JP6396100B2 - 地震時早期利用再開支援システム - Google Patents

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Description

本発明は、所定の大きさ以上の地震が発生した際、軌道周辺部の鉄道構造物や道路周辺部の道路構造物の状態をモニタリングし、構造物の損傷度合いから現地確認の必要性を判定し、その結果を構造物の保守箇所に通知する早期利用再開支援システム、及び、そのようなシステムを構築する方法に関する。
現在、鉄道の運行や道路の通行においては、所定の大きさ以上の地震が発生した際は、列車の運行や自動車の通行をいったん停止し、安全確認を行った上で、運行や通行を再開することが一般的に行われている。しかし鉄道や道路の構造物は、列車や自動車が走行する方向に長く連なっており、確認が必要な構造物が多いため確認に時間がかり、その結果利用再開までに長時間を要する。
上述した安全確認を迅速に行うために、鉄道の例として、特許文献1(特開2014−17611号公報)には、軌道を走行可能な車体部と、前記車体部に搭載されるカメラと、前記カメラの視点を調整可能に前記カメラを支持する支持手段と、前記カメラで撮像された画像に含まれる軌道を検出する軌道検出手段と、前記検出された軌道の位置をもとに、前記撮像された画像における前記軌道の位置と前記カメラの視点との相対位置を一定とするように支持させる制御手段と、を備える軌道点検装置が開示されている。しかし、軌道上から見えない高架橋などの構造物の側面、下面の損傷個所や周辺状況については確認できない。
特開2014−17611号公報
所定の大きさ以上の地震後の運行や通行の再開のためには、軌道や道路舗装面の状態の他に、それらの周辺の鉄道構造物や道路構造物(以下、「鉄道構造物」や「道路構造物」を包括する語として「構造物」を用いる)の状態、具体的には、橋りょうの状態や、軌道や道路舗装面の周囲に設けられている電化柱の状態、或いは、軌道や道路舗装面の側部にある切り取りのり面の状態などの確認なども行わなければならない。
上記のような種々の確認を行うために、既存の地震計で一定以上の大きさの揺れが観測された場合、地盤の揺れが一定値以上と想定される要確認対象地区を定め、地震による構造物の揺れの大小にかかわらず、対象地区にある全ての構造物について作業員が巡回し、目視などによって確認を行っている。現状では、このように要確認対象地区内の全構造物の健全性を徒歩で目視しながら確認しているため確認作業に時間がかかり、地震後の運行や通行の再開までにかなりの時間を要する、という問題があった。
多くの乗客を輸送する鉄道や一般自動車を通行させている道路においては、地震後、運行や通行を速やかに再開させることが極めて重要であるが、従来、上述のような状況であるため、これを短時間に効率的に行うことができず、問題であった。
なお、地震後の構造物点検方法として、地震時の構造物の振動を、既存の地震計で測定された地盤振動から推定し、その結果で構造物の損傷度合いを推定することも理論的には可能である。しかし、既存の地震計は必ずしも判定したい構造物近傍にあるわけではなく、また地震計は通常地盤等の揺れを計測しているので、既存地震計の測定値を基に離れた
箇所にある構造物の振動を推定するためには、地震計の測定値を基に地震計から離れた位置にある構造物付近の地盤振動を推定し、さらに前記で推定された構造物付近の地盤振動から構造物の振動を推定する、という2回の推定を重ねる必要があり、理論的には可能であっても実用に供する精度が不足しているのが現状である。
上記問題点を解決するために、請求項1に係る発明は、鉄道に関連する複数の鉄道構造物、又は、道路に関連する複数の道路構造物に取り付けられる地震計測記録装置と、前記地震計測記録装置から第1データを収集し、収集された第1データに基づいて、鉄道構造物、又は、道路構造物の巡回確認の要否を判定する中央コンピューターと、前記中央コンピューターから鉄道構造物、又は、道路構造物の巡回確認の要否を受信する情報端末と、からなり、前記地震計測記録装置は、取り付けられた鉄道構造物、又は、道路構造物の応答に係るデータを取得する応答データ取得部と、前記応答データ取得部で取得された第1データを記憶する記憶部と、前記応答データ取得部で取得された第1データが閾値を超えたか否かを判断する判断部と、前記判断部で、前記応答データ取得部で取得されたデータが閾値を超えたと判断されると、前記記憶部に記憶されたデータを、前記中央コンピューターに送信する送信部と、を有し、前記中央コンピューターは、前記地震計測記録装置からデータを受信する受信部と、どの地震計測記録装置がどの鉄道構造物、又は、道路構造物のどの位置に取り付けられ、前記地震計測記録装置から受信した第1データに対する閾値がどの程度であるかに係るデータからなるデータベースと、前記受信部で受信した第1データと、前記データベースとに基づいて、鉄道構造物、又は、道路構造物の巡回確認の要否を判定する判定部と、前記判定部の判定結果を、前記情報端末に送信する送信部と、を有することを特徴とする地震時早期利用再開支援システムである。
また、請求項2に係る発明は、請求項に記載の地震時早期利用再開支援システムにおいて、前記中央コンピューターは、前記受信部で、受信した第1データを第2データに変換する変換部と、を有し、前記データベースには、さらに、どの地震計測記録装置がどの鉄道構造物、又は、道路構造物のどの位置に取り付けられ、前記変換部で変換した第2データに対する閾値がどの程度であるかに係るデータを有しており、前記判定部は、前記変換部で変換した第2データと、前記データベースとに基づいて、鉄道構造物、又は、道路構造物の巡回確認の要否を判定することを特徴とする。
