刺激されて、心筋細胞の分裂も促される。
そして、振動子411が、回転しつつ軸線方向へ沿って移動することで、1つの振動子411によって、広い範囲に超音波を照射することができる。
振動子411からの超音波の照射は、予め設定した軸線方向の範囲内で、振動子411を1回以上往復運動させつつ行う。なお、振動子411の移動は、往復運動ではなく、例えば、1回の近位方向への移動、または遠位方向への移動であってもよい。そして、予め設定された時間が経過すると、照射部4の移動を停止し、超音波の照射を停止する。この後、ポート331から拡張用流体を排出してバルーン5を収縮させ、医療用デバイス1を血管内から引き抜き、医療用デバイス1の操作が完了する。
以上のように、本実施形態に係る医療用デバイス1は、経皮的に冠静脈まで挿入可能なシース2(シャフト部)と、シース2の遠位側に設けられて超音波を照射可能な照射部4と、血管内でシース2の軸線と交差する方向へ拡張して照射部4を一方側へ偏らせるバルーン5(拡張部)とを有し、照射部4が、拡張部5により偏る方向への照射強度が反対方向よりも高くなるように超音波を照射する。このため、血管内でバルーン5が拡張することによって照射部4が一方側へ偏り、当該偏る方向への照射部4による照射強度が高いため、超音波を照射したい方向へ照射部4を偏らせつつ当該方向へ照射することができる。したがって、血管を発達または新生させて血流を確保するために、超音波を生体へ効果的に作用させることが可能となる。また、超音波を照射することにより、心筋細胞の分裂を促すこともできる。また、方向によって超音波の照射強度が異なるため、例えば体外から超音波を計測すると、移動用デバイス1の姿勢の変化により計測結果が大きく変化することになることから、心臓の拍動により動きやすい医療用デバイス1の姿勢を容易かつ高精度に監視することが可能となり、安全性が向上する。また、本実施形態に係る医療用デバイス1は、超音波を照射したい方向以外へは、超音波を極力照射しないため、超音波の照射が不要な生体組織への影響を極力低減でき、安全性が高い。例えば、本実施形態に係る医療用デバイス1は、心臓の拍動を司る神経への超音波の照射を低減できる。
また、照射部4は、シース2の内部で回転可能であって当該回転によって超音波の照射方向が変化する振動子411を有し、シース2は、照射部4を収容可能な照射用ルーメン23が形成され、バルーン5が拡張することで照射部4が偏る側の壁面に超音波透過率が相対的に低い窓部25が形成される。このため、振動子411をシース2内で回転させることで、照射方向が窓部25と一致する際に超音波をパルス状としつつ、外部への照射強度を高くすることができる。
また、拡張部は、内部に流体が流入することで拡張可能なバルーン5であるため、バルーン5に流体を流入させることで、シース2および照射部4を適切な位置で容易に保持することができる。
また、本発明は、冠動脈および当該冠動脈から延びる微小血管の少なくとも一方を発達または新生させて心臓の虚血状態を改善するための処置方法をも提供する。当該処置方法は、遠位側に超音波を照射可能な照射部を備える長尺な医療用デバイスを経皮的に冠動脈または冠静脈に挿入する挿入ステップと、心膜側よりも心筋側への照射強度が高くなるように前記照射部から超音波を照射して前記冠動脈および微小血管の少なくとも一方の発達または新生を促す照射ステップと、を有する。当該処置方法によれば、冠動脈または冠静脈内から、心膜側よりも心筋側への照射強度が高くなるように超音波を照射するため、血管を発達または新生させて血流を確保したい心筋側へ超音波を効果的に照射して作用させることが可能となる。
また、上記処置方法は、前記挿入ステップおよび照射ステップの間に、前記医療用デバイスの遠位側に備えられる拡張部を拡張させて血管内壁に接触させることで前記医療用デバイスの位置を固定する固定ステップを有することができる。これにより、心臓の拍動により動きやすい医療用デバイスの姿勢を適切に保持でき、適切な照射方向を維持することができる。
また、固定ステップにおいて、前記医療デバイスの前記照射部が設けられる部位を血管内で心筋側に偏らせて固定することができる。これにより、超音波を照射したい心筋側へ照射部を偏らせつつ当該方向へ照射することができ、血管を発達または新生させるために超音波を生体へ効果的に作用させることが可能となる。
