JP6395582B2 - 位相特異点評価方法および位相特異点評価装置 - Google Patents
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図1は、本発明の一実施形態に係る位相特異点評価装置(以下、単に評価装置という)1Aの構成を示すブロック図である。この評価装置1Aは、光ビームB1に含まれる位相特異点を評価する装置である。位相特異点の評価とは、光ビームB1に含まれる位相特異点を検出すること、及び位相特異点の有無、位相特異点の位置、位相特異点の数などの情報を取得することを含む。また、評価対象となる光ビームB1は、空間光変調器によって生成されたものに限らず、位相板によって生成されたものや、光ビームを対象物に照射して得られた反射光、透過光、若しくは散乱光などであってもよい。対象物からのこれらの光を評価することにより、光ビームがどのように変化したか(すなわち、対象物の特性)を知ることができる。または、自然界において発生した光の中に、位相特異点が存在するか否かを調べることもできるので、自然界で発生した光を評価対象としてもよい。
図3は、波面状態取得部10としての波面センサ10Aの構成を示す図である。波面センサ10Aは、いわゆるシャックハルトマン型波面センサであって、レンズアレイ11と、エリアイメージセンサ12とを有する。レンズアレイ11は、複数の集光レンズ11aを含む。複数の集光レンズ11aは、光ビームB1の光軸方向から見て複数行及び複数列の二次元状に配列されている。レンズアレイ11は、入射した光ビームB1の波面を複数の小波面に分割する。分割された小波面が集光レンズ11aを透過すると、エリアイメージセンサ12上において複数の集光点Pが生成される。但し、位相特異点では集光点Pが形成されない場合がある。エリアイメージセンサ12は、各集光レンズ11aよりも十分に小さい複数の画素が二次元状に配列されて成り、該レンズアレイ11を通過した光ビームB1の複数の集光点Pの位置及び光強度を検出する。エリアイメージセンサ12は、検出結果を二次元の画像データ(波面データ)として出力する。
データ欠落領域特定部20は、波面センサ10Aから出力された画像データに基づいて、データ欠落領域を特定する。図4(a)は、波面センサ10Aから出力される画像データH1を概念的に示す図である。図4(b)に示されるように、画像データH1は、二次元状に配列された複数の小領域A1を含む。一つの小領域A1は一つの集光レンズ11aによって定義される。なお、以下の説明では、第i行第j列の小領域A1をA1(i,j)と称することがある。i,jは1以上の整数である。図4(b)は、一つの小領域A1の拡大図である。各小領域A1は、図4(b)に示されるように、U行V列(但し、U,Vは2以上の整数)にわたって二次元状に配列された複数の画素Hから構成される。なお、以下の説明では、各小領域A1に含まれる第u行第v列の画素をH(u,v)と称することがある。uは1以上U以下の整数であり、vは1以上V以下の整数である。
評価領域設定部30は、データ欠落領域特定部20によって得られたデータ欠落領域A2の情報、例えばデータ欠落領域A2の位置や大きさに基づいて、画像データを複数の評価領域に分割する。図6は、評価領域A3の設定例を示す図である。図6において、評価領域A3は太い実線で示されている。一例では、評価領域A3はデータ欠落領域A2よりも小さい領域である。各評価領域A3は、n行n列(nは1以上の整数)の小領域A1からなる。この例では、n=3として、データ欠落領域A2の中心位置を通るように評価領域A3の境界が設定されている。これにより、データ欠落領域A2が分割されて、それぞれが二以上(この例では4つ)の評価領域A3に含まれることとなる。なお、データ欠落領域A2に1つの欠落小領域しか含まれない場合には、n=1となり、データ欠落領域A2は分割されずに1つの評価領域A3に含まれることとなる。
位相勾配算出部40は、画像データのうち複数の評価領域A3それぞれに属するデータに基づいて、各評価領域A3毎に位相勾配を算出する。図7は、位相勾配算出ステップS4を構成する各ステップを示すフローチャートである。図7に示されるように、位相勾配算出ステップS4は、各小領域A1の集光点Pの重心位置を計算するステップS41と、各小領域A1の位相勾配を計算するステップS42と、評価領域A3の位相勾配(以下、複合位相勾配という)を計算するステップS43とを含む。
なお、上の数式(5)において、c2は非ゼロの係数である。この処理により、図9に示されるような複合位相勾配ベクトルの分布図が得られる。
位相特異点評価部50は、各評価領域の位相勾配に基づいて位相特異点を評価する。図10は、位相特異点評価ステップS5を構成する各ステップを示すフローチャートである。図10に示されるように、位相特異点評価ステップS5は、循環値分布を計算するステップS51と、循環値がピークとなる位置を計算するステップS52と、ピークとなる位置からのずれ量を算出するステップS53と、位相特異点の位置を算出するステップS54とを含む。
