JPH08217601A - 生物組織保存方法および潅流液 - Google Patents

生物組織保存方法および潅流液

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JPH08217601A
JPH08217601A JP13731695A JP13731695A JPH08217601A JP H08217601 A JPH08217601 A JP H08217601A JP 13731695 A JP13731695 A JP 13731695A JP 13731695 A JP13731695 A JP 13731695A JP H08217601 A JPH08217601 A JP H08217601A
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tissue
perfusate
weight
organ
buffer
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JP13731695A
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English (en)
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Akiyo Shigematsu
昭世 重松
Satoshi Suzuki
聡 鈴木
Takayuki Kaburagi
隆幸 鏑木
Toru Sueyoshi
徹 末吉
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Seitai Kagaku Kenkyusho KK
Original Assignee
Seitai Kagaku Kenkyusho KK
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 動物組織の細胞レベルでの構造や機能を維持
し、移植および臨床的又は非臨床的研究のための組織保
存に有用な保存方法およびそのための潅流液組成物の提
供。 【構成】 pH7.4 の緩衝液、グルコース、血清アルブ
ミンから成り、生理食塩水相当のNaClを含む潅流液およ
びpH7.4 の緩衝液、マンニット、ジメチルスルフォキ
シド、血清アルブミンから成り、生理食塩水相当のNaCl
を含む潅流・保存液。それらを組み合わせて用いる組織
保存方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は生物組織保存方法及びそ
のための液組成物に関するもので、特に臓器の移植、臨
床的及び非臨床的研究のための臓器等の生物組織の保存
方法及びそれに適した液組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、心臓、肝臓、腎臓、すい臓等の臓
器を移植する際、摘出する臓器の潅流には、俗にUW液
と呼ばれる潅流液や、Collins液、modified Collins
液、Euro-Collins液とそれぞれ呼ばれる潅流液が多く用
いられていた。例えば、UW液は次のような組成を有す
る。 (水溶液1リットル当たり) ラクトビオン酸カリウム 100mmol 燐酸二水素カリウム 25mmol 硫酸マグネシウム 5mmol ラフィノース 30mmol アデノシン 5mmol グルタチオン 3mmol アロプリノール 1mmol インシュリン 100IU デキサメタゾン 8mg ヒドロキシエチル澱粉 50g 臨床的及び非臨床的研究のための臓器等の組織の保存の
際にも、このような液が潅流に用いられていた。また低
温保存後に組織の生物活性を回復させるための再潅流に
も、このような液や生理食塩水が用いられていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、これらの潅流
液で潅流し、同じ組成の保存液中に保存した臓器は、潅
流後10℃以下に冷却して保存を開始した時点でもすで
に組織の細胞レベルでの構造及び機能がかなり損なわれ
ている。保存した臓器を移植に用いる場合には、これが
移植の成功率を低下させる大きな原因の一つとなってい
る。
【0004】組織の代謝等生物活性に関する臨床的及び
非臨床的研究でも、本来の正常な機能を保った組織につ
いての実験的研究を行なうことが困難な現状にある。組
織の構造的、機能的損傷を伴う場合には、それが実験結
果に重大な影響を与えるおそれが大きく、事実その影響
が明らかに認められることもあり、研究の精度は著しく
制約されていた。保存後の活性回復に先立って行なう再
潅流についても、同様の問題が存在していた。
【0005】それ故、移植の成功率の向上、組織の代謝
等生物活性に関する臨床的及び非臨床的研究の精度の向
上のため、保存される組織の細胞レベルでの構造的、機
能的損傷の極めて少ない潅流液及び保存液が望まれてい
た。さらに保存後の再潅流についても、生物活性回復前
に組織の細胞レベルでの構造および機能を損なわない再
潅流液が望まれていた。
【0006】本発明の目的は、組織を低温で保存する
際、組織の細胞レベルでの損傷が少なく、移植の成功
率、あるいは組織の代謝等生物活性に関する臨床的及び
非臨床的研究の精度を向上することができる潅流液、保
存液、およびその組み合わせを提供することにある。
【0007】本発明の他の目的は、保存後の再潅流のた
めの、生物活性回復前に組織の細胞レベルでの構造及び
機能を損なわない潅流液を提供することにある。
【0008】本発明の目的はまた、保存される組織の細
胞レベルでの損傷が少なく、器官又は組織の移植の成功
率、あるいは組織の代謝等生物活性に関する臨床的及び
非臨床的研究の精度を向上することができる、臓器等の
器官の保存方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明において上記目的
を達成する潅流液は、ナトリウム、カリウム、水素、塩
素、燐酸、さらに好ましくはカルシウム、マグネシウ
ム、硫酸、重炭酸の各イオンを含む、好ましくはpH
7.4±0.1 の緩衝液と、1ないし5重量%のグルコース
と、1.5ないし7.5重量%の血清アルブミンとから
成り、塩化ナトリウム濃度が0.15±0.05モルで
ある水性液組成物である。血清アルブミンは保存する組
織に適合性があればどの哺乳動物の血清アルブミンでも
よいが、牛血清アルブミンが量的に得やすく、安価であ
る。
【0010】本発明において上記目的を達成する保存液
は、ナトリウム、カリウム、水素、塩素、燐酸、さらに
好ましくはカルシウム、マグネシウム、硫酸、重炭酸の
各イオンを含む、好ましくはpH7.4±0.1 の緩衝液
と、3ないし8重量%のマンニットと、1.5ないし
7.5重量%の血清アルブミンと、3ないし15重量%
の、水とよく混和し、氷点以下の温度でも水との混合液
が相分離せず、結晶を実質的に生じない有機溶媒、例え
ばジメチルスルフォキシドまたはグリセリンとから成
り、塩化ナトリウム濃度が0.15±0.05モルである水性液
組成物である。
【0011】本発明において上記目的を達成する潅流液
と保存液の組み合わせは、ナトリウム、カリウム、水
素、塩素、燐酸、更に好ましくはカルシウム、マグネシ
ウム、硫酸、重炭酸の各イオンを含む、好ましくはpH
7.4±0.1の緩衝液と、1ないし5重量%のグルコース
と、1.5ないし7.5重量%の血清アルブミンとから成
り、塩化ナトリウム濃度が0.15 ±0.05 モルである潅
流液組成物と、ナトリウム、カリウム、水素、塩素、燐
酸、さらに好ましくはカルシウム、マグネシウム、硫
酸、重炭酸の各イオンを含む、好ましくはpH7.4±0.