また、上記処置方法は、特定の冠動脈または当該冠動脈よりも末梢側に狭窄または閉塞が生じた場合の処置方法であって、当該冠動脈と異なる他の冠動脈または冠静脈に前記医療用デバイスを挿入して超音波を照射することができる。これにより、狭窄または閉塞が生じている冠動脈に医療用デバイスを挿入せずに処置が可能であるため、医療用デバイスの挿入が狭窄部または閉塞部により阻害されず、操作が容易となって処置の確実性が高まる。
また、上記処置方法は、左冠動脈前下行枝または当該左冠動脈前下行枝よりも末梢側に狭窄または閉塞が生じた場合の処置方法であって、冠静脈に前記医療用デバイスを挿入して超音波を照射することができる。これにより、心臓の駆出に重要な部位を栄養する左冠動脈前下行枝と略平行に走る冠静脈から、超音波を照射することができるため、医療用デバイスの挿入が狭窄部または閉塞部により阻害されず、操作が容易となって処置の確実性が高まる。
<第2実施形態>
第2実施形態に係る医療用デバイス8は、バルーンに振動子が配置される点で、第1実施形態と異なる。なお、第1実施形態と同様の機能を有する部位には、同一の符号を付し、説明を省略する。
第2実施形態に係る医療用デバイス8は、図12、13に示すように、血管内に挿入されるシース9(シャフト部)と、超音波を照射する照射部10と、シース9の遠位部に配置されるバルーン11(拡張部)と、シース9の近位側に位置する操作部13とを備えている。
シース9は、ガイドワイヤWを挿入可能なガイドワイヤルーメン91と、バルーンを拡張させるための流体を流通可能な拡張用ルーメン92と、照射部10に接続される信号線104が通る照射用ルーメン93が形成されている。
バルーン11は、シース9の遠位部の外表面に設けられ、バルーン11の内部は、シース9に形成される拡張用ルーメン92と連通している。バルーン11は、拡張時において複数の突出部111が周方向に並ぶように形成されており、後述するポート132、拡張用ルーメン92を介してバルーン11内に拡張用流体が注入されると、バルーン11は拡張する。このとき、バルーン11は複数の突出部111が周方向に並んでいるため、突出部111の間の隙間によって、血流を確保することができる。バルーン11は、シース9の軸線方向において照射部10の全ての振動子102を覆う範囲で拡張可能である。
照射部10は、バルーン11の突出部111の内側に配置される複数の振動子ユニット101を備えている。振動子ユニット101は、周方向に並ぶ8つの突出部111のうち、隣接する3つの突出部111の各々に、軸線に沿って3つずつ配置されている。各々の振動子ユニット101は、振動子102および当該振動子102の基台となるハウジング103を備えており、バルーン11の径方向外側へ向かって超音波を照射可能である。したがって、振動子ユニット101は、バルーン11が拡張することで血管内で偏って配置され、偏る方向への照射強度が反対方向よりも高くなるように超音波を照射する。振動子ユニット101は、照射用ルーメン93を通る信号線104の一端が接続されている。なお、振動子ユニット101は、突出部111の内側ではなく、外側に配置されてもよい。
操作部13は、バルーン11を拡張させるための流体を注入するためのポート132を有するハブ131と、信号線104の近位部に接続されたハブ側コネクタ133と、耐キンクプロテクタと135を有する。ポート132は、拡張用ルーメン92を介してバルーン11内に連通している。
ハブ131は、信号線104の近位部に接続されたハブ側コネクタ133を有する。ハブ側コネクタ133は、ハブ131の近位側から、超音波発生器14が有する駆動側コネクタ141に連結可能であり、これにより、超音波発生器14とハブ側コネクタ133とが電気的に接続される。
駆動側コネクタ711には、信号線104の一端が接続されており、この信号線104は、照射用ルーメン93を通り抜けて、他端が振動子ユニット101に接続されている。超音波発生器14から信号線104を介して振動子ユニット101に送信される信号によって、振動子ユニット101から超音波が照射される。