また、請求項3に係る発明は、請求項又は請求項に記載の地震時早期利用再開支援システムにおいて、前記中央コンピューターは、前記受信部で、受信した第1データを第4データに変換する変換部と、を有し、前記データベースには、さらに、どの地震計測記録装置がどの鉄道構造物、又は、道路構造物のどの位置に取り付けられ、鉄道構造物、又は、道路構造物の固有振動数がどの程度であるかに係るデータを有しており、前記判定部は、前記変換部で変換した第4データと、前記データベースとに基づいて、鉄道構造物、又は、道路構造物の巡回確認の要否を判定することを特徴とする。
また、請求項4に係る発明は、請求項1乃至請求項のいずれか1項に記載の地震時早期利用再開支援システムにおいて、鉄道構造物、又は、道路構造物のうち地震に対する応答が同程度である構造物同士が同一のグループとなるようにグループ分けをされ、同一グループにグループ分けされた複数の構造物のうち、一部の構造物のみに前記地震計測記録装置が取り付けられ、前記地震計測記録装置から第1データを収集し、収集された第1データに基づいて、中央コンピューターが前記一部の構造物の巡回確認の要否を判定し、判定結果が、同一グループにグループ分けされた前記一部の構造物以外の構造物の巡回確認の要否の判定にも適用されることを特徴とする。
本発明に係る地震時早期利用再開支援システム1は、構造物に直接取り付けられた地震計測装置10により構造物の地震時の動きを測定しているため、構造物の振動を既存の地震計等から推定する現状の方法に比べて測定精度が高く、構造物の損傷度合いをより的確に判定できる特長を有しており、判定の結果として巡回確認不要となった構造物については現地確認を省略できる。このような、本発明に係る地震時早期利用再開支援システム1によれば、作業員が巡回により、安全確認を行う対象となる鉄道構造物の数を相当数減らすことが可能となり、地震後の列車運行や道路通行の再開までの時間を大幅に短縮することが可能となる。
本発明の実施形態に係る地震時早期利用再開支援システム1の概要を模式的に示す図である。 本発明の実施形態に係る地震時早期利用再開支援システム1で用いる地震計測記録装置10のブロック構成を示す図である。 地震計測記録装置10の鉄道構造物への取り付け例を示す図である。 地震計測記録装置10の鉄道構造物への取り付け例を示す図である。 地震計測記録装置10の鉄道構造物への取り付け例を示す図である。 地震計測記録装置10の管理テーブルで管理されるデータ構成例を示す図である。 中央コンピューター30におけるデータ形式変換の概略を示す図である。 地震計測記録装置10に対する閾値情報・固有振動数情報が記憶される閾値情報・固有振動数情報データベースのデータ構成例を示す図である。 震計測記録装置10におけるデータ処理のフローチャートを示す図である。 震計測記録装置10から中央コンピューター30に送信される応答加速度の時系列データ(第1データ)例を示す図である。 中央コンピューター30におけるデータ処理のフローチャートを示す図である。 情報端末40における表示画面の一例を示す図である。 本発明に係る地震時早期利用再開支援システム1におけるグループ化の概念を説明する図である。 地震計測記録装置10の鉄道構造物への取り付け例を示す図である。 鉄道構造物に対する傾きの閾値情報が記憶される傾き閾値情報データベースのデータ構成例を示す図である。 他の実施形態における中央コンピューター30におけるデータ処理のフローチャートを示す図である。 鉄道構造物の傾きの算出例を模式的に説明する図である。
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。図1は本発明の実施形態に係る地震時早期利用再開支援システム1の概要を模式的に示す図である。
本実施形態の地震時早期利用再開支援システム1においては、軌道R、R’周辺の複数の鉄道構造物の地震発生後の状態を把握すると共に、把握された状態に基づいて、地震発生後の安全確認として、作業員が巡回する必要があるか否かを判断し、その要否を作業員に報知することが想定されている。なお、地震時早期利用再開支援システム1を適用し得る対象は、鉄道事業における鉄道構造物に限らない。例えば、地震時早期利用再開支援システム1は、道路周辺部の道路構造物などの構造物の状態を把握し、地震発生後の安全確認として、作業員が巡回する必要があるか否かを判断し、その要否を作業員に報知する目的にも用いることができる。以下では、地震時早期利用再開支援システム1の適用対象として、鉄道事業における鉄道構造物を例として説明する。
本発明の実施形態に係る地震時早期利用再開支援システム1を適用する鉄道事業においては、複数の区間の軌道R、R’ のそれぞれを、管轄する管理事務所が複数存在するも
のとする。図1において、閉じた点線で示された空間内がそれぞれの管理事務所の管轄区間を示している。
また、図1においては、上記のような複数の管理事務所のうち、N区間を管轄する第N管理事務所を例に挙げ説明を進める。その他の管理事務所も、対象とする鉄道構造物はそれぞれ異なるものの、第N管理事務所と略同様の構成とすることできる。また、図1において、N’は、第N管理事務所の実事務所をイメージしている。
第N区間の軌道R、R’周辺部の複数の鉄道構造物には、複数の地震計測記録装置10が取り付けられている。図1では、複数の地震計測記録装置10が、軌道R、R’に沿って存在する鉄道構造物(図1には不図示)に取り付けられている様子を模式的に示している。
次に、この地震計測記録装置10の構成について説明する。図2は本発明の実施形態に係る地震時早期利用再開支援システム1で用いる地震計測記録装置10のブロック構成を示す図である。
図2に示す地震計測記録装置10において、演算部11は、CPUとCPU上で動作するプログラムを保持するROMとCPUのワークエリアであるRAMなどとからなる汎用の情報処理機構である。演算部11は、図示されている演算部11と接続される各構成と協働・動作する。
