JP6402472B2 - 車両用駆動制御装置及び車両用駆動制御方法 - Google Patents
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Description
特許文献1に記載されている技術では、モータの界磁電流を、モータの回転数と、モータを駆動するための電力を発電するジェネレータの回転数と、モータ及びジェネレータの温度によって決定する。
その対策となる技術として、例えば、エンジンの回転数が、エンジンの動力を得て発電するジェネレータの発電能力が充分となる回転数以上であると、モータへの供給電力を増加させる技術が考えられる。しかしながら、この技術では、発進時のようにエンジンの回転数が低い状況では、モータへの供給電力が抑制される。このため、主駆動輪が空転する可能性の高い低μ登坂路上や積雪路上での発進時等、モータの最大トルクが要求される発進時の走行性能が低下するという問題が発生するおそれがある。
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたもので、モータの最大トルクが要求される発進時の走行性能低下を抑制することが可能な、車両用駆動制御装置及び車両用駆動制御方法を提供することを目的とする。
これにより、主駆動輪が空転する可能性の高い発進時等、モータの最大トルクが要求される発進時において、モータの最大トルクにより補助駆動輪を駆動させることが可能となり、発進時における走行性能の低下を抑制することが可能となる。
(第一実施形態)
以下、本発明の第一実施形態(以下、本実施形態と記載する)について、図面を参照しつつ説明する。
図1は、本実施形態の車両用駆動制御装置(以降の説明では、「駆動制御装置1」と記載する場合がある)を備える車両Cの概略構成を示すブロック図である。
図1中に示すように、駆動制御装置1を備える車両Cは、エンジン2と、バッテリ4と、電動モータ6(モータ)と、アクセル操作量センサ8と、エンジンコントローラ10を備える。これに加え、駆動制御装置1を備える車両Cは、ジェネレータ12(発電機)と、4WDコントローラ14と、車輪速センサ16と、路面勾配センサ18と、VDC選択スイッチ20を備える。
また、エンジン2には、エンジン2の回転数(エンジン回転数Ne)を4WDコントローラ14でモニタするための、エンジン回転センサ(図示せず)を取り付ける。
オルタネータ28は、エンジン2からVベルト26を介して伝達された動力によって、発電を行う。
電動モータ6は、例えば、界磁巻線式のモータを用いて形成する。
また、電動モータ6は、発生させる駆動力を、減速機30、電磁クラッチ32及びディファレンシャルギヤ24bを順に介して、左後輪WRL及び右後輪WRRに伝達する。
また、電動モータ6には、電動モータ6の回転数(モータ回転数Nm)を4WDコントローラ14でモニタするための、モータ回転センサ(図示せず)を取り付ける。さらに、電動モータ6には、電動モータ6の温度(モータ温度)を4WDコントローラ14でモニタするための、サーミスタ(図示せず)を取り付ける。
アクセル操作量センサ8は、例えば、ペダルストロークセンサを用いて形成した、運転者によるアクセルペダル34(アクセル操作子)の踏み込み操作量を検出するセンサである。なお、アクセルペダル34は、車両Cの運転者が駆動力要求に応じて踏込むペダルである。
なお、アクセル操作量センサ8の構成は、ペダルストロークセンサを用いて形成した構成に限定するものではない。
また、エンジンコントローラ10は、アクセル操作量センサ8が検出したアクセル開度Accに応じて、スロットルバルブ36に連結されたスロットルモータ38の回転角を調整する。これにより、エンジンコントローラ10は、エンジン2の出力を制御する。
また、パワーケーブル40の途中には、ジャンクションボックス44を設ける。
