JP6393931B2 - マグネシウム合金の塑性加工方法 - Google Patents
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Description
ところが、マグネシウム合金は、稠密六方晶系であることに起因して特に延性・加工性が悪いため、温間成形、強ひずみ加工法によって結晶粒径の微細化による室温強度や延性の向上が必要であったが、塑性加工機に加熱装置および温度整制御装置を設ける必要があり、構成が複雑になっていた。
また、摩擦攪拌に伴う入熱によってマグネシウム合金にひずみが発生するといった現象が見られ、これを改善したいという要求があった。
1. マグネシウム合金に対して室温での塑性加工性を向上すること。
2. マグネシウム合金の塑性加工において、改質時の温度状態を好適に制御して、ひずみの発生を防止すること。
3. マグネシウム合金の塑性加工における割れ発生を防止すること。
マグネシウム合金を塑性加工する領域の第1方向における長さ寸法をAとし、
前記摩擦撹拌プロセスによる前記第1方向におけるマグネシウム合金の収縮量をαとした場合に、
前記摩擦撹拌プロセスを施す領域の前記第1方向における長さ寸法を、A+αとして設定し、
前記摩擦撹拌プロセスを施す領域において、前記第1方向における摩擦撹拌プロセスによるマグネシウム合金の入熱状態に、所定の分布を有するように摩擦撹拌プロセス条件を設定することにより上記課題を解決した。
本発明のマグネシウム合金の塑性加工方法は、マグネシウム合金を塑性加工する全領域に前記摩擦撹拌プロセスが施されることが好ましい。
本発明のマグネシウム合金の塑性加工方法は、前記塑性加工が曲げ加工とされ、前記第1方向における塑性加工する領域の前記長さ寸法Aが、曲げ部に形成された外側円弧長として設定されることができる。
本発明のマグネシウム合金の塑性加工方法は、前記摩擦撹拌プロセスでは、前記ツールが前記第1方向と直交する方向に所定長さ移動しその後前記第1方向に隣接する列をなすように往復移動して改質をおこなう際に、この列状改質領域が連続しつつ重ならないように前記ツールの移動状態を設定することが好ましい。
本発明のマグネシウム合金の塑性加工方法は、前記塑性加工が曲げ線を形成する曲げ加工とされて、該曲げ線が前記塑性加工する領域における前記第1方向の中央位置に設定されるとともに、
前記摩擦撹拌プロセスを施す領域において、前記曲げ線から前記第1方向の中央外側に離間する方向に向かって、前記摩擦撹拌プロセスによるマグネシウム合金の入熱状態が減少するように摩擦撹拌プロセス条件を設定することがある。
マグネシウム合金を塑性加工する領域の第1方向における長さ寸法をAとし、
前記摩擦撹拌プロセスによる前記第1方向におけるマグネシウム合金の収縮量をαとした場合に、
前記摩擦撹拌プロセスを施す領域の前記第1方向における長さ寸法を、A+αとして設定することにより、摩擦撹拌プロセスを施した領域において金属間化合物および結晶粒を微細化することで、塑性加工する領域を充分塑性加工可能として、塑性加工によってもマグネシウム合金に割れが発生しないようにすることができるとともに、摩擦撹拌プロセスを施す領域を必要最小限としてマグネシウム合金への入熱を少なくしてひずみの発生を最小に抑えることが可能となる。
なお、表面部とは、マグネシウム合金の表面からプローブが圧入可能な深さ範囲までを意味するものとされる。
なお、往復移動とは、往路と復路で同じ方向でもよいし反対の方向に進むように設定することもできる。
前記摩擦撹拌プロセスを施す領域において、前記曲げ線から前記第1方向の中央外側に離間する方向に向かって、前記摩擦撹拌プロセスによるマグネシウム合金の入熱状態が減少するように摩擦撹拌プロセス条件を設定することにより、曲げ加工に必要な摩擦撹拌プロセスとして曲げ線付近で最も入熱が多くなるように施すとともに、この部分に比べて塑性加工する領域に隣接する領域に対する入熱を低減して、曲げ加工を可能とするとともに、隣接する領域でのひずみの発生を防止することができる。
図1は、本実施形態におけるマグネシウム合金の塑性加工方法を示す断面図であり、図2は、本実施形態におけるマグネシウム合金の塑性加工方法を示す平面図であり、図3は、本実施形態におけるマグネシウム合金の塑性加工方法における摩擦撹拌プロセスを示す斜視図であり、図4,図5は、本実施形態におけるマグネシウム合金の塑性加工方法における摩擦撹拌プロセスを示す断面図であり、図において、符号10は、マグネシウム合金である。
曲げ線11となるY方向と直交するX方向(第1方向)において、パンチ21の先端部21aは曲率半径R1を有し、これに対応して、ダイ22の溝部22aは曲率半径R2を有する。溝部22aのX方向における開口幅寸法がBとして設定される。
曲げ加工されたマグネシウム合金10の曲げ部12も、曲率半径R2とほぼ同等の曲率半径を有する曲面を形成するように加工される。マグネシウム合金10の曲げ部12は、その外側表面のX方向長さ、つまり、円弧状の長さ寸法がAとなるように設定されている。
加工予定領域13は、曲げ加工によって図1に示した曲げ部12に対応する領域とされる。加工予定領域13におけるX方向(第1方向)の中心には曲げ線11が位置するとともに、X方向の両側に所定幅を有するように設定される。この加工予定領域13は、塑性加工(曲げ加工)がおこなわれる領域であり、曲げ加工工程の前に、摩擦撹拌プロセスによる改質工程がおこなわれる摩擦撹拌領域13とされる。
摩擦撹拌プロセスは、図3に示すように、平板状のマグネシウム合金10の法線と略一致する軸線Zのまわりに回転するツール30の先端部分のプローブ31によって施される。