加速度計12は、振動を検出するセンサーであり、地震計測記録装置10が取り付けられている鉄道構造物の振動を検出することが想定されている。地震計測記録装置10の振動を検出するセンサーとして、本実施形態では、加速度計12を採用しているが、速度計など他のセンサーを用いても構わない。
計時部13は、日時に係るデータを生成するタイマーであり、記憶部14は書き換え可能な不揮発性の記憶素子である。加速度計12で取得される検出データは、計時部13で生成された日時データと共に、記憶部14に記憶される。
送信部15からは、記憶部14に記憶されるデータを、無線で送信するができるようになっている。また、電源部16は各構成に、電源を供給するものであり、バッテリーや商用電源を直流化したものを適宜利用することができる。
上記のような地震計測記録装置10で収集されたデータは、地震が発生すると、通信中継器20、通信網5を介して、中央コンピューター30に送信される。
なお、それぞれの地震計測記録装置10には固有の識別番号が付されており、中央コンピューター30側では、どの地震計測記録装置10から送信されたデータであるかを把握することができるようになっている。
上記のように構成される地震計測記録装置10が、具体的にどのような鉄道構造物に取り付けられるかを、図3乃至図5に基づいて説明する。図3乃至図5は、地震計測記録装置10の鉄道構造物への取り付け例を示す図である。
図3は、軌道R、R’が敷設されている高架橋の周辺部に地震計測記録装置10を取り付けている例である。図3の例では、2つの地震計測記録装置10を橋脚部に、また、2つの地震計測記録装置10を電化柱に取り付けている例を示している。この例に限らず、高架橋において地震計測記録装置10を取り付ける位置は任意である。
図4は、斜面中の踊り場に軌道R、R’が敷設されているような状況を示している。図4の例では、2つの地震計測記録装置10を盛り土のり面に、また、2つの地震計測記録装置10を切り取りのり面に取り付けている例を示している。この例に限らず、のり面において地震計測記録装置10を取り付ける位置は任意である。
図5は、トンネル中に軌道R、R’が敷設されている場合を示しており、図5の例では、3つの地震計測記録装置10をトンネルの覆工部に設けている例を示している。この例に限らず、トンネルにおいて地震計測記録装置10を取り付ける位置は任意である。
以上のように、各鉄道構造物に取り付けられた地震計測記録装置10からは、地震が発生すると、中央コンピューター30にデータが送信される。ここで、中央コンピューター30としては、データ受信機能、演算機能、データ蓄積機能、データ送信機能、メール配信機能などを有する汎用のサーバーなどを用いることができる。
中央コンピューター30では、地震計測記録装置10から受信したデータに基づいて、地震発生後の安全確認として、作業員が巡回する必要があるか否かを判断する。また、この判断結果については、中央コンピューター30から、通信網5や通信中継器20などを介して、作業員が参照することが想定されるパーソナルコンピューター、スマートフォン、携帯電話、タブレット端末などの情報端末40に対して送信する。
中央コンピューター30においては、それぞれの地震計測記録装置10を管理するための管理テーブル(データベースの一種)が予め設けられている。図6は地震計測記録装置10の管理テーブルで管理されるデータ構成例を示す図である。
地震計測記録装置10の管理テーブルの例においては、管理情報として、「地震計測記録装置の識別番号」、「鉄道構造物所在地」、「区間」、「鉄道構造物名」、「取り付け位置」、「構造物建設地地盤強度」、「鉄道構造物諸元(構造形式、基礎種別、部材寸法、配筋など)」、「鉄道構造物建設年月」の各項目の情報が採用されている。これは、地震計測記録装置10の管理テーブルのデータ構成の一例であり、管理テーブルのデータ構
成は適宜選択し得る。
管理テーブルの項目における「地震計測記録装置の識別番号」には、地震計測記録装置10のそれぞれに付されている唯一無二の識別番号に係るデータが入力されている。
また、管理テーブルの項目における「鉄道構造物所在地」には、地震計測記録装置10が取り付けられている鉄道構造物の所在地に係る線区名のデータが入力されている。この「鉄道構造物所在地」には、座標形式のデータを用いてもよい。
また、管理テーブルの項目における「区間」には、地震計測記録装置10が取り付けられている鉄道構造物が路線上のどの位置に存在するかに係るデータ(鉄道事業では、基準点からの距離「キロ程」を用いる場合が多い。)が入力されている。このデータにより、中央コンピューター30は、どの区間を管轄する管理事務所に存在する情報端末40に、報知を行うかなどを決めることができる。
また、管理テーブルの項目における「鉄道構造物名」には、地震計測記録装置10が取り付けられているどの鉄道構造物に取り付けられているかに係るデータが入力されている。
また、管理テーブルの項目における「取り付け位置」には、地震計測記録装置10が鉄道構造物のどの位置に取り付けられているかに係るデータが入力されている。
また、管理テーブルの項目における「構造物建設地地盤強度」には、地震計測記録装置10が取り付けられている鉄道構造物が、建設されている土地の地盤強度に係るデータが入力されている。
また、管理テーブルの項目における「鉄道構造物諸元(構造形式、基礎種別、部材寸法、配筋など)」には、地震計測記録装置10が取り付けられている鉄道構造物の諸元に係るデータが入力されている。この諸元としては、構造形式(例えば、2層高架橋、単純桁、橋脚)、基礎種別(例えば直接基礎、杭基礎)、部材寸法、配筋などを挙げることができるが、これらに限られるものではない。
また、管理テーブルの項目における「鉄道構造物建設年月」には、地震計測記録装置10が取り付けられている鉄道構造物の建設年月に係るデータが入力されている。