ジャンクションボックス44は、メインリレーと、電流センサ及び電圧検出回路を内蔵する。
電流センサ及び電圧検出回路は、通電電流Ia、ジェネレータ電圧Vg及びモータ誘起電圧Vmを、4WDコントローラ14でモニタするための構成である。
4WDコントローラ14は、エンジンコントローラ10と同様、マイクロコンピュータで構成する。
また、4WDコントローラ14は、電動モータ6の界磁電流Imを調整する。これにより、4WDコントローラ14は、バッテリ4から電動モータ6へ供給する界磁電流Imを制御して、電動モータ6の出力を制御する。
ここで、ICレギュレータの回路電源には、車両Cが備える14Vバッテリ(図示せず)を用いてもよい。この場合、ジェネレータ12の出力電圧Vgがバッテリ電圧Vb未満のときに、14Vバッテリのバッテリ電圧Vbを用い、出力電圧Vgが14Vバッテリのバッテリ電圧Vb以上のときに、出力電圧Vgを用いるようにしてもよい。また、常時、14Vバッテリのバッテリ電圧Vbを用いるようにしてもよい。
なお、4WDコントローラ14の具体的な構成の説明は、後述する。
車輪速センサ16は、車輪Wの回転速度を検出し、検出した回転速度を含む情報信号(以降の説明では、「車輪速信号」と記載する場合がある)を、4WDコントローラ14へ出力する。
また、以降の説明では、右前輪WFRの回転速度を右前輪速VwFRと示し、左前輪WFLの回転速度を左前輪速VwFLと示す場合がある。同様に、右後輪WRRの回転速度を右後輪速VwRRと示し、左後輪WRLの回転速度を左後輪速VwRLと示す場合がある。また、以降の説明において、各車輪W及び各車輪速センサ16を、上記のように示す場合がある。
VDC選択スイッチ20は、VDC制御の「ON」または「OFF」を、運転者の操作により切り替えるスイッチである。また、VDC選択スイッチ20は、VDC制御が「ON」または「OFF」である状態を含む情報信号(以降の説明では、「VDC制御状態信号」と記載する場合がある)を、4WDコントローラ14へ出力する。なお、VDCとは、「Vehicle Dynamics Control」の略称であり、車輪Wに発生させる制動力や駆動力により、車両Cの横滑りを抑制する制御である。
以上により、駆動制御装置1を備える車両Cは、左前輪WFL及び右前輪WFRを、エンジン2(内燃機関)で駆動する主駆動輪とし、左後輪WRL及び右後輪WRRを、電動モータ6(電動機)で駆動可能な補助駆動輪とする車両である。すなわち、駆動制御装置1を備える車両Cは、所謂、スタンバイ型の四輪駆動車両である。
次に、図1を参照しつつ、図2から図8を用いて、4WDコントローラ14の具体的な構成について説明する。
図2は、4WDコントローラ14の具体的な構成を示すブロック図である。
図2中に示すように、4WDコントローラ14は、目標モータトルク演算部14Aと、モータ必要電力演算部14Bと、発電制御部14Cと、発進時補助駆動判定部14Dと、モータ制御部14Eを備える。
なお、メインリレー及び電磁クラッチ32の制御については、その詳細な説明を省略するが、4WDコントローラ14は、電動モータ6を駆動制御する際、メインリレーへのリレー制御指令を出力して、電動モータ6への電力供給をON状態に制御する。これに加え、電磁クラッチ32へのクラッチ制御指令を出力して、電磁クラッチ32を締結状態に制御する。
以下、図1及び図2を参照しつつ、図3を用いて、目標モータトルク演算部14Aの構成について説明する。
図3は、目標モータトルク演算部14Aのブロック図である。
目標モータトルク演算部14Aは、スリップ速度算出部46と、第一モータトルク算出部48と、車速算出部50と、第二モータトルク算出部52と、目標モータトルク算出部54を備える。
スリップ速度算出部46は、左前輪WFL及び右前輪WFRのスリップ速度ΔVFを算出する。