1 の緩衝液と、3ないし8重量%のマンニットと、1.5
ないし7.5重量%の血清アルブミンと、3ないし15重量
%の、水とよく混和し、氷点以下の温度でも水との混合
液が相分離せず、結晶を実質的に生じない有機溶媒、例
えばジメチルスルフォキシドまたはグリセリンとから成
り、塩化ナトリウム濃度が0.15±0.05モルである保存液
組成物との組み合わせである。
【0012】本発明において上記目的を達成する再潅流
液は、ナトリウム、カリウム、水素、塩素、燐酸、さら
に好ましくはカルシウム、マグネシウム、硫酸、重炭酸
の各イオンから成る、好ましくはpH7.4±0.1 の緩衝
液と、0.5ないし3重量%のグルコースと、0.5ないし
3重量%のマンニットと、1.5ないし7.5重量%の血清
アルブミンとから成り、塩化ナトリウム濃度が0.15±0.
05モルである水性液組成物である。
【0013】本発明において上記目的を達成する動物組
織の保存方法は、組織の少なくとも一部を10℃以下の
温度で保存する前に、動物の器官に通ずる少なくとも一
つの血管に潅流液を注入する潅流の過程を含む保存方法
において、潅流の過程が、少なくとも一つの血管から第
一の潅流液を潅流して器官中の血液を排除しかつ置換す
る過程と、器官に通ずる少なくとも一つの血管から第二
の潅流液を潅流して、第二の潅流液で器官中の第一の潅
流液を置換するとともに、器官の洞様血管を含む血管お
よび器官の組織を構成する細胞の間隙をこの第二の潅流
液で満たす過程から成り、第一の潅流液は、1.5ないし
5重量%のグルコースと0.15±0.05モルの塩化ナトリウ
ムを含み、第二の潅流液は、0.15±0.05モルの塩化ナト
リウム、3ないし8重量%のマンニット、及び3ないし
15重量%の、水とよく混和し、氷点以下の温度でも水
との混合液が相分離せず、結晶を実質的に生じない有機
溶媒とから成ることを特徴とする、動物組織の保存方法
である。組織は、筋肉、皮膚、血管等でもよく、器官は
必ずしも明確な形をもたなくともよい。
【0014】本発明の潅流液は、動物の器官等の組織を
保存するための前処理として、所要の部分の血管(洞様
血管を含む)中の血液を排除し、その液で置換するため
に用いられる。本発明の潅流液は、その際血液の溶血を
生じない特徴をもつ。溶血は組織細胞表面への血球成分
の付着を生じ、組織の機能を阻害する。
【0015】本発明の保存液は、血液が排除され、潅流
液で満たされた動物の器官等の組織内の血管(洞様血管
を含む)および細胞間隙を、その液でさらに置換し、保
存に適する状態にするために用いられる。保存液はま
た、保存される組織を浸漬し、あるいは組織の上から注
ぐためにも利用される。本発明の保存液に対して、先行
する潅流液として本発明の潅流液を用いるのが好ましい
が、溶血を生じない本発明外の潅流液を用いてもよい。
【0016】本発明に用いる緩衝液のpHは、7.4±0.
1 が好ましい。それは細胞の損傷がこのpHで最も少な
いからである。ナトリウム、カリウム、水素、塩素、燐
酸の各イオンを含む緩衝液によりこのpHを実現できる
が、さらにカルシウム、マグネシウム、硫酸、重炭酸の
各イオンを含む緩衝液、例えばKrebs Henseleit 重炭酸
塩緩衝液を用いれば、pH7.4が容易に且つ安定に実現
できる。
【0017】潅流液中のグルコースの濃度は、1.5重量
%未満では組織へのエネルギー供給に不足であり、5重
量%を超えると液の粘度及び浸透圧が上昇して、細胞に
損傷を与える可能性が増す。
【0018】保存液に含まれるマンニット(mannitol)
は、その水溶液が液体窒素温度まで冷却されても相分離
せず、かつ実質的に結晶を生じない特徴をもつ糖質であ
る。この糖質は又、細胞内に浸透しにくい性質をもつ。
マンニットの存在により、組織中での活性酸素生成が抑
制される。3重量%未満ではこの作用が不十分であり、
8重量%を超えると液の粘度及び浸透圧が上昇して、細
胞に損傷を与える可能性が増す。
【0019】保存液は、水とよく混和し、氷点以下の温
度でも水との混合液が相分離せず、氷(共融体を包含す
る)の結晶を実質的に生じない有機溶媒を含む。好まし
い有機溶媒はジメチルスルホキシドまたはグリセリンで
ある。有機溶媒の濃度は5〜10%が適当であるが、これ
より若干低く(例えば3%)あるいは若干高く(例えば
15%)てもよい。有機溶媒の濃度が15%を超えると、細
胞に対する毒性が目立ってくる。
【0020】潅流液、保存液及び再潅流液は、実質的に
組織に対し等張(isotonic)であることが好ましいが、血
液やリンパ液の1/2ないし2.5倍の範囲の浸透圧であ
ればよい。潅流液及び保存液はそれぞれ、グルコース、
マンニット、緩衝液を構成する塩類のほかに、他の糖
質、塩類、酸、塩基、界面活性剤、増粘剤等を含んでも
よい。再潅流液についても同様である。潅流の際の潅流
液及び保存液の温度は、組織の変化を防ぐため、液の氷
点以上のなるべく低い温度(通常、−10℃ないし+5
℃)に保つことが好ましい。
【0021】潅流液による潅流の際には動物の、特に対
象となる器官付近の、末梢神経を遮断しておくことが組
織機能の保持のために好ましい。対象器官付近の末梢神
経の遮断は、モノアミンオキシダーゼ阻害作用を有する
物質(以下、MAO阻害物質と略記)を潅流液中に約0.
