JP6394046B2 - ワニス、積層体、および積層体の製造方法 - Google Patents
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Description
このため、このような用途に用いられる透明基材として、極めて薄いガラスフィルムを用いることが提案されている。
例えば、特許文献1には、フィルム厚200μm以下のガラスフィルムをロール状に巻き取った特定のガラスロールが記載されている。また、特許文献1には、そのガラスフィルムが、ディスプレイ用基板として用いられることも記載されている。
例えば、特許文献2には、特定の脂環式構造を有する、ガラス転移温度が高く、透明性に優れ、低吸水率のポリイミドが記載されている。
しかしながら、この樹脂層の材料として、特許文献2に記載のポリイミドを用いた場合、ガラスフィルムに比べて樹脂層の熱膨張率が大きくなり易く、積層フィルムに熱負荷がかかった時に、積層フィルムが反ったり、樹脂層がガラスフィルムから剥離したりすることがあった。
また、ポリイミド鎖中に、π結合が広がってなる剛直構造を導入することにより、ポリイミドの熱膨張率を低くすることができるが、この場合、ポリイミド膜が黄みを帯びたり、ポリイミドの溶解性の問題で、適当な濃度のワニスを調製できなかったりするという問題があった。
〔1〕ポリイミド及び溶媒を含有するワニスであって、前記ポリイミドが、分子内に、下記式(1)で示される繰り返し単位、又は、下記式(1)で示される繰り返し単位及び下記式(2)で示される繰り返し単位を有し、下記式(1)で示される繰り返し単位と下記式(2)で示される繰り返し単位の合計量が、全繰り返し単位中80〜100モル%で、かつ、式(1)で示される繰り返し単位と式(2)で示される繰り返し単位の割合〔式(1)で示される繰り返し単位:式(2)で示される繰り返し単位〕のモル比が、20:80〜100:0の高分子であり、前記溶媒が、沸点が170℃以下の非プロトン性極性溶媒であることを特徴とするワニス。
で示される基を表す。a、bはそれぞれ独立に、0〜4の整数を表す。a、bがそれぞれ2以上のとき、複数のR1同士およびR2同士は、それぞれ同一であっても相異なっていてもよい。〕
〔2〕前記ポリイミドが、厚みが10μmのフィルムに成形したときに、そのフィルムの、波長400nmの光の光線透過率が85%以上になるものである、〔1〕に記載のワニス。
〔3〕基材と、基材上に形成されたポリイミド膜とを有する積層体であって、前記ポリイミド膜が、請求項1又は2に記載のワニスを用いて形成された、熱膨張率が30ppm/℃以下の膜であることを特徴とする積層体。
〔4〕前記基材がガラス基材である、〔3〕に記載の積層体。
〔5〕積層体の製造方法であって、
基材上に〔1〕又は〔2〕に記載のワニスを塗布し、得られた塗膜をプリベークするステップ(A−I)
ステップ(A−I)の後、塗膜を、前記ワニスに含まれるポリイミドに対する貧溶媒に浸漬処理するステップ(A−II)
ステップ(A−II)の後、塗膜を加熱乾燥して、熱膨張率が30ppm/℃以下のポリイミド膜を形成するステップ(A−III)
を有することを特徴とする積層体の製造方法。
〔6〕ステップ(A−I)後の塗膜中の残留溶媒量が5〜45重量%である、〔5〕に記載の積層体の製造方法。
〔7〕前記貧溶媒が、水、炭素数1〜4のアルコール系溶媒、炭素数2〜4のケトン系溶媒、及び炭素数3〜4の酢酸エステル系溶媒からなる群から選ばれる溶媒である、〔5〕又は〔6〕に記載の積層体の製造方法。
〔8〕前記基材が、膜厚が100μm以下の長尺のガラスフィルムであって、前記ガラスフィルムを一定方向に搬送しながら、ステップ(A−1)〜(A−III)を連続して行うことを特徴とする、〔5〕〜〔7〕のいずれかに記載の積層体の製造方法。
〔9〕積層体の製造方法であって、
基材上に〔1〕又は〔2〕に記載のワニスを、乾燥後の膜厚が5μm以下になるように塗布するステップ(B−I)
