JP6398820B2 - 推進剤貯蔵タンク、推進剤貯蔵タンクを搭載した人工衛星システム - Google Patents

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Description

本発明は、人工衛星(以下、衛星と称する)のシステムにおいて、伸縮性のタンクを搭載した衛星システムに関するものである。
衛星は、センサ・アンテナ、太陽電池パドル、推進装置、各種電子機器、各機器を保持・収納する構体等の数多くの構成品を有している。これらの構成品が統合された衛星全体は、総称して衛星システムと呼ばれる。衛星システムの構成品である推進装置は、軌道上における衛星の姿勢・軌道を変更する際に用いられる(例えば、特許文献1参照)。
推進装置の推進剤は、金属製の球体型タンク(以下、金属製タンクと称する)に貯蔵されている。この金属製タンクは、金属製タンクを支持する構造物(以下、タンク支持構造物と称する)を介して締結部品により衛星構体に搭載されている(例えば、特許文献2参照)。
特開平3−130565号公報 特開2003−291899号公報
従来の衛星システムは、推進剤を貯蔵するタンクとして、金属製タンクが用いられている。この金属製タンクには、推進剤だけでなく、軌道上で推進剤を押し出すための加圧ガスも充填する必要がある。そのため、推進剤の体積に加え、加圧ガス分も考慮した容積を確保する必要があり、大型な形状を成している。
衛星構体内に搭載される機器は、この金属製球体型タンクおよびタンク支持構造物と干渉しない位置に配置する必要があるが、金属タンク自体の容積が大きいため、従来、衛星構体内において機器を配置できる空間・搭載数が制限されるという課題があった。
機器配置が制限されることは、(1)信号のロスを低減させるべく機器間を繋ぐケーブルを最短化したくとも、機器同士を近くに配置できない、(2)性能向上のために搭載したい機器を搭載できない等の状況を生じさせ、衛星の機能・性能を主眼とした設計を実施する上で、タンクが大きな障害となっている。
また、タンクを搭載する際に必要となるタンク支持構造物や数多くの締結部品の質量も、衛星システムを軽量化するにあたり課題となっていた。
この発明は係る課題を解決するためになされたものであり、衛星構体内において機器配置の制約を低減可能な推進剤貯蔵用タンク、推進剤貯蔵用タンクを搭載した人工衛星システムを提供することを目的とする。
この発明に係る推進剤貯蔵用タンクは、人工衛星に搭載され、推進剤を貯蔵する推進剤貯蔵タンクであって、前記推進剤貯蔵タンクは、伸縮性を有して前記推進剤が充填されるに従い膨張するタンク内層と、前記タンク内層を外側で覆うタンク外層の二層構造からなる。
この発明に係る推進剤貯蔵用タンクによれば、衛星構体内の機器を、推進剤貯蔵用タンクやタンク支持構造物の制約を受けることなく配置することが可能となり、衛星用機器の最適設計を行うことができる。
また、加圧ガスを必要としないため、タンクサイズの縮小・最適化が可能となり、タンク支持構造物も必要ないため、衛星構体内の空間を有効に活用できる。また、衛星構体の縮小化による軽量化、搭載機器数の増加による性能向上が可能となる。また、タンク支持構造物、および締結部品の削減による衛星システムの軽量化が可能となる。
この発明の実施の形態に係る衛星システムを説明する図で、伸縮性タンクを搭載した衛星構体の内部を示す概略図である。(a)は衛星構体内部の断面図であり、(b)は衛星構体内部を斜め方向からみたときの斜視図である。 この発明の実施の形態による伸縮性タンクの外観図である。 この発明の実施の形態による伸縮性タンクの下部にあって、推進剤を注入/排出する推進剤注排部分の拡大図である。 この発明の実施の形態による伸縮性タンクの推進剤注排部分に用いられる上面プレート、下面プレートの概略図である。
実施の形態.