001 ないし0.05wt%添加することにより達成できる。本
発明に適用できるMAO阻害物質には、例えばN-アミノ
アルキルフェノチアジン系化合物、N-アミノアルキルジ
ベンゾアザシクロヘプタジエン系化合物、イソニコチン
酸ヒドラジド系化合物、プロパルギルアミン誘導体があ
る。例えば、クロルプロマジン、プロメタジン、イミプ
ラミン、イプロニアジド、パルジリン等である。潅流前
にMAO阻害物質を血管内または腹腔内に注入してもよ
い。保存液にもMAO阻害物質を添加することができ
る。
【0022】潅流は通常、器官に通ずる血管に留置針
(中空の)を刺し込んで行なう。潅流は一個所から行な
ってもよいが、2本以上の血管(例えば、肝動脈と門
脈)から行なってもよい。流量は、充分な栄養及び酸素
が供給される一方、血管及び組織が損傷しないよう、器
官の種類、血管の種類、太さ、潅流液の粘度等に応じて
選ばれる。潅流液および保存液による置換は、それぞれ
血液及び潅流液が実質的に残らないように、十分行な
う。保存中は、保存液が組織に保持されるように、必要
な箇所の血管を閉塞しておく。
【0023】保存すべき器官等の組織の動物体からの摘
出または切除は、血液の潅流液による置換前、潅流液に
よる潅流中、潅流液による潅流と保存液による潅流の
間、保存液による潅流中、保存液による潅流後のいずれ
の時期に行なってもよいが、潅流中または潅流の間に行
なうのが好ましい。摘出および切除は2または3段階に
分けて、異なる時期に行なってもよい。例えば肝臓を摘
出した後、肝葉の一つ又は二つを切除してもよい。潅流
又は切除を行なうには、動物の手術を行なう必要があ
る。
【0024】組織は通常、10℃以下の低温で保存され
るが、保存温度は保存後の組織の使用目的、必要な保存
期間に依存して決められる。凍結を避けて保存する場合
は、−10℃から+10℃の範囲の温度で保存する。保
存には冷蔵庫又は冷凍庫を用いる。組織を−80℃以下
で保存する場合は、−80℃までは徐々に冷却すること
が望ましく、例えば温度低下を−80℃まで平均毎分
1.3℃以内とするのが好ましい。−10℃から−80℃
の範囲で保存するときも同様である。このような温度低
下は、例えば試料を適当な大きさの保冷箱に収め、−8
0℃の冷凍庫中に置けば実現できる。プログラム制御さ
れた冷凍庫を用いてもよい。保存中、組織が乾燥しない
ように配慮が必要である(例えば、防湿フィルムを表面
に貼る)。組織を保存液中に浸漬し、あるいは保存液を
組織の上に注いでもよい。組織中に充分な量の保存液を
保持することが困難な場合(例えば組織スライス)、特
にこのような処置が必要である。
【0025】保存を終了する際には、試料の温度を保存
液の融点以上の温度(通常−5℃ないし+5℃、例えば
4℃)まで急速に上昇させ、解凍することが好ましい。
例えば、潅流の間又は後に、金属台座に金属針が互いに
平行に固定された金属針集合体に組織試料を刺し通し、
台座の温度を急速に(例えば2分以内で)20℃以上にす
ることにより、試料を解凍させる。具体的には、金属台
座の周りに適当量の20℃ないし40℃の微温水を流す。あ
るいは金属針集合体に刺し通された試料の回りに適当な
温度の潅流液(本発明の保存液でもよい)を流す。この
ような方法で組織試料の温度を、好ましくは4分以内
に、保存液の氷点以上に上昇させ、解凍する。
【0026】解凍した後、組織試料は適当な温度、例え
ば4℃の、潅流液で再潅流した後、さらに温度を25℃
以上に上昇させて、必要とする生物活性を回復させ、そ
れ以後の用に供される。再潅流液としては生理食塩水、
糖質液(本発明の初期潅流液を包含する)、組織培養
液、その他を用いることもできるが、本発明の再潅流液
を用いることが好ましい。
【0027】生物活性を回復させるに先立ち、再潅流液
で潅流しながら、組織の解凍終了時の温度から約25℃
まで徐々に温度を上昇させることが好ましい。その後さ
らに適当な組成の潅流液で潅流しながら温度を37℃付
近まで上昇させて、生物活性を回復させる。解凍終了時