また、中央コンピューター30においては、地震計測記録装置10から受信したデータを、別の形式のデータに変換する機能を有している。図7は中央コンピューター30におけるデータ形式変換の概略を示す図である。
本実施形態においては、中央コンピューター30は、地震計測記録装置10から加速度計12で取得されたデータ、すなわち、地震計測記録装置10が取り付けられた鉄道構造物の応答加速度の時系列データを受信する。ここでは、加速度計12で取得されたデータを、第1データと称することとする。
中央コンピューター30は、応答加速度の時系列データ(第1データ)を、フーリエ変換することで、加速度応答スペクトルを得る。この加速度応答スペクトルデータを、第4データと称することとする。
また、中央コンピューター30は、応答加速度の時系列データ(第1データ)を、積分することで、応答速度の時系列データを得る。この応答速度の時系列データを、第2デー
タと称することとする。
また、中央コンピューター30は、応答速度の時系列データ(第2データ)を、フーリエ変換することで、速度応答スペクトルを得る。この速度応答スペクトルデータを、第5データと称することとする。
また、中央コンピューター30は、応答速度の時系列データ(第2データ)を、積分することで、応答変位の時系列データを得る。この応答変位の時系列データを、第3データと称することとする。
また、中央コンピューター30は、応答変位の時系列データ(第3データ)を、フーリエ変換することで、変位応答スペクトルを得る。この変位応答スペクトルデータを、第6データと称することとする。
上記のように、中央コンピューター30は、地震計測記録装置10から加速度計12で取得された応答加速度の時系列データ(第1データ)から、応答速度の時系列データ(第2データ)、応答変位の時系列データ(第3データ)、加速度応答スペクトルデータ(第4データ)、速度応答スペクトルデータ(第5データ)、変位応答スペクトルデータ(第6データ)の5種類のデータを得るようにしているが、本発明は、このような態様に限られるものではない。
例えば、地震計測記録装置10においては、加速度計12に代えて速度計を用いて、中央コンピューター30は、地震計測記録装置10から速度計で取得された応答速度の時系列データ(第2データ)を受信し、これを微分することで応答加速度の時系列データ(第1データ)を得、また、これを積分することで応答変位の時系列データ(第3データ)を得るようにしてもよい。さらに、応答加速度の時系列データ(第1データ)を、フーリエ変換することで、加速度応答スペクトルを得、応答速度の時系列データ(第2データ)を、フーリエ変換することで、速度応答スペクトルを得、応答変位の時系列データ(第3データ)を、フーリエ変換することで、変位応答スペクトルを得るようにしてもよい。
なお、特許請求の範囲では、「第1データを第2データに変換する変換部」と記載されているが、これは、当該変換部が、所定の形式のデータを微分又は積分を行うことで他の形式のデータに変換することを代表している。本発明においては、変換部は、積分を行うことで「第2データを第3データに変換する」こと、微分を行うことで「第3データを第2データに変換する」こと、微分を行うことで「第2データを第1データに変換する」こと、も行い得る。
また、特許請求の範囲では、「第1データを第4データに変換する変換部」と記載されているが、これは、当該変換部が、所定の形式のデータをフーリエ変換することで他の形式のデータに変換することを代表している。本発明においては、変換部は、フーリエ変換することで「第2データを第5データに変換する」こと、フーリエ変換することで「第3データを第6データに変換する」こと、も行い得る。
次に、識別番号がn=1〜mのそれぞれの地震計測記録装置10に対する応答加速度の時系列データ(第1データ)、応答速度の時系列データ(第2データ)、応答変位の時系列データ(第3データ)に対する閾値情報と、加速度応答スペクトルデータ(第4データ)、速度応答スペクトルデータ(第5データ)、変位応答スペクトルデータ(第6データ)に対する固有振動数情報(地震計測記録装置10が取り付けられた鉄道構造物の固有振動数情報)と、をデータベースとした閾値情報・固有振動数情報データベースについて説明する。
図8は地震計測記録装置10に対する閾値情報・固有振動数情報が記憶される閾値情報・固有振動数情報データベースのデータ構成例を示す図である。閾値情報・固有振動数情報データベースにおいては、図8に示すようなデータが、n=1からn=mまでのm個存在するものが準備される。
また、このようなデータベースの準備のためには、「地震計測記録装置の識別番号」に対応して、「鉄道構造物所在地」、「区間」、「鉄道構造物名」、「取り付け位置」、「構造物建設地地盤強度」、「鉄道構造物諸元(構造形式、基礎種別、部材寸法、配筋など)」、「鉄道構造物建設年月」の各項目などが規定されている震計測記録装置10の管理テーブルが用いられる。
閾値情報・固有振動数情報データベースにおいては、図8(A)に示すように、識別番号がnであるものに対して、応答加速度の時系列データ(第1データ)に対する閾値情報An、応答速度の時系列データ(第2データ)に対する閾値情報Vn、応答変位の時系列データ(第3データ)に対する閾値情報Dnが記憶されている。
本発明の実施形態に係る地震時早期利用再開支援システム1においては、識別番号がnである震計測記録装置10から中央コンピューター30が受信した応答加速度の時系列データ(第1データ)が閾値情報Anを超えた場合、或いは、前記応答加速度の時系列デー
タ(第1データ)から中央コンピューター30で演算された応答速度の時系列データ(第2データ)が閾値情報Vnを超えた場合、或いは、前記応答加速度の時系列データ(第1
