JP2006083435A - 高強度マグネシウム合金の改質方法 - Google Patents

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正人 辻川
Masayuki Inuzuka
雅之 犬塚
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Abstract


【課題】 摩擦撹拌プロセスという簡便な手法を用いて高強度マグネシウム合金素材の結晶粒を微細化し、機械的特性を向上させる。
【解決手段】 軸線11まわりに回転するツールを高強度マグネシウム合金板2の表面に圧入し、ツールとの摩擦によって高強度マグネシウム合金板2を加熱軟化して摩擦撹拌し、高強度マグネシウム合金板2に対して回転するツールを相対的に移動させて、摩擦撹拌領域14aを形成し、該領域の結晶粒を微細化する。
【選択図】 図3

Description

本発明は、高強度マグネシウム合金の改質方法に関する。
マグネシウム(Mg)合金は、軽量であるため、航空機、車両などの輸送機用材料、携帯型のパーソナルコンピュータ、携帯電話機などのモバイル機器の筐体用材料として有望である。しかしながら、Mgと同様に軽金属元素として知られるチタニウム(Ti)またはアルミニウム(Al)を基材とするTi合金、Al合金に比べると、Mg合金は、比強度が低く、耐食性が劣り、また生産性が劣るという問題がある。
図10は、Mg合金とTi合金およびAl合金との比強度を比較する図である。図10では、Mg合金としてASTMに規定される鋳物材であるAZ91、Al合金としてJIS−H4000に規定される展伸材であるA7075、Ti合金としてJIS−H4600に規定される展伸材である60種(Ti−6Al−4V)について、比強度を例示する。図10に示すように、Mg合金の比強度は、Ti合金に比べて約1/3であり、Al合金に比べて約1/2と低いことが判る。
このようなMg合金は、その機械的性質が向上し、また機械的性質に優れるMg合金の生産性が向上することによって、その有用性が一層高まるものと期待されている。Mgは、実用金属中で最軽量なので、たとえば航空機、自動車、鉄道車両などに用いられることによって、大幅なエネルギ使用効率の向上を実現することができ、またリサイクル性に優れるので、モバイル機器の筐体などの素材として汎用されることによって、環境負荷の軽減を実現することができる。
このような社会的要請に応じて、機械的性質に優れるMg合金開発の試みが種々行われており、なかでも有望なMg合金として、Mgを基材とし、亜鉛(Zn)およびイットリウム(Y)を含み強度に優れるMg−Zn−Y合金が提案されている(非特許文献1参照)。
図11は、Mg−Zn−Y合金の比強度をTi合金、Al合金および従来のMg合金と比較する図である。図11に示すように、Mg96−Zn1−Y3(at%)合金およびMg97−Zn1−Y2(at%)合金の比強度は、従来のMg合金ばかりでなくTi合金およびAl合金の比強度をも凌ぐ優れた値を示す。
しかしながら、非特許文献1で提案されるMg−Zn−Y合金は、超音波ガスアトマイズ装置で作製された急速凝固粉末を、真空ホットプレス機でプレスし、さらにプレス材を押出プレス機で押出し成形して作製されるものであり、その製造工程が極めて複雑で、生産効率が低いという問題がある。
金属材料の製造において、効率の高い生産方法として鋳造法があるけれども、鋳造材は、結晶粒が粗く機械的性質に劣るので、構造部材などに用いる素材とするには、通常結晶粒微細化などの組織改質によって機械的性質の向上処理が行われる。金属材料に対して、鋳造後に施される圧延加工と再結晶熱処理も、その組織改質の1手法である。ところでMg−Zn−Y合金は、鋳造することができるけれども、たとえ温間であったとしても鋳造後の圧延時に割れが発生しやすいので、鋳造/圧延法では所望の機械的性質改善を行うことができないという問題がある。
機械的性質に問題のある金属材料の組織改質、たとえば結晶粒微細化を行う技術として、従来、たとえばEqual Channel Angular Pressing(ECAP)などの方法が用いられている。しかしながら、ECAP法は、押出し形状に制限があるので多様な製品形状に対応できないこと、大きなプレス設備や加熱炉を必要とすることなど多々問題がある。
