JP6392166B2 - 合わせガラス - Google Patents

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Description

本発明は、自動車のウインドシールドなどに用いられる合わせガラスに関する。
近年、自動車の燃費性向上の観点から、装着されるウインドシールドなどのガラスの軽量化が求められ、それに伴い厚みの小さいガラスの開発が進められている。しかしながら、厚みを小さくすると、遮音性能が低下するため、車外の音が車内に流入し、車内環境が悪化するという問題がある。特に、コインシデンス効果と呼ばれる特定の周波数での共振による音響透過損失が生じることが知られており、これにより、遮音性能が大きく低下することが知られている。また、このコインシデンス効果は、ガラスの厚みが小さくなると、高周波数側にシフトすることから、車外で発生した高周波数のノイズが車内に流入するおそれがあった。
これを解決するため、例えば、特許文献1には、一対のガラス板の間に中間膜を配置した合わせガラスが開示されており、面密度を低下させつつ、周波数5000Hzの音を遮音するようにしている。
特開2002−326847号公報
しかしながら、車内で問題となる音には種々のものがあり、これらの中には周波数が5000Hzを超えるものも多い。例えば、ブレーキ音、風切り音は5000Hz以上の周波数の音を含み、車内の快適性を阻害する要因となっていた。したがって、5000Hzより高い周波数の音でも車内に与える影響は大きく、このような周波数に対応する自動車用合わせガラスが要望されていた。例えば、ハイブリッド車やEV車においては、モーターの周波数が5000Hz以上であり、このような周波数帯域の遮音性能を向上させる技術が求められる。特に、これらの車は、エンジン音がほとんど聞こえなかったり、あるいはエンジン音がないため、5000Hz以上の周波数帯域の音の遮音性能が重要となる。
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、特に、5000Hzよりも高い高周波数の音に対する遮音性を向上できる、合せガラスを提供することを目的とする。
本発明に係る合わせガラスは、外側ガラス板と、前記外側ガラス板と対向配置された内側ガラス板と、前記外側ガラス板及び内側ガラス板の間に挟持された中間膜と、を備え、前記中間膜は、コア層と、前記コア層よりも剛性が高く、当該コア層を挟む前記外側ガラス板側及び前記内側ガラス板側のうち、少なくとも前記外側ガラス板側に配置される少なくとも1つのアウター層と、を備え、前記アウター層の少なくとも1つのヤング率は、周波数100Hz,温度20℃において、560MPa以上である。
上記合わせガラスにおいては、前記コア層の厚みを、0.1mm以上とすることができる。
上記いずれかの合わせガラスは、垂直からの取付け角度を45度未満とすることができる。
上記いずれかの合わせガラスにおいては、前記コア層のヤング率を、周波数100Mz,温度20℃において、25MPa以下とすることができる。
上記いずれかの合わせガラスにおいては、前記コア層のヤング率を、波数100Mz,温度20℃において、14MPa以下とすることができる。
上記いずれかの合わせガラスにおいては、前記コア層のtanδを周波数100Mz,温度20℃において、0.8以下とすることができる。
上記いずれかの合わせガラスにおいては、前記コア層を挟む少なくとも一対の前記アウター層を備えることができる。
上記合わせガラスにおいては、前記外側ガラス板側に配置される前記アウター層のヤング率を前記内側ガラス板側に配置される前記アウター層のヤング率よりも大きくすることができる。
上記いずれかの合わせガラスにおいては、前記外側ガラスの厚みを、前記内側ガラス板の厚みと相違させることができる。
上記いずれかの合わせガラスにおいては、前記外側ガラス板の厚みと前記内側ガラス板の厚みとの合計を、3.8mm以下とすることができる。
上記いずれかの合わせガラスは、自動車のウインドシールドとして用いられ、前記自動車に対して、垂直からの取付け角度が45度以上とすることができる。
本発明によれば、5000Hzよりも高い高周波数の音に対する遮音性を向上できる、合せガラスを提供することができる。
本発明に係る合わせガラスの一実施形態を示す断面図である。 外側ガラス板と内側ガラス板の厚みが相違する場合の周波数と音響透過損失の関係を示すグラフである。 湾曲状の合わせガラスのダブリ量を示す正面図(a)及び断面図(b)である。 湾曲形状のガラス板と、平面形状のガラス板の、一般的な周波数と音響透過損失の関係を示すグラフである。 異なるダブり量における、周波数と音響透過損失との関係を示すグラフである。 合わせガラスの厚みの測定位置を示す概略平面図である。 中間膜の測定に用いる画像の例である。 合わせガラスの取付方法を示す概略図である。 取付角度に関して評価したグラフである。 取付角度が60度のとき、異なるコア層の厚みにおける周波数とSTLとの関係を示すグラフである。 取付角度が60度であり、外側ガラス板の厚みが2.0mm、内側ガラス板の厚みが1.5mmのとき、異なるコア層のヤング率における周波数とSTLとの関係を示すグラフである。 取付角度を60度、コア層31のヤング率を10MPaしたときの周波数とSTLとの関係を示すグラフである。 合わせガラスにおける周波数と音響透過損失の関係を示すグラフである。 単板ガラスの厚さを変化させたときの周波数と音響透過損失の関係を示すグラフである。 音響透過損失を出力するためのシミュレーションのモデル図である。 中間膜のヤング率に関する評価の結果を示すグラフである。 中間膜のヤング率に関する評価の結果を示すグラフである。 中間膜のヤング率に関する評価の結果を示すグラフである。 中間膜のヤング率に関する評価の結果を示すグラフである。 中間膜のヤング率に関する評価の結果を示すグラフである。 中間膜のヤング率に関する評価の結果を示すグラフである。 中間膜のヤング率に関する評価の結果を示すグラフである。 中間膜のヤング率に関する評価の結果を示すグラフである。 中間膜のヤング率に関する評価の結果を示すグラフである。 中間膜のヤング率に関する評価の結果を示すグラフである。 中間膜のヤング率に関する評価の結果を示すグラフである。 ダブリ量に関する評価の結果を示すグラフである。
以下、本発明に係る合わせガラスの一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。図1は、本実施形態に係る合わせガラスの断面図である。同図に示すように、本実施形態に係る合わせガラスは、外側ガラス板1、内側ガラス板2、及びこれらのガラスの間に挟持される中間膜3で構成されている。また、中間膜3は、コア層31と、これを挟持する一対のアウター層32により構成することができるが、これは一例であり、詳細は後述する。外側ガラス板1とは、外乱を受けやすい側に配置されるガラス板であり、内側ガラス板2は、その反対側に配置されるガラス板である。したがって、例えば、この合わせガラスを自動車のガラスとして用いる場合には、車外側のガラス板が外側ガラス板になり、建築材として用いる場合には、屋外を向く側が外側ガラス板になる。但し、受け得る外乱によっては、これとは反対の配置になることもある。以下、各部材について説明する。