データ)から中央コンピューター30で演算された応答変位の時系列データ(第3データ)が閾値情報Dnを超えた場合に、震計測記録装置10が取り付けられている鉄道構造物
の損傷度合いが高いものと判断し、作業員による巡回が必要であるものと判断する。
また、閾値情報・固有振動数情報データベースにおいては、図8(B)に示すように、識別番号がnであるものに対して、加速度応答スペクトルデータ(第4データ)に対する固有振動数情報San、速度応答スペクトルデータ(第5データ)に対する固有振動数情
報Svn、変位応答スペクトルデータ(第6データ)に対する固有振動数情報Sdnが記憶されている。
本発明の実施形態に係る地震時早期利用再開支援システム1においては、識別番号がnである震計測記録装置10から中央コンピューター30が受信した応答加速度の時系列データ(第1データ)から演算された加速度応答スペクトルデータ(第4データ)が、固有振動数情報Sanに近い値である場合(すなわち、応答スペクトルデータが固有振動数情
報から所定範囲内の値である場合)、或いは、中央コンピューター30が受信した応答加速度の時系列データ(第1データ)から演算された速度応答スペクトルデータ(第5データ)が、固有振動数情報Svnに近い値である場合、或いは、中央コンピューター30が
受信した応答加速度の時系列データ(第1データ)から演算された変位応答スペクトルデータ(第6データ)が、固有振動数情報Sdnに近い値である場合に、震計測記録装置1
0が取り付けられている鉄道構造物の損傷度合いが高いものと判断し、作業員による巡回が必要であるものと判断する。
なお、震計測記録装置10で直接的に取得されるデータが、第1データであり、第2データ乃至第6データは第1データからデータ変換されたデータである。第2データ以降のデータに冠される序数に、特段の意味はない。
次に、以上のように構成される本発明の実施形態に係る地震時早期利用再開支援システム1におけるデータ処理について説明する。
まず、地震時早期利用再開支援システム1における震計測記録装置10において実行されるデータ処理について説明する。図9は震計測記録装置10におけるデータ処理のフローチャートを示す図である。図9に示すフローチャートは、複数の震計測記録装置10のそれぞれで互いに独立的に実行される。
震計測記録装置10が起動され、ステップS100でデータ処理が開始されると、続く、ステップS101においては、加速度計12によって応答加速度データ(第1データ)を取得し、次のステップS102においては、計時部13で生成された日時に係るデータと共に、記憶部14に記録し、次のステップS103においては、記憶部14で記録されているデータで、所定時間が経過し、古くなった記録を消去する。
ステップS104では、加速度計12によって、閾値以上の応答加速度を検出したか否かが判断される。ステップS104の判断がNOであれば、ステップS101に戻って、ループする。
一方、ステップS104の判断がYESであれば、ステップS105に進み、記憶部14で記録されている、規定時間分のデータを送信部15から中央コンピューター30に対して送信する。
上記のようなステップS105において、震計測記録装置10から中央コンピューター30に送信する応答加速度の時系列データ(第1データ)の一例を、図10を参照して説明する。
図10は震計測記録装置10から中央コンピューター30に送信される応答加速度の時系列データ(第1データ)例を示す図である。
図10において、横軸は時間を、縦軸は構造物の応答加速度を示しており、曲線は応答加速度の時系列データ(第1データ)を示している。
本実施形態では、震計測記録装置10から中央コンピューター30に送信する応答加速度の時系列データ(第1データ)としては、応答加速度が閾値以上となっている間のTo
で示される時間分のデータと、応答加速度が閾値以上となる前のT1で示される時間分の
データと、応答加速度が閾値以上でなくなった後のT2で示される時間分のデータと、が
用いられる。なお、時間T1や時間T2の長さは、任意とすることができるが、例えば、時間T1は10秒、時間T2は5秒程度とすることができる。
上記のように、震計測記録装置10は、取得したデータの全てを中央コンピューター30に送信するのではなく、応答加速度が閾値以上となった場合のみに、データを中央コンピューター30に送信するので、通信回線のトラフィック負荷や、中央コンピューター30におけるデータ処理負荷などを軽減することが可能となる。
次に、以上のように震計測記録装置10から送信された応答加速度の時系列データ(第1データ)を、中央コンピューター30側が受信したときのデータ処理について説明する。図11は中央コンピューター30におけるデータ処理のフローチャートを示す図である。
ステップS200で、中央コンピューター30が、震計測記録装置10から応答加速度の時系列データ(第1データ)を受信すると、続いて、ステップS201では、応答加速度の時系列データ(第1データ)をフーリエ変換することで、加速度応答スペクトルデー
タ(第4データ)に変換し、ステップS202では、応答加速度の時系列データ(第1データ)を積分することで、応答速度の時系列データ(第2データ)に変換し、ステップS203では、応答速度の時系列データ(第2データ)をフーリエ変換することで、速度応答スペクトルデータ(第5データ)に変換し、ステップS204では、応答速度の時系列データ(第2データ)を積分することで、応答変位の時系列データ(第3データ)に変換し、ステップS205では、応答変位の時系列データ(第3データ)をフーリエ変換することで、変位応答スペクトルデータ(第6データ)に変換する。
ステップS206においては、震計測記録装置10の取り付けに関する情報(識別番号、鉄道構造物に関する情報等)を、管理テーブルから取得する。ここで、本例では、識別番号がnである震計測記録装置10を想定する。
