図1を参照して、この発明の一実施例であるシート端封止部材10は、上側開口の溝状に形成されて耕作地102の地中に埋設される遮水シート50と、遮水シート50内に挿通される有孔管52とを備える地下灌漑システム100に適用される部材であって、遮水シート50の端部を封止するために用いられる。
先ず、シート端封止部材10の具体的な説明の前に、シート端封止部材10が適用される地下灌漑システム100の一例について説明する。
図1−図3に示すように、この実施例における地下灌漑システム100は、傾斜を有する耕作地(傾斜地)102に適用されて、地下から水を供給して土壌中の水分を植物の生育にとって適切な状態に保つシステムである。地下灌漑システム100は、地中に埋設される複数の溝状の遮水シート50、および各遮水シート50内に挿通される有孔管52を含む。詳細は後述するが、この地下灌漑システム100では、有孔管52内を通って遮水シート50内に供給された水によって、毛管水状態または重力水状態の保水土壌部54が遮水シート50内に形成される。そして、保水土壌部54に保持した水が毛細管現象によって上側の土壌に浸透されることにより、植物の根圏(作土層)56が毛管水状態の適切な水分量に保たれる。
遮水シート50は、土壌に供給する水を地中で保持しておくための部材であって、合成樹脂などで形成される遮水性および柔軟性(可撓性)を有するシートによって、上側開口の溝状に形成される。この実施例では、遮水シート50は、ポリ塩化ビニル製の長尺のシートであって、矩形平板状の底板50aと、底板50aの両側端からやや外側に傾斜して立ち上がる側板50bとを有する細長い溝状に形成(変形)されて、地中に埋設される。
遮水シート50の大きさは、地下灌漑システム100の規模(耕作地の面積)や栽培する植物の種類などに応じて適宜設定されるが、その長手方向(軸方向)の長さは、たとえば数m−数百mであり、その厚みは、たとえば0.3−1.5mmである。また、この実施例では、遮水シート50の幅方向長さW、つまり遮水シート50の長手方向と直交する方向における長さは、たとえば470mmである。そして、溝状に形成した状態での遮水シート50の幅は、たとえば、下端側(底板50a)で120mmであり、その上端側の開口で300mmであり、また、その高さ(側板50bの高さ或いは溝の深さ)は、150mmである。
また、遮水シート50の下流側端部および上流側端部は、シート端封止部材10によって封止される(図7および図8参照)。シート端封止部材10の具体的構成については後述する。
このような遮水シート50は、耕作地102の傾斜に沿って畝立てされた畝104ごとに、その長手方向が植物の根圏56に沿うように地中に傾斜して埋設され、遮水シート50の内部には、周囲の土壌と同成分の土が充填される。
なお、図3に示すように、遮水シート50の両端部は、シート端封止部材10を装着するに際して少し持ち上げられるが、遮水シート50の両端部以外の部分は、後述する有孔管52と同じ一様な傾斜角度で設置される。また、図1では、図示の簡略化のため、耕作地102に4つの遮水シート50を並べて配置する態様を示しているが、これは単なる例示であり、遮水シート50の配置個数や配置態様などは、耕作地102の広さ等に応じて適宜変更され得る。また、遮水シート50を畝104ごとに配置する必要もなく、2−3本の畝104に1つの割合で遮水シート50を配置してもよい。たとえば、隣り合う遮水シート50同士の間隔は、500−2000mmが好ましく、遮水シート50の上端(側縁50c)から地表面までの距離(埋設深さ)は、100mm−800mmが好ましい。
各遮水シート50の内部には、遮水シート50の全長に亘って均等に水を供給するための有孔管52が挿通される。有孔管52は、ポリエチレン等の合成樹脂や合成ゴムなどによって形成され、その管壁全体に分散して形成される複数の貫通孔を有する。有孔管52は、遮水シート50の全長に亘って挿通されることによって、遮水シート50内に充填された土中を通る水路を形成し、その内部に流れる水を、貫通孔を介して遮水シート50内に供給する。有孔管52の内径は、たとえば5−50mmであり、有孔管52の管壁に形成される貫通孔の大きさは、直径でたとえば1−5mmである。有孔管52としては、たとえば、有孔のコルゲート管を用いるとよい。
また、有孔管52は、遮水シート50の底板50aから上方に少し離れた位置に配管される。すなわち、有孔管52の下面と底板50aの上面との間には、土が介在する。有孔管52の下面から底板50aの上面までの距離は、たとえば50mmである。このように、有孔管52の下面と底板50aの上面との間に土が介在することによって、この土が保水部材として機能し、傾斜地であっても遮水シート50内に保水土壌部54を適切に形成することができる。
なお、有孔管52の管壁に形成される貫通孔は、管壁を直線状に貫くものに限定されず、多孔質状や網目状のものでもよい。また、貫通孔の形状、大きさ、形成位置および数などは、適用する耕作地102の土壌成分などに応じて適宜設定されるものであり、これらを調整変更することによって、有孔管52から遮水シート50内へ供給する水の量を制御することが可能である。
また、図示は省略するが、有孔管52の外周面は、貫通孔への植物の根の入り込みを防止するために、透水性を有する防根シートによって覆っておくことが好ましい。防根シートは、植物の根よりは小さいが、水は無加圧で通過する微細な孔を有するシートである。
このような有孔管52の上流側端部は、第1配管60を介して、有孔管52よりも傾斜上側に配置された給水タンク62に接続される。第1配管60は、給水タンク62から供給される水を有孔管52まで送る給水用の配管(給水管)であり、複数の直管、可撓管および継手などを適宜連結して形成される。