ステップ(B−I)で得られた塗膜を、100〜200℃で加熱乾燥することにより、熱膨張率が30ppm/℃以下のポリイミド膜を形成するステップ(B−II)
を有することを特徴とする積層体の製造方法。
〔10〕前記基材が、膜厚が100μm以下の長尺のガラスフィルムであって、前記ガラスフィルムを一定方向に搬送しながら、ステップ(B−1)〜(B−II)を連続して行うことを特徴とする、〔9〕に記載の積層体の製造方法。
本発明のワニスは、ポリイミド及び溶媒を含有するワニスであって、前記ポリイミドが、分子内に、前記(1)で示される繰り返し単位、又は、前記式(1)で示される繰り返し単位及び前記式(2)で示される繰り返し単位を有し、前記式(1)で示される繰り返し単位と前記式(2)で示される繰り返し単位の合計量が、全繰り返し単位中80〜100モル%で、かつ、式(1)で示される繰り返し単位と式(2)で示される繰り返し単位の割合〔式(1)で示される繰り返し単位:式(2)で示される繰り返し単位〕のモル比が、20:80〜100:0の高分子であり、前記溶媒が、沸点が170℃以下の非プロトン性極性溶媒であることを特徴とする。
本発明に用いるポリイミドは、分子内に、前記式(1)で示される繰り返し単位(以下、「繰り返し単位(1)」ということがある。)、又は、前記繰り返し単位(1)及び前記式(2)で示される繰り返し単位(以下、「繰り返し単位(2)」ということがある。)を有し、前記繰り返し単位(1)と繰り返し単位(2)の合計量が、全繰り返し単位中80〜100モル%で、繰り返し単位(1)と繰り返し単位(2)の割合〔繰り返し単位(1):繰り返し単位(2)〕のモル比が、20:80〜100:0のものである。
R1、R2の炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状アルキル基の炭素数は1〜3が好ましい。炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−へキシル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基等が挙げられる。
R1、R2の炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状アルコキシル基の炭素数は1〜3が好ましい。炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状アルコキシル基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、t−ブトキシ基等が挙げられる。
A1は、前記式(3a)又は(3b)で示される基を表す。
テトラカルボン酸二無水物〔下記式(4a)又は(4b)で示される化合物〕に由来する部分は、脂環式構造を有する。
これらの基の具体例としては、R1、R2として例示したものと同様のものが挙げられる。
c〜fは、それぞれ独立に、0〜4の整数を表す。cが2〜4の整数の場合、複数のR3は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。また、e〜fが2〜4の整数の場合におけるR4〜R6についても同様である。
A1は、前記式(3a)又は(3b)で示される基を表す。
テトラカルボン酸二無水物〔前記式(4a)又は(4b)で示される化合物〕に由来する部分は、繰り返し単位(1)のテトラカルボン酸二無水物と同様のものである。したがって、本発明に用いるポリイミドは透明性及び有機溶媒に対する溶解性に優れる。
繰り返し単位(1)と繰り返し単位(2)の合計が上記範囲内にあることで、透明性及び機械特性に優れ、熱膨張率が低いポリイミド膜の原料として有用なポリイミドを得ることができる。
繰り返し単位(1)の割合が少な過ぎると、熱膨張率が低いポリイミド膜を形成することが困難になる。また、繰り返し単位(2)を適度に有することで、有機溶媒に対する溶解性が高まるため、ワニスを調製する際に、多くの種類の有機溶媒の中から、用いる有機溶媒を選択することができる。
