JP6399294B2 - エーテルリン脂質の定量方法 - Google Patents

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Description

この発明は、血清又は血漿中のエーテルリン脂質の量を測定する方法、すなわち、エーテルリン脂質の定量方法に関するものである。
より詳しくは、蒸発光散乱検出器(ELSD)を用いて、血清又は血漿中のエーテルリン脂質の量を高い精度で簡便に測定する方法、およびこの方法を使用する検査方法、疾患検出用バイオマーカーと、この疾患検出用バイオマーカーの使用方法ならびに検出用キットに関する。
ヒトなどの哺乳動物の生体内に存在するグリセロリン脂質には、グリセロール骨格のsn−1位にエステル結合を有するリン脂質(ジアシルリン脂質)と、sn−1位にエーテル結合を有するリン脂質(エーテルリン脂質)が存在する。
さらに、エーテルリン脂質には2つの型が存在し、sn−1位にエーテル結合を有するもの(アルキルアシルリン脂質)と、ビニルエーテル結合を有するもの(アルケニルアシルリン脂質)が存在する。
前記ビニルエーテル結合を有するもの(アルケニルアシルリン脂質)は、プラズマローゲンとも呼ばれている。
以下に、プラズマローゲンの一般式を示す。
前記式中、RおよびRは脂肪族炭化水素基を示す。
は、通常、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基で、例えば、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、イコサニル基などが挙げられる。
は、通常、脂肪酸残基由来の脂肪族炭化水素基で、例えば、オクタデカジエノイル基、オクタデカトリエノイル基、イコサレトラエノイル基、イコサペンタエノイル基、ドコサテトラエノイル基、ドコサペンタエノイル基、ドコサヘキサエノイル基などが挙げられる。
なお、前記式中、Xは極性基を示す。
Xは、好ましくは、エタノールアミン、コリン、セリン、イノシトール又はグリセロールである。〕
ヒトなどの哺乳動物においては、エーテルリン脂質は、エタノールアミンを有するものとコリンを有するものが殆どで、セリンやイノシトールを有するものは僅かである。
さらに、生体では、エーテルリン脂質は、他のリン脂質とともに生体膜(細胞膜)の構成成分である。
プラズマローゲンなどのエーテルリン脂質の量は、赤血球サンプルを用いて測定することが多い(例えば、特許文献1参照)。
最近、認知症、アルツハイマー病などの重篤な疾患において、血清中のプラズマローゲ
ンの量が低いことを示唆する報告がなされた(例えば、非特許文献1参照)。
さらに、糖尿病や動脈硬化などの代謝症候群および他の慢性疾患において、血清中のプ
ラズマローゲンの量が低下していることも示唆されている。
国際公開第2012/090625号(請求の範囲)
Goodenowe,D.B.ら,J.Lipid Res.,4 8巻,2007年,2485〜2498頁
ヒトの血清や血漿中のリン脂質は、リンの量から計算して、主としてコリンリン脂質が約68%、スフィンゴミエリンが約20%、およびリゾ型コリンリン脂質が約8%であって、エタノールアミンリン脂質は約2〜3%に過ぎない。
さらに、血清および血漿は細胞膜ではないため、エーテルリン脂質は赤血球や白血球と比べて極めて少ない。
したがって、血清や血漿中のエーテルリン脂質の量を、測定することは困難であった。
最近では、血清や血漿中のエーテルリン脂質の量の測定方法として、
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)と、マススペクトロメトリーを組み合わせた測定法(LC/MC)が使用されている。
さらに、放射性ヨウ素を、ビニルエーテル結合部位に反応させてからHPLCで各エーテルリン脂質を分画し、ガンマーカウンター(γ−counter)で放射性活性を測定する方法がある。
しかしながら、前記マススペクトロメトリー機器およびガンマーカウンター機器は高価であるので、一般の臨床検査などには向かないものである。
この発明はかかる現状に鑑み、血清や血漿中のエーテルリン脂質の量を、簡便に、しかも安価に測定する方法を提供することを目的として検討を行なった。
その結果、特定の処理をした血清や血漿サンプルを用いた場合に、HPLCの一般的な検出器である蒸発光散乱検出器(ELSD)によって、血清や血漿中のエーテルリン脂質の量を、高い精度で簡便に、しかも安価に測定することができることを見出して、この発明を完成させたものである。
すなわち、この発明の請求項1に記載の発明は、
血清又は血漿サンプル中に含まれるエーテルリン脂質を定量する方法であって、
イ.被験体の血清又は血漿を、ホスホリパーゼA1(PLA1)を用いて加水分解処理した後、脂質抽出処理して血清又は血漿の脂質サンプルを得る工程;
並びに、
ロ.前記工程イ.で得られた血清又は血漿の脂質サンプルを、蒸発光散乱検出器(ELSD)を備える高速液体クロマトグラフィーに付す工程
を含むこと
を特徴とするエーテルリン脂質の定量方法である。
この発明の請求項2に記載の発明は、
請求項1に記載のエーテルリン脂質の定量方法において、
前記高速液体クロマトグラフィーは、
順相カラムと蒸発光散乱検出器(ELSD)を備え、
前記高速液体クロマトグラフィーで用いる移動相の組成は、
移動相A:ヘキサン/イソプロパノール/酢酸(82:17:1、体積比)+0.08%トリエチルアミン
移動相B:イソプロパノール/水/酢酸(85:14:1、体積比)+0.08%トリエチルアミン
或いは、
移動相A:ヘキサン/イソプロパノール/ギ酸(82:17:1、体積比)+25%アンモニア水
移動相B:イソプロパノール/水/ギ酸(85:14:1、体積比)+25%アンモニア水