次のステップS207においては、取り付け情報に応じた閾値・固有振動数を、閾値情報・固有振動数情報データベースから取得する。
ステップS208では、応答加速度の時系列データ(第1データ)、応答速度の時系列データ(第2データ)、応答変位の時系列データ(第3データ)のいずれかが、対応する閾値を超えるか否かが判定される。
すなわち、ステップS208では、
応答加速度の時系列データ(第1データ)>An
応答速度の時系列データ(第2データ)>Vn
応答変位の時系列データ(第3データ)>Dn
のいずれかが真であるかが判定される。
ステップS208における判定がYESである場合には、ステップS209に進み、震計測記録装置10が取り付けられている鉄道構造物の損傷度合いが高いものと判定し、ステップS210において、巡回確認が必要である旨を情報端末40に送信する。
ステップS208における判定がNOである場合には、ステップS211に進み、加速度応答スペクトルデータ(第4データ)、速度応答スペクトルデータ(第5データ)、変位応答スペクトルデータ(第6データ)のいずれかが、固有振動数に近い値であるか否かが判定される。
すなわち、ステップS211では、
|加速度応答スペクトルデータ(第4データ)−San|<δ1
|速度応答スペクトルデータ(第5データ)−Svn|<δ2
|変位応答スペクトルデータ(第6データ)−Sdn|<δ3
のいずれかが真であるかが判定される。ここで、δ1、δ2、δ3は、いずれも、構造物の
諸元などで決まる定数である。
ステップS211における判定がYESである場合には、ステップS209に進み、震計測記録装置10が取り付けられている鉄道構造物の損傷度合いが高いものと判定し、ステップS210において、巡回確認が必要である旨を情報端末40に送信する。
一方、ステップS211における判定がNOである場合には、ステップS212で、計測記録装置10が取り付けられている鉄道構造物の損傷度合いは低いものと判定し、ステップS213 では、巡回確認が不要である旨を情報端末40に送信する。
ステップS214で、データ処理を終了する。
上記のような中央コンピューター30のデータ処理によって、情報端末40は、巡回確認の要・不要に係る情報を受信し、作業員などに報知を行う。図12は情報端末40における表示画面の一例を示す図である。
図12に示すように、情報端末40の表示画面を参照することで、N区間における「N
区間高架橋」、「N区間電化柱」、「N区間切り取りのり面」、「N区間盛り土のり面」に
ついては巡回確認が不要であり、「N区間トンネル」については巡回確認が必要であるこ
とが、明瞭に確認することが可能となる。
以上のように、本発明に係る地震時早期利用再開支援システム1は、構造物に直接取り付けられた地震計測装置10により構造物の地震時の動きを測定しているため、構造物の振動を既存の地震計等から推定する現状の方法に比べて測定精度が高く、構造物の損傷度合いをより的確に判定できる特長を有しており、判定の結果として巡回確認不要となった構造物については現地確認を省略できる。その結果、作業員が巡回により、安全確認を行う対象となる鉄道構造物の数を相当数減らすことが可能となり、地震後の列車運行の再開(或いは、道路通行の再開)までの時間を大幅に短縮することが可能となる。
以上の実施形態においては、鉄道構造物の損傷度合い、及び、巡回確認の要否を判断するための基準となる情報として、応答加速度の時系列データ(第1データ)、応答速度の時系列データ(第2データ)、応答変位の時系列データ(第3データ)、加速度応答スペクトルデータ(第4データ)、速度応答スペクトルデータ(第5データ)、変位応答スペクトルデータ(第6データ)の全てを用いたが、必ずしも、6種類の全てのデータを用いる必要はなく、例えば、鉄道構造物の種別に応じて、6種類のデータのうち必要なデータを選択して、それを基に、鉄道構造物の損傷度合い、及び、巡回確認の要否を判断することもできる。そうすれば、中央コンピューター30の処理負荷などを軽減することが可能となる。
上記のような本発明に係る地震時早期利用再開支援システム1においては、構造物が線状に長い距離を連続するという鉄道の特性上、軌道R、R’周辺の鉄道構造物の数が多く、必要となる地震計測記録装置10が多くなってしまう、という懸念が考えられる。
そこで、鉄道構造物を、その構造形式(桁式高架、橋りょう、盛り土、トンネル)、構造寸法と緒元、建設年代、地盤条件などから地震時の応答が似ているものをグループ分けし、同一のグループの鉄道構造物群のうち、地震時の挙動や巡回確認の難易度等を勘案して選定した一部の鉄道構造物(以下「代表鉄道構造物」を用いる。)を当該グループの代表とし、代表鉄道構造物だけに地震計測記録装置10を取り付けることで、地震計測記録装置10の設置数量を減らすと共に、現地確認箇所も少なくする。なお代表鉄道構造物の数は、ある同一グループに対して1か所とは限らないが、同一グループの鉄道構造物数>代表鉄道構造物数となるように定められ、両者の差が大きいほど現地確認箇所も少なくて済む。
図13は本発明に係る地震時早期利用再開支援システム1におけるグループ化の概念を説明する図であり、軌道R、R’に沿った鉄道構造物の構造形式と基礎形式の概略を模式的に示している。
図13に示す例では、直接基礎上のラーメン高架橋Aと、直接基礎上のラーメン高架橋Bとは単純桁を挟んで隣接しており、構造物に作用する地震動は同程度と考えられるものとする。また、両者の構造形式も基礎形式も同一で、柱・はり・スラブの形状寸法や配筋量も同じであるとする。この場合、2つの高架橋は地震時に同様の応答をすると推定され
るので、両者を同一グループとみなし、地震計測記録装置10の取り付ける対象の鉄道構造物を、ラーメン高架橋A、又はラーメン高架橋Bのいずれかとし、もう一方には取付けない。地震の際には地震計測記録装置を取り付けた高架橋に出された巡回確認要否判定をもう一方の高架橋にも当てはめる。具体的には、高架橋Aのみに地震計測装置10を取付け、判定の結果巡回必要となった場合、巡回確認するのは高架橋Aのみとし、高架化橋Bは巡回しない。また逆に、判定の結果巡回不要となった場合、現地の巡回は高架橋A・高架化橋Bともに行わない。
