(構成)
図1〜図3は、本発明の一実施例のディスク識別装置1を示す。このディスク識別装置1は、ディスクDの表面または裏面(以下、総称として「表面」という)の撮像画像を取得し、取得された撮像画像に基づいてディスクDの真偽を識別する機能を有する。ディスク識別装置1は、図1に示すように、画像取得部2、撮像タイミングセンサ3、制御部4、画像処理部5、記憶部6、入出力インターフェース(I/F)7、状態表示器8、登録スイッチ9およびセキュリティボリューム10を含んで構成されている。
まず、図1および図2を参照しながら、画像取得部2について説明する。画像取得部2は、図2に示すように、ディスク搬送路31を搬送されるディスクDの表面の撮像画像を取得し、後述するサンプルディスクSDの撮像画像データIDおよび識別対象ディスクTDの撮像画像データIDを制御部4に出力する機能を有する。画像取得部2は、投光装置11、二次元撮像装置12およびハーフミラー26を含んでいる。画像取得部2は、ディスク搬送路31においてディスクDの一面を支持するベース板32に開口された撮像窓33に対応して配置されている。
撮像窓33は、ディスク搬送路31を搬送されるディスクDの撮像領域35を画定する。撮像窓33は、ディスク搬送路31を搬送されるディスクDの搬送方向DLにほぼ平行な一対の長辺と、搬送方向DLにほぼ垂直な一対の短辺を有している。撮像窓33には透光性を有する透光板34が配置され、透光板34のディスク搬送路31側の面はベース板32の表面と、換言すればディスク搬送路31の底面とほぼ面一に構成されている。撮像窓33の一対の長辺の長さは、ディスクDの直径よりも大きく設定されている。撮像窓33の長手方向においてディスクDの直径に関する情報を取得するためである。撮像窓33の各短辺の中点を互いに結ぶ直線とディスク搬送路31を搬送されるディスクDの中心の軌跡とがほぼ一致するように撮像窓33の各短辺が配置されている。ディスクDの表面に関する情報を確実に取得するためである。
投光装置11は、ディスク搬送路31を移動するディスクDの一面に光を投光する機能を有する。投光装置11は、例えば、面投光装置21である。面投光装置21を用いることにより、ディスクDの回転位相が異なっても影の影響のない撮像が可能となるからである。面投光装置21は、発光素子22、導光板23、反射シート24および拡散シート25を含んでいる。なお、本実施例において、発光素子22はLED(Light Emitting Diode、発光ダイオード)である。
発光素子(すなわち、LED)22は、ディスクDへ投光するための光源である。発光素子22には三色LEDが使用され、発光素子22が白色可視光を照射する。しかし、発光素子22として、白色LEDを用いることもできる。発光素子22は、図2に示すように、導光板23の側端面に面して配置されているので、ディスク搬送路31と平行な面内に配置することができ、設置スペースは小さい。なお、図2に示す発光素子22の位置は便宜的に図示したものである。
導光板23は、本実施例において、低コストの観点から樹脂にて製造された矩形薄板状をしており、ディスク搬送路31に対しその面が平行に配置されている。樹脂は、透明または拡散材の混入により乳白色を呈する。拡散材を混入した場合、拡散シート25は不要となる。導光板23は、ガラス基板によって構成することもできる。本実施例では、撮像領域35に導光板23が相対している。
反射シート24は、導光板23からディスク搬送路31の反対側へ光が拡散するのを防止し、ディスク搬送路31側に反射する機能を有する。反射シート24は、導光板23のディスク搬送路31の反対側に位置する面に密着されている。なお、反射シート24にかえて、導光板23に銀膜を蒸着しても良い。
拡散シート25は、導光板23のディスク搬送路31側の面から投光される光を面均一に拡散させる機能を有する。したがって、導光板23によって導かれ、または、反射シート24によって反射されたLED22からの投射光は、拡散シート25によって面全体に亘って均一な光量にされ、ディスク搬送路31に向けて投光される。これにより、ディスクDに均一な投光がなされる。拡散シート25から投射される投射光は、ディスク搬送路31、換言すれば、ディスク搬送路31を移動するディスクDに対し直角に投射される。これは、ディスクDの平面の凹凸による光学的な影を作らないためである。導光板23、反射シート24および拡散シート25は薄いので、投光装置11を小型にすることができる。
なお、本実施例の面投光装置21は、発光素子22としてのLED、導光板23、反射シート24および拡散シート25を含んで構成されているが、これに限定されない。例えば、複数個のLEDを二次元状に配列させたLEDアレイや、LED等の点光源とレンズとを組み合わせた平行光などを用いることができる。また、本実施例では、発光素子22としてLEDを用いているが、これに限定されることはなく、レーザーダイオード、エレクトロニックフラッシュ、ハロゲンランプなどの光源を用いることもできる。
ハーフミラー26は、入射光の一部を反射すると共に、入射光の一部を透過する機能を有する。具体的には、投光装置11からの投光は透過し、ディスクDからの反射光は反射する機能を有する。換言すれば、ハーフミラー26は、投光装置11からの投光をディスク搬送路31におけるディスクDに対し直角に投光し、かつ、ディスクDからの反射光をディスク搬送路31と平行な方向に反射させる。本実施例において、ハーフミラー26は厚みが薄い投光性樹脂で形成された有機ガラスにクロムを反射膜として蒸着またはメッキしたものである。しかしながら、これに限定されることなく、有機ガラスにかえて、硼珪酸ガラス、石英ガラス、ジルコニア、ルビーおよびサファイアなどの光学ガラスを基板ガラスとして用いても構わない。また、反射膜として、クロムにかえて、錫および銀などの金属膜や、酸化チタン、酸化シリコン、五酸化ニオブ、五酸化タンタルおよびフッ化マグネシウム等の誘電体材料を用いても構わない。ハーフミラー26は、撮像領域35の側方において、ディスク搬送路31の面に対し45度の角度で傾斜配置されている。
二次元撮像装置12は、集光レンズ41および撮像素子42を含んでいる。集光レンズ41は、ハーフミラー26によって反射された光を所定の小さな範囲に集光する機能を有する。集光レンズ41は、上記機能から、所定の屈折率を有する凸レンズであり、ハーフミラー26の側方、換言すればハーフミラー26が傾斜している方向に配置され、ハーフミラー26と同等または小さい直径を有している。投光装置11等の形状を工夫し、集光レンズ41を小型化することが好ましい。これは、二次元撮像装置12の低価格化および小型化のためである。撮像素子42は、集光レンズ41によって集光された像を撮像する機能を有する。撮像素子42は、集光レンズ41に対してハーフミラー26の反対側、かつ集光レンズ41を介してディスクDの表面像が結像する位置に配置されている。撮像素子42は、小型化のため、CCDイメージセンサやCMOSイメージセンサが採用される。