或いは、
移動相A:ヘキサン/イソプロパノール/1Mギ酸アンモニウム(82:17:1)
移動相B:イソプロパノール/水/1Mギ酸アンモニウム(82:17:1)
であること
を特徴とするものである。
この発明の請求項3に記載の発明は、
請求項1に記載のエーテルリン脂質の定量方法において、
前記高速液体クロマトグラフィーは、
下記分析条件で行われること
を特徴とするものである。
<分析条件>
検出:蒸発光散乱検出器 Gain 5,Nガス流量 0.99LSM,エバポレーター温度 60℃
カラム:順相カラム(250×3mm,5μm)
カラム温度:50℃
流量:0.4ml/分
移動相A:ヘキサン/イソプロパノール/酢酸(82:17:1,v/v,+0.08%トリエチルアミン)
移動相B:イソプロパノール/水/酢酸(85:14:1,v/v,+0.08%トリエチルアミン)
移動相(A)と(B)の液組成を時間帯に応じて下記のように制御する
この発明の請求項4に記載の発明は、
請求項1〜3のいずれかに記載のエーテルリン脂質の定量方法において、
前記脂質抽出処理は、
クロロホルム・メタノールによる処理であること
を特徴とするものである。
この発明の請求項5に記載の発明は、
エーテルリン脂質量の減少と密接に関連する、疾患の発症リスクを判定するための検査方法であって、
ハ.請求項1〜4の何れかに記載のエーテルリン脂質の定量方法により、被験体の血清又は血漿サンプル中に含まれるエーテルリン脂質を定量する工程
ニ.前記工程ハ.で測定した被験体のエーテルリン脂質量と、健常な被験体のエーテルリン脂質量とを比較する工程
並びに
ホ.前記工程ニ.における比較の結果、前記工程ハ.で測定した被験体のエーテルリン脂質量が、健常な被験体のエーテルリン脂質量よりも少ない場合に、エーテルリン脂質量の減少と密接に関連する疾患の発症リスクが高いことを示す工程
を含み、
前記疾患は、
認知症、うつ病、脳疲労、不眠症、パーキンソン病、メタボリック症候群、糖尿病、又は動脈硬化であること
を特徴とする検査方法である。
この発明の請求項に記載の発明は、
血清又は血漿サンプル中に含まれるエーテルリン脂質の量を定量するための試薬として
ホスホリパーゼA1(PLA1)と、
脂質抽出用有機溶媒と、
蒸発光散乱検出器(ELSD)を備えるHPLC分析用の溶媒
を含むこと
を特徴とする、認知症、うつ病、脳疲労、不眠症、パーキンソン病、メタボリック症候群、糖尿病、又は動脈硬化の発症リスクを検査するための検査用キットである。
この発明の請求項に記載の発明は、
請求項に記載の検査用キットにおいて、
前記溶媒は、
移動相A:ヘキサン/イソプロパノール/酢酸(82:17:1、体積比)+0.08%トリエチルアミン及び
移動相B:イソプロパノール/水/酢酸(85:14:1、体積比)+0.08%トリエチルアミン
或いは、
移動相A:ヘキサン/イソプロパノール/ギ酸(82:17:1、体積比)+25%アンモニア水及び
移動相B:イソプロパノール/水/ギ酸(85:14:1、体積比)+25%アンモニア水
或いは、
移動相A:ヘキサン/イソプロパノール/1Mギ酸アンモニウム(82:17:1)及び
移動相B:イソプロパノール/水/1Mギ酸アンモニウム(82:17:1)
であること
を特徴とするものである。
この発明のエーテルリン質の定量方法は、血清や血漿中に少量しか含まれていないエーテルリン脂質、特にエタノールアミンエーテルリン脂質又はコリンエーテルリン脂質を、高い精度で簡便に、しかも安価に定量することができる。
さらに、このような定量方法を用いて、認知症、うつ病、脳疲労、不眠症、パーキンソン病、メタボリック症候群、糖尿病又は動脈硬化などのエーテルリン脂質量の減少と密接に関連する疾患の、発症リスクを判定ないし予測するための検査方法を提供することができる。
さらにまた、この発明の前記疾患検出用バイオマーカーによって、前記疾患の検査や判定を簡便、安全かつ低コストに行うことができる。
ホスホリパーゼA1処理した血漿の総リン脂質を示すHPLCチャートであ る。 血漿中の総リン脂質を示すHPLCチャートである。 ホスホリパーゼA1処理及び塩酸処理した血漿の総リン脂質を示すHPLC チャートである。 ホスホリパーゼA1処理したヒト血漿の総リン脂質を示すマススペクトロメ トリーチャート(トータルイオンクロマトグラム(TIC))である。
以下、この発明の実施の形態について説明する。
この実施例は、この発明の好ましい代表例を示すものであるが、この発明がこのような代表例に限定されるものではない。
この発明のエーテルリン脂質の定量方法は、血清又は血漿サンプル中に含まれるエーテルリン脂質を定量するものであって、以下の工程を含むものである。
イ.被験体の血清又は血漿を加水分解処理した後、脂質抽出処理して血清又は血漿の脂質サンプルを得る工程;
並びに
ロ.前記工程イ.で得られた血清又は血漿の脂質サンプルを高速液体クロマトグラフィーに付す工程
前記工程イ.は、前記被験体の血清又は血漿を加水分解処理することを含む。
前記加水分解処理によって、血清又は血漿中のジアシル型リン脂質は全て除去されるので、その後に脂質抽出処理をすれば、各リン脂質の相互分離が可能なHPLC法、特にHPLC/ELSD法によって、血清又は血漿中に少量しか含まれていないエーテルリン脂質を、高い精度で簡便に、しかも安価に定量することが可能となる。
前記被験体としては、哺乳動物、すなわち、ヒト及び非ヒト哺乳動物が挙げられる。
前記非ヒト哺乳動物としては、例えば、ペット、実験動物、家畜等が挙げられる。
具体的には、イヌ、ネコ、サル、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、マウス、ラット、ハムスター、ウサギなどが例示できる。