一方、ラーメン高架橋Cについては、基礎形式がラーメン高架橋A、ラーメン高架橋Bとは、異なり、地震時の応答も異なることが推定されるので、ラーメン高架橋Cについては、地震計測記録装置10の取り付ける対象とする。
上記のように、構造形式や入力地震動などが類似している鉄道構造物を同一グループにグループ分けすることで、地震計測記録装置10の設置数量を減らすことが可能となり、巡回確認対象の鉄道構造物を減らし、地震後の早期運転再開に資することができる。
次に、本発明の他の実施形態について説明する。先の実施形態においては、識別番号がnである鉄道構造物に対して、応答加速度の時系列データ(第1データ)が閾値情報An
を、また、応答速度の時系列データ(第2データ)が閾値情報Vnを、また、応答変位の
時系列データ(第3データ)が閾値情報Dnを超えるか否かにより、当該鉄道構造物の損
傷度合いの高低を判定したり、或いは、加速度応答スペクトルデータ(第4データ)が固有振動数情報Sanに、また、速度応答スペクトルデータ(第5データ)が固有振動数情
報Svnに、また、変位応答スペクトルデータ(第6データ)が固有振動数情報Sdnに近い値であるか否かにより、当該鉄道構造物の損傷度合いの高低を判定したりするものであった。
これに対して、本発明の他の実施形態においては、応答変位の時系列データ(第3データ)に基づいて、2つ以上の震計測記録装置10が取り付けられている鉄道構造物の傾きを求め、この傾きが、閾値を超えるか否かにより、当該鉄道構造物の損傷度合いの高低を判定する。以下、鉄道構造物に識別番号が(n−1)の震計測記録装置10と、識別番号がnの震計測記録装置10とが取り付けられている例に基づいて、説明する。
なお、鉄道構造物の損傷度合いの高低を判定するために、本発明の他の実施形態に係る方法のみを用いるようにしてもよいし、本発明の他の実施形態に係る方法と、先の実施形態に係る方法を併用するようにしてもよい。
本実施形態では、管理テーブルの項目における「取り付け位置」には、地震計測記録装置10が鉄道構造物に取り付けられている位置の3次元位置座標に係るデータが入力されている。
図14は地震計測記録装置10の鉄道構造物への取り付け例を示す図である。この例では、識別番号が(n−1)である震計測記録装置10、及び、識別番号がnである震計測記録装置10が電化柱(鉄道構造物の一種)に取り付けられており、管理テーブルの「取り付け位置」の項目に、3次元位置座標(an-1,bn-1,cn-1)、及び、3次元位置座
標(an,bn,cn)が記憶されている場合を示している。
図15は鉄道構造物に対する傾きの閾値情報が記憶される傾き閾値情報データベースのデータ構成例を示す図である。傾き閾値情報データベースにおいては、図15に示すように、鉄道構造物名に対する、傾きの閾値情報θが記憶されている。傾き閾値情報データベースにおいては、図15に示すようなデータが、鉄道構造物の数だけ存在するものが準備
される。
また、このようなデータベースの準備のためには、「地震計測記録装置の識別番号」に対応して、「鉄道構造物所在地」、「区間」、「鉄道構造物名」、「取り付け位置」、「構造物建設地地盤強度」、「鉄道構造物諸元(構造形式、基礎種別、部材寸法、配筋など)」、「鉄道構造物建設年月」の各項目などが規定されている震計測記録装置10の図6に示される管理テーブルが用いられる。
本発明の他の実施形態に係る地震時早期利用再開支援システム1においては、識別番号が(n−1)、及びnである震計測記録装置10から中央コンピューター30が受信した応答加速度の時系列データ(第1データ)から、応答変位の時系列データ(第3データ)を算出し、さらに、これに基づいて、識別番号が(n−1)、及びnである震計測記録装置10が取り付けられている鉄道構造物の傾きを求め、この傾きが閾値θを超えた場合に、当該鉄道構造物の損傷度合いが高いものと判断し、作業員による巡回が必要であるものと判断する。
次に、以上のように震計測記録装置10から送信された応答加速度の時系列データ(第1データ)を、中央コンピューター30側が受信したときのデータ処理について説明する。図16は他の実施形態における中央コンピューター30におけるデータ処理のフローチャートを示す図である。
ステップS300で、中央コンピューター30が、震計測記録装置10から応答加速度の時系列データ(第1データ)を受信すると、続いて、ステップS301では、応答加速度の時系列データ(第1データ)を積分することで、応答速度の時系列データ(第2データ)に変換し、ステップS302では、応答速度の時系列データ(第2データ)を積分することで、応答変位の時系列データ(第3データ)に変換する。このようなステップS302により、応答変位(Δan-1,Δbn-1,Δcn-1)、及び、応答変位(Δan,Δbn
,Δcn)の時系列データを得ることができる。
ステップS303においては、震計測記録装置10の取り付け3次元位置座標に関する情報(an-1,bn-1,cn-1)、及び、(an,bn,cn)を、管理テーブルから取得する。ここで、本例では、識別番号が(n−1)、及び、nである、図14に示す2つの震計測記録装置10を想定している。
次のステップS304においては、識別番号nの震計測記録装置10が取り付けられている鉄道構造物の傾きφを算出する。図17は鉄道構造物の傾きの算出例を模式的に説明する図である。鉄道構造物の傾きφを算出においては、応答変位(Δan-1,Δbn-1,Δcn-1)を、識別番号(n−1)の震計測記録装置10の元の位置座標に加えて求めた、