給水タンク62は、耕作地102に供給するための水を貯留するタンクであり、たとえば地上に設置される。給水タンク62は、たとえば、農業用水配管(図示せず)などと接続されて、農業用水配管から送られてくる水をその内部に貯留する。給水タンク62に貯留される水量は、耕作地102の面積などによって適宜設定され、給水タンク62内には、常に一定量以上の水が貯留される。なお、給水タンク62からは、水のみを供給するだけでなく、たとえば給水タンク62内の水に肥料を溶かして、給水タンク62から水と共に肥料を供給するようにしてもよい。
一方、各有孔管52の下流側端部は、第2配管64を介して、有孔管52よりも傾斜下側に配置された貯水タンク66に接続される。第2配管64は、有孔管52から送られてきた余剰水を貯水タンク66まで送る排水用の配管(排水管)であり、複数の直管、可撓管および継手などを適宜連結して形成される。貯水タンク66は、たとえば地中に設置され、第2配管64から送られてくる余剰水をその内部に貯留する。
図示は省略するが、貯水タンク66内に貯水した水は、適宜再利用することが可能である。たとえば、ソーラー型循環ポンプなどを設けて、貯水タンク66内の水を給水タンク62に戻すことによって、再利用するとよい。また、たとえば、耕作地102よりも傾斜下側の耕作地に適用した別の地下灌漑システムの給水タンクに対して貯水タンク66を接続し、貯水タンク66内の水を別システムの給水に再利用することもできる。このように貯水タンク66内の水を再利用することで、水の無駄使いを低減できる。
このような地下灌漑システム100では、灌漑時には、給水タンク62内の水が第1配管60を介して各有孔管52に供給される。有孔管52内に流れ込んだ水は、有孔管52の上流側部分から順に、有孔管52に形成される貫通孔を通って遮水シート50内に供給される。また、上流側部分で遮水シート50内に供給されなかった水は、有孔管52内を通って下流側に順次搬送されて、搬送先の有孔管52の貫通孔から遮水シート50内に順次供給される。さらに、遮水シート50内に供給されずに有孔管52の下流側端部まで到達した水は、余剰水として排水され、第2配管64を介して貯水タンク66に貯留される。
一方、有孔管52から遮水シート50内に供給された水は、主として重力水となって遮水シート50内の土中を下方に移動していくが、遮水シート50によってその移動を阻止されて、重力水または毛管水として遮水シート50内に留まる。これにより、遮水シート50内に、重力水状態または毛管水状態の保水土壌部54が形成される。その後、保水土壌部54の水は、その上側の土壌に毛細管現象によって徐々に浸透していき、植物の根圏(作土層)56に毛管水状態の土壌部を形成する。
なお、有孔管52内を通る水は、遮水シート50内に上流側から順次供給されるが、有孔管52の内部空間は、遮水シート50内の土中の空隙よりも通水抵抗が小さいため、水の一部は有孔管52内を通って適切に下流側にも搬送される。また、保水土壌部54の水位が有孔管52内の水位に達すると、有孔管52内から遮水シート50内への水の移動は止まるので、定常状態においては、保水土壌部54の水位は、有孔管52内の水位とほぼ同じ一定の水位に保たれる。すなわち、給水タンク62から有孔管52に対して定量の給水が行われているときには、保水土壌部54の水位、つまり遮水シート50内で保持される水の量は、遮水シート50の全長に亘ってほぼ一定に保たれるので、その上側の土壌(根圏56)の毛管水の量も一定に保たれる。
このように、地下灌漑システム100では、土壌に供給する水を遮水シート50内で保持しておき、そこから毛細管現象によって上側の土壌に供給するようにしている。そして、遮水シート50内で保持される水の量は、その全長に亘ってほぼ一定に保たれるので、上側の土壌に対する水の供給が傾斜方向(遮水部材の長手方向)の一部に偏ることなく、植物の根圏56に対して均等に灌水できる。
また、地下灌漑システム100では、降雨時には、地中に浸透した雨水が遮水シート50によって受け止められ、遮水シート50内に貯留される。そして、遮水シート50内の水位が有孔管52の底部を超えると、遮水シート50内の水は、有孔管52の貫通孔を通って有孔管52内に流入する。有孔管52内に流入した水は、有孔管52内を通って余剰水として排水され、第2配管64を介して貯水タンク66に貯留される。つまり、有孔管52の内部空間は、土壌に供給する水を遮水シート50の全長に亘って搬送する給水路として用いられると共に、土壌または遮水シート50内に発生した余剰水を集めて排水する排水路として用いられる。したがって、地下灌漑システム100によれば、雨水を集水して再利用することもできるので、水資源を効率的に利用できる。
次に、図4および図5を参照して、溝状の遮水シート50の端部を封止するためのシート端封止部材10の具体的構成について説明する。この実施例では、遮水シート50の下流側端部および上流側端部のそれぞれに対して、シート端封止部材10が設けられる。
図4および図5に示すように、シート端封止部材10は、外嵌部材(第1嵌部材)12および内嵌部材(第2嵌部材)14を備え、たとえば硬質ポリ塩化ビニル等の合成樹脂によって形成される。
外嵌部材12は、短円筒状に形成される短筒部(第1嵌合部)20と、短筒部20の一方端を封止する円板状の堰部22とを含む。この堰部22は、遮水シート50の軸方向と直交する方向に配置される。短筒部20は、堰部22の周縁部から突出して遮水シート50の軸方向に延び、その内周面は、堰部22側に向かってやや径小となるテーパ状に形成される。ただし、短筒部20の内周面は、軸方向に沿って同径(ストレート)であってもよい。