このような問題に対処する従来技術として、英国のThe Welding Institute(TWI)で開発された摩擦撹拌接合法(Friction Stir Welding:FSW)を、接合にではなく摩擦撹拌プロセス(Friction Stir Processing:FSP)としてアルミニウム合金の組織改質に用いることが提案されている(たとえば、非特許文献2参照)。
非特許文献2では、工業用純アルミニウム合金(JIS−H4000に規定されるA1050)にFSPを用いて結晶粒を微細化し、結晶粒微細化によって引張強度と伸びとが改善され、硬さが硬くなることが開示される。しかしながら、非特許文献2における対象は低強度(素材の引張強度:120MPa前後)のアルミニウム合金(A1050)であり、マグネシウム合金特に引張強度が450〜500MPaを超えるような高い強度を有する、たとえばMg−Zn−Y合金の組織改質の可能性については全く触れていない。
マグネシウム合金に対してFSPを利用する従来技術として、たとえば以下のようなものが開示される。特許文献1では、たとえば航空機用構造部材の接合部分をFSPで微細化して機械的性質を改善する。特許文献2では、たとえば曲げ変形加工予定部にFSPで処理を施して曲げ加工性を改善する。
しかしながら、特許文献1は、鋼、マグネシウム合金、真鍮、銅合金、Al合金、Ti合金などをすべて同一視するものである。上記個々の素材はそれぞれ物性が異なるので、その組織改質については解決されるべき固有の課題があるにも関らず、それらについて全く触れられておらず、当然マグネシウム合金に関する固有の問題点についても全く触れられていない。
特許文献2は、ASTMに規定される鋳造Mg合金であるAZ91について曲げ加工予定部の組織改質を行って加工性を改善することを開示するけれども、AZ91は前述のように強度が低い従来の汎用Mg合金であり、さらなる高い強度を有するMg合金おける組織改質という課題の解決手段を何ら明らかにするものではない。
河村能人、井上明久,「ナノ結晶強力マグネシウム合金の開発」,まてりあ,日本金属学会,2002年,第41巻,第9号,p644−649 斎藤尚文、権 湧宰、重松一典,「摩擦撹拌プロセスを利用したアルミニウム合金の組織制御」,まてりあ,日本金属学会,2004年,第43巻,第7号,p592−597 特開2002−104289号公報 特開2004−74255号公報
本発明の目的は、摩擦撹拌プロセスという簡便な手法を用いて高強度マグネシウム合金素材の結晶粒を微細化し、機械的特性の向上を実現できる高強度マグネシウム合金の改質方法を提供することである。
本発明は、軸線まわりに回転するツールを高強度マグネシウム合金素材の表面に圧入し、回転するツールとの摩擦によって高強度マグネシウム合金素材を加熱して軟化させる圧入ステップと、
高強度マグネシウム合金素材の軟化部分を摩擦撹拌する摩擦撹拌ステップと、
高強度マグネシウム合金素材に対して回転するツールを相対的に移動させることによって、高強度マグネシウム合金素材に摩擦撹拌領域を形成する摩擦撹拌領域形成ステップとを含むことを特徴とする高強度マグネシウム合金の改質方法である。
また本発明は、摩擦撹拌領域が少なくとも部分的に重なるように、
少なくとも圧入ステップ、摩擦撹拌ステップおよび摩擦撹拌領域形成ステップの一連のステップが複数回実行されることを特徴とする。
また本発明は、前記ツール先端の突出部が、円錐台形状を有することを特徴とする。
また本発明は、高強度マグネシウム合金素材が、亜鉛およびイットリウムを含むマグネシウム基合金であることを特徴とする。
本発明によれば、高強度マグネシウム合金素材の組織改質に摩擦撹拌プロセスを利用することによって、大掛かりな装置を用いることなく、また製品形状に制限されることなく、容易に機械的性質に優れた高強度マグネシウム合金を得ることが可能になる。
また本発明によれば、摩擦撹拌領域が少なくとも部分的に重なるように、少なくとも圧入ステップ、摩擦撹拌ステップおよび摩擦撹拌領域形成ステップの一連のステップが複数回実行されるので、一層組織の微細化された高強度マグネシウム合金を得ることが可能になる。