ここで、スリップ速度ΔVFは、例えば、以下の式(1)に示すように、左前輪WFL及び右前輪WFRの平均車輪速から、左後輪WRL及び右後輪WRRの平均車輪速を減じて算出する。
ΔVF=(VwFL+VwFR)/2−(VwRL+VwRR)/2 … (1)
車速算出部50は、各車輪速VwFL〜VwRRのセレクトローした値と、車両の総駆動力Fに応じて、車速Vを算出する。ここで、総駆動力Fは、トルクコンバータ滑り比から推定される前輪WFの駆動力と、目標モータトルクTm*から推定される後輪WRの駆動力との和によって求める。
目標モータトルク算出部54は、第一モータトルクTm1と第二モータトルクTm2とのセレクトハイした値を、右後輪速VwRR、左後輪速VwRL及び車速Vに基づいて、後輪WRの加速スリップを抑制する値まで制限する。これにより、最終的な目標モータトルクTm*を算出する。なお、後輪WRの加速スリップを抑制する値まで制限する処理としては、例えば、公知のトラクションコントロールを用いる。
以下、図1から図3を参照して、モータ必要電力演算部14Bの構成について説明する。
モータ必要電力演算部14Bは、電動モータ6に必要とされるモータ必要電力Pm*を、以下の式(2)を用いて算出する。すなわち、電動モータ6に必要とされるモータ必要電力Pm*を、目標モータトルクTm*とモータ回転数Nmに応じて算出する。
Pm*=Tm*×Nm … (2)
以下、図1から図3を参照しつつ、図4及び図5を用いて、発電制御部14Cの構成について説明する。
図4は、発電制御部14Cのブロック図である。
図4中に示すように、発電制御部14Cは、初期目標電力算出部56と、制限値算出部58と、最終目標電力算出部60と、制御処理部62を備える。
初期目標電力算出部56は、ジェネレータ12が出力すべき目標電力Pg*を、以下の式(3)を用い、モータ必要電力Pm*とモータ効率ηmに応じて算出する。
Pg*=Pm*/ηm … (3)
ここで、制限値PL1は、Vベルト26のベルトスリップを抑制可能な上限値であり、以下の式(4)で示すように、Vベルト26が伝達可能なトルク上限値TL、ジェネレータ回転数Ng、ジェネレータ効率ηgに応じて算出する。
PL1=TL×Ng×ηg … (4)
最終目標電力算出部60は、目標電力Pg*と制限値PL1及び制限値PL2とのセレクトローした値を、最終的な目標電力Pg*として算出する。
制御処理部62は、ジェネレータ12で目標電力Pg*が出力されるように、ジェネレータ12の界磁電流Igを制御する。なお、制御処理部62の具体的な構成は、後述する。
図5中に示すように、制御処理部62は、出力電力算出部62aと、目標界磁電流算出部62bと、界磁電流制御部62cを備える。
出力電力算出部62aは、ジェネレータ電圧Vgと通電電流Iaを乗算して、実際の出力電力Pg(=Vg×Ia)を算出する。
界磁電流制御部62cは、実際の界磁電流Igと目標界磁電流Ig*との偏差ΔIgが0となるように、ロータコイル12aに流れる界磁電流Igを、ICレギュレータを介して制御する。なお、実際の界磁電流Igは、電流センサによって検出する。
以上により、制御処理部62は、目標電力Pg*と実際の出力電力Pgとが一致するように、フィードバック制御によって界磁電流Igを制御する。
以下、図1から図5を参照しつつ、図6及び図7を用いて、発進時補助駆動判定部14Dの構成について説明する。
図6は、発進時補助駆動判定部14Dのブロック図である。
図6中に示すように、発進時補助駆動判定部14Dは、路面勾配判定部64と、横滑り抑制制御禁止判定部66と、アクセル操作子操作量判定部68と、モータ供給電力指令出力部70を備える。
路面勾配判定部64は、路面勾配センサ18から入力を受けた路面勾配信号が含む走行路面の勾配が、登り勾配(走行路面が上り坂)であるか否かを判定する。さらに、路面勾配判定部64は、路面勾配信号が含む走行路面の勾配と、予め設定した第一登り勾配閾値及び第二登り勾配閾値を比較する。