次に、撮像タイミングセンサ3について説明する。撮像タイミングセンサ3は、ディスク搬送路31を搬送されるディスクDが撮像領域35上を通過するタイミングを検知する機能を有する。撮像タイミングセンサ3は、ディスクDのほぼ全面がハーフミラー26の上方に達したときに撮像タイミングセンサ3がディスクDまたはディスクDを搬送する搬送部(図示せず)を検知できるよう配置されている。そのため、撮像タイミングセンサ3は、ディスクDを最適に撮像できるタイミングを示すタイミング信号TSをディスクDの検知信号として出力する。
制御部4は、撮像タイミングセンサ3から出力されるタイミング信号TSに基づき撮像素子42およびLED22の作動を制御すると共に、撮像素子42で取得された撮像画像を記憶部6に記憶させ、記憶された撮像画像に基づいて画像処理部5に所定の画像処理を実行させる機能を有する。図3に示すように、制御部4は、画像取得部2から出力されたサンプルディスクSDの撮像画像データIDおよび識別対象ディスクTDの撮像画像データIDを後述する記憶部6の撮像画像保持部54に出力する。さらに制御部4は、画像処理部5に対する制御信号PCSを画像処理部5に出力する。また、制御部4は、記憶部6に対する制御信号MCSを記憶部6に出力する。制御部4は、例えば、所定のプログラムに基づき動作するマイクロコンピュータによって構成される。
画像処理部5は、図3に示すように、前処理部51、基準画像生成部52および識別部53を有し、記憶部6に記憶された撮像画像に対して種々の処理を行う機能を有する。画像処理部5は制御部4から出力される制御信号PCSによって制御される。画像処理部5の詳細については後述する。
次に、記憶部6について説明する。記憶部6は、図3に示すように、撮像画像保持部54、処理画像保持部55および基準画像保持部56を有する。撮像画像保持部54は、制御部4から出力された撮像画像データIDに基づいて、サンプルディスクSDおよび識別対象ディスクTDのそれぞれの撮像画像を保持すると共に、保持されたサンプルディスクSDおよび識別対象ディスクTDのそれぞれの撮像画像データIDを画像処理部5の前処理部51に出力する機能を有する。処理画像保持部55は、画像処理部5で処理された画像(以下、処理画像という)を一時的に保持すると共に、保持された処理画像を処理画像データBDとして画像処理部5の基準画像生成部52または識別部53に出力する機能を有する。基準画像保持部56は、画像処理部5の基準画像生成部52で生成された基準画像を保持すると共に、保持された基準画像を基準画像データRIDとして画像処理部5の識別部53に出力する機能を有する。撮像画像保持部54および処理画像保持部55は、例えば、データの読み出し/書き込み速度の観点からRAM(Random Access Memory)により構成される。基準画像保持部56は、例えば、データ保持の持続性の観点からEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)等の不揮発性メモリで構成される。撮像画像保持部54、処理画像保持部55および基準画像保持部56の動作は、制御部4から出力される制御信号MCSによって制御される。
入出力インターフェース(I/F)7は、ディスク識別装置1が組み込まれる本体機器(図示せず)に電気的に接続する機能を有する。入出力インターフェース7を介して本体機器をディスク識別装置1に接続することにより、本体機器に対して所望の信号を入出力可能である。
状態表示器8は、ディスク識別装置1の動作状態を表示する機能を有する。状態表示器8は、例えば、発光色の異なる複数のLED(図示せず)により構成され、それらLEDの発光が制御部4により制御されることにより、ディスク識別装置1の様々な状態(例えば、正常動作やエラー発生等)が報知される。なお、状態表示器8としては、液晶パネルなどのディスプレイ装置も使用可能である。
登録スイッチ9は、後述する基準画像の登録において使用され、登録の開始および終了を制御部4に指示する機能を有する。
セキュリティボリューム10は、ディスク識別装置1において偽ディスクと識別する基準値を設定する機能を有する。制御部4は、セキュリティボリューム10により設定された基準値に基づいて識別対象ディスクTDの真偽を識別する。
次に、図3を参照しながら画像処理部5について詳細に説明する。画像処理部5は、識別の基準となる基準画像を作成すると共に、識別対象ディスクTDの真偽を基準画像に基づいて識別する機能を有する。画像処理部5は、前処理部51、基準画像生成部52および識別部53を含んでいる。
まず、前処理部51について説明する。前処理部51は、撮像画像保持部54に保持された撮像画像に対し、基準画像生成部52における基準画像の生成処理および識別部53における識別処理を効率よく実行するための所定の処理を行う機能を有する。記憶部6に保持されたサンプルディスクSDおよび識別対象ディスクTDの撮像画像は、撮像画像データIDとして前処理部51に入力されて前処理部51で処理される。そして、前処理後の撮像画像(以下、前処理画像という)は、記憶部6の処理画像保持部55に出力されて記憶部6の処理画像保持部55により保持される。図3に示すように、前処理部51は、中心抽出部61、エッジ強調部62、二値化部63および膨張・収縮部64を有している。
中心抽出部61は、撮像画像保持部54に保持された撮像画像に基づき、撮像画像におけるディスクの中心位置を抽出する機能を有する。換言すれば、撮像画像においてディスクの中心を示す座標値を算出する。中心位置の抽出には公知の方法が用いられ、例えば、撮像画像において縦軸(Y軸)方向に延びる各ラインに対しディスクの周縁部の一方と他方とを検出し、検出された両周縁部の間隔が最大となるラインにおける両周縁部間の中点をディスクの中心位置とする。しかし、中心位置の抽出には他の方法を用いることもできる。
エッジ強調部62は、撮像画像保持部54に保持された撮像画像においてエッジを強調する機能を有する。エッジ強調とは、画像の輪郭部の濃度勾配を急峻にし、画像をシャープにする処理である。エッジ強調は、もとの画像からその2次微分を引くこと(ラプラシアンフィルタ)やアンシャープマスクにより行なうことができる。
二値化部63は、エッジ強調部62でエッジ強調された画像を二値化する機能を有する。二値化とは、濃淡画像を二値画像に変換する処理である。二値化では、画素値(すなわち、輝度または明度)が所定の閾値以上の場合にその画素値を「1」とし、それ以外の場合に画素値を「0」とする。二値化のための閾値は、二値化する画像の画素値の度数分布に基づいて、判別識別法、モード法、Kittler法、3σ法、p‐tile法などの公知の方法により自動的に決定される。