<1.外側ガラス板及び内側ガラス板>
外側ガラス板1及び内側ガラス板2は、公知のガラス板を用いることができ、熱線吸収ガラス、一般的なクリアガラスやグリーンガラス、またはUVグリーンガラスで形成することもできる。但し、この合わせガラスを自動車の窓に用いる場合には、自動車が使用される国の安全規格に沿った可視光線透過率を実現する必要がある。例えば、外側ガラス板1により必要な日射吸収率を確保し、内側ガラス板2により可視光線透過率が安全規格を満たすように調整することができる。以下に、クリアガラス、熱線吸収ガラス、及びソーダ石灰系ガラスの一例を示す。
(クリアガラス)
SiO2:70〜73質量%
Al23:0.6〜2.4質量%
CaO:7〜12質量%
MgO:1.0〜4.5質量%
2O:13〜15質量%(Rはアルカリ金属)
Fe23に換算した全酸化鉄(T−Fe23):0.08〜0.14質量%
(熱線吸収ガラス)
熱線吸収ガラスの組成は、例えば、クリアガラスの組成を基準として、Fe23に換算した全酸化鉄(T−Fe23)の比率を0.4〜1.3質量%とし、CeO2の比率を0〜2質量%とし、TiO2の比率を0〜0.5質量%とし、ガラスの骨格成分(主に、SiO2やAl23)をT−Fe23、CeO2およびTiO2の増加分だけ減じた組成とすることができる。
(ソーダ石灰系ガラス)
SiO2:65〜80質量%
Al23:0〜5質量%
CaO:5〜15質量%
MgO:2質量%以上
NaO:10〜18質量%
2O:0〜5質量%
MgO+CaO:5〜15質量%
Na2O+K2O:10〜20質量%
SO3:0.05〜0.3質量%
23:0〜5質量%
Fe23に換算した全酸化鉄(T−Fe23):0.02〜0.03質量%
本実施形態に係る合わせガラスの厚みは特には限定されないが、軽量化の観点からは、外側ガラス板1と内側ガラス板2の厚みの合計を、2.4〜3.8mmとすることが好ましく、2.6〜3.4mmとすることがさらに好ましく、2.7〜3.2mmとすることが特に好ましい。このように、軽量化のためには、外側ガラス板1と内側ガラス板2との合計の厚みを小さくすることが必要であるので、各ガラス板のそれぞれの厚みは、特には限定されないが、例えば、以下のように、外側ガラス板1と内側ガラス板2の厚みを決定することができる。
外側ガラス板1は、主として、外部からの障害に対する耐久性、耐衝撃性が必要であり、例えば、この合わせガラスを自動車のウインドシールドとして用いる場合には、小石などの飛来物に対する耐衝撃性能が必要である。他方、厚みが大きいほど重量が増し好ましくない。この観点から、外側ガラス板1の厚みは1.8mm以上、1.9mm以上、2.0mm以上、2.1mm以上、2.2mm以上の順で好ましい。一方、外側ガラスの厚みの上限は、5.0mm以下、4.0mm以下、3.1mm以下、2.5mm以下、2.4mm以下の順で好ましい。この中で、2.1mmより大きく2.5mm以下、特に、2.2mm以上2.4mm以下が好ましい。何れの厚みを採用するかは、ガラスの用途に応じて決定することができる。
内側ガラス板の厚みは、外側ガラス板1と同等にすることができるが、例えば、合わせガラスの軽量化のため、外側ガラス板1よりも厚みを小さくすることができる。具体的には、ガラスの強度を考慮すると、内側ガラス板2の厚みは、0.6mm以上、0.8mm以上、1.0mm以上、1.3mm以上の順で好ましい。一方、内側ガラス板2の厚みの上限は、5.0mm以下、4.0mm以下、3.1mm以下、2.5m以下、2.0mm以下、1.6mm以下、1.4mm以下、1.3mm以下、1.1mm未満の順で好ましい。この中で、例えば、0.6mm以上1.1mm未満、または2.1mmより大きく2.5mm以下、特に、2.2mm以上2.4mm以下が好ましい。内側ガラス板2についても、何れの厚みを採用するかは、ガラスの用途に応じて決定することができる。
この点、本発明者は、外側ガラス板1と内側ガラス板2とを異なる厚みにする場合、厚みの差について、次のような検討結果を得た。すなわち、図2に示すように、外側ガラス板1と内側ガラス板2との厚みの差が大きくなるほど、遮音性能が低下することが見出した。図2(a)は、次のような条件で、音響透過損失(STL:Sound Transmission Loss)を算出した(算出方法は後述する実施例の方法に従う)グラフである。まず、外側ガラス板1及び内側ガラス板2は、横が800mm、縦が500mmの平坦なクリアガラスとした。中間膜3は、コア層31を一対のアウター層32で挟持した3層で構成され、コア層の厚みが0.10mm、アウター層の厚みが0.33mmであり、合計0.76mmである。また、コア層31のヤング率(周波数100Hz、温度20℃で測定)は25MPaであり、アウター層32のヤング率(周波数100Hz、温度20℃で測定)は560MPaである。また、図2(b)においては、アウター層のヤング率が441MPaであること以外は、図2(a)と同じ条件である。なお、図5のシミュレーションなど、以下の説明において、特に断りがない限りは、コア層31及びアウター層32の仕様、測定条件などは上述したものと同じである。さらに、特に断りのない限りは、クリアガラスを用いることとするが、これに限定されるものではない。それは、遮音性能は、ガラスのヤング率、ポアソン比、および密度により決定されるところ、クリアガラスと、例えば、グリーンガラスはこれらの値が同じであるであるからである。
図2に示すように、外側ガラス板1と内側ガラス板2との厚みの差が0.7mmより大きくなると、2500〜5000Hzの周波数域でSTLが低下していることが分かる。また、3000Hz以下における低周波域においてもSTLの低下が顕著である。この点は、アウター層のヤング率が相違しても概ね同じである。この観点から、外側ガラス板1と内側ガラス板2との厚みの差は、0.7mm以下であることが好ましく、0.5mm以下であることがさらに好ましい。
また、本実施形態に係る外側ガラス板1及び内側ガラス板2の形状は、平面形状及び湾曲形状のいずれであってもよい。しかしながら、後述するガラスの音響透過損失(STL:Sound Transmission Loss)は湾曲形状の方が低下するため、湾曲形状ガラスは特に音響対策が必要である。湾曲形状の方が平面形状よりSTL値が低下するのは湾曲形状の方が共振モードによる影響が大きいためと考えられる。
さらに、合わせガラスが湾曲形状である場合には、外側ガラス板1と内側ガラス板2の厚みが同じであっても、ダブリ量が大きくなると遮音性能が低下するとされている。ダブリ量とは、ガラス板の曲げを示す量であり、例えば、図3に示すように、ガラス板の左右の中心、つまりガラス板の上辺の中央と下辺の中央とを結ぶ仮想の直線Lを設定したとき、この直線Lとガラス板の表面(凹面側の表面)との距離のうち最も大きいものをダブリ量Dと定義する。