の温度から約25℃までの温度上昇は平均毎分2.5℃未
満とすることが望ましく、平均毎分2℃以下とすること
がより好ましい。温度25℃から37℃付近への上昇に
は特に時間の制限はない。本発明の再潅流液には組織の
エネルギー消費を抑制する物質、例えばラクトビオン酸
を含んでもよい。ラクトビオン酸の濃度は0.3ないし
3%が好ましい。本発明の再潅流液にはマンニット以外
にも過酸化物生成を抑止する物質、例えばアスコルビン
酸、hydrocortisoneを、含んでもよい。アスコルビン酸
は1mg/lないし2 g/l含むことができ、hydrocorti
soneは臨床用量の範囲で用いることができる。本発明の
再潅流液には又、dibutyryl cyclicAMPを5×10-5
ないし3×10-4mol 含んでもよく、低酸素濃度下での
細胞膜損傷の防止に有効である。
【0028】本発明は、特に哺乳動物の、肝臓、腎臓、
すい臓、脾臓、精巣、卵巣、副腎、脳、甲状腺等の低温
保存に有用である。肝臓の低温保存に特に効果的であ
る。
【0029】
【作用】動物の器官に通ずる血管に潅流液を注入して、
血液を潅流液で置換することにより、器官中の血液は排
除される。本発明の潅流液は置換の際に溶血を生じない
ので、血球成分の細胞表面への付着による細胞機能の低
下が防がれる。さらに本発明の保存液を血管に注入し
て、潅流液を保存液で置換することにより、潅流液は排
除され、血管内は本発明の保存液で満たされる。このと
き、洞様血管、細胞間隙もこの保存液で満たされる。
【0030】組織は、潅流前、潅流中、あるいは潅流と
その後の潅流の間に動物体から摘出または切除される。
保存液で潅流された組織試料は、保存温度まで冷却さ
れ、必要な期間保存される。
【0031】血管から組織に導入された本発明の保存液
は、水溶液が液体窒素温度において相分離せずかつ実質
的に結晶を生じない糖質すなわちマンニットを含むの
で、液体窒素温度でも糖質自体及び氷の結晶が、少なく
とも組織の細胞の外(血管内、洞様血管、細胞間隙を含
む)には生じない。また本発明の保存液は、水とよく混
和し、水との混合液が液体窒素温度において相分離せず
かつ実質的に結晶を生じない有機溶媒を含み、この有機
溶媒は細胞内にも浸透する。細胞内外ともにこの有機溶
媒が存在するために、液体窒素温度において組織中に氷
の結晶も溶媒(あるいは共融体)の結晶も生じない。そ
れ故、氷および溶媒結晶の生成による細胞の破壊が防が
れる。液体窒素温度と氷点の間の温度での保存でも同様
である。氷点以上の温度(通常10℃以下)での保存で
は結晶生成の問題は存在しないが、細胞機能を損傷する
過酸化物の生成がマンニットの存在により防止される。
【0032】保存を終了する際には、組織の温度を保存
液の融点以上まで上昇させると、保存液の存在下で組織
は解凍される。本発明の潅流液と保存液の組み合わせを
用いて前処理および保存された組織は、細胞レベルでの
特性および機能が損なわれていないから、保存後の組織
の温度を25℃以上に上昇させると、環境(栄養、酸素
濃度等)の調整により組織はその生物活性を回復するこ
とができる。保存後の組織の温度を解凍後25℃まで上
昇させる間、本発明の再潅流液で潅流することにより、
生物活性の回復前に有機溶媒が細胞内外から除去される
一方、細胞へのエネルギー供給は維持される。そして細
胞の機能を損なう過酸化物の生成も抑制される。それ
故、温度を25℃以上に上昇させた後での組織の生物活
性の回復が生理食塩水やUW液による再潅流より優れて
いる。
【0033】
【実施例】以下に実施例を示し、本発明のさらに具体的
な説明とする。 [実施例1] (1) 金属針集合体の製作 外径0.8mm長さ20mmの金めっき黄銅針を、厚さ
5mmの鉛合金の台座に3mm間隔で縦15列、横15
列直立(先端を上向きに)させたものを製作した。挿入
した組織試料を取り出すため、合成紙に針を貫通させ、
台座の直上まで挿入した。
【0034】(2) 組織採取および潅流 健康なラットの腹腔にクロルプロマジン1%水溶液0.