膨張・収縮部64は、二値化部63で二値化された画像に対し、注目画素の周辺に1画素でも白の画素があれば白に置き換える膨張処理と、注目画素の周辺に1画素でも黒の画素があれば黒に置き換える収縮処理とを繰り返し実行する機能を有する。膨張処理および収縮処理を繰り返し実行することにより、二値化された撮像画像においてノイズが除去されると共にパターン欠陥(特に、線状パターンの欠陥)が修復される。
次に、基準画像生成部52について説明する。基準画像生成部52は、画像回転部65、画像移動部66、対比判定部67および画像積算部68を有しており、処理画像保持部55に保持された前処理画像について順次重ね合わせを行って複数の前処理画像を積算し、積算された画像(以下、積算画像という)を前処理部51で二値化することにより基準画像を生成する機能を有する。重ね合わせは、各前処理画像の回転ズレおよび位置ズレを補正しながら実行される。例えば、1番目の前処理画像を基準として2番目の前処理画像を回転および平行移動させながらそれら二の前処理画像を対比する。そして、対比結果が所定条件を満足した場合に重ね合わせを行い、対比結果が所定条件を満足しない場合には、重ね合わせを行わない。これにより、所定の模様を有するディスクに対応する前処理画像のみを順次重ね合わすことができる。換言すれば、所定の模様以外の模様を有するディスクに対応する前処理画像が重ね合わされることを排除できる。しかも、各前処理画像の回転ズレおよび位置ズレが補正された状態での重ね合わせが可能となる。
基準画像生成部52により生成された積算画像は、積算画像データMDとして処理画像保持部55に出力されて処理画像保持部55に保持される。制御部4の制御信号MCSに基づいて、処理画像保持部55に保持された積算画像は積算画像データMDとして前処理部51に出力される。前処理部51は、上記と同様の処理を積算画像に対して実行し、二値化された積算画像(以下、二値積算画像という)を二値積算画像データBMDとして処理画像保持部55に出力する。処理画像保持部55は、入力された二値積算画像データに基づいて二値積算画像を保持した後、制御部4の制御信号MCSに基づいて二値積算画像データBMDおよび積算画像データMDを基準画像生成部52に出力する。
基準画像生成部52は、入力された二値積算画像データBMDに基づいて基準画像を生成する。すなわち、回転角度が「0」の二値積算画像および画像回転部65で所定角度回転された複数の二値積算画像を基準画像として生成し、各基準画像に対応する基準画像データRIDを記憶部6の基準画像保持部56に出力する。
画像回転部65は、所望の画像を回転する機能を有する。画像の回転は、公知のアフィン変換を用い、中心抽出部61で抽出されたディスク中心位置を基準に所定の回転角度で実行される。画像回転部65は、処理画像保持部55に保持された前処理画像を回転し、回転された画像を処理画像保持部55に出力する。
画像移動部66は、所望の画像を平行移動する機能を有する。画像の平行移動は、公知のアフィン変換を用い、所定の方向および移動距離で実行される。換言すれば、画素で示されたX軸方向およびY軸方向の移動距離(例えば、X軸方向に1ピクセル、Y軸方向に0ピクセル)に基づき、画像全体が平行移動される。画像移動部66は、処理画像保持部55に保持された前処理画像または画像回転部65で回転された回転画像を平行移動し、平行移動された画像を処理画像保持部55に出力する。
対比判定部67は、所望の二の画像の各画素について画素値を比較し、二の画像の相違する度合い(以下、相違度という)または一致する度合い(以下、一致度という)に基づいて二の画像が一致するか否かを判定する機能を有する。例えば、相違度で判定する場合、画素値の一致しない画素数の合計値が所定の閾値に対して大きい場合、それら二の画像が一致しないと判定される。他方、一致度で判定する場合、画素値の一致する画素数の合計値が所定の閾値に対して大きい場合、それら二の画像が一致すると判定される。本実施例では、相違度により判定する。
画像積算部68は、所望の二の画像の重ね合わせを行う機能を有する。換言すれば、各画素値を加算して二の画像を積算する機能を有する。
次に、識別部53について説明する。識別部53は、画像回転部69、画像移動部70および対比判定部71を有しており、記憶部6の処理画像保持部55に保持された識別対象ディスクTDの前処理画像と記憶部6の基準画像保持部56に保持された基準画像とを対比し、その対比結果から識別対象ディスクTDの真偽を識別する機能を有する。識別結果は、画像処理部5から制御部4に識別信号ISとして出力される。画像回転部69は基準画像生成部52の画像回転部65と同一であり、画像移動部70は基準画像生成部52の画像移動部66と同一であり、対比判定部71は基準画像生成部52の対比判定部67と同一である。したがって、ここではその説明を省略する。
なお、画像処理部5を構成する中心抽出部61、エッジ強調部62、二値化部63、膨張・収縮部64、画像回転部65、69、画像移動部66、70、画像積算部68、および対比判定部67、71は、それぞれの機能を有するものであれば、ハードウェアおよびソフトウェアのいずれで構成してもよい。一部をハードウェアとし残りをソフトウェアとすることも可能である。本実施例では、処理速度を高める上で有利なハードウェアにより画像処理部5の全体が構成されている。
(動作)
次に、図4〜図12を参照しながら、ディスク識別装置1の動作について説明する。
まず、図4に示すように、ステップS1において、初期化がなされる。初期化では、撮像素子42のフレームレート、撮像タイミングセンサ3の感度などが設定される。
次のステップS2において、基準画像を登録するか否かが判定される。すなわち、登録スイッチ9がオンされたか否かが判定される。登録スイッチ9がオンの場合、ステップS3に進み、後述の基準画像の登録が実行される。登録スイッチ9がオフの場合、ステップS4に進む。
ステップS4において、撮像タイミングセンサ3がオンしたか否かが判定される。換言すれば、ディスク搬送路31を移動するディスクDが撮像位置に到達したか否かが判定される。ディスクDが撮像位置に到達した場合、撮像タイミングセンサ3がオンする。すなわち、ディスク搬送路31におけるディスクDの移動に対応して、撮像タイミングセンサ3がオンする。撮像タイミングセンサ3がオンの場合、ステップS5に進む。ディスクDが撮像位置に到達しない場合、撮像タイミングセンサ3がオフの状態に保たれ、ステップS4が繰り返し実行される。換言すれば、ディスクDが撮像位置に到達する迄は、待機状態となる。