次に、第2実施形態に係る医療用デバイス8を用いて心臓の虚血状態を改善する処置(治療)を施すときの動作について説明する。ここでは、一例として、心臓の左冠動脈前下行枝Lに狭窄部または閉塞部Oが形成された場合に、左冠動脈前下行枝Lに隣接する冠静脈Bに医療用デバイス8を挿入して処置を行う場合を説明する。
まず、図12に示すように、医療用デバイス8を超音波発生器14に連結する。すなわち、医療用デバイス8のハブ131のハブ側コネクタ133を駆動側コネクタ141に接続する。これにより、外部駆動装置7から振動子ユニット101へ信号を送信可能となる。
次に、血管内へ経皮的にイントロデューサシース(図示せず)を挿入し、このイントロデューサシースを介して医療用デバイス8用のガイドワイヤWとは異なる他のガイドワイヤ(図示せず)を血管内へ挿入する。次に、ガイドワイヤを押し進め、ガイドワイヤに沿ってガイディングカテーテル(図示せず)を血管内に挿入し、冠静脈の入口部にエンゲージする。次に、ガイドワイヤを抜去し、閉塞部Oが形成された左冠動脈前下行枝Lに隣接する冠静脈Bまで、医療用デバイス8用のガイドワイヤWを到達させる。この後、ガイドワイヤWに沿って、シース9を冠静脈B内に挿入する(挿入ステップ)。この後、図14、15に示すように、バルーン11の振動子102が設けられる側が、心臓の虚血部位へ向く位置までシース9を押し込んだ後、挿入を止める。このように、狭窄部または閉塞部Oが形成された左冠動脈前下行枝Lではなく、左冠動脈前下行枝Lと略平行に走る冠静脈Bにシース9を挿入することで、狭窄部や閉塞部Oに阻害されることなしに、虚血部位へ超音波を照射可能な位置までシース9を容易に到達させることができる。
次に、中継コネクタ33のポート132に接続した図示しないチューブおよび三方活栓からなる器具を介し、例えば注射筒等を用いて、拡張用流体を注入する。拡張用流体は、拡張用ルーメン92を介してバルーン11内に流入し、図13(B)、図16、図17に示すように、バルーン11を拡張させる。バルーン11が拡張すると、バルーン11の突出部111が血管内壁面に接触し、突出部111の内側に配置される振動子102が血管内で偏って配置される(固定ステップ)。このとき、振動子102が偏って配置される方向は、心膜Pと心筋Mの境界面Sよりも心筋M側へ向くことが好ましい。なお、バルーン11が拡張しても、突出部111の隙間によって血管内の流路は完全に塞がれず、血液の流れを確保できる。
次に、超音波発生器14から信号線104を介して信号を送り、振動子102から超音波を照射する(照射ステップ)。このとき、振動子102が血管内で偏って配置されているため、振動子102は、配置される側への照射強度が高くなる。そして、振動子102が偏って配置される側は、心膜Pと心筋Mの境界面Sよりも心筋M側へ向いているため、心筋M側に強く超音波が照射され、心筋Mにおいて、冠動脈および冠動脈から延びる微小血管の発達または新生を促すことができる。
そして、振動子102が、隣接する3つの突出部111の各々に、軸線に沿って3つずつ配置されているため、広い範囲に超音波を照射することができる。所定の時間超音波を照射した後、ポート132から拡張用流体を排出してバルーン5を収縮させ、超音波の照射を停止する。この後、医療用デバイス8を血管内から引き抜き、医療用デバイス8の操作が完了する。
以上のように、第2実施形態に係る医療用デバイス8は、照射部10が、シース9(シャフト部)の軸線に沿って並ぶ複数の振動子102を有するため、シース9の軸線に沿う方向の広い範囲に超音波を同時に照射することができ、超音波を生体へより効果的に作用させることが可能となる。
また、バルーン11(拡張部)は、シース9の軸線方向において照射部10の振動子102が超音波を照射する位置を覆う範囲で拡張可能であるため、振動子102が超音波を照射する全ての位置で、バルーン11によって照射部10を適正な位置へ位置決めできる。
また、照射部10は、バルーン11に設けられるため、柔軟に拡張するバルーン11によって振動子102を血管内の適切な位置に位置決めできる。
また、拡張部は、拡張時において複数の突出部111が周方向に並ぶバルーン11であり、照射部10は、突出部111に設けられるため、バルーン11が拡張した際に突出部111同士の隙間で血流を確保しつつ、超音波を照射したい方向へ照射部10を偏らせることができる。
