JP6406715B2 - 生体由来組織片を用いたがんの検出方法、および生体外での生体由来組織片中の細胞の維持方法 - Google Patents

生体由来組織片を用いたがんの検出方法、および生体外での生体由来組織片中の細胞の維持方法 Download PDF

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Description

本発明は、生体由来組織片を用いたがんの検出方法に関する。本発明はまた、生体外での生体由来組織片中の細胞を生きた状態で維持する方法に関する。
がんを精度よく検出することは、その発見や治療のために重要である。通例、がん組織は一様な性質を示す細胞の集合ではなく、様々な形態的あるいは機能的な特徴、分化の程度を示す細胞の集合である。また正常細胞の中に混在して存在する場合もある。そこで、がん診断では、診断を確定するために生検標本の病理診断を行い、細胞レベルで異常細胞の評価を行うことが必要となる。しかし、生検標本の病理診断においては、特に早期がんであるほど、がん細胞もしくは前がん状態にある細胞が見落とされる可能性、すなわち誤って陰性(False Negative、偽陰性)と診断される可能性が存在する。特に、内科診断時に組織を取り出す生検を行なう場合、このような偽陰性の診断がなされてしまい、その後に病状が進行してしまってから初めて気づく危険性をいかに小さくするかが課題となっている。同様の問題は、手術後の再発の有無の評価においても大きな課題となっている。
消化管がんでは、一般に消化管内腔の組織表層(粘膜層)にある上皮細胞に最初に異常が発生する。経過観察の結果、もしも組織深く、すなわち粘膜下層から更に深い筋層においても異常細胞がみられるようになると、転移の可能性が増大する。転移すると根治が難しくなるため、こうした事態となる前に「組織表層の病変の性質と範囲」を正確に判定することが求められている。
組織学的に異常細胞を判定する場合、内視鏡などを用いて消化管内腔表面を観察して病変部と思われる部位の一部を採取する(生検)。生検組織はホルマリン等で固定した後に厚さ5ミクロン程度にまで薄切し、多数の標本(プレパラート)を作製、色素等で組織染色を行う。こうして得られた病理組織標本を、専門の病理医が、細胞核(nucleus)と細胞質(cytoplasm)の比(N/C比)の増大、細胞質内の核の位置と形の異常、細胞組織構築の異常の様相、等の形態学的特徴に注目して、正常であるか、あるいはがんやがんに移行する可能性が疑われる異常を示しているか診断する。
しかし、がんの病理診断は、長年の経験を積んだ病理医が主観に基づいて下すものであることから、がんとアデノーマ(良性腫瘍)との境界状態にあるような組織や、核形態だけでは判断できないような場合等において、病理医により意見が分かれることも少なくない。また、表層に留まる早期の病変の判定基準は、欧米と日本で異なるなどの問題も指摘されている。実際、早期の病変であればあるほど、「がんとなる恐れのある病変」と、「がんとなる恐れのない病変」の線引きは難しい。
そこで、臨床サイドからはこうした主観的側面をもつ現在の病理診断に代わり得る客観的な尺度、あるいは経験に乏しい医師であっても判断できるような明確な指標が求められている。また、高齢化し絶対数の不足する病理医のサイドからは、日々蓄積する膨大なヘマトキシリンーエオシン染色(HE染色)標本の中から、「ここをよく見てほしい」と指し示すガイドとなるような指標、あるいはHEによる診断を補うような指標がほしいという要望がある。
現在の病理診断のもう一つの問題として、上記した異常判定が、固定後死んだ細胞を対象とするため、専ら「形態学的な異常」の判定に留まり、細胞の「機能的な異常」を見ていないという点がある。一見正常な細胞組織構築を示す領域の細胞が、機能的に正常であるか否かは、通常の病理組織学的検査ではわからない。病理学者が形態的に正常と判断しても、既に細胞は感染して機能的異常が開始しているような場合、形態的に異常が明らかになるまで待っていては治療が後手に回ってしまう可能性もある。このような細胞の「機能的な異常」を見るためには、生検鉗子等で体外に摘出した不定形のがん組織を生かした状態に保つことが必要である。
HE染色標本以外のがんの検出手段として、D−グルコースに緑色の蛍光基NBDを結合した2−NBDGを用いたイメージングが報告されている。がん組織の生検もしくは手術時摘出標本に2−NBDGを用いた例として、口腔がん(非特許文献1)、乳がん(非特許文献2)およびバレット食道がん(非特許文献3)の例が報告されている。しかしながら、程度の差はあるとはいえ、2−NBDGは非がん細胞にも取り込まれて非がん細胞をイメージングしてしまう。また、生検鉗子等で体外に摘出した不定形のがん組織を生かした状態に保ち、蛍光グルコース誘導体を投与して、細胞内への取り込みの様子を連続的に蛍光観察する技術は確立されておらず、これらの報告は再現性や技術的信頼性に乏しいと言わざるを得ない。従って、これらの技術も、上記の問題や要望に応えるものとはなっていない。
本発明者らは、L−グルコースを緑色の蛍光基NBDで標識した蛍光L−グルコース誘導体(2−NBDLG)を開発した(特許文献1)。そして、がん細胞内への2−NBDLGの特異的な取り込みによりがん細胞を検出する方法を報告している(特許文献2)。