次のステップS5では、制御部4が発光素子22に点灯制御信号LCSを出力し、発光素子22が点灯制御信号LCSに基づいて短時間点灯(すなわち、フラッシュ)される。これにより、投光装置11から撮像窓33に向かう拡散光が発せられ、撮像窓33と相対するディスクDが投光される。
次のステップS6では、制御部4が撮像素子42に撮像制御信号ICSを出力し、撮像素子42が撮像制御信号ICSに基づいて識別対象ディスクTDを撮像する。換言すれば、二次元撮像装置12により識別対象ディスクTDの撮像画像が取得される。撮像素子42は、取得された撮像画像データIDを制御部4に出力する。制御部4は、供給された撮像画像データIDを記憶部6に転送する。記憶部6は、送られた撮像画像データIDに基づく撮像画像を撮像画像保持部54に格納し保持する。
なお、ステップS6で取得される撮像画像は、識別対象ディスクTDにおける表面および裏面のいずれかの画像である。そのため、識別対象ディスクTDの表面および裏面の模様が異なる場合、後述の表面および裏面のそれぞれの基準画像と対比する必要がある。本実施例では、識別対象ディスクTDの表面および裏面の模様が異なるものとして説明する。
次のステップS7では、画像処理部5の前処理部51が撮像画像保持部54に保持された撮像画像に対し前処理を実行する。前処理は、図5に示すように、中心抽出、エッジ強調、二値化、膨張・収縮の順で実行される。まず、ステップS81において、中心抽出部61が撮像画像保持部54に保持された撮像画像における中心位置を抽出する。抽出された中心位置の座標値は記憶部6の図示しない記憶領域に格納される。
次のステップS82では、エッジ強調部62が撮像画像保持部54に保持された撮像画像についてエッジ強調の処理を実行する。エッジ強調された画像は、記憶部6の処理画像保持部55に保持される。
続くステップS83では、二値化部63が処理画像保持部55に保持されたエッジ強調後の画像を二値化する。二値化された画像は、処理画像保持部55に保持される。
その後、ステップS84において、膨張・収縮部64が処理画像保持部55に保持された二値化後の画像に対し膨張・収縮処理を実行する。膨張・収縮処理により、二値化された画像のノイズ除去やパターン欠陥の修復等がなされる。膨張・収縮された画像は、処理画像保持部55に保持される。
こうして図4のステップS7の前処理が完了し、当該前処理が施された撮像画像が被識別画像として処理画像保持部55に保持される。
次のステップS8では、画像対比判定が実行される。画像対比判定では、ステップS3において登録された基準画像とステップS7において処理画像保持部55に保持された被識別画像とを対比し、その対比結果により識別対象ディスクTDの真偽が識別される。換言すれば、基準画像との対比結果が所定の基準を満たした場合に一致(真正ディスク)と判定され、それ以外の場合に不一致(偽ディスク)と判定される。このステップS7における画像対比判定の詳細については後述する。
次のステップS9では、ステップS8の画像対比判定における結果が画像処理部5から制御部4に出力される。制御部4は、識別対象ディスクTDが真正ディスクであるか偽ディスクであるかに応じた処理を行うことができる。例えば、真正ディスクと偽ディスクとを選別することができる。ステップS8の実行後、ステップS2に戻り、ステップS2〜S9の各処理が繰り返し実行される。
(基準画像登録)
次に、図6〜図10を参照しながら、図4のステップS3で実行される基準画像の登録について説明する。基準画像の登録は、真正ディスクと同じ種類の複数のサンプルディスクSDの表面および裏面の画像を二次元撮像装置12により取得して行われる。サンプルディスクSDとしては、所定の母集団から無作為に抽出された複数のディスクが使用される。
図6の基準画像登録では、最初のステップS11において、登録設定がなされる。登録設定では、例えば、登録するディスクや画像の種類の数が設定される。ここでは、表面および裏面の模様が異なる1種類のディスクについて基準画像を登録する場合について説明する。この場合、表面および裏面に対応する2種類の画像が登録されることになり、後述するように面番号k(「0」または「1」)で指定される。
次のステップS12では、各面番号k(「0」または「1」)毎の画像番号i、jにそれぞれ「0」が設定される。換言すれば、画像番号i、jが初期化される。
次のステップS13では、登録が終了したか否かが判定される。登録終了は、登録スイッチ9がオフされたか否かで判定される。登録スイッチ9がオンの場合にはステップS13に進み、登録スイッチ9がオフの場合にはステップS20に進む。
まず、登録スイッチ9がオンの場合について説明する。ステップS13では、図4のステップS4と同様に、撮像タイミングセンサ3がオンしたか否かが判定される。サンプルディスクSDが撮像位置に到達した場合、撮像タイミングセンサ3がオンする。撮像タイミングセンサ3がオンの場合、ステップS14に進む。サンプルディスクSDが撮像位置に到達しない場合、撮像タイミングセンサ3がオフの状態に保たれ、ステップS13が繰り返し実行され、サンプルディスクSDが撮像位置に到達する迄は、待機状態となる。
次のステップS14では、図4のステップS5と同様に、制御部4がLED22に点灯制御信号LCSを出力し、発光素子22が点灯制御信号LCSに基づいて短時間点灯(すなわち、フラッシュ)される。これにより、投光装置11から撮像窓33に向かう拡散光が発せられ、撮像窓33と相対するサンプルディスクSDが投光される。
次のステップS15では、図4のステップS6と同様に、制御部4が撮像素子42に撮像制御信号ICSを出力し、撮像素子42が撮像制御信号ICSに基づいてサンプルディスクSDを撮像する。換言すれば、二次元撮像装置12によりサンプルディスクSDの撮像画像が取得される。撮像素子42は、取得された撮像画像に基づく撮像画像データを制御部4に出力する。制御部4は、供給された撮像画像データIDに基づく撮像画像を記憶部6の撮像画像保持部54に格納し保持する。
次のステップS16では、図4のステップS7と同様に、画像処理部5の前処理部51が撮像画像保持部54に保持されたサンプルディスクSDの撮像画像(以下、サンプル画像という)に対し、図5のステップS81〜S84において中心抽出、エッジ強調、2値化および膨張・収縮の順で処理を実行する。このとき、抽出された中心位置の座標は記憶部6の図示しない記憶領域に格納され、前処理により二値化されたサンプル画像(以下、二値サンプル画像という)が生成される。
次のステップS17では、画像番号iが「0」であるか否かが判定される。換言すれば、サンプルディスクSDの表面および裏面のいずれか一方の1番目の画像に関する画像データであるか否かを判断する。画像番号iが「0」の場合(すなわち、1番目の画像データである場合)、ステップS18に進む。画像番号iが「0」でない場合(すなわち、2番目以降の画像データである場合)、図7のステップS31に進む。