また本発明によれば、前記ツール先端の突出部は、円錐台形状を有するように形成されるので、素材が高強度のマグネシウム合金であっても、効果的に摩擦撹拌して結晶粒を微細化することができる。
また本発明によれば、高強度マグネシウム合金素材に、亜鉛およびイットリウムを含むマグネシウム基合金が用いられるので、組織微細化によって機械的性質が著しく改善された高強度マグネシウム合金が実現される。
図1は本発明の高強度マグネシウム合金の改質に用いられる摩擦撹拌装置1の構成を簡略化して示す斜視図であり、図2は図1に示す摩擦撹拌装置1に備わるツール先端部付近を拡大して示す正面図である。
摩擦撹拌装置1は、被処理材であるマグネシウム合金素材2が載置されるテーブル3と、高強度マグネシウム合金素材2を摩擦撹拌する摩擦撹拌ヘッド4(以後、FSヘッド4と略称する)と、FSヘッド4をテーブル3に対して近接離反するとともにテーブル3を横断する方向に移動可能に支持する門構ヘッド5とを含む。
ここで例示する摩擦撹拌装置1におけるテーブル3は、図1中矢符6で示す1軸方向(逆方向にも可)にのみ移動可能な1軸テーブルである。テーブル3には、載置面8上に載置される高強度マグネシウム合金素材2(以後、高強度マグネシウム合金板2と呼ぶ)を固定する固定具が設けられるけれども、図示を省略する。
高強度マグネシウム合金板2としては、ZnおよびYを含むMg基合金であるMg−Zn−Y合金が好適に用いられる。FSPのように固相での撹拌プロセス処理を施すことによって、たとえばAl合金などでは、ある程度の結晶粒の細粒化が生じるけれども、発熱による動的再結晶と粒成長による粗大化とが生じ、微細化効果が充分に発現されない。しかしながら、Mg−Zn−Y合金は、高温強度が高く粒成長を起こしにくいという特性を有するので、FSP処理による微細化効果を得るのに適した素材である。
FSヘッド4は、ツールを備える。ツールの先端にはショルダー10が形成され、このショルダー10の下面中央から軸線11に沿って突出する突出部であるピン9が形成される。ツールは、たとえばJIS−G4404に規定される工具鋼であるSKDなどから成る。ピン9は円錐台形状を有し、円錐台の先細側が高強度マグネシウム合金板2に埋入される先端側となる。FSヘッド4には、ツールを軸線11まわりに回転数可変に回転駆動させる駆動手段であるたとえば電動機(サーボモータ)が備えられる。
一般的に摩擦撹拌において用いられるピンの形状は、円柱状である。しかし、該円柱状ピンを高強度マグネシウム合金の摩擦撹拌に用いると、高強度マグネシウム合金の変形抵抗によって撹拌不足を起こし、甚だしい場合にはピンの折損が発生し、良好な摩擦撹拌を行うことができない。一方、本発明の円錐台形状を有するピン9では、円錐台のテーパによって高強度マグネシウム合金の変形抵抗を減殺することができ、折損等を生じることなく効率的に良好な摩擦撹拌が可能となる。ピン9の円錐台形状は、円錐台であればよく、その寸法およびテーパが特に限定されるものではなく、被処理材である高強度マグネシウム合金素材の強度レベル、処理深さなどに応じて種々の変形が許容される。
門構ヘッド5は、大略逆U字状の外観形状を有し、テーブル3を跨ぐようにして設けられる。門構ヘッド5の梁部分にFSヘッド4が支持される。門構ヘッド5は、FSヘッド4を、略鉛直方向に延びる昇降軸21に沿った方向、すなわちテーブル3に対して近接離反するように、また梁部分に平行に延びる横行軸22に沿った方向、すなわちテーブル3の載置面8に平行であってテーブル3を横断する方向に移動可能に支持する。この門構ヘッド5には、FSヘッド4を昇降させ、横行させるための駆動手段が備えられる。このことによって、ツールを高強度マグネシウム合金板2に圧入させ、また引上げることができ、さらにテーブル3上に載置される高強度マグネシウム合金板2に対して相対的に横行させることができる。
このように、FSヘッド4を支持する門構ヘッド5と、1軸方向に移動可能なテーブル3とによって、FSヘッド4が、テーブル3上に載置される高強度マグネシウム合金板2に対して3次元的に相対移動することができる。