1ml/体重100gを注射して腹部の末梢神経を遮断し、体
重100g当たり0.04mgのソムノペンチルを注射して麻酔し
た後、開腹手術を施し、ポリエチレン細管と連結された
留置針を肝門脈に挿入した。肝潅流の常法に従い、留置
針に連結したポリエチレン細管から、温度を−5℃とし
た下記組成の潅流液を毎分 0.9ミリリットルの流量で肝門脈に
注入し、4分間潅流した。潅流しつつ肝臓をラットから
定法により切除した。 D−グルコース 2 g BSA 4.5 g 酵素阻害剤Pefabloc(Merck) 1 mM相当 p-APMSF 0.1 mM相当 (p-amidinophenylmethanesulfonylfluoride hydrochloride) Krebs-Henseleit 緩衝液* 100 ミリリットル (*重炭酸塩、pH 7.4) クロルプロマジン 1 g ヘパリン 0.5 ミリリットル
【0035】摘出した肝臓を直ちに、温度−5℃とした
下記組成の保存液中に浸漬するとともに、保存液を毎分
0.9ミリリットルの流量で肝門脈に注入し、4分間潅流した。 ジメチルスルホキシド 10 g D−マンニット 5 g D−グルコース 2 g BSA 4.5g 酵素阻害剤Pefabloc(Merck) 1 mM相当 p-APMSF 0.1mM相当 Krebs-Henseleit 緩衝液* 100 ミリリットル (*重炭酸塩、pH 7.4)
【0036】(3) 低温保存 潅流直後、肝臓を上記の金属針集合体(金めっき黄銅
針、針の直径 0.8mm、中心間隔3mm、針の高さ20mm)に
刺し通した。予め金属針の基部には合成紙を刺してお
く。これを耐寒ポリエチレン袋に封入し、毎分−1℃に
設定したプログラム制御冷凍庫中で−80℃まで冷却し
た。3時間以上経過後、保冷箱中で適量の液体窒素を注
いで更に冷却した。液体窒素を補充しながら、肝臓試料
を3週間保存した。
【0037】(4) 組織の解凍 液体窒素中から試料の容器を取り出し、−80℃の冷凍
庫中にしばらく置いた後、潅流液と同じ組成の解凍液中
で、液を循環させることにより組織重量50ク゛ラムの場合に
2分未満の短時間で試料全体の温度を−4℃まで上昇さ
せた。
【0038】解凍液中で試料を金属針集合体から抜き取
り、留置針から門脈へ温度−4℃の潅流液を毎分1ミリリッ
トルの流量で注入して、4分間潅流し、肝臓中の保存液を
潅流液で置換した。
【0039】(5) 組織保存の確認 組織の一部を常法により固定、染色し、光学顕微鏡観察
したところ、切除直後(潅流液による潅流のみ)の組織
と比較して、組織の変化はほとんど見られず、グリコー
ゲン顆粒が明瞭に認められた。
【0040】[実施例2]低温保存を次のような方法で
行なった以外、実施例1と同じ方法で処理した。金属針
集合体に刺し通した潅流後の肝臓を、発泡ポリスチレン
保冷箱に収めた上で、−80℃の冷凍庫中に収めた(毎
分1℃以内でゆっくり冷却される)。3時間以上経過
後、保冷箱に適量の液体窒素を注いで、更に冷却した。
液体窒素を補充しながら、肝臓試料を3週間保存した。
実施例1と同様の結果が得られた。
【0041】[実施例3] (1) 潅流の準備 健康なラットの腹腔に体重100g当たり0.1mlのクロル
プロマジン1%水溶液を注射して腹部の末梢神経を遮断
し、1ml当たり1000IUのヘパリン液を、体重100g当た
り50マイクロリットル注射した後、常法によりハロセン麻酔し
て、開腹手術を行ない、ポリエチレン細管と連結された
留置針を肝門脈に挿入した(門脈カニュレーション)。
同様な方法で下大動脈にもカニュレーションを施し(下
大動脈カニュレーション)、下大動脈と下大静脈をまと
めて結紮した。大動脈をクレンメルで止めておき、胸郭
を開いて大動脈および大静脈を切断した。
【0042】(2) 潅流 下大静脈の結紮部を切断し、温度を−5℃とした下記組
成の第一潅流液を、下大動脈カニュレーションを通じて
毎分 1.5ミリリットルの流量で下大動脈に、門脈カニュレーシ
ョンを通じて毎分 1.0ミリリットルの流量で肝門脈に、それぞ
れ注入し、10分間潅流した。肝臓から血液が充分排除
されたことを確認した上で、肝臓をラットから摘出し
た。このとき門脈および下大動脈は、肝臓側に各カニュ
レーションを確保して切断される。 第一潅流液: D−グルコース 2 g BSA 3 g Krebs-Henseleit 緩衝液* 100 ミリリットル (*重炭酸塩、pH 7.4) クロルプロマジン 0.01g
【0043】摘出した肝臓を直ちに、温度−5℃とした
下記組成の保存液中に浸漬するとともに、同じ組成の液
を下大動脈カニュレーションを通じて毎分 1.5ミリリットルの
流量で下大動脈に、門脈カニュレーションを通じて毎分
1.0ミリリットルの流量で肝門脈に、それぞれ注入し、10分
間潅流した。 保存液: ジメチルスルホキシド 10 g D−マンニット 5 g BSA 3 g Krebs-Henseleit 緩衝液* 100ミリリットル (*重炭酸塩、pH 7.4)
【0044】(2) 低温保存 潅流直後、肝臓を金属針集合体(金めっき黄銅針、針の
直径 0.8mm、中心間隔3mm、針の高さ20mm、金属台座の
厚さ5mm)に刺し通した。予め金属針の基部には合成紙
