JP6395684B2 - 溶銑の製造方法 - Google Patents
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Description
(0)還元鉄製造工程
この工程では、前記溶解炉10に投入されるべき固体還元鉄の塊成化物2が造成される。この固体還元鉄からなる塊成化物2は、例えば、粉状の酸化鉄及び炭素質還元剤を混合、造粒してペレット状またはブリケット状の原料混合体を成形する工程と、その原料混合体を回転炉床炉に装入して加熱することにより還元する工程と、を経て製造される。
この実施の形態に係る溶銑の製造方法では、まず、前記固体還元鉄からなる塊成化物2を溶解炉本体12内で溶解して溶銑4を生成する溶銑生成工程が行われる。この溶銑生成工程では、下記の(1−1)溶解工程と(1−2)排滓工程とが複数回にわたって交互に繰返される。換言すれば、当該溶解工程が複数回に分けられ、それぞれの溶解工程の終了の度に当該排滓工程が行われる。
それぞれの溶解工程では、前記溶解炉本体12が水平姿勢に保たれた状態で、前記装入シュート14を通じて当該溶解炉本体12内に固体還元鉄からなる複数の前記塊成化物2が例えば自然落下方式で投入されるとともに、加熱装置である複数の電極16の通電により前記複数の塊成化物2が前記溶解炉本体12内でアーク加熱されて溶解される。この塊成化物2の溶解により、図2に示されるように、前記溶解炉本体12内に溶銑4が生成されるとともに、溶融スラグ6が副生されて前記溶銑4の上にスラグ層を形成する。このスラグ層の厚みは、溶解工程において連続的に投入される前記塊成化物2の量が多いほど、つまりその投入時間が長いほど、大きくなる。
各排滓工程は、当該排滓工程の直前の溶解工程が終了した後、傾動機構20が前記溶解炉本体12を図3に示すように排滓方向に傾動させる(図3では左に傾ける)こと、及び、図4に示すようにスラグドア34が上昇して排滓口30を開くことにより、行われる。すなわち、この排滓工程では、前記溶解工程での前記塊成化物2の投入が既に止められた状態で前記溶融スラグ6が前記排滓口30を通じて前記溶解炉本体12の外に排出される。前記スラグは前記溶解炉10の排滓口30の下に仮置きしたスラグ・ポットで受滓してもよいし、溶解炉10の排滓口30の下の土間に直接流滓してもよい。
前記溶銑生成工程の終了後(つまり最後の溶解工程及びこれに続く排滓工程が終了した後)出銑工程が行われる。この出銑工程では、前記傾動機構20が前記溶解炉本体12を出銑方向に傾動させる(図1では右に傾ける)ことにより当該溶解炉本体12内の前記溶銑4を前記出銑口28を通じて炉外に排出する。つまり、前記複数回の溶解工程の繰り返しにより溶解炉本体12内に生成された前記溶銑4が、その後の出銑工程において一度に排出される。
アーク加熱式溶解炉10の出銑量は30t、前ヒートのタップ後の通電開始時の塊成化物の溶解を促進すべく約9tの種湯を保持するために溶銑保持量は最大39tとなり、当該溶解炉10の内径は4.6mである。アーク加熱式溶解炉10は3相交流アーク炉であり、よって電極16の本数は3本である。
投入される固体還元鉄の塊成化物2は、平均粒径が約16mm、平均見掛け比重1.8のペレットである。前記のとおり、固体還元鉄のFe含有率が低いほど鉱石中のSiO2の比率が高くなり、スラグ副生量も多くなるが、この実施例において投入される固体還元鉄の塊成化物には、1tの溶銑の生成にあたり435kgの溶融スラグが副生される成分組成を有するものが用いられる。具体的には次のとおりである。
(b−1)原料となる鉱石の品位
総Fe:57.0%
Fe2O3:80.0%
FeO:1.4%
SiO2:5.7%
Al2O3:2.7%
CaO:0.4%
MgO:0.2%
(b−2)原料となる石炭の品位
水分:18.0%
揮発分:38.1%
固定炭素:39.4%
灰分:4.5%
硫黄:1.0%
(b−3)固体還元鉄の品位
総Fe:70.5%
金属Fe:57.6%
FeO:16.9%
C:4.0%
SiO2:8.7%
Al2O3:4.8%
CaO:6.1%
MgO:0.5%
(b−4)副生される溶融スラグの品位
FeO:2.0%
SiO2:27.3%
Al2O3:15.2%
CaO:40.9%
MgO:10.3%
なお、前記溶融スラグの比重は運転条件によって1.5〜2.0t/m3の範囲で変動する。従って、溶融スラグの副生量(重量)が同じであっても、その比重が小さいほどスラグ層の厚みは大きくなる。
この実施例によれば、スラグ層の厚みが約400mmに達すると、投入された塊成化物2が当該スラグ層を上から下に貫通することが困難となる。そこで、許容厚みは400mmに設定され、実際のスラグ層の厚みが400mmに達する前に溶解工程を終了すべく、下記のようにタイムスケジュールが設定される。