ステップS17において画像番号iが「0」である場合に実行されるステップS18では、サンプルディスクSDの表面および裏面のいずれか一方を示す面番号kに「0」が設定される。
次のステップS19では、ステップS16において生成された二値サンプル画像が面番号k(すなわち、面番号「k=0」)の積算画像として処理画像保持部55に保持される。
次のステップS20では、画像番号iに「1」が加算された値が新たな画像番号iとして設定される。換言すれば、画像番号iが更新される。その後、ステップS13に戻る。
ステップS17において画像番号iが「0」でない場合に実行される図7のステップS31では、面番号kに「0」が設定される。換言すれば、面番号kが初期化される。
次のステップS32では、回転角度θに「0」が設定される。換言すれば、回転角度θが初期化される。
次のステップS33では、面番号kの積算画像が選択される。すなわち、処理画像保持部55に保持された面番号kの「i−1」番目の前処理後の画像データが指定される。
続いて実行されるステップS34〜S36では、画像番号i、jが「2」以上の場合にのみ、ステップS33で選択された積算画像に対して前処理が実行される。これは、画像番号i、jが「1」の場合、図6のステップS19および図8のステップS70(後述)において格納される積算画像が二値積算画像であるため、前処理が重複しないようにするためである。
すなわち、ステップS34では、画像番号iが「2」以上であるか否かが判定される。画像番号iが「2」以上の場合にはステップS35に進み、画像番号iが「2」未満(実質的には、画像番号iが「1」)の場合にはステップS37に進む。
次のステップS35では、画像番号jが「2」以上であるか否かが判定される。画像番号jが「2」以上の場合にはステップS36に進み、画像番号jが「2」未満(実質的には、画像番号jが「1」)の場合にはステップS37に進む。
次のステップS36では、ステップS33で選択された積算画像の前処理が実行される。このステップにおいても、図5のステップS81〜S84が順次実行される。これにより、二値化された積算画像(すなわち、二値積算画像)が生成される。
次のステップS37では、二値サンプル画像と面番号kの二値積算画像とを対比する画像比較が実行される。このとき、二値サンプル画像および二値積算画像の対比は、所定の画素領域の全体に亘って実行される。画像比較では、二値サンプル画像および二値積算画像を画素単位で比較し、画素値の相違する画素数をカウントすることにより相違度DFが算出される。
次のステップS38では、回転角度θが「0」であるか否かが判定される。「θ=0」の場合にはステップS40に進み、「θ≠0」の場合にはステップS39に進む。
ステップS40および次のステップS41では、相違度DFの最小値を示す最小相違度DFmと、相違度DFが最小となる最小相違度回転角度θmとが設定される。すなわち、ステップS41において最小相違度DFmとして現在の相違度DFが設定され、ステップS42において最小相違度回転角度θmとして現在の回転角度θが設定される。設定された最小相違度DFmおよび最小相違度回転角度θmは、記憶部6の図示されない領域に格納される。
ステップS38において「θ=0」の場合、ステップS37において算出された相違度DFが最小相違度DFmとして設定され、最小相違度回転角度θmとして「0」が設定される。
ステップS38において「n≠0」の場合、ステップS39において、ステップS37で算出された相違度DFが最小相違度DFm未満であるか否かが判定される。「DF<DFm」の場合、すなわち、ステップS37で算出された相違度DFが既に設定されている最小相違度DFmより小さい場合、ステップS40に進み、最小相違度DFmが更新される。「DF≧DFm」の場合、ステップS42に進み、現在の最小相違度DFmおよび最小相違度角度θmがそのまま維持される。
次のステップS42では、現在の回転角度θに回転角度増分θdを加算して得られた値が新たな回転角度θとして設定される。換言すれば、回転角度θが更新される。本実施例では、二値サンプル画像を1回転したときに「θ=0」の画像を含めて全100枚の二値サンプル画像が得られるように、θdが設定される。この場合のθdは「3.6°」である。
次のステップS43では、ステップS42で更新された回転角度θが「360°」以上であるか否かが判定される。「θ<360°」の場合、ステップS44に進み、撮像画像保持部172に保持された二値サンプル画像がステップS42で設定された回転角度で画像回転部65によって回転された後、ステップS37に戻る。これにより、回転角度θが「360°」以上となるまで、ステップS37〜S44が繰り返し実行される。換言すれば、「θ=0」の場合を含めて回転角度の異なる複数の二値サンプル画像と二値積算画像との対比がなされる。こうして、二値積算画像に対する二値サンプル画像の凡その回転角度ずれ量が算出される。
ステップS43において「θ≧360°」の場合、図8のステップS51に進み、回転角度カウント数mとして「0」が設定される。回転角度カウント数mは、記憶部6の図示されない領域に保持される。
次のステップS52では、回転角度カウント数mが「0」と一致するか否かが判定される。「m=0」の場合、ステップS53において、回転角度θとして最小相違度回転角度θmが設定された後、ステップS57に進む。「m≠0」の場合、ステップS54に進む。
次のステップS54では、回転角度カウント数mが「1」と一致するか否かが判定される。「m=1」の場合、ステップS55において、回転角度θとして最小相違度回転角度θmから回転角度増分θsを減算した「θm−θs」が設定された後、ステップS57に進む。「m≠1」の場合、ステップS56において、回転角度θとして最小相違度回転角度θmに回転角度増分θsを加算した「θm+θs」が設定された後、ステップS57に進む。ここでの回転角度増分θsは、回転角度増分θdより小さい値に設定される。本実施例では、回転角度増分θsは「1°」である。
次のステップS57では、撮像画像保持部172に保持された二値サンプル画像がステップS53、S55、S56で設定された回転角度で画像回転部65によって回転された後、ステップS58に進む。
次のステップS58では、画像移動カウント数nに「0」が設定される。換言すれば、画像移動カウント数nが初期化(すなわち、リセット)される。