例えば、まず、前記式(5)で示されるジアミンと、必要に応じて用いられる、前記式(6)で示されるジアミンやその他のジアミンを溶媒に溶かして溶液を得た後、撹拌下、この溶液に、用いたジアミンと実質的に当量の、前記式(4a)又は(4b)で示されるテトラカルボン酸二無水物、及び、必要に応じて用いられるその他のテトラカルボン酸二無水物を徐々に添加し、撹拌を継続して反応させることにより、ポリイミド前駆体の溶液を得ることができる。
このときのモノマー濃度は特に限定されないが、通常、5〜50重量%、好ましくは10〜40重量%である。
反応時間は特に限定されないが、通常、0.5〜150時間、好ましくは3〜24時間である。
本明細書において、貧溶媒とは、目的物(上記の場合は、ポリイミド前駆体)に対する溶解性に乏しい溶媒をいう。例えば、25℃における目的物の飽和溶液の濃度が、1重量%以下となる溶媒が挙げられ、0.5重量%以下となる溶媒が好ましい。
ポリイミド前駆体の溶液の溶媒としては、ポリイミド前駆体の合成用の溶媒として示したものと同様のものが挙げられる。
有機酸無水物としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水マレイン酸、無水フタル酸等が挙げられる。なかでも、反応後の除去が容易であることや、費用の観点から、無水酢酸が好適に用いられる。
有機酸無水物の使用量は特に限定されないが、ポリイミド前駆体の理論脱水量の1〜10当量が好ましく、2〜5当量がより好ましい。
有機塩基の使用量は特に限定されないが、有機酸無水物に対して0.1〜2当量が好ましく、0.2〜1.5当量がより好ましい。
熱イミド化法において、反応温度は特に限定されないが、通常、130〜450℃、好ましくは300〜400℃である。反応時間は特に限定されないが、通常、0.1〜24時間、好ましくは0.5〜5時間である。
反応は、真空中、窒素、アルゴン等の不活性ガス中、あるいは空気中で行うことができる
反応系内には、触媒としてγ−ピコリン等の有機塩基や、副生成物である水を共沸留去するために、トルエンやキシレン等を添加してもよい。
反応温度は特に限定されないが、通常、200〜400℃、好ましくは250〜300℃である。
反応時間は特に限定されないが、通常、0.5〜48時間、好ましくは1〜24時間である。
反応は、真空中、窒素、アルゴン等の不活性ガス中、あるいは空気中で行うことができるが、着色を防ぐことができることから、真空中又は不活性ガス中で行うことが好ましい。
反応温度は特に限定されないが、通常、130〜250℃、好ましくは150〜200℃である。
反応時間は特に限定されないが、通常、0.5〜48時間、好ましくは1〜24時間である。
反応系内には、触媒としてγ−ピコリン等の有機塩基や、副生成物である水を共沸留去するために、トルエンやキシレン等を添加してもよい。
貧溶媒としては、ポリイミド前駆体の貧溶媒として示したものと同様のものが挙げられる。
ポリイミドの分子量分布は、通常1.3〜3、好ましくは1.5〜2.5である。
重量平均分子量や、分子量分布が上記範囲内のポリイミドを用いることで、透明性及び機械特性に優れ、熱膨張率が低いポリイミド膜を形成し易くなる。
なお、重量平均分子量および分子量分布は、シクロペンタノンを溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により得られた、ポリスチレン換算値である。
本発明に用いる溶媒は、沸点が170℃以下の非プロトン性極性溶媒である。
溶媒の沸点が170℃以下であることで、ポリイミド膜を形成する際に、効率よく溶媒を除去することができる。溶媒の沸点は、好ましくは、より好ましくは150℃以下である。
溶媒が、非プロトン性極性溶媒であることで、ポリイミドを十分に溶解させることができる。