を刺しておく。これを耐寒ポリエチレン袋に封入し、毎
分−1℃に設定したプログラム制御冷凍庫中で−80℃
まで冷却した。3時間以上経過後、保冷箱中で適量の液
体窒素を注いで更に冷却した。液体窒素を補充しなが
ら、肝臓試料を3週間保存した。
【0045】(3) 組織の解凍 液体窒素中から試料の容器を取り出し、−80℃の冷凍
庫中にしばらく置いた後、組織試料を第一潅流液と同じ
組成の解凍液(温度約30℃)に浸し、液を循環させる
ことにより組織重量50ク゛ラムの場合に2分未満の短時間で
試料全体の温度を4℃まで上昇させた。
【0046】解凍液中で試料を金属針集合体から抜き取
り、下記組成の第三潅流液を、下大動脈カニュレーショ
ンを通じて毎分 1.5ミリリットルの流量で下大動脈に、門脈カ
ニュレーションを通じて毎分 1.0ミリリットルの流量で肝門脈
に、それぞれ注入し、10分間潅流し、肝臓中の保存液
を第三潅流液で置換した。第三潅流液の温度は最初4℃
とし、潅流中に1分当たり約2℃の割合で温度を25℃
まで上昇させた。 第三潅流液: D−マンニット 1 g D−グルコース 1 g ラクトビオン酸 5 mmol BSA 3 g アスコルビン酸 0.1g Krebs-Henseleit 緩衝液* 100 ミリリットル (*重炭酸塩、pH 7.4)
【0047】(4) 組織保存の評価 組織の一部を常法により固定、染色し、光学顕微鏡観察
したところ、切除直後(第一潅流液による潅流のみ)の
組織と比較して、組織の変化はほとんど見られなかっ
た。
【0048】実施例3において第三潅流液で潅流を終え
た肝臓を温度37℃、相対湿度 100%の箱の中に収め、18
5 kBqの14Cを含む[2−14C]Diazepam 1.1μmol を
門脈カニュレーションから注入し、その直後定量ポンプ
を用いて下記組成の代謝試験用潅流液を1ml/minの流量
で供給した。同時に動脈カニュレーションを通じて同液
を1.5ml/minの流量で供給した。 代謝試験用潅流液: ラット血液細胞 30ミリリットル D−グルコース 2 g BSA 3 g アスコルビン酸 0.1g Krebs-Henseleit 緩衝液* 70ミリリットル (*重炭酸塩、pH 7.4) 20分間潅流を続け、このとき肝臓より流出する潅流液
をロウトに受け、2分毎に試験管に採取した。
【0049】採取した潅流液は毎分3000回転(回転半径
15cm)で10分間遠心分離し、その上清中の放射性代謝物
を、薄層クロマトグラフィにより分離し、ラジオルミノ
グラフィにより検出解析を行なった。その結果、流出液
中には、親化合物であるDiazepamのほかにその代謝物で
ある4'-hydroxydiazepam,Nordazepam, Temazepam, Oxa
zepam が検出された。これらは、凍結保存しない肝臓を
用いて同じ実験を行なった場合に認められる代謝物であ
り、本方法により保存された肝臓組織が代謝活性を有す
ることを示している。
【0050】また、乳酸脱水素酵素(LDH)を定量し
たところ、いずれの流出液も約 100IU/リットルであり、2
0分間の潅流を通じて正常値を示した。これは、凍結、
解凍の過程を経ても肝臓組織が損傷を受けていないこと
を示す。
【0051】[実施例4]腹腔へのクロロプロマジン注
射を省略した以外は、実施例3と同様に潅流、保存、解
凍、代謝試験を行なった。実施例3とほぼ同様の結果を
得た。
【0052】[実施例5] (1) 潅流の準備 健康なラットの腹腔に、1ミリリットル当たり1000IUのヘパ
リン液を、体重100g当たり50マイクロリットル注射した後、常法
によりハロセン麻酔して、開腹手術を行ない、ポリエチ
レン細管と連結された留置針を肝門脈に挿入した(門脈
カニュレーション)。同様な方法で下大動脈にもカニュ
レーションを施し(下大動脈カニュレーション)、下大
動脈と下大静脈をまとめて結紮した。大動脈をクレンメ
ルで止めておき、胸郭を開いて大動脈および大静脈を切
断した。
【0053】(2) 潅流 下記組成の第一潅流液を用い、その温度を0℃とした以
外は、実施例3と同様にして潅流を行なった後、肝臓を
摘出した。 第一潅流液: D−グルコース 2 g BSA 3 g Krebs-Henseleit 緩衝液* 100 ミリリットル (*重炭酸塩、pH 7.4)
【0054】摘出した肝臓を直ちに、温度0℃とした下
記組成の保存液中に浸漬するとともに、同じ組成の液を
下大動脈と肝門脈に注入し、10分間潅流した。実施例
3と同様、下大動脈へは毎分 1.5ミリリットル、門脈へは毎分
1.0ミリリットルの流量とした。 保存液: ジメチルスルホキシド 10 g D−マンニット 5 g BSA 3 g Krebs-Henseleit 緩衝液* 100ミリリットル (*重炭酸塩、pH 7.4)
【0055】(3) 低温保存 潅流直後、肝臓をポリエチレン袋に封入して、冷蔵庫内
で氷水中に沈め、0℃に冷却して、24時間保存した。
【0056】(4) 保存後の再潅流 下記組成の第三潅流液を、下大動脈カニュレーションを
通じて毎分 1.5ミリリットルの流量で下大動脈に、門脈カニュ
レーションを通じて毎分 1.0ミリリットルの流量で肝門脈に、