図4は、湾曲形状のガラス板と、平面形状のガラス板の、一般的な周波数と音響透過損失の関係を示すグラフである。図4によれば、湾曲形状のガラス板は、ダブリ量が30〜38mmの範囲では、音響透過損失に大きな差はないが、平面形状のガラス板と比べると、4000Hz以下の周波数帯域で音響透過損失が低下していることが分かる。したがって、湾曲形状のガラス板を作製する場合、ダブリ量は小さい方がよいが、例えば、ダブリ量が30mmを超える場合には、後述するように、中間膜3のコア層31のヤング率を小さくすること、例えば、25MPa(周波数100Hz,温度20℃)以下とすることが好ましい。
また、本発明者は、より詳細な試験結果も得た。図5は、異なるダブり量における、周波数とSTLとの関係をシミュレーションした結果である。このシミュレーションでは、外側ガラス板1及び内側ガラス板2の厚みをともに1.75mmとし、両ガラス板1,2における上下を結ぶ線のみが湾曲している態様とした。また、図5(a)ではアウター層のヤング率を560MPaとし、図5(b)ではアウター層のヤング率を441MPaとしている。その他の条件は、図2のグラフと同じである。図5に示すように、この合わせガラスでは、ダブり量が大きくなるにしたがって、4000Hz以下の周波数域でSTLが低下していることが分かる。特に、ダブり量が30mmより大きくなると、STLの低下が顕著になっている。これは、ダブり量が大きくなると、合わせガラスに対する音の入射角が大きくなりやすく、これによって、合わせガラスが共振しやすくなることによると考えられる。この点は、アウター層のヤング率が相違しても概ね同じである。この観点から、ダブり量は、30mm以下であることが好ましく、20mm以下であることがさらに好ましい。
以上の検討より、外側ガラス板1の厚みと内側ガラス板2の厚みとが相違する場合には、遮音性能が低下するが、遮音性能の低下を抑制するためには、上記のように、外側ガラス板1と内側ガラス板2との厚みの差を0.7mm以下とし、且つダブり量を30mm以下とすることが好ましい。
ここで、ガラス板が湾曲している場合の厚みの測定方法の一例について説明する。まず、測定位置については、図6に示すように、ガラス板の左右方向の中央を上下方向に延びる中央線S上の上下2箇所である。測定機器は、特には限定されないが、例えば、株式会社テクロック製のSM−112のようなシックネスゲージを用いることができる。測定時には、平らな面にガラス板の湾曲面が載るように配置し、上記シックネスゲージでガラス板の端部を挟持して測定する。なお、ガラス板が平坦な場合でも、湾曲している場合と同様に測定することができる。
<2.中間膜>
中間膜3は、複数の層で形成されており、一例として、図1に示すように、軟質のコア層31を、これよりも剛性の高い硬質のアウター層32で挟持した3層で構成することができる。但し、この構成に限定されるものではなく、コア層31と、外側ガラス板1側に配置される少なくとも1つのアウター層32とを有する複数層で形成されていればよい。例えば、コア層31と、外側ガラス板1側に配置される1つのアウター層32を含む2層の中間膜3、またはコア層31を中心に両側にそれぞれ2層以上の偶数の数のアウター層32を配置した中間膜3、あるいはコア層31を挟んで一方に奇数の数のアウター層32、他方の側に偶数の数のアウター層32を配置した中間膜3とすることもできる。なお、アウター層32を1つだけ設ける場合には、上記のように外側ガラス板1側に設けているが、これは、車外や屋外からの外力に対する耐破損性能を向上するためである。また、アウター層32の数が多いと、遮音性能も高くなる。
コア層31はアウター層32よりも軟質であるかぎり、その硬さは特には限定されないが、例えば、ヤング率を基準として材料を選択することができる。具体的には、周波数100Hz,温度20度において、1MPa以上であることが好ましい。上限については、特には限定されないが、例えば、25MP以下であることが好ましく、20MPa以下であることが、さらに好ましく、18MPa以下であることが特に好ましく、14MPa以下であることがより好ましく、10MPa以下であることがさらにより好ましい。このような範囲にすると、概ね3500Hz以下の低周波数域で、STLが低下するのを防止することができる。
この点について、本発明者により、一般的にコア層のヤング率を低下させると、3000〜5000Hzの周波数域で遮音性能が向上することが見出されている。この点について、以下の表1には、クリアガラスからなる外側ガラス板と内側ガラス板、及びコア層とコア層の両側に位置するアウター層で構成された中間膜を有する合わせガラスの遮音性能を示している。外側ガラス板の厚みは2.0mm、内側ガラス板の厚みは1.3mm、中間膜の厚みは、コア層が0.10mm、アウター層が0.33mmであり、合計0.76mmである。以下の表1では、周波数が1250〜10000Hzの間での音響透過損失を示している。具体的には、中間膜のコア層のヤング率(周波数100Hz、温度20℃で測定)を25MPa,12.5MPa,及び6.25MPaとした場合の音響透過損失を算出し(算出方法は後述する実施例の方法に従う)、ヤング率が25MPaの場合を基準として(以下の表では基準であるため0としている)、ヤング率が12.5MPa,6.25MPaのときの音響透過損失の差(単位はdB)を示している。このとき、アウター層のヤング率は560MPa、tanδは0.26(温度20℃、周波数100Hz)である。表1によれば、周波数が、3150〜5000Hzの間では、中間膜のコア層のヤング率が25MPaから12.5MPa,6.25MPaへと低下するのにしたがって音響透過損失が向上していることが分かる。
測定方法としては、例えば、Metravib社製固体粘弾性測定装置DMA 50を用い、ひずみ量0.05%にて周波数分散測定を行うことができる。以下、本明細書においては、特に断りのない限り、ヤング率は上記方法での測定値とする。但し、周波数が200Hz以下の場合の測定は実測値を用いるが、200Hzより大きい場合には実測値に基づく算出値を用いる。この算出値とは、実測値からWLF法を用いることで算出されるマスターカーブに基づくものである。
一方、アウター層32のヤング率は、後述するように、高周波域における遮音性能の向上のために、大きいことが好ましく、周波数100Hz,温度20度において560MPa以上、600MPa以上、650MPa以上、700MPa以上、750MPa以上、880MPa以上、または1300MPa以上の順で好ましい。一方、アウター層32のヤング率の上限は特には限定されないが、例えば、加工性の観点から設定することができる。例えば、1750MPa以上となると、加工性、特に切断が困難になることが経験的に知られている。また、コア層31を挟む一対のアウター層32を設ける場合、外側ガラス板1側のアウター層32のヤング率を、内側ガラス板2側のアウター層32のヤング率よりも大きくすることが好ましい。これにより、車外や屋外からの外力に対する耐破損性能が向上する。