ここで、第一登り勾配閾値は、停車中の車両Cが発進する際に、電動モータ6の最大トルクにより補助駆動輪を駆動させるための判定に用いる値であり、走行路面の登り勾配が、主駆動輪の駆動のみでは車両Cを発進させることが困難である状態を反映する。また、第一登り勾配閾値は、例えば、車両Cの重量や、主駆動輪を駆動させるためにエンジン2が出力可能なトルク等に応じて設定する。なお、本実施形態では、一例として、第一登り勾配閾値を、走行路面の登り勾配に換算して15[%]と設定する場合について説明する。
横滑り抑制制御禁止判定部66は、VDC選択スイッチ20から入力を受けたVDC制御状態信号が含むVDC制御の状態を判定する。そして、判定結果を含む情報信号(以降の説明では、「VDC制御状態判定結果信号」と記載する場合がある)を、モータ供給電力指令出力部70へ出力する。
ここで、補助駆動力発生閾値は、停車中の車両Cが発進する際に、電動モータ6の最大トルクにより補助駆動輪を駆動させるための判定に用いる値であり、走行路面の路面μが、主駆動輪の駆動のみでは車両Cを発進させることが困難な値である状態を反映する。また、補助駆動力発生閾値は、例えば、車両Cの重量や、主駆動輪を駆動させるためにエンジン2が出力可能なトルク等に応じて設定する。
具体的には、以下に示す比較結果や判定結果(A)〜(D)に応じて、4WDコントローラ14から電動モータ6への供給電力を算出する。
(B).勾配比較結果信号が、路面勾配信号が含む走行路面の勾配が、第二登り勾配閾値以上第一登り勾配閾値未満の範囲内であるとの比較結果を含む場合。この場合、車両Cの発進時において、走行路面の勾配の傾斜度合いに応じた値となるように、4WDコントローラ14から電動モータ6への供給電力を算出する。
ここで、走行路面の勾配の傾斜度合いに応じた値となるように供給電力を算出する際には、路面勾配信号が含む走行路面の勾配を、予め記憶しているマップであり、図7中に示す路面勾配‐電流指令値マップに入力する。これにより、第二登り勾配閾値B2以上第一登り勾配閾値B1未満の範囲内において、走行路面の勾配の傾斜度合いに応じた供給電力を算出する。
また、発進時補助駆動判定部14Dは、電動モータ6の最大トルクによる補助駆動輪の駆動が必要であると判定する。この判定は、横滑り抑制制御禁止判定部66がVDC制御の禁止が選択されていると判定し、且つアクセル操作量センサ8が検出したアクセル開度Accが補助駆動力発生閾値以上であると行う。
また、モータ供給電力指令出力部70は、車両Cの発進時に、路面勾配センサ18が検出した走行路面の勾配の傾斜度合いに応じた値に、4WDコントローラ14からの電動モータ6への供給電力を制御する。この制御は、路面勾配センサ18が検出した走行路面の勾配が登り勾配であり、且つ第二登り勾配閾値B2以上第一登り勾配閾値B1未満の範囲内であると行う。
以下、図1から図7を参照しつつ、図8を用いて、モータ制御部14Eの構成について説明する。
図8は、モータ制御部14Eのブロック図である。
図8中に示すように、モータ制御部14Eでは、目標モータトルクTm*とモータ回転数Nmとに応じて公知のベクトル制御を行う。
また、モータ制御部14Eは、電動モータ6へ界磁電流を供給するための電流駆動ドライバ15を有する。
電流駆動ドライバ15は、発進時補助駆動判定部14Dから入力を受けた供給電力指令値に応じて、4WDコントローラ14から電動モータ6へ供給する界磁電流Imを調整する。これにより、モータ制御部14Eは、4WDコントローラ14から電動モータ6へ供給する界磁電流Imを制御して、4WDコントローラ14からの電動モータ6への供給電力を制御する。