それぞれ注入し、10分間潅流し、肝臓中の保存液を第
三潅流液で置換した。第三潅流液の温度は最初4℃と
し、潅流中に1分当たり約2℃の割合で温度を25℃ま
で上昇させた。 第三潅流液: D−マンニット 1 g D−グルコース 1 g ラクトビオン酸 5 mmol BSA 3 g アスコルビン酸 0.1g Krebs-Henseleit 緩衝液* 100 ミリリットル (*重炭酸塩、pH 7.4)
【0057】(5) 組織の評価 組織の一部を常法により固定、染色し、光学顕微鏡観察
したところ、切除直後(第一潅流液による潅流のみ)の
組織と比較して、組織の変化はほとんど見られなかっ
た。
【0058】第三潅流液で潅流を終えた肝臓について、
実施例3と同様に温度37℃、相対湿度 100%の環境下に
[2−14C]Diazepam の代謝試験を行なった。4種の代謝
物が検出され、本発明により保存された肝臓はDiazepam
代謝活性を示すことが認められた。
【0059】
【発明の効果】本発明の保存方法により又は潅流液およ
び保存液を用いて保存された器官、筋肉等の生物組織
は、その細胞の特性及び機能がよく維持される。本発明
の潅流液と保存液及び再潅流液は特に肝臓及び腎臓の組
織の、移植および臨床的または非臨床的研究のための保
存及び保存後処理にそれぞれ有用である。

Claims (36)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 動物の器官に通ずる血管に注入して前記
    器官中の血液を置き換えるための潅流液として用いる水
    性液組成物であって、 ナトリウム、カリウム、水素、塩素、燐酸の各イオンを
    含む緩衝液と、 1.5ないし5重量%のグルコースと、 1.5ないし7.5重量%の哺乳動物血清アルブミンと
    から成り、 塩化ナトリウム濃度が0.15±0.05モルである水
    性液組成物。
  2. 【請求項2】 前記緩衝液がナトリウム、カリウム、カ
    ルシウム、マグネシウム、水素、塩素、燐酸、硫酸、重
    炭酸の各イオンから成るpH7.4±0.1 の緩衝液であ
    る、請求項1の水性液組成物。
  3. 【請求項3】 2ないし4.5重量%のグルコースを含
    む、請求項1又は2の水性液組成物。
  4. 【請求項4】 前記緩衝液がKrebs Henseleit緩衝液と
    同じ組成をもつ、請求項2の水性液組成物。
  5. 【請求項5】 末梢神経遮断剤を含む、請求項1ないし
    4のいずれかの水性液組成物。
  6. 【請求項6】 前記末梢神経遮断剤がモノアミンオキシ
    ダーゼ阻害作用を有する物質である、請求項5の水性液
    組成物。
  7. 【請求項7】 動物の器官に通ずる少なくとも一つの血
    管に注入して前記器官の組織中の血管および前記組織を
    構成する細胞の間隙を満たし、前記組織の保存を可能に
    するための潅流液および保存液として用いる水性液組成
    物であって、 ナトリウム、カリウム、水素、塩素、燐酸の各イオンを
    含む緩衝液と、 3ないし8重量%のマンニットと、 1.5ないし7.5重量%の哺乳動物血清アルブミン
    と、 3ないし15重量%の、水とよく混和し、氷点以下の温
    度でも水との混合液が相分離せず、結晶を実質的に生じ
    ない有機溶媒とから成り、 塩化ナトリウム濃度が0.15±0.05モルである水
    性液組成物。
  8. 【請求項8】 前記溶媒がジメチルスルフォキシド及び
    グリセリンから選ばれる、請求項7の水性液組成物。
  9. 【請求項9】 前記緩衝液がpH7.4±0.1の緩衝
    液である、請求項7又は8の水性液組成物。
  10. 【請求項10】 前記緩衝液がナトリウム、カリウム、
    カルシウム、マグネシウム、水素、塩素、燐酸、硫酸、
    重炭酸の各イオンから成る、請求項9の水性液組成物。
  11. 【請求項11】 前記緩衝液がKrebs Henseleit緩衝液
    と同じ組成をもつ、請求項10の水性液組成物。
  12. 【請求項12】 動物の器官に通ずる少なくとも一つの
    血管に注入して前記器官中の血液を排除するとともに、
    前記器官中の血管内および前記組織を構成する細胞の間
    隙を満たし、前記組織を生物活性回復可能に保存するた
    めの潅流液キットであって、 ナトリウム、カリウム、水素、塩素、燐酸の各イオンを
    含む第一の緩衝液と、1.5ないし5重量%のグルコース
    と、1.5ないし7.5重量%の哺乳動物血清アルブミンと
    から成り、塩化ナトリウム濃度が0.15 ±0.05 モルで
    ある、前記器官中の血液を排除し、それを置き換えるた
    めの第一の水性液組成物と、 ナトリウム、カリウム、水素、塩素、燐酸の各イオンを
    含む第二の緩衝液と、3ないし8重量%のマンニット
    と、1.5ないし7.5重量%の哺乳動物血清アルブミン
    と、3ないし15重量%の、水とよく混和し、氷点以下
    の温度でも水との混合液が相分離せず、結晶を実質的に
    生じない有機溶媒とから成り、塩化ナトリウム濃度が0.