また、コア層31のtanδは、周波数100Hz,温度20℃において、0.1〜0.9とすることができる。tanδが上記範囲にあると、遮音性能が向上する。
この点について、本発明者により、一般的にコア層のtanδを大きくすると、5000〜10000Hzの周波数域で遮音性能が向上することが見出されている。この点について、以下の表2には、クリアガラスからなる外側ガラス板と内側ガラス板、及びコア層とこのコア層の両側に位置するアウター層で構成された中間膜を有する合わせガラスの遮音性能を示している。外側ガラス板の厚みは2.0mm、内側ガラス板の厚みは1.3mm、中間膜の厚みは、コア層が0.10mm、アウター層が0.33mmであり、合計0.76mmである。なお、このときのコア層、及びアウター層のヤング率はそれぞれ12.5MPa,560MPaである(周波数100Hz,温度20℃で測定)。以下の表2では、周波数が1250〜10000Hzの間での音響透過損失を示している。具体的には、中間膜のtanδ(周波数100Hz、温度20℃で測定)を0.8,1.2,及び1.6とした場合の音響透過損失を算出し(算出方法は後述する実施例の方法に従う)、tanδが0.8の場合を基準として(以下の表では基準であるため0としている)、tanδが1.2,1.6のときの音響透過損失の差(単位はdB)を示している。なお、アウター層のtanδは、0.26である。表2によれば、周波数が、5000〜10000Hzの間では、中間膜のtanδが0.8から1.2,1.6へと大きくなるのにしたがって音響透過損失が向上していることが分かる。また、1600〜3150Hzにおいては、0.8から1.2,1.6へと大きくなるのにしたがって音響透過損失が低下していることが分かる。換言すると、0.8以下にすることで、1600−3150Hzにおいて、音響透過損失が向上するといえる。
また、各層31,32を構成する材料は、特には限定されないが、少なくともヤング率が上記のような範囲とすることができる材料、例えば、樹脂材料であることが必要である。例えば、アウター層32は、ポリビニルブチラール樹脂(PVB)によって構成することができる。ポリビニルブチラール樹脂は、各ガラス板との接着性や耐貫通性に優れるので好ましい。一方、コア層31は、エチレンビニルアセテート樹脂(EVA)、またはアウター層を構成するポリビニルブチラール樹脂よりも軟質なポリビニルアセタール樹脂によって構成することができる。軟質なコア層を間に挟むことにより、単層の樹脂中間膜と同等の接着性や耐貫通性を保持しながら、遮音性能を大きく向上させることができる。
一般に、ポリビニルアセタール樹脂の硬度は、(a)出発物質であるポリビニルアルコールの重合度、(b)アセタール化度、(c)可塑剤の種類、(d)可塑剤の添加割合などにより制御することができる。したがって、それらの条件から選ばれる少なくとも1つを適切に調整することにより、同じポリビニルブチラール樹脂であっても、アウター層32に用いる硬質なポリビニルブチラール樹脂と、コア層31に用いる軟質なポリビニルブチラール樹脂との作り分けが可能である。さらに、アセタール化に用いるアルデヒドの種類、複数種類のアルデヒドによる共アセタール化か単種のアルデヒドによる純アセタール化かによっても、ポリビニルアセタール樹脂の硬度を制御することができる。一概には言えないが、炭素数の多いアルデヒドを用いて得られるポリビニルアセタール樹脂ほど、軟質となる傾向がある。したがって、例えば、アウター層32がポリビニルブチラール樹脂で構成されている場合、コア層31には、炭素数が5以上のアルデヒド(例えばn−ヘキシルアルデヒド、2−エチルブチルアルデヒド、n−へプチルアルデヒド、n−オクチルアルデヒド)、をポリビニルアルコールでアセタール化して得られるポリビニルアセタール樹脂を用いることができる。なお、所定のヤング率が得られる場合は、上記樹脂等に限定されることはい。
また、中間膜3の総厚は、特に規定されないが、0.3〜6.0mmであることが好ましく、0.5〜4.0mmであることがさらに好ましく、0.6〜2.0mmであることが特に好ましい。また、コア層31の厚みは、0.1〜2.0mmであることが好ましく、0.1〜0.6mmであることがさらに好ましい。特に、下限については、0.1mm以上であることが好ましく、0.15mm以上であることがさらに好ましく、0.2mm以上であることが特に好ましい。一方、各アウター層32の厚みは、0.1〜2.0mmであることが好ましく、0.1〜1.0mmであることがさらに好ましい。その他、中間膜3の総厚を一定とし、この中でコア層31の厚みを調整することもできる。
コア層31及びアウター層32の厚みは、例えば、以下のように測定することができる。まず、マイクロスコープ(例えば、キーエンス社製VH−5500)によって合わせガラスの断面を175倍に拡大して表示する。そして、コア層31及びアウター層32の厚みを目視により特定し、これを測定する。このとき、目視によるばらつきを排除するため、測定回数を5回とし、その平均値をコア層31、アウター層32の厚みとする。例えば、図7に示すような合わせガラスの拡大写真を撮影し、このなかでコア層やアウター層32を特定して厚みを測定する。
なお、中間膜3のコア層31、アウター層32の厚みは全面に亘って一定である必要はなく、例えば、ヘッドアップディスプレイに用いられる合わせガラス用に楔形にすることもできる。この場合、中間膜3のコア層31やアウター層32の厚みは、最も厚みの小さい箇所、つまり合わせガラスの最下辺部を測定する。中間膜3が楔形の場合、外側ガラス板及び内側ガラス板は、平行に配置されないが、このような配置も本発明における外側ガラス板と内側ガラス板との「対向配置」に含まれるものとする。すなわち、本発明の「対向配置」は、例えば、1m当たり3mm以下の変化率で厚みが大きくなるコア層31やアウター層32を用いた中間膜3を使用した時の外側ガラス板と内側ガラス板の配置を含む。
中間膜3の製造方法は特には限定されないが、例えば、上述したポリビニルアセタール樹脂等の樹脂成分、可塑剤及び必要に応じて他の添加剤を配合し、均一に混練りした後、各層を一括で押出し成型する方法、この方法により作成した2つ以上の樹脂膜をプレス法、ラミネート法等により積層する方法が挙げられる。プレス法、ラミネート法等により積層する方法に用いる積層前の樹脂膜は単層構造でも多層構造でもよい。
<4.合わせガラスの製造方法>
本実施形態に係る合わせガラスの製造方法は、特に限定されず、従来公知の合わせガラスの製造方法を採用することができる。例えば、まず、中間膜3を外側ガラス板1及び内側ガラス板2の間に挟み、これをゴムバッグに入れ、減圧吸引しながら約70〜110℃で予備接着する。予備接着の方法は、これ以外でも可能である。例えば、中間膜3を外側ガラス板1及び内側ガラス板2の間に挟み、オーブンにより45〜65℃で加熱する。続いて、この合わせガラスを0.45〜0.55MPaでロールにより押圧する。次に、この合わせガラスを、再度オーブンにより80〜105℃で加熱した後、0.45〜0.55MPaでロールにより再度押圧する。こうして、予備接着が完了する。