WO2010/016587号公報 WO2012/133688号公報
Nitin et al., Int. J. Cancer 124: 2634-42, 2009 Langsner et al., Biomed. Optics Express 2: 1514-23, 2011 Thekkek et al., Technol. Cancer Res. Treat. 10: 431-41, 2011
本発明は、がん診断におけるHE染色標本に代わるあるいはそれを補助する、新たな組織サンプルにおけるがんの検出方法を提供することを目的とする。
本発明はまた、生体外での生体由来組織片中の細胞を生きた状態に維持する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、生体から生検等により採取した組織片に特定の処理を施すことにより、試験をするのに十分な期間にわたって組織片中の細胞が生理的な機能を維持できること、さらに、そのような組織片中に存在するがん細胞を2−NBDLGを用いてイメージングできることを見出し、本発明を完成した。
本発明の例示的な態様は、以下の通りである。
(1)生体由来組織片中のがんを検出するための方法であって、以下の工程、
a.生体から採取した組織片を、29〜33℃の温度にて少なくとも30分以上処理する工程、
b.前記工程aで処理した組織片を、35.5〜37.5℃の温度にて、蛍光分子団として7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾール基またはその誘導体を分子内に有するL−グルコース誘導体の存在下で処理する工程、および
c.組織片中の細胞内に存在する該L−グルコース誘導体を検出する工程、
を含む検出方法。
(2)前記L−グルコース誘導体が、2−[N−(7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾール−4−イル)アミノ]−2−デオキシ−L−グルコース(2−NBDLG)である上記(1)に記載の検出方法。
(3)工程aが、生体から採取した組織片を、約0℃に冷却した後、29〜33℃の温度にて少なくとも30分以上処理する工程である、上記(1)または(2)に記載の方法。
(4)前記工程bにおける処理時間が20分以内の時間であり、そして、工程cにおける検出が、蛍光強度の時間経過による変化を指標として行う、上記(1)〜(3)のいずれか一つに記載の検出方法。
(5)生体由来組織片中のがんを検出するための方法であって、以下の工程、
a.生体から採取した組織片を、29〜33℃の温度にて少なくとも30分以上処理する工程、
b.前記工程aで処理した組織片を、35.5〜37.5℃の温度にて、2−[N−(7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾール−4−イル)アミノ]−2−デオキシ−L−グルコース(2−NBDLG)および2位にスルホローダミン101をスルホンアミド結合した2−アミノ−2−デオキシ−L−グルコース(2−TRLG)の存在下で処理するする工程、および
c.組織片中の細胞内に存在する2−NBDLGおよび/または2−TRLGを検出する工程、
を含む検出方法。
(6)工程aが、生体から採取した組織片を、約0℃に冷却した後、29〜33℃の温度にて少なくとも30分以上処理する工程である、上記(5)に記載の方法。
(7)前記工程bにおける処理を20分以内で行う上記(5)または(6)に記載の検出方法。
(8)前記工程bにおける処理を10分以内で行う上記(7)に記載の検出方法。
(9)前記工程cにおける検出が、蛍光イメージングされた細胞の蛍光色調の時間経過による変化を指標にして行う、上記(5)〜(8)のいずれか一つに記載の検出方法。
(10)前記工程bの後に、組織片を約0℃において1〜24時間保存した後、工程cを行う、上記(1)〜(9)に記載の方法。
(11)前記組織片が、胃、食道、胆道、大腸、子宮、子宮頸部、膣、膀胱、および前立腺からなる群より由来する組織片である。上記(1)〜(10)に記載の方法。
(12)生体由来組織片中の細胞内に存在するL−グルコース誘導体を検出することによりがんを検出する方法であって、該生体由来組織片が、以下の工程:
a.生体から採取した組織片を、29〜33℃の温度にて少なくとも30分以上処理する工程、および
b.前記工程aで処理した組織片を、35.5〜37.5℃の温度にて、2−[N−(7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾール−4−イル)アミノ]−2−デオキシ−L−グルコース(2−NBDLG)および2位にスルホローダミン101をスルホンアミド結合した2−アミノ−2−デオキシ−L−グルコース(2−TRLG)の存在下で処理する工程、
により調製され、かつ、約0℃にて1〜24時間保存されたものである、
がんを検出する方法。
(13)工程aが、生体から採取した組織片を、約0℃に冷却した後、29〜33℃の温度にて少なくとも30分以上処理する工程である、上記(12)に記載の方法。
(14)細胞内のL−グルコース誘導体の検出を行った後に、さらに組織片から病理標本を作製して病理標本に基づくがんの検出を行う、上記(1)〜(13)のいずれか一つに記載の方法。