これらの中でも、ポリイミド膜を形成する際に、効率よく除去することができることから、ケトン系溶媒が好ましく、シクロペンタノンがより好ましい。
本発明のワニス中のポリイミドの濃度(樹脂濃度)は、ワニスの塗工方法や目的のポリイミド膜厚みに応じて適宜決定することができる。樹脂濃度は、好ましくは5〜30重量%、より好ましくは5〜20重量%である。
したがって、本発明のワニスは、ガラス等の脆性材料の保護膜形成剤として好ましく用いられる。
本発明の積層体は、基材と、基材上に形成されたポリイミド膜とを有する積層体であって、前記ポリイミド膜が、本発明のワニスを用いて形成された、熱膨張率が30ppm/℃以下の膜であることを特徴とする
本発明の積層体を構成する基材は、ポリイミド膜を担持することができ、かつ、ポリイミド膜を形成する際の加熱条件下で安定なものであれば、特に制限されない。
基材としては、ガラス基材、セラミック基材、半導体基材等の無機基材や、ステンレス基材、アルミニウム基材、銅基材等の金属基材や、樹脂フィルム基材等が挙げられる。
本発明の積層体を構成するポリイミド膜は、本発明のワニスを用いて形成された、熱膨張率が30ppm/℃以下の膜である。
熱膨張率が30ppm/℃以下のポリイミド膜は、後述する方法により形成することができる。
本発明の積層体は、前記基材とポリイミド膜とを有する。
前記ポリイミド膜は保護膜としても機能するため、基材として、ガラスのような脆性材料を用いた場合であっても、積層体の強度が高い。
また、前記ポリイミド膜は熱膨張率が低いため、熱負荷がかかっても、積層体が反ったり、ポリイミド膜が、基材から剥離したりし難い。
また、前記ポリイミド膜は透明性に優れるため、基材として透明基材を用いた場合、積層体は、透明性に優れる。
本発明の積層体の製造方法は、以下の積層体の製造方法(A)又は(B)である。
積層体の製造方法であって、基材上に本発明のワニスを塗布し、得られた塗膜をプリベークするステップ(A−I)、ステップ(A−I)の後、塗膜を貧溶媒に浸漬処理するステップ(A−II)、ステップ(A−II)の後、塗膜を加熱乾燥して、熱膨張率が30ppm/℃以下のポリイミド膜を形成するステップ(A−III)、を有することを特徴とする積層体の製造方法(A)。
積層体の製造方法であって、基材上に本発明のワニスを、乾燥後の膜厚が5μm以下になるように塗布するステップ(B−I)、ステップ(B−I)で得られた塗膜を、100〜200℃で加熱乾燥することにより、熱膨張率が30ppm/℃以下のポリイミド膜を形成するステップ(B−II)、を有することを特徴とする積層体の製造方法(B)。
これらの製造方法(A)、(B)は、いずれも、本発明のワニスを塗工して形成された塗膜中の溶媒を効率よく除去しながら、ポリイミド膜を形成するという特徴を有する。
製造方法(A)は、前記ステップ(A−I)〜(A−III)を有するものである。
ステップ(A−I)は、基材上に本発明のワニスを塗布し、得られた塗膜をプリベークするステップである。
基材、ワニスとしては、先に説明したものと同様のものが挙げられる。
ワニスを塗布する方法は特に制限されず、従来公知の方法を利用することができる。塗布方法としては、スピンコート法、ディップコート法、ロールコート法、カーテンコート法、ダイコート法、スリットコート法等が挙げられる。
加熱温度は、通常30〜100℃、好ましくは40〜80℃であり、加熱時間は、通常1〜60分、好ましくは1〜50分、より好ましくは1〜40分である。
ステップ(A−I)後の塗膜中の残留溶媒量は、好ましくは5〜45重量%、より好ましくは10〜40重量%である。残留溶媒量が上記範囲内にあることで、ステップ(A−II)の浸漬処理において、効率よく溶媒を除去することができ、熱膨張率が低いポリイミド膜を形成することができる。
貧溶媒は、ポリイミドを溶解し難いものであれば特に限定されない。なかでも、塗膜中に残存する、ワニス由来の溶媒を効率よく除去できることから、用いたワニス中の溶媒〔以下、「溶媒(A)」ということがある。〕と親和性がある溶媒が好ましく、25℃において、同体積の溶媒(A)と均一に混ざるものがより好ましい。