この発明において、血清および血漿は、被験体から通常の採血方法(例えば、シリンジ採血又は真空採血)で得られる血液を、公知の方法により処理することによって得ることができる。
例えば、血液サンプルを、遠心(例えば、1000×g,5分間)して、上清を回収することによって得られる。
前記加水分解処理としては、リン脂質のsn−1のアシル結合を、特異的に加水分解する処理、例えば、ホスホリパーゼA1(PLA1)による処理が挙げられる。
前記PLA1は、血清ないし血漿中のエーテルリン脂質においてsn−1位のアシル結合のみに作用し、エーテル結合には作用しない。
したがって、前記PLA1処理によって、ジアシル型のリン脂質は分解されるが、エーテル型のリン脂質は分解されない。
前記PLA1については、前記効果が得られるものであれば、その由来などは特に制限されない。
前記PLA1として、例えば、Aspergillus orizae由来のPLA1が挙げられる。
かかるPLA1は、例えば、シグマ(Sigma)社、あるいは三菱化学フーズ株式会社などから購入可能である。
シグマ社製のものは液体のPLA1で、三菱化学フーズ(株)社製のものは、PLA1を25%含有した粉末のものである
前記PLA1の使用量については、血清ないし血漿の量に応じて適宜選択され得る。
シグマ社製の液体PLA1の場合には、好ましくは血清ないし血漿10μLに対して、0.01〜0.50μL、より好ましくは0.04〜0.20μLである。
前記PLA1による加水分解反応を適当な溶媒、特にバッファー中で行うことができるが、このような溶媒は、使用するPLA1に応じて適宜選択され得る。
例えば、0.1Mクエン酸緩衝溶液(クエン酸−HClバッファー;pH4.5)を用いることができる。
この場合、前記PLA1を前記溶液に加えて溶解させて適当な濃度(例えば、三菱化学フーズ(株)社製の粉末のものの場合には、10〜300mg/mL)のPLA1溶液を調製してから、30〜50μLの血清ないし血漿にPLA1溶液を加えればよい。
前記溶媒の使用量については、加水分解反応が進行するものであればよく、特に制限はないが、好ましくは、血清ないし血漿10μL当たり、1〜200μL、より好ましくは5〜200μLである。
前記反応条件については、適宜選択できる。
好ましくは温度30〜70℃、より好ましくは温度45〜55℃、さらに好ましくは温度50℃で撹拌しながら好ましくは1〜5時間、より好ましくは1〜2時間反応させる。
その際のpHは、好ましくはpH3.5〜5.5、より好ましくはpH4〜5である。
なお、前記加水分解反応を、冷却により止めてもよい。
血清又は血漿を加水分解処理した後、脂質を抽出して、血清又は血漿の脂質サンプルを得る方法としては、公知の脂質抽出法を用いることができる。
例えば、メタノール及びクロロホルムを、加水分解処理した血清又は血漿に加えて混和し、クロロホルム層を回収する方法が例示できる。
より具体的には、加水分解処理した血清又は血漿溶液(血清又は血漿サンプル)に1〜3倍容量のメタノール、および前記メタノールと同容量又は2倍容量のクロロホルムを加えて混和し、室温で10分〜2時間程度静置した後に遠心して(例えば、1,3000rpm、10分間)、クロロホルム層を回収する方法が挙げられる。
回収したクロロホルム層は、窒素ガスなどを用いて乾燥させた後、温度−20℃〜−40℃程度で保存することができる。
前記工程ロ.は、前記工程イ.で得られた血清又は血漿の脂質サンプルを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)に付して、解析する工程である。
上記のように、PLA1で処理した後に抽出して得られる血清又は血漿の脂質サンプルを、一般的な検出器である蒸発光散乱検出器(ELSD:Evaporative Light Scattering Detector)を備える高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により分析することで、血清又は血漿中に存在する、エーテルリン脂質のそれぞれ完全な独立したピークが現われたクロマトグラムを得ることができる。
具体的には、血清又は血漿の脂質サンプルを、例えば、ヘキサン/イソプロパノール(3:2)、あるいはクロロホルム/メタノール(1:1乃至2:1)に溶解させてHPLCに注入し、検出をELSDにより行うことで、血清又は血漿中に存在するエーテルリン脂質を検出できる。
その際、
HPLCカラムとして、例えば、
Lichrosphere 100 DIOL (250×3mm,5μm)などの順相カラムを用い、
ヘキサン/イソプロパノール/酢酸(82:17:1、体積比)+0.08%トリエチルアミン(移動相A)、
イソプロパノール/水/酢酸(85:14:1、体積比)+0.08%トリエチルアミン(移動相B)
あるいは、
ヘキサン/イソプロパノール/ギ酸(82:17:1、体積比)+25%アンモニア水(移動相A)、
イソプロパノール/水/ギ酸(85:14:1、体積比)+25%アンモニア水(移動相B)
あるいは、
ヘキサン/イソプロパノール/1Mギ酸アンモニウム(82:17:1)(移動相A)、
イソプロパノール/水/1Mギ酸アンモニウム(82:17:1)(移動相B)
などを用いることができる。
なお、この発明においては、前記PLA1の作用によって、血清又は血漿中のジアシル型リン脂質は完全に分解されているので、各リン脂質の相互分離が可能なHPLC法であれば、上記特定のカラムや、上記移動相に限定されず利用できる。
図4において、この一例が示されている。
得られるクロマトグラムの各ピークの面積が、各脂質成分の含有量を表す。
精製されたエーテルリン脂質は入手困難であることが多い。
したがって、精製されたコリン脂質及びエタノールアミンリン脂質を用いて、それぞれの検量線を作成して、エタノールアミンエーテルリン脂質及びコリンエーテルリン脂質の定量ができる。