(15)前記L−グルコース誘導体の検出が寒天中に固定された組織片を用いて行う、上記(14)に記載の方法。
(16)生体由来の組織片中の細胞を生きた状態に維持する方法であって、以下の工程、
a.生体から採取した組織片を、29〜33℃の温度にて少なくとも30分以上処理する工程、および
b.前記工程aで処理した組織片を35.5〜37.5℃の温度にて処理して、(20分間以上、好ましくは30分間以上、より好ましくは1時間以上)細胞を生きた状態に維持する工程、
を含む細胞維持方法。
(17)工程aが、生体から採取した組織片を、約0℃に冷却した後、29〜33℃の温度にて少なくとも30分以上処理する工程である、前記(16)に記載の方法。
(18)前記組織片が、生体の管腔および内腔からなる群より選ばれる上記(16)または(17)に記載の方法。
(19)前記組織片が、胃、食道、胆道、大腸、子宮、子宮頸部、膣、膀胱、および前立腺からなる群より選ばれる上記(18)に記載の方法。
(20)被験者から採取した生体組織片を用いて、上記(1)〜(15)のいずれか一つに記載のがんの検出方法により得られる情報を補助として、がんを診断する方法。
(21)上記(1)〜(15)のいずれかの検出方法において、工程bにおいてまたは工程bの後に、任意の化合物の存在下で組織を処理することにより、該化合物のがん細胞に対する効果を評価することを含む、スクリーニング方法。
本発明によれば、被験者から採取した組織片を用いて、組織中の細胞が生きた状態にて、イメージングによりがんを検出できる。
本発明によれば、生体由来の組織中の細胞を生かした状態に維持でき、細胞の機能的な異常を観察できる。
腫瘍が疑われる中心部(A)およびその周辺部(B)から生検で得られた組織のそれぞれについて、蛍光標識グルコース誘導体を投与する前の透過光像(微分干渉コントラスト像、以下DIC)と緑色チャネルの自家蛍光像とを重ね合わせたものである。A:左側、B:右側。 2−NBDLGおよび2−TRLGを投与後、洗い流しを開始してから10分経過した時点での、DIC像と2−NBDLGの取り込みを反映する緑色チャネル(500−580nm)における共焦点蛍光像の重ね合わせものである。A:左側、B:右側。 同、18分経過した時点での、DIC像と緑色チャネルにおける共焦点蛍光像の重ね合わせものである。A:左側、B:右側。 2−NBDLGおよび2−TRLGを投与後、洗い流しを開始してから10分経過した時点での、DIC像と2−TRLGの取り込みを反映する赤色チャネル(580−740nm)における共焦点蛍光像の重ね合わせものである。A:左側、B:右側。 2−NBDLGおよび2−TRLGを投与後、洗い流しを開始してから10分経過した時点での、2−NBDLGの取り込みを反映する緑色チャネルで観察した蛍光像、2−TRLGの取り込みを反映する赤色チャネルで観察した蛍光像、およびDIC像を重ね合わせたものである。A:左側、B:右側。 同、18分経過した時点での、緑色チャネルで観察した蛍光像、赤色チャネルで観察した蛍光像、およびDIC像を重ね合わせたものである。A:左側、B:右側。 生検組織をホルマリン固定後、H&E染色を行った病理組織像である。 生検組織の蛍光像に病理診断から得られた対応関係を書き加えたものである。
本発明の一つの態様において、本発明は、正常細胞内にグルコースが輸送される際の細胞膜輸送機構であるグルコーストランスポーター(GLUT)と結合せず、これに認識されないL−グルコースを蛍光標識した誘導体を、ヒトもしくは動物から摘出した腫瘍を含む可能性のある組織に投与接触させ、接触中、もしくは一定時間が経過した後に、組織内の細胞の発する蛍光を光学的に検出することで(好ましくは、さらに投与前と比較することで)、がん細胞を正常細胞と識別し、がんの選択的可視化を行う方法に関する。
本発明で用いることができる、蛍光標識L−グルコース誘導体は、蛍光分子団として7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾール基またはその誘導体を分子内に有するL−グルコース誘導体、例えば2−NBDLGであり、それらは、本発明者らによる特許出願である特許出願WO2010/016587号公報、およびWO2012/133688号公報に具体的に開示されている。
本発明の一つの態様では、7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾール基またはその誘導体を分子内に有するL−グルコース誘導体に加えて、他の蛍光標識L−グルコース誘導体である2位にスルホローダミン101をスルホンアミド結合した2−アミノ−2−デオキシ−L−グルコース(2−TRLG)を用いることができ、これにより、より精度よくがんを検出できる。2−TRLGも、特許出願WO2010/016587号公報、およびWO2012/133688号公報に具体的に開示されている。
本発明のがんを検出する方法を適用できる標的組織は、がん細胞集団を含む組織であれば特に限定されないが、主な標的組織としては、口腔内や消化管、子宮、子宮頸部、膣、膀胱、前立腺その他の臓器などの内腔にあって、二次元的、もしくは三次元的に増殖する腺がん等のがん細胞集団を含む可能性のある組織である。また本発明のL-グルコース誘導体は、L-グルコースを分子内に有してなることで、正常細胞との相互作用を他の方法に比べて少なくすることが可能であり、組織中のがんをコントラストよく可視化できる。