プローブ31をマグネシウム合金10の表面部に圧入し、回転するツール30との摩擦によって加熱して軟化させ、プローブ31が圧入された状態でツール30を回転させてプローブ31近傍を撹拌しつつ、マグネシウム合金10の表面に平行にツール30を移動させて改質する。
本実施形態の摩擦撹拌プロセスにおいては、ツール30のショルダー32径寸法、プローブ31径寸法およびZ方向長さ寸法、その他形態要素は、改質しようとするマグネシウム合金10の種類・性質、および、ツール30の回転数およびY方向移動速度などの稼動条件を勘案して適宜選択される。特に、本実施形態のプローブ31は、図4に示すように、X方向に径寸法31aを有する。
本実施形態では 先にY方向とされる一方向にツール30を移動して列状改質領域13aを形成するように摩擦撹拌した後、図2に示すように、一旦ツール30を引き上げてプローブ31の径寸法と等しい長さだけX方向に移動させて、既施の列状改質領域13aに隙間無く隣接する列状改質領域13bにプローブ31を圧入して、Y方向とされる一方向で、列状改質領域13aのときとは逆方向に、マグネシウム合金10の表面に平行にツールを移動させる。
α+2π(R1+t)×θ/360
とすることができる。
また、本実施形態の摩擦撹拌プロセスにおいては、ツール30のマグネシウム合金10に対するY方向への相対的な移動速度を100〜800mm/minの範囲、より好ましくは、200〜500mm/minの範囲とすることができ、これによりマグネシウム合金10の加工性を確実に向上させることができる。
また、摩擦撹拌領域13では、その結晶粒の平均粒径が常温値で20μm〜0.01μmの範囲、より好ましくは、3μm〜0.1μmの範囲に形成されることができ、これによりマグネシウム合金10の加工性を確実に向上させることができる。
または、列状改質領域13b,13d,13a,13eでは、列状改質領域13cに比べて、入熱の低い同一の摩擦攪拌条件とされることができ、これにより、中心の列状改質領域13cが改質状態が高く、それ以外の列状改質領域13b,13d,13a,13eは均一に改質状態を低くすることができる。
図6は、本実施形態におけるマグネシウム合金の塑性加工方法の摩擦撹拌プロセスを示す断面図、図7は、本実施形態におけるマグネシウム合金の塑性加工方法の摩擦撹拌プロセスを示す断面図である。
本実施形態において上述した第1実施形態と異なるのはプローブ35に関する点であり、これ以外の対応する構成要素に関しては、同一の符号を付してその説明を省略する。
プローブ35は、ツール30の回転にともなって、径寸法35aとなる円柱状の部分を回転することになる。これにより、図8に示したように、径寸法36aが大きく設定されたプローブ36を有するツール30と同様に、摩擦撹拌プロセスにおける列状改質領域13a〜13eの幅寸法を、図2に示した31aと比べて大きな寸法35aとして設定することができる。
11…曲げ線
12…曲げ部
13…摩擦撹拌領域(加工予定領域)
13a〜13e…列状改質領域
21…パンチ
22…ダイ
30…ツール
31,35,36…プローブ
31a,35a,36a…径寸法(幅寸法)
32…ショルダー
A…外側表面長さA
α…収縮量
Claims (5)
- 軸線のまわりに回転するツールの先端部分のプローブを、マグネシウム合金の表面部に圧入し、回転するツールとの摩擦によって加熱して軟化させ、プローブが圧入された状態でツールを回転させてプローブ近傍を撹拌しつつ、マグネシウム合金の表面に平行にツールを移動させて改質する摩擦撹拌プロセスを施してマグネシウム合金を塑性加工する方法であって、
マグネシウム合金を塑性加工する領域の第1方向における長さ寸法をAとし、
前記摩擦撹拌プロセスによる前記第1方向におけるマグネシウム合金の収縮量をαとした場合に、
前記摩擦撹拌プロセスを施す領域の前記第1方向における長さ寸法を、A+αとして設定し、
前記摩擦撹拌プロセスを施す領域において、前記第1方向における摩擦撹拌プロセスによるマグネシウム合金の入熱状態に、所定の分布を有するように摩擦撹拌プロセス条件を設定することを特徴とするマグネシウム合金の塑性加工方法。 - マグネシウム合金を塑性加工する全領域に前記摩擦撹拌プロセスが施されることを特徴とする請求項1記載のマグネシウム合金の塑性加工方法。
- 前記塑性加工が曲げ加工とされ、前記第1方向における塑性加工する領域の前記長さ寸法Aが、曲げ部に形成された外側円弧長として設定されることを特徴とする請求項1または2記載のマグネシウム合金の塑性加工方法。
- 前記摩擦撹拌プロセスでは、前記ツールが前記第1方向と直交する方向に所定長さ移動しその後前記第1方向に隣接する列をなすように往復移動して改質をおこなう際に、この列状改質領域が連続しつつ重ならないように前記ツールの移動状態を設定することを特徴とする請求項1から3のいずれか記載のマグネシウム合金の塑性加工方法。
- 前記塑性加工が曲げ線を形成する曲げ加工とされて、該曲げ線が前記塑性加工する領域における前記第1方向の中央位置に設定されるとともに、
前記摩擦撹拌プロセスを施す領域において、前記曲げ線から前記第1方向の中央外側に離間する方向に向かって、前記摩擦撹拌プロセスによるマグネシウム合金の入熱状態が減少するように摩擦撹拌プロセス条件を設定することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のマグネシウム合金の塑性加工方法。
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