ELSDでは、類似した構造を有する物質であれば、同様のエリアレスポンスを示すからである。
この発明において、前記HPLCに他の適当な分析装置と連結させて、分析を行うことができる。
前記分析装置としては、例えば、質量分析計(MS)や、核磁気共鳴装置(NMR)などが挙げられる。
この発明においては、前記エーテルリン脂質の定量方法を用いて測定したエーテルリン脂質の量を、健常な被験体のエーテルリン脂質量と比較することによって、エーテルリン脂質量の減少と密接に関連する、疾患の発症リスクを判定することができる。
この発明の検査方法は、エーテルリン脂質量の減少と密接に関連する疾患の、発症リスクを判定するための検査方法であって、下記工程を含む。
ハ.請求項1〜3の何れかに記載のエーテルリン脂質の定量方法によって、被験体の血清又は血漿サンプル中に含まれるエーテルリン脂質を定量する工程;
並びに
ニ.前記工程ハ.で測定した被験体のエーテルリン脂質量と、健常な被験体のエーテルリン脂質量とを比較する工程。
前記エーテルリン脂質量の減少と密接に関連する疾患としては、認知症、うつ病、脳疲労、不眠症、パーキンソン病、メタボリック症候群、糖尿病又は動脈硬化などが挙げられる。
好ましくは、認知症、うつ病、脳疲労、不眠症、パーキンソン病、メタボリック症候群、糖尿病又は動脈硬化である。
前記認知症としては、変性性認知症が挙げられる。
具体的には、パーキンソン病に伴う認知症、前頭側頭型認知症、ピック病、びまん性レビー小体病、アルツハイマー型認知症等が例示できる。
前記工程ハ.は、前記したエーテルリン脂質の定量方法によって、被験体の血清又は血漿サンプル中に含まれるエーテルリン脂質の量を測定する工程であって、その詳細については前記の通りである。
前記工程ニ.は、前記工程ハ.で測定した被験体のエーテルリン脂質量と、健常な被験体のエーテルリン脂質量とを比較する工程である。
すなわち、この工程では、
(a)被験体から採取した、血液中の血清ないし血漿に含まれるエーテルリン脂質量と、
(b)健常な被験体から採取した、血液中の血清ないし血漿に含まれるエーテルリン脂質量とを比較する。
なお、前記「健常な被験体のエーテルリン脂質量」は、通常、対象となる被験体(例えば、哺乳動物)と同一種であって、少なくとも前記疾患を患っていない、好ましくは健康な被験体から採取した、血液中の血漿に含まれるエーテルリン脂質量である。
前記比較については、
前記(a)被験体の血清又は血漿量中に存在するエーテルリン脂質量および、
前記(b)健常な被験体の血清又は血漿量中に存在するエーテルリン脂質量
が、ともに絶対量値(例えば、質量値又はモル値など)として得られている場合には、測定に用いる血清又は血漿の量を、揃えることによって行うことができる。
このように、一定の血清又は血漿量中に存在する被験体のエーテルリン脂質量と、これと同量の血清又は血漿量中に存在する、健常な被験体のエーテルリン脂質量とを比較することにより、被験体のエーテルリン脂質量の、健常な被験体のエーテルリン脂質量に対する多少を決めることができる。
なお、前記比較に際しては、必ずしも質量値などの絶対量を求める必要はなく、健常な被験体の血清ないし血漿に含まれる、エーテルリン脂質の量と比較することができるデータが得られればよい。
例えば、蒸発光散乱検出器を備える高速液体クロマトグラフィー(HPLC/ELSDともいう)により、被験体の血清ないし血漿に含まれる脂質、および健常な被験体の血清ないし血漿に含まれる、脂質を分析して得られるデータ、例えば、それぞれのクロマトグラムにおける、エーテルリン脂質を示すピークの面積を互いに比較することができる。
この場合、HPLCの測定に用いる脂質を得る血清ないし血漿量を揃えることにより、被験体の血清ないし血漿に含まれるエーテルリン脂質の量の、健常な被験体の血清ないし血漿に含まれるエーテルリン脂質の量に対する多少を決めることができる。
さらにまた、HPLCの測定に用いる脂質を得る血清ないし血漿量を揃えなくとも、あるいは揃えた上で、エーテルリン脂質を示すピーク面積を、他の特定の脂質成分を示すピーク面積と比べた場合の割合で表し、当該割合を比較することで、被験体の血清ないし血漿に含まれるエーテルリン脂質の量の、健常な被験体の血清ないし血漿に含まれるエーテルリン脂質の量に対する多少を決めることもできる。
すなわち、被験体の血清ないし血漿および健常な被験体の血清ないし血漿のそれぞれについて、HPLC分析を行ってクロマトグラムを得、それぞれのクロマトグラムにおいてある特定の脂質成分量に対するエーテルリン脂質量の割合(比)を求め、当該比の大小を比べることによって、エーテルリン脂質量を比較することができる。
当該比が大きい方が、エーテルリン脂質量が多いことになり、当該比が小さい方が、エーテルリン脂質量が少ないことになる。
なお、当該比は、「エーテルリン脂質量/特定の脂質成分量」と記載することができ、「エーテルリン脂質を示すピークの面積/特定の脂質成分を示すピークの面積」で求めることができる。
この比較方法では、当該比の分母に用いられる「特定の脂質成分」として、被験体の血清ないし血漿、及び健常な被験体の血清ないし血漿に含まれ、かつその含有量が、個人差が少ない特定の脂質成分を選択することが好ましい。
このような脂質成分としては、
ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴミエリン、コレステロール、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトールなどが挙げられ、ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴミエリン、コレステロールが好ましく、ホスファチジルエタノールアミン