なお、第3実施形態において、突出部111は周方向に8つ設けられているが、突出部の数は限定されない。また、第3実施形態において、1つの突出部111に軸線方向に並ぶ3つの振動子102が設けられているが、軸線方向に並ぶ振動子の数は限定されない。また、1つの突出部に、周方向に並ぶ複数の振動子が設けられてもよい。
<第3実施形態>
第3実施形態に係る医療用システム15は、図18に示すように、第1実施形態に係る医療用デバイス1に加え、照射部4から照射される超音波を検出可能な検出部16を備えている。
検出部16は、生体の体表面に張り付け可能なパッド161と、離れて位置する2つの第1検出センサ162(検出センサ)と、離れて位置する2つの第2検出センサ163(検出センサ)と、第1検出センサ162および第2検出センサ163により検出される信号を制御部79へ送信する信号ケーブル164とを備えている。第1検出センサ162を結ぶラインは、第2検出センサ163を結ぶラインと略直交する。本実施形態では、2つの第1検出センサ162は、照射部4の軸線方向に沿う移動を検知するために使用され、第2検出センサ163は、照射部4の回転を検知するために使用される。
制御部79は、第1検出センサ162により検出される信号を受信し、照射部4の軸線方向の位置を算出して特定し、照射部4の軸線方向の往復範囲を変更可能である。また、制御部79は、第2検出センサ163により検出される信号を受信し、照射部4の照射方向の回転方向位置を算出して特定し、照射部4の照射角度を変更可能である。
次に、第3実施形態に係る医療用システム15を用いて心臓の虚血状態を改善する処置(治療)を施すときの動作を、図19に示すフローチャートを参照しつつ説明する。ここでは、一例として、心臓の左冠動脈前下行枝Lに狭窄部または閉塞部Oが形成された場合に、左冠動脈前下行枝Lに隣接する冠静脈Bに医療用デバイス1を挿入して処置を行う場合を説明する。
第3実施形態では、まず、検出部16を、パッド161により生体の体表面に張り付ける。このとき、2つの第1検出センサ162は、2つの第1検出センサ162を結ぶラインが、医療用デバイス1を挿入する冠静脈Bの直近の体表面にて、当該冠静脈Bと略平行となるように配置する。そして、2つの第2検出センサ163は、2つの第2検出センサ163を結ぶラインが、医療用デバイス1を挿入する冠静脈Bの直近の体表面にて、当該冠静脈Bと略直交するように配置する。
次に、第1実施形態と同様の手順で、医療用デバイス1のシース2を冠静脈B内に挿入し(挿入ステップ)、ポート331から拡張用流体を注入してバルーン5を拡張させ、シース2を冠静脈B内で固定する(固定ステップ)。
次に、外部駆動装置7により駆動シャフト42をシース2内で回転させつつ軸線方向へスライド移動させ、照射部4から超音波を照射しつつ、第1検出センサ162および第2検出センサ163により超音波を検出する。第1検出センサ162により検出された信号は、制御部79へ送信され、制御部79にて照射部4の軸線方向位置が特定される。例えば、軸線方向へ移動しつつ照射される超音波を2つの第1検出センサ162にて計測し、各々で計測される超音波の大小を比較することで、第1検出センサ162に対する照射部4の軸線方向の位置を特定できる。
また、第2検出センサ163により検出された信号は、制御部79へ送信され、制御部79にて照射部4の照射方向の回転方向位置が特定される。例えば、回転しつつ照射される超音波を2つの第2検出センサ163にて計測し、超音波の出力の時間変化を計測することで、第2検出センサ163に対する照射部4の照射方向の回転方向位置を特定できる。一般的には、第2検出センサ163により検出される超音波の出力が最も大きくなる際に、照射部4の照射方向が第2検出センサ163に向いており、超音波の出力が最も小さくなる際に、照射部4の照射方向が第2検出センサ163の逆方向へ向いている。
次に、制御部79にて、照射範囲を特定する。すなわち、照射部4の軸線方向の位置が特定されているため、特定された位置に基づいて、照射部4を往復運動させる軸線方向の範囲を決定する。そして、照射部4の照射方向の回転方向位置が特定されているため、特定された回転方向位置に基づいて、照射部4から超音波を照射する回転方向位置(角度)を決定する。例えば、照射方向が回転する際に、照射方向が心筋M側へ向いた所定の範囲の回転方向位置(角度)において超音波を照射し、それ以外のタイミングでは超音波を照射しないようにすることができる。