なお、上の数式(6)において、(p,q)は、互いに隣り合う4つの評価領域A3(I,J),A3(I+1,J),A3(I+1,J+1),及びA3(I,J+1)の交点の位置を示す。また、c3は非ゼロの定数であり、例えば評価領域A3の一辺の長さの半分である。このような数式(6)を用いることにより、各交点(p,q)において循環値Dが計算され、循環値Dの分布が得られる。
上の数式(7)において、MAXPOS()はピーク位置(すなわちD(p,q)の絶対値が最大となる位置)を求める処理である。このとき、位相特異点は、交点(pmax,qmax)周りの閉経路内に存在する。そして、ステップS53において、位相特異点評価部50は、3行3列の9個の評価領域A3(pmax+k,qmax+l)(k=−1,0,1、l=−1,0,1)の循環値Dを用いて、次の数式(8A)及び(8B)により、交点(p,q)からの位相特異点のずれ量(u2c,v2c)を計算する。
上記実施形態では、光ビームB1に単一の位相特異点が含まれる場合について例示したが、光ビームB1に複数の位相特異点が含まれる場合であっても、各位相特異点毎に循環値分布を求め、循環値が局所的にピークとなる部分の数とそれらの位置を求めることによって、各位相特異点を精度良く評価することができる。
上記実施形態では、データ欠落領域特定ステップS2において、データ欠落領域特定部20が、波面センサ10Aのエリアイメージセンサ12における画素値I(u,v)に基づいてデータ欠落領域A2を特定している。しかしながら、データ欠落領域特定部は、エリアイメージセンサ12によって検出される複数の集光点Pの形状に基づいてデータ欠落領域A2を特定してもよい。
位相勾配算出ステップS4において、位相勾配算出部40は、各評価領域A3に含まれる小領域A1の位相勾配の和を、位相勾配が非ゼロである小領域A1の数で除算し、その結果を当該評価領域A3における位相勾配としてもよい。すなわち、位相勾配算出部40は、以下の数式(10)に従って各評価領域A3の位相勾配を算出してもよい。
なお、上の数式(10)において、aIJは評価領域A3に含まれる欠落小領域の数である。
位相特異点評価ステップS5において、位相特異点評価部50は、相関マッチング法を用いて位相特異点の位置(Px,Py)を算出してもよい。すなわち、本変形例では、交点(pmax,qmax)を中心とする3行3列の循環値Dの分布と、予め計算した多数の参照分布T(k,l;u0,v0)とを比較して、下記の数式(11)によって求められる相関係数R(u0,v0)が最も大きくなる参照分布T(k,l;u0,v0)に対応する(u0max,v0max)を決める。
なお、上の数式(11)において、DaveはD(k,l)の平均である(数式(12))。
なお、参照分布T(k,l;u0,v0)は、位相特異点が位置(u0,v0)にあると仮定した場合に計算した循環値Dの理論分布である。参照分布T(k,l;u0,v0)は、例えば特許文献1に開示した方法で計算できる。Tave(u0,v0)はT(k,l;u0,v0)の平均である(数式(13))。数式(14)のMAXPOS()はピーク位置(すなわちR(u0,v0)の絶対値が最大となる位置)を求める処理である。位相特異点の位置(Px,Py)は、次の数式(15)によって計算される。なお、数式(15)の数値1.0は、座標原点の調整用の定数である。また、数式(15)により計算される位置は、小領域A1の大きさにより規格化されたものである。
位相特異点評価ステップS5において、位相特異点評価部50は、以下の計算によって位相特異点を評価してもよい。本変形例では、まず、図17に示されるような3行3列の閉経路Cの循環値D’(I,J)を次の数式(16)に示される周回積分によって求める。なお、閉経路Cは、例えば3行3列の最外周に位置する小領域A1の各中心点を結ぶ経路である。
ここで、c4は非ゼロの定数である。交点(I,J)は小領域A1(I,J)の中心と一致する。各交点において、循環値D’を計算し、循環値の分布が得られる。その後、以下の数式(17)〜(19)に示されるように、循環値の分布において、循環値D’の絶対値が最大となるピーク位置(Imax,Jmax)と、ピーク位置(Imax,Jmax)の周囲3行3列における重心位置(u2c,v2c)とを求めることにより、位相特異点の位置(Px,Py)が得られる。
上記実施形態では、波面センサ10Aのエリアイメージセンサ12が内部処理機能を有していない場合について説明したが、エリアイメージセンサ12は内部処理機能を有してもよい。その場合、データ欠落領域特定ステップにおける欠落小領域の検出は、エリアイメージセンサ12の内部で行われてもよい。その場合は、波面状態取得部10から、波面データとデータ欠落領域の情報とが出力される。