以下、図を用いてこの発明にかかる実施の形態について説明する。
図1は本実施の形態に係る人工衛星システムの衛星構体内の概略図であり、(a)は推進剤貯蔵タンクを搭載した衛星構体内部の部分断面図、(b)は衛星構体内部を斜め方向からみたときの斜視図である。
図1において、衛星構体2は上面構体パネル2a、下面構体パネル2b、上下を上面構体パネル2aと下面構体パネル2bで挟まれた4面の側面構体パネル2cで構成される。構体パネルにはCFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics:炭素繊維強化プラスチック)等の構造材料が用いられる。
衛星構体2内側には人工衛星の動作を維持するための複数の搭載機器3が搭載されており、これらの機器は側面構体パネル2c等に装着される。
本実施の形態に係る推進剤貯蔵タンク1は衛星構体2の内側に設置され、衛星の推進装置に使用する推進剤が充填される。
後述のように、本発明に係る推進剤貯蔵タンク1は伸縮性を備えており、推進剤貯蔵タンク1に推進剤を充填する過程においては、衛星構体2に内側で搭載機器3のない空いたスペースを埋める形で膨張していく。
推進剤の充填完了後は、図1(a)、(b)に示すように、推進剤貯蔵タンク1は、衛星構体2や搭載機器3と接触した状態で保持される。このように、推進剤貯蔵タンク1は衛星構体2の内側で保持されるため、従来の金属製の球体型タンクを支持していたタンク支持構造物は不要となる。
衛星軌道上では、推進剤貯蔵タンク1が備える収縮力により、推進剤の体積に応じてタンク自体が縮小し、推進剤を押し出す圧力が維持される。
推進剤貯蔵タンク1の下方には推進剤注排部20があり、推進剤注排部20の推進剤注排弁5により推進剤の注入/排出を行うことができる。
図2は本実施の形態に係る推進剤貯蔵用タンク1の概略図である。図2は、推進剤貯蔵用タンク1の内部に推進剤が十分に注入され、推進剤が満杯に近い程度まで充填された状態であり、推進剤貯蔵用タンク1は球体型を成している。
推進剤貯蔵用タンク1の外皮は推進剤の量に応じて伸縮する性質をもつタンク伸縮部4を有しており、タンク伸縮部4が伸縮することで、推進剤貯蔵用タンク1の外形はしぼんだ状態から球体型まで様々な形状を示す。
タンク伸縮部4は、タンク内層10および外層11の二層構造で構成される。
タンク内層10は推進剤の化学的特性に対応できる柔軟材料を用いており、柔軟材料としては、例えばシリコーンゴム(シリコーンを主成分とする合成樹脂でゴム状のもの)や、ブチルゴムが挙げられる。
タンク外層11は、タンク内層10に生じる高圧力に耐えられるようカーボンファイバーの柔軟かつ高強度のネット構造(網構造)を有している。カーボンファイバーのネット構造以外にも、例えば、スパンデックス繊維のメッシュカバーを用いてもよい。
タンク外層11とその内側のタンク内層10は、推進剤貯蔵用タンク1内の推進剤の量が少ないときは柔軟材料であるタンク内層10の伸びが小さく、互いに接する箇所は少ないが、注入量が増加するに従い、タンク内層10とタンク外層11が接する面積が増え、推進剤が満杯まで充填された時にはタンク外層11はタンク内層10の全体を覆い、タンク外層11とタンク内層10は二層構造を構成する。このとき、タンク外層11はタンク内層10に生じる高圧力に耐えられるよう外側の層からタンク内層10を保護する。
このように推進剤貯蔵タンク1は伸縮性を有するため、軌道上における圧力変化によって生じるタンクの膨張にも対応可能であり、従来、タンクの支持構造物に設けられていたストレスリリーフ設計は実施する必要がない。
図3は、推進剤貯蔵タンク1に推進剤を注入/排出する推進剤注排部20の拡大図である。
図3において、推進剤貯蔵タンク1の推進剤注排部20は、タンク伸縮部4、推進剤注排弁5、上面プレート6、下面プレート7、上面プレート6と下面プレート7間を締結するプレート締結ボルト8から構成される。