次に、図1から図8を参照しつつ、図9及び図10を用いて、本実施形態の駆動制御装置1を用いて行なう動作の一例を説明する。
図9は、本実施形態の駆動制御装置1を用いて行なう動作のフローチャートである。
図9中に示すように、駆動制御装置1が処理を開始(START)すると、まず、ステップS100において、路面勾配判定部64により、走行路面の勾配が登り勾配であるか否かを判定する処理(図中に示す「登り勾配」)を行なう。
ステップS100において、走行路面の勾配が登り勾配である(図中に示す「Yes」)と判定した場合、駆動制御装置1が行なう処理は、ステップS102へ移行する。
ステップS102では、路面勾配判定部64により、登り勾配である走行路面の勾配が、第一登り勾配閾値B1以上であるか否かを判定する処理(図中に示す「第一登り勾配閾値B1以上」)を行なう。
一方、ステップS102において、登り勾配である走行路面の勾配が、第一登り勾配閾値B1未満である(図中に示す「No」)と判定した場合、駆動制御装置1が行なう処理は、ステップS106へ移行する。
ステップS106では、路面勾配判定部64により、登り勾配である走行路面の勾配が、第二登り勾配閾値B2以上であるか否かを判定する処理(図中に示す「第二登り勾配閾値B2以上」)を行なう。
一方、ステップS106において、登り勾配である走行路面の勾配が、第二登り勾配閾値B2未満である(図中に示す「No」)と判定した場合、駆動制御装置1が行なう処理は、ステップS114へ移行する。
ステップS110では、路面勾配判定部64により、VDC制御の状態が「OFF」であるとともに、アクセル開度Accが補助駆動力発生閾値以上であるか否かを判定する処理(図中に示す「VDC制御OFF及び補助駆動力発生閾値以上」)を行なう。
一方、ステップS110において、以下の条件(X)及び(Y)のうち少なくとも一方が成立する(図中に示す「No」)と判定した場合、駆動制御装置1が行なう処理は、ステップS114へ移行する。
条件(X).VDC制御の状態が「OFF」ではない条件
条件(Y).アクセル開度Accが補助駆動力発生閾値未満である条件
ステップS114では、モータ制御部14Eにより、バッテリ4の電圧低下が発生しない界磁電流となるように算出した供給電力指令値に応じて、電動モータ6の界磁電流Imを調整する処理(図中に示す「電圧低下を発生させない界磁電流」)を行なう。ステップS114において、バッテリ4の電圧低下が発生しないように、電動モータ6の界磁電流Imを調整する処理を行うと、駆動制御装置1が行なう処理は、ステップS116へ移行する。
ここで、モータ用閾値MCは、モータ回転数Nmのうち、モータトルクが最大値を維持する領域の中で、最も大きなモータ回転数Nmに相当する値である。
一方、ステップS116において、モータ回転数Nmがモータ用閾値MC以下である(図中に示す「No」)と判定した場合、駆動制御装置1が行なう処理は、ステップS120へ移行する。
ステップS118において、モータ回転数Nmが大きいほど界磁電流Imを小さくする処理を行うと、駆動制御装置1が行なう処理は、ステップS100の処理へ復帰(RETURN)する。
ここで、エンジン用閾値EAは、電動モータ6の界磁電流Imを増加させてもバッテリ4の電圧低下が生じないほど、オルタネータ28で充分な電力を発電できるようなエンジン回転数Neに相当する値である。
一方、ステップS120において、エンジン回転数Neがエンジン用閾値EA以上である(図中に示す「No」)と判定した場合、駆動制御装置1が行なう処理は、ステップS122へ移行する。
ステップS122において、車両Cの加速性能を向上可能な界磁電流Imを調整する処理を行うと、駆動制御装置1が行なう処理は、ステップS100の処理へ復帰(RETURN)する。
以下、図1から図9を参照しつつ、図10を用いて、ステップS118及びステップS122で行う具体的な処理について説明する。