次に、本接着を行う。予備接着がなされた合わせガラスを、オートクレーブにより、8〜15気圧で、100〜150℃によって、本接着を行う。具体的には、14気圧で145℃の条件で本接着を行うことができる。こうして、本実施形態に係る合わせガラスが製造される。
<5.車体>
本実施形態に係る合わせガラスは、自動車に取り付ける場合、種々の自動車の窓ガラスに適用することができる。この中でも、本実施形態に係る合わせガラスは、後述するように、5000Hz以上の周波数帯域の音に対する遮音性能に優れているため、特に、ハイブリッド車やEV車に取り付けると、遮音効果が大きい。これは、ハイブリッド車やEV車において使用しているモーターは、高周波数で駆動するため、高周波数の音が発生しやすいからである。
<6.車体に用いられる位置>
本実施形態に係る合わせガラスは、自動車のいずれの位置の窓ガラスにも適用することができる。この中でも、特に、ウインドシールドに用いることが望ましい。但し、本実施形態に係る合わせガラスは、ウインドシールドに限定されず、サイドガラス、リアガラスにも用いることができる。
<7.合わせガラスの取付構造>
上述した合わせガラスは、例えば、自動車、建築物などの取付構造体に取付けることができる。このとき、合わせガラスは、取付部を介して取付構造物に取付けられる。取付部とは、例えば、自動車に取付けるためのウレタン枠などのフレーム、接着材、クランプなどが該当する。自動車への取付の一例を挙げると、図8(a)に示すように、まず、合わせガラス10の両端にピン50を取付けておき、取付対象となる自動車のフレーム70に接着材60を塗布する。フレームには、ピンが挿入される貫通孔80が形成されている。そして、図8(b)に示すように、合わせガラス10をフレーム70に取付ける。まず、ピン50を貫通孔80に挿入し、合わせガラス10をフレーム70に対して仮止めする。このとき、ピン50には段差が形成されているため、ピン50は貫通孔80の途中までしか挿入されず、これにより、フレーム70と合わせガラス10との間に隙間が生じる。そして、この隙間には上述した接着材60が塗布されているため、時間の経過とともに接着材60を介して合わせガラス10とフレーム70が固定される。
ところで、本発明者は、ウインドシールドの取付角度が大きいほど、遮音性能が低下することを見出した。図9は、周波数と音響透過損失(STL)との関係をシミュレーションした結果を示すグラフである。このグラフでは、厚みが2.0mmと1.5mmの2枚のガラス板で樹脂製の中間膜を挟持した合わせガラスを用い、垂直からの取付角度を、0〜75度の間で5種類に設定して、シミュレーションを行った結果を示している。コア層の厚みは0.1mm,アウター層の厚みは0.33mm、コア層のヤング率は25MPaである。また、図9(a)においては、アウターのヤング率が560MPaであり、図9(b)においては、アウターのヤング率が441MPaである。シミュレーションの方法は実施例に記載の方法に従う。このグラフによれば、取付角度が45度より大きくなると、人間が聞き取りやすい2500〜5000Hzの周波数域において、音響透過損失が低下していることが分かる。これにより、遮音性能が低下し、車内環境が悪化するという問題が発生する。これは、取付角度が大きくなると、水平方向に対する合わせガラスへの音の入射角が大きくなりやすく、これによって、合わせガラスが共振しやすくなることによると考えられる。この点は、アウター層のヤング率が相違しても概ね同じであるが、アウター層のヤング率が高いほど、STLの上限及び下限のピークが高周波側にややシフトしている。したがって、このような合わせガラスの取付構造体への取付において、合わせガラス10の取付角度はθは、図8(c)に示すように、垂直Nから45度以下にすることが好ましい。
また、上述したダブり量も、周波数2000〜5000Hz、特に3150Hz付近での遮音性能の低下を抑制することに寄与し、例えば、ダブり量が20mm以下であるときには、取付角度を45度以下とすることが好ましく、ダブり量が20mm以上40mm以下であるときには、取付角度を30度以下とすることが好ましい。
しかしながら、自動車の車種によっては、合わせガラスの取付角度が45度よりも大きくなることがあり、その場合には、遮音性能が低下する。したがって、取付角度が大きくても、周波数2000〜5000Hzでの遮音性能の低下を抑制するには、後述するように、コア層31のヤング率を小さくしたり、あるいはコア層31の厚みを大きくすることが好ましい。このようにすると、取付角度を大きくすることによって遮音性能が低下する周波数域と、ほほ同じ周波数域で遮音性能が向上されることが見出されている。この場合、外側ガラス板1と内側ガラス板2の厚みは同じであってもよい。
その一方で、本発明者は、合わせガラスの取付角度を大きくし、コア層31の厚みを大きくしたとき、周波数が5000〜8000Hz付近で、遮音性が低下することを見出した。図10は、取付角度が60度のとき、異なるコア層の厚みにおける周波数とSTLとの関係を示すグラフである。なお、外側ガラス板の厚みは2.0mm、内側ガラス板の厚みは1.5mm、アウター層の厚みは0.33mm、コア層のヤング率は25MPa、アウター層のヤング率は441MPaである。同図によれば、コア層31の厚みが大きいほど、2000〜5000HzでのSTLは高くなるものの、5000〜8000Hzでは、STLが低下している。
同様に、本発明者は、合わせガラスの取付角度を大きくし、コア層31のヤング率を小さくしたとき、周波数が5000〜8000Hz付近で、遮音性が低下することを見出した。図11(a)は、取付角度が60度であり、外側ガラス板の厚みが2.0mm、内側ガラス板の厚みが1.5mm、アウター層のヤング率が560MPaのとき、異なるコア層のヤング率における周波数とSTLとの関係を示すグラフである。また、図11(b)は、アウター層のヤング率のみが相違し、これが441MPaのグラフである。同図によれば、コア層31のヤング率が小さいほど、2000〜5000HzでのSTLは高くなるものの、5000〜8000Hzでは、STLが低下していることが分かる。この点は、アウター層のヤング率が相違しても概ね同じであるが、アウター層のヤング率が高いほど、STLの上限及び下限のピークが高周波側にややシフトしている。
これに対して、本発明者は、アウター層のヤング率を大きくすることで、5000〜8000HzでのSTLが向上することを見出した。図12は、取付角度を60度、コア層31のヤング率を10MPa(周波数100Hz,温度20度)としたときの周波数とSTLとの関係を示すグラフである。そして、このグラフでは、コア層31のヤング率を10MPaとしつつ、アウター層32のヤング率が異なる3種類の合わせガラスを準備した。すなわち、アウター層32の厚みを441MPa,560MPa,800MPaとした。その結果、2000〜5000Hzでは、アウター層のヤング率が大きいとSTLが低いものの、他の合わせガラスとは大きい差は生じていない。一方、5000〜8000Hzでは、アウター層32のヤング率が大きい合わせガラスのSTLが最も大きくなっている。