がより好ましい。
なお、HPLCの測定に用いる脂質を得る血清ないし血漿量を揃えた上、かつ特定の脂質成分量に対するエーテルリン脂質量の割合(比)を求めることが、より精度の高い比較結果を得ることができる点から好ましい。
この発明の検査方法においては、
前記(a)被験体の血清又は血漿量中に存在するエーテルリン脂質量と、
前記(b)健常な被験体の血清又は血漿量中に存在するエーテルリン脂質量
との比較結果を用いて、被験体の血清ないし血漿がエーテルリン脂質量の減少と密接に関連する、疾患の発症リスクが高いか低いかを判定することができる。
この判定では、前記(a)が前記(b)より少ない場合に、被験体は前記疾患の発症リスクが高いと判定される。
すなわち、この発明の検査方法には、さらに下記工程を含めることができる。
ホ.前記工程ニ.における比較の結果、前記工程ハ.で測定した被験体のエーテルリン脂質量が、健常な被験体のエーテルリン脂質量よりも少ない場合に、エーテルリン脂質量の減少と密接に関連する疾患の発症リスクが高いと判定する工程。
特に、前記のHPLC分析で得たクロマトグラムから「エーテルリン脂質量/特定の脂質成分量」の比を算出し、この比を用いてエーテルリン脂質量を比較する場合、「エタノールアミンエーテルリン脂質量/ホスファチジルエタノールアミン量」を比較することが好ましい。
なお、「エタノールアミンエーテルリン脂質量/ホスファチジルエタノールアミン量」比は、健常な被験体(特に健常ヒト)では0.85〜0.9程度であるのに対し、前記疾患の発症リスクが高い被験体(特に発症患者)では0.7以下程度(0.7〜0.5程度)となる。
発症患者の「エタノールアミンエーテルリン脂質量/ホスファチジルエタノールアミン量」比値は、健常者の当該比値の90%以下(好ましくは85%以下、より好ましくは80%以下)ともいえる。
よって、当該比値を比較する場合、被験体の血清ないし血漿の当該比値が、健常な被験体の血清ないし血漿の当該比の90%以下(好ましくは85%以下、より好ましくは80%以下)になったときに、被験体は前記疾患の発症リスクが高いと判定することができると考えられる。
さらに、この発明においては、前記被験体の血清又は血漿を加水分解処理することによって得られた加水分解処理血清又は血漿を用いて、これに含まれているエーテルリン脂質を、酵素法(発色法)によって定量することができる。
具体的には、前記被験体の血清又は血漿を加水分解処理、好ましくはPLA1で処理すると、血清又は血漿中のエーテルリン脂質とリゾリン脂質とスフィンゴミエリンは分解されずに残り、これら以外のリン脂質は分解される。
この処理液を、さらにホスホリパーゼD(PLD)で処理すると、PLDは処理液中のリゾリン脂質とスフィンゴミエリンには作用しないが、エーテルリン脂質(ホスファチジルエタノールアミン及びホスファチジルコリン)には作用するので、エタノールアミン及びコリンが放出される。
前記処理液を、ホスホリパーゼD(PLD)に代えて、ホスファチジルコリン特異性PLD(phosphatidylcholine specific PLD)で処理すると、ホスファチジルコリン特異性PLDは、処理液中のリゾリン脂質とスフィンゴミエリンには作用しないが、ホスファチジルコリンには作用するので、コリンが放出される。
得られたエタノールアミンについては、アミンオキシダーゼを用いて、コリンについては、コリンオキシダーゼを用いて処理を行った後、ペルオキシダーゼで処理すると発色が得られるので、分光光度計(例えば、プレートリーダーや、自動分析装置)を用いて測定を行うことができる。
なお、前記分光光度計による測定の際の波長については、一定の波長であればよいが、例えば、450〜600nmの範囲が選択される。
これにより得られる一定の波長における発色度が、脂質成分の量を表す。
精製されたエーテルリン脂質は、入手困難であることが多い。
したがって、精製されたコリン脂質およびエタノールアミンリン脂質を用いて、それぞれの検量線を作成して、エタノールアミンエーテルリン脂質およびコリンエーテルリン脂質の定量ができる。
すなわち、この発明においては、
血清又は血漿サンプル中に含まれるエタノールアミンエーテルリン脂質又はコリンエーテルリン脂質を定量する方法であって、
ヘ.被験体の血清又は血漿を加水分解処理した後、ホスホリパーゼD又はホスファチジルコリン特異性PLDによる処理をする工程;
並びに
ト.前記工程ヘ.で得られた処理液を、アミンオキシダーゼ若しくはコリンオキシダーゼと、ペルオキシダーゼによる処理をした後、分光光度計による測定に付す工程
を含むこと
を特徴とするエタノールアミンエーテルリン脂質又はコリンエーテルリン脂質の定量方法
を提供できる。
なお、PLDもしくはホスファチジルコリン特異性PLDによる処理の前に血清又は血漿中に存在している遊離アミンを除去してもよい。
また、前記PLDもしくはホスファチジルコリン特異性PLDによる処理、ならびにアミンオキシダーゼ若しくはコリンオキシダーゼと、ペルオキシダーゼによる処理を、適当な界面活性剤の存在下で行うことができる。
前記界面活性剤としては、好ましくは非イオン系界面活性剤、より好ましくはポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルが選択される。
例えば、トリトンX−100(TritonX−100)を使用することができる。
前記界面活性剤の使用量については、例えば、0.01〜10質量%である。
さらに、前記PLDもしくはホスファチジルコリン特異性PLDによる処理、ならびにアミンオキシダーゼ若しくはコリンオキシダーゼと、ペルオキシダーゼによる処理を、適当なバッファーで調整して行うことができる。
前記バッファーとしては、例えばトリス−塩酸緩衝液、具体的には50mM トリス−塩酸緩衝液(pH8.0)が選択される。