具体的には、これに限定されないが、口腔内腫瘍や消化器腫瘍、子宮頸がんなどの婦人科腫瘍、膀胱がんや前立腺がん、そのほか肺やさまざまな臓器の生検などにより得た組織標本や細胞、手術時摘出組織が本発明の方法の対象となる。
本発明の他の一つの態様において、本発明の方法は、病変を含む組織片に、蛍光標識L−グルコース誘導体を一定時間接触させた後、洗い流すことで、組織片中のがん細胞内に蛍光標識L−グルコース誘導体を取り込ませ、光学的装置を用いて細胞を蛍光観察する方法に関する。本発明の方法を適用出来る具体例としては、これに限定されないが、組織切片を、1)採取、2)冷却、3)必要に応じた組織のトリミング、4)体温よりマイルドな低い温度での組織の修復、5)体温と同じ温度での蛍光グルコース取り込みプロセス、6)蛍光グルコースの洗い流し過程、7)組織配向の決定、8)蛍光観察、および9)その後の病理組織学的評価に適した組織固定プロセスを含む一連のがんの検出または診断工程をあげることができる。これらの工程の実現において、本発明に方法に、さらに種々の変更を加えることも可能である。
本発明の別の一つの態様において、本発明の方法の特徴は、細胞を蛍光観察できる装置があれば、組織を薄切せずにがん細胞の観察が可能になることから簡便・迅速である点が挙げられる。本発明の方法は病理診断を補う客観的な基準の一つとして治療法選択の指針となり、繰り返し実施することも可能であることから、薬剤などの治療効果判定の補助としても役立つことが期待される。また、内視鏡的粘膜除去術(EMR)等の内視鏡下での手術時あるいは外科手術時等において、得られた組織を薄切せずに蛍光で評価する迅速診断の補助として用いることもでき、患部露出後の適切な切除範囲の決定における補助としての役割も期待される。いずれの場合も、蛍光による組織観察という本発明の方法を施行した後、通常の病理標本作製と同様のプロセスを実行することができ、本発明の方法を実施しても、通常の病理組織学的診断評価に影響しない点が確かめられている。
本発明の別の一つの態様において、本発明の方法は、抗がん作用をもつ化合物のスクリーニング方法である。本発明においては、細胞を蛍光観察できる装置があれば、組織を薄切せずにがん細胞を生きた状態で観察することが可能であることから、がん細胞に対する任意の化合物の効果を直接観察することができる。それにより、抗がん作用をもつ化合物のスクリーニングが可能となる。
本発明の他の一つの態様において、本発明の方法の特徴は、標的組織中の損傷を受けた細胞とがん細胞を区別できることである。細胞膜に損傷を受けた細胞は、仮にがん細胞であったとしても、あるいは非がん細胞(正常細胞を含む)であったとしても、蛍光標識グルコース誘導体が非特異的に細胞内に侵入する。従来技術では、このような細胞膜に損傷を受けた非がん細胞に蛍光標識グルコース誘導体が非特異的に取り込まれる場合を、がん細胞における取り込みと識別することができなかった。がん組織中では、エネルギー供給より細胞増殖速度が勝る部分があり、完全な生細胞と完全な死細胞の中間状態にある細胞の数が多い。これらの細胞の一部は細胞膜の透過性が亢進しているが、細胞は死んでいない。こうした細胞の状態を的確に捉えることはヒトがん組織中の細胞の状態の評価する上でクリティカルな情報を与える。本発明は、2−TRLGという立体的に中程度のかさ高さと適度な脂溶性を有する蛍光基とL−グルコースという水溶性でかつGLUTに結合しない分子を分子内に併せ持つ誘導体を用いることにより、組織(片)診断において、このことを初めて可能とした。
これに対して従来から知られているpropidium iodideやDAPIなど細胞膜損傷部から細胞内に侵入して核に不可逆的に結合する分子を用いた場合や単にかさの大きなデキストラン等に蛍光基を結合した分子を用いる等した場合には、細胞状態の違いを正確に表現することができない。すなわち、本発明の方法では、大型で赤色の蛍光基Texas Redを結合した蛍光L−グルコース誘導体2−TRLGと緑色の蛍光基NBDを結合した2−NBDLGとを同時にがん組織に投与することにより、がん細胞集団中にある細胞が蛍光標識L−グルコース誘導体を取り込む様子の違いを、緑色から赤色に至る連続的な蛍光カラーをもって識別することを可能にしている。これは従来の蛍光分子プローブによる組織(片)を対象としたがん細胞識別技術に見られない大きな特徴である。
本発明の別の一つの態様において、本発明の方法は、体外に摘出したヒト生検組織や手術摘出標本を生きた状態に維持できることである。これに限定されず、また以下に挙げる全ての工程を含む必要はないが、例えば、本発明の方法を生検組織や手術時摘出標本に適用する場合は、組織の、1)採取、2)冷却、3)必要に応じた組織のトリミング、4)マイルドな低温下での組織損傷の修復、5)体温下での組織の維持の各プロセスが含まれ、それにより、組織を生きた状態に保つことができ、組織中の細胞の機能を生きた状態で観察できる。