この観点から、取付角度が45度以上の大きい場合には、アウター層32のヤング率が大きいこと、例えば、560MPa以上であることが好ましく、これにより、コア層31のヤング率が、例えば1〜25MPaのように低くても、5000〜8000HzのSTLが向上することが見出された。また、図11に示すように、コア層のヤング率が低ければ、2000〜5000Hzにおいて、STLが向上するため、好ましい。
<8.特徴>
本実施形態によれば、中間膜3の一部を構成するアウター層32のヤング率を周波数100Hz,温度20度において560MPa以上とすることで、次の効果を得ることができる。
すなわち、本発明者は、中間膜3のアウター層32のヤング率を向上すると、約4000Hz以上の周波数域での遮音性能が向上することを見出した。例えば、一般的に用いられるヤング率が441MPa(20℃、100Hz)のアウター層に対し、ヤング率が560MPa(20℃、100Hz)のアウター層32を用いると、周波数約6300Hzにおいて、STLが0.3dB向上することを見出した。一般的に、人間は0.3dB以上の音の変化を認識できるとされているため、ヤング率を高めることで、高周波数域において、人間が認識できるほどの遮音効果を得ることができる。また、アウター層32のヤング率は高くなるほど、遮音性能が高くなることが見出されている。
一方、1000〜3500Hzの低周波数域では、アウター層のヤング率を向上すると、STLが低下することが分かっている。しかしながら、その低下は小さいことも見出されている。
また、以下の数式に示すように、ガラスは一般的に厚みやヤング率が小さくなるほどコインシデンス周波数は高周波側にシフトする。
したがって、厚みの小さい合わせガラスであれば、上述したように、ヤング率の高いアウター層32を用いることが有利である。
また、合わせガラスの総厚が同じでも、外側ガラス板1と内側ガラス板2の厚みが相違する場合には、特定の周波数域での遮音性能が低下することが、本発明者によって見出されている。例えば、図13に示すように、同厚の場合に比して、人間が聞き取りやすい2000〜5000Hzの周波数領域の遮音性能が低下することを見出した。同図は、周波数と音響透過損失(STL)との関係をシミュレーションした結果を示すグラフである。このグラフには、厚みが1.5mmのガラス板で構成された合わせガラス(以下、第1合わせガラスという)と、厚みが2.0mmと1.0mmの異なるガラス板で構成された合わせガラス(以下、第2合わせガラスという)が表示されている。いずれの合わせガラスも、ガラス板の間に樹脂製の中間膜が配置されている。このグラフによれば、3000〜5000Hzの周波数領域において、第2合わせガラスの音響透過損失は、第1合わせガラスに比べて低下していることが分かる。すなわち、厚みの異なるガラス板を用いることで、人間が聞き取りやすい2000〜5000Hzの周波数領域の遮音性能が低下することが分かった。
これに対して、本発明者は、中間膜3の一部を構成するコア層31の厚みが小さいほど、あるいはヤング率が小さいほど、2000〜5000HzでのSTLが低下しないことを見出した。例えば、周波数100Hz,温度20度において、25MPa以下、好ましくは、20MPa以下、より好ましくは18MPa以下、特に好ましくは、14MPa以下とすれば、人間が聞き取りやすい周波数においては、遮音性能は低下しないことも見出した。
これは、以下の理由からであると考えられる。まず、コア層31の厚みが小さいと、軟質のコア層31の影響がほとんどなくなるため、中間膜3は、主として、硬質のアウター層32の性質が大きくなる。すなわち、外側ガラス板1と内側ガラス板2は、硬質の中間膜3により連結されることになり、これにより、合わせガラスであっても、外側ガラス板1と内側ガラス板2の厚みの合計値と同厚の単板として性質が強くなる。また、上述した数1に示すように、ガラスは一般的に厚みやヤング率が小さくなるほどコインシデンス周波数は高周波側にシフトする。
これらを考慮すると、中間膜3が硬質であると、つまり、ヤング率が大きいと、合計の厚みが4mmの合わせガラスであっても、4mmの厚みを有する単板と同様に、コインシデンス周波数が3〜4kHzとなり、人が聞きやすい周波数帯で性能が低下する。一方、中間膜3が軟質であれば、つまりヤング率が小さくなれば、合わせガラスの性能は2枚のガラス板の合算になる。例えば、2mmのガラス板と1mmのガラス板からなる合わせガラスであれば、その性能は、2枚のガラス板の性能の合算となる傾向がある。すなわち、例えば、図14に示す各ガラス板の厚みは4mmよりも小さいため、コインシデンス周波数は高周波側にシフトし、2mmのガラス板は5000Hzあたりにコインシデンス周波数が存在するとともに、1mmのガラス板は8000Hzにコインシデンス周波数が存在する。そして、これら1mmと2mmの厚さのガラス板の合わせガラスの性能はその合算であるため、コインシデンス周波数は、5000〜8000Hzの間に存在することになる。なお、図14は、合わせガラスではない単板の、周波数とSTLとの関係をシミュレーションした結果を示すグラフである。
そこで、中間膜3の一部を構成するコア層31の厚みを大きくすると、軟質であるコア層31の影響が大きくなり、合わせガラスは、中間膜3のコア層31を挟んで設けられた2つのガラス板の性質を合算した性質が表れる。これにより、外側ガラス板1と内側ガラス板2の厚みが相違するとき、例えば、内側ガラス板2の厚みを小さくしても、人間が聞き取りやすい周波数においては遮音性能は低下しない。すなわち、内側ガラス板2の厚みを小さくすることでコインシデンス周波数が高周波側にシフトする。そのため、上述したように、内側ガラス板2の薄厚化に起因して2000〜5000Hzの周波数領域において低下した音響透過損失を上昇させることが可能となる。その結果、合わせガラスの軽量化とともに、人間が聞き取りやすい2000〜5000Hzの周波数領域での遮音性能を向上することができる。
したがって、2000〜5000Hzの周波数域での遮音性能を向上するには、軟質であるコア層31の厚みを大きくする必要がある。また、上述したように、外側ガラス1と内側ガラス板2の厚みの差が小さければ、さらに遮音性能を向上することができる。
なお、以上の知見は、アウター層32よりも軟質のコア層31の厚みに関するものであるが、コア層31のヤング率の範囲を、上述したものにすることでも、同様の効果を得ることができる。
以下、本発明の実施例について説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されない。