ツールの回転速度、門構ヘッド5によるFSヘッド4の横行軸22方向への移動速度および移動距離、テーブル3の矢符6方向すなわち走行軸23方向への移動速度および移動距離、門構ヘッド5によるFSヘッド4の高強度マグネシウム合金板2に対する押圧力は、不図示の制御装置からの動作指令によって調整される。制御装置からの動作指令は、制御装置を動作させるべく予めメモリにストアされる動作制御プログラムに従って、または制御装置に操作者によって入力される条件に従って出力される。
なお、ここで例示する摩擦撹拌装置1では、テーブル3が矢符6方向にのみ移動し、FSヘッド4が昇降および横行移動可能なように構成されるけれども、これに限定されることなく、テーブル3すなわちテーブル3上に載置される高強度マグネシウム合金板2が固定され、FSヘッド4が3次元的に移動するように構成されてもよく、またFSヘッドが昇降駆動のみして、高強度マグネシウム合金板2を保持するテーブルが水平面内で2次元方向に移動可能に構成されてもよい。
図3は、本発明の第1の実施態様である高強度マグネシウム合金の改質方法の概要を説明する図である。以下図3を参照して高強度マグネシウム合金の改質方法について説明する。
図3(a)では、軸線11まわりに矢符12方向へ回転するツールを高強度マグネシウム合金板2の表面に押圧する。このステップを押圧ステップと呼ぶ。
図3(b)では、回転するツールを高強度マグネシウム合金板2に圧入し、ツールとの摩擦によって高強度マグネシウム合金板2を加熱して軟化させる(圧入ステップ)。摩擦熱の高強度マグネシウム合金板2への熱伝導によって、軟化部分13が、高強度マグネシウム合金板2の断面においてほぼ半円状に形成される。
図3(c)では、高強度マグネシウム合金板2の軟化部分13に回転するツールを埋入し、軟化部分13を摩擦撹拌し、摩擦撹拌部分14を形成する(摩擦撹拌ステップ)。図3(d)では、高強度マグネシウム合金板2に対して回転するツールを相対的に前記矢符6方向へ移動させることによって、高強度マグネシウム合金板2に摩擦撹拌領域14aを形成する(摩擦撹拌領域形成ステップ)。
このように、高強度マグネシウム合金板2の組織改質にFSPを利用することによって、たとえば押出プレス機のような大掛かりな装置を用いることなく、組織を微細化し、微細化による機械的性質の改善を実現することができる。また、ツールを製品形状に合わせて3次元移動可能な構成とすることによって、製品形状に制限されることなく、容易に高強度マグネシウム合金部材の組織改質を実現することができる。
図4は、本発明の第2の実施態様である高強度マグネシウム合金の改質方法の概要を説明する図である。本実施態様の高強度マグネシウム合金の改質方法は、図3に示したステップのうち少なくとも圧入ステップ、摩擦撹拌ステップおよび摩擦撹拌領域形成ステップの一連のステップが、形成される摩擦撹拌領域が少なくとも部分的に重なるように、複数回(本実施態様では2回)実行されることを特徴とする。なお、一連のステップを1回実行して1本の摩擦撹拌領域を形成することを、以後パスと呼ぶことがある。
図4では、一連のステップが2回(2パス)実行された状態の高強度マグネシウム合金板2の断面を模式的に示す。1パス目の摩擦撹拌領域14aを形成した後、高強度マグネシウム合金板2をその表面に平行方向であって、摩擦撹拌領域14aが延びる方向に垂直な方向へわずかに移動させ、形成される摩擦撹拌領域が一部重なるようにして2パス目の摩擦撹拌領域15を形成する。
摩擦撹拌領域が一部重なるようにして2パスFSP処理を行うに際しては、以下のいずれの態様も許される。
押圧ステップ、圧入ステップ、摩擦撹拌ステップおよび摩擦撹拌領域形成ステップの一連のステップを行って1パス目の摩擦撹拌領域14aを形成した後、一旦ツールを埋入部から引上げ、さらにFSヘッド4を1パス目のFSP処理開始点に回帰させて横行軸22方向にわずかに移動させた後、押圧ステップ、圧入ステップ、摩擦撹拌ステップおよび摩擦撹拌領域形成ステップの一連のステップを繰返して2パス目の摩擦撹拌領域15を形成する、すなわち同一方向に直線状の摩擦撹拌領域を繰返し形成する方法。