また、ステップ(A−III)において、効率よく乾燥除去できることから、貧溶媒としては沸点が比較的低い溶媒が好ましい。貧溶媒の沸点は、好ましくは120℃以下、より好ましくは110℃以下である。常温付近で浸漬処理を行えるものである限り、貧溶媒の沸点の下限値は特に制限されない。
これらの中でも、貧溶媒としては、水、アセトン及びメタノールから選ばれる二種以上の混合溶媒が好ましく、水とアセトンの混合溶媒がより好ましい。水とアセトンの混合溶媒において、その混合比(水:アセトンの重量比)は、通常1:99〜99:1、好ましくは5:95〜95:5である。
塗膜を貧溶媒に浸漬させる時間は、通常1〜60分、好ましくは1〜45分、より好ましくは1〜30分である。浸漬時間がこの範囲内であることで、塗膜から溶媒Aを効率よく除去することができる。
加熱温度は、通常、130〜250℃、好ましくは150〜240℃、より好ましくは170〜230℃である。加熱時間は、特に制限はないが、通常1〜120分、好ましくは1〜90分、より好ましくは1〜60分である。
ステップ(A−I)、(A−II)の処理を施した塗膜を十分に乾燥することで、熱膨張率が30ppm/℃以下のポリイミド膜を効率よく形成することができる。ポリイミド膜の熱膨張率は、20ppm/℃以下が好ましく、1〜20ppm/℃がより好ましい。
製造方法(B)は、前記ステップ(B−I)〜(B−II)を有するものである。
ステップ(B−I)は、基材上に本発明のワニスを、乾燥後の膜厚が5μm以下になるように塗布するステップである。
ステップ(B−I)は、塗膜の膜厚を薄くすることを除き、ステップ(A−I)の塗布方法と同様にして行うことができる。
ステップ(B−1)における加熱温度は、100〜200℃、好ましくは150〜200℃である。加熱時間は、特に制限はないが、通常1〜120分、好ましくは1〜90分、より好ましくは1〜60分である。
このように、本発明のワニスを使用し、薄いポリイミド膜を形成する場合には、浸漬処理を施さなくても溶媒を効率よく除去することができ、熱膨張率が30ppm/℃以下のポリイミド膜を効率よく形成することができる。
例えば、基材として、膜厚が100μm以下の長尺のガラスフィルムを使用し、これを一定方向に搬送しながら、ステップ(A−1)〜(A−III)又はステップ(B−1)〜(B−II)を連続して行うことで、長尺の積層体を効率よく製造することができる。
基材(1):ダウコーニング社製ホワイトガラス基板に対して、シランカップリング剤(チッソ社製、商品名:サイラエースS330)を用いて表面処理を行ったもの。
4,4’−ジアミノベンズアニリド(DABA)3.41g(0.015モル)、9,9’−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン(BAFL)5.23g(0.015モル)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)107.60gを混合し、全容を25℃で20分間攪拌した。次いで、得られた溶液を氷冷し、この溶液に、ビス(オクタヒドロ−1,3−ジオキソ−5−イソベンゾフランカルボン酸)4,4’−スルホニルジアニリド(PSHT)18.259g(0.03モル)を加え、氷冷下で2時間、次いで25℃で20時間攪拌してポリイミド前駆体ワニスを得た。
得られたポリイミド前駆体ワニスに、無水酢酸12.25g(0.12モル)、ピリジン11.87g(0.15モル)を加え、全容を25℃で1時間、80℃で1時間、110℃で4時間攪拌して化学イミド化反応を行った。この際、反応液はゲル化しなかった。反応終了後、樹脂濃度が7%になるように、反応液にDMAcを加えて希釈し、得られた希釈液をメタノール8L中に滴下することにより、ポリイミドを析出させ、これをろ過により回収した。