1.試験A
以下の通り、実施例1及び比較例1に係る合わせガラスを準備した。実施例1と比較例1の相違は、アウター層のヤング率のみである。
まず、外側及び内側ガラス板を、上述したクリアガラスで形成した。外側ガラス板の厚みは2.0mm、内側ガラス板の厚みは1.3mmとした。そして、中間膜はコア層とこれを挟持する一対のアウター層で構成した。中間膜の厚みは0.76mm、コア層の厚みは0.1mm、両アウター層の厚みはそれぞれ0.33mmとした。そして、コア層のヤング率は19MPa(20℃、100Hz)に調整した。また、実施例1におけるアウター層のヤング率を882MPa(20℃、100Hz)とし、比較例1におけるアウター層のヤング率を441MPa(20℃、100Hz)とした。
上記実施例1及び比較例1について、音響透過損失をシミュレーションにより、評価した。シミュレーション条件は、以下の通りである。
まず、シミュレーションは、音響解析ソフト(ACTRAN、Free Field technology社製)を用いて行った。このソフトでは、有限要素法を用いて次の波動方程式を解くことにより、合わせガラスの音響透過損失(透過音圧レベル/入射音圧レベル)を算出することができる。
次に、算出条件について説明する。
(1) モデルの設定
本シミュレーションで用いた合わせガラスのモデルを図15に示す。このモデルでは、音の発生源側から外側ガラス板、中間膜、内側ガラス板、ウレタン枠の順で積層した合わせガラスを規定している。ここで、ウレタン枠をモデルに追加しているのは、ウレタン枠の有無により音響透過損失の算出結果に少なからず影響があると考えられる点、及び、合わせガラスと車両のウインドシールドの間にはウレタン枠が用いられて接着していることが一般的である点を考慮したためである。
(2) 入力条件1(寸法等)
なお、ガラス板の寸法である800×500mmは、実際の車両で用いられるサイズよりも小さい。ガラスサイズが大きくなるとSTL値は悪くなる傾向にあるが、これは、サイズが大きいほど拘束箇所が大きくなり、それにともない共振モードが大きくなるからである。但し、ガラスサイズが異なっても、周波数毎の相対的値の傾向、つまり、異なる厚みのガラス板からなる合わせガラスが同厚のガラス板からなる合わせガラスに比して所定の周波数帯で悪くなる傾向は同じである。
また、有限要素法において、ガラス板に形成されるメッシュは、一辺が5mmの直方体とした。これは、一般的に、解析する最大波長の1/6以下であれば、精度が良いといわれており、今回用いた5mmは、10000Hz時の波長の約1/7に相当する。したがって、シミュレーションの精度は担保されている。
また、上記表1のランダム拡散音波とは、所定の周波数の音波が外側ガラス板に対してあらゆる方向の入射角をもって伝番していく音波であり、音響透過損失を測定する残響室での音源を想定したものとなっている。一方、平面波とは、一定の進行方向に垂直な波面をもつ波であり、所定の周波数の音波が外側ガラス板に対して垂直に入射して伝播していく音波である。なお、平面波を用いても遮音性能の効果が評価できる。
(3) 入力条件2(物性値)
[コア層及び両アウター層のヤング率及び損失係数について]
主な周波数毎に異なった値を用いた。これは、コア層及び両アウター層は粘弾性体のため、粘性効果によりヤング率は周波数依存性が強いためである。なお、温度依存性も大きいが、今回は温度一定(20℃)を想定した物性値を用いた。
結果は、図16のグラフに示すとおりである。このグラフは、横軸が周波数(Hz)であり、縦軸は各周波数における実施例1と比較例1とのSTLの差(dB)である。この結果によれば、実施例1のように、アウター層のヤング率を大きくすることで、比較例1に比べ概ね4000Hz以上の周波数域におけるSTLを向上することができる。つまり、遮音性能を向上させることができる。例えば、約5000〜10000Hzにおいて、実施例1と比較例1とは0.6dB以上のSTLの差が生じており、実施例1において遮音性能が大きく向上していることが分かる。したがって、このような合わせガラスを自動車に用いた場合、ブレーキ音、風切り音などの高周波の音が車内に流入するのを効果的に遮断することができる。一方、実施例1は、1000〜3500Hzの周波数域で、比較例1と比べ、STLが概ね0〜0.2dB低下している。しかしながら、一般的に、人間は約0.3dBの変化があれば、音の相違を認識することができるため、0.2dB程度のSTLの差であれば、人間は認識できない可能性が高い。したがって、アウター層のヤング率を高くすると、約3500Hz以下の低周波でSTLは低下するものの、その低下は無視できるほどのものであり、その一方で、約3500Hz以上、特に、5000Hz以上の周波数域の音に対しては、効果的に遮音することができることが分かった。
2.試験B
以下の通り、実施例2〜4及び比較例2に係る合わせガラスを準備した。実施例2〜4と比較例2の相違は、アウター層のヤング率のみである。
外側及び内側ガラス板を、上述したクリアガラスで形成した。外側ガラス板の厚みは2.0mm、内側ガラス板の厚みは1.3mmとした。そして、中間膜はコア層とこれを挟持する一対のアウター層で構成した。中間膜の厚みは0.76mm、コア層の厚みは0.1mm、両アウター層の厚みはそれぞれ0.33mmとした。そして、コア層のヤング率は9.5MPa(20℃、100Hz)に調整した。また、実施例2〜4におけるアウター層のヤング率は、それぞれ882、1764、3528MPa(20℃、100Hz)とし、比較例2におけるアウター層のヤング率を441MPa(20℃、100Hz)とした。その他の試験条件は、試験Aと同じである。
結果は、図17に示すとおりである。この試験Bでは、コア層のヤング率を小さくしているが、試験Aと同様に、アウター層のヤング率が大きくなると、高周波数域でのSTLが大きく上昇し、この周波数域での遮音性能が大きく向上していることが分かる。また、この試験Bでは、コア層のヤング率を試験Aと比べ半分にしているが、これにより、1000〜3500Hzの周波数域でのSTLが若干増加していることが分かる。
したがって、アウター層のヤング率を増大することで、高周波域でのSTLが増加し、遮音性能が向上していることが分かった。また、コア層のヤング率を低下させることで、1000〜3500Hzの周波数域での遮音性能が向上していることも確認できた。
3.試験C
以下では、合わせガラスの取付角度とアウター層の厚みに関する評価を行った。表6〜表8に示す通り、実施例及び比較例に係る合わせガラスを準備した。但し、外側ガラス板の厚みは2.0mm、内側ガラス板の厚みは1.5mm、コア層の厚みは0.1mm、アウター層の厚みは0.33mm、ダブり量は0mmとした。