また押圧ステップ、圧入ステップ、摩擦撹拌ステップおよび摩擦撹拌領域形成ステップの一連のステップを行って1パス目の摩擦撹拌領域14aを形成した後、ツールを埋入部から引上げることなく、FSヘッド4を横行軸22方向にわずかに移動させて、圧入ステップ、摩擦撹拌ステップおよび摩擦撹拌領域形成ステップを繰返して2パス目の摩擦撹拌領域15を形成する、すなわちFSヘッド4を水平面内で折返し移動させて略U字状の摩擦撹拌領域を形成する方法。
上記のいずれの方法によっても、1パス目と2パス目との摩擦撹拌領域が重なる重畳部分16では、2度摩擦撹拌が行われるので、微細化効果が相乗されて一層組織が微細化される。
以下本発明の実施例について説明する。
本実施例では、Mg−Zn−Y合金素材に図1に示す摩擦撹拌装置1によって、1パスおよび2パスのFSP処理を施し、該処理部の組織観察と硬さ試験とを実施した。
(Mg−Zn−Y合金素材の作製)
表1に示す組成のMg−Zn−Y合金を不活性ガス雰囲気中で溶製し、7kgの鋳造ブロックを得た。該鋳造ブロックを、450℃×95hourの均質化処理後水冷した。水冷後のブロックから、厚さ:10mm、幅:100mm、長さ:120mmの板状試片を切出し、Mg−Zn−Y合金素材とした。
なお、表1におけるMg−Zn−Y合金の組成分析結果はwt%にて示されるけれども、後述の組織試験結果においては、Mg−Zn−Y合金の組成をat%でMg−2Y−2Zn(ZnとYとの表記順が逆であるけれどもMg−Zn−Y合金と同一のものである)と表記した。
(摩擦撹拌処理)
図1に示す摩擦撹拌装置1を用いて、表2に示す条件にてMg−Zn−Y合金素材にFSP処理を施した。FSP処理を2パス行う場合、表2に示す条件を繰返し用い、形成される摩擦撹拌領域が一部重なるようにして処理を施した。
(組織試験および硬さ試験)
FSP処理が施された高強度マグネシウム合金素材から処理部を含む試片を切出し、摩擦撹拌領域が延びる方向に対して垂直な方向の断面を研磨後エッチングして顕微鏡にて組織観察し、結晶粒微細化の程度を判定した。またJIS−Z2244に規定されるビッカース硬さ試験を行い、高強度マグネシウム合金試片における非処理部と処理が施された部分の各位置の硬さを測定した。
(試験結果)
FSP処理を1パス施した高強度マグネシウム合金試片の組織観察結果を図5に示す。図5(a)は、断面のマクロ組織を示す。図5(b)は摩擦撹拌部分(Stir Zone)のミクロ組織を示し、図5(c)は摩擦撹拌部と非処理部との境界部分(Bondと呼ぶ)のミクロ組織を示し、図5(d)は摩擦撹拌部分に隣接し、摩擦撹拌によって熱影響を受けた熱影響部(Heat Affected Zone)のミクロ組織を示し、図5(e)は摩擦撹拌も受けず熱影響も受けていない非処理部分(Parent Material:母材と呼ぶ)のミクロ組織を示す。
図5(e)に示すように、母材はデンドライトによる凝固組織を呈し、そのデンドライトコロニーの大きさは約1mmであり、デンドライトの2次晶間距離であるDendrite Arm Spacing(DAS)が73μmであった。一方、図5(b)に示すように、FSP処理が施された摩擦撹拌部分は、その結晶粒径が数μmまで微細化されていた。
図6は、FSP処理を1パス施した場合の硬さ分布測定結果を示す図である。摩擦撹拌領域が延びる方向に対して垂直な断面において、摩擦撹拌部分(Stir Zone)を横断する方向に硬さ分布を測定した。図6中、ひし形印を結ぶライン31が、硬さ分布の測定結果である。母材部分の硬さが約60HVであるのに対して、摩擦撹拌部分の硬さは100〜120HVであり、FSP処理によって、硬さが1.5倍以上に向上した。
図7は、FSP処理を2パス施した高強度マグネシウム合金試片の組織観察結果を示す図である。図7(a)は、断面のマクロ組織を示す。図7(b)はFSP処理が1パスだけ施された摩擦撹拌部分(Stir Zone)のミクロ組織を示し、図7(c)はFSP処理を2パス施した2重摩擦撹拌部分(Doubly Stirred Zone)のミクロ組織を示す。2重摩擦撹拌部分の結晶粒径は、1パス処理された摩擦撹拌部分の結晶粒径よりもさらに微細化され、その粒径はサブミクロンサイズであった。
図8は、FSP処理を2パス施した場合の硬さ分布測定結果を示す図である。図8では、FSP処理を施した側の表面から深さ2mmおよび深さ4mmの位置において、FSP処理部分を横断する方向に硬さ分布を測定した。図8中、ひし形印を結ぶライン32が深さ2mmでの硬さ分布測定結果であり、正方形印を結ぶライン33が深さ4mmでの硬さ分布測定結果である。