得られたポリイミドをメタノールで2度洗浄した後、130℃で6時間、真空乾燥した(収量:25.12g、収率:97.1%)。
製造例1において、PSHTに代えて、ビス(オクタヒドロ−1,3−ジオキソ−5−イソベンゾフランカルボン酸)1,4−フェニレンジアミド(PPHT)14.05g(0.03モル)を使用し、DMAcの使用量を90.74gに変更したことを除き、製造例1と同様にして、ポリイミドを得た(収量:20.78g、収率:96.2%)。
製造例1において、DABAの使用量を4.77g(0.021モル)、BAFLの使用量を3.14g(0.009モル)に変更したことを除き、製造例1と同様にしてポリイミドを得た(収量:22.91g、収率:91%)。
製造例1において、ジアミンとして、DABA6.82g(0.03モル)のみを使用し、DMAcの使用量を100.31gに変更したことを除き、製造例1と同様にして、ポリイミドを得た(収量:22.44g、収率:93,5%)。
製造例1において、ジアミンとして、BAFL10.45g(0.03モル)のみを使用し、DMAcの使用量を114.85gに変更したことを除き、製造例1と同様にして、ポリイミドを得た(収量:25.78g、収率:93.3%)。
製造例1で得たポリイミドをシクロペンタノン(CPN)に溶解させ、樹脂濃度20%、粘度15.3ポイズのワニス1を得た。
製造例1で得たポリイミドをCPNに溶解させ、樹脂濃度10%、粘度3.6ポイズのワニス2を得た。
製造例2で得たポリイミドをCPNに溶解させ、樹脂濃度20%、粘度12.8ポイズのワニス3を得た。
製造例2で得たポリイミドをCPNに溶解させ、樹脂濃度10%、粘度3.0ポイズのワニス4を得た。
製造例3で得たポリイミドをCPNに溶解させ、樹脂濃度17%、粘度23ポイズのワニス5を得た。
製造例4で得たポリイミドをDMAcに溶解させ、樹脂濃度20%、粘度18.9ポイズのワニス6を得た。
4,4’−ジアミノベンズアニリド(DABA)3.41g(0.015モル)、9,9’−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン(BAFL)5.23g(0.015モル)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)107.60gを混合し、全容を25℃で20分間攪拌した。次いで、得られた溶液を氷冷し、この溶液に、ビス(オクタヒドロ−1,3−ジオキソ−5−イソベンゾフランカルボン酸)4,4’−スルホニルジアニリド(PSHT)18.26g(0.03モル)を加え、全容を氷冷下で2時間、次いで25℃で20時間攪拌して、ポリイミド前駆体ワニス(ワニス7)を得た。
製造例5で得たポリイミドをCPNに溶解させ、樹脂濃度20%、粘度13.2ポイズのワニス8を得た。
実施例1〜6、比較例1、2で得られたワニスに含まれる重合体のモノマー割合、溶媒、樹脂濃度、及び粘度を第1表にまとめた。
実施例1で得たワニス1を、ドクターブレードを用いて、乾燥後の膜厚が約20μmになるように、基材(1)上に塗工した。次いで、塗膜が形成された基材(1)をホットプレート上に置き、80℃で6分間プリベークした。プリベーク後の塗膜中の残留溶剤量は8.7%であった。
プリベーク後の塗膜付基材(1)をアセトン:水(7:3)混合溶媒中に8分間浸漬させた後、窒素ガスを吹き付けて表面を乾燥させ、さらに、塗膜付基材(1)をオーブンに入れ、窒素気流下、80℃で10分、次いで150℃で15分加熱乾燥させ、基材(1)とポリイミド膜からなる積層体1を得た。
プリベーク後の残留溶剤量は同一条件で別途作製した試料〔塗膜付基材(1)〕をNMPに溶かして得られた溶液を用いて、GC分析を行うことで求めた。
実施例7において、ワニス1に代えてワニス3を用いたことを除き、実施例7と同様の方法により、積層体2を得た。
実施例7において、ワニス1に代えてワニス5を用いて、乾燥後の膜厚が約10μmになるように基材(1)上に塗工したことを除き、実施例7と同様の方法により、積層体3を得た。