短筒部20の軸方向長さは、たとえば85mmである。また、この実施例では、短筒部20の内径は、その内周面の周長が遮水シート50の幅方向長さW(図2参照)よりも大きくなるように設定され、たとえば166mmに設定される。つまり、この実施例では、短筒部20の内周面の周長は、たとえば521mmである。これによって、後述のように、短筒部20内に遮水シート50の端部を受容したとき、遮水シート50の端部の側縁50c同士の間に隙間58が形成されるようになる(図6参照)。ただし、この隙間58は必ずしも形成される必要はなく、短筒部20内に受容された遮水シート50の端部が短筒部20の内周面全体を覆うようにしてもよく、また、遮水シート50の側縁50c同士が重ね合わされるようにしてもよい。
このような短筒部20と堰部22とを備える外嵌部材12としては、汎用のVUキャップ等をそのまま利用することができる。
また、外嵌部材12の堰部22の下部には、堰部22を貫通する貫通部22aが形成される。そして、この貫通部22aには、上述の有孔管52と第1配管60または第2配管64とを接続するための接続部24が設けられる。つまり、有孔管52と第1配管60または第2配管64とは、堰部22を貫通するように設けられる接続部24を介して接続される。接続部24は、たとえば、2つの汎用の給水栓用ソケットを組み合わせることで、堰部22の貫通部22aに設けることができる。なお、堰部22に設ける接続部24(貫通部22a)の位置は、適宜変更可能であり、たとえば堰部22の中央部に接続部24を設けることもできる。
内嵌部材14は、外嵌部材12の短筒部20との間で遮水シート50の端部を挟み込んで水密的に固定するために、短筒部20内に嵌め込まれる部材であって、短円筒状に形成される。また、内嵌部材14の一方端部には、軸方向に沿って延びる複数(この実施例では4つ)のスリット14aが形成される。つまり、内嵌部材14の一方端部は、縮径可能となっており、後述のように短筒部20内に内嵌部材14を挿入する際には、内嵌部材14の一方端部は、短筒部20の内周面に沿うように変形(縮径)する。
内嵌部材14の軸方向長さは、たとえば120mmである。また、内嵌部材14の外径は、遮水シート50の厚みを考慮して、短筒部20の内径よりも僅かに小さく設定される。すなわち、内嵌部材14の外径は、外嵌部材12の短筒部20との間で遮水シート50の端部をしっかりと挟み込んで圧縮することが可能な大きさとされる。この実施例では、内嵌部材14の外径は、たとえば165mmに設定される。
このような内嵌部材14は、汎用のVU管を短尺に切断する等した後、のこぎり等でスリット14aを形成することによって製作するとよい。
なお、図示は省略するが、内嵌部材14の先端部外周面には、面取りを施しておくとよい。これによって、内嵌部材14を外嵌部材12の短筒部20内に嵌め込み易くなる。
続いて、図6を参照して、このようなシート端封止部材10を用いて遮水シート50の端部を封止する方法について説明する。なお、遮水シート50の端部をシート端封止部材10によって封止する作業(シート端封止部材10の設置作業)は、たとえば、耕作地102を掘削して遮水シート50を埋設するための掘削溝を作り、その掘削溝内に遮水シート50を上側開口の溝状にして設置した後に行われる。
シート端封止部材10を用いて遮水シート50の端部を封止する際には、先ず、図6(A)に示すように、遮水シート50の先端が外嵌部材12の堰部22に当接するまで、遮水シート50の端部を丸めつつ外嵌部材12の短筒部20内に挿入する。そして、遮水シート50の端部を短筒部20の内周面に沿って湾曲させるようにする。このように短筒部20内に遮水シート50の端部を挿入(受容)すると、短筒部20の内周面の周長が遮水シート50の幅方向長さWよりも大きいことから、図6(B)に示すように、遮水シート50の端部の側縁50c同士の間には、隙間58が形成される。
次に、図6(B)に示すように、遮水シート50内を通るようにして、外嵌部材12の短筒部20内に内嵌部材14を挿入する(嵌め込む)。この際には、遮水シート50の側縁50c間の隙間58を利用して、プラスチックハンマ等の工具で内嵌部材14の後端を叩く等して、外嵌部材12の短筒部20と内嵌部材14との間で遮水シート50の端部を挟み込んで圧縮しつつ、短筒部20内に内嵌部材14を押し込んでいく。短筒部20の内周面は開口側が広くなるようにテーパ状に形成され、かつ内嵌部材14がスリット14aを有するので、短筒部20内に内嵌部材14を挿入し易く、また、内嵌部材14が短筒部20内にきっちりと嵌り込む。
そして、図6(C)に示すように、内嵌部材14の先端が外嵌部材12の堰部22に当接するまで、短筒部20内に内嵌部材14を挿入することにより、遮水シート50の端部がシート端封止部材10によって封止される。これによって、シート端封止部材10の設置作業が終了する。
図7および図8は、シート端封止部材10を用いて遮水シート50の端部を封止した様子を示している。図7および図8に示すように、遮水シート50の端部は、外嵌部材12の堰部22によって封止される(堰き止められる)と共に、外嵌部材12の短筒部20の内周面と内嵌部材14の外周面との間で挟み込まれて水密的に固定される。したがって、遮水シート50の端部は、シート端封止部材10によって適切に封止される。
なお、シート端封止部材10を用いて遮水シート50の端部を封止した後には、外嵌部材12の堰部22に設けられる接続部24の一方端部には、有孔管52が接続され、接続部24の他端部には、第1配管60または第2配管64が接続される。これによって、有孔管52と第1配管60または第2配管64とが通水可能に接続される。