推進剤注排弁5は、下面プレート7に搭載されており、推進剤を充填・排出するインタフェースを備えている。
タンク伸縮部4は、上面プレート6、および下面プレート7の間に挟み込まれる。タンク伸縮部4の口端は、丸みを帯びており、本口端を下面プレート7における窪み7aに入れ、上面プレート7と挟む。
このように推進剤貯蔵タンク1のタンク伸縮部4は、上面プレート6と下面プレート7の間に挟み込まれ、上面プレート6と下面プレート7の両プレートがプレート締結ボルト8により結合されることで、上面プレート6と下面プレート7に固定される。
このような構成を用いることで、タンク内に充填される推進剤の洩れを防止することができる。
図4は、上面プレート6と下面プレート7の図である。上面プレート6、下面プレート7は共に円板状のプレートであり、上面プレート6にはプレート締結ボルト8を通す複数の穴が設けられ、プレート締結ボルト8により上面プレート6と下面プレート7が締結される。下面プレート7にも複数の穴が設けられており、タンク締結ボルト9により、下面プレート7と人工衛星構体2の下面構体パネル2aがタンク締結ボルト9で固定される。
このようにして、伸縮性タンク1は、タンク締結ボルト9を用いて、衛星構体2に設置される。
このように構成された衛星システムにおいては、伸縮性タンク1は、衛星構体2内の空間に応じて変形し、タンク支持構造物も削除できるため、従来の衛星システムよりも自由度の高い機器配置が可能となる。
これにより、衛星の機能・性能を主眼とした最適設計が実施できるため、衛星システムの高性能化が実現できるだけでなく、タンク支持構造物、および締結部品の削減による衛星システムの軽量化も可能である。
また、金属製タンクでは必要であった加圧ガスが必要なくなり、タンクサイズを縮小・最適化できるため、従来の金属製タンク、およびタンク支持構造物によって使用できなかった空間を有効に活用できる。
これにより、衛星構体2の縮小化による軽量化、もしくは、搭載機器3の数量増加による機能・性能の向上が見込まれる。
上述のとおり、本発明に係る伸縮性タンク1を用いることで、従来では実現できなかった高性能かつ軽量化した衛星システムが実現可能となる。
1 推進剤貯蔵タンク、2 人工衛星構体、2a 上面構体パネル、2b 下面構体パネル、2c 側面構体パネル、3 搭載機器、4 タンク伸縮部、5 推進剤注排弁、6 上面プレート、7 下面プレート、7a 窪み、8 プレート締結ボルト、9 タンク締結ボルト、10 タンク内層、11 タンク外層、20 推進剤注排部。

Claims (4)

  1. 人工衛星の構体を構成する構体パネルと、
    前記構体の内側で、前記構体パネルに装着された機器と、
    推進剤を貯蔵する推進剤貯蔵タンクであって、前記推進剤を貯蔵するタンク伸縮部に、伸縮性を有して前記推進剤が充填されるに従い膨張するタンク内層と、前記タンク内層を外側で覆うタンク外層からなる二層構造を備えた推進剤貯蔵タンクと、
    を備える人工衛星システムであって、
    前記推進剤貯蔵タンクは、前記推進剤が充填されるに従い、前記構体の内側前記機器が装着されていない空間膨張することを特徴とする推進剤貯蔵タンクを搭載した人工衛星システム。
  2. 前記タンク伸縮部の口端は、上面プレートと下面プレートの間に挟まれて固定され、更に前記下面プレートは、前記タンク伸縮部が前記構体パネルの内側に設置されるように、前記構体パネルに固定されることを特徴とする請求項1記載の人工衛星システム。
  3. 前記下面プレートには、前記推進剤貯蔵タンク内に推進剤を注入し、あるいは前記推進剤貯蔵タンク内から推進剤を排出する推進剤注排弁を備えることを特徴とする請求項2記載の人工衛星システム。
  4. 前記推進剤貯蔵タンクは、前記タンク内層の収縮力によって、前記推進剤を前記推進剤排弁から排出することを特徴とする請求項3記載の人工衛星システム。
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