なお、この発明においては、前記と同様にして、前記エタノールアミンエーテルリン脂質又はコリンエーテルリン脂質の定量方法を用いて測定した、エタノールアミンエーテルリン脂質又はコリンエーテルリン脂質の量を、健常な被験体のエタノールアミンエーテルリン脂質又はコリンエーテルリン脂質の量と比較することによって、エーテルリン脂質量の減少と密接に関連する、疾患の発症リスクを判定することができる。
すなわち、この発明においては、エーテルリン脂質量の減少と密接に関連する疾患の、発症リスクを判定するための検査方法であって、下記工程を含む検査方法を提供することができる。
チ.請求項に記載のエタノールアミンエーテルリン脂質又はコリンエーテルリン脂質の定量方法により、被験体の血清又は血漿サンプル中に含まれるエタノールアミンエーテルリン脂質又はコリンエーテルリン脂質を定量する工程
並びに
リ.前記工程チ.で測定した被験体のエタノールアミンエーテルリン脂質量又はコリンエーテルリン脂質量と、健常な被験体のエタノールアミンエーテルリン脂質量又はコリンエーテルリン脂質量とを比較する工程。
なお、この検査方法は、前記説明に基づいて容易に実施することができる。
この発明は、血清又は血漿中に含まれるエーテルリン脂質からなる、エーテルリン脂質量の減少と密接に関連する、疾患の検出用バイオマーカーも包含する。
前記疾患の検出用バイオマーカーとは、前記疾患の発症を判定又は診断する指標となる生体分子をいう。
なお、生体中に存在するエーテルリン脂質ではなく、生体から単離された血清又は血漿に含有されるエーテルリン脂質が、前記疾患検出用バイオマーカーとして使用される。
よって、この発明のバイオマーカーは、血清又は血漿から抽出されたエーテルリン脂質からなる前記疾患の検出用バイオマーカーともいえる。
この発明のバイオマーカーは、前記疾患を患った被験体において、健常な被験体に比べエーテルリン脂質の量が減少するという特徴を有する。
よって、被験体および健常な被験体から当該バイオマーカーをそれぞれ単離して、その量を測定し、比較して、被験体の方が少ない場合には、被験体が前記疾患を患っていると診断することができる。
なお、前記疾患の検出用バイオマーカーとしては、エーテルリン脂質の中でも、エタノールアミンエーテルリン脂質又はコリンエーテルリン脂質が好ましい。
したがって、この発明には、血清又は血漿に含有されるエタノールアミンエーテルリン脂質又はコリンエーテルリン脂質からなる、前記疾患の検出用バイオマーカーが好ましく包含される。
この発明のバイオマーカーは、前記説明に基づいて容易に実施することができる。
この発明は、エーテルリン脂質量の減少と密接に関連する疾患の発症リスクを検査するための検査用キットも包含する。
この発明のキットには、血清ないし血漿に含まれるエーテルリン脂質量を測定するために有用な試薬と、脂質抽出用有機溶媒(血清又は血漿を加水分解処理した後、脂質を抽出するために有用な有機溶媒)が備えられる。
前記試薬としては、血清又は血漿の加水分解処理に使用する試薬、具体的には、血清又は血漿に含まれる脂質の加水分解のための試薬や、血清又は血漿を加水分解処理した後、エタノールアミン又はコリンを生成するために有用な試薬が例示される。
より具体的には、ホスホリパーゼA1(PLA1)や、その溶媒(例えば0.1Mクエン酸緩衝溶液)、ホスホリパーゼDもしくはホスファチジルコリン特異性PLDなどが挙げられる。
前記脂質抽出用有機溶媒としては、メタノール、クロロホルム、クロロホルム/メタノール(好ましくは2:1)液などが例示される。
前記キットには、採血用シリンジや採血用チューブなどの採血用器具、さらに、ヘキサン/イソプロパノール/酢酸(82:17:1)、イソプロパノール/水/酢酸(85:14:1)、トリエチルアミンなどのHPLC分析用の溶媒や、アミンオキシダーゼ、コリンオキシダーゼおよびペルオキシダーゼなどの分光光度計による分析およびそのための発色用の試薬が備えられていてもよい。
なお、この発明のキットは、前記説明に基づいて容易に実施することができる。
以下に、実施例を挙げてこの発明を詳細に説明するが、この発明はこれら実施例により制限されることはない。
実施例1;血漿中のエーテルリン脂質の定量
1)血液採取
注射器を用いて静脈血を採取した。
採取した血液には、抗凝固剤としてEDTA−Na(エチレンジアミンテトラ酢酸ナトリウム塩)を加えた。これをヒト血液サンプルとした。
2)血漿の調製
得られた血液サンプルを1000×g,5分間遠心して、上清(すなわち血漿)を回収した。
3)血漿サンプルの調製
a.血漿50μLをエッペンドルフチューブに入れた。
b.ホスホリパーゼA1(PLA1)(Aspergillus orizae由来,三菱化学フーズ(株)製)を25%含有した粉末を、0.1M クエン酸(pH4.5)に濃度200mg/mLの濃度に溶解させて、ホスホリパーゼA1(PLA1)溶液を得た。
c.得られたホスホリパーゼA1(PLA1)溶液150μLを、血漿に加えて、よく混和し、温度50℃で1時間反応させた。
d.さらに、クロロホルム/メタノール(2:1)0.5mLを加え、1分間激しく混和した後、10分間室温に置いた。
e.これを13,000rpmで10分間遠心した。
f.クロロホルム層を、別のガラススピッツに回収した。
g.回収したクロロホルム層を、窒素ガスで乾燥して血漿サンプルとし、これを温度−30℃に保存した。
4)血漿サンプルの高速液体クロマトグラフィー(HPLC)解析
得られた血漿サンプルを、ヘキサン/イソプロパノール(3:2)200μLに再溶解した。
得られた血漿サンプル10μLをHPLCに注入し、下記条件でHPLC解析を行った。
その結果を図1に示す。
<高速液体クロマトグラフィー(HPLC)の条件>