以上のように、この実施例によれば、遮水シート50の端部を外嵌部材12の短筒部20と内嵌部材14とで挟み込むようにして封止するので、柔軟性を有する遮水シート50の端部を適切に封止することができ、遮水シート50の端部からの意に反する水の流出を防止できる。
また、外嵌部材12の短筒部20の内周面の周長を遮水シート50の幅方向長さWよりも大きく設定しているので、短筒部20内に遮水シート50の端部を受容したときに、遮水シート50の端部の側縁50c同士の間には、隙間58が形成される。この隙間58を利用することで、短筒部20内に内嵌部材14を挿入する作業を行い易くなり、延いてはシート端封止部材10を施工し易くなる。
さらに、外嵌部材12の堰部22に接続部24を設けたので、遮水シート50の端部を適切に封止しながらも、遮水シート50の端部において有孔管52と第1配管60または第2配管64とを通水可能に接続できる。
続いて、図9および図10を参照して、この発明の他の実施例であるシート端封止部材10について説明する。図9に示す実施例は、内嵌部材が下部分割体と上部分割体とを含む割り管構造を有する点が、図4に示した上述の実施例と異なる。その他の部分の構成については同様であるので、上述の実施例と共通する部分については、同じ参照番号を付し、重複する説明は省略または簡略化する。
図9に示すように、この実施例のシート端封止部材10が備える内嵌部材(第2嵌部材)14は、軸方向に沿って分離可能な割り管構造を有し、下側に配置される下部分割体30と上側に配置される上部分割体32とを含む。内嵌部材14は、これら下部分割体30と上部分割体32とを組み合わせることで短円筒状に形成される。
このような内嵌部材14は、たとえば、汎用のVU管を短尺に切断した後、形成された短管を軸方向に沿って2つに切断することによって製作するとよい。短管を軸方向に沿って下部分割体30と上部分割体32とに切断する際には、短管の厚み方向(径方向)に切断することが好ましく、また、上部分割体32の中心角(切断角度)αは、30−120度とすることが好ましい。これにより、下部分割体30の側縁(周方向端面)30aが斜め上方向を向くようになるので、下部分割体30と上部分割体32とを組み合わせた際に、下部分割体30によって上部分割体32が適切に支持され、下部分割体30内に上部分割体32が脱落してしまうことが防止される。また、上部分割体32が下部分割体30の側縁30a同士の間隔を周方向に広げようとする力(或いは狭まるのを防ぐ力)が適切に作用する。この実施例では、上部分割体32の中心角αは、たとえば90度である。つまり、上部分割体32の外周面の周方向長さは、たとえば130mmであり、下部分割体30の外周面の周方向長さは、たとえば389mmである。
また、内嵌部材14を割り管構造にして下部分割体30を断面円弧状に形成する、つまり下部分割体30の上部に切欠きを形成することによって、下部分割体30が径方向ないし周方向に弾性を有する(撓む)ようになる。これによって、後述のように、下部分割体30を外嵌部材12の短筒部20内に挿入するとき(図10(B)参照)に、下部分割体30を縮径することができるので、短筒部20内に下部分割体30を容易に挿入できるようになる。
また、上部分割体32の挿入方向における先端部両側の角部には、面取り部34が形成される。上部分割体32に面取り部34を形成しておくことによって、後述のように、下部分割体30の側縁30a同士の間に上部分割体32を挿入するとき(図10(C)参照)に、上部分割体32の挿入抵抗が低減されて作業を行い易くなる。
続いて、図9に示すシート端封止部材10を用いて、遮水シート50の端部を封止する方法について説明する。先ず、図10(A)に示すように、遮水シート50の先端が外嵌部材12の堰部22に当接するまで、遮水シート50の端部を丸めつつ外嵌部材12の短筒部20内に挿入する。
次に、図10(B)に示すように、遮水シート50内を通るようにして、外嵌部材12の短筒部20内に下部分割体30を挿入する。この際には、下部分割体30に対して両側から圧縮力を加えて、下部分割体30を縮径状態にして挿入するとよい。これによって、下部分割体30を短筒部20内に抵抗なく容易に挿入することができる。そして、下部分割体30の先端が外嵌部材12の堰部22に当接するまで短筒部20内に下部分割体30を挿入すると、短筒部20と下部分割体30との間で遮水シート50の端部が仮押えされる。なお、外嵌部材12の短筒部20内に遮水シート50の端部を挿入してから下部分割体30を挿入する代わりに、遮水シート50の端部を巻き付けた状態の下部分割体30を短筒部20内に挿入することもできる。つまり、遮水シート50の端部および下部分割体30を短筒部20内に同時に挿入することもできる。
続いて、図10(C)に示すように、下部分割体30の側縁30a間(切欠き)に上部分割体32を挿入する(嵌め込む)。この際には、遮水シート50の側縁50c間の隙間58を利用して、プラスチックハンマ等の工具で上部分割体32の後端を叩く等して、下部分割体30の切欠き内(短筒部20内)に上部分割体32を押し込んでいく。上部分割体32は、断面円弧状の板状部材であるので、短円筒状の部材を押し込むことと比較して、挿入抵抗が低減されて作業を行い易くなる。また、上部分割体32を挿入する際には、上部分割体32の後端を叩くだけなので、誤って遮水シート50を叩いて破いてしまうこともない。