実施例7において、ワニス1に代えてワニス6を使用したことと、プリベーク条件を60℃で6分、次いで90℃で3分に変更したことを除き、実施例7と同様の方法により、積層体4を得た。
ワニス2を、ディップ法により、乾燥後の膜厚が約2μmになるように基材(1)上に塗工した。次いで、塗膜が形成された基材(1)を、25℃で6分間吊るして、膜厚を均一にした。
次いで、この塗膜付基材(1)をイナートオーブン中に入れ、窒素気流下、150℃で15分加熱乾燥させ、基材(1)とポリイミド膜からなる積層体5を得た。
実施例7において、浸漬処理を行わなかったことを除き、実施例7と同様の方法により、積層体6を得た。
実施例7において、ワニス1に代えて、ワニス7を用いたことを除き、実施例7と同様の方法により、ワニスを塗工し、プリベーク処理、浸漬処理を行った。
浸漬処理を行ったところ、塗膜に濁りが生じた。次いで、塗膜付基材(1)をイナートオーブン中に入れ、窒素気流下、50℃で30分、150℃で30分、250℃で60分加熱し、熱イミド化処理を行った。この基板を温水に漬けて、ポリイミド膜の回収を試みたが、このポリイミド膜は非常に脆く、剥離することができなかった。また、このポリイミド膜は濁りが生じていた。
実施例7において、ワニス1に代えて、ワニス8を用いたことを除き、実施例7と同様の方法により、積層体8を得た。
ポリイミド膜について、以下の測定を行った。結果を第2表に示す。
剥離する前のポリイミド膜の膜厚を、触針式形状測定装置(DEKTAK150)を用いて測定した。
熱機械分析装置(SII社製、製品名:TMASS7100)を用いて、窒素雰囲気下、温度範囲:室温〜300℃、昇温速度:5℃/分、2サイクルの条件でポリイミド膜の熱膨張率(ppm/℃)を測定し、2サイクル目の測定値を採用した。
精密万能試験機(島津製作所社製、製品名:オートグラフAG)を用いて、膜厚10μm、幅10mmのポリイミド膜を用いて、100mm/分の速度で引張り試験を行い、破断強度(MPa)、破断伸び(%)を測定した。
上記のポリイミド膜の形成方法において、膜厚が10μmになるようにガラス基材上にワニスを塗工し、積層体を得た。紫外可視近赤外分光光度計(日本分光社製、製品名:V−570)を用いて、各積層体の波長400nm、600nmの光線透過率を測定した。なお、実施例11については、上記の積層体5(膜厚が2μmのもの)を用いて測定した。
実施例7〜10で得られた積層体1〜4のポリイミド膜は、透明性及び機械特性に優れ、熱膨張率が低い。
また、実施例11においては、浸漬処理を行っていないものの、ポリイミド膜厚が薄いため、積層体5のポリイミド膜もまた、透明性に優れ、熱膨張率が低い。
一方、比較例3では、浸漬処理を施さなかったため、積層体6のポリイミド膜は熱膨張率が高い。
比較例4においては、ポリイミド前駆体のワニスを用いて塗膜を形成し、後でイミド化を行ったものであり、形成されたポリイミド膜は脆く、濁っていた。
また、比較例5においては、DABA由来の繰り返し単位を含まないポリイミドのワニスを用いたため、積層体8のポリイミド膜は熱膨張率が高い。
膜厚50μmの薄板ガラス(日本電気ガラス社製、幅30mm×長さ100mm)を脱脂洗剤及び純水で洗浄した後、130℃で10分乾燥した。この薄板ガラスを密閉容器中で吊るした状態でシランカップリング剤(チッソ社製、商品名:サイラエースS330)の蒸気に30分間さらした。次いでオーブン中150℃で5分間放置して、シランカップリング剤の活性化処理を行い、基材(2)を得た。
次いで、この塗膜付基材(2)をイナートオーブン中に入れ、窒素気流下、60℃で10分加熱してプリベークした後、アセトン:水の混合溶媒(アセトン:水=40:60)に3分間浸漬した。
次いで、塗膜付基材(2)を再度イナートオーブン中に入れ、窒素気流下、80℃で10分、次いで150℃で10分加熱して乾燥処理を行い、薄板ガラスの両面に透明ポリイミド膜を有する積層体9を得た。透明ポリイミド膜の膜厚は3μmであった。