現在の震計測記録装置10の点(an-1+Δan-1,bn-1+Δbn-1,cn-1+Δcn-1)と、
応答変位(Δan,Δbn,Δcn)を、識別番号nの震計測記録装置10の元の位置座標
に加えて求めた、現在の震計測記録装置10の点(an+Δan,bn+Δbn,cn+Δcn
と、元の識別番号nの震計測記録装置10があった点(an,bn,cn)と、から求める
次のステップS305においては、鉄道構造物(本例では、○○電化柱)の傾きの閾値θを、傾き閾値情報データベースから取得する。
ステップS306では、ステップS304で算出したφが、S305で取得した閾値θを超えるか否かが判定される。すなわち、ステップS306では、φ>θが真であるかが判定される。
ステップS306における判定がYESである場合には、ステップS307に進み、震計測記録装置10が取り付けられている鉄道構造物の損傷度合いが高いものと判定し、ステップS308において、巡回確認が必要である旨を情報端末40に送信する。
一方、S306における判定がNOである場合には、ステップS309で、計測記録装置10が取り付けられている鉄道構造物の損傷度合いは低いものと判定し、ステップS310では、巡回確認が不要である旨を情報端末40に送信する。
ステップS311で、データ処理を終了する。
上記のような中央コンピューター30のデータ処理によって、情報端末40は、巡回確認の要・不要に係る情報を受信し、作業員などに報知を行う。
以上のような他の実施形態によっても、作業員が巡回により、安全確認を行う対象となる鉄道構造物の数を相当数減らすことが可能となり、地震後の列車運行の再開(或いは、道路通行の再開)までの時間を大幅に短縮することが可能となる。
1・・・地震時早期利用再開支援システム
5・・・通信網
10・・・地震計測記録装置
11・・・演算部
12・・・加速度計
13・・・計時部
14・・・記憶部
15・・・送信部
16・・・電源部
20・・・通信中継器
30・・・中央コンピューター
40・・・情報端末
N・・・第N管理事務所管轄区間
N’・・・第N管理事務所
R、R’・・・軌道

Claims (4)

  1. 鉄道に関連する複数の鉄道構造物、又は、道路に関連する複数の道路構造物に取り付けられる地震計測記録装置と、
    前記地震計測記録装置から第1データを収集し、収集された第1データに基づいて、鉄道構造物、又は、道路構造物の巡回確認の要否を判定する中央コンピューターと、
    前記中央コンピューターから鉄道構造物、又は、道路構造物の巡回確認の要否を受信する情報端末と、からなり、
    前記地震計測記録装置は、
    取り付けられた鉄道構造物、又は、道路構造物の応答に係るデータを取得する応答データ取得部と、
    前記応答データ取得部で取得された第1データを記憶する記憶部と、
    前記応答データ取得部で取得された第1データが閾値を超えたか否かを判断する判断部と、
    前記判断部で、前記応答データ取得部で取得されたデータが閾値を超えたと判断されると、前記記憶部に記憶されたデータを、前記中央コンピューターに送信する送信部と、を有し、
    前記中央コンピューターは、
    前記地震計測記録装置からデータを受信する受信部と、
    どの地震計測記録装置がどの鉄道構造物、又は、道路構造物のどの位置に取り付けられ、前記地震計測記録装置から受信した第1データに対する閾値がどの程度であるかに係るデータからなるデータベースと、
    前記受信部で受信した第1データと、前記データベースとに基づいて、鉄道構造物、又は、道路構造物の巡回確認の要否を判定する判定部と、
    前記判定部の判定結果を、前記情報端末に送信する送信部と、を有することを特徴とする地震時早期利用再開支援システム。
  2. 前記中央コンピューターは、
    前記受信部で、受信した第1データを第2データに変換する変換部と、を有し、
    前記データベースには、さらに、どの地震計測記録装置がどの鉄道構造物、又は、道路構造物のどの位置に取り付けられ、前記変換部で変換した第2データに対する閾値がどの程度であるかに係るデータを有しており、
    前記判定部は、前記変換部で変換した第2データと、前記データベースとに基づいて、鉄道構造物、又は、道路構造物の巡回確認の要否を判定することを特徴とする請求項に記載の地震時早期利用再開支援システム。
  3. 前記中央コンピューターは、
    前記受信部で、受信した第1データを第4データに変換する変換部と、を有し、
    前記データベースには、さらに、どの地震計測記録装置がどの鉄道構造物、又は、道路構造物のどの位置に取り付けられ、鉄道構造物、又は、道路構造物の固有振動数がどの程度であるかに係るデータを有しており、
    前記判定部は、前記変換部で変換した第4データと、前記データベースとに基づいて、鉄道構造物、又は、道路構造物の巡回確認の要否を判定することを特徴とする請求項又は請求項に記載の地震時早期利用再開支援システム。
  4. 鉄道構造物、又は、道路構造物のうち地震に対する応答が同程度である構造物同士が同一のグループとなるようにグループ分けをされ、
    同一グループにグループ分けされた複数の構造物のうち、一部の構造物のみに前記地震計測記録装置が取り付けられ、
    前記地震計測記録装置から第1データを収集し、
    収集された第1データに基づいて、中央コンピューターが前記一部の構造物の巡回確認の要否を判定し、
    判定結果が、同一グループにグループ分けされた前記一部の構造物以外の構造物の巡回確認の要否の判定にも適用されることを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれか1項に記載の地震時早期利用再開支援システム。
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