そして、図10(D)に示すように、上部分割体32の先端が外嵌部材12の堰部22に当接するまで、つまり上部分割体32の後端位置が下部分割体30の後端位置と一致するまで、下部分割体30の切欠き内に上部分割体32を挿入する。下部分割体30の切欠き内に上部分割体32を嵌め込むことによって、下部分割体30が少し拡径されて、外嵌部材12の短筒部20と下部分割体30との間に挟み込まれた遮水シート50が圧縮される。また、下部分割体30の切欠きに嵌め込んだ上部分割体32によって、切欠きが狭まること(下部分割体30の縮径)が防止されて、外嵌部材12の短筒部20と内嵌部材14との間で遮水シート50が圧縮された状態で固定される。これにより、遮水シート50の端部がシート端封止部材10によって適切に封止され、シート端封止部材10の設置作業が終了する。
図9に示す実施例によれば、図4に示す実施例と同様に、遮水シート50の端部を外嵌部材12の短筒部20と内嵌部材14とで挟み込むようにして封止するので、柔軟性を有する遮水シート50の端部を適切に封止することができ、遮水シート50の端部からの意に反する水の流出を防止できる。
また、図9に示す実施例によれば、内嵌部材14を下部分割体30と上部分割体32とを含む割り管構造としたので、シート端封止部材10の設置作業をより簡単かつ適切に行うことができる。
なお、図9に示す実施例では、上部分割体32の先端部両側に面取り部34を形成するようにしたが、面取り部34は必ずしも形成する必要はない。また、面取り部34を形成する代わりに、図11に示すように、上部分割体32の両側縁32aを先端側に向かって幅狭となるテーパ状に形成することもできる。この際には、下部分割体30の側縁30aも同様に、テーパ状に形成される。これによって、面取り部34を形成する場合と同様に、下部分割体30の切欠きに上部分割体32を挿入する作業が容易となる。
また、図9に示す実施例では、下部分割体30の外周面における周方向長さは、遮水シート50の幅方向長さWよりも小さく設定されているが、幅方向長さWよりも大きく設定することもできる。つまり、上部分割体32の周方向長さを、遮水シート50の端部の側縁50c間に形成される隙間58よりも小さく設定することもできる。下部分割体30の周方向長さを遮水シート50の幅方向長さWよりも大きくするためには、たとえば、上述の実施例よりも、外嵌部材12の短筒部20および内嵌部材14の径を大きくしたり、上部分割体32を形成する際の中心角αを小さくしたりするとよい。
下部分割体30の外周面における周方向長さを、遮水シート50の幅方向長さWよりも大きく設定することによって、外嵌部材12の短筒部20内に下部分割体30を挿入したときに、下部分割体30の側縁30aから遮水シート50の側縁50cがはみ出さなくなる。これにより、下部分割体30の切欠きに上部分割体32を挿入するときに、遮水シート50の側縁50cが干渉しなくなるので、上部分割体32を挿入する作業を行い易くなる。
続いて、図12および図13を参照して、この発明のさらに他の実施例であるシート端封止部材10について説明する。図12に示す実施例は、簡単に言うと、内側に嵌め込む部材に堰部が形成される点が上述の実施例と異なる。以下、具体的に説明するが、上述の実施例と共通する部分については、同じ参照番号を付し、重複する説明は省略または簡略化する。
図12に示すように、この実施例のシート端封止部材10は、第1嵌部材70および第2嵌部材72を備え、たとえば硬質ポリ塩化ビニル等の合成樹脂によって形成される。
第1嵌部材70は、短円筒状に形成される第1嵌合部74と、第1嵌合部74の一方端を封止する円板状の堰部76とを含む。この堰部76は、遮水シート50の軸方向と直交する方向に配置され、第1嵌合部74は、堰部76の周縁部から突出して遮水シート50の軸方向に延びる。また、堰部76の下部には、堰部76を貫通する貫通部76aが形成され、この貫通部76aには、上述の有孔管52と第1配管60または第2配管64とを接続するための接続部78が設けられる。
第2嵌部材72は、第1嵌部材70の第1嵌合部74との間で遮水シート50の端部を挟み込んで水密的に固定するために、その内部に第1嵌合部74を受容する部材であって、短円筒状に形成される。第2嵌部材72の内径は、遮水シート50の厚みを考慮して、第1嵌合部74の外径よりも僅かに大きく設定される。すなわち、第2嵌部材72の内径は、第1嵌部材70の第1嵌合部74との間で遮水シート50の端部をしっかりと挟み込むことが可能な大きさとされる。また、この実施例では、第2嵌部材72の内径は、その内周面の周長が遮水シート50の幅方向長さW(図2参照)よりも大きくなるように設定される。これによって、第2嵌部材72内に遮水シート50の端部を受容したとき、遮水シート50の端部の側縁50c同士の間に隙間58が形成されるようになる(図13参照)。
続いて、図12に示すシート端封止部材10を用いて遮水シート50の端部を封止する方法について説明する。先ず、図13(A)に示すように、遮水シート50の先端が第2嵌部材72から少しはみ出す程度まで、遮水シート50の端部を丸めつつ第2嵌部材72内に挿入する。
次に、図13(B)に示すように、遮水シート50内を通るようにして、第2嵌部材72内に第1嵌部材70を挿入する。この際には、遮水シート50の側縁50c間の隙間58を利用して、プラスチックハンマ等の工具で第1嵌部材70の後端を叩く等して、第2嵌部材72内に第1嵌部材70を押し込んでいく。
そして、図13(C)に示すように、第1嵌部材70の堰部76が第2嵌部材72の先端部付近にくるまで、第2嵌部材72内に第1嵌部材70を挿入する。これによって、遮水シート50の端部がシート端封止部材10によって封止され、シート端封止部材10の設置作業が終了する。