使用機器:HPLC Agilent 1260 system(Agilent Technologies,Tokyo)
カラム :Lichrosphere 100 DIOL (250×3mm,5μm)
(メルク,Tokyo)
流 量 :0.4ml/分
カラム温度:50℃
検 出 :蒸発光散乱検出器(ELSD)(1290 Infinity ELSD,Agilent Technologies) Gain 5,Nガス流量 0.99LSM,エバポレーター温度 60℃
移動相 :
(A)ヘキサン/イソプロパノール/酢酸(82:17:1,v/v,+0.08%トリエチルアミン)
(B)イソプロパノール/水/酢酸(85:14:1,v/v,+0.08%トリエチルアミン)
なお、時間帯と移動相(A)と(B)の液組成を、表1に示す。
図1から、ヒト血漿をPLA1で直接処理すると、ジアシルリン脂質(acyl PE,acyl PC,acyl PI)が完全に分解されることが分かった。
したがって、PLA1処理後、HPLC解析においては、エーテルリン脂質はいずれも独立したピークとして認められ、定量が明確になる。
一方、図2は、血漿中の総リン脂質を示すHPLCチャートである。
ヒト血漿中に含まれるエタノールアミンリン脂質及びエーテル型コリン脂質は微量である。
図2から、総脂質(未処理のもの)を上記同様のHPLC法で分析した場合、ジアシル型リン脂質とエーテル型リン脂質の分離は、不完全であることが分かる。
よって、この発明によれば、血清や血漿中に微量に含まれているエーテルリン脂質を、高い精度で簡便に、しかも安価に定量することができることは明らかである。
なお、図3は、ホスホリパーゼA1処理および塩酸処理した血漿の、総リン脂質を示すHPLCチャートである。
リン脂質を塩酸処理すると、アルケニルリン脂質(プラズマローゲン)は分解されるが、アシルリン脂質とアルキルリン脂質は分解されない。
図3から、ヒト血漿のコリンを持つエーテルリン脂質には、アルキルアシルリン脂質(alkyl PC)が約50%含まれていることが示された。
さらに、図1及び3の結果を考慮すると、ヒト血漿ないし血清におけるリン脂質の構成は、ジアシルコリンリン脂質(acyl PC)、スフィンゴミエリン(SM−1,SM−2)リゾコリンリン脂質(LPC)、ジアシルエタノールアミンリン脂質(acyl PE)、ジアシルイノシトールリン脂質(acyl PI)、並びにエーテルリン脂質である、アルケニルアシルエタノールアミンリン脂質(alkenyl PE)、アルケニルアシル及びアルキルアシルコリンリン脂質(alkenyl PC,alkyl PC)であ
ることが分かった(図2)。
実施例2;ヒト血漿のHPLC−MS解析
ヒト血漿を、前記同様、PLA1で処理した後、脂質を抽出し、HPLCに注入し、そのまま直接マススペクトロメーター(MS)に連結して、エーテルリン脂質を測定した。
その際、HPLCとしては、前記同様、HPLC Agilent 1260 system(Agilent Technologies,Tokyo)を用いた。
また、HPLCの条件については、カラムとしてAscentis Express HILLIC 150×2.1mm(2.7μm)(Sigma,Tokyo)を用い、移動相(A);アセトニトリル、移動相(B)1.0mMギ酸アンモニウム(pH3(ギ酸で調整))、流量0.2mL/分としたことを除いて、前記同様とした。
MSとしては、Agilent 6130(Agilent Technologies,Tokyo)を用いた。
その結果を、図4に示す。
図4においては、PLA1の作用によって、ジアシル型リン脂質は完全に分解されていることが分かる。
したがって、各リン脂質の相互分離が可能なHPLCであれば、特定のカラムや移動相に限定されず利用できることは明らかである。
しかも、HPLCをマススペクトロメトリーに直接連結して、マススペクトロメトリーによる血清ないし血漿中のエーテルリン脂質の分析を行うことができることも明らかである。
実施例3;血漿中のエタノールアミンエーテルリン脂質の定量
1)血液採取
注射器を用いて静脈血を採取した。
採取した血液には、抗凝固剤としてEDTA−Na(エチレンジアミンテトラ酢酸ナトリウム塩)を加えた。これをヒト血液サンプルとした。
2)血漿の調製
得られた血液サンプルを1,000×g,5分間遠心して、上清(すなわち血漿)を回収した。
3)各反応液の調製
3−1)反応液1の調製
下記表2に示される成分を混合し、50mMトリス−塩酸緩衝液(pH8.0)で調整して、反応液1を得た。
3−2)反応液2の調製
下記表3に示される成分を混合し、50mMトリス−塩酸緩衝液(pH8.0)で調整して、反応液2を得た。
4)血漿サンプルの分光光度計(プレートリーダー)による解析
a.血漿30μLをプレートリーダーのウェル(well)に入れた。
b.50%ホスホリパーゼA1(PLA1)溶液(シグマ社製)10μLを、血漿に加えた。
c.温度50℃で1時間反応させた。
d.室温に冷却後、反応液1を100μL加えて、温度37℃で10分間置き、血漿中に存在している遊離アミンを除いた。
e.さらに、反応液2を50μL加えて、温度37℃で5分間置いた。
f.波長540〜600nmで測定した。
実施例4;血漿中のコリンエーテルリン脂質の定量
1)血液採取及び血漿の調製
実施例3と同様の方法によって血液採取及び血漿の調製を行った。
2)各反応液の調製
2−1)反応液1の調製
下記表4に示される成分を混合し、50mMトリス−塩酸緩衝液(pH8.0)で調整して、反応液1を得た。
2−2)反応液2の調製
下記表5に示される成分を混合し、50mMトリス−塩酸緩衝液(pH8.0)で調整して、反応液2を得た。
3)血漿サンプルの分光光度計(プレートリーダー)による解析