実施例12において、ワニス2に代えてワニス4を用いたことを除き、実施例12と同様にして積層体10を得た。
積層体10について、上記の湾曲試験、加熱冷却試験を行ったところ、いずれもクラック、破断等は見られなかった。
ワニス8をCPNで希釈し、樹脂濃度を10%に調整し、ワニス8’を得た。
実施例12において、ワニス2に代えてワニス8’を用いたことを除き、実施例12と同様にして積層体11を得た。
積層体11について、上記の湾曲試験、加熱冷却試験を行ったところ、加熱冷却試験においてクラックが発生した。
Claims (11)
- ポリイミド及び溶媒を含有するワニスであって、
前記ポリイミドが、分子内に、下記式(1)で示される繰り返し単位、又は、下記式(1)で示される繰り返し単位(1)及び下記式(2)で示される繰り返し単位を有し、
下記式(1)で示される繰り返し単位と下記式(2)で示される繰り返し単位の合計量が、全繰り返し単位中80〜100モル%で、かつ、
式(1)で示される繰り返し単位と式(2)で示される繰り返し単位の割合〔式(1)で示される繰り返し単位:式(2)で示される繰り返し単位〕のモル比が、20:80〜100:0である高分子であり、
前記溶媒が、沸点が170℃以下の非プロトン性極性溶媒であることを特徴とするワニス。
で示される基を表す。a、bはそれぞれ独立に、0〜4の整数を表す。a、bがそれぞれ2以上のとき、複数のR1同士およびR2同士は、それぞれ同一であっても相異なっていてもよい。〕
- 前記ポリイミドが、厚みが10μmのフィルムに成形したときに、そのフィルムの、波長400nmの光の光線透過率が85%以上になるものである、請求項1に記載のワニス。
- 前記溶媒が、ケトン系溶媒である、請求項1又は2に記載のワニス。
- 基材と、基材上に形成されたポリイミド膜とを有する積層体であって、
前記ポリイミド膜が、請求項1〜3のいずれかに記載のワニスを用いて形成された、熱膨張率が30ppm/℃以下の膜であることを特徴とする積層体。 - 前記基材がガラス基材である、請求項4に記載の積層体。
- 積層体の製造方法であって、
基材上に請求項1〜3のいずれかに記載のワニスを塗布し、得られた塗膜をプリベークするステップ(A−I)
ステップ(A−I)の後、前記塗膜を、前記ワニスに含まれるポリイミドに対する貧溶媒に浸漬処理するステップ(A−II)
ステップ(A−II)の後、塗膜を加熱乾燥して、熱膨張率が30ppm/℃以下のポリイミド膜を形成するステップ(A−III)
を有することを特徴とする積層体の製造方法。 - ステップ(A−I)後の塗膜中の残留溶媒量が5〜45重量%である、請求項6に記載の積層体の製造方法。
- 前記貧溶媒が、水、炭素数1〜4のアルコール系溶媒、炭素数2〜4のケトン系溶媒、及び炭素数3〜4の酢酸エステル系溶媒からなる群から選ばれる溶媒である、請求項6又は7に記載の積層体の製造方法。
- 前記基材が、膜厚が100μm以下の長尺のガラスフィルムであって、前記ガラスフィルムを一定方向に搬送しながら、ステップ(A−1)〜(A−III)を連続して行うことを特徴とする、請求項6〜8のいずれかに記載の積層体の製造方法。
- 積層体の製造方法であって、
基材上に請求項1〜3のいずれかに記載のワニスを、乾燥後の膜厚が5μm以下になるように塗布するステップ(B−I)
ステップ(B−I)で得られた塗膜を、100〜200℃で加熱乾燥することにより、熱膨張率が30ppm/℃以下のポリイミド膜を形成するステップ(B−II)
を有することを特徴とする積層体の製造方法。 - 前記基材が、膜厚が100μm以下の長尺のガラスフィルムであって、前記ガラスフィルムを一定方向に搬送しながら、ステップ(B−1)〜(B−II)を連続して行うことを特徴とする、請求項10に記載の積層体の製造方法。
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