上記実施形態では、波面状態取得部10としてレンズアレイ11及びエリアイメージセンサ12を有する波面センサ10Aを用いたが、波面センサに代えて、別の光学系によって波面状態取得部10を構成することも可能である。例えば、波面状態取得部10は、干渉光学系と、干渉光学系を通過した光ビームB1の干渉像を検出するエリアイメージセンサとを有する干渉計によって構成されてもよい。
ここで、c5は非ゼロの定数である。なお、φ(i,j),φ(i+1,j),φ(i,j+1)のいずれかがゼロ若しくは計算できない場合、位相勾配ベクトルsx及びsyをゼロとする。
上記実施形態による位相特異点評価方法を用いて検証を行った実施例について説明する。図21は、この検証において用いられた光学系70を示す図である。図21に示されるように、光学系70は、波面センサ10Aと、波面変調素子71と、光源72と、アパーチャ73と、ビームスプリッタ74と、2つのレンズ77,78からなるリレー光学系とを備えている。なお、波面センサ10Aの詳細な構成は、上述した実施形態と同様である。また、波面変調素子71は、例えば位相変調型の空間光変調器である。
Claims (12)
- 光ビームに含まれる位相特異点を評価する方法であって、
前記光ビームの波面状態を測定することにより、二次元の波面データを生成する波面状態取得ステップと、
前記波面データにおけるデータ欠落領域を特定し、前記データ欠落領域に関する情報を取得するデータ欠落領域特定ステップと、
前記情報に基づいて、前記二次元の波面データを複数の評価領域に分割する評価領域設定ステップと、
前記波面データのうち前記複数の評価領域それぞれに属するデータに基づき、各評価領域毎に位相勾配を算出する位相勾配算出ステップと、
各評価領域の前記位相勾配に基づいて位相特異点を評価する位相特異点評価ステップと、
を含む、位相特異点評価方法。 - 前記情報は、前記データ欠落領域の大きさ及び中心位置を含む、請求項1に記載の位相特異点評価方法。
- 前記データ欠落領域特定ステップの際に、前記波面データを構成する各画素の画素値に基づいて前記データ欠落領域を特定する、請求項1または2に記載の位相特異点評価方法。
- 前記波面状態取得ステップの際に、複数の集光レンズを含むレンズアレイと、該レンズアレイを通過した前記光ビームの複数の集光点を検出するエリアイメージセンサとを有する波面センサを用いて前記波面データを生成する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の位相特異点評価方法。
- 前記データ欠落領域特定ステップの際に、前記エリアイメージセンサによって検出された前記複数の集光点の形状に基づいて前記データ欠落領域を特定する、請求項4に記載の位相特異点評価方法。
- 前記波面状態取得ステップの際に、干渉光学系と、前記干渉光学系を通過した前記光ビームの干渉像を検出するエリアイメージセンサとを有する干渉計を用いて前記波面データを生成する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の位相特異点評価方法。
- 光ビームに含まれる位相特異点を評価する装置であって、
前記光ビームの波面状態を測定することにより、二次元の波面データを生成する波面状態取得部と、
前記波面データにおけるデータ欠落領域を特定し、前記データ欠落領域に関する情報を取得するデータ欠落領域特定部と、
前記情報に基づいて、前記二次元の波面データを複数の評価領域に分割する評価領域設定部と、
前記波面データのうち前記複数の評価領域それぞれに属するデータに基づき、各評価領域毎に位相勾配を算出する位相勾配算出部と、
各評価領域の前記位相勾配に基づいて位相特異点を評価する位相特異点評価部と、
を備える、位相特異点評価装置。 - 前記情報は、前記データ欠落領域の大きさ及び中心位置を含む、請求項7に記載の位相特異点評価装置。
- 前記データ欠落領域特定部は、前記波面データを構成する各画素の画素値に基づいて前記データ欠落領域を特定する、請求項7または8に記載の位相特異点評価装置。
- 前記波面状態取得部は、複数の集光レンズを含むレンズアレイと、該レンズアレイを通過した前記光ビームの複数の集光点を検出するエリアイメージセンサとを有する波面センサを含む、請求項7〜9のいずれか一項に記載の位相特異点評価装置。
- 前記データ欠落領域特定部は、前記エリアイメージセンサによって検出された前記複数の集光点の形状に基づいて前記データ欠落領域を特定する、請求項10に記載の位相特異点評価装置。
- 前記波面状態取得部は、干渉光学系と、前記干渉光学系を通過した前記光ビームの干渉像を検出するエリアイメージセンサとを有する干渉計を含む、請求項7〜9のいずれか一項に記載の位相特異点評価装置。
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