1タップあたりの所要時間が約90分、その間に溶解炉10に投入される塊成化物2の総量が約43tであることを前提に、1回の出銑の前の溶解工程及び排滓工程の繰返し回数(つまり1回の溶銑生成工程における溶解工程の分割数)が3に設定される。仮に当該繰返し回数を2回とすると、1回の溶解工程で形成されるスラグ層の厚みは、溶融スラグの比重が1.5t/m3である場合に400mmを大きく上回り(440mm)、投入された前記塊成化物が前記スラグ層を貫通できなくなる。これに対して繰返し回数が3回であると、溶融スラグの比重が1.5t/m3と小さくても1回の溶解工程で形成されるスラグ層の厚みは後述のように400mm未満(327mm)に抑えられ、投入された塊成化物が前記スラグ層を貫通することが可能になる。
図6に示されるように、4分の炉熱間補修が行われた後、溶解工程が3回に分けて行われる。1回あたりの溶解工程に割り当てられる所要時間は22分であり、その間に約13tの固体還元鉄の塊成化物2が炉内、好ましくは3本の電極16によって囲まれた領域内に投入される。当該溶解工程の終了時点でのスラグ層の厚みは、溶融スラグ6の比重が1.5t/m3の場合は327mm、当該比重が2.0t/m3の場合は前記のように245mmとなり、いずれも400mmを大きく下回る。
前記各溶解工程が終了してから1分経過後に排滓工程が開始される。この排滓工程に割り当てられる所要時間は約3分である。よって前記溶解工程とは重複していない。前記溶解工程における塊成化物2の投入の終了時点と前記排滓工程の開始時点との間に時間差を与えることは、当該溶解工程の終了間際に投入された塊成化物2が溶融スラグ6に混じって排滓される可能性をさらに低減させる。
(g)昇熱工程及び出銑工程について
最後の排滓工程の終了後、当該終了にかかわらず電極16の通電を継続して溶銑4をさらに加熱する昇熱工程が行われ、その後に出銑工程が行われる。この出銑工程では、溶解炉本体12が出銑方向に最大45°傾けられ、これにより、それまでの計3回の溶解工程によって生成された溶銑4が出銑口28を通じて一度に炉外に排出される。排出された溶銑4は出銑用の樋32を通じて取鍋に入れられ、次の工程に送られる。
(h)電極16の通電について
この実施例では、前記3回の溶解工程及び排滓工程と、前記昇熱工程と、にわたり、電極16の通電が継続される。
4 溶銑
6 溶融スラグ
10 溶解炉
12 溶解炉本体
14 装入シュート
16 電極(加熱装置)
20 傾動機構
28 出銑口
30 排滓口
34 スラグドア
Claims (6)
- 傾動可能な溶解炉本体及び当該溶解炉本体内の固体還元鉄をアーク加熱して溶解するための加熱装置を有する傾動式の溶解炉を用いて溶銑を製造する方法であって、
前記溶解炉本体内に前記溶銑を生成する溶銑生成工程と、
当該溶銑生成工程後に前記溶解炉本体を出銑方向に傾動させて当該溶解炉本体内の前記溶銑を当該溶解炉本体の側壁に設けられた出銑口を通じて排出する出銑工程と、を含み、
前記溶銑生成工程では、前記溶解炉本体内に固体還元鉄からなる塊成化物を投入するとともに前記加熱装置によって前記塊成化物をアーク加熱して溶解することにより前記溶解炉本体内に溶銑及びその上でスラグ層を形成する溶融スラグを生成する溶解工程と、当該溶解工程後、前記溶解炉本体を排滓方向に傾動させることにより、前記塊成化物の投入を止めた状態で前記溶融スラグを前記溶解炉本体から当該溶解炉本体の側壁に設けられた排滓口を通じて排出する排滓工程と、が交互に複数回繰り返され、
前記出銑工程では、前記複数回の溶解工程の繰り返しにより生成された前記溶銑が前記溶解炉本体の前記出銑方向の傾動により排出される、溶銑の製造方法。 - 請求項1記載の溶銑の製造方法であって、前記溶銑生成工程では、前記溶解工程において形成されるスラグ層の厚みが予め設定された許容厚みに到達する前に当該溶解工程を終了して前記排滓工程を行う、溶銑の製造方法。
- 請求項2記載の溶銑の製造方法であって、実際のスラグ層の厚みが前記許容厚みに到達する前に溶解工程を終了させるための1回の溶解工程あたりの塊成化物の目標投入量を予め算定しておき、実際の投入量が当該目標投入量に達した時点で当該溶解工程を終了して前記排滓工程を行う、溶銑の製造方法。
- 請求項2または3記載の溶銑の製造方法であってね前記許容厚みは、当該許容厚みをもつ前記スラグ層を前記塊成化物が上から下に貫通することが可能である厚みである、溶銑の製造方法。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の溶銑の製造方法であって、前記溶解炉は、前記排滓口の上端位置を変化させるように上下方向に開閉作動するスラグドアを有し、前記各溶解工程では前記スラグドアを閉じ、前記各排滓工程では前記排滓口から流出する前記溶融スラグの上方に空隙を生じさせない位置まで前記スラグドアを開くことにより排滓を行う、溶銑の製造方法。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の溶銑の製造方法であって、前記溶銑生成工程では、前記溶解工程と前記排滓工程との双方に亘って前記加熱装置によるアーク加熱を継続する、溶銑の製造方法。
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