    15±0.05モルである、前記器官中の血管内および前記組
    織を構成する細胞の間隙を満たし、前記組織の保存を可
    能にするための第二の水性液組成物との組み合わせで構
    成される、潅流液キット。
  13. 【請求項13】 前記有機溶媒がジメチルスルフォキシ
    ド及びグリセリンから選ばれる、請求項12の潅流液キ
    ット。
  14. 【請求項14】 前記第一の緩衝液がpH7.4±0.1 の
    緩衝液である、請求項12又は13の潅流液キット。
  15. 【請求項15】 前記第一の緩衝液がナトリウム、カリ
    ウム、カルシウム、マグネシウム、水素、塩素、燐酸、
    硫酸、重炭酸の各イオンから成る、請求項14の潅流液
    キット。
  16. 【請求項16】 前記第一の緩衝液がKrebs Henseleit
    緩衝液と同じ組成をもつ、請求項15の潅流液キット。
  17. 【請求項17】 前記第二の緩衝液がpH7.4±0.1 の
    緩衝液である、請求項12又は13の潅流液キット。
  18. 【請求項18】 前記第二の緩衝液がナトリウム、カリ
    ウム、カルシウム、マグネシウム、水素、塩素、燐酸、
    硫酸、重炭酸の各イオンから成る、請求項17の潅流液
    キット。
  19. 【請求項19】 前記第二の緩衝液がKrebs Henseleit
    緩衝液と同じ組成をもつ、請求項18の潅流液キット。
  20. 【請求項20】 前記第一の緩衝液がKrebs Henseleit
    緩衝液と同じ組成をもつ、請求項19の潅流液。
  21. 【請求項21】 前記第一の水性液組成物が末梢神経遮
    断剤を含む、請求項12ないし19いずれかの潅流液キ
    ット。
  22. 【請求項22】 前記末梢神経遮断剤がモノアミンオキ
    シダーゼ阻害作用を有する物質である、請求項21の潅
    流液キット。
  23. 【請求項23】 10℃以下の温度で保存された組織に
    通ずる少なくとも一つの血管に注入して、前記組織中の
    血管及び前記組織を構成する細胞の間隙を満たしていた
    液を前記組織の生物活性の回復前に排除し、置換するた
    めの潅流に用いる、pH7.4±0.1 の緩衝液、グルコー
    ス、マンニット及び血清蛋白から成る潅流液。
  24. 【請求項24】 ナトリウム、カリウム、水素、塩素、
    燐酸の各イオンから成るpH7.4±0.1 の緩衝液と、 0.5ないし3重量%のグルコースと、 0.5ないし3重量%のマンニットと、 1.5ないし7.5重量%の血清アルブミンとから成り、 塩化ナトリウム濃度が0.15±0.05モルである、請求項2
    3の潅流液。
  25. 【請求項25】 前記緩衝液がカルシウム、マグネシウ
    ム、硫酸、重炭酸の各イオンを含む、請求項24の潅流
    液。
  26. 【請求項26】 ラクトビオン酸を含む請求項25の潅
    流液。
  27. 【請求項27】 アスコルビン酸を含む請求項25また
    は26の潅流液。
  28. 【請求項28】 動物の器官に通ずる少なくとも一つの
    血管に潅流液を注入する潅流の過程と、前記器官の組織
    の少なくとも一部を10℃以下の温度で保存する過程を
    含む、動物組織の保存方法において、 前記潅流の過程が前記少なくとも一つの血管に第一の潅
    流液を潅流して前記器官中の血液を排除しかつ置換する
    過程と、前記器官に通ずる少なくとも一つの血管に第二
    の潅流液を潅流して、前記第二の潅流液で前記器官中の
    前記第一の潅流液を置換するとともに、前記器官の洞様
    血管を含む血管および前記器官の組織を構成する細胞の
    間隙を前記第二の潅流液で満たす過程から成り、 前記第一の潅流液は、1.5ないし5重量%のグルコース
    と、0.15 ±0.05 モルの塩化ナトリウムを含み、 前記第二の潅流液は、0.15 ±0.05 モルの塩化ナトリ
    ウム、3ないし8重量%のマンニット、及び3ないし1
    5重量%の、水とよく混和し、氷点以下の温度でも水と
    の混合液が相分離せず、結晶を実質的に生じない有機溶
    媒とから成ることを特徴とする、動物組織の保存方法。
  29. 【請求項29】 前記第一の潅流液が、ナトリウム、カ
    リウム、水素、塩素、燐酸の各イオンを含むpH7.4±
    0.1 の緩衝液と、1.5ないし5重量%のグルコース、及
    び1.5ないし7.5重量%の哺乳動物血清アルブミンとか
    ら成り、 前記第二の潅流液が、ナトリウム、カリウム、水素、塩
    素、燐酸の各イオンを含むpH7.4±0.1 の緩衝液と、
    3ないし8重量%のマンニットと、1.5ないし7.5重量
    %の哺乳動物血清アルブミンと、3ないし15重量%の
    前記有機溶媒とから成る、請求項28の動物組織の保存
    方法。
  30. 【請求項30】 前記有機溶媒がジメチルスルフォキシ
    ド及びグリセリンから選ばれる、請求項28又は29の
    動物組織の保存方法。
  31. 【請求項31】 前記第一の緩衝液がナトリウム、カリ
    ウム、カルシウム、マグネシウム、水素、塩素、燐酸、
    硫酸、重炭酸の各イオンから成る、請求項28ないし3
    0いずれかの動物組織の保存方法。
  32. 【請求項32】 前記第二の緩衝液がナトリウム、カリ
    ウム、カルシウム、マグネシウム、水素、塩素、燐酸、
    硫酸、重炭酸の各イオンから成る、請求項28ないし3
    1いずれかの動物組織の保存方法。
  33. 【請求項33】 前記組織を−80℃以下の温度で保存
    する、請求項28ないし32いずれかの動物組織の保存
    方法。
  34. 【請求項34】 10℃以下の温度で保存された動物組
    織に通ずる少なくとも一つの血管にpH7.4±0.1 の緩
    衝液、グルコース、マンニット及び血清蛋白から成る潅
    流液を注入して、前記組織中の血管及び前記組織を構成
    する細胞の間隙を満たしていた液を排除かつ置換し、前
    記組織の生物活性の回復前に前記組織の温度を毎分2.5
    ℃未満の速度で25℃まで上昇させる、保存後組織の処
    理方法。
  35. 【請求項35】 前記潅流液がナトリウム、カリウム、
    水素、塩素、燐酸の各イオンから成るpH7.4±0.1 の
    緩衝液と、0.5ないし3重量%のグルコースと、0.5な
    いし3重量%のマンニットと、1.5ないし7.5重量%の
    血清アルブミンとから成り、塩化ナトリウム濃度が0.15
    ±0.05モルである、請求項34の保存後組織の処理方
    法。
  36. 【請求項36】 前記緩衝液がナトリウム、カリウム、
    カルシウム、マグネシウム、水素、塩素、燐酸、硫酸、
    重炭酸の各イオンを含む、請求項35の保存後組織の処
    理方法。
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