図18に示すように、取付角度が45度以上と大きいと、アウター層のヤング率が変化しても、2000〜5000HzではSTLが概ね同じであるが、5000Hzより大きくなると、アウター層のヤング率が大きいほど、STLが向上していることが分かった。また、図19に示すように、この傾向は、コア層のヤング率が小さくなっても同様である。但し、コア層のヤング率が小さくなると、図18と比べ、2000〜5000Hzでは、STLが向上するが、5000Hzより大きくなると、STLが低下している。したがって、コア層のヤング率にかかわらず、アウター層のヤング率は高いこと、特に、560MPa以上が好ましいことが分かった。
また、図20に示すように、取付角度が45度よりも大きい場合、コア層のヤング率が大きくても、アウター層のヤング率が大きいほど、5000Hz以上を含む高周波域でのSTLが向上することが分かった。特に、図18及び図19と比べ、5000Hz以上において、アウター層のヤング率が高くなることの効果がより明確に表れた。
4.試験D
以下では、コア層及びアウター層のヤング率に関する評価を行った。表9〜表12に示す通り、実施例及び比較例に係る合わせガラスを準備した。但し、外側ガラス板の厚みは2.0mm、内側ガラス板の厚みは1.0mm、コア層の厚みは0.1mm、アウター層の厚みは0.33mm、ダブり量は0mm、取付角度は0度とした。表9及び表10に係る実施例及び比較例おいては、コア層のヤング率を一定とし、アウター層のヤング率を変化させた。結果は、図21及び図22に示すとおりである。また、表11及び表12に係る実施例においては、アウター層のヤング率を一定とし、コア層のヤング率を変化させた。結果は、図23及び図24に示すとおりである。
図21及び図22に示すとおり、コア層のヤング率が低いほど、2000〜5000HzでのSTLは、向上するものの、コア層のヤング率が相違しても、アウター層のヤング率が高くなるほど、5000Hz以上でSTLが向上する傾向が確認された。特に、コア層のヤング率が低くても、アウター層のヤング率が高いと、例えば、実施例13と実施例17とを比較して分かるように、5000Hz以上でのSTLが向上している。
また、図23及び図24に示すとおり、5000Hz以上を含む高周波域でのSTLが向上する傾向は、コア層のヤング率が大きく変化しても同じであり、2000〜5000Hzではコア層のヤング率が低いほど、STLが向上するものの、5000Hz以上では、コア層のヤング率が高く、またアウター層のヤング率が高いほど、STLが向上している。したがって、コア層のヤング率がいずれの値であっても、アウター層のヤング率が高いと、5000Hz以上でのSTLが向上することが分かった。
5.試験E
以下では、ガラス板の厚みに関する評価を行った。表13及び表14に示す通り、実施例及び比較例に係る合わせガラスを準備した。但し、外側ガラス板の厚みは1.5mm、内側ガラス板の厚みは1.5mm、コア層の厚みは0.1mm、アウター層の厚みは0.33mm、ダブり量は0mm、取付角度は0度とした。結果は、図25及び図26に示すとおりである。
図25及び図26に示すとおり、外側ガラス板と内側ガラス板の厚みが同じであっても、アウター層のヤング率が高いほど、5000Hz以上でのSTLは向上することが分かった。また、図25と図26とを比較すると、2000〜5000Hzでは、コア層のヤング率が低いほど、STLが高くなっているが、5000Hz以上では、大きい相違がないことが分かった。さらに、例えば、図21と図25とを比較すると、2000〜5000Hzでは、外側ガラス板と内側ガラス板の厚みが相違すると、STLが低くなっているが、5000Hz以上では、外側ガラス板と内側ガラス板の厚みに関わらず、STLがほぼ同じであることが分かった。
6.試験F
以下では、ダブリ量に関する評価を行った。表15に示す通り、実施例に係る合わせガラスを準備した。但し、外側ガラス板の厚みは2.0mm、内側ガラス板の厚みは1.5mm、コア層の厚みは0.1mm、アウター層の厚みは0.33mm、取付角度は0度とした。結果は、図27に示すとおりである。
図27に示すとおり、ダブリ量が大きくなるほど、4000Hz以下で、STLが小さくなっていることが分かった。
1 外側ガラス板
2 内側ガラス板
3 中間膜
31 コア層
32 アウター層

Claims (15)

  1. 外側ガラス板と、
    前記外側ガラス板と対向配置された内側ガラス板と、
    前記外側ガラス板及び内側ガラス板の間に挟持された中間膜と、
    を備え、
    前記中間膜は、コア層と、前記コア層よりも剛性が高く、当該コア層を挟む前記外側ガラス板側及び前記内側ガラス板側のうち、少なくとも前記外側ガラス板側に配置される少なくとも1つのアウター層と、を備え、
    前記アウター層の少なくとも1つのヤング率は、周波数100Hz,温度20℃において、560MPa以上3528MPa以下である、合わせガラス。
  2. 前記コア層の厚みは、0.1mm以上である、請求項1に記載の合わせガラス。
  3. 垂直からの取付け角度が45度未満である、請求項1または2に記載の合わせガラス。
  4. 前記コア層のヤング率は、周波数100Hz,温度20℃において、1MPa以上25 MPa以下である、請求項1から3のいずれかに記載の合わせガラス。
  5. 前記コア層のtanδは、周波数100Hz,温度20℃において、0.1〜0.9で ある、請求項1から4のいずれかに記載の合わせガラス。
  6. 前記外側ガラス板及び前記内側ガラス板の厚みが相違する、請求項1から5のいずれか に記載の合わせガラス。
  7. 前記外側ガラス板の厚みが前記内側ガラス板の厚みよりも大きい、請求項6に記載の合 わせガラス。
  8. 前記外側ガラス板及び前記内側ガラス板の厚みの差が、0.7mm以下である、請求項 6または7に記載の合わせガラス。
  9. 前記外側ガラス板及び前記内側ガラス板の厚みの合計が、2.4mm以上3.8mm以 下である、請求項1から8のいずれかに記載の合わせガラス。
  10. 前記合わせガラスが湾曲しており、
    前記合わせガラスの上辺の中央と下辺の中央とを結ぶ仮想の直線と、前記合わせガラス の凹面側の表面との距離が、30mmより大きく、
    前記コア層のヤング率は、周波数100Hz,温度20℃において、1MPa以上25 MPa以下である、請求項1から9のいずれかに記載の合わせガラス。
  11. 前記合わせガラスが湾曲しており、
    前記合わせガラスの上辺の中央と下辺の中央とを結ぶ仮想の直線と、前記合わせガラス の凹面側の表面との距離が、30mm以下である、請求項1から9のいずれかに記載の合 わせガラス。
  12. 前記中間膜は、1mあたり3mm以下の変化率で厚みが大きくなるような楔形に形成さ れている、請求項1から11のいずれかに記載の合わせガラス。
  13. 自動車のウインドシールドである、請求項1から12のいずれかに記載の合わせガラス
  14. 自動車のサイドガラスである、請求項1から12のいずれかに記載の合わせガラス。
  15. 自動車のリアガラスである、請求項1から12のいずれかに記載の合わせガラス。
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