図12に示す実施例によれば、図4に示す実施例と同様に、遮水シート50の端部を第1嵌部材70の第1嵌合部74と第2嵌部材72とで挟み込むようにして封止するので、柔軟性を有する遮水シート50の端部を適切に封止することができ、遮水シート50の端部からの意に反する水の流出を防止できる。
また、図12に示す実施例によれば、堰部76を有する第1嵌部材70を第2嵌部材72の内側に配置するので、第1嵌部材70の第1嵌合部74と第2嵌部材72との間に、遮水シート50の端部が適切に挟み込まれているかどうかを確認(目視)し易くなる。したがって、シート端封止部材10の設置不良の発生を防ぐことができる。
なお、図示は省略するが、第1嵌部材70の第1嵌合部74の外周面に対して周方向に延びる環状溝を形成し、その環状溝にOリングを装着しておくこともできる。つまり、遮水シート50の端部を、第1嵌部材70の第1嵌合部74と第2嵌部材72との間で直接挟み込むだけでなく、Oリングを介して挟み込むようにしてもよい。
また、第1嵌合部74に対する堰部76の軸方向位置は、適宜変更可能である。たとえば、図12に示す実施例では、第1嵌合部74の挿入方向における先端部に堰部76を設けているが、第1嵌合部74の中央部や後端部に堰部76を設けることもできる。
続いて、図14および図15を参照して、この発明のさらに他の実施例であるシート端封止部材10について説明する。図14に示す実施例は、簡単に言うと、第2嵌部材に対して第1嵌部材を嵌め込む方向が、図12に示す実施例と異なる。以下、具体的に説明するが、上述の実施例と共通する部分については、同じ参照番号を付し、重複する説明は省略または簡略化する。
図14に示すように、この実施例のシート端封止部材10は、第1嵌部材70および第2嵌部材72を備え、たとえば硬質ポリ塩化ビニル等の合成樹脂によって形成される。
第1嵌部材70は、短円筒状に形成される第1嵌合部74と、第1嵌合部74の一方端を封止する円板状の堰部76とを含む。この堰部76は、遮水シート50の軸方向と直交する方向に配置され、第1嵌合部74は、堰部76の周縁部から突出して遮水シート50の軸方向に延びる。また、堰部76の下部には、堰部76を貫通する貫通部76aが形成され、この貫通部76aには、上述の有孔管52と第1配管60または第2配管64とを接続するための接続部78が設けられる。さらに、第1嵌合部74の他端には、第1嵌合部74の外周面から外方に突出する円環状の鍔部80が形成される。
第2嵌部材72は、第1嵌部材70の第1嵌合部74との間で遮水シート50の端部を挟み込んで水密的に固定するために、その内部に第1嵌合部74を受容する部材であって、短円筒状に形成される。
続いて、図14に示すシート端封止部材10を用いて遮水シート50の端部を封止する方法について説明する。先ず、図15(A)に示すように、遮水シート50の先端が第2嵌部材72から少しはみ出す程度まで、遮水シート50の端部を丸めつつ第2嵌部材72内に挿入する。第2嵌部材72からはみ出した遮水シート50の先端部分については、外側に折り返しておくとよい。これによって、第2嵌部材72内に第1嵌部材70を挿入した際に、第1嵌部材70の第1嵌合部74と第2嵌部材72との間に、遮水シート50の端部が適切に挟み込まれているかどうかを確認し易くなる。
次に、図15(B)に示すように、遮水シート50の挿入方向の逆側から、堰部76を先頭にして、第2嵌部材72内に第1嵌部材70を挿入する。この際には、プラスチックハンマ等の工具で第1嵌部材70の鍔部80叩く等して、第2嵌部材72内に第1嵌部材70を押し込んでいくとよい。
そして、図15(C)に示すように、第1嵌部材70の堰部76が第2嵌部材72に当接するまで、第2嵌部材72内に第1嵌部材70を挿入する。これによって、遮水シート50の端部がシート端封止部材10によって封止され、シート端封止部材10の設置作業が終了する。
図14に示す実施例によれば、図4に示す実施例と同様に、遮水シート50の端部を第1嵌部材70の第1嵌合部74と第2嵌部材72とで挟み込むようにして封止するので、柔軟性を有する遮水シート50の端部を適切に封止することができ、遮水シート50の端部からの意に反する水の流出を防止できる。
また、図14に示す実施例によれば、図12に示す実施例と同様に、第1嵌部材70の第1嵌合部74と第2嵌部材72との間に遮水シート50の端部が適切に挟み込まれているかどうかを確認し易くなり、シート端封止部材10の設置不良の発生を防ぐことができる。
なお、上述の各実施例では、第1嵌部材の第1嵌合部と第2嵌部材とを短円筒状に形成したが、第1嵌部材の第1嵌合部および第2嵌部材は、互いに対応する楕円筒状、矩形筒状および台形筒状などに形成されてもよい。
また、第1嵌部材の第1嵌合部および第2嵌部材は、必ずしも筒状に形成する必要はない。たとえば、第2嵌部材を第1嵌部材の内側に配置する場合には、第2嵌部材は、外方に付勢するばね部材であってもよい。また、たとえば、図16または図18に示す実施例のように、第1嵌部材の第1嵌合部および第2嵌部材は、溝状ないし半筒状に形成されてもよい。以下、図16−図19を参照して説明する。
図16は、この発明のさらに他の実施例であるシート端封止部材10を示す。図16に示す実施例は、簡単に言うと、第2嵌部材が溝状に形成される点、および締め部材を別途用いる点が上述の実施例と異なる。以下、具体的に説明するが、上述の実施例と共通する部分については、同じ参照番号を付し、重複する説明は省略または簡略化する。