深さ2mmの位置では、2重摩擦撹拌部分の硬さが120HVを超える値にまで向上しており、結晶粒が一層微細化されるのに伴って、硬さも一層向上することが判る。一方、深さ4mmの位置では、1パス処理の場合と同等に硬さが向上するけれども、120HVを超える顕著な硬さ向上が認められない。これは、深さ4mmの位置は、摩擦撹拌された領域の深さ方向におけるほぼ底部分に該当し、摩擦撹拌領域の重畳部分が殆ど存在しないことによる。
また図9は、母材部と1パスFSP処理部と2パスFSP処理部とにおける硬さの比較を示す図である。図9中、各縦棒は各部における硬さ分布を示し、各棒グラフは各部における硬さの平均値を示す。母材部の硬さ69HVが、1パスのFSP処理を施すことによって摩擦撹拌部の硬さが105HVに向上し、さらに2パスのFSP処理を施すことによって2重摩擦撹拌部の硬さが129HVに向上する。このように、FSP処理を施すことによる組織の微細化に伴って硬さが向上し、FSP処理を多パスで施すことによって、一層組織を微細化し硬さを向上できることが判る。
以上に述べたように、本実施の形態では、マグネシウム合金は、at%でMg−2Zn−2Yであるけれども、これに限定されることなく、Mg−1Zn−2YでもよくまたMg−1Zn−3Yでもよく、さらにMg−Zn−Y系に限定されることなく、摩擦撹拌時における動的再結晶と粒成長とが比較的抑制される特性を有するマグネシウム合金であればよい。
本発明の高強度マグネシウム合金の改質に用いられる摩擦撹拌装置1の構成を簡略化して示す斜視図である。 図1に示す摩擦撹拌装置1に備わるツール先端部付近を拡大して示す正面図である。 本発明の第1の実施態様である高強度マグネシウム合金の改質方法の概要を説明する図である。 本発明の第2の実施態様である高強度マグネシウム合金の改質方法の概要を説明する図である。 FSP処理を1パス施した高強度マグネシウム合金試片の組織観察結果を示す図である。 FSP処理を1パス施した場合の硬さ分布測定結果を示す図である。 FSP処理を2パス施した高強度マグネシウム合金試片の組織観察結果を示す図である。 FSP処理を2パス施した場合の硬さ分布測定結果を示す図である。 母材部と1パスFSP処理部と2パスFSP処理部とにおける硬さの比較を示す図である。 Mg合金とTi合金およびAl合金との比強度を比較する図である。 Mg−Zn−Y合金の比強度をTi合金、Al合金および従来のMg合金と比較する図である。
符号の説明
1 摩擦撹拌装置
2 高強度マグネシウム合金板
3 テーブル
4 FSヘッド
5 門構ヘッド
9 ピン
10 ショルダー
13 軟化部分
14 摩擦撹拌部分
15 摩擦撹拌領域
16 重畳部

Claims (4)

  1. 軸線まわりに回転するツールを高強度マグネシウム合金素材の表面に圧入し、回転するツールとの摩擦によって高強度マグネシウム合金素材を加熱して軟化させる圧入ステップと、
    高強度マグネシウム合金素材の軟化部分を摩擦撹拌する摩擦撹拌ステップと、
    高強度マグネシウム合金素材に対して回転するツールを相対的に移動させることによって、高強度マグネシウム合金素材に摩擦撹拌領域を形成する摩擦撹拌領域形成ステップとを含むことを特徴とする高強度マグネシウム合金の改質方法。
  2. 摩擦撹拌領域が少なくとも部分的に重なるように、
    少なくとも圧入ステップ、摩擦撹拌ステップおよび摩擦撹拌領域形成ステップの一連のステップが複数回実行されることを特徴とする請求項1記載の高強度マグネシウム合金の改質方法。
  3. 前記ツール先端の突出部が、
    円錐台形状を有することを特徴とする請求項1または2記載の高強度マグネシウム合金の改質方法。
  4. 高強度マグネシウム合金素材が、
    亜鉛およびイットリウムを含むマグネシウム基合金であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の高強度マグネシウム合金の改質方法。
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