次のステップS59では、図9の平行移動処理が実行される。図9の平行移動処理では、処理画像保持部55に保持された二値サンプル画像が、画像移動カウント数nに対応した所定の方向に平行移動される。平行移動された二値サンプル画像は、処理画像保持部55に保持される。すなわち、ステップS91では、画像移動カウント数が「0」か否かが判定され、「n=0」の場合、ステップS98において二値サンプル画像が右上方に1ピクセル移動(図10(A)の位置P1に移動、すなわち、X軸方向およびY軸方向に各「+1」ピクセル移動)された後、図9のステップS59に戻る。「n≠0」の場合、ステップS92に進み、画像移動カウント数nが「1」か否かが判定される。「n=1」の場合、ステップS99において二値サンプル画像が上方に1ピクセル移動(図10(B)の位置P2に移動、すなわち、Y軸方向に「+1」ピクセル移動)された後、図9のステップS59に戻る。「n≠1」の場合、ステップS93に進み、画像移動カウント数nが「2」か否かが判定される。「n=2」の場合、ステップS100において二値サンプル画像が左上方に1ピクセル移動(図10(C)の位置P3に移動、すなわち、X軸方向に「−1」およびY軸方向に「+1」ピクセル移動)された後、図9のステップS59に戻る。「n≠2」の場合、ステップS94に進み、画像移動カウント数nが「3」か否かが判定される。「n=3」の場合、ステップS101において二値サンプル画像が左方に1ピクセル移動(図10(D)の位置P4に移動、すなわち、X軸方向に「−1」ピクセル移動)された後、図9のステップS59に戻る。「n≠3」の場合、ステップS95に進み、画像移動カウント数nが「4」か否かが判定される。「n=4」の場合、ステップS102において二値サンプル画像が右方に1ピクセル移動(図10(E)の位置P5に移動、すなわち、X軸方向に「+1」ピクセル移動)された後、図9のステップS59に戻る。「n≠4」の場合、ステップS96に進み、画像移動カウント数nが「5」か否かが判定される。「n=5」の場合、ステップS103において二値サンプル画像が右下方に1ピクセル移動(図10(F)の位置P6に移動、すなわち、X軸方向に「+1」およびY軸方向に「−1」ピクセル移動)された後、図9のステップS59に戻る。「n≠5」の場合、ステップS97に進み、画像移動カウント数nが「6」か否かが判定される。「n=6」の場合、ステップS104において二値サンプル画像が下方に1ピクセル移動(図10(G)の位置P7に移動、すなわち、Y軸方向に「−1」ピクセル移動)された後、図9のステップS59に戻る。「n≠6」の場合、ステップS105に進み、二値サンプル画像が左下方に1ピクセル移動(図10(H)の位置P8に移動、すなわち、X軸方向およびY軸方向に各「−1」ピクセル移動)された後、図9のステップS59に戻る。なお、図10では、平行移動の方向を明瞭に示すため、便宜的に移動距離を大きく示している。
図9のステップS59の実行後、図8のステップS60において現在の画像移動カウント数nに「1」が加算され、新たな画像移動カウント数nが設定される。換言すれば、画像移動カウント数nが更新される。
次のステップS61では、画像移動カウント数nが「8」以上であるか否かが判定される。画像移動カウント数nが「8」以上でない場合(すなわち、「n<8」の場合)、ステップS62に進み、図7のステップS37と同様に、処理画像保持部55に保持された二値積算画像と二値サンプル画像とを対比する画像比較が実行されて相違度DFが算出される。
次のステップS63では、ステップS62で算出された相違度DFが所定閾値以下か否かが判定される。閾値以下の場合、ステップS64において処理画像保持部55に保持された積算画像に二値サンプル画像を重ね合わせる処理を行い、ステップS65において新たな積算画像として処理画像保持部55に保持する。これにより、積算画像が更新された後、図6のステップS3に戻る。相違度DFが閾値を超えている場合、ステップS59に戻り、ステップS59〜S63が繰り返し実行される。すなわち、二値サンプル画像と二値積算画像との対比が、平行移動の方向を変えながら繰り返し実行される。
ステップS61において画像移動カウント数nが「8」以上の場合(すなわち、「n≧8」の場合)、ステップS66に進み、新たな回転角度カウント数mとして現在の回転角度カウント数mに「1」を加算した「m+1」を設定する。
次のステップS66では、回転角度カウント数mが「2」以下であるか否かを判定する。「m≦2」の場合、ステップS52に戻り、ステップS52〜S63が繰り返し実行される。
ステップS66において「m>2」の場合、ステップS67に進み、現在の面番号kに「1」が加算され、新たな面番号kが設定される。換言すれば、面番号kが更新される。
次のステップS69では、面番号kが「2」以上であるか否かが判定される。面番号kが「2」未満(すなわち、「k<2」)の場合、次のステップS70に進み、画像番号jが「0」であるか否かが判定される。「j=0」の場合、次のステップS71に進み、二値サンプル画像が面番号kの積算画像として処理画像保持部55に保持される。そして、次のステップS72において、新たな画像番号として現在の画像番号jに「1」を加算した「j+1」を設定した後、図6のステップS3に戻る。
ステップS70において「j≠0」と判定された場合、図7のステップS32に戻る。これにより、ステップS67において更新された面番号kについて、ステップ32〜S69の処理が繰り返し実行される。
ステップS69において「k≧2」と判定された場合、図6のステップS3に戻る。換言すれば、「k=1」に設定された状態で、ステップS52〜S84の処理が再度実行される。すなわち、裏面の基準画像との対比が行われる。面番号kが「2」以上(すなわち、「k≧2」)の場合、ステップS86において不一致と判定され、図6のステップS7に戻る。
次に、図6のステップS3において登録スイッチ9がオフされた場合について説明する。この場合、ステップS21に進み、面番号kに「0」が設定される。換言すれば、面番号kが初期化される。
次のステップS22では、処理画像保持部55に保持された面番号kの積算画像が選択される。
次のステップS23では、図7のステップS36と同様に、積算画像の前処理が実行されて二値積算画像が生成される。
次のステップS24では、回転角度θに「0」が設定される。換言すれば、回転角度θが初期化される。
次のステップS25では、ステップS22で生成された二値積算画像を面番号kおよび回転角度θに関連付けて基準画像として基準画像保持部56に保持する。
次のステップS26では、回転角度θに回転角度増分θdを加算した「θ+θd」を新たな回転角度θとして設定する。換言すれば、回転角度θを更新する。
次のステップS27では、回転角度θが「360°」以上であるか否かを判定する。「θ<360°」の場合、ステップS28に進み、画像回転部65により「θ=0」の二値積算画像を回転させた後、ステップS25に戻る。ステップS27において「θ≧360°」である場合には、ステップS29に進み、面番号kに「1」を加算した「k+1」を新たな面番号kとして設定する。換言すれば、面番号が更新される。