本発明の一つの態様は、生体由来組織片中のがんを検出するための方法であって、以下の工程:a.生体から採取した組織片を、29〜33℃の温度にて少なくとも30分以上処理する工程(好ましくは、生体から採取した組織片を約0℃に冷却した後、29〜33℃の温度で処理する);b.前記工程aで処理した組織片を、35.5〜37.5℃の温度にて、蛍光分子団として7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾール基またはその誘導体を分子内に有するL−グルコース誘導体の存在下で処理する工程;およびc.組織片中の細胞内に存在する該L−グルコース誘導体を検出する工程、を含む検出方法である。以下、それぞれの工程について説明する。
上記本発明の方法に用いる生体由来組織片は、動物、好ましくはヒトから採取できる組織片であれば特に制限がない。これに限定されないが、例えば、内視鏡や腹腔鏡その他の光学的手段、あるいはその他の既知の方法を用いて患部を観察しながら、病変部組織を生検鉗子等により採取することにより得ることができる。これに限定されないが、採取組織の厚みは1mm程度以下を目標とし、一般におよそ600ミクロン以下とすれば組織内部の全体を生かし、生理活性を保った状態で観察することが可能となる。摘出組織の厚みに関する制限は、組織中の細胞間隙の緻密度、組織性状にも依存するが、摘出組織の厚みが厚い場合であっても、以下に記すように、摘出後にただちに冷却するなどして組織の温度を下げ、摘出組織の代謝を押さえた上で適切な組織回復プロセスを踏めば、表層から少なくとも200−300ミクロン程度の部分については生理活性を保ちながら観察できる。
採取した組織は、直ちに約0℃のKrebs−Ringer溶液(KRB,pH7.4)中に取り出し、冷却することが好ましい。冷却液は、適切に選択された臓器保存液等でもよい。
その後の工程は、Krebs−Ringer溶液、またはKrebs−Ringer溶液と同等の機能を持つ生理的食塩水(Physiological saline)等の緩衝液を用いて行うことができる。
生体由来組織片は、本発明の方法を適用する前に、必要に応じてトリミングにより形を整えることができる。これに限定されないが、例えば、実体顕微鏡下で、組織を冷却しながら組織を観察しやすいように剪刃やその他の切断手段を用いて適切なトリミングを行い、形を整えることができる。また、本発明の方法により取得できる蛍光観察像と、その後必要に応じて得ることができる固定後の病理組織像とを一致させるため、方向が確認できるよう非対称な形となるようなトリミングを実施してもよい。
(必要に応じてトリミング等の処理を行った)生体から採取した組織片を、29〜33℃の温度にて処理することにより、損傷を受けた組織を回復させる。回復処理における処理温度は、25℃以上で可能であるが十分な回復を得るためには、29〜33℃の間で行うのが好ましく、処理時間は、少なくとも30分以上、好ましくは少なくとも40分以上、より好ましくは少なくとも60分以上であるが、処理温度および処理時間は、組織が由来する臓器や器官に応じて、あるいは組織の損傷の程度に応じて、さらには目的とする測定に応じて、適宜変更することができる。その後、35.5〜37.5℃の温度に復温する。一般には組織が由来する動物の体温に戻すのが好ましいが、組織が由来する臓器や器官に応じて若干上下することもできる。例えば、ヒトの組織を用いる場合は、35.5〜37.5℃、好ましくは36.5〜37.5℃、さらに好ましくは約37℃である。これに限定されないが、ひとつの例として、消化管内腔から鉗子により摘出した組織片を用いる場合は、温度は当初約32℃にて40分以上処理して生検やトリミングにより損傷を受けた組織を回復させた後、37℃に復温する方法をあげることができる。
次いで、35.5〜37.5℃の温度に置かれた状態の組織片に対して、例えば、2−NBDLGまたは、2−NBDLGと2−TRLGの混合液を適用する。蛍光標識L−グルコース誘導体の適用およびその後の組織片中のがん細胞内に存在する2−NBDLGの検出を容易にするために、例えば、採取した組織片は、消化管内腔に面した側(上皮細胞)を共焦点顕微鏡のレンズ側に向けて、共焦点顕微鏡、もしくはその他の蛍光観察が可能な装置上に設置した温度制御式の潅流チャンバーの上に置いたナイロンメッシュで上下に挟む形で固定することができる。
蛍光標識L−グルコース誘導体の適用は、例えば、以下のように行うことができる。潅流液を、電磁弁を用いて、あるいは静水圧による落差を用いて投与液を置き換える一般的な方法を用いて、KRB溶液から蛍光L−グルコース誘導体である2−NBDLG(100μM)と2−TRLG(20μM)の混合液に一定時間切り替えることにより組織に接触せしめ、しかる後に潅流液をKRB溶液に戻す方法によって、生きた組織に蛍光L−グルコース混合液を投与することが可能である。その際、非特異的な取り込みを押さえる目的で、ヘミチャネル阻害剤Carbenoxoloneを加えてもよい。また、溶液の調整や潅流チャンバーについては公知の方法(特許文献1、特許文献2に記載の方法)に従って行えばよい。
蛍光標識L−グルコース誘導体を組織に適用する時間は、これに限定されないが、数十分以内で十分である。例えば、適用時間は、20分以内、10分以内、或いは5分程度であっても、組織中のがん細胞への十分な2−NBDLGの取り込みを達成できる。