図10(a)は、モータ回転数Nmと界磁電流Imとの関係を示す図であり、図10(b)は、モータ回転数NmとモータトルクTmとの関係を示す図である。
ここで、モータ回転数Nmと界磁電流Imとの関係は、モータ回転数NmとモータトルクTmとの関係に対応する。すなわち、モータ回転数Nmが低いほど、界磁電流Imを大きくし、モータ回転数Nmが0からモータ用閾値MCの間の領域であるモータ最大トルク領域にある状態では、界磁電流Imが、第二登り勾配閾値B2に応じた値(図7参照)を維持する。
一方、エンジン回転数Neがエンジン用閾値EAを超える場合、界磁電流Imが、第二登り勾配閾値B2に応じた値(図7参照)よりも大きな値であり、第一登り勾配閾値B1に応じた値(図7参照)を維持する。
以上により、ステップS122では、エンジン回転数Neがエンジン用閾値EA未満であるため、界磁電流Imの上限値を条件付で増加(B2→B1)させて、車両Cの加速性能を向上可能な界磁電流Imを調整する処理を行う。
次に、図1から図10を参照しつつ、図11及び図12を用いて、本実施形態の作用について説明する。
図11及び図12は、本実施形態の駆動制御装置1を備える車両Cの動作を示すタイムチャートである。具体的には、図11は、上記のステップS106において、登り勾配である走行路面の勾配が、第二登り勾配閾値B2未満であると判定した場合の、車両Cの動作を示すタイムチャートである。また、図12は、上記のステップS102において、登り勾配である走行路面の勾配が、第一登り勾配閾値B1以上であると判定した場合の、車両Cの動作を示すタイムチャートである。
登り勾配である走行路面の勾配が、第二登り勾配閾値B2未満であると判定した場合には、車両Cを発進させた時点t1において、界磁電流Imの上限値を、第二登り勾配閾値B2に応じた値に設定する。これにより、時点t1以降は、電動モータ6へ供給する界磁電流Imが、第二登り勾配閾値B2に応じた値へ向けて増加する。なお、車両Cを発進させた時点t1とは、例えば、アクセル開度Accが「0」を超えた時点である。
時点t2以降に増加した、電動モータ6へ供給する界磁電流Imが第一登り勾配閾値B1に応じた値に達すると、この時点t3から、最大トルクを発生させるような界磁電流Imの供給を受けた電動モータ6により、補助駆動輪の駆動を開始する。
登り勾配である走行路面の勾配が、第一登り勾配閾値B1以上であると判定した場合、車両Cを発進させた時点t5において、エンジン回転数Neがエンジン用閾値EAに達していなくとも、界磁電流Imの上限値を、第一登り勾配閾値B1に応じた値に設定する。これにより、時点t5において、界磁電流Imの上限値を、電動モータ6の最大トルクにより補助駆動輪を駆動させるように算出した供給電力指令値に応じた値に設定する。したがって、時点t5では、車両Cを発進させるとともに、電動モータ6へ供給する界磁電流Imが、第一登り勾配閾値B1に応じた値へ向けて増加する。
そして、補助駆動輪が駆動した時点t7から、補助駆動輪の回転速度(後輪速)が「0」を超えて増加し、補助駆動輪が発生する駆動力により、主駆動輪の駆動を補助して、主駆動輪の空転を抑制する。これにより、主駆動輪が空転する発進時において、電動モータ6の最大トルクにより補助駆動輪を駆動させて、発進時における走行性能の低下を抑制する。
また、上記のステップS110において、上記の条件(X)及び(Y)のうち少なくとも一方が成立すると判定した場合の車両Cの動作は、図11中に示すものと同様のタイムチャートで示される。
また、上述した路面勾配センサ18は、路面勾配検出部に対応する。
また、上述したアクセル操作量センサ8は、アクセル操作子操作量検出部に対応する。