図16に示すように、この実施例のシート端封止部材10は、第1嵌部材82、第2嵌部材84および締め部材86を備える。第1嵌部材82および第2嵌部材84は、たとえば硬質ポリ塩化ビニル等の合成樹脂によって形成され、締め部材86は、たとえばステンレス等の金属によって形成される。
第1嵌部材82は、短円筒状に形成される第1嵌合部88と、第1嵌合部88の一方端を封止する円板状の堰部90とを含む。この堰部90は、遮水シート50の軸方向と直交する方向に配置され、第1嵌合部88は、堰部90の周縁部から突出して遮水シート50の軸方向に延びる。また、堰部90の下部には、堰部90を貫通する貫通部90aが形成され、この貫通部90aには、上述の有孔管52と第1配管60または第2配管64とを接続するための接続部92が設けられる。
第2嵌部材84は、第1嵌部材82の第1嵌合部88との間で遮水シート50の端部を挟み込んで水密的に固定するために、その内部に第1嵌合部88を受容する部材である。この実施例では、第2嵌部材84は、上部に切欠きを有する断面円弧状、つまり上側開口の溝状に形成される。
第2嵌部材84の中心角は、180−330度にすることが好ましく、この実施例では、240度に設定されている。このように第2嵌部材84を溝状に形成することによって、第2嵌部材84が径方向ないし周方向に弾性を有する(撓む)ようになる。これにより、後述のように、第1嵌部材82を第2嵌部材84内に挿入するとき(図17(B)参照)に、第2嵌部材84を拡径することができるので、第2嵌部材84内に第1嵌部材82を容易に挿入できるようになる。
また、第2嵌部材84の内径は、遮水シート50の厚みを考慮して、第1嵌部材82の第1嵌合部88の外径よりも僅かに大きく設定される。すなわち、第2嵌部材84の内径は、第1嵌部材82の第1嵌合部88との間で遮水シート50の端部をしっかりと挟み込むことが可能な大きさとされる。
締め部材86は、第2嵌部材84を外部から締め付けることによって、第1嵌部材82の第1嵌合部88と第2嵌部材84との間で遮水シート50の端部を適切に圧縮する、或いは、第1嵌部材82および遮水シート50に対する第2嵌部材84の押圧力が緩むことを防止するための部材である。締め部材86としては、汎用のステンレス製の締めバンド(SUSバンド)等を用いるとよい。
続いて、図16に示すシート端封止部材10を用いて、遮水シート50の端部を封止する方法について説明する。先ず、図17(A)に示すように、遮水シート50の先端が第2嵌部材84から少しはみ出す程度まで、遮水シート50の端部を丸めつつ第2嵌部材84内に挿入する。
次に、図17(B)に示すように、遮水シート50内を通るようにして、第2嵌部材84内に第1嵌部材82を挿入する。この際には、第2嵌部材84の上部の切欠きを両側に広げるようにして、第2嵌部材84を拡径状態にしておくとよい。これによって、第2嵌部材84内に第1嵌部材82を抵抗なく容易に挿入することができる。なお、遮水シート50の端部を第1嵌部材82に巻き付けて、遮水シート50の端部および第1嵌部材82を第2嵌部材84内に同時に挿入することもできる。
そして、図17(C)に示すように、第1嵌部材82の堰部90が第2嵌部材84の先端部付近にくるまで、第2嵌部材84内に第1嵌部材82を挿入する。これによって、第1嵌部材82の第1嵌合部88と第2嵌部材84との間に遮水シート50の端部が挟み込まれる。
その後、図17(D)に示すように、第2嵌部材84の外周面に締め部材86を取り付け、第2嵌部材84を外部から締め付ける。これによって、第2嵌部材84が少し縮径されて、第1嵌部材82の第1嵌合部88と第2嵌部材84との間に挟み込まれた遮水シート50が圧縮される。また、締め部材86を取り付けることによって、第2嵌部材84の上部の切欠きが広がること(第2嵌部材84の拡径)が防止され、第1嵌部材82の第1嵌合部88と第2嵌部材84との間で遮水シート50が圧縮された状態で固定される。これにより、遮水シート50の端部がシート端封止部材10によって適切に封止され、シート端封止部材10の設置作業が終了する。
図16に示す実施例によれば、図4に示す実施例と同様に、遮水シート50の端部を第1嵌部材82の第1嵌合部88と第2嵌部材84とで挟み込むようにして封止するので、柔軟性を有する遮水シート50の端部を適切に封止することができ、遮水シート50の端部からの意に反する水の流出を防止できる。
また、図16に示す実施例によれば、図12に示す実施例と同様に、第1嵌部材82の第1嵌合部88と第2嵌部材84との間に遮水シート50の端部が適切に挟み込まれているかどうかを確認し易くなり、シート端封止部材10の設置不良の発生を防ぐことができる。
さらに、図16に示す実施例によれば、締め部材86を取り付ける作業が別途必要になるが、第2嵌部材84内に第1嵌部材82を抵抗なく容易に挿入することができるので、シート端封止部材10の設置作業を簡単かつ適切に行うことができる。
図18は、この発明のさらに他の実施例であるシート端封止部材10を示す。図18に示す実施例は、簡単に言うと、第1嵌部材が外側に配置される点、および第1嵌部材の第1嵌合部が溝状に形成される点が図16に示す実施例と異なる。以下、具体的に説明するが、上述の実施例と共通する部分については、同じ参照番号を付し、重複する説明は省略または簡略化する。
図18に示すように、この実施例のシート端封止部材10は、第1嵌部材110、第2嵌部材112および締め部材114を備える。