蛍光の検出は、公知の方法(例えば、特許文献1、特許文献2に記載の方法)に従って行うことができる。蛍光標識L−グルコース誘導体溶液を投与終了後の余分な蛍光液の洗い流しに要する時間は、チャンバー中にある蛍光液の除去に加えて、組織間隙に侵入して細胞内に取り込まれなかった蛍光液を除去するために必要で、後者に必要な時間は組織の厚さや形にも依存する。一般に、通常10分程度で評価が可能となり、30分程度維持されるのでこの間に観察する。時間経過に従って、蛍光退色や分解、流出などの変化が起きるのを防ぎたい場合、0℃に組織を保持することによって、投与終了直後の状態を保ってから、0℃付近で組織の活動性を押さえたまま観察してもよい。その場合、潅流を行わずともよく、従ってナイロンメッシュで押さえなくともよいため、広い視野が得られるメリットがある。なお、工程bの後、組織を0℃付近で保持し、その後工程cを行うことも本発明に含まれる。かかる場合、0℃で組織を保持する時間は、組織を生きた状態で維持できかつ組織の活動性を押さえることができれば特に制限がされず、具体的には、例えば、24時間以内、好ましくは4時間以内、さらに好ましくは1時間以内である。これにより、工程bと工程cを別の場所で行うことも可能となる。
本発明の方法を用いてがんの検出を行った場合は、生体由来組織片は生きたままで維持できる。従って、必要に応じて、組織片をさらに別の検査に用いることができる。以下、本発明の方法を用いてがんの検出を行った組織片を通常の病理組織標本として観察する場合を説明する。
蛍光観察終了後は、組織を常法に従いホルマリン等で固定後、病理組織標本を作製して病理診断に付す。その際、蛍光観察した面と病理標本の薄切面が一致するように、また組織の配向が一致するように留意することが重要である。そのための有効な方法は、種々考えられるが、組織をナイロンメッシュなどで上下から挟んで固定して観察し、観察後そのままの配置を維持しながらホルマリン固定し、常法に従って薄切後、立体的に再構成した組織の形から生組織と病理標本相互の対応関係を決めてもよい。あるいはまた、市販の低融点の寒天(Low-melting agarose)中に生組織を入れ、0℃に下げることで組織の配向を固定し、そのまま低温下で寒天を通して蛍光顕微鏡観察を行い、しかる後に市販の冷却型ミクロトーム等の凍結切片作製装置上で例えばマイナス20℃等に組織温度を低下させてから観察面に平行に厚さ100−200ミクロン等の厚みにいったん組織を薄切し、これらの薄切切片をホルマリン固定した後に、通常のパラフィンによる病理切片を作製してもよい。後者は、蛍光観察の方向と病理切片の薄切方向を一致させることが容易になるというメリットがある。
また、蛍光像は組織中の深さにより変化することから、共焦点顕微鏡やデコンボリューション顕微鏡他の立体的な観察を可能にする方法等を適切に用いることで断層写真を撮影し、病理組織標本と対応させることも可能である。
以上のプロセスは、a)採取、b)冷却、c)必要に応じた組織のトリミング、d) マイルドな低温下での組織損傷の修復、e)体温下での蛍光グルコースの投与と取り込み過程、f)蛍光グルコースの洗い流し過程、g)固定後の病理組織標本像と対応させるための組織配向の決定法、h)蛍光観察法、およびi)観察後の組織固定法や必要に応じた粗い薄切操作など病理組織標本との対応法、から成っており、生きた組織を用いた迅速検査と、病理組織標本を用いた検査という、二重の検査が可能であり、より精度の高い診断が可能となるばかりでなく、病理組織標本検査が容易となる。また、それぞれの目的が満たされる方法であれば、前述した方法に限定されず、公知の技術を用いて、種々の変更および改良が可能である。
本発明のがんの検出方法の対象となるがん組織は特に限定されず、例えば、胃がん、食道がん、子宮頸がん、胆道がんのように扁平上皮と腺組織がみられるがん、大腸のような吸収上皮のがん、膀胱がんのような移行上皮のがん、など広い範囲のがん組織をあげることができる。
本発明の生体由来組織片中の細胞を生きた状態に維持する方法における組織片が由来する生体組織は特に限定されず、各種器官および臓器をあげることができ、例えば、消化管、気管、膀胱、膣、その他各種管腔、口腔内、子宮、子宮頸部、前立腺、その他の臓器などの内腔をあげることができる。
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は以下の記載に限定して解釈されるものではない。
本発明者らは、早期胃がん、もしくは胃がんの疑われる患者から、内視鏡的に粘膜切除術(Endoscopic mucosal resection, EMR)や粘膜下層剥離術(endoscopic submucosal dissection, ESD)を実施する直前に、病変部と推定される領域、およびEMR/ESDを実施するマージンの範囲内にあってかつ病変部の周囲の領域から、それぞれ生検により組織を摘出して、生体外(ex vivo)で蛍光標識L-グルコース誘導体(2-NBDLGならびに2-TRLG)を適用し、癌の検出をおこなった。なお、実験は、弘前大学大学院医学研究科倫理委員会承認を経て、被験者からインフォームドコンセントを得た上で行った。
実施例1:生体由来組織片の調製
高分化型胃がん患者において、内視鏡下、粘膜切除術(EMR)を施行する予定領域内で、腫瘍が疑われる中心部(A)およびその周辺部(B)から生検を実施し、組織をすぐに冷却した。