また、上述したように、本実施形態の駆動制御装置1の動作で実施する駆動力制御方法では、車両Cの発進時に、4WDコントローラ14から電動モータ6へ供給する界磁電流Imを、電動モータ6が最大トルクを出力可能な値に制御する。この制御は、車両Cの発進に、電動モータ6の最大トルクによる補助駆動輪の駆動が必要であると判定すると行う。
本実施形態の駆動制御装置1であれば、以下に記載する効果を奏することが可能となる。
(1)モータ供給電力指令出力部70及びモータ制御部14Eが、車両Cの発進時に、4WDコントローラ14から電動モータ6へ供給する界磁電流Imを、電動モータ6が最大トルクを出力可能な値に制御する。この制御は、発進時補助駆動判定部14Dが、車両Cの発進に、電動モータ6の最大トルクによる補助駆動輪の駆動が必要であると判定すると行う。
その結果、駆動源としてエンジン2のみを備えた車両と比較して車重が重い、駆動源としてエンジン2及び電動モータ6を備えた車両Cであっても、主駆動輪が空転する可能性の高い発進時における、走行性能の低下を抑制することが可能となる。また、車両Cの発進に、電動モータ6の最大トルクによる補助駆動輪の駆動が必要ではないと判定すると、電動モータ6への供給電流を抑制することが可能となる。
このため、路面勾配が大きく、車両Cの発進時に主駆動輪が空転する可能性が高い低μ登坂路上での発進時において、電動モータ6の最大トルクにより、補助駆動輪を駆動させることが可能となる。
その結果、主駆動輪が空転する可能性の高い、路面勾配が大きな路面上での発進時における、走行性能の低下を抑制することが可能となる。また、路面勾配が小さく、電動モータ6の最大トルクによる補助駆動輪の駆動が必要ではないと判定すると、電動モータ6への供給電流を抑制することが可能となる。
このため、車両Cの発進時に電動モータ6の最大トルクによる補助駆動輪の駆動が必要無い場合であっても、走行路面の勾配の傾斜度合いに応じて、補助駆動輪を駆動させるために電動モータ6が発生させるトルクを制御することが可能となる。
その結果、走行路面の勾配の傾斜度合いに応じて、補助駆動輪を駆動させるために電動モータ6が発生させるトルクを、適切に制御することが可能となる。また、路面勾配に応じて電動モータ6への供給電流を抑制することが可能となる。
このため、車両Cの運転者がVDC制御の禁止を選択し、さらに、アクセル開度Accが大きい状態において、電動モータ6の最大トルクにより、補助駆動輪を駆動させることが可能となる。なお、車両Cの運転者がVDC制御の禁止を選択し、さらに、アクセル開度Accが大きい状態は、例えば、深雪路等で主駆動輪が空転して車両Cが移動できない状態(スタック)に相当する。
その結果、主駆動輪が空転して車両Cが移動できない状態での発進時における、走行性能の低下を抑制することが可能となる。
このため、主駆動輪が空転する可能性の高い低μ登坂路上や積雪路上での発進時等、電動モータ6の最大トルクが要求される発進時において、電動モータ6の最大トルクにより、補助駆動輪を駆動させることが可能となる。
その結果、駆動源としてエンジン2のみを備えた車両と比較して車重が重い、駆動源としてエンジン2及び電動モータ6を備えた車両Cであっても、主駆動輪が空転する可能性の高い発進時における、走行性能の低下を抑制することが可能となる。また、車両Cの発進に、電動モータ6の最大トルクによる補助駆動輪の駆動が必要ではないと判定すると、電動モータ6への供給電流を抑制することが可能となる。
2 エンジン
4 バッテリ
6 電動モータ(モータ)
8 アクセル操作量センサ
12 ジェネレータ(発電機)
14 4WDコントローラ
14A 目標モータトルク演算部
14B モータ必要電力演算部
14C 発電制御部
14D 発進時補助駆動判定部
14E モータ制御部
15 電流駆動ドライバ
16 車輪速センサ
18 路面勾配センサ
20 VDC選択スイッチ
26 Vベルト
28 オルタネータ(発電機)
34 アクセルペダル