次のステップS30では、更新された面番号kが「2」以上であるか否かが判断される。「k<2」の場合、ステップS22に戻り、ステップS22〜S28の処理が繰り返し実行される。「k≧2」の場合、図4のステップS3に戻る。
(画像対比判定)
次に、図11及び図12を参照しながら、図4のステップS8で実行される画像対比判定について説明する。
まず、ステップS111において面番号kに「0」が設定される。換言すれば、面番号kが初期化される。
次のステップS112では、回転角度θに「0」が設定される。換言すれば、回転角度θが初期化される。
次のステップS113では、基準画像保持部56に保持された複数の基準画像の内の面番号k、回転角度θに対応する基準画像が選択される。
次のステップS114では、ステップS113で選択された基準画像と処理画像保持部55に保持された被識別画像(すなわち、図4において前処理が施された識別対象ディスクTDの二値画像)とが比較される。この画像比較では、図7のステップS37の場合と同様に、被識別画像および基準画像を画素単位で比較し、画素値の相違する画素数をカウントすることにより相違度DFが算出される。
次のステップS115では、回転角度θが「0」であるか否かが判定される。{θ=0」の場合にはステップS117に進み、「θ≠0」の場合にはステップS116に進む、
ステップS117および次のステップS118では、相違度DFの最小値を示す最小相違度DFmと、相違度DFが最小となる最小相違度回転角度θmとが設定される。すなわち、ステップS41において最小相違度DFmとして現在の相違度DFが設定され、ステップS42において最小相違度回転角度θmとして現在の回転角度θが設定される。設定された最小相違度DFmおよび最小相違度回転角度θmは、記憶部6の図示されない領域に格納される。
ステップS115において「θ≠0」の場合、ステップS116において、ステップS114で算出された相違度DFが最小相違度DFm未満であるか否かが判定される。「DF<DFm」の場合、すなわち、ステップS114で算出された相違度DFが既に設定されている最小相違度DFmより小さい場合、ステップS117に進み、最小相違度DFmが更新される。「DF≧DFm」の場合、ステップS119に進み、現在の最小相違度DFmおよび最小相違度角度θmがそのまま維持される。
次のステップS119では、現在の回転角度θに回転角度増分θdを加算して得られた値が新たな回転角度θとして設定される。換言すれば、回転角度θが更新される。回転角度増分θdは、図7のステップS42の場合と同様に「3.6°」である。
次のステップS120では、ステップS119で更新された回転角度θが「360°」以上であるか否かが判定される。「θ<360°」の場合、ステップS113に戻り、ステップS113〜S120が繰り返し実行される。換言すれば、「θ=0」の場合を含めて回転角度の異なる複数の基準画像と被識別画像との対比がなされる。このとき、基準画像および被識別画像の対比は、所定の画素領域の全体に亘って実行される。こうして、基準画像に対する被識別画像の凡その回転角度ずれ量が算出される。
ステップS120において「θ≧360°」の場合、図12のステップS121に進み、回転角度カウント数mとして「0」が設定される。回転角度カウント数mは、記憶部6の図示されない領域に保持される。
次のステップS122では、回転角度カウント数mが「0」と一致するか否かが判定される。「m=0」の場合、ステップS123において、回転角度θとして負の最小相違度回転角度「−θm」が設定された後、ステップS127に進む。「m≠0」の場合、ステップS124に進む。
次のステップS124では、回転角度カウント数mが「1」と一致するか否かが判定される。「m=1」の場合、ステップS125において、回転角度θとして負最小相違度回転角度「−θm」から回転角度増分θsを減算した「−θm−θs」が設定された後、ステップS127に進む。「m≠1」の場合、ステップS126において、回転角度θとして負の最小相違度回転角度「−θm」に回転角度増分θsを加算した「−θm+θs」が設定された後、ステップS127に進む。ここでの回転角度増分θsは、図8のステップS55、S56の場合と同様に「1°」である。
次のステップS127では、撮像画像保持部54に保持された被識別画像がステップS123、S125、S126で設定された回転角度で画像回転部65によって回転された後、ステップS128に進む。
次のステップS128では、画像移動カウント数nに「0」が設定される。換言すれば、画像移動カウント数nが初期化される。
次のステップS129では、図9の平行移動処理が実行される。図9の平行移動処理では、処理画像保持部55に保持された被識別画像が、画像移動カウント数nに対応した所定の方向に平行移動される。平行移動された被識別画像は、処理画像保持部55に保持される。すなわち、ステップS91では、画像移動カウント数が「0」か否かが判定され、「n=0」の場合、ステップS98において被識別画像が右上方に1ピクセル移動(図10(A)の位置P1に移動、すなわち、X軸方向およびY軸方向に各「+1」ピクセル移動)された後、図12のステップS129に戻る。「n≠0」の場合、ステップS92に進み、画像移動カウント数nが「1」か否かが判定される。「n=1」の場合、ステップS99において被識別画像が上方に1ピクセル移動(図10(B)の位置P2に移動、すなわち、Y軸方向に「+1」ピクセル移動)された後、図12のステップS129に戻る。「n≠1」の場合、ステップS93に進み、画像移動カウント数nが「2」か否かが判定される。「n=2」の場合、ステップS100において被識別画像が左上方に1ピクセル移動(図10(C)の位置P3に移動、すなわち、X軸方向に「−1」およびY軸方向に「+1」ピクセル移動)された後、図12のステップS129に戻る。「n≠2」の場合、ステップS94に進み、画像移動カウント数nが「3」か否かが判定される。「n=3」の場合、ステップS101において被識別画像が左方に1ピクセル移動(図10(D)の位置P4に移動、すなわち、X軸方向に「−1」ピクセル移動)された後、図12のステップS129に戻る。「n≠3」の場合、ステップS95に進み、画像移動カウント数nが「4」か否かが判定される。「n=4」の場合、ステップS102において被識別画像が右方に1ピクセル移動(図10(E)の位置P5に移動、すなわち、X軸方向に「+1」ピクセル移動)された後、図12のステップS129に戻る。「n≠4」の場合、ステップS96に進み、画像移動カウント数nが「5」か否かが判定される。「n=5」の場合、ステップS103において被識別画像が右下方に1ピクセル移動(図10(F)の位置P6に移動、すなわち、X軸方向に「+1」およびY軸方向に「−1」ピクセル移動)された後、図12のステップS129に戻る。「n≠5」の場合、ステップS97に進み、画像移動カウント数nが「6」か否かが判定される。「n=6」の場合、ステップS104において被識別画像が下方に1ピクセル移動(図10(G)の位置P7に移動、すなわち、Y軸方向に「−1」ピクセル移動)された後、図12のステップS129に戻る。「n≠6」の場合、ステップS105に進み、被識別画像が左下方に1ピクセル移動(図10(H)の位置P8に移動、すなわち、X軸方向およびY軸方向に各「−1」ピクセル移動)された後、図12のステップS129に戻る。なお、図10では、平行移動の方向を明瞭に示すため、便宜的に移動距離を大きく示している。