生検で得られた組織(AおよびB)をそれぞれ、消化管内腔に面した側(上皮細胞)を共焦点顕微鏡のレンズ側に向けて、共焦点顕微鏡上に設置した温度制御式の潅流チャンバーの上に置いたナイロンメッシュで上下に挟む形で生検組織を固定した。Krebs−Ringer溶液(KRB溶液:ギャップ結合阻害剤carbenoxolone 0.1 mM、グルコース 5.6 mMを含む)を潅流しながら、温度は当初32℃にて40分以上潅流して生検やトリミングにより損傷を受けた組織を回復させた後、37℃に復温した。
実施例2:蛍光標識L−グルコースの適用
組織(AおよびB)のそれぞれについて、KRB溶液を潅流しながら蛍光標識グルコース誘導体を投与する前の透過光像(微分干渉コントラスト像、以下DIC)と緑色チャネルの自家蛍光像とを観察した。重ね合わせたものを図1に示す。左図と右図の暗い領域は、それぞれ内視鏡生検時に内視鏡医によって腫瘍病変部と判断された部位から採取した生検組織、および病変周囲の非腫瘍組織と判断された部位から採取した生検組織である。縦横のラインは組織が動かないように保持するためのナイロングリッドである。グリッドの中央と隣のグリッドの中央の間の距離は400ミクロンである。
次いで、潅流液を、電磁弁を用いて、KRB溶液から蛍光L−グルコースである2−NBDLG(100μM)と2−TRLG(20μM)を含有する混合液に切り替えた。混合液を、生検組織に5分間投与し、投与終了後、洗い流しを開始した。
(1)2−NBDLGのみによる検出
洗い流しを開始してから10分経過した時点でのDIC像と、2−NBDLGの取り込みを反映する緑色チャネル(500−580nm)における共焦点蛍光像の重ね合わせを図2に示す。この緑色チャネルからの情報からは、左側の腫瘍が疑われる領域にも、右側の腫瘍周囲領域にも2−NBDLGの取り込みが認められる。従ってこの例に典型的にみられるように、洗い流し開始後10分経過した段階で、2−NBDLGの取り込みを反映する緑色チャネルの画像情報のみを利用した場合、腫瘍領域を周辺領域から明瞭に識別することは難しい。また、左側の腫瘍が疑われる領域内の上部に2−NBDLGの取り込みを示さない暗い領域が存在する。
投与終了後洗い流しを開始して18分経過した時点での、DIC像と、2−NBDLGの取り込みを反映する緑色チャネルで観察した共焦点蛍光像の重ね合わせを図3に示す。右側の腫瘍周囲領域に洗い流し開始後10分時点でみられた2−NBDLGの蛍光信号が細胞外への2−NBDLGの流出により大幅に低下しているのに対し、左側の腫瘍が疑われる領域の下半分には2−NBDLGの細胞内への取り込みによる強い蛍光信号が認められ、この領域に腫瘍が存在する可能性が示唆された。このように2−NBDLGのみから得られる蛍光信号を観察する場合でも、時間的に継続して同一部位を観察すれば、腫瘍領域を腫瘍周辺領域と識別することが可能である。
また、以上の方法を用いて、組織を回復させた後、少なくとも30分以上にわたる機能観察が可能であった。
(2)2−NBDLGと2−TRLGの組合せによる検出
投与終了後洗い流しを開始して10分経過した時点でのDIC像と、2−TRLGの取り込みを反映する赤色チャネル(580−740nm)で観察した蛍光像の重ね合わせを図4に示す。右側の腫瘍周囲領域のかなりの領域で赤色の2−TRLGの強い取り込みがみられ、損傷細胞もしくは炎症細胞等、非特異的に蛍光標識L−グルコース誘導体を取り込む細胞が存在する可能性が示唆された。一方、左側の腫瘍が疑われる領域では、2−TRLG取り込みを示す領域は限定的であった。従って、図3の左側の腫瘍が疑われる領域で見られた2−NBDLGの取り込みには、特異的な取り込みが含まれることが示唆された。
投与終了後洗い流しを開始して10分経過した時点での2−NBDLGの取り込みを反映する緑色チャネルで観察した蛍光像、2−TRLGの取り込みを反映する赤色チャネルで観察した蛍光像、およびDIC像の重ね合わせを図5に示す。緑色蛍光を発する2−NBDLGの取り込みに加えて赤色蛍光を発する2−TRLGの取り込みがあると、合成色は黄色となる。左側の腫瘍が疑われる領域の下部領域を見ると、赤色の2−TRLGが取り込まれていないことから、細胞膜が健常に保たれていると推定され、緑色の2−NBDLGの取り込みの様子からこの領域に腫瘍が存在することが示唆された。一方、右側の腫瘍周囲領域では、緑色の2−NBDLGに加えて赤色の2−TRLGの強い取り込みがみられ、重ね合わせにより黄色を呈しており、この領域に細胞膜に損傷がある細胞、もしくは炎症細胞等、非特異的取り込みを示す細胞が存在することがわかった。
投与終了後洗い流しを開始して18分経過した時点での2−NBDLGの取り込みを反映する緑色チャネルと2−TRLGの取り込みを反映する赤色チャネルで観察した蛍光像をDIC像と重ね合わせを図6に示す。図3において推定した通り、左側の腫瘍が疑われる領域の下部領域で、緑色の2−NBDLGの強い取り込みがみられた。また右側の腫瘍周囲領域では、緑色の2−NBDLGおよび赤色の2−TRLGの両者共に蛍光強度が減弱し、この領域の細胞に細胞膜の変性や炎症等による非特異的取り込みがあることがわかった。また、左側の腫瘍が疑われる領域の上部、および右側の腫瘍周囲領域の一部には2−NBDLGを全く取り込まない領域がみられ、正常組織である可能性が示唆された。
実施例3:病理組織像による観察