第1嵌部材110は、上部に切欠きを有する断面円弧状、つまり上側開口の溝状に形成される第1嵌合部116と、第1嵌合部116の一方端を封止する円板状の堰部118とを含む。この堰部118は、遮水シート50の軸方向と直交する方向に配置され、第1嵌合部116は、堰部118の周縁部から突出して遮水シート50の軸方向に延びる。このように第1嵌部材110の第1嵌合部116を溝状に形成することによって、第1嵌合部116が径方向ないし周方向に弾性を有する(撓む)ようになる。
また、堰部118の下部には、堰部118を貫通する貫通部118aが形成され、この貫通部118aには、上述の有孔管52と第1配管60または第2配管64とを接続するための接続部120が設けられる。さらに、第1嵌合部116と堰部118との連結部分には、第1嵌合部116の側縁116aから周方向に延びる切込み(スリット)122が形成される。このように切込み122を形成することによって、第1嵌合部116が拡径ないし縮径変形し易くなる。ただし、切込み122は、必ずしも形成する必要はない。
第2嵌部材112は、第1嵌部材110の第1嵌合部116との間で遮水シート50の端部を挟み込んで水密的に固定するために、第1嵌合部116内に嵌め込まれる部材であって、短円筒状に形成される。
締め部材114は、第1嵌部材110の第1嵌合部116を外部から締め付けることによって、第1嵌合部116と第2嵌部材112との間で遮水シート50の端部を適切に圧縮する、或いは、第2嵌部材112および遮水シート50に対する第1嵌合部116の押圧力が緩むことを防止するための部材である。
続いて、図18に示すシート端封止部材10を用いて、遮水シート50の端部を封止する方法について説明する。先ず、図19(A)に示すように、遮水シート50の先端が第1嵌部材110の堰部118に当接するまで、遮水シート50の端部を丸めつつ第1嵌部材110の第1嵌合部116内に挿入する。
次に、図19(B)に示すように、遮水シート50内を通るようにして、第1嵌部材110の第1嵌合部116内に第2嵌部材112を挿入する。この際には、第1嵌合部116が切欠きを有することによって広がり易くなるので、第1嵌合部116内に第2嵌部材112を抵抗なく容易に挿入することができる。なお、遮水シート50の端部を第2嵌部材112に巻き付けて、遮水シート50の端部および第2嵌部材112を第1嵌合部116内に同時に挿入することもできる。
そして、図19(C)に示すように、第2嵌部材112の先端が第1嵌部材110の堰部118に当接するまで、第1嵌合部116内に第2嵌部材112を挿入する。これによって、第1嵌部材110の第1嵌合部116と第2嵌部材112との間に遮水シート50の端部が挟み込まれる。
その後、図19(D)に示すように、第1嵌部材110の第1嵌合部116の外周面に締め部材114を取り付け、第1嵌合部116を外部から締め付ける。これにより、遮水シート50の端部がシート端封止部材10によって適切に封止され、シート端封止部材10の設置作業が終了する。
図18に示す実施例によれば、図4に示す実施例と同様に、遮水シート50の端部を第1嵌部材110の第1嵌合部116と第2嵌部材112とで挟み込むようにして封止するので、柔軟性を有する遮水シート50の端部を適切に封止することができ、遮水シート50の端部からの意に反する水の流出を防止できる。
また、図18に示す実施例によれば、図12に示す実施例と同様に、第1嵌部材110の第1嵌合部116と第2嵌部材112との間に遮水シート50の端部が適切に挟み込まれているかどうかを確認し易くなり、シート端封止部材10の設置不良の発生を防ぐことができる。
さらに、図18に示す実施例によれば、図16に示す実施例と同様に、第1嵌部材110の第1嵌合部116内に第2嵌部材112を抵抗なく容易に挿入することができるので、シート端封止部材10の設置作業を簡単かつ適切に行うことができる。
なお、図16または図18に示す実施例のように締め部材を用いる場合には、第1嵌部材の第1嵌合部と第2嵌部材との間に、遮水シート50の端部と共に溝状のゴム板(図示せず)を挟み込んでおいてもよい。これによって、第1嵌部材の第1嵌合部と第2嵌部材との間に隙間が形成されることなく、遮水シート50の端部をより適切に挟み込んで封止することができる。
また、上述の各実施例では、傾斜地に適用される地下灌漑システムに対してシート端封止部材10を適用するようにしたが、これに限定されない。たとえば、平坦な耕作地(水平地)に適用される地下灌漑システムに対してシート端封止部材10を適用することもできる。
さらに、上述の各実施例では、遮水シートの上流側端部および下流側端部のそれぞれにシート端封止部材10を設けるようにしたが、遮水シートの上流側端部および下流側端部のいずれか一方のみにシート端封止部材10を設けることもできる。たとえば、傾斜地に適用される地下灌漑システムの場合、遮水シートの上流側端部は、下流側端部と比較して水の流出が生じ難いので、シート端封止部材10を設けずにそのまま開放状態としてもよい。
また、水平地に適用されて、下流側に第2配管(排水管)を設けない地下灌漑システムに適用する場合、つまり遮水シートの下流側端部を封止するだけでよい場合には、第1嵌部材の堰部に対して貫通部および接続部を設ける必要はない。つまり、シート端封止部材10は、貫通部および接続部を必ずしも備える必要はない。
また、地下灌漑システムの具体的構成についても上述のものに限定されず、上側開口の溝状に形成されて耕作地の地中に埋設される遮水シートを備え、遮水シート内に保水土壌部を形成する地下灌漑システムであれば、具体的構成を適宜変更した地下灌漑システムに対してシート端封止部材10を適用することもできる。
なお、上で挙げた寸法などの具体的数値は、いずれも単なる一例であり、製品の仕様などの必要に応じて適宜変更可能である。