46 スリップ速度算出部
48 第一モータトルク算出部
50 車速算出部
52 第二モータトルク算出部
54 目標モータトルク算出部
56 初期目標電力算出部
58 制限値算出部
60 最終目標電力算出部
62 制御処理部
62a 出力電力算出部
62b 目標界磁電流算出部
62c 界磁電流制御部
64 路面勾配判定部
66 横滑り抑制制御禁止判定部
68 アクセル操作子操作量判定部
70 モータ供給電力指令出力部
C 車両
WF 前輪(主駆動輪)
WR 後輪(補助駆動輪)
Claims (5)
- 車両の主駆動輪を駆動するエンジンと、前記車両の補助駆動輪を駆動するモータと、前記エンジンの動力を得て発電する発電機と、前記モータへ界磁電流を供給するための電流駆動ドライバを有する4WDコントローラと、前記車両の発進に前記モータの最大トルクによる前記補助駆動輪の駆動が必要であるか否かを判定する発進時補助駆動判定部と、前記4WDコントローラから前記モータへ供給する界磁電流を制御するモータ界磁電流制御部と、前記モータへ前記界磁電流を供給するとともに前記発電機が発電した電力を充電するバッテリと、を備え、
前記モータ界磁電流制御部は、前記発進時補助駆動判定部が前記最大トルクによる前記補助駆動輪の駆動が必要であり、且つ前記エンジンの回転数が前記界磁電流を増加させても前記バッテリの電圧低下が生じないエンジン回転数閾値よりも大きいと判定すると、前記車両の発進時に、前記モータが前記最大トルクを出力可能な値に前記界磁電流を制御することを特徴とする車両用駆動制御装置。 - 前記車両の発進時における走行路面の勾配を検出する路面勾配検出部を備え、
前記発進時補助駆動判定部は、前記路面勾配検出部が検出した勾配が登り勾配であり、
且つ予め設定した第一登り勾配閾値以上であると、前記最大トルクによる前記補助駆動輪の駆動が必要であると判定することを特徴とする請求項1に記載した車両用駆動制御装置。 - 前記モータ界磁電流制御部は、前記路面勾配検出部が検出した勾配が登り勾配であり、且つ予め設定した第二登り勾配閾値以上前記第一登り勾配閾値未満の範囲内であると、前記車両の発進時に、前記路面勾配検出部が検出した勾配の傾斜度合いに応じた値に前記界磁電流を制御することを特徴とする請求項2に記載した車両用駆動制御装置。
- 前記車両の横滑りを抑制する制御の禁止が車両の運転者により選択されているか否かを判定する横滑り抑制制御禁止判定部と、前記運転者によるアクセル操作子の操作量を検出するアクセル操作子操作量検出部と、を備え、
前記発進時補助駆動判定部は、前記横滑り抑制制御禁止判定部が前記運転者により前記横滑りを抑制する制御の禁止が選択されていると判定し、且つ前記アクセル操作子操作量検出部が検出した操作量が予め設定した補助駆動力発生閾値以上であると、前記最大トルクによる前記補助駆動輪の駆動が必要であると判定することを特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれか1項に記載した車両用駆動制御装置。 - 車両の発進に前記車両の補助駆動輪を駆動するモータの最大トルクによる前記補助駆動輪の駆動が必要であり、且つ前記車両の主駆動輪を駆動するエンジンの回転数が前記モータへ供給する界磁電流を増加させても前記モータへ前記界磁電流を供給するとともに前記エンジンの動力を得て発電する発電機が発電した電力を充電するバッテリの電圧低下が生じないエンジン回転数閾値よりも大きいと判定すると、
前記車両の発進時に、前記モータへ界磁電流を供給するための電流駆動ドライバを有する4WDコントローラからモータへ供給する界磁電流を、前記モータが前記最大トルクを出力可能な値に制御することを特徴とする車両用駆動制御方法。
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