実施例2で用いた生検組織をホルマリン固定後、H&E染色を行って病理組織像を取得した。結果を図7に示す。組織病理診断の結果、図3および図6における予想の通り、左の腫瘍が疑われる領域から生検した組織の下部にあって2−NBDLGを強く取り込んだ領域には実際に腫瘍が存在した。一方左側組織上部の2−NBDLGを取り込まなかった領域は正常な組織像を示した。両者の中間領域には腸上皮化生(Metaplasia)がみられた。一方、右側の腫瘍周囲領域は予想通り、組織変性(Degeneration)が認められ、図3や図6において組織右側の2−NBDLGを取り込まなかったあたりには完全に正常な組織像がみられた。
実施例2で得られた生検組織の蛍光像に病理診断から得られた対応関係を書き加えたものを図8に示す。
上記の結果より、緑色の蛍光を示すL−グルコース誘導体2−NBDLGは、病変部から採取した組織中の細胞に強く取り込まれ、病変部周囲にある正常な核様態(size and location of the nucleus in the cell)と細胞構築(cytoarchitecture)を示す組織領域における取り込みとは明瞭に異なっていた。また、2−NBDLGとは異なる、赤色の蛍光を示す2−TRLGの細胞内への取り込みの発生の様子によって、細胞膜に損傷を受けた細胞や炎症部における取り込みを可視化でき、病変部の細胞の示す2−NBDLGの選択的取り込みと識別可能であることが判明した。
上記の詳細な記載は、本発明の目的および対象を単に説明するものであり、添付の特許請求の範囲を限定するものではない。添付の特許請求の範囲から離れることなしに、記載された実施態様に対しての、種々の変更および置換は、本明細書に記載された教示より当業者にとって明らかである。
本発明の方法は、生きた状態の生体由来の組織片を用いた、新たながんの検出方法を提供する。

Claims (12)

  1. 生体由来組織片中のがんを検出するための方法であって、以下の工程、
    a.生体から採取した組織片を、29〜33℃の温度にて少なくとも30分以上処理する工程、
    b.前記工程aで処理した組織片を、35.5〜37.5℃の温度にて、蛍光分子団として7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾール基又はその誘導体を分子内に有するL−グルコース誘導体に20分以内にわたり適用することで、処理する工程、および
    c.前記L−グルコース誘導体を前記組織片から10分以上かけて洗い流した後に、組織片中の細胞内に存在する該L−グルコース誘導体を検出する工程、
    を含み、
    組織片が、腺組織を含む検出方法。
  2. 前記L−グルコース誘導体が、2−[N−(7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾール−4−イル)アミノ]−2−デオキシ−L−グルコース(2−NBDLG)である請求項1に記載の検出方法。
  3. 工程aが、生体から採取した組織片を、約0℃に冷却した後、29〜33℃の温度にて少なくとも30分以上処理する工程である、請求項1または2に記載の方法。
  4. 程cにおける検出が、蛍光強度の時間経過による変化を指標として行う、請求項1〜3のいずれか一つに記載の検出方法。
  5. 生体由来組織片中のがんを検出するための方法であって、以下の工程、
    a.生体から採取した組織片を、29〜33℃の温度にて少なくとも30分以上処理する工程、
    b.前記工程aで処理した組織片を、35.5〜37.5℃の温度にて、2−[N−(7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾール−4−イル)アミノ]−2−デオキシ−L−グルコース(2−NBDLG)および2位にスルホローダミン101をスルホンアミド結合した2−アミノ−2−デオキシ−L−グルコース(2−TRLG)に20分以内にわたり適用することで、処理する工程、および
    c.前記L−グルコース誘導体を前記組織片から10分以上かけて洗い流した後に、組織片中の細胞内に存在する2−NBDLGおよび/または2−TRLGを検出する工程、
    を含み、
    組織片が、腺組織を含む検出方法。
  6. 工程aが、生体から採取した組織片を、約0℃に冷却した後、29〜33℃の温度にて少なくとも30分以上処理する工程である、請求項5に記載の方法。
  7. 前記工程bにおける処理を10分以内で行う請求項5または6に記載の検出方法。
  8. 前記工程cにおける検出が、蛍光イメージングされた細胞の蛍光色調の時間経過による変化を指標にして行う、請求項5〜のいずれか一つに記載の検出方法。
  9. 前記工程bの後に、組織片を約0℃において1〜24時間保存した後、工程cを行う、
    請求項1〜に記載の方法。
  10. 細胞内のL−グルコース誘導体の検出を行った後に、さらに組織片から病理標本を作製して病理標本に基づくがんの検出を行う、請求項1〜のいずれか一つに記載の方法。
  11. 前記L−グルコース誘導体の検出が寒天中に固定された組織片を用いて行う、請求項10に記載の方法。
  12. 請求項1〜11のいずれかの検出方法において、工程bにおいてまたは工程bの後に、任意の化合物の存在下で組織を処理することにより、該化合物のがん細胞に対する効果を評価することを、含むスクリーニング方法。
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