次に、照射部4を、決定した範囲内で往復運動させつつ回転させ、かつ決定した角度範囲に照射方向が一致するタイミングで超音波を照射する(照射ステップ)。これにより、超音波を照射したい方向へ照射強度を高めつつ照射することができ、血管の発達または新生を促すように、超音波を生体へ効果的に作用させることが可能となる。
そして、超音波を照射している間において、制御部79は、第1検出センサ162により検出される信号を受信し、照射部4の軸線方向の位置を常に監視している(検出ステップ)。例えば、第1検出センサ162の一方で検出される超音波の出力が想定値よりも小さくなり、他方で検出される超音波の出力が想定値よりも大きくなる場合、他方側へシース2が移動したと考えられる。制御部79にて受信する信号により、シース2の軸線方向の位置がずれたと判断された場合には、照射部4を往復運動させる範囲を、目的の部位へ超音波を照射できる適正な範囲に変更する(制御ステップ)。
また、超音波を照射している間において、制御部79は、第2検出センサ163により検出される信号を受信し、照射部4の照射方向を常に監視している(検出ステップ)。例えば、第2検出センサ163の一方で検出される超音波の出力が想定値よりも小さくなり、他方で検出される超音波の出力が想定値よりも大きくなる場合、他方側へシース2が回転したと考えられる。制御部79にて受信する信号により、シース2の回転方向の位置がずれたと判断された場合には、照射部4から超音波を照射する角度範囲を、目的の部位へ超音波を照射できる適正な範囲に変更する(制御ステップ)。
そして、第1検出センサ162および第2検出センサ163によりシース2の位置ずれを常に監視しつつ、位置がずれた際に照射部4の照射範囲を調整し、超音波の照射を継続する。予め設定された時間が経過すると、照射部4の移動を停止し、超音波の照射を停止する。この後、バルーン5を収縮させて医療用デバイス1を血管内から引き抜き、検出部16を体表面から取り外して、医療用システム15の操作が完了する。
以上のように、第3実施形態に係る医療用システム15は、検出部16により検出される信号に基づいて照射部4からの超音波の出力条件を調整できるため、心臓の拍動により動きやすい医療用デバイス1から照射される超音波を常に適切に維持できる。したがって、血管を発達または新生させるために、超音波を生体へ効果的に作用させることが可能となる。また、検出部16により、医療用デバイス1の位置と姿勢を監視できるため、安全性が向上する。特に、照射方向によって超音波の照射強度を異ならせているため、体外から超音波を計測すると、移動用デバイス1の姿勢の変化により計測結果が大きく変化することになり、医療用デバイス1の姿勢を容易かつ高精度に監視することが可能である。なお、制御部79により調整する照射部4からの超音波の出力条件は、往復範囲および照射角度に限定されず、例えば、照射強度、照射時間、周波数、パルス繰り返し周波数等であってもよい。
また、照射部4は、制御部79により制御されて回転することで照射方向を変更可能であるため、照射方向を、適切な回転方向に維持することができる。
また、照射部4は、制御部79により制御されてシース2の軸線に沿う方向へ移動可能であるため、照射位置を、適切な軸線方向の位置に維持することができる。
また、検出部16は、異なる位置に配置される複数の第1検出センサ162および第2検出センサ163を有するため、検出される信号の情報が増加し、医療用デバイス1の位置および姿勢を良好に検出することができる。なお、医療用デバイス1の位置および姿勢を検出できるのであれば、検出センサの数は、特に限定されない。
また、検出部16は、体表面に張り付け可能であるため、検出部16を容易に張り付け可能であり、作業性が高い。
また、医療用デバイス1は、シース2の軸線と交差する方向へ拡張可能なバルーン5を有するため、心臓の拍動により動きやすい医療用デバイス1の姿勢を適切に維持でき、したがって、照射される超音波の出力条件をより適切に調整できる。