図12のステップS129の実行後、次のステップS130において現在の画像移動カウント数nに「1」が加算され、新たな画像移動カウント数nが設定される。換言すれば、画像移動カウント数nが更新される。
次のステップS131では、画像移動カウント数nが「8」以上であるか否かが判定される。画像移動カウント数nが「8」以上でない場合(すなわち、「n<8」の場合)、ステップS132に進み、図11のステップS114と同様に、基準画像保持部56に保持された基準画像と被識別画像とを対比する画像比較が実行されて相違度DFが算出される。このとき、基準画像および被識別画像の対比は、所定の画素領域の全体に亘って実行される。
次のステップS133では、ステップS132で算出された相違度DFが所定閾値以下か否かが判定される。閾値以下の場合、ステップS134に進み、一致判定がなされ、図4のステップS8に戻る。相違度DFが閾値を超えている場合、ステップS129に戻り、ステップS129〜S133が繰り返し実行される。すなわち、基準画像と被識別画像との対比が、平行移動の方向を変えながら繰り返し実行される。
ステップS131において画像移動カウント数nが「8」以上の場合(すなわち、「n≧8」の場合)、ステップS135に進み、新たな回転角度カウント数mとして現在の回転角度カウント数mに「1」を加算した「m+1」を設定する。
次のステップS136では、回転角度カウント数mが「2」以下であるか否かを判定する。「m≦2」の場合、ステップS122に戻り、ステップS122〜S133が繰り返し実行される。
ステップS136において「m>2」の場合、ステップS137に進み、現在の面番号kに「1」が加算され、新たな面番号kが設定される。換言すれば、面番号kが更新される。
次のステップS138では、面番号kが「2」以上であるか否かが判定される。面番号kが「2」未満(すなわち、「k<2」)の場合、次のステップS139に進み、不一致判定がなされた後、図11のステップS112に戻る。これにより、ステップS137において更新された面番号kについて、ステップ122〜S138の処理が繰り返し実行される。
ステップS69において「k≧2」と判定された場合、次のステップS139に進み、不一致判定がなされた後、図11のステップS112に戻る。
上述した通り、本発明の一実施例のディスク識別装置1では、真正ディスクとして識別すべき複数のサンプルディスクSDの撮像画像が撮像装置により取得された場合、画像積算部68が当該撮像画像の回転ずれおよび位置ずれを補正しつつ当該複数の撮像画像を重ね合わせることにより積算画像を生成する。基準画像保持部56は、画像積算部68により生成された積算画像に基づいて二値化部63により生成された二値画像を基準画像として保持する。識別対象ディスクTDの撮像画像が撮像装置により取得された場合、処理画像保持部(すなわち、被識別画像保持部)55が当該撮像画像に基づいて二値化部により生成された二値画像を被識別画像として保持する。識別部53は、基準画像保持部56に保持された基準画像と被識別画像保持部55に保持された被識別画像とを対比することにより識別対象ディスクの真偽を識別する。
画像積算部68により生成される積算画像は、複数のサンプルディスクSDの各撮像画像が有する模様情報を統合した統合模様情報を有している。換言すれば、基準画像には、新品ディスクや使用中に摩耗や傷が生じたサンプルディスクSDの模様情報が含まれる。識別部53は、基準画像における統合模様情報を含む所定の画素領域の全体に亘って撮像画像との対比を行う。
識別対象ディスクTDが新品である場合、新品ディスクにより生成された基準画像を用いた場合に比べ、対比結果としての相違度は高くなり、一致度は低くなる。積算画像が摩耗や傷が生じたディスクの模様情報を含むからである。他方、識別対象ディスクTDが摩耗や傷が生じたディスクの場合、新品ディスクにより生成された基準画像を用いた場合に比べ、対比結果としての相違度は低くなり、一致度は高くなる。これもまた、積算画像が摩耗や傷が生じたディスクの模様情報を含むからである。換言すれば、識別部における対比結果において、識別対象ディスクが新品である場合と、そうでない場合との差が小さくなる。識別部53は基準画像における統合模様情報を含む所定の画素領域の全体に亘って撮像画像との対比を行うため、上記の識別結果の差はより一層小さくなる。識別対象ディスクTDの表面の模様について可能な限り広範囲に亘って識別しているからである。したがって、対比結果の判定における相違度の閾値をセキュリティボリューム10で適宜に設定することにより、長期間の使用によりディスクの摩耗や傷などの影響を受け難く、高い精度での識別が可能となる。
また、識別部53により基準画像における統合模様情報を含む所定の画素領域の全体に亘って撮像画像との対比を行うようしているので、特徴データに基づいて識別する場合に比べ、二次元撮像装置12(ひいては、撮像素子42)の画素数が少なくても、高精度の識別が可能となり、さらに、ディスク表面の模様が多種多様であっても、それに容易に対応できる。
(変形例)
本発明は上記実施例に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。例えば、図4のステップS8の画像対比判定においては被識別画像を平行移動させているが、基準画像を平行移動させてもよい。また、基準画像の回転に換えて被識別画像を回転することによっても同様の効果が得られる。さらに、登録スイッチ9がオンからオフされた場合に基準画像の登録を終了させているが、各面番号kに対応する二値積算画像を生成する過程で予め設定された画像数の積算画像が得られたときに登録の処理を終了させることも可能である。また、面番号kの最大数を適宜に設定することにより複数種類のディスクの識別が可能となる。
なお、本発明はディスクの一面の大部分に模様が形成されたディスクに限定されるものではなく、その一面の一部に特徴部分(例えば、硬貨の額面を示す部分)を有するディスクの識別を行う場合についても有効である。