a.血漿30μLをプレートリーダーのウェル(well)に入れた。
b.50%ホスホリパーゼA1(PLA1)溶液(シグマ社製)10μLを、血漿に加えた。
c.温度50℃で1時間反応させた。
d.室温に冷却後、反応液1を100μL加えて、温度37℃で10分間置き、血漿中に存在している遊離アミンを除いた。
e.さらに、反応液2を50μL加えて、温度37℃で5分間置いた。
f.波長540〜600nmで測定した。
この発明によれば、血清や血漿中に少量しか含まれていないエーテルリン脂質を、高い精度で簡便に、しかも安価に定量することが可能となる。
さらに、このような定量方法を用いて、認知症、うつ病、脳疲労、不眠症、パーキンソン病、メタボリック症候群、糖尿病又は動脈硬化などの、エーテルリン脂質量の減少と密接に関連する疾患の発症リスクを、判定ないし予測することが可能となるので、医薬業界において幅広く利用されるものである。

Claims (7)

  1. 血清又は血漿サンプル中に含まれるエーテルリン脂質を定量する方法であって、
    イ.被験体の血清又は血漿を、ホスホリパーゼA1(PLA1)を用いて加水分解処理した後、脂質抽出処理して血清又は血漿の脂質サンプルを得る工程;
    並びに、
    ロ.前記工程イ.で得られた血清又は血漿の脂質サンプルを、蒸発光散乱検出器(ELSD)を備える高速液体クロマトグラフィーに付す工程
    を含むこと
    を特徴とするエーテルリン脂質の定量方法。
  2. 前記高速液体クロマトグラフィーは、
    順相カラムと蒸発光散乱検出器(ELSD)を備え、
    前記高速液体クロマトグラフィーで用いる移動相の組成は、
    移動相A:ヘキサン/イソプロパノール/酢酸(82:17:1、体積比)+0.08%トリエチルアミン
    移動相B:イソプロパノール/水/酢酸(85:14:1、体積比)+0.08%トリエチルアミン
    或いは、
    移動相A:ヘキサン/イソプロパノール/ギ酸(82:17:1、体積比)+25%アンモニア水
    移動相B:イソプロパノール/水/ギ酸(85:14:1、体積比)+25%アンモニア水
    或いは、
    移動相A:ヘキサン/イソプロパノール/1Mギ酸アンモニウム(82:17:1)
    移動相B:イソプロパノール/水/1Mギ酸アンモニウム(82:17:1)
    であること
    を特徴とする請求項1に記載のエーテルリン脂質の定量方法。
  3. 前記高速液体クロマトグラフィーは、
    下記分析条件で行われること
    を特徴とする請求項1に記載のエーテルリン脂質の定量方法。
    <分析条件>
    検出:蒸発光散乱検出器 Gain 5,Nガス流量 0.99LSM,エバポレーター温度 60℃
    カラム:順相カラム(250×3mm,5μm)
    カラム温度:50℃
    流量:0.4ml/分
    移動相A:ヘキサン/イソプロパノール/酢酸(82:17:1,v/v,+0.08%トリエチルアミン)
    移動相B:イソプロパノール/水/酢酸(85:14:1,v/v,+0.08%トリエチルアミン)
    移動相(A)と(B)の液組成を時間帯に応じて下記のように制御する

  4. 前記脂質抽出処理は、
    クロロホルム・メタノールによる処理であること
    を特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のエーテルリン脂質の定量方法。
  5. エーテルリン脂質量の減少と密接に関連する、疾患の発症リスクを判定するための検査方法であって、
    ハ.請求項1〜4の何れかに記載のエーテルリン脂質の定量方法により、被験体の血清又は血漿サンプル中に含まれるエーテルリン脂質を定量する工程
    ニ.前記工程ハ.で測定した被験体のエーテルリン脂質量と、健常な被験体のエーテルリン脂質量とを比較する工程
    並びに
    ホ.前記工程ニ.における比較の結果、前記工程ハ.で測定した被験体のエーテルリン脂質量が、健常な被験体のエーテルリン脂質量よりも少ない場合に、エーテルリン脂質量の減少と密接に関連する疾患の発症リスクが高いことを示す工程
    を含み、
    前記疾患は、
    認知症、うつ病、脳疲労、不眠症、パーキンソン病、メタボリック症候群、糖尿病、又は動脈硬化であること
    を特徴とする検査方法。
  6. 血清又は血漿サンプル中に含まれるエーテルリン脂質の量を定量するための試薬として
    ホスホリパーゼA1(PLA1)と、
    脂質抽出用有機溶媒と、
    蒸発光散乱検出器(ELSD)を備えるHPLC分析用の溶媒
    を含むこと
    を特徴とする、認知症、うつ病、脳疲労、不眠症、パーキンソン病、メタボリック症候群、糖尿病、又は動脈硬化の発症リスクを検査するための検査用キット。
  7. 前記溶媒は、
    移動相A:ヘキサン/イソプロパノール/酢酸(82:17:1、体積比)+0.08%トリエチルアミン及び
    移動相B:イソプロパノール/水/酢酸(85:14:1、体積比)+0.08%トリエチルアミン
    或いは、
    移動相A:ヘキサン/イソプロパノール/ギ酸(82:17:1、体積比)+25%アンモニア水及び
    移動相B:イソプロパノール/水/ギ酸(85:14:1、体積比)+25%アンモニア水
    或いは、
    移動相A:ヘキサン/イソプロパノール/1Mギ酸アンモニウム(82:17:1)及び
    移動相B:イソプロパノール/水/1Mギ酸アンモニウム(82:17:1)
    であること
    を特徴とする請求項に記載の検査用キット。
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