また、本発明は、冠動脈および当該冠動脈から延びる微小血管の少なくとも一方を発達または新生させて心臓の虚血状態を改善するための処置方法をも提供する。当該処置方法は、遠位側に超音波を照射可能な照射部を備える長尺な医療用デバイスを経皮的に冠動脈または冠静脈に挿入する挿入ステップと、前記前記照射部から超音波を照射して前記冠動脈および微小血管の少なくとも一方の発達または新生を促す照射ステップと、前記照射部から照射される超音波を体外または体内に取り付けられる検出部により検出する検出ステップと、前記検出部により検出される信号に基づいて前記照射部からの超音波の出力条件を調整する制御ステップと、を有する。当該処置方法によれば、検出部により検出される信号に基づいて照射部からの超音波の出力条件を調整できるため、心臓の拍動により動きやすい医療用デバイスから照射される超音波を常に適切に維持することができる。したがって、血管を発達または新生させて血流を確保するために、超音波を生体へ効果的に作用させることが可能となる。
また、前記制御ステップにおいて、前記照射部を回転させて照射方向を変更することができる。これにより、照射方向を、適切な回転方向に維持することができる。
また、前記制御ステップにおいて、前記照射部を前記シャフト部の軸線に沿う方向へ移動させることができる。これにより、照射位置を、適切な軸線方向の位置に維持することができる。
また、前記検出ステップにおいて、異なる位置に配置される複数の検出センサにより超音波の検出を行うことができる。これにより、検出される信号の情報が増加し、医療用デバイスの位置および姿勢を良好に検出することができる。
また、前記検出ステップにおいて、体外に張り付けられた検出部により超音波の検出を行うことができる。これにより、検出部を容易に張り付け可能となり、操作性が高い。
また、前記挿入ステップと照射ステップの間に、前記医療用デバイスを当該医療用デバイスに設けられる拡張部を拡張させて血管内に固定する固定ステップを有することができる。これにより、心臓の拍動により動きやすい医療用デバイスの姿勢を適切に維持できるため、照射される超音波の出力条件をより適切に調整できる。
<第4実施形態>
第4実施形態に係る医療用システム17は、図20に示すように、第1実施形態に係る医療用デバイス1に加え、体表面に張り付けられる指示部18を備えている。さらに、医療用デバイス1の照射部4は、超音波を照射するのみならず、反射して戻る超音波を受信し、信号線54(図2を参照)により制御部79へ信号を送信する。すなわち、照射部4(検出部)は、体表面に張り付けられる指示部18を検出するために医療用デバイス1に設けられる検出部としての機能を備えている。
指示部18は、超音波を照射する位置を指定するために、体表面に張り付けられる部材である。指示部18の構成材料は、超音波により検出可能であれば特に限定されないが、例えばステンレスやニッケルチタン、プラチナなどの金属である。なお、支持部18は、可能であれば、例えば心膜の表面などの体内に配置されてもよい。
制御部79は、照射部4から受信する信号に基づいて、超音波の照射範囲を特定し、照射部4の軸線方向の位置および照射方向を調整する。
次に、第4実施形態に係る医療用システム17を用いて心臓の虚血状態を改善する処置(治療)を施すときの動作を、図21に示すフローチャートを参照しつつ説明する。ここでは、一例として、心臓の左冠動脈前下行枝Lに狭窄部または閉塞部Oが形成された場合に、左冠動脈前下行枝Lに隣接する冠静脈Bに医療用デバイス1を挿入して処置を行う場合を説明する。
第4実施形態では、まず、超音波照射範囲を指定するために、照射範囲を示す大きさに切断された指示部18を生体の体表面に張り付ける。指示部18は、例えば、心臓における超音波を照射したい部位の直近の体表面に、照射したい範囲と同じ大きさで張り付けられる。
次に、第1実施形態と同様の手順で、医療用デバイス1のシース2を冠静脈B内に挿入し(挿入ステップ)、ポート331から拡張用流体を注入してバルーン5を拡張させ、シース2を冠静脈B内で固定する(固定ステップ)。
次に、外部駆動装置7により駆動シャフト42をシース2内で回転させつつ軸線方向へスライド移動させ、照射部4から超音波を照射しつつ、指示部18で反射して戻る超音波を受信する。照射部4により受信した信号は、制御部79へ送信され、制御部79にて指示部18の位置および範囲(大きさ)が特定され、超音波を照射する範囲が指示部18によって指定される。すなわち、医療用システム17は、断層画像を取得可能な超音波カテーテル(IVUS)と同様の機能を備えることで、指示部18および心臓の3次元的な位置を特定し、それに基づき、指示部18が指定する心臓の照射部位を決定することができる。
次に、制御部79にて、照射範囲を特定する。すなわち、心臓の超音波を照射したい部位のデータに基づいて、照射部4を往復運動させる軸線方向の範囲と、照射部4から超音波を照射する回転方向位置(角度)を決定する。
次に、照射部4を、決定した範囲内で往復運動させつつ回転させ、決定した角度範囲に照射方向が一致するタイミングで超音波を照射する(照射ステップ)。これにより、血管の発達または新生を促すように、超音波を生体へ効果的に作用させることが可能となる。
この後、設定された時間が経過すると、照射部4の移動を停止し、超音波の照射を停止する。この後、バルーン5を収縮させて医療用デバイス1を血管内から引き抜き、指示部18を体表面から取り外して、医療用システム17の操作が完了する。
以上のように、第4実施形態に係る医療用システム17は、体表面に張り付けられる指示部18を有するため、体外から超音波の照射範囲を指定することが可能となり、操作性が向上する。
なお、本発明は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の技術的思想内において当業者により種々変更が可能である。例えば、超音波を照射する際に、シースを境界面Sよりも心膜P側へ押しつけてもよい。
また、上述した実施形態では、左冠動脈下行枝Lに狭窄部または閉塞部が生じる場合を説明したが、狭窄部または閉塞部が生じる場所は、左冠動脈下行枝に限定されず、左冠動脈回旋枝、右冠動脈、左冠動脈主幹部またはこれらの動脈よりも末梢の血管であってもよい。また、上述した実施形態では、医療用デバイスのシースを冠静脈に挿入して処置を行っているが、狭窄部または閉塞部が生じた冠動脈に挿入して処置を行ってもよく、または、狭窄部または閉塞部が生じた冠動脈とは異なる冠動脈に挿入して処置を行ってもよい。
また、第1実施形態の変形例として、バルーン5の内部に流入させる流体に、超音波伝播性が低い流体を適用してもよい。超音波伝播性が低い流体は、例えば炭酸ガス、窒素、空気などの気体であり、生体への安全性の観点から、血管内で漏れても吸収されやすい炭酸ガスが好ましい。また、バルーン5の材料またはバルーン5に被覆される材料に、超音波伝播性が低い材料(例えば、リン酸カルシウム)を用いてもよい。このようにすれば、拡張したバルーン5により、振動子411からバルーン5側への超音波の照射強度を低下させることができる。
また、第1実施形態では、回転する振動子411を利用して、1回転に1回だけ照射方向へ向く振動子411によりパルス状の超音波を照射しているが、振動子を回転させずに、間欠的な信号を送信して電気的にパルス状の超音波を照射することもできる。
また、第1実施形態では、駆動シャフト42に、1つの振動子411が回転可能に連結されているが、図22に示すように、軸線方向に並ぶ複数の振動子43が駆動シャフト42に連結されてもよい。この場合、複数の振動子43によって軸線方向の広い範囲に超音波を照射できるため、必ずしも振動子43を軸線方向へ往復移動させなくてもよい。
また、上述した実施形態では、シースの軸線と交差する特定方向(心筋側)へ超音波を照射しているが、心膜側へ超音波を照射してもよく、または、回転方向の全方向へ超音波を照射してもよい。
また、拡張体は、バルーンに限定されず、例えば、手元側で牽引または押し込み操作することで、シースの遠位部で撓むように拡張するワイヤーなどの線材や、線材により編まれた編体であってもよい。また、拡張体は、別途設けられるシース内から突出させることで、例えば自己拡張型ステントのように自己拡張力により拡張する線材や編体であってもよい。
また、心臓幹細胞を投与(もしくは、組織内に注入)する際に、投与部位および当該部位の周囲に超音波を当てて細胞を活性化しておいた後に、心臓幹細胞を冠静脈/動脈経由で投与(もしくは、組織内に注入)することもできる。このようにすることで、細胞の走行性(細胞の移動しやすさ)および周囲の血管新生能力が相乗的に発揮されて、